説明

汚染土壌の洗浄装置

【課題】 砒素など重金属等で汚染された汚染土壌を、連続的に洗浄しながら選別し、汚染物質が分離して再利用が可能な土壌を得ることができるコンパクトな汚染土壌の洗浄装置を提供することである。
【解決手段】 粗洗浄および仕上げ洗浄を行なうトロンメル2、4の間にドラム洗浄機3を配置し、これらの境界部5、6に内周面に沿って仕切り板7、7aを設けて一体化し、粗洗浄用および仕上げ洗浄用の洗浄水供給配管12、13を内部に配設して汚染土壌の洗浄装置を形成し、上流側のトロンメル2から下流側のトロンメル4にかけて、3〜10°程度緩やかに傾斜させて、洗浄ラインに設置するようにしたのである。このような一体化により、装置がコンパクト化されて設置スペースを節約でき、設備費が大幅に低減し、かつ、洗浄排水の下流側への流出が抑制され、汚染土壌を効率よく再生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、砒素などの重金属等で汚染された汚染土壌を浄化処理するプロセスで使用される、汚染土壌を洗浄しながら選別する土壌洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
砒素などの重金属等で汚染された汚染土壌の浄化方法としては、洗浄処理方法や加熱処理方法が知られている。洗浄処理方法は比較的汚染濃度が低い汚染土壌の浄化処理に適し、一方、加熱処理方法は汚染濃度が高い汚染土壌にも適用が可能であるが、洗浄処理方法に比べて、処理コストが割高になる。
【0003】
前記洗浄処理方法は、前記重金属などの汚染物質は比表面積の大きい細粒径の土壌粒子に付着しやすいという特性を利用して、汚染物質を洗浄しながら選別する過程で、汚染物質を篩い出す方の細粒径の土壌粒子側に集めることにより汚染土壌の浄化を可能とする処理方法である。従来、汚染土壌の洗浄に使用される洗浄装置としては、汚染土壌の洗浄と篩い(分級)をそれぞれ行なう、粗洗浄および仕上げ洗浄用の2台の湿式トロンメルと、回転ドラム(回転円胴)内で加水し、土壌粒子と円胴内壁との衝突および土壌粒子同士の摩擦による相互研磨作用で土壌粒子表面の汚染物質を分離させるドラム洗浄機を配置した洗浄選別設備が知られている。そして、通常、ドラム洗浄機と粗洗浄用および仕上げ洗浄用の湿式トロンメルとドラム洗浄機との間には、汚染土壌、即ち被処理土壌の受け渡し用のシュートが設けられている。
【0004】
一方、砒素汚染土壌に関し、加熱処理により揮散しやすい3価の砒素化合物を土壌から離脱させた後、水への溶解度が大きい5価の砒素化合物が残存する土壌で、篩を通過した一定の大きさ(50mm)以下の土壌粒子を2軸せん断機で水により洗浄し、前記砒素化合物を水に溶解させた後、複数段に設けたスクリーン、攪拌機等を用いた分級および細粒化等の工程によって浄化する設備を用いた汚染土壌の浄化方法が開示されている(特許文献1参照)。また、ダイオキシン類のような難水溶性有機塩素化合物で汚染された土壌に関し、投入端から排出端へ上り勾配で傾斜配置された回転ドラム(回転円胴)内に長手方向に複数、例えば、3つの洗浄ゾーンを設けた洗浄装置を用いた汚染土壌の処理方法が開示されている(特許文献2参照)。この洗浄装置では、回転ドラム(回転円胴)内面に被洗浄物緩慢送り用のスクリューリボンまたは複数の攪拌羽根が設けられ、各洗浄ゾーンにそれぞれ洗浄水を送る給水管が配設され、各洗浄ゾーンの回転ドラム壁面に水抜き用メッシュが設けられている。そして、投入された汚染土壌はドラム内を回転しながら給水管から供給された洗浄水により洗浄される。
【特許文献1】特開2002−177941([0015]〜[0024])
【特許文献2】特開2002−126716([0016]〜[0019])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、湿式トロンメルとドラム洗浄機を別個に配置した従来の洗浄装置では、各装置間で被処理土壌をシュートで受け渡すために、段差を付けたフロアに各装置を配置する必要があり、高さ方向の建屋スペースが必要となる。また、各装置の回転駆動装置等も別個に設ける必要があり、前記シュートのように装置間の受け渡し装置も必要となる。さらに、ドラム洗浄機は、通常、水平に設置されることから、被処理土壌の流動性を向上させるために加水する必要があり、給水系統も余分に必要となる。これらにより、洗浄装置が大型化、煩雑化し、設備費が嵩み、設置スペースも余分に要するなどの問題がある。
【0006】
一方、特許文献1に開示された浄化装置でも、2軸せん断洗浄機と選別(分級)のためのスクリーンが別個に設けられ、装置の配置が繁雑になるなどの問題がある。また、特許文献2に開示された回転円胴式の洗浄装置では、汚染土壌表面の汚染部分を分離させる分離洗浄機能はなく、土壌表面の汚染部分を分離させるためには、別途洗浄装置を設ける必要があり、やはり設備が煩雑となる。
【0007】
そこで、この発明の課題は、砒素など重金属等で汚染された汚染土壌を、連続的に洗浄しながら選別し、汚染物質を分離して再利用が可能な土壌を得ることができるコンパクトで効率的な汚染土壌の洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、この発明では以下の構成を採用したのである。
【0009】
即ち、請求項1に係る汚染土壌の洗浄装置は、少なくとも2台のトロンメルとその間にドラム洗浄機が配置され、上流側のトロンメルに重金属または/および有機ハロゲン化合物に汚染された汚染土壌を投入して加水し、土壌と水とが混合した状態で洗浄と細粒径の土壌粒子の篩い出しを行なった後、この汚染土壌をドラム式洗浄機で攪拌洗浄して土壌表面の汚染物質を分離し、次に下流側のトロンメルで加水し、土壌と水とが混合した状態で洗浄と残存する細粒径の土壌粒子の篩い出しを行って浄化する汚染土壌の洗浄装置であって、前記上流側および下流側のトロンメルとドラム洗浄機を一体化し、この上流側トロンメルおよび下流側トロンメルとドラム洗浄機とのそれぞれの境界部にその内周に沿って所要の高さの仕切り板を設けたことを特徴とする。
【0010】
このように、トロンメルとドラム洗浄機とを一体化することにより、シュート等の搬送装置が不要となり、駆動装置が共通化できるなど、装置がコンパクト化され、設備費が大幅に低減し、トロンメルとドラム乾燥機とを、被処理土壌の搬送のために段差を付けたフロアに配置する必要もなく、設置スペースが節約するなどの利点もある。また、トロンメルとドラム洗浄機との境界部にそれぞれ水切り用の仕切り板を設けることにより、上流側のトロンメルからの汚染物質を含む洗浄排水がドラム洗浄機へ流入することを制限することができる。また、ドラム洗浄機内で、土壌粒子および土壌粒子間に残存する洗浄水が分離、飛散した汚染物質を含む洗浄排水が、下流側のトロンメルに流出することを制限することができる。それにより、とくに下流側のトロンメルでは、上流側からの汚染物質を含む洗浄排水の影響を殆んど受けずに済む。ここで、重金属としては、砒素、クロム、カドミウムなどが、有機ハロゲン化合物としては、ダイオキシン、PCBなどが該当する。また、汚染土壌とは、農業廃棄物や産業廃棄物等に付着した汚染土壌粒子をも含む。
【0011】
請求項2に係る汚染土壌の洗浄装置は、前記一体化したトロンメルおよびドラム洗浄機が、上流側から下流側にかけて緩やかに傾斜して設置されたことを特徴とする。
【0012】
傾斜角度が大きい場合、滞留時間を稼ぐためにトロンメルの回転数を落とす必要があるが、回転数を落とすと、ドラム洗浄機での汚染土壌表面の汚染分離洗浄効果が得られない。しかし、このように緩やかに傾斜させることにより、傾斜角度が大きい場合に比べて、トロンメルおよびドラム洗浄機の回転数を上昇させることができる。それにより、ドラム洗浄機での洗浄効果を高めることができる。ここで、緩やかな傾斜の角度とは、水平軸に対して3〜10°程度である。また、この程度の傾斜でも、水平に設置する場合に比べて、被処理土壌の流動性が向上するため、ドラム洗浄機ではとくに加水しなくても、被処理土壌から汚染物質を分離しながら下流側に流動させることが可能となる。
【0013】
請求項3に係る汚染土壌の洗浄装置は、前記ドラム洗浄機の内周面に前記汚染土壌を下流側に送る機能を有するように攪拌パドルを設けたことを特徴とする。
【0014】
このように、送り機能を有するように攪拌パドルを設けることにより、かき上げおよび攪拌作用が増大し、撹拌洗浄作用が不十分な状態のままで被処理土壌が下流側へ搬送させる虞がなくなり、洗浄効果が向上する。なお、前記攪拌パドルの送り機能は、ドラムの内周面に多数のパドルを、装置軸心に対して所要の角度だけ傾斜させて設けることにより得られる。
【0015】
請求項4に係る汚染土壌の洗浄装置は、前記一体化された汚染土壌の洗浄装置が、汚染土壌の投入側と排出側でローラにより支持され、投入側で片側回転駆動され、排出側に前記洗浄装置を軸方向に支持するスラストローラを設けたことを特徴とする。
【0016】
このように、片側で回転駆動することにより、前記両トロンメルおよびドラム洗浄機の回転駆動が共通化され、装置が簡素化される。そして、前記スラストローラを設けることにより、片側回転駆動による反駆動側、即ち排出側の振れを防止することができる。
【0017】
請求項5に係る汚染土壌の洗浄装置は、トロンメルに加水される洗浄水が洗浄排水を高度処理した高度処理水を利用したものであることを特徴とする。
【0018】
このように洗浄排水を高度処理し、再利用することで、系外に排出する排水を制限することができる。また、高度処理した洗浄水を用いて仕上げ洗浄と残存する細粒径の土粒子を篩い出すことにより、汚染物質が取り除かれた再生土壌(製品土壌)を得ることができる。
【0019】
請求項6に係る汚染土壌の洗浄装置は、前記上流側トロンメルおよび下流側トロンメルに加水される洗浄水の水質が異なり、上流側トロンメルに加水される洗浄水が、沈殿処理により得られた処理水であることを特徴とする。
【0020】
上流側のトロンメルでの洗浄は粗洗浄であるため、ろ過材や吸着材をとくに使用しない通常の凝集沈澱処理を行なった循環水を用いて洗浄することができる。このような構成を取ることで、洗浄効果を保ちつつ、水処理に係る費用を低減することができる。
【0021】
請求項7に係る汚染土壌の洗浄装置は、前記洗浄装置が砒素を含む汚染土壌を浄化することを特徴とする。
【0022】
前記洗浄装置では、土壌中での多様な存在形態をとる砒素を含む汚染土壌を、簡便に浄化することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
この発明では、汚染土壌の洗浄と篩いを行なう上流側の粗洗浄用および下流側の仕上げ洗浄用トロンメルと、これらの間に配置するドラム洗浄機を一体化し、それぞれの境界部に水切り用仕切り板を設けて汚染土壌の洗浄装置を形成したので、装置がコンパクトになって設備費が大幅に低減し、また、設置スペースも節約される。また、前記境界部に設けた仕切り板により、上流側から下流側への洗浄排水の流れ込みを制限して、汚染物質を含む洗浄排水の影響を排除でき、下流側のトロンメルで、高度処理循環水を用いての洗浄と残存する細粒径の土壌粒子の篩い出しにより、重金属などの汚染物質が除去された再生土壌を効率よく得ることができる。
【0024】
前記ドラム洗浄機の内周面に送り機能を有する攪拌パドルを設けたので、被処理土壌の攪拌作用が増大し、また、この一体化した洗浄装置を上流側から下流側にかけて緩やかに傾斜させて設置するため、トロンメルおよびドラム洗浄機の回転速度を従来よりも高めることができ、洗浄および選別(分級)効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、この発明の実施形態を添付の図1から図4に基づいて説明する。
【0026】
図1(a)および(b)は、実施形態の汚染土壌(被処理土壌)の洗浄装置1を示したもので、この洗浄装置1は、粗洗浄と細粒径の土壌粒子の篩い出しを行なう上流側のトロンメル2と、土壌粒子と回転するドラム内壁との衝突および土壌粒子同士の摩擦による相互研磨作用で土壌粒子表面の汚染物質を分離して洗浄するドラム洗浄機3と、仕上げ洗浄と被処理土壌に残存する細粒径の土壌粒子の篩い出しとを行なう下流側のトロンメル4とが一体に形成されている。トロンメル2および4は、施工および保守上の観点から4等分された、目的の篩いだし粒径に合わせた打抜き孔を多数設けた円弧状のステンレス鋼板が軸心方向(長手方向)にボルト接合されてその篩い網の周壁が形成されている。ドラム洗浄機3は、同様に4等分された円弧状の炭素鋼が軸心方向(長手方向)にボルト接合されてドラムが形成され、その内周面には、図2(a)および(b)に示すように、矩形状の主板Rの両端に三角形状の側板Tを設けた攪拌パドルPが、被処理土壌の送り機能が得られるように、矢印Aで示した軸心方向に対して傾斜させて取り付けられている。上流側のトロンメル2とドラム洗浄機3との境界部5、ドラム洗浄機3と下流側のトロンメル4との境界部6のそれぞれの内周面には、図3(a)および(b)に示すように、円周方向にそれぞれ4分割された円弧状の仕切り板7および7aが、内周面に沿って複数配置された固定用治具8によって両面側から挟みつけられて内周面に固定されている。この仕切り板は、下流側の境界部6の仕切り板7aの方が、上流側の境界部5の仕切り板7よりも高く設けられ、上流側からの汚染物質を含む洗浄排水が下流側のトロンメル4に流入しにくいようになっている。
【0027】
前記上流側トロンメル2の入側には、被処理土壌を装置内に装入するための投入シュート9が設けられ、下流側のトロンメル4の出側には汚染物質が除去され、浄化された再生土壌の排出シュート10が設けられている。前記一体化した洗浄装置1の下方には、篩い出した細粒径の土壌粒子および洗浄排水を集めて次工程の分級機(図示省略)に送るためのアンダーホッパ11が設けられている。洗浄装置1の内部上方には、粗洗浄用と仕上げ洗浄用の2系統の洗浄水供給配管12、13が配設され、粗洗浄用の供給配管12は、上流側のトロンメル2の投入側に配設された洗浄水供給配管12aに接続され、前記投入側からトロンメル4の排出側まで延び、仕上げ洗浄用の供給配管13は、トロンメル4の排出側からドラム洗浄機3との境界部6まで延び、それぞれの供給配管12、13の管壁には、ノズル孔が多数一様に設けられている。この粗洗浄用の供給配管12には、通常の凝集沈澱処理された循環水が通水され、仕上げ洗浄用の供給管13には、砂ろ過処理に加えて活性炭による吸着処理によって清浄化した高度処理循環水が通水される。
【0028】
本構成においては粗洗浄用の供給配管12を上流側トロンメル2の投入側から下流側のトロンメル4の排出側の排出側に向けて挿入し、仕上げ洗浄用の供給配管13を下流側のトロンメル4の排出側から上流側に向けて挿入した構成としたが、各供給管の挿入方向は、必ずしもこれに限定するものではない。
【0029】
前記洗浄装置1は、図4(a)および(b)に示すように、トロンメル2の投入側およびトロンメル4の排出側の下部にそれぞれ設けた一対のトロンメルローラ14、14aにより、上流側から下流側にかけて、水平軸に対して3〜10°程度緩やかに傾斜した状態で従来よりも高速回転が可能なように、両側で支持されている。図1(b)および図4(a)に示したように、トロンメル2の入側にはスプロケット15が取り付けられ、モータ16側に取り付けたスプロケット15aとチェーン17を掛け渡して連結されて、洗浄装置1が片側で回転駆動されるようになっている。トロンメル4の排出側には、図4(b)に示したように、一対のスラストローラ18、18が設けられ、トロンメル4の出側に嵌め込まれたリング状接触部材19(図1(b)参照)のリング軌道面19aに回転可能に軸方向に押し付けられている。
【0030】
この発明の実施形態は以上のような構成であり、以下にその機能について説明する。
【0031】
処理場に搬入された汚染土壌は、まず振動篩いにかけられ、40mm以上の土石が篩い分けられ、篩いを通過した40mm未満の汚染土壌は、磨鉱機(図示省略)に装入され、適量の循環水を加えてその回転ドラム内で土壌粒子表面が磨砕され、土壌粒子が予備処理される。予備処理された汚染土壌、即ち被処理土壌は磨鉱機の排出口から、洗浄装置1の入側に設けた投入シュート9に排出され、この排出経路で流動性を向上させるためにさらに加水され、投入シート9からトロンメル2に投入される。トロンメル2には、洗浄水供給管12に設けたノズル孔から洗浄水として循環水が供給され、投入された汚染土壌は、トロンメル2の周壁を形成する回転篩い網の底部から篩い網内周面に沿って、従来よりも高速で回転移動し、この回転篩い網の上部に達する前に重力で底部に落下する運動を繰り返しながら、表面の砒素などの重金属等の汚染物質が洗浄され、かつ、回転篩い網から、汚染物質がより付着しやすい細粒径の土壌粒子、例えば、最大径が5mm以下の土壌粒子が篩い出される。篩い出された細粒径の土壌粒子および洗浄排水は、アンダーホッパ11に流下し、その排出口11aから次工程の分級機へ送られる。トロンメル2で粗洗浄された被処理土壌は、洗浄装置1の上流側から下流側への緩やかな傾斜により、境界部5の仕切り板7を越えてドラム洗浄機3に流入する。その際、洗浄排水の大部分は仕切り板7で堰き止められて、回転篩いからアンダーホッパ11へ流下する。
【0032】
前記ドラム洗浄機3に流入した被処理土壌は、送り機能を有する攪拌パドルPのかき上げ作用により、ドラム内で落下する際の衝撃、および強い攪拌作用による土壌粒子間の摩擦作用などによって、土壌粒子表面に付着している汚染物質が機械的に洗浄される。また、撹拌パドルの送り機能と装置の緩やかな傾斜により、被処理土壌は下流側へと送られる。なお、ドラム洗浄機3に流入する被処理土壌には、上流側のトロンメル2での洗浄水が残存しているため、ドラム洗浄機3内にとくに加水しなくても、被処理土壌の流動性は保たれる。
【0033】
前記ドラム洗浄機3と仕上げ洗浄用のトロンメル4との境界部6には、仕切り板7aを設けているため、被処理土壌に残存していた水分、即ち洗浄排水はドラム内周方向の大半の領域からトロンメル4側へ流出せず、仕切り板7a間の隙間7gから流出するのみである。このため、汚染物質を含む洗浄排水は、トロンメル4内にむやみに流出せず、隙間7gから流出した洗浄排水は、トロンメル4の入側部で回転篩い網からアンダーホッパ11へ速やかに排出される。
【0034】
本実施形態においては、被処理土壌に残存する水分をドラム洗浄機3側の領域から下流側トロンメル4の領域に逃がすことが好ましいため、仕切り板7aに隙間7gを設けた構造としたが、これに限定されず、仕切り板7aに隙間を設けない構造としても良い。なお、これらの仕切り板が無い場合、上流側トロンメルの洗浄水が洗浄ドラム装置を経て、下流側トロンメルまで流入してくるため、下流側トロンメルでの洗浄効果が薄れることとなる。
【0035】
前記洗浄装置1自体の緩やかな傾斜および攪拌パドルPの送り作用によってトロンメル4に流入した被処理土壌は、洗浄水供給管13に設けたノズル孔から前記高度処理循環水が供給され、上流側のトロンメル2の場合と同様に、トロンメル4の回転篩いの底部から篩い網内周面に沿って従来よりも高速で回転移動し、回転篩いの上部に達する前に重力で底部に落下する運動を繰り返しながら、汚染物質が除去された高度循環処理水により仕上げ洗浄される。そして、回転篩い網から、被処理土壌に残存する、汚染物質がより付着しやすい、例えば、最大径が5mm以下の細粒径の土壌粒子が篩い出される。篩い出された細粒径の残存土壌粒子、および洗浄排水は、アンダーホッパ11に流下し、その排出口11aから次工程の分級機へ送られる。このようにして、砒素などの重金属等の汚染物質が除去された、最大径が5〜40mmの被処理土壌がトロンメル4の出側の排出シュートから効率よく再生土壌として取り出され、図示を省略したコンベアにより、製品ヤードに搬出される。なお、この再生土壌は定期的にサンプリングされ、重金属等の汚染物質の残存量が排出基準をクリアしていることが確認される。
【0036】
なお、前記洗浄装置1の傾斜角度としては傾斜角度が小さすぎると、上流側及び下流側トロンメルにおいて被処理土壌を送る機能が小さくなることから3°以上が好ましく5°以上が更に好ましい。また、装置の傾斜角度が大きすぎるとドラム洗浄装置での洗浄効果を得るために装置の回転数を高めた際に、充分な滞留時間が得られなくなることから、10°以下とすることが好ましく、8°以下が更に好ましい。また、洗浄装置1の回転数は低すぎると洗浄ドラムにおいて、被処理土壌が充分に撹拌されず、洗浄効果が薄れるため、30rpm以上とするのが好ましく更には40rpm以上とするのが好ましい。また、装置の回転数が高すぎると、遠心力により、被処理土壌が装置内に付着し落下しないため、ドラム内壁との衝突および土壌同士の摩擦による相互研磨作用が得られず、充分な洗浄効果が得られないことから、70rpm以下とするのが好ましく、更には60rpm以下とするのが好ましい。
【0037】
本実施形態において高度処理水として凝集沈殿処理に加え、砂ろ過及び活性炭吸着処理によって清浄化した処理水を利用しているが、これらの処理に換えて膜処理によって、排水中のスラッジや重金属分を除去した処理水を利用しても良い。また、本実施形態においては上流側トロンメルでの粗洗浄用洗浄水として、凝集沈殿処理された循環水を利用したが、これに限定されず、砂ろ過や活性炭により処理された高度処理水を利用しても良い。前記洗浄水供給配管12、13のノズル孔は、小さすぎると洗浄水供給配管に非常にたくさんの孔を開ける必要があると同時に、加水される水の衝撃エネルギによる洗浄効果が薄れることから、5mm以上とすることが好ましく、ノズル孔が大きすぎると洗浄する際の打力が低下することから20 mm以下とするのが好ましい。さらに、洗浄効果を高めるため、鉛直方向から回転方向に対して90°の中心角の範囲に加水されるようにノズル孔を設けることが好ましい。
【0038】
さらに、本実施形態においてはトロンメルにおける細粒土の篩い出しのためにφ6の打抜き孔を多数設けたステンレス鋼板を利用したが、孔のサイズや板の種類はこれに限定されず、板としては鉄製等であっても良く、充分な強度を保持した金属であればよい。そして、トロンメルにおける打抜き孔のサイズとしては前述したように特に限定されるものではなく、例えば粒径5mm以下の土壌の篩い落としを目的とする場合には、打抜き孔のサイズをφ6程度とすればよい。
【0039】
なお、前記洗浄装置1には、被処理物として、汚染土壌が付着した農業廃棄物または産業廃棄物、例えば、容器類、プラスチック片やビニールシートなどを投入し、付着した汚染土壌を洗浄して前記廃棄物を浄化することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明の洗浄装置は、砒素などの重金属等による汚染土壌の洗浄ラインに組み入れて、所定の粒径範囲の土壌から汚染物質を洗浄除去して再生土壌が得られるコンパクトで効率的な装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)実施形態の装置構成を示す説明図(正面図)である。(b)同上の説明図(平面図)である。
【図2】(a)ドラム洗浄機の攪拌パドルを示す説明図である。(b)(a)の攪拌パドルの配置を示す説明図(斜視図)である。
【図3】(a)上流側境界部の仕切り板を示す説明図である。(b)下流側境界部の仕切り板を示す説明図である。
【図4】(a)図1の装置の側面図(投入側)である。(b)同(排出側)である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・洗浄装置
2・・・トロンメル(上流側)
3・・・ドラム洗浄機
4・・・トロンメル(下流側)
5・・・境界部(上流側)
6・・・境界部(下流側)
7、7a・・・仕切り板
8・・・固定用治具
9・・・投入シュート
10・・・排出シュート
11・・・アンダーホッパ
12、12a、13・・・洗浄水供給配管
14、14a・・・トロンメルローラ
15、15a・・・スプロケット
16・・・モータ
17・・・チェーン
18・・・スラストローラ
19・・・リング状接触部材
19a・・・リング軌道面
20・・・排出用トラフ
21・・・支持枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2台のトロンメルとその間にドラム洗浄機が配置され、上流側のトロンメルに重金属または/および有機ハロゲン化合物に汚染された汚染土壌を投入して加水し、土壌と水とが混合した状態で洗浄と細粒径の土壌粒子の篩い出しを行なった後、この汚染土壌をドラム式洗浄機で攪拌洗浄して土壌表面の汚染物質を分離し、次に下流側のトロンメルで加水し、土壌と水とが混合した状態で洗浄と残存する細粒径の土壌粒子の篩い出しを行って浄化する汚染土壌の洗浄装置であって、前記上流側および下流側のトロンメルとドラム洗浄機を一体化し、この上流側トロンメルおよび下流側トロンメルとドラム洗浄機とのそれぞれの境界部にその内周に沿って所要の高さの仕切り板を設けたことを特徴とする汚染土壌の洗浄装置。
【請求項2】
前記一体化したトロンメルおよびドラム洗浄機が、上流側から下流側にかけて緩やかに傾斜して設置されたことを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の洗浄装置。
【請求項3】
前記ドラム洗浄機の内周面に前記汚染土壌を下流側に送る機能を有するように攪拌パドルを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の被処理物の汚染土壌の洗浄装置。
【請求項4】
前記一体化された汚染土壌の洗浄装置が、汚染土壌の投入側と排出側でローラにより支持され、投入側で片側回転駆動され、排出側に前記洗浄装置を軸方向に支持するスラストローラを設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の汚染土壌の洗浄装置。
【請求項5】
前記トロンメルに加水される洗浄水が洗浄排水を高度処理した高度処理水を利用したものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の汚染土壌の洗浄装置。
【請求項6】
前記上流側トロンメルおよび下流側トロンメルに加水される洗浄水の水質が異なり、上流側トロンメルに加水される洗浄水が、沈殿処理により得られた処理水であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の汚染土壌の洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄装置が砒素を含む汚染土壌を浄化することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の汚染土壌の洗浄装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−75657(P2006−75657A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248618(P2004−248618)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】