説明

汗対策用スプレー製品及び汗対策方法

【課題】衣類に付着した汗をターゲットとし、衣服に汗が付いた直後に処理を行うことによって、濡れた箇所の乾燥を早め、除菌・抗菌剤により汗の成分を分解する細菌の発育を抑えるという汗対策を施すことができる汗対策用スプレー製品及び汗対策方法の提供を図る。
【解決手段】繊維の親水性を向上させる親水性加工剤と溶剤とを含有した内容液を、スプレー容器内に収納する。未乾燥の汗の付着した衣服にこの内容液を噴射することにより、衣服に付着した未乾燥の汗を当初の繊維への付着箇所よりも広い範囲に拡散させることができ、未乾燥の汗を衣服の繊維上で拡散させて乾燥を早めたり、汗ジミを目立たなくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、汗対策用スプレー製品、特に、衣類についた汗をターゲットとし、この汗を後処理をするための汗対策用スプレー製品及び汗対策方法に関するもである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特公昭51−9009号公報
【特許文献2】特公昭53−1813号公報
【特許文献3】特公昭48−17636号公報
【特許文献4】特許第2885885号公報
【特許文献5】特公昭61−22070号公報
【特許文献6】特許第2724023号公報
【0003】
汗によるニオイを抑える方法は上記の特許文献を始めとして、数多くの提案がなされていると共に多種の製品が市場に出されている。そのうち、最も多く使用されているのが、制汗デオドラント剤である。これは肌に直接使用して発汗を抑制するものや汗の成分を分解する細菌の発育を抑えるものである。これに関してはスプレータイプ、スティックタイプ、パウダータイプなど数多く提案されている(特許文献1、2など多数)。
【0004】
他方、繊維製品に関しては、汗をかいても吸水・拡散して乾燥を早める構造の繊維や繊維処理薬剤が提案され、また抗菌剤を配合して抗菌効果を付与している繊維など数多く提案されている。例えば、繊維の吸水加工に関しては特許文献3、4など、繊維の抗菌加工に関しては特許文献5、6など、多数の発明が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の制汗デオドラント剤は汗を抑えるのが目的で、汗をかく前に使用するのが本来の使用方法である。制汗デオドラント剤を、汗をかいている時に使用すると有効成分が汗で流れて効果が得られにくくなってしまうことは勿論、汗が衣類に付着すると、制汗デオドラント剤ではもはや対応できず、衣類に付着した汗から発生する臭いを抑えることは全くできないものである。
【0006】
衣類に付着した汗に対する対策用としては、上記の吸水・抗菌加工された繊維や繊維処理薬剤があるが、このものは初期の効果はあるものの、耐洗濯性に弱く、すぐに効果が落ちてしまう。または耐洗濯性があるものはバインダーとしての樹脂を用いており、薬剤と水分や細菌とが接触しにくく、吸水や抗菌の効果が充分に発揮できない。また、吸水・抗菌加工した繊維や吸水しやすい構造の繊維は値段が高く、使用頻度が小さく、この種の繊維を用いた衣服を常に着用するといったことはあり得ない。
【0007】
そこで、本願発明は、従来の汗対策にはない全く新しい発想による汗対策用スプレー製品及び汗対策方法を提供せんとするものである。即ち、衣類に付着した汗をターゲットとし、衣服に汗が付いた直後に処理を行うことによって、濡れた箇所の乾燥を早め、除菌・抗菌剤により汗の成分を分解する細菌の発育を抑えるという汗対策を、どのような繊維の衣服に対しても、且つ、必要な時に最も有効に作用できる方法で、施すことができる汗対策用スプレー製品及び汗対策方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、内容液として、衣服に付着した未乾燥の汗を当初の繊維への付着箇所よりも広い範囲に拡散させることができる親水性加工剤と、溶剤とを含有し、この内容液がスプレー容器内に収納されたものであり、未乾燥の汗の付着した衣服に上記の内容液を噴射することにより、未乾燥の汗を衣服の繊維上で拡散させて乾燥を早めることができるようにした汗対策用スプレー製品を提供するものである。
本願の請求項2に係る発明は、上記の親水性加工剤が界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1記載の汗対策用スプレー製品を提供する。
本願の請求項3に係る発明は、上記の内容液が抗菌剤を含有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の汗対策用スプレー製品を提供する。
本願の請求項4に係る発明は、上記のスプレー容器が噴射剤の圧力で内容物を噴射するエアゾールスプレー容器であり、上記の溶剤が炭素数1〜3の低級アルコールであり、且つ、沸点が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汗対策用スプレー製品を提供する。
本願の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の汗対策用スプレー製品を用いて、未乾燥の汗が付着した繊維とその周辺の繊維へ、内容液を噴射して、未乾燥の汗を衣服の繊維上で拡散させて乾燥を早めるようにした汗対策方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、衣服に付着した未乾燥の汗を当初の繊維への付着箇所よりも広い範囲に拡散させることができる界面活性剤などの親水性加工剤を内容液の成分として含有するものであるため、これを、未乾燥の汗が付着した繊維とその周辺の繊維へ噴射することによって、未乾燥の汗を衣服の繊維上で拡散させることができ、汗の乾燥を早めることができる。従って、どのような繊維の衣服に対しても、且つ、必要な時に最も有効に衣服に付着した汗の繊維上での濃度を薄めて、素早く乾燥させたり、或いは汗ジミを目立たなくすることができるものである。これにより、汗の乾燥時間を短くできることは勿論、素早く乾燥させることにより、細菌が繁殖し易い状態を短時間で解消できるため、嫌な臭いの発生も抑制できる。さらに、上記の内容液に抗菌剤を配合することによって、抗菌剤を直接汗及び汗が付着した繊維に作用させることができ、細菌の発生を有効に抑制して、いやな臭いの発生をより確実に防止することができる。また、溶剤として、炭素数1〜3の低級アルコールを用いることよって、除菌効果を期待できるものであり、また、その沸点が100℃以下のものを用いることによって、乾燥が早く使用感も良好になるという効果が発揮されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明の汗対策用スプレー製品にあっては、スプレー製品の内容液として、溶剤と親水性加工剤とを含み、さらに望ましくは抗菌剤を含む。
【0011】
溶剤は、親水性加工剤の溶剤となり得るものであればよい。望ましくは、除菌効果を期待できる点から炭素数1〜3の低級アルコールが適しており、また乾燥の早い方が使用感が良いので溶剤の沸点が100℃以下のものが好ましい。具体的には、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどを例示し得る。この溶剤の配合量は、内容液100重量部中、50〜99.9重量部とすることが望ましい。
【0012】
親水性加工剤は、繊維の親水性を向上させることができる薬剤であれば特に限定はなく、繊維の製造過程で用いられる工程油剤等の繊維処理剤を含むものであり、該繊維処理剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性剤を含む繊維処理剤が好ましく用いられる。ここで、繊維の親水性を向上させるとは、水滴と繊維表面との接触角を小さくすることを意味するもので、この親水性加工剤が付与された衣服は、付与前に比して、衣服に付着した未乾燥の汗を当初の繊維への付着箇所よりも広い範囲に拡散させることができる。この親水性加工剤の配合量は、内容液100重量部中、0.01〜50重量部とすることが望ましい。
【0013】
特に本願の親水性加工剤としては、親水性を向上させることができると同時に繊維の(繊維の集合体である布帛全体の)柔軟性や平滑性を付与し得る処理剤が好ましく、具体的には、ポリオキシアルキル硫酸エステル金属塩、アルキル硫酸エステル金属塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸金属塩、アルキルリン酸金属塩、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸ソルビタンエステル(モノ、ジ、トリ)、アルキルグルコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルコハク酸金属塩、高級アルコール等が挙げられる。金属塩としてはナトリウム塩やカリウム塩が用いられる。これらの界面活性剤は、単独でも2種以上を用いてもよい。特に、親水性、繰り返し吸収性、防錆性、不織布加工性の点から、ポリオキシエチレンアルキルリン酸金属塩、アルキルリン酸金属塩、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルグルコシド、アルキルコハク酸金属塩のうちの1種又は2種以上の組み合わせを用いることが好ましい。それ以外では柔軟性や平滑性等を付与するための処理剤として、ジメチルポリシロキサン、エポキシ基含有ポリシロキサン、アミノアルキル基含有ポリシロキサン等の各種オルガノポリシロキサンや水溶性媒体として、多価アルコールなどを例示できる。本発明において用いる多価アルコールとしては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどを幅広く使用され得る。
【0014】
抗菌剤は、抗菌性を発揮する薬剤であれば特に限定はないが、制汗デオドラント剤に使用されているものが好ましい。例えば、3,4,4−トリクロロカルバニリド(TCC)、レゾルシン、フェノール、ヘキサクロロフェン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等のノニオン系抗菌剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、ジンクピリチオン等のカチオン系抗菌剤、ソルビン酸、サリチル酸等のアニオン系抗菌剤があげられる。また無機抗菌剤も使用することができ、無機抗菌剤としては抗菌性金属を含有する抗菌剤が好ましい。抗菌性を有する金属としては、一般的に、銀、銅、亜鉛、白金、ニッケル、光触媒作用を有する酸化チタンが代表例として挙げられる。抗菌剤剤の配合量は、内容液を100重量部として0.01〜5重量部とすることが望ましい。
【0015】
上記の内容液は、内容液を霧状に噴射することができるスプレー容器に封入される。このスプレー容器は、手動ポンプなどによって噴射するものであってもよく、噴射剤と共に封入してその圧力で噴射する噴射機構を備えたエアゾール容器であってもよい。噴射剤としては、公知の噴射剤を使用することができるもので、好ましくは、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、フロンガス、圧縮空気等を使用することができる。
【実施例】
【0016】
以下、本願発明の実施例を示すが、本願発明はこの実施例に限定して解釈されるべきではない。
【0017】
実施例1として、親水性加工剤としてモノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン(製品名 日光ケミカル社製ニッコールTL-10)を0.1重量部と、溶剤としてエタノール39.9重量部とからなる内容液40重量部と、噴射剤としてLPG60重量部とを、エアゾール容器に封入して実施例1の汗対策用スプレー製品を作成した。
【0018】
この実施例1の親水性の向上効果を確認した。
試験方法は、下記の方法で、無加工のPETプレートを繊維に見立てて、PETプレートと蒸留水との接触角を、接触角計(協和界面科学株式会社製 CA−X型 自然着滴測定)により測定した。
ブランクの試験片:無加工のPETプレートに蒸留水を滴下して、接触角を測定した。
実施例1の試験片:無加工のPETプレートに実施例1のスプレーを2秒噴射して、30分以上乾燥させたものに蒸留水を滴下して接触角を測定した。
結果は、ブランクの試験片での接触角は60.8°(3回平均)であったのに対して、実施例1の試験片での接触角は20.8°(3回平均)であり、実施例1のスプレーは接触角を小さくする、言い換えれば対象物の親水性を向上させるものであることが確認された。なお、本願発明において親水性の向上は、当該試験方法による接触角の減少が、20°以上であることが望ましく、より望ましくは30°以上である。
【0019】
次に、上記の実施例1について、湿潤試験、再湿潤試験、色差確認試験を、比較例1との比較試験を行った。
比較例1として、エタノール40重量部と、LPG重量部とを、エアゾール容器に封入したスプレー製品を作成した。
【0020】
(湿潤試験)
布帛試料としてポリエステルダブルピケ編物を用い、布帛試料前処理として、布帛試料をエタノール洗浄した後、完全に乾燥させた。この布帛試料に滴下溶液(5g/LオレンジII水溶液)を50μL滴下し、その直後に実施例1及び比較例1のスプレーを2秒噴射し、噴射直後、噴射から1分経過後、同5分経過後、同10分経過後のそれぞれの時点で、湿潤状態を観察した。当該観察としては、測定器(KEYENCE製VH-6800)を用いて、滴下溶液により着色した範囲を測定したもので、湿潤エリアを円として近似し、直径を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1のブランクは、布帛試料に滴下溶液(5g/LオレンジII水溶液)を滴下するに止め、スプレーの噴射を行っていないものである。
【0021】
(再湿潤試験)
再湿潤試験として、実施例1及び1比較例1のスプレーを2秒間噴射した後、30分自然乾燥させた上記の布帛試料に、滴下溶液(5g/LオレンジII水溶液)を50μL滴下し、湿潤状態を観察した。当該観察としては、湿潤試験と同じく、測定器(KEYENCE製VH-6800)を用いて、湿潤エリアを円として近似し、面積を測定した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
上記試験結果より、エタノールの含まれる実施例1及び比較例1のスプレーを水分の付着した場所にスプレーすると、湿潤面積が大きく広がり10分後にはブランクの約16倍になり、繊維に付着した水分の吸水性を上げ得ることが、確認された。さらに、実際の使用では、汗をかいた後に再度汗をかくことも多いため、再湿潤試験を考えると、実施例1のみが湿潤面積が大きく広がり5分後には比較例1の約38倍になり、繊維に付着した水分の吸水性を上げ得ることが確認された。よって、実施例1は、汗対策用スプレー製品として実用性の高い効果を上げ得ることが確認された。
【0024】
(色差確認試験)
次に、色差確認試験として、試験布帛にポリエステルジャージ染色布を用い、この試験布帛に実施例1及び1比較例1のスプレーを2秒間噴射した後、30分自然乾燥させ、蒸留水を滴下した(滴下量:50μL)。この滴下した部位を、滴下直後(0分)、滴下後1分経過時(1分)、滴下後5分経過時(5分)、滴下後10分経過時(10分)のそれぞれの時点で、下記装置で測色し、未滴下部位との色差を求めた。その結果を表2に示す。なお、表2において「試験布帛のみ」は、試験布帛について蒸留水の滴下を行っていないもの、「ブランク」は、スプレーの噴射を行っていない布帛試料に蒸留水を滴下したものの結果を示すものである。
【0025】
測色装置:マクベス社分光光度計COLOR-EYE3100
光源:D65
視野角:10°
測定窓サイズ:5×10mm
【0026】
【表2】

【0027】
色差が5未満であれば、目視上ではシミは目立たなくなり、更に2未満となると全くシミは見えなくなるものである。よって、上記試験結果により実施例1はスプレー直後にシミが目立たなくなり、10分後には見えなくなることが確認されると共に、汗ジミを目立たなくする効果に関して比較例1と有意差があることが確認されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液として、繊維の親水性を向上させる親水性加工剤と、溶剤とを含有し、
この内容液がスプレー容器内に収納されたものであり、
未乾燥の汗の付着した衣服に上記の内容液を噴射することにより、未乾燥の汗を衣服の繊維上で拡散させて乾燥を早めることや汗ジミを目立たなくすることができるようにした汗対策用スプレー製品。
【請求項2】
上記の親水性加工剤が界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1記載の汗対策用スプレー製品。
【請求項3】
上記の内容液が抗菌剤を含有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の汗対策用スプレー製品。
【請求項4】
上記のスプレー容器が噴射剤の圧力で内容物を噴射するエアゾールスプレー容器であり、上記の溶剤が炭素数1〜3の低級アルコールであり、且つ、沸点が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の汗対策用スプレー製品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の汗対策用スプレー製品を用いて、未乾燥の汗が付着した繊維とその周辺の繊維へ、内容液を噴射して、未乾燥の汗を衣服の繊維上で拡散させて乾燥を早めるようにした汗対策方法。

【公開番号】特開2007−56421(P2007−56421A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245524(P2005−245524)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【出願人】(393008821)日進化学株式会社 (16)
【Fターム(参考)】