説明

汚染防止装置、汚染防止方法、露光装置、及びパターン付きウエハの製造方法

【課題】簡便にEUVマスクの汚染を防止することができる汚染防止装置、汚染防止方法、並びにそれを用いた露光装置、パターン付きウエハの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様にかかる汚染防止装置は、波長166nm以下の真空紫外光を発生する光源と、光源からの真空紫外光のビームをEUV露光装置101内に収容されたEUVマスク108に対して照射させる光学系(ミラー104a、104b等)と、を備えるものである。光源としては、フッ素分子レーザを出射するレーザ発振器110や、アルゴンダイマー、クリプトンダイマー、あるいはフッ素分子からの自然放出増幅光を出射するVUV−ASE発生装置210を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染防止装置、汚染防止方法、露光装置、及びパターン付きウエハの製造方法に関し、特に詳しくは、EUV(Extremely UltraViolet)マスクの汚染を防止する汚染防止装置、汚染防止方法、並びにそれを用いた露光装置、パターン付きウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細化を担うリソグラフィ技術に関しては、現在、露光波長193nmのArFエキシマレーザを露光光源としたArFリソグラフィが量産適用されている。また、露光装置の対物レンズとウエハとの間を水で満たして、解像度を高める液浸技術(ArF液浸リソグラフィと呼ばれる。)も量産に利用され始めている。さらに一層の微細化を実現するために、露光波長13.5nmのEUVL(Extremely UltraViolet Lithography)の実用化に向けて様々な技術開発が行われている。
【0003】
EUVマスクの構造に関して、図6を用いて説明する。図6に示すように、熱膨張性ガラスから成る基板11の上に、EUV光を反射させるための多層膜12が付けられている。多層膜12は、通常、モリブデンとシリコンを交互に数十層積み重ねた構造になっておいる。これによって、波長13.5nmのEUV光を垂直で約65%も反射させることができる。この多層膜12の上にEUV光を吸収する吸収体14が付けられる。この吸収体14の有無によって、EUV光を反射させる部分と反射させない部分とが形成される。従って、ウエハ上にパターン露光できるようになる。ただし吸収体14と多層膜12の間には保護膜(バッファレイヤー、及びキャッピングレイヤーと呼ばれる膜)13が付けられる。このパターン付きEUVマスクを本発明では単にEUVマスクと呼ぶものとする。
【0004】
EUVLにおける実用上の課題の一つとして、EUV露光装置中で露光する間に、EUVマスクのパターン面に炭素の塊が付着していくことがある。これは、カーボンコンタミ、あるいはカーボン汚染と呼ばれている。この原因に付いて説明する。内部を真空に排気されたEUV露光装置内に僅かに残る炭素を含む高分子が、EUVマスクのパターン面の近傍に存在することがある。この場合、EUV光の照射によって、高分子が炭化し、炭素の塊(炭素塊と呼ぶ。)となる。そして、この炭素塊が、パターン面上に付着、堆積していくと考えられている。その高分子はおもにレジストから発生すると考えられているため、この発生を抑制することは困難である。
【0005】
そこで、付着した炭素を除去する手法が、検討されている(非特許文献1、及び非特許文献2に)。非特許文献1では、EUVマスクを原子状水素(水素ラジカルとも呼ばれる。)によって分解除去する手法が開示されている。非特許文献2では、EUVマスクを酸素雰囲気中に配置し、波長172nmのVUV光を照射する手法が開示されている。波長172nmのVUV光の照射によって、酸素からオゾンが発生する。このオゾンによって炭素から二酸化炭素を生成して除去している。なお、VUVとはVacuum UltraVioletの略であり、波長200nm未満の真空紫外光のことを意味する。
【0006】
さらにまた、アルゴンを無声放電することによって発生する波長126nmのVUV光を用いて、ミラー等の洗浄を行うことができる装置が市販されている。この装置には、細長い円筒状のランプが用いられている。波長126nmのVUV光は、アルゴンダイマー(以下、Ar2と示す。)からの自然放出光である。なお、これに関しては、例えば、VUV照射装置を製品化しているメーカのホームページ(非特許文献3)においてアルゴンエキシマランプとして紹介されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】2008年 半導体MIRAIプロジェクト成果報告会 報告書
【非特許文献2】"A study of cleaning characteristics for EUV mask blanks,"2007 International EUV Symposium, 29−31 Oct, Sapporo, Japan
【非特許文献3】http://www.ntp−vuv.com/index.html[平成22年12月17日検索]インターネット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1、2のカーボン除去手法に基づくEUVマスクのクリーニング法では、EUVマスクを水素や酸素雰囲気中に配置する必要がある。EUVマスクをクリーニングする場合、EUV露光装置からEUVマスクを取り出している。そして、専用のクリーニング装置内に挿入し、その中で前述した化学反応を起こす必要がある。
【0009】
ところが、特にEUV露光装置による露光処理速度を上げるためにEUV光のパワーを高めようとするならば、炭素が堆積する速度も増してしまう。このことから、EUV露光装置から頻繁にEUVマスクを取り出してクリーニングする必要が生じてしまう。つまり、露光が頻繁に中断されることから、露光のスループットが大幅に低下することが懸念される。現状の低パワーの露光機で8時間の露光した場合、カーボンコンタミによって、コントラストが5%程度低下することが知られている。将来、EUV光のパワーが100Wを超す露光機では、極めて頻繁にクリーニングする必要がある。
【0010】
さらに、EUVマスクをEUV露光装置とクリーニング装置との間を頻繁に行き来することになる。EUVマスクにはパーティクル付着を防止するペリクルが無いため、パーティクルが付着する可能性が高まってしまうことも深刻な問題である。
【0011】
一方、前述したVUV照射装置を用いるならば、Ar2からの波長126nmのVUV光が発生する。波長126nmのVUV光は、表1、表2に示したように、炭素間の結合エネルギーよりも高い。なお、表1は、炭素の結合解離エネルギーの一例を示す表であり、表2は、種々のVUV光源による光子エネルギーを示す表である。
【0012】
【表1】

【表2】

【0013】
波長126nmのVUV光を照射することによって、炭素が容易に分解・除去されることが容易に考えられる。しかしながら、従来のVUV照射装置から取り出されるVUV光の強度は単位平方センチ面積当たり、数mWと非常に低い。しかも発生するVUV光はランプから広がって進むため、ランプからの距離が離れると光強度がさらに低下していく。このことから、もしもEUVマスクのクリーニングに適用する場合は、EUVマスクをVUV照射装置内におけるランプ直下まで運び入れる必要がある。従って、上記と同様に、スループットの低下や、パーティクルの付着という問題が生じる。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡便にEUVマスクの汚染を防止することができる汚染防止装置、汚染防止方法、並びにそれを用いた、露光装置、パターン付きウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様に係る汚染防止装置は、波長166nm以下の真空紫外光を発生する光源と、前記光源からの真空紫外光のビームをEUV露光装置内に収容されたEUVマスクに対して照射させる光学系と、を備えるものである。この構成によって、簡便にEUVマスクの汚染を防止することができる。
【0016】
本発明の第2の態様にかかる汚染防止装置は、上記の汚染防止装置であって、前記真空紫外光がフッ素分子レーザからのレーザ光であることを特徴とするものである。これにより、汚染防止に適した真空紫外光を供給することができる。
【0017】
本発明の第3の態様にかかる汚染防止装置は、上記の汚染防止装置であって、前記真空紫外光がアルゴンダイマー、クリプトンダイマー、又はフッ素分子からの自然放出増幅光であることを特徴とするものである。これにより、汚染防止に適した真空紫外光を供給することができる。
【0018】
本発明の第4の態様にかかる露光装置は、上記の汚染防止装置と、前記EUVマスクが収容されるチャンバと、前記チャンバに設けられたウインドと、を備え、前記汚染防止装置からの真空紫外光のビームが前記ウインドを介して、前記EUVマスクに照射されるものである。これにより、汚染によるスループットの低下を防ぎ、生産性を向上することができる。
【0019】
本発明の第5の態様にかかる露光装置は、上記の露光装置であって、前記真空紫外光を、露光対象の基板に露光光を導くミラーに入射させて、前記ミラーの汚染を防止することを特徴とするものである。これにより、生産性を向上することができる。
【0020】
本発明の第6の態様にかかる汚染防止方法は、波長166nm以下の真空紫外光を発生するステップと、前記真空紫外光のビームをEUV露光装置内に収容されたEUVマスクに対して照射させるステップと、を備えるものである。この構成によって、簡便にEUVマスクの汚染を防止することができる。
【0021】
本発明の第7の態様にかかる汚染防止方法は、上記の汚染防止方法であって、前記真空紫外光がフッ素分子レーザからのレーザ光であることを特徴とするものである。これにより、汚染防止に適した真空紫外光を供給することができる。
【0022】
本発明の第8の態様にかかる汚染防止方法は、上記の汚染防止方法であって、前記真空紫外光がアルゴンダイマー、クリプトンダイマー、又はフッ素分子からの自然放出増幅光であることを特徴とするものである。これにより、汚染防止に適した真空紫外光を供給することができる。
【0023】
本発明の第9の態様にかかる汚染防止方法は、上記の汚染防止方法であって、前記EUVマスクを用いた露光プロセス中に、前記真空紫外光が、前記EUVマスクに照射されているものである。これにより、汚染によるスループットの低下を防ぎ、生産性を向上することができる。
【0024】
本発明の第10の態様にかかる汚染防止方法は、上記の汚染防止方法で、汚染を防止されたEUVマスクを用いて、レジストを露光するステップと、前記EUVマスクを用いて露光されたレジストを現像するステップと、を備えるものである。これにより、生産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡便にEUVマスクの汚染を防止することができる汚染防止装置、汚染防止方法、並びにそれを用いた露光装置、パターン付きウエハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】炭素塊の分子構造例の一部を示す図である。
【図2】本実施の形態1にかかる露光装置の構成を示す図である。
【図3】本実施の形態1にかかる露光装置の光学系の構成を示す図である。
【図4】本実施の形態2にかかる露光装置の構成を示す図である。
【図5】本実施の形態2にかかる汚染防止装置に用いられる光源の構成を示す図である。
【図6】EUVマスクの構造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0028】
本発明では、上述した目的を達成するために、波長166nm以下でビーム状の真空紫外光を、EUVマスクに照射させている。具体的には、露光装置の外側の光源を配置して、指向性のある真空紫外光のビームを露光装置内のEUVマスクに照射させる。波長166nmの光の光子エネルギーは1モル当たり718kJに相当する(表2参照)。一方、表1に示した炭素の二重結合の解離エネルギーの一例によると、波長166nm以下の光子によって、炭素の二重結合を切断できることになる。もちろん、波長166nm以下の光子によって、炭素の一重結合も切断できる。しかし、炭素の三重結合の結合解離エネルギーは1モル当たり960kJとされている。このため、これを切断するには、波長124nm以下の真空紫外光を照射する必要がある。ただし、表1に示した結合解離エネルギーは一例であり、分子構造の違いによって、多少異なることが知られている。波長126nmの真空紫外光によって、炭素の三重結合が切断できる場合もある。
【0029】
一方、EUVマスク上に付着する炭素塊は多くの炭素が結合した高分子である。このため、例えば、図1に示したような分子構造になっていると考えられる。つまり、炭素間の二重結合、炭素間の一重結合、あるいは炭素と水素の一重結合で構成されている。このため、これらの結合が切断されると、炭素単体、あるいは低分子の炭素塊が遊離する。その際に、EUVマスクのパターン面は下方を向いていることから、遊離した炭素塊は落下して除去される。
【0030】
なお、炭素塊がもしも炭素の三重結合を有するならば、もう一方の結合は一重結合になる。その結果、波長166nm以下のVUV光が照射されて、その一重結合が切断される。すると、三重結合を一つだけ含む非常に低分子の炭素化合物に分解される。このことから、低分子の炭素化合物が残りの高分子から遊離する。従って、本発明で利用するVUV光に関しては、炭素の三重結合を直接切断できるような短波長である必要はない。
【0031】
以上より、種々のVUV光源の中でも波長166nm以下に相当するAr2、Kr2、あるいはF2からのVUV光を照射することで、炭素が分解する。このため、カーボン汚染を防止することができると考えられる。
【0032】
特に本発明では、ビーム状のVUV光を用いることが大きな特徴の一つである。それによって、VUV光を数メートル伝搬できる。その結果、EUV露光装置の外でVUV光を発生させても、それをEUV露光装置内の所定の位置に配置されているEUVマスクまで導くことが容易になる。したがって、EUV露光装置によって、EUV露光している間でも、EUVマスクにVUV光を照射し続けることが可能になる。
【0033】
一方、波長166nm以下でビーム状のVUV光を具体的に供給するためには、例えば、フッ素分子レーザ発振器(以下、F2レーザ発振器と示す。)から取り出される波長157nmのレーザ光を用いることができる。レーザ光は高い指向性を有しているため、ロスがほとんどなく、露光装置内まで伝播させることができる。
【0034】
また、Ar2やKr2(クリプトンダイマー)のVUV光について、放電ではレーザ発振が困難であることが知られている。つまり、Ar2やKr2をレーザ光として発生させることは、電子ビーム励起方式によって可能であるが、その場合、装置が大型化してしまい、また繰り返し数が1Hz程度と極めて低いことが問題になる。
【0035】
そこで本発明では、アルゴンやクリプトンを含むガスを一方向に長い形状内で放電させた際に、長手方向から取り出される自然放出増幅光(Amplified Spontaneous Emission、以下ASEとする)を用いることもできる。
【0036】
ASEは指向性の高いビームであることが知られている。これによって、ASEを発生させる装置をEUV露光装置の外に配置しても、ASEだけをEUV露光装置内に配置されているEUVマスクまで伝搬させて照射させることができる。
【0037】
以上のように本発明では、波長157nm、147nm、あるいは波長126nmのVUV光のビームをEUVマスクに照射させることで、EUVマスク上に炭素が堆積することがなく、カーボン汚染を抑制できる。EUVマスクをカーボン汚染によるクリーニングのために、EUV露光装置から取り出す必要がなくなる。よって、EUVマスク上にパーティクルが付着する可能性を大幅に低減できる。特に、Kr2やF2のVUV光を用いることで、光源の取り扱いが容易になる。
【0038】
実施の形態1.
本実施形態に係る汚染防止装置、及び露光装置について、図2を用いて説明する。図2は、汚染防止装置100を有する露光装置101の全体構成を示す図である。露光装置101は、縮小投影光学系を収容するチャンバ101aと、チャンバ101aに取り付けられた汚染防止装置100を有している。なお、図2では、EUV露光装置101の縮小投影光学系等は省略されている。
【0039】
露光装置101のチャンバ101a内には、EUVマスク108、マスクステージ107、ウエハ109、ウエハステージ102が設けられている。また、チャンバ101a内には、凸面ミラー106と、可動式ミラー112が設けられている。凸面ミラー106は、EUVマスク108のカーボンコンタミを防止するために用いられる。また、可動式ミラー112は、露光装置の縮小投影光学系に用いられているミラーのカーボンコンタミを防止するために用いられる。チャンバ101aの側面には、ウインド105が取り付けられている。ウインド105はMgF製であり、VUV光が透過する。
【0040】
EUVマスク108は、マスクステージ107によって保持される。EUVマスク108は、パターン面が下向きで、マスクステージ107に固定される。露光対象となるウエハ109は、ウエハステージ102上に載置されている。ウエハ109には、カーボンコンタミの原因となるレジスト(図示せず)が形成されている。ウエハ109は上向きで、ウエハステージ102上に載置されている。そして、マスクステージ107の下方に、ウエハステージ102が配置される。
【0041】
なお、EUVマスク108も含めて、半導体用マスクのパターン面の最大サイズは、通常、長方形となっており、具体的には、幅104mm、長さ132mmである。そして、スキャン型露光装置における露光中は、132mmの長手方向にスキャンされる。本実施形態では、スキャン方向は、図1の紙面と垂直な方向となっている。
【0042】
露光装置101には、汚染防止装置100が取り付けられている。汚染防止装置100には、EUV光源となるレーザ発振器110が設けられている。レーザ発振器110は、EUV露光装置101の外側の近傍に設置されている。レーザ発振器110は、F2レーザ発振器である。従って、レーザ光L1は、指向性を有するレーザビームとなる。
【0043】
レーザ発振器110は、パイプ103の一端に連結されている。レーザ発振器110から取り出される波長157nmのレーザ光L1は、ステンレス製のパイプ103中を伝搬する。パイプ103の中には、ミラー104a、104bが設けられている。パイプ103の他端は、ウインド105の位置において、チャンバ110aに連結されている。
【0044】
レーザ発振器110からのレーザ光L1は、ミラー104a、104bで折り返され、ウインド105に入射する。ウインド105は、露光装置101のチャンバ101aに取り付けられている。レーザ光L1は、ウインド105を通過して、EUV露光装置101のチャンバ101a内に進む。なお、チャンバ110a内は、真空排気されている。また、パイプ103内は、窒素ガスが充満されている。
【0045】
チャンバ101a内に進んだレーザ光L2は、凸面ミラー106に入射する。そして、凸面ミラー106で反射したレーザ光L3は、EUVマスク108のパターン面に入射する。ここでは、凸面ミラー106を用いているため、レーザ光L3が広がりながら進み、EUVマスク108に入射する。ただし、照射されるのは、EUVマスク108の全パターン面における長方形領域である。すなわち、EUVマスク108の長手方向では、EUVマスク108の一部のみに、レーザ光L3が照射される。EUVマスク108の短手方向では、EUVマスク108の略全体に、レーザ光L3が照射される。EUVマスク108の長手方向(紙面と垂直方向)に関して、レーザ光L2が入射する長方形領域は、EUVマスク108の一部分である。長方形領域の短辺方向がEUVマスク108の長手方向に相当する。EUVマスク108がマスクステージ107でスキャンすることで、レーザ光L3がEUVマスク108の全面を照射できるようになる。露光装置のスキャンを利用することで、露光プロセス中でも、容易に、レーザ光L3をEUVマスクに照射することができる。これにより、EUVマスク108をチャンバ110aから取り出さずに、処理することが可能となる。
【0046】
以上によって、EUVマスク108のパターン面に炭素が付着しても、直ぐに分解して落下する。EUVマスク108のパターン面(下側を向いている面)に炭素が堆積することを抑制できる。すなわち、炭素が、露光に影響する炭素塊に成長する前に、炭素結合が分解する。よって、簡便にカーボンコンタミを防止することができる。さらに、EUVマスクを露光装置101からクリーニング装置に移動しなくても良くなる。これにより、搬送時にパーティクルが付着するのを防ぐことができる。露光プロセス中であっても、レーザ光L3がEUVマスク108に入射させることができる。すなわち、EUV露光のEUV光を照射すると同時に、EUV光が入射している位置と異なる位置にVUV光を照射する。こうすることで、露光プロセスと汚染防止プロセスを並行して行うことができる。スループットが低下するのを防ぐことができ、生産性を向上することができる。
【0047】
次に、露光装置101の縮小投影光学系について、図3を用いて説明する。図3は、露光装置101の縮小投影光学系111の構成を示す側面図であり、具体的には、ウインド105が設けられた側面から見た図である。縮小投影光学系111は6枚のミラー(M1〜M6)で構成される一般的なEUV露光装置用のものである。従って、縮小投影光学系111は、ミラーM1乃至ミラーM6を有している。縮小投影光学系111は、チャンバ101a内に設けられる。
【0048】
露光用の光EUV1は、EUVマスク108に入射する。そして、光EUV1は、EUVマスク108のパターン(図6を参照)に応じて反射される。EUVマスク108で反射した光EUV2は、ミラーM1乃至ミラーM6で順番に反射されて、ウエハ109に入射する。これにより、ウエハ109上のレジストに光EUV2が照射される。すなわち、EUVマスク108のパターンが、ウエハ109上に縮小投影される。
【0049】
ここで、ミラーM1、ミラーM3、及びミラーM5は、反射面が上向きになっており、ミラーM2、ミラーM4、及びミラーM6は、反射面が下向きになっている。また、凸面ミラー106は、ミラーM2よりも上方に配置されている。ミラーM1乃至ミラーM6は、例えば、凹面鏡や凸面鏡である。
【0050】
本実施形態で用いられている凸面ミラー106は、EUVの縮小投影光学系111を妨げないようになっている。凸面ミラー106は、EUV露光装置101の縮小投影光学系111の一番上のミラーM2とEUVマスク108との間に配置されている。図2の紙面と垂直な方向において、凸面ミラー106は光EUV1と光EUV2を遮らない場所に配置されている。。従って、図2に示したように、レーザ光L2を凸面ミラー106に下方から入射させることができる。露光プロセス中であっても、汚染を防止することができる。すなわち、凸面ミラー106が露光の妨げとならないため、露光中の汚染防止プロセスが可能となる。
【0051】
レーザ発振器110からのレーザ光L2を、縮小投影光学系111のミラーのカーボンコンタミを防ぐために利用しても良い。例えば、縮小投影光学系111による露光が中断している状態において、可動式ミラー112をミラーM2、M4又はM6の下方に移動する。例えば、ミラーM2の直下、すなわち、ミラーM2とミラーM3の間に、可動式ミラー112をスライド移動する。そして、可動式ミラー112を介して、レーザ発振器110からのレーザ光L2を、ミラーM2に照射する。これにより、ミラーM2に付着した炭素塊を分解することができる。そして、分解した炭素塊は、ミラーM2の反射面から落下する。このようにすることで、ミラーM2のカーボンコンタミを防止することができる。なお、レーザ光L2を可動式ミラー112に入射させるために、例えば、ミラー104bの角度を変えても良い。すなわち、ミラー104bを斜めに向けて、レーザ光L2が斜め下方に進むように調整すれば良い。あるいは、パイプ103やチャンバ108a内に別のウインドやミラーを設けてもよい。また、可動式ミラー112を、洗浄するミラーに応じて、複数用意してもよい。レーザ光L2をミラーM2、M4、M6に入射させる構成は特に限られるものではない。
【0052】
同様に、ミラーM4、ミラーM6にレーザ光L2を照射する場合、可動式ミラー112をミラーM4、ミラーM6の直下に移動させればよい。具体的には、ミラーM4にレーザ光L2を照射する場合、ミラーM4とミラーM5の間に、可動式ミラー112をスライド移動させる。ミラーM6にレーザ光L2を照射する場合、ミラーM4とウエハ109の間に、可動式ミラー112をスライド移動させる。これにより、下向きのミラーM2,M4、及びミラーM6にレーザ光を照射することができる。よって、これにより、ミラーM2、M4、M6表面の炭素塊を分解することができる。そして、分解した炭素塊は、ミラーM4、M6の反射面から落下する。このようにすることで、ミラーM4、ミラーM6のカーボンコンタミを防止することができる。よって、ミラーの反射率の低下を防ぐことができる。
【0053】
下向きのミラーM2、M4、M6の反射面は、ウエハ109を向いている。よって、ウエハ109のレジストによるカーボンコンタミの進行が早い。すなわち、ミラーM2、M4、M6では、反射面が上向きのミラーM1,M3,M5よりも、レジストに含まれる炭素が、反射面に付着しやすい。しかしながら、可動式ミラー112を用いて、ミラーM2、M4、M6にレーザ光L2を照射することが、カーボンコンタミを防ぐことができる
【0054】
実施の形態2.
本発明の実施形態2について図4を用いて説明する。図4は汚染防止装置と露光装置の構成を示す図である。実施の形態2では、実施の形態1と異なる光源を用いている。具体的井は、汚染防止装置200では、VUV−ASE発生装置210を光源として用いている。このVUV−ASE発生装置210の詳細構造は後述する。なお、その他の構成については、基本的に実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
VUV−ASE発生装置210から取り出される波長147nmの光ASE1は、ステンレス製のパイプ203中のミラー204a、204bで折り返される。そして、光ASE1は、露光装置201のチャンバ201aに取り付けられたMgF製のウインド205を通過して、露光装置201内に進む。露光装置201内に入った光ASE2は、直接、EUVマスク208に斜め方向から照射する。すなわち、本実施の形態では、実施の形態1で示した凸面ミラー106が設けられていない。なお、パイプ203中には、ヘリウムガスが充満されている。
【0056】
以上のように、汚染防止装置200では、EUVマスク208までASEを導いている。このために、EUVマスク208の直下にミラー等を配置しなくても、ASEをEUVマスク208に照射できる。EUVマスク208のパターン面に炭素が堆積しようとしても、直ぐに分離していくため、炭素が堆積することはない。
【0057】
ここで図5を用いて、VUV−ASE発生装置210の詳細を以下に説明する。VUV−ASE発生装置210には、一般的なガスレーザのレーザチャンバと同様なガスチャンバ212が用いられている。ガスチャンバ212の中には細長い一対の電極213a、213bが配置されている。一方の電極213aは高電圧電源214と電気的に繋がれており、他方の電極213bはアース215に繋がっている。これら細長い一対の電極213a、213bは、約1m程度と長くなっており、電極間隔は2〜5mm程度と狭くなっている。
【0058】
なお、高電圧電源214とは、実際には高電圧に印加されたコンデンサに接続されていることを示しており、図示されていないスイッチ動作によって、コンデンサからパルス状の大電流が流れるようになっている。
【0059】
ガスチャンバ212の左側にはミラー216が、光軸(光軸とは、細長い一対の電極213a、213bの長手方向で、これらの中間に位置する軸である。)に対して垂直に取り付けられている。ガスチャンバ212の右側にはウインド217が取り付けられている。ミラー216は波長147nmにおいて高い反射率を有するアルミミラーか、あるいは多層膜ミラーを用いることが好ましい。一方、ウインド217は、波長147nmにおいて高い透過率を有するフッ化マグネシウム(MgF)の平板が好ましい。なお、図5では、ウインド217は、光軸に対して少し傾けて取り付けられているが、レーザ装置ではないことを強調するために傾けて描いたものである。よって、実際には、ウインド217をミラー216と同様に光軸に対して垂直に配置しても良い。
【0060】
ガスチャンバ212内にクリプトンを8気圧程度、及びバッファガスとしてヘリウムを1気圧程度充填させる。そして、高電圧電源214からの高電圧パルスを電極213aに印加する。このようにすることで、一対の電極213a、213b間で強いパルス放電が発生する。電極213a、213bの長手方向に、クリプトンダイマー(Kr2)からの波長147nmの光ASE1が発生する。光ASE1は、ウインド217から取り出される。ASEI発生装置210で発生した光ASE1が、ウインド205を介して、露光装置201内に進む。
【0061】
なお、本実施形態では、Kr2から発生する波長147nmのVUV光をASEとして発生させる装置に関して示されているが、異なる波長のASE発生装置を用いてもよい。例えば、アルゴンをガスチャンバ212に詰め込んで動作させても良い。この場合、波長126nmのVUV光がASEとして得られる。アルゴンガスを用いることで、ガスが安価に利用できるメリットがある。
【0062】
あるいは、フッ素ガスをガスチャンバ212に詰め込んで動作させても良い。この場合は、実施形態1で示したレーザ発振器110と同じ波長157nmのVUV光がASEとして発生する。そのメリットとしては、Kr2やAr2のASE光よりも高いパワーのASEが比較的容易に取り出せることである。またレーザ光でなく、ASE光として出すことのメリットとしては、レーザ用共振器が不要であるため、部品点数が減り、厳密なアライメントが不要になる。
【0063】
EUVマスク汚染防止装置は、以上に説明したように、カーボンコンタミによるクリーニングのために、EUVマスクを露光装置から取り出す必要がなくなったことから、露光のスループットが大幅に向上しただけでなく、パーティクルが付着する可能性も大幅に低減できた。そして、上記のEUVマスク108、208を用いて、ウエハ109、209上のレジストを露光する。そして、レジストを現像し、エッチング工程を経ることで、ウエハ上にパターンを形成することができる。このようにすることで、高い生産性で、パターン付きウエハを製造することができる。
【0064】
また、実施の形態1、2を適宜組み合わせても良い。例えば、実施の形態2の構成において、露光用のミラーのカーボンコンタミを防止しても良い。さらに、実施の形態1の構成において、VUV−ASE発生装置210のASEをカーボンコンタミ防止に利用しても良い。実施の形態2の構成において、レーザ発振器110のレーザ光をカーボンコンタミ防止に利用しても良い。また、本実施の形態にかかる汚染防止装置は、露光装置に対して、後から取り付けることができる。
【符号の説明】
【0065】
11 基板
12 多層膜
13 保護膜
14 吸収体
101 EUV露光装置
101a チャンバ
102 ウエハステージ
103 パイプ
104a ミラー
104b ミラー
105 ウインド
106 凸面ミラー
107 マスクステージ
108 EUVマスク
109 ウエハ
110 レーザ発振器
112 可動式ミラー
201 EUV露光装置
201a チャンバ
202 ウエハステージ
203 パイプ
204a ミラー
204b ミラー
205 ウインド
206 凸面ミラー
207 マスクステージ
208 EUVマスク
209 ウエハ
212 ガスチャンバ
213a、213b 電極
214 高電圧電源
215 アース
216 ミラー
217 ウインド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長166nm以下の真空紫外光を発生する光源と、
前記光源からの真空紫外光のビームをEUV露光装置内に収容されたEUVマスクに対して照射させる光学系と、を備えるEUVマスクの汚染防止装置。
【請求項2】
前記真空紫外光がフッ素分子レーザからのレーザ光であることを特徴とする請求項1に記載の汚染防止装置。
【請求項3】
前記真空紫外光がアルゴンダイマー、クリプトンダイマー、又はフッ素分子からの自然放出増幅光であることを特徴とする請求項1の汚染防止装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の汚染防止装置と、
前記EUVマスクが収容されるチャンバと、
前記チャンバに設けられたウインドと、を備え、
前記汚染防止装置からの真空紫外光のビームが前記ウインドを介して、前記EUVマスクに照射される露光装置。
【請求項5】
前記真空紫外光を、露光対象の基板に露光光を導くミラーに入射させて、前記ミラーの汚染を防止することを特徴とする請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
波長166nm以下の真空紫外光を発生するステップと、
前記真空紫外光のビームをEUV露光装置内に収容されたEUVマスクに対して照射させるステップと、を備えるEUVマスクの汚染防止方法。
【請求項7】
前記真空紫外光がフッ素分子レーザからのレーザ光であることを特徴とする請求項6に記載の汚染防止方法。
【請求項8】
前記真空紫外光がアルゴンダイマー、クリプトンダイマー、又はフッ素分子からの自然放出増幅光であることを特徴とする請求項6の汚染防止方法。
【請求項9】
前記EUVマスクを用いた露光プロセス中に、前記真空紫外光が、前記EUVマスクに照射されている請求項6乃至8のいずれか1項に記載の汚染防止方法。
【請求項10】
請求項6乃至9に記載の汚染防止方法で、汚染を防止されたEUVマスクを用いて、レジストを露光するステップと、
前記EUVマスクを用いて露光されたレジストを現像するステップと、を備えるパターン付ウエハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−134372(P2012−134372A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286031(P2010−286031)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【特許番号】特許第4761589号(P4761589)
【特許公報発行日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000115902)レーザーテック株式会社 (184)
【Fターム(参考)】