説明

汚泥の破砕方法及び汚泥減容化方法

【課題】 薬品類を使用せずに低エネルギーで微生物の破砕を行える汚泥の破砕方法等を提供する。
【解決手段】 磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えてその磁性粒子を振動又は移動させ、その汚泥を破砕することにより、前記課題を解決した。破砕後の汚泥から磁性粒子を磁気分離し、分離された磁性粒子を破砕前の汚泥に投入することが好ましく、また、破砕後の汚泥を生物処理することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水を生物学的に処理する際に発生する汚泥を破砕する汚泥の破砕方法、及びその破砕方法を利用した汚泥減容化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機性産業排水(本発明においては被処理水又は有機性排水という。)の処理には、活性汚泥処理法が用いられている。活性汚泥処理法は、活性汚泥を有する生物処理槽内に被処理水を供給し、空気で曝気することにより、活性汚泥の生物学的作用で被処理水中の有機物を分解処理する方法である。この活性汚泥処理法では、有機物が生物学的に分解処理されるのに伴い、増殖した微生物が汚泥として大量に発生する。大量に発生した汚泥は沈殿槽等で分離回収され、その一部は生物処理工程(例えば、生物処理槽等)に送られるが、残部は余剰汚泥として処分される。
【0003】
余剰汚泥の処分方法としては、その余剰汚泥を濃縮して脱水した後に焼却や埋め立てにより廃棄処分する方法が行われている。また、埋め立てによる廃棄処分においては、産業廃棄物埋立処分場の確保が難しく、しかも引き取りコストも年々高騰している。焼却による廃棄処分においては、汚泥の含水率が高いために汚泥を焼却するための燃料費が嵩み、さらに、排出ガスや焼却灰の処理が必要であり、近年は環境問題等から焼却処理自体が困難になってきているのが現状である。このようなコスト面や環境等の配慮から廃棄処分以外の手段が求められ、種々提案されている。
【0004】
その一つの手段として、余剰汚泥をできるだけ減容化し、廃棄処分量を少なくする汚泥減容化方法がある。この汚泥減容化方法は、余剰汚泥を生物学的に処理するのに適した状態に改質(ここでいう改質は、本発明では可溶化ともいう。)した後に生物処理槽に返送して生物学的に分解処理させるものである(例えば、特許文献1〜5を参照。)。なお、余剰汚泥を生物学的に処理するのに適した状態に改質するとは、汚泥の殆どを構成する微生物を破砕することである。
【0005】
汚泥減容化方法としては、例えば、(1)余剰汚泥を生物処理槽から抜き出してオゾン処理して微生物を破砕した後、生物処理槽に戻す方法、(2)余剰汚泥をアルカリ性にすると同時に加温することで熱アルカリ処理を行って微生物を破砕した後、中性付近で嫌気処理をする方法、(3)余剰汚泥にアルカリ又は鉱酸を添加して、この余剰汚泥をアルカリ性条件又は酸性条件下で処理して微生物を破砕した後に好気処理する方法、(4)超音波で余剰汚泥中の微生物を破砕することで減容化を図る方法、(5)ミルで汚泥をすりつぶす方法が検討されている。
【特許文献1】特開平7−116685号公報
【特許文献2】特開平4−326998号公報
【特許文献3】特開平3−8496号公報
【特許文献4】特開昭58−76200号公報
【特許文献5】特開平2−211299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した方法はいずれも汚泥を改質することができるが、上記の(1)及び(4)の方法では、コストが高くなり、特に(4)の方法では超音波を発生させるためにエネルギーの面でも問題があった。また、上記の(2)及び(3)の方法では、アルカリや鉱酸等の薬品類を使用すると共に、中和のための特別な設備等が必要となり、コストアップが問題となった。また、上記の(5)の方法では、(4)の方法と同様、多くのエネルギーを要する問題があった。
【0007】
本発明は、前述した問題を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、薬品類を使用せずに低エネルギーで微生物の破砕を行える汚泥の破砕方法を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、そうした方法を利用した汚泥減容化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記第1の目的を達成する本発明の汚泥の破砕方法は、磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えて前記磁性粒子を振動又は移動させ、前記汚泥を破砕することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えてその磁性粒子を振動又は移動させるので、磁性粒子が汚泥に衝突して破砕される。すなわち、汚泥中に含まれる微生物に磁性粒子が衝突してその細胞壁が破壊され、微生物が破砕される。このように、磁場を用いて磁性粒子を微生物に衝突させるので、ミルによるすりつぶしに比べて少ないエネルギーで効率よく微生物を破砕することができる。従って、薬品類を使用せずに低エネルギーで微生物の破砕を行うことができる。
【0010】
本発明の汚泥の破砕方法において、前記破砕後の汚泥から前記磁性粒子を磁気分離し、分離された磁性粒子を破砕前の汚泥に投入することが好ましい。また、本発明の汚泥の破砕方法において、前記破砕後の汚泥を生物処理することが好ましい。
【0011】
前記第2の目的を達成する本発明の汚泥減容化方法は、有機性排水の生物学的処理により発生する余剰汚泥に磁性粒子存在下、磁場を与えて前記磁性粒子を振動又は移動させて前記余剰汚泥を破砕し、破砕された余剰汚泥を生物学的に処理することを特徴とする。
【0012】
また、前記第2の目的を達成する本発明の汚泥減容化方法は、有機性排水を生物処理槽で生物学的に処理して処理液とし、該処理液を清澄水と汚泥とに分離し、分離された汚泥に磁性粒子を投入し、該磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えて前記磁性粒子を振動又は移動させて前記汚泥を破砕し、破砕された汚泥を前記生物処理槽に戻すことを特徴とする。
【0013】
これらの発明によれば、前記の汚泥の破砕方法の場合と同様に、磁場を用いて磁性粒子を微生物に衝突させるので、少ないエネルギーで効率よく微生物を破砕することができる。破砕された微生物は生物処理槽等で微生物により生物学的に処理される。従って、薬品類を使用せずに低エネルギーで微生物の破砕を行うことができるので、低コストで汚泥の減容化を図ることができる。
【0014】
本発明の汚泥減容化方法において、前記破砕後の微生物を有する汚泥から前記磁性粒子を磁気分離し、分離された磁性粒子を破砕前の汚泥に投入することが好ましい。
【0015】
また、前記第2の目的を達成する本発明の汚泥減容化方法は、有機性排水を生物処理槽で生物学的に処理して処理液とし、該処理液を清澄水と汚泥とに分離し、分離された汚泥を破砕し、破砕された汚泥を前記生物処理槽に戻す汚泥減容化方法であって、前記生物処理槽内の汚泥が磁性粒子を含み、前記汚泥の破砕が、前記分離され前記磁性粒子を含む汚泥に磁場を与えて前記磁性粒子を振動又は移動させることにより行われることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前記の汚泥の破砕方法の場合と同様に、磁場を用いて磁性粒子を微生物に衝突させるので、少ないエネルギーで効率よく微生物を破砕できる。破砕された微生物は生物処理槽等で微生物により生物学的に処理される。従って、薬品類を使用せずに低エネルギーで微生物の破砕を行うことができるので、低コストで汚泥の減容化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の汚泥の破砕方法及び汚泥減容化方法によれば、磁場を用いて磁性粒子により汚泥を破砕するので、少ないエネルギーで効率よく微生物を破砕することできる。その結果、低コストで汚泥の減容化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の汚泥の破砕方法及び汚泥減容化方法を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
(汚泥の破砕方法)
図1は本発明の汚泥の破砕方法の構成の概要の一例を示した図である。本発明の汚泥の破砕方法は、磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えて磁性粒子を振動又は移動させ、汚泥を破砕することを特徴とする。本発明の汚泥の破砕方法を実施するための汚泥破砕装置は、例えば、図1に示すように、汚泥1に磁性粒子を投入する装置(図示例では撹拌装置2)と、その汚泥1に磁場を与えて磁性粒子を振動又は移動させて汚泥1中の微生物を破砕する汚泥破砕装置3と、汚泥破砕装置3で破砕された微生物を含む汚泥から磁性粒子を回収する磁性粒子回収装置4とから構成されている。
【0020】
本発明における汚泥1は、活性汚泥処理法等に用いられている汚泥であり、数百種類の微生物で構成されている汚泥1(「活性汚泥」ということがある。)である。この汚泥1は、種々の細菌を含有した生物相塊フロックを形成し、水中の有機物等を吸着・分解しながら呼吸・増殖を続ける1つの生態系である。
【0021】
磁性粒子は、水に不溶性の粒子であって磁場内で磁性を有する粒子である。磁性粒子は、磁場外では磁気を帯びていないが磁場内に置くことにより磁化する粉末体(この粉末体を本発明では「磁性粉末体」と定義する。)であれば、特に限定されない。すなわち、磁性粒子は、磁場内でそれ自身が1個の微小磁石として機能する粉末体であればよい。このような磁性粒子としては、例えば、フェライト、酸化鉄、ニッケル等の磁性体を粉末化した磁性粉末体等が挙げられ、これらの磁性粉末体の1種でも2種以上を含んだものでもよい。
【0022】
磁性粒子は、磁場により振動又は移動されて汚泥1中の微生物を破砕することができ、かつ、汚泥中で容易に分散するように粒径や磁束密度等の条件が設定される。こうした磁性粒子の条件、例えば、粒子径は、平均粒径で30〜120μmの範囲内であることが汚泥1中の微生物を破砕する点で好ましい。磁性粒子の平均粒径が30μm未満であると衝撃力が弱くなると共に汚泥濃度の影響を受けやすくなることがある。一方、磁性粒子の粒子径が120μmを超えると粒子間の空隙が大きくなり、破砕効率が低下することがある。
【0023】
また、磁性粒子の含有量は、汚泥1の種類によって一概には決められないが、汚泥1に対して100〜1500g/l(リットル。以下同じ。)の範囲内であることが微生物を十分に破砕することができる点で好ましい。磁性粒子の含有量が汚泥1に対して100g/l未満であると、汚泥1中の微生物を十分に破砕することができないことがある。磁性粒子の含有量が汚泥1に対して1500g/lを超えると、磁性粒子が十分に動けず微生物の破砕を十分に行えないことがある。
【0024】
磁性粒子は、通常、汚泥1中にはその汚泥1を十分に破砕するための必要量が含まれていることはないので、汚泥1中に磁性粒子を投入するための装置が必要となる。なお、本発明においては、汚泥には水が含まれているために実質的にはスラリ(汚泥含有スラリともいう。)であるが、分り易くするために汚泥(又は活性汚泥ともいう。)という表現を用いて説明する。磁性粒子を投入する装置としては、汚泥1に磁性粒子を投入して分散させることができる撹拌装置2等が好ましい。撹拌装置2としては、例えば、空気等の気体を噴出させて撹拌を行う曝気槽、撹拌翼等の機械的な撹拌要素を駆動させて撹拌を行う撹拌装置等が挙げられる。
【0025】
汚泥破砕装置3は、磁場により汚泥1中に投入された磁性粒子を振動又は移動させて汚泥1中の微生物の細胞壁を破壊してその微生物を破砕するための装置である。汚泥破砕装置3は、例えば、磁性粒子を有する汚泥1が流入される処理部と、磁場を発生させてその処理部内に磁場を与える磁場発生手段と、処理部内の磁場を変動させる磁場変動手段とから構成されている。
【0026】
処理部は、磁性粒子を有する汚泥1が流入される容器であって、例えば重力方向に延びる縦型の容器である。処理部は、例えば断面略円形状や断面略矩形状等の筒状、内部空間を有するリング状等に形成されていることが好ましい。処理部は、ステンレス、セラミックス、合成樹脂等の非磁性材料で形成されている。なお、処理部は、撹拌機能を備えるものであってもよい。
【0027】
磁場発生手段は、磁場を発生させて処理部内の汚泥に磁場を与えるものであり、永久磁石や電磁石等を使用することができる。磁場発生手段は、処理部の外周にN極とS極とが所定の間隔で配置されたものでもよいし、処理部を挟んで対向する位置にN極とS極とが配置されたものでもよい。すなわち、磁場発生手段は、磁場を発生させて処理部内に磁場を与えることができればどのように形成されていてもよい。磁場発生手段により処理部に与えられる磁場は、600ガウス以上であることが磁性粒子を効果的に振動又は移動させる点で好ましい。処理部内の磁場が600ガウス未満であると、磁性粒子を振動又は移動させて十分に微生物を破砕することができないことがある。なお、磁性粒子の振動とは、磁性粒子が振とう等することである。
【0028】
磁場変動手段は、処理部内に与えられた磁場を変動させるものである。すなわち、磁場変動手段は、処理部内に与えられた磁場を変動させて処理部内の磁性粒子を凝集させる移動動作と、その移動動作により凝集した磁性粒子を汚泥中に分散させる分散動作とが繰り返し行われるように構成されていることが好ましい。
【0029】
磁場変動手段は、処理部及び磁場発生手段の一方又は両方を相対運動させるものであってもよい。処理部と磁場発生手段との相対運動は、処理部の長手方向に処理部と磁場発生手段の少なくとも一方を直線移動させるようにしてもよいし、処理部と磁場発生手段の少なくとも一方を軸を中心に回転移動させるようにしてもよい。また、処理部と磁場発生手段との相対運動は、処理部の長手方向に処理部と磁場発生手段の少なくとも一方を直線移動させると共に、処理部と磁場発生手段の少なくとも一方を軸を中心に回転移動させるようにしてもよい。
【0030】
また、磁場変動手段としては、磁場発生手段を電磁石で構成し、この電磁石を間欠的に駆動させて処理部内に磁場を間欠的に与えるものであってもよい。こうした手段により、処理部内に与えた磁場を変動させることができる。この場合、処理部内の異なった箇所に磁場を間欠的に与えるようにすることが好ましい。例えば、磁場を処理部内の一部に与えた後に次の磁場を直前に与えた磁場の箇所とは異なる処理部内に与えるようにすることが好ましい。
【0031】
磁性粒子回収装置4は、汚泥破砕装置3で破砕した微生物を含む汚泥から磁性粒子を回収するための装置であり、必要に応じて好ましく用いられる。磁性粒子回収装置4は、磁性粒子を回収できる装置であれば特に限定されない。磁性粒子回収装置4としては、例えば、電磁石を用いて磁力により磁性粒子を分離回収する電磁石分離装置等が挙げられる。この電磁石分離装置で分離回収された磁性粒子は、前記の撹拌装置2等に戻され、循環使用により再利用されることが好ましい。
【0032】
次に、この汚泥破砕装置を用いて本発明の汚泥の破砕方法を説明する。
【0033】
まず、図1に示すように、汚泥1を撹拌装置2に供給すると共に、この撹拌装置2内の汚泥1に磁性粒子を投入する。その後、撹拌装置2を駆動させて汚泥1中に磁性粒子を分散させるために十分に撹拌混合する。次に、磁性粒子が分散された汚泥を汚泥破砕装置3の処理部内に送る。
【0034】
汚泥破砕装置3においては、磁場発生手段により磁場を発生させて処理部内に磁場を与えつつ、この磁場を変動させる。この磁場の変動により、処理部内の磁性粒子は振動したり、処理部の外側に配置された磁場発生手段に向って移動したりする。この移動により、磁性粒子と処理部の内壁との間に存在する汚泥1である微生物に磁性粒子が衝突して、微生物が処理部の内壁に圧縮されて押し潰される。また、磁場により処理部の内壁に着いている磁性粒子がその内壁に沿って移動して微生物が処理部の内壁にすり潰されたりすることがある。なお、移動した磁性粒子は磁場の変動により汚泥中に再び分散する。
【0035】
こうした磁性粒子の移動と分散が繰り返し行われることにより、磁性粒子によって微生物が処理部の内壁に押し潰されたり、磁性粒子が微生物に衝突したりするので、微生物が破砕される。すなわち、汚泥が破砕されて可溶化される。なお、微生物の破砕とは、微生物の細胞壁が破壊される場合と微生物の細胞内の増殖因子が破壊される場合がある。
【0036】
汚泥破砕装置3で破砕された汚泥は、図1に示すように、磁性粒子回収装置4に送られて、そこで磁性粒子が分離回収される。分離回収された磁性粒子は再利用すべく破砕前の微生物を有する撹拌装置2等に戻されて循環使用される。磁性粒子が分離回収され、かつ、破砕後の汚泥は、例えば、嫌気性消化装置により嫌気性消化された後に、破砕された汚泥を処理する処理工程等に送られる。
【0037】
したがって、本発明の汚泥の破砕方法は、磁性粒子を有する汚泥1に磁場を与えて磁性粒子を振動又は移動させるので、磁性粒子が汚泥に衝突して破砕される。すなわち、汚泥中に含まれる微生物に磁性粒子が衝突してその細胞壁が破壊され、微生物が破砕される。このように、磁場を用いて磁性粒子を微生物に衝突させるので、薬品類を使用せずに、かつ、ミルによるすりつぶしによる場合に比べて少ないエネルギーで効率よく微生物を破砕することができる。
【0038】
(本発明の汚泥減容化方法)
次に、本発明の汚泥減容化方法について説明する。本発明の汚泥減容化方法は、前述した汚泥の破砕方法を例えば活性汚泥処理法に適用したことに特徴がある。
【0039】
すなわち、本発明の第1の汚泥減容化方法は、有機性排水の生物学的処理により発生する余剰汚泥に磁性粒子存在下、磁場を与えて磁性粒子を振動又は移動させて汚泥を破砕し、破砕された余剰汚泥を生物学的に処理することに特徴がある。この第1の汚泥減容化方法では、破砕された余剰汚泥の生物学的な処理は、汚泥が発生した同じ生物処理槽で行うようにしてもよいし、異なる生物処理槽で行うようにしてもよいが、汚泥が発生した同じ生物処理槽で行うことが好ましい。このような破砕された汚泥の生物学的な処理を汚泥が発生した同じ生物処理槽で行う態様が本発明の第2の汚泥減容化方法である。
【0040】
図2は本発明の第2の汚泥減容化方法を実施するための汚泥減容化装置の一例を示した概略構成図である。図3は本発明の第3の汚泥減容化方法を実施するための汚泥減容化装置の一例を示した概略構成図である。
【0041】
第2の汚泥減容化方法は、有機性排水を生物処理槽で生物学的に処理して処理液とし、この処理液を清澄水と汚泥とに分離し、分離された汚泥に磁性粒子を投入し、この磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えて磁性粒子を振動又は移動させて汚泥を破砕し、破砕された汚泥を生物処理槽に戻すことに特徴がある。第3の汚泥減容化方法は、有機性排水を生物処理槽で生物学的に処理して処理液とし、この処理液を清澄水と汚泥とに分離し、分離された汚泥を破砕し、破砕された汚泥を生物処理槽に戻す汚泥減容化方法であって、生物処理槽内の汚泥が磁性粒子を含み、汚泥の破砕が、分離され磁性粒子を含む汚泥に磁場を与えて磁性粒子を振動又は移動させることにより行われることに特徴がある。
【0042】
活性汚泥処理法を実施するための活性汚泥処理装置は、例えば、図2及び図3に示すように、汚泥により被処理水を生物学的に分解処理する生物処理槽11と、汚泥と清澄水とを固液分離する固液分離槽12とから主に構成されている。
【0043】
生物処理槽11には被処理水路13が接続され、この被処理水路13から調整槽等により流入量の均一化、濃度の均一化、pHの調整等が行われた被処理水が生物処理槽11に流入する。なお、被処理水は、調整槽等を介さずに直接生物処理槽11に流入することもある。また、生物処理槽11には返送汚泥路14が接続されている。
【0044】
生物処理槽11内の底部又は底部近傍には散気装置15が設けられ、この散気装置15には空気供給路16が接続されている。生物処理槽11は曝気槽の一種であり、空気供給路16からの空気が散気装置15から生物処理槽11内に送り込まれて、予め生物処理槽11内に存在する汚泥(すなわち好気性微生物の凝集フロック)と被処理水が混合・撹拌されながら曝気される。生物処理槽11には、生物処理槽11内で汚泥により生物学的に処理された処理液を固液分離槽12に導く連結路17が接続されている。
【0045】
固液分離槽12は、汚泥と清澄水とを分離するものであり、例えば、流れ込んだ処理液中の汚泥を沈降分離させる沈殿槽である。固液分離槽12には、沈降分離によって得られた清澄水(上澄み水ということがある。)を他の工程(例えば殺菌工程等)に送るための処理液路18が接続されている。固液分離槽12の底部には引抜汚泥路21が接続され、沈降分離された汚泥が固液分離槽12から引き抜かれ、返送用ポンプ(図示せず)によって返送汚泥路14を介して生物処理槽11に戻されるようになっている。また、引抜汚泥路21には、余剰の汚泥を引き抜くための余剰汚泥路22が接続されている。また、引抜汚泥路21には、汚泥減容化路23が接続され、この汚泥減容化路23は生物処理槽11に接続されている。
【0046】
本発明の第2の汚泥減容化方法の特徴は、分離された汚泥に磁性粒子を投入し、その磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えて磁性粒子を振動又は移動させて汚泥を破砕し、破砕された汚泥を生物処理槽に戻すことである。この第2の汚泥減容化方法は、例えば、図2に示すように、汚泥減容化路23に前述の撹拌装置2、汚泥破砕装置3及び磁性粒子回収装置4を順次設けることにより実施することができる。
【0047】
また、本発明の第3の汚泥減容化方法の特徴は、生物処理槽内の汚泥が磁性粒子を含むことと、微生物の破砕が、分離され磁性粒子を含む汚泥に磁場を与えて磁性粒子を振動又は移動させることにより行われることである。この第3の汚泥減容化方法は、例えば図3に示すように、生物処理槽11に磁性粒子供給路25を接続することと、汚泥減容化路23に前述の汚泥破砕装置3を設けることにより実施することができる。磁性粒子供給路25は、前記の磁性粒子を生物処理槽11内に投入するものであり、投入された磁性粒子は散気装置15からの空気により汚泥中に分散されるようになっている。磁性粒子の生物処理槽11への投入量は、汚泥破砕装置3において汚泥を十分に破砕し得る一定の範囲内の量であり、余剰汚泥や処理液に同伴して系外に流出する流出分を補給するように磁性粒子の投入量を調節することが好ましい。
【0048】
次に、本発明の第1〜第3の汚泥減容化方法を図2及び図3に示した減容化装置を用いて説明する。
【0049】
被処理水路13から被処理水が生物処理槽11に流入されると共に、空気が散気装置15を介して生物処理槽11内に送り込まれる。この空気により、予め生物処理槽11内にある汚泥(すなわち好気性微生物の凝集フロック)と被処理水が混合・撹拌されながら曝気される。これにより、被処理水中の有機物等が汚泥中の微生物に分解・除去され、生物学的に被処理水が処理されて処理液となる。処理液は、連結路17を介して固液分離槽12に流入する。固液分離槽12では処理液と固形分とが沈降分離され、この沈降分離によって得られた上澄み水が処理液路18を介して他の工程(例えば殺菌工程等)に送られる。一方、沈降分離された固形分は、図2に示す態様では殆どが汚泥1であり、図3に示す態様では殆どが汚泥1と磁性粒子との混合物であり、いずれの場合も返送用ポンプによって返送汚泥路14を介して生物処理槽11に戻される。なお、本発明において、沈降分離された固形分の殆どが汚泥である場合には、単に汚泥ということがあり、また、固形分が汚泥と磁性粒子との混合物である場合には、磁性粒子を含む汚泥ということがある。
【0050】
被処理水中の有機物は活性汚泥により炭酸ガスと水とに分解されると共に一部は汚泥に変わるので、生物処理槽11内の汚泥の量が増加する。生物処理槽11内の汚泥の量が被処理水を処理する許容範囲を超えると、固液分離槽12で沈降分離された固形分の一部又は全部が汚泥減容化路23を介して汚泥破砕装置3の処理部に送られる。すなわち、余剰の汚泥が発生すると、この余剰汚泥が汚泥破砕装置3に送られる。
【0051】
汚泥破砕装置3の処理部に送られた汚泥1には磁性粒子が混入されている。すなわち、図2に示す態様では、固液分離槽12で沈降分離された汚泥の一部又は全部が撹拌装置2に流入し、その撹拌装置2内でその汚泥は磁性粒子と撹拌混合され、この磁性粒子が撹拌混合された汚泥が汚泥破砕装置3に送られる。図3に示す態様では、生物処理槽11内に磁性粒子が投入されて散気装置15からの空気により磁性粒子が汚泥内に分散され、この磁性粒子が分散された汚泥の一部又は全部が汚泥破砕装置3に送られる。
【0052】
汚泥破砕装置3においては、磁場発生手段により磁場を発生させて処理部内に磁場を与えつつ、この磁場を変動させる。この磁場の発生及び磁場の変動により、処理部内の磁性粒子は振動したり、処理部の外側に配置された磁場発生手段に向って移動したりする。この移動により、磁性粒子と処理部の内壁との間に存在する汚泥1である微生物に磁性粒子が衝突して、微生物が処理部の内壁に圧縮されて押し潰される。また、磁場により処理部の内壁に着いている磁性粒子がその内壁に沿って移動して微生物が処理部の内壁にすり潰されたりすることがある。なお、移動した磁性粒子は磁場の変動により汚泥中に再び分散する。
【0053】
こうした磁性粒子の移動と分散が繰り返し行われることにより、磁性粒子によって微生物が処理部の内壁に押し潰されたり、磁性粒子が微生物に衝突したりするので、微生物が破砕される。すなわち、汚泥が破砕されて可溶化される。
【0054】
可溶化された汚泥は、生物処理槽11に送られる。なお、図2に示す態様では、可溶化された汚泥は、磁性粒子が回収されてから生物処理槽11に送られる。生物処理槽11に送られた汚泥は、物理的にすり潰されたりして可溶化されているため、生分解性が高くなっているので、生物処理槽11内の微生物により分解・除去され、無機化される。
【0055】
このように、微生物からなる汚泥を可溶化して生物処理槽11で分解して無機化することにより、汚泥の減容化を薬品類を使用せずに低エネルギーで行えることになる。また、生物処理槽11内で汚泥が発生するために、生物処理槽11内で被処理水の処理を十分に行える汚泥が存在するように、返送汚泥路14を介して生物処理槽11内に返送される返送汚泥量と汚泥破砕装置3で破砕する汚泥量とを調節することにより、他の系で処分しなければならない余剰汚泥の量をほぼ無くすことができる。その結果、余剰汚泥の処分コストを大幅に削減することができ、大幅なコストダウンを達成できる。
【実施例】
【0056】
以下、汚泥減容化方法についての実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
【0057】
混合液(ML)中の懸濁固形物(SS)濃度、いわゆるMLSS濃度が3500mg/lの活性汚泥を用意した。また、磁性粒子としてフェライト粉末(平均粒径80μm)を用意した。これら活性汚泥40mlとフェライト粉末18gとを試験管に入れ混合した。
【0058】
この試験管内に磁場を与えて微生物の破砕処理を行った。磁場は、磁場発生手段である回転磁場発生装置を用いて発生させた。回転磁場発生装置30は、図4に示すように、所定の間隔で面対向すると共に軸(図4中、仮想軸35として波線で示す。)を中心に回転する1対の円盤31、31と、1対の円盤の表面の対向する箇所に固定された永久磁石32とを備えたものである。試験管33は、この1対の円盤31、31間であって、これらの円盤31の軸から7cmずれた位置に立てた状態でセットした。円盤31としては、直径25cmで厚さ0.5cmのアルミニウム製のものを用いた。永久磁石32としては、磁力が5000ガウスで大きさが15cm×6cmのものを用いた。なお、符号34は、円盤31のバランスを保つためのバランサーであり、永久磁石32と軸対象に設けられる。
【0059】
試験管33を回転磁場発生装置30にセットした後、円盤31を140rpmの回転数で回転させて磁場を変動させつつ7時間磁場を試験管33内の汚泥に与えて破砕処理を行った。このように、円盤31を回転させると、永久磁石32が試験管33の底部から上部に向って動く間は、汚泥+フェライト粉末は試験管33内で分散した状態であり、永久磁石32が試験管33の上部から底部に向って動く間は、永久磁石32の磁場によりフェライト粉末が永久磁石32の移動に伴って移動し、フェライト粉末が汚泥中の微生物に衝突する。
【0060】
破砕処理した汚泥の生菌率について調べ、その結果を表1に示した。生菌率は、処理時間3時間、5時間、7時間についてそれぞれ調べ、処理開始前に測定した生菌数と所定時間破砕処理した後に測定した生菌数とから次式により算出した。生菌数は、「イージーカルトTTC菌数測定キット」(製造元;ORION DIAGNOSTICA社、販売元;第一化学薬品株式会社)を用いて測定した。
【0061】
生菌率(%)=(処理開始前の生菌数/処理後の生菌数)×100
【0062】
【表1】

【0063】
表1の結果から明らかなように、3時間破砕処理を行うと、生菌率が10%まで低下し、5時間以上の破砕処理では生菌率を0.1%まで低下させることができた。
【0064】
また、7時間破砕処理した汚泥を試験管33から回収し、空気で十分に曝気した。曝気は、20ml/秒の供給量で30分空気を供給して行った。曝気後、破砕処理後の汚泥35mlと未処理汚泥(破砕処理後の汚泥と同様に十分に曝気した未処理の汚泥)65mlとをフランビンに入れ、このフランビンを20℃雰囲気中に保管した状態で30分おきに溶存酸素を3時間まで測定し、その結果を表2に示した。溶存酸素の測定は、「ULTRA−DO meter」(セントラル科学株式会社製)を用いて行った。また、未処理の汚泥100mlのみをフランビンに入れ、同様にこのフランビンを20℃雰囲気中に保管した状態で30分おきに溶存酸素を3時間まで測定し、その結果も表2に示した。
【0065】
【表2】

【0066】
表2の結果から明らかなように、処理汚泥+未処理汚泥の場合の方が酸素消費速度が大きかった。これは、破砕処理することにより、汚泥が生物分解され易いものに改質されたことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の汚泥の破砕方法の構成の概要の一例を示した図である。
【図2】本発明の第2の汚泥減容化方法の一例を示した概略構成図である。
【図3】本発明の第3の汚泥減容化方法の一例を示した概略構成図である。
【図4】本発明の磁力撹拌装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0068】
1 汚泥
2 撹拌装置
3 汚泥破砕装置
4 磁性粒子回収装置
11 生物処理槽
12 固液分離槽
13 被処理水路
14 返送汚泥路
15 散気装置
16 空気供給路
17 連結路
18 処理液路
21 引抜汚泥路
22 余剰汚泥路
23 汚泥減容化路
30 回転磁場発生装置
31 円盤
32 永久磁石
33 試験管
34 バランサー
35 仮想軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えて前記磁性粒子を振動又は移動させ、前記汚泥を破砕することを特徴とする汚泥の破砕方法。
【請求項2】
前記破砕後の汚泥から前記磁性粒子を磁気分離し、分離された磁性粒子を破砕前の汚泥に投入することを特徴とする請求項1に記載の汚泥の破砕方法。
【請求項3】
前記破砕後の汚泥を生物処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の汚泥の破砕方法。
【請求項4】
有機性排水の生物学的処理により発生する余剰汚泥に磁性粒子存在下、磁場を与えて前記磁性粒子を振動又は移動させて前記余剰汚泥を破砕し、破砕された余剰汚泥を生物学的に処理することを特徴とする汚泥減容化方法。
【請求項5】
有機性排水を生物処理槽で生物学的に処理して処理液とし、該処理液を清澄水と汚泥とに分離し、分離された汚泥に磁性粒子を投入し、該磁性粒子を有する汚泥に磁場を与えて前記磁性粒子を振動又は移動させて前記汚泥を破砕し、破砕された汚泥を前記生物処理槽に戻すことを特徴とする汚泥減容化方法。
【請求項6】
前記破砕後の汚泥から前記磁性粒子を磁気分離し、磁気分離された磁性粒子を破砕前の汚泥に投入することを特徴とする請求項4又は5に記載の汚泥減容化方法。
【請求項7】
有機性排水を生物処理槽で生物学的に処理して処理液とし、該処理液を清澄水と汚泥とに分離し、分離された汚泥を破砕し、破砕された汚泥を前記生物処理槽に戻す汚泥減容化方法であって、
前記生物処理槽内の汚泥が磁性粒子を含み、
前記汚泥の破砕が、前記分離され前記磁性粒子を含む汚泥に磁場を与えて前記磁性粒子を振動又は移動させることにより行われることを特徴とする汚泥減容化方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−749(P2006−749A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179089(P2004−179089)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(591200885)
【Fターム(参考)】