説明

汚染管理システム

【課題】本発明の課題は、危険汚染領域の入退場を管理できるシステムを提供することである。
【解決手段】汚染累積量と入場時刻を記録するICカードと、単位汚染量と汚染限界量とを記憶するメモリと、ICカードに入場時刻を記録する入場時刻記録手段と、ICカードから入場時刻を読み取って、現在時刻から減算して滞在時間を算出する滞在時間算出手段と、滞在時間と単位汚染量を積算して、汚染量を算出する汚染量算出手段と、ICカードから汚染累積量を読み取って、前記汚染量を加算して、更新用の汚染累積量を作成して返信する更新用累積量返信手段と、前記更新された汚染累積量と汚染限界量とを比較して、汚染累積量が限界量を超過したか否かを判定する判定手段と、汚染累積量が限界量を超過したら警告情報を発行する警告情報発行手段と、を備える開閉門装置である、ことを特徴とする汚染管理システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染領域(たとえば、放射能物質の汚染施設や有害物質の貯蔵庫)への入場者に対して、危険物質に晒された汚染状態を管理するシステムに関するものである。
【0002】
従来から、技術者や作業者が放射線物質や有害物質が存在する領域に出入りする時には、放射線被爆の蓄積量や有害物質に暴露された累積時間を管理して、健康被害を未然に防止している。
【背景技術】
【0003】
たとえば、特許文献1では、放射線を取り扱う施設(たとえば原子炉の解体場所)において、作業者には放射線センサを備える個人線量計を携帯させて、被爆量を計測して、この計測情報を管理装置に伝送して集中管理する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−117372号公報(段落0027〜段落0030、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の技術では、作業者が施設で放射線センサを携帯していないと被爆量を計測できないという問題点があった。
また、許容限度を超えた作業者に退去を促すことはできるか、この作業者が施設に再入場しようとしたときに、入場を阻止できないという欠点があった。
【0005】
本発明はこのような不具合を解決するためになされたものであって、本発明の課題は、危険汚染領域の入退場を管理できるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。すなわち、請求項1の発明は、ICカード(100)と開閉門装置(300)を用いる汚染管理システムであって、
前記ICカード(100)は、少なくとも汚染累積量(191)と入場時刻(193)を記録する、ICカードであって、前記開閉門装置(300)は、少なくとも単位汚染量(395)と汚染限界量(393)とを記憶するメモリと、ICカード(100)に入場時刻(193)を記録する入場時刻記録手段(310)と、ICカード(100)から入場時刻(193)を読み取って、現在時刻から減算して滞在時間を算出する滞在時間算出手段(310)と、滞在時間と単位汚染量(395)を積算して、汚染量を算出する汚染量算出手段(320)と、ICカード(100)から汚染累積量(191)を読み取って、前記汚染量を加算して、更新用の汚染累積量(191)を作成して返信する更新用累積量返信手段(330)と、前記更新された汚染累積量(191)と汚染限界量(393)とを比較して、汚染累積量が限界量を超過したか否かを判定する判定手段(340)と、汚染累積量が限界量を超過したら警告情報を発行する警告情報発行手段(350)と、を備える開閉門装置である、ことを特徴とする汚染管理システムである。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、
(1)汚染された領域に入場するときに、汚染センサを携帯することなく、汚染量を計測することが可能である。
(2)許容限度の汚染量を超えた作業者には、汚染領域への再入場を禁止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。
【0009】
図1は、本発明による汚染管理システム1の概要を説明する図である。本発明による汚染管理システム1は、ICカード100と、開閉門装置300から構成されている。汚染管理システム1は、開閉門装置300の管理する領域(=管理領域)へのICカード100の入退場を管理する。
【0010】
開閉門装置300は、管理領域500の入退場を管理する。開閉門装置300は、コンピュータプログラムによって制御される設備である。開閉門装置300は、ICカード・リーダライタを備える。
【0011】
ICカード100は、接触型、または、非接触型のカード媒体である。ICカード100は、汚染管理の用いる情報を保持する。
【0012】
管理領域500は、たとえば汚染された施設や危険物質貯蔵庫である。図1の管理領域500は、管理領域A500a(=微量に汚染された部屋)や管理領域B500b(=中程度に汚染された部屋)や(管理領域C500c(=高度に汚染された部屋)などから構成されている。
【0013】
開閉門装置A300a(開閉門特定情報=「ゲートA」)は、管理領域A500aへのICカード100の入退場を管理する。同様に、開閉門装置B300bは、管理領域B500bへの入退場を管理して、開閉門装置C300cは、管理領域C500cへの入退場を管理する。
【0014】
図2は、ICカードの詳細な構成図である。図2は、ICカード100の詳細な構成図である。ICカード100は、CPU101と、通信部102と、メモリ109を備える。CPU101は、専用のマイクロプロセッサである。通信部102は、接続端子や、アンテナである。通信部102の接続端子は、ICカード・リーダライタの接続端子板と接触接続する。また、通信部102のアンテナは、ICカード・リーダライタのアンテナと無線接続する。メモリ109は、半導体メモリである。メモリ109は、汚染累積量データ191と入場時刻データ193を記憶する。
【0015】
ICカード100は、接触接続、または、無線接続したICカード・リーダライタから、入場時刻データ193を受信してメモリ109に記録する。ICカード100は、ICカード・リーダライタに汚染累積量データ191と入場時刻データ193を送信して、開閉門装置で算出された汚染累積量データ191を受信して、汚染累積量データ191を更新する。
【0016】
図3は、汚染累積量データ191の形式と例である。汚染累積量データ191の項目は、汚染物質識別情報191aと累積値情報191bから構成されている。汚染物質識別情報191aは、汚染物質の名称情報と単位情報である。累積値情報191bは、数値情報である。
【0017】
図3には、汚染累積量データ191が例示されている。たとえば、汚染物質識別情報191aは汚染物質の名称情報が「放射線」で、単位情報が「シーベルト」で、累積値情報191bが「vwxy」である汚染累積量データ191が例示されている。
【0018】
また、汚染物質識別情報191aは汚染物質の名称情報が「NOx」で、単位情報が「mg」で、累積値情報191bが「wxyz」である汚染累積量データ191が例示されている。
【0019】
図4は、本発明による開閉門装置300の詳細な構成図である。開閉門装置300は、少なくとも、CPU301と、ICカード・リーダライタ302と、開閉扉部303と、メモリ309と、専用アプリケーションプログラムを備える。
【0020】
メモリ309は、限界量データ393と、単位汚染量データ395を記憶する。
【0021】
CPU301は、マイクロプロセッサである。ICカード・リーダライタ302は、接続端子板、あるいは、アンテナコイルを備える。メモリ309は、半導体メモリや磁気メモリである。
【0022】
専用アプリケーションプログラムは、CPU501により処理が行われるコンピュータプログラムである。本発明における専用アプリケーションプログラムは、入場時刻記録手段310と、汚染量算出手段320と、累積量更新手段330と、判定手段340と、警告情報発行手段350と、開閉手段360から構成される。
【0023】
入場時刻記録手段310は、ICカード100に入場時刻193を記録する。滞在時間算出手段310は、ICカード100から入場時刻193を読み取って、現在時刻から減算して滞在時間を算出する。汚染量算出手段320は、滞在時間と単位汚染量395を積算して、汚染量を算出する。更新用累積量返信手段330は、ICカード100から汚染累積量191を読み取って、前記汚染量を加算して、更新用の汚染累積量191を作成して返信する。
【0024】
判定手段340は、前記更新用の汚染累積量191と汚染限界量393とを比較して、汚染累積量が限界量を超過したか否かを判定する。警告情報発行手段350は、汚染累積量が限界量を超過している判定結果であれば、警告情報を発行する。
【0025】
開閉手段360は、汚染累積量が限界量を超過しない判定結果であれば開錠して、汚染累積量が限界量を超過している判定結果であれば施錠する。
【0026】
図5は、限界量データ393の形式と例である。限界量データ393の項目は、汚染物質識別情報393aと限界値情報393bから構成されている。汚染物質識別情報393aは、図3の汚染物質識別情報191aと同じである。限界値情報393bは、数値情報である。
【0027】
図5には、限界量データ393が例示されている。たとえば、汚染物質識別情報393aが「放射線」で、単位情報が「シーベルト」で、限界値情報191bが「zyxw」である限界量データ393が例示されている。
【0028】
図6は、単位汚染量データ395の形式と例である。
単位汚染量データ395の項目は、汚染物質識別情報395aと測定基準値395bから構成されている。汚染物質識別情報395aは、図3の汚染物質識別情報191aと同じである。基準値395bは、数値情報である。
【0029】
図6には、単位汚染量データ395が例示されている。たとえば、汚染物質識別情報395aは汚染物質の名称情報が「放射線」で、単位情報が「シーベルト」で、基準値395bが「wxy」である限界量データ393が例示されている。
【0030】
図7と図8は、開閉門装置300の処理手順の説明図である。
【0031】
図7は、作業者がICカード100を携帯して管理領域Aに入場するときの処理手順の説明図である。開閉門装置300a「ゲートA」に作業者がICカード100をかざして管理領域Aに入場するときには、判定手段340は、ICカード100から汚染累積量データ191を読み取り、汚染限界量データ393を比較して、汚染累積量が限界量を超過したか否かを判定する(図7(1))。
【0032】
汚染累積量が限界量を超過していなければ作業者の入場を許可して、開閉手段360は、開錠する。入場時刻記録手段310は、ICカード100に入場時刻データ193「12:10」を送信する。ICカード100はメモリ109に入場時刻データ193「12:10」を記録する(同(2))。
【0033】
汚染累積量が限界量を超過していれば入場を不許可にして、開閉手段360は施錠する。警告情報発行手段350は、警告情報を発行して作業者に注意を促す(同(3))。
【0034】
同様に、開閉門装置300b「ゲートB」においてICカード100が管理領域Bに入場するときには、ICカード100の汚染累積量が限界量を超過していなければ入場を許可して、汚染累積量が限界量を超過していれば入場を不許可にする。開閉門装置300c「ゲートC」においてICカード100が管理領域Cに入場するときには、ICカード100の汚染累積量が限界量を超過していなければ入場を許可して、汚染累積量が限界量を超過していれば入場を不許可にする。
【0035】
図8は、退場するときの処理手順の説明図である。
開閉門装置C300c「ゲートC」において作業者がICカード100をかざして管理領域C500cから退場するときには、滞在時間算出手段310がICカード100から入場時刻193「12:20」を読み取って、現在時刻「12:40」から減算して滞在時間「20分」を算出する。汚染量算出手段320は、滞在時間「20分」と単位汚染量395を積算して、今回の汚染量を算出する(図8(1))。
【0036】
更新用累積量返信手段330は、ICカード100から汚染累積量191を読み取って、図8(1)で算出した汚染量を加算して、汚染累積量を算出する。ICカード100は、開閉門装置C300cから汚染累積量を受信して、汚染累積量191を更新する(同(2))。
【0037】
汚染累積量と限界量を比較して、汚染累積量が限界値情報を超えていれば、警告情報発行手段350は、警告情報を作業者に発行する(同(3))。
【0038】
ICカード100の汚染累積量が限界量を超過したか否かにかかわらず、開閉手段360は開錠する。そこで、作業者はICカード100を携帯して管理領域C500cから退場して、管理領域B500bに移動する。
【0039】
ここで、管理領域C500cから退場するときの現在時刻「12:40」は、管理領域B500bに入場するときの入場時刻193「12:40」となる。
【0040】
なお、管理領域C500cから退場した作業者は、管理領域B500bにはいるが、汚染累積量が限界量を超えているので、同様に、開閉門装置B300bにカードをかざすと警告情報が発行されて、開錠される。作業者が管理領域B500bを退場して管理領域A500aに移動する。同様に、ICカード100の汚染累積量が限界量を超えているので、作業者がICカード100を開閉門装置A300aにかざすと警告情報が発行されて、開錠されて、管理領域A500aから退場する。
【0041】
このように、作業者がICカード100を携帯して管理領域500から退場するときには、ICカード100の汚染累積量が限界量を超過した場合に開閉門装置300が、警告情報を発行することによって作業者に注意を促し、開錠するので、確実に退場させることが可能である。
【0042】
(実施例1)
次に、管理領域500の汚染濃度情報を計測して、管理領域500での汚染量を算出する例を説明する。
【0043】
図9は、汚染センサ304を備える開閉門装置300の詳細な構成図である。開閉門装置300は、汚染センサ304と、図4に記載のハードウエアを備える。汚染センサ304は管理領域500の汚染量を計測する。
【0044】
メモリ309は、単位汚染量推移データ397と限界量データ393を記憶する。位汚染量推移データ397は、測定時刻情報と測定基準値を対応付けたデータである。限界量データ393は、図4の限界量データ393と同じである。
【0045】
専用アプリケーションプログラムは、単位汚染量データ算出手段370と、図4に記載の手段から構成される。単位汚染量推移データ作成手段370は、汚染センサ304が計測する汚染量の値を読み取って、これを測定基準値として、測定基準値に測定時刻を対応付けて単位汚染量推移データを作成する。汚染量算出手段320は、単位汚染量推移データ397と、入場時刻データ193と現在時刻を用いて、該当する時間範囲の測定基準値を積分して汚染量を算出する。
【0046】
図10は、単位汚染量推移データ397の形式と例である。単位汚染量推移データ397の項目は、汚染物質識別情報397aと測定時刻情報397bと測定基準値397cから構成されている。測定時刻情報397bと測定基準値397cは対応付けられている。測定時刻情報397bと測定基準値397cの対は、測定された個数分が存在する。汚染物質識別情報397aは、図6の汚染物質識別情報395aと同じである。測定時刻情報397bは、日時である。測定基準値397cは、図6の基準値395bと同じである。
【0047】
図10には、単位汚染量推移データ397が例示されている。たとえば、汚染物質識別情報397aが「放射線」で、単位情報が「シーベルト」で、測定時刻情報397bと測定基準値397cの対が、「2007/02/01/09:30」と「xyzyzx」の対や、「2007/02/01/10:30」と「vzvyvx」の対などの単位汚染量推移データ397が例示されている。
【0048】
図11は、汚染量算出の説明図である。図11の(a)は、縦軸が測定基準値で、横軸が時刻の単位汚染量推移データの棒グラフである。図11の(b)は、入場時刻データ193が「9:30」で、退場した時刻が「12:30」であるときの、棒グラフの面積が今回の汚染量に相当することを示している。
【0049】
次に、変形例を説明する。
(変形例1)
警告情報を、電子メールを用いて予め定めた宛先に送信してもよい。
【0050】
(変形例2)
管理領域に入場したときに、汚染累積量と単位汚染量を用いて、限界量に達する時間を予測して、滞在可能時間を通知してもよい。
【0051】
以上詳しく説明したように、本願発明によれば、
(1)汚染された領域に入場するときに、汚染センサを携帯することなく、汚染量を計測することが可能となった。
(2)許容限度の汚染量を超えた作業者には、汚染領域への再入場を禁止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による汚染管理システム
【図2】ICカードの詳細な構成図
【図3】汚染累積量データ191
【図4】本発明による開閉門装置の詳細な構成図
【図5】限界量データ393
【図6】単位汚染量データ395
【図7】入場したときの処理手順の説明図
【図8】退場したときの処理手順の説明図
【図9】汚染センサ304を備える開閉門装置300の詳細な構成図
【図10】単位汚染量推移データ397の形式と例
【図11】汚染量算出の説明図
【符号の説明】
【0053】
1 汚染管理システム
100 ICカード
191 汚染累積量
193 入場時刻
300 開閉門装置
310 滞在時間算出手段
320 汚染量算出手段
330 更新用累積量返信手段
340 判定手段
350 警告情報発行手段
370 単位汚染量推移データ作成手段
393 汚染限界量
395 単位汚染量
500 管理領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードと開閉門装置を用いる汚染管理システムであって、
前記ICカードは、
少なくとも汚染累積量と入場時刻を記録する、
ICカードであって、
前記開閉門装置は、
少なくとも単位汚染量と汚染限界量とを記憶するメモリと、
ICカードに入場時刻を記録する入場時刻記録手段と、
ICカードから入場時刻を読み取って、現在時刻から減算して滞在時間を算出する滞在時間算出手段と、
滞在時間と単位汚染量を積算して、汚染量を算出する汚染量算出手段と、
ICカードから汚染累積量を読み取って、前記汚染量を加算して、更新用の汚染累積量を作成して返信する更新用累積量返信手段と、
前記更新された汚染累積量と汚染限界量とを比較して、汚染累積量が限界量を超過したか否かを判定する判定手段と、
汚染累積量が限界量を超過したら警告情報を発行する警告情報発行手段と、
を備える開閉門装置である、
ことを特徴とする汚染管理システム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−209256(P2008−209256A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46518(P2007−46518)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】