説明

汚泥炭化物によるガス処理方法及びその装置

【課題】被処理ガス6中に含まれる除去対象ガスを効率的に除去する。
【解決手段】水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を吸着塔2に収納し、この吸着塔に除去対象ガスを含む被処理ガス6を通流させて、この被処理ガスが吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を汚泥炭化物に吸着させて、除去対象ガス成分が除去された処理済ガス12を吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法において、
吸着塔2に収納する汚泥炭化物にアルカリ性薬剤及び酸性薬剤の少なくともいずれか一方の薬剤を添着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛、馬、豚、鶏等の家畜の飼育施設、塵処理施設、特定の化学工場施設から放出される空気に含まれる有害ガス、悪臭ガスを除去するガス処理方法及びガス処理装置に係わり、特に汚泥炭化物のガスの吸着特性を利用した汚泥炭化物によるガス処理方法及び汚泥炭化物によるガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飼育施設や化学工場や塵処理施設等においては、工場や施設のダクトからの排出される空気に混ざって有害ガスや悪臭ガスが大気中に放出されないように種々の対策を実施している。また、空気中に微細な有害ガス、悪臭ガスをも含まれることが危惧される場合もある。
【0003】
この大気や排気に含まれる有害ガスや悪臭ガスを少ない費用で効率的に除去するガス処理手法として、汚泥炭化物が有するガスの吸着特性を利用したガス処理手法が考えられる。
【0004】
有害ガスや悪臭ガスを効率的に汚泥炭化物に吸着させるためには、汚泥炭化物の吸着機能を向上させる必要がある。この高いガス吸着機能を有した汚泥炭化物を得るために、下水処理施設等における水処理プロセスで生じた汚泥を脱水・乾燥後、成形した後炭化し、炭化後さらに高温で水蒸気賦活処理する方法が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1の「汚泥による活性炭製造方法」においては、水処理プロセスで生じた汚泥を脱水処理後、含水率0〜15%まで乾燥した後、粉砕して粉砕汚泥を加圧成形するか、乾燥粉砕汚泥に水を加えて混練して混練汚泥を射出成形した後、400〜800℃で炭化し、さらに700〜900℃で賦活処理によってガス吸着機能を向上させた活性炭を製造する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000―72427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガス吸着機能を向上させた汚泥炭化物を得るために、上述したように、複雑な製造工程が必要であり、汚泥炭化物の製造費用が大幅に上昇し、製造に要する時間も長期化する。その結果、この高価な汚泥炭化物をガス吸着材として用いるガス処理方法及びガス処理装置の運転費用(ランニングコスト)が大幅に上昇する。
【0007】
また、上述した複雑な製造工程を採用せずに、ただ単に水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物をガス吸着材として用いると、実用に耐えるようなガス吸着機能が得られないばかりか、短期間にガス吸着機能が低下し、頻繁に、汚泥炭化物を新しい汚泥炭化物に交換する必要がある。
【0008】
なお、上述したガス吸着機能を向上させた汚泥炭化物であっても、理想的なガス吸着材である活性炭に比較すれば、十分なガス吸着機能といえず、有害ガスや悪臭ガスに対するガス吸着材としては、十分なガス吸着機能を発揮するには至っていない。なお、活性炭は高価であるので、ガス処理装置の運転費用(ランニングコスト)から採用できない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、水処理プロセスで生じた汚泥に対して、ガス吸着機能を向上させるための複雑な処理工程を追加することなく、通常の脱水、乾燥、炭化工程で得られた汚泥炭化物を用いて、被処理ガスに含まれる有害ガスや悪臭ガスを効率的にかつ低い運転費用(ランニングコスト)で除去できる汚泥炭化物によるガス処理方法およびガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、発明者は、汚泥炭化物にアルカリ性薬剤又は酸性薬剤を添着することによって、薬剤を全く添着しない場合に比較して、汚泥炭化物の有害ガスや悪臭ガスに対するガス吸着機能が格段に上昇することの知見を実験により得た。さらに、具体的には、酸性薬剤を添着した汚泥炭化物は例えばアンモニアガス等のアルカリ性ガスをより効率的に吸着し、アルカリ性薬剤を添着した汚泥炭化物は例えば硫化水素等の酸性ガスをより効率的に吸着することを確認した。但し、薬剤を添着した汚泥炭化物はアセトアルデヒド等の中性ガスに対するガス吸収機能において、薬剤を全く添着しない汚泥炭化物より劣る。
【0011】
これらの知見に基づいて、本発明においては以下の各手段を講じた。
【0012】
本発明は、水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を吸着塔に収納し、この吸着塔に除去対象ガスを含む被処理ガスを通流させて、この被処理ガスが吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を汚泥炭化物に吸着させて、除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法において、吸着塔に収納する汚泥炭化物にアルカリ性薬剤及び酸性薬剤の少なくともいずれか一方の薬剤を添着する。
【0013】
また、別の発明は、上述したガス処理方法において、吸着塔内に、酸性薬剤が添着された汚泥炭化物とアルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物のいずれか一方の汚泥炭化物と、薬剤が添着されていない汚泥炭化物とを直列に積層して収納する。
【0014】
さらに、別の発明は、上述したガス処理方法において、吸着塔内に、酸性薬剤添着された汚泥炭化物と、アルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物と、薬剤が添着されていない汚泥炭化物とを直列に積層して収納する。
【0015】
また、別の発明は、水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を直列接続された2基の吸着塔に収納し、除去対象ガスを含む被処理ガスを直列接続された2基の吸着塔における前段の吸着塔から後段の吸着塔へ順次通流させて、この被処理ガスが各吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を汚泥炭化物に吸着させて、除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記後段の吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法である。そして、前段の吸着塔に収納された汚泥炭化物は、被処理ガスに含まれる除去対象ガスの組成及び濃度に応じて予め定められた酸性薬剤又はアルカリ性薬剤を添着するとともに、後段の吸着塔に収納された汚泥炭化物に薬剤を添着しない。
【0016】
このように、汚泥炭化物を直列接続された2基の吸着塔に収納してガス処理を実施する場合に、前段の吸着塔に被処理ガスに含まれる最も多い除去対象ガスに対するガス吸着機能が高い薬剤が添着された汚泥炭化物を収納し、この薬剤が添着された汚泥炭化物で吸着できない中性ガスを後段の吸着塔に収納された薬剤が添着された汚泥炭化物で吸着する。
【0017】
また、別の発明は、3基の吸着塔を直列接続した場合に、前段の吸着塔に被処理ガスに含まれる最も多い除去対象ガスに対するガス吸着機能が高い薬剤が添着された汚泥炭化物を収納し、中段の吸着塔に被処理ガスに含まれる次に多い除去対象ガスに対するガス吸着機能が高い薬剤が添着された汚泥炭化物を収納し、後段の吸着塔に前段及び中段で吸着しきれなかった中性ガスを吸着するための薬剤が添着されていない汚泥炭化物を収納している。
【0018】
また、別の発明は、薬剤が添着された汚泥炭化物の吸着塔への充填量、前記酸性薬剤が添着された汚泥炭化物の吸着塔への充填量、及び薬剤が添着されていない汚泥炭化物の吸着塔への充填量は、被処理ガスに含まれる除去対象ガスの組成及び濃度に応じて、当該除去対象ガスの各汚泥炭化物の吸着容量から計算する。したがって、各汚泥炭化物を効率的に使用できる。
【0019】
また、別の発明は、複数の吸着塔を並列接続した場合に、並列接続された各吸着塔内に、被処理ガスの通流方向に向かって、酸性薬剤添着された汚泥炭化物と、アルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物と、薬剤が添着されていない汚泥炭化物とを直列に積層している。すなわち、一般的にガス処理が必要とする被処理ガスに含まれる有害ガス、悪臭ガスとしては、前述したアンモニアガス等のアルカリ性ガスが多いので、最初に、被処理ガスを酸性薬剤が添着された汚泥炭化物と接触させるようにしている。
【0020】
また、別の発明は、被処理ガスのガス流入量を計量し、この計量されたガス流入量に応じて、並列接続された複数基の吸着塔における被処理ガスを通流させる吸着塔の基数を制御している。したがって、稼働中の吸着塔の条件を均一化でき、かつ運転コストを低減できる。
【0021】
また、別の発明においては、酸性薬剤として、リン酸、硫酸、クエン酸等の酸性物質を採用し、アルカリ性薬剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ性物質を採用している。
【0022】
また、本発明は、水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を吸着塔に収納し、この吸着塔に除去対象ガスを含む被処理ガスを通流させて、この被処理ガスが吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を汚泥炭化物に吸着させて、除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理装置である。そして、吸着塔に収納された汚泥炭化物は、にアルカリ性薬剤及び酸性薬剤の少なくともいずれか一方の薬剤が添着されている。
【0023】
さらに、別の発明は、2基の吸着塔を直列接続したガス処理装置において、前段の吸着塔に収納された汚泥炭化物に、被処理ガスに含まれる除去対象ガスの組成及び濃度に応じて予め定められた酸性薬剤又はアルカリ性薬剤を添着するとともに、後段の吸着塔に収納された汚泥炭化物に薬剤を添着しない。
【0024】
さらに、別の発明は、複数の吸着塔を並列接続したガス処理装置において、並列接続された各吸着塔内に、被処理ガスの通流方向に向かって、酸性薬剤添着された汚泥炭化物と、アルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物と、薬剤が添着されていない汚泥炭化物とを直列に積層している。すなわち、一般的にガス処理が必要とする被処理ガスに含まれる有害ガス、悪臭ガスとしては、前述したアンモニアガス等のアルカリ性ガスが多いので、最初に、被処理ガスを酸性薬剤添着された汚泥炭化物と接触させるようにしている。
【0025】
さらに、別の発明においては、複数の吸着塔を並列接続したガス処理装置において、被処理ガスのガス流入量を計量するガス流量計と、各吸着塔の被処理ガスの流入路に設けられた複数のバルブと、ガス流量計で計量されたガス流入量に応じて、各バルブを開閉制御することによって、並列接続された複数基の吸着塔における被処理ガスを通流させる吸着塔の基数を制御する稼働吸着塔数制御手段とを備えている。このように構成されたガス処理装置においては、被処理ガスのガス流入量が変動した場合においても効率的にガス処理装置を運転できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、吸着塔に収納する汚泥炭化物に対して被処理ガスに含まれる除去対象ガスに対応した薬剤を添着するようにしている。したがって、水処理プロセスで生じた汚泥に対して、ガス吸着機能を向上させるための複雑な処理工程を追加することなく、通常の脱水、乾燥、炭化工程で得られた汚泥炭化物を用いて、被処理ガスに含まれる有害ガスや悪臭ガスを効率的にかつ低い運転費用(ランニングコスト)で除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の汚泥炭化物によるガス処理方法及びガス処理装置の実施形態を説明するまえに、発明者が行った、アルカリ性薬剤を添着した汚泥炭化物、酸性薬剤を添着した汚泥炭化物、及び薬剤を全く添着しない汚泥炭化物の各ガス吸着量(mg/g)に対する実験結果を説明する。
【0028】
図3は、薬剤を全く添着しない汚泥炭化物における各種ガス(除去対象ガス)の吸着特性を示す。除去対象ガスとして、酸性ガス、アルカリ性ガス、中性ガスの3種類のガスを採用した。具体的には、酸性ガスとしてメチルメルカプタン、アルカリ性ガスとしてアンモニア、中性ガスとしてアセトアルデヒドを採用した。
【0029】
なお、この実験で採用した汚泥炭化物は、農業集落排水処理施設、下水処理場、有機排水処理施設等の水処理プロセスから排出される余剰汚泥(含水率約98.5%)を、脱水、乾燥後、例えば、5mmφ、長さ10mm程度の大きさ粒状に成形し、炭化炉で約500〜700℃、約15〜30分で炭化したものである。
【0030】
薬剤を全く添着しない汚泥炭化物は、全ての種類のガスに対して吸着性を示すが、中性ガス<アルカリ性ガス<酸性ガスの順に吸着性が増すことが確認できた。しかし、悪臭ガスの代表であるアンモニアの吸着量は不十分であり、このままでは、アンモニア濃度の高い場所ではこの薬剤を全く添着しない汚泥炭化物を頻繁に交換する必要があり、運転費用(ランニングコスト)が上昇する。
【0031】
そこで、汚泥炭化物に薬剤を添着して、前記3種類の各ガス(酸性ガス、アルカリ性ガス、中性ガス)に対するガス吸着量(mg/g)を測定した。各薬剤の添着方法は、薬剤添着装置の添着槽に汚泥炭化物を充填し、真空装置で真空に減圧した後、汚泥炭化物に対して薬剤添着量が1〜10wt%になるように調整した薬剤溶液(濃度0.1〜10%溶液)を、汚泥炭化物に注入し添着する手法である。
【0032】
図4は、酸性薬剤としてリン酸を使用し、リン酸添着量5wt%の汚泥炭化物(酸添着)によるアルカリ性ガス(アンモニア)の吸着量(mg/g)と、薬剤を添着していない汚泥炭化物(無添着)によるアルカリ性ガス(アンモニア)の吸着量(mg/g)との実験比較を示す。
【0033】
酸性薬剤の添着によって吸着量が約10倍増すことが理解できる。汚泥炭化物は、比較的平均気孔径が大きいメソ孔(2〜50nm)が多く、その部分に薬品が適宣保持されるため、添着に適しているものと考えられる。保持された薬品とアンモニアが化学反応してアンモニアを確実に除去することができる。そのため酸性薬剤の添着によって、アンモニア、アミン類などのアルカリ性ガスの吸着量が大幅に増加したと考えられる。
【0034】
図5は、アルカリ性薬剤として水酸化カルシウムを使用し、水酸化カルシウム添着量10wt%の汚泥炭化物(アルカリ添着)による酸性ガス(塩化水素等)の吸着量(mg/g)と、薬剤を添着していない汚泥炭化物(無添着)による酸性ガス(塩化水素等)の吸着量(mg/g)との実験比較を示す。
【0035】
アルカリ性薬剤の添着によって薬剤無添着に比較した吸着量の増加が、図4の酸添着の場合に比較して、顕著な効果は見られなかったが、アルカリ添着により酸性ガスである硫化水素、メチルメルカプタン、硫黄酸化物(以下SOxと記す)、窒素酸化物(以下NOxと記す)、シアン化水素、塩化水素等の酸性ガスの吸着量(mg/g)が確実に増加することが確認できた。
【0036】
このように、図3〜図5の実験結果によれば、薬剤を添着しない汚泥炭化物(無添着)は、アルカリ性ガス、酸性ガス、中性ガスに全てのガスに対して吸着性を持っているがその吸着量(mg/g)は少ない。一方、酸性薬剤を添着した汚泥炭化物(酸添着)は、アンモニア、アミン類のアルカリ性ガスの吸着に優れている。また、アルカリ性薬剤を添着した汚泥炭化物(アルカリ添着)は、硫化水素、メチルメルカプタン、SOx、NOx、シアン化水素、塩化水素等の酸性ガスの吸着に優れていることが確認できた。
【0037】
(第1実施形態)
図1(a)、(b)は本発明の第1実施形態の汚泥炭化物によるガス処理方法が適用される汚泥炭化物によるガス処理装置の概略構成を示す模式図である。
【0038】
図1(a)のガス処理装置1aと、図1(b)のガス処理装置1bとの基本構成は同一であり、円筒状の吸着塔2に収納されている汚泥炭化物に添着されている薬剤が異なるのみである。ガス処理装置1aの吸着塔2内には、酸性薬剤が添着された汚泥炭化物(以下、酸添着汚泥炭化物3と略記する)が収納され、ガス処理装置1bの吸着塔2内には、アルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物(以下、アルカリ添着汚泥炭化物4と略記する)が収納されている。なお、この酸添着汚泥炭化物3又はアルカリ添着汚泥炭化物4は、吸着塔2内において、下端及び上端に一定の隙間を有して収納されている。酸添着汚泥炭化物3又はアルカリ添着汚泥炭化物4の高さは0.1〜2.4mの範囲内で一定値に制御される。
【0039】
ガス処理装置1aにおいて、除去対象ガスを含む被処理ガス6は導入管9内に導かれ、加圧ポンプ7で加圧され、バルブ8を経由して、吸着塔2の下端から、吸着塔2内へ導かれる。そして、この被処理ガス6は吸着塔2内の酸添着汚泥炭化物3又はアルカリ添着汚泥炭化物4の隙間を通流する過程で、被処理ガス6に含まれる除去対象ガスが酸添着汚泥炭化物3又はアルカリ添着汚泥炭化物4に吸着される。そして、除去対象ガスが除去された残りの被処理ガス6は、吸着塔2の上端から排出管10、バルブ11を経由して、処理済ガス12として排気される。吸着塔2内の被処理ガス6のガス流速は加圧ポンプ7の回転速度、各バブル8、11の開度を調整して、0.003〜0.3m/s程度に制御される。
【0040】
図1(a)のガス処理装置1aには、アンモニア、アミン類などのアルカリ性ガスを除去対象ガスとする被処理ガス6が入力される。そして、酸添着汚泥炭化物3に採用する酸性薬剤は、例えば蒸気圧の低いリン酸、硫酸などの無機酸あるいはクエン酸、シュウ酸などの有機酸である。
【0041】
図1(b)のガス処理装置1bには、硫化水素、メチルメルカプタン、SOx、NOx、シアン化水素、塩化水素等の酸性ガスを除去対象ガスとする被処理ガス6が入力される。そして、アルカリ添着汚泥炭化物4に採用するアルカリ性薬剤は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ性物質である。
【0042】
なお、図2に示すガス処理装置1cは、吸着塔2内に、酸性薬剤、アルカリ性薬剤を添着する前の汚泥炭化物(以下、無添着汚泥炭化物5と略記する)が収納されている。なお、この図2に示すガス処理装置1cは、図3に示すように、酸性ガス、アルカリ性ガスと共に、アセトアルデヒド等の中性ガスを除去する。このガス処理装置1cを単独でも使用可能であるが、吸着量が少ないために頻繁に交換する必要がある。
【0043】
また、薬剤を添着する前の汚泥炭化物は前述したように水処理プロセスから排出される余剰汚泥を乾燥後、粒状に成形し炭化したものである。
【0044】
このように構成された第1実施形態のガス処理装置1a、1bにおいては、吸着塔2内に、被処理ガス6に含まれる除去対象ガスの種類に対応した種別の薬剤を添着した酸添着汚泥炭化物3又はアルカリ添着汚泥炭化物4を収納している。また、薬剤を添着する前の汚泥炭化物は前述したように水処理プロセスから排出される余剰汚泥を乾燥後、粒状に成形し炭化したものである。
【0045】
したがって、水処理プロセスで生じた汚泥に対して、ガス吸着機能を向上させるための複雑な処理工程を追加することなく、通常の脱水、乾燥形成、炭化工程で得られた汚泥炭化物を用いて、被処理ガス6に含まれる有害ガスや悪臭ガスを効率的にかつ低い運転費用(ランニングコスト)で除去できる。
【0046】
(第2実施形態)
図6(a)は本発明の第2実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図である。図1(a)(b)に示す第1実施形態のガス処理装置1a、1bと同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0047】
この第2実施形態のガス処理装置1dにおいては、1基の吸着塔2内に、被処理ガス6の通流方向に向かって、酸添着汚泥炭化物3及びアルカリ添着汚泥炭化物4が積層されている。その他の構成は図1(a)(b)に示す第1実施形態のガス処理装置1a、1bと同一である。
【0048】
このように構成された第2実施形態のガス処理装置1dにおいては、被処理ガス6に除去対象ガスとして、アルカリ性ガスと酸性ガスとが含まれる場合であっても、吸着塔2内を通流する過程で、アルカリ性ガスは酸添着汚泥炭化物3で吸着され、酸性ガスはアルカリ添着汚泥炭化物4で吸着される。なお、被処理ガス6にアルカリ性ガスが酸性ガスより多く含まれる場合は、図示するように、酸添着汚泥炭化物3を下段に配置し、酸性ガスがアルカリ性ガスより多く含まれる場合は、アルカリ添着汚泥炭化物4を下段に配置する。このように、被処理ガス6含まれる複数の除去対象ガスのうち、多い方の除去対象ガスに対応する添着汚泥炭化物3、4を被処理ガス6の流路の上流側に配置することによって、被処理ガス6に含まれる除去対象ガスをより効率的に除去できる。
【0049】
(第3実施形態)
図6(b)は本発明の第3実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図である。図6(a)に示す第2実施形態のガス処理装置1dと同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0050】
この第3実施形態のガス処理装置1eにおいては、1基の吸着塔2内に、被処理ガス6の通流方向に向かって、酸添着汚泥炭化物3、アルカリ添着汚泥炭化物4、及び無添着汚泥炭化物5が積層されている。その他の構成は図6(a)に示す第2実施形態のガス処理装置1dと同一である。
【0051】
このように構成された第3実施形態のガス処理装置1eにおいては、被処理ガス6に除去対象ガスとして、アルカリ性ガスと酸性ガスと中性ガスとが含まれる場合であっても、被処理ガス6が吸着塔2内を通流する過程で、アルカリ性ガスは酸添着汚泥炭化物3で吸着され、酸性ガスはアルカリ添着汚泥炭化物4で吸着され、中性ガスは無添着汚泥炭化物5で吸着される。
【0052】
なお、被処理ガス6にアルカリ性ガスが酸性ガスより多く含まれる場合は、図示するように、酸添着汚泥炭化物3を下段に配置し、酸性ガスがアルカリ性ガスより多く含まれる場合は、アルカリ添着汚泥炭化物4を下段に配置する。
【0053】
しかし、たとえ、中性ガスがアルカリ性ガスや酸性ガスより多く含まれる場合であっても、無添着汚泥炭化物5は被処理ガス6の通流方向の最下流に設置する。この理由は、無添着汚泥炭化物5は、図3に示したように、中性ガスの他に、アルカリ性ガスや酸性ガスも吸着するので、被処理ガス6の最上流に配設すると、アルカリ性ガスや酸性ガスを大量に吸着して、中性ガスを効率的に吸着しない。この残留した中性ガスは酸添着汚泥炭化物3やアルカリ添着汚泥炭化物4で吸着されないので、被処理ガス6のアルカリ性ガスや酸性ガスを酸添着汚泥炭化物3やアルカリ添着汚泥炭化物4で吸着したのちに、この被処理ガス6に残留する中性ガスを無添着汚泥炭化物5で効率的に吸着する必要があるからである。
【0054】
このように構成された第3実施形態のガス処理装置1eにおいては、1基の吸着塔2でもって、被処理ガス6に除去対象ガスとして、アルカリ性ガスと酸性ガスと中性ガスとが含まれる場合であっても、この除去対象ガスは吸着塔2内を通流する過程で吸着され、処理済ガス12として排気される。
【0055】
(第4実施形態)
図6(c)(d)は本発明の第4実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図である。図6(a)に示す第2実施形態のガス処理装置1dと同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0056】
図6(c)に示すガス処理装置1fにおいては、1基の吸着塔2内に、被処理ガス6の通流方向に向かって、酸添着汚泥炭化物3及び無添着汚泥炭化物5が積層されている。また、図6(d)に示すガス処理装置1gにおいては、1基の吸着塔2内に、被処理ガス6の通流方向に向かって、アルカリ添着汚泥炭化物4及び無添着汚泥炭化物5が積層されている。
【0057】
このように構成された第4実施形態のガス処理装置1fにおいては、除去対象ガスとしてアルカリ性ガスと中性ガスを含む被処理ガス6に対して効率的に除去対象ガスを除去できる。また、ガス処理装置1gにおいては、除去対象ガスとして酸性ガスと中性ガスを含む被処理ガス6に対して効率的に除去対象ガスを除去できる。
【0058】
(第5実施形態)
図7(a)(b)は本発明の第5実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図である。図1(a)(b)に示す第1実施形態のガス処理装置1a、1bと同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0059】
この第5実施形態のガス処理装置13a、13bにおいては、第1実施形態のガス処理装置1a、1bの吸着塔2と同一構成の2基の吸着塔2a、2cが連絡管14で直列に接続されている。
【0060】
そして、図7(a)のガス処理装置13aの前段の吸着塔2aには酸添着汚泥炭化物3が収納され、後段の吸着塔2cには無添着汚泥炭化物5が収納されている。このガス処理装置13aにおいては、除去対象ガスとしてアルカリ性ガスと中性ガスを含む被処理ガス6に対して効率的に除去対象ガスを除去できる。
【0061】
すなわち、被処理ガス6は、導入管9、前段の吸着塔2a、連絡管14、後段の吸着塔2c、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。被処理ガス6のアルカリ性ガスは前段の吸着塔2aの酸添着汚泥炭化物3で吸着され、被処理ガス6の中性ガスは後段の吸着塔2cの無添着汚泥炭化物5で吸着される。
【0062】
図7(b)のガス処理装置13bの前段の吸着塔2aにはアルカリ添着汚泥炭化物4が収納され、後段の吸着塔2cには無添着汚泥炭化物5が収納されている。このガス処理装置13aにおいては、除去対象ガスとして酸性ガスと中性ガスを含む被処理ガス6に対して効率的に除去対象ガスを除去できる。
【0063】
すなわち、被処理ガス6は、導入管9、前段の吸着塔2a、連絡管14、後段の吸着塔2c、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。被処理ガス6の酸性ガスは前段の吸着塔2aのアルカリ添着汚泥炭化物4で吸着され、被処理ガス6の中性ガスは後段の吸着塔2cの無添着汚泥炭化物5で吸着される。
【0064】
したがって、図6(c)(d)に示した第4実施形態のガス処理装置1f、1gとほぼ同様の作用効果を奏することが可能である。
【0065】
(第6実施形態)
図8(a)(b)は本発明の第6実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図である。図7(a)(b)に示す第5実施形態のガス処理装置13a、13bと同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0066】
この第6実施形態のガス処理装置13c、13dにおいては、第1実施形態のガス処理装置1a、1bの吸着塔2と同一構成の3基の吸着塔2a、2b、2cが連絡管14a、14bで直列に接続されている。
【0067】
そして、図8(a)のガス処理装置13cの前段の吸着塔2aには酸添着汚泥炭化物3が収納され、中段の吸着塔2bにはアルカリ添着汚泥炭化物4が収納され、後段の吸着塔2cには無添着汚泥炭化物5が収納されている。このガス処理装置13cにおいては、除去対象ガスとして含有率が大きいアルカリ性ガスと含有率が小さい酸性ガスと中性ガスとを含む被処理ガス6に対して効率的に除去対象ガスを除去できる。
【0068】
すなわち、被処理ガス6は、導入管9、前段の吸着塔2a、連絡管14a、中段の吸着塔2b、連絡管14b、後段の吸着塔2c、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。被処理ガス6のアルカリ性ガスは前段の吸着塔2aの酸添着汚泥炭化物3で吸着され、被処理ガス6の酸性ガスは中段の吸着塔2bのアルカリ添着汚泥炭化物4で吸着され、被処理ガス6の中性ガスは後段の吸着塔2cの無添着汚泥炭化物5で吸着される。
【0069】
また、図8(b)のガス処理装置13dの前段の吸着塔2aにはアルカリ添着汚泥炭化物4が収納され、中段の吸着塔2bには酸添着汚泥炭化物3が収納され、後段の吸着塔2cには無添着汚泥炭化物5が収納されている。このガス処理装置13cにおいては、除去対象ガスとして含有率が大きい酸性ガスと含有率が小さいアルカリ性ガスと中性ガスとを含む被処理ガス6に対して効率的に除去対象ガスを除去できる。
【0070】
すなわち、被処理ガス6は、導入管9、前段の吸着塔2a、連絡管14a、中段の吸着塔2b、連絡管14b、後段の吸着塔2c、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。被処理ガス6の酸性ガスは前段の吸着塔2aのアルカリ添着汚泥炭化物4で吸着され、被処理ガス6のアルカリ性ガスは中段の吸着塔2bの酸添着汚泥炭化物3で吸着され、被処理ガス6の中性ガスは後段の吸着塔2cの無添着汚泥炭化物5で吸着される。
【0071】
したがって、図6(b)に示した第3実施形態のガス処理装置1eとほぼ同様の作用効果を奏することが可能である。
【0072】
(第7実施形態)
図9は本発明の第7実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図である。図8(a)(b)に示す第6実施形態のガス処理装置13c、13dと同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0073】
この第7実施形態のガス処理装置13eにおいては、図6(b)に示す、第3実施形態のガス処理装置1eの吸着塔2と同一構成の3基の吸着塔2a、2b、2cが連絡管14a、14bで直列に接続されている。各吸着塔2a、2b、2c内には、被処理ガス6の通流方向に向かって、酸添着汚泥炭化物3、アルカリ添着汚泥炭化物4、及び無添着汚泥炭化物5が積層されている。
【0074】
さらに、各吸着塔2a、2b、2cの被処理ガス6の流入口と流出口にはそれぞれバルブ16a、16b、16c、16d、16e、16fが取付けられている。また、バルブ16aと連絡管14aとの間には連通バルブ15aが設けられ、連絡管14aとバルブ16dとの間には連通バルブ15bが設けられ、バルブ16cと連絡管14bとの間には連通バルブ15cが設けられ、連絡管14bと排出管10との間には連通バルブ15dが設けられている。
【0075】
このように構成された第7実施形態のガス処理装置13eにおいては、各吸着塔2a、2b、2cの被処理ガス6の流入口と流出口の各バルブ16a〜16fを開放し、各連通バルブ15a〜15dを閉じると、導入管9へ入力した、被処理ガス6は、導入管9、前段の吸着塔2a、連絡管14a、中段の吸着塔2b、連絡管14b、後段の吸着塔2c、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。
【0076】
そして、この被処理ガス6が前段の吸着塔2aを通流する過程で、この被処理ガス6に含まれるアルカリ性ガスは酸添着汚泥炭化物3で吸着され、酸性ガスはアルカリ添着汚泥炭化物4で吸着され、中性ガスは無添着汚泥炭化物5で吸着される。この一連の吸着工程を、中段の吸着塔2b、後段の吸着塔2cで繰返し、最後に、排出管10から処理済ガス12として排気される。
【0077】
そして、長時間吸着している間に、前段の吸着塔2a、中段の吸着塔2b、後段の吸着塔2cの順に収納されている酸添着汚泥炭化物3、アルカリ添着汚泥炭化物4、無添着汚泥炭化物5が劣化し吸着しなくなる。このため、前段の吸着塔2aから順番に、収納されている酸添着汚泥炭化物3、アルカリ添着汚泥炭化物4、無添着汚泥炭化物5を新しい酸添着汚泥炭化物3、アルカリ添着汚泥炭化物4、無添着汚泥炭化物5に交換していく必要がる。
【0078】
前段の吸着塔2aの各汚泥炭化物3、4、5を交換する場合、前段の吸着塔2aの流入口と流出口の各バルブ16a、16bを閉じ、連通バルブ15aを開放する。すると、被処理ガス6は、導入管9、連通バルブ15a、中段の吸着塔2b、連絡管14b、後段の吸着塔2c、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。したがって、被処理ガス6中に含まれるアルカリ性ガス、酸性ガス、中性ガス等の除去対象ガスは中段の吸着塔2b及び後段の吸着塔2cで除去される。
【0079】
この状態で、前段の吸着塔2aの各汚泥炭化物3、4、5を新規の各汚泥炭化物3、4、5に交換する。なお、吸着塔2aから取り除かれた劣化した各汚泥炭化物3、4、5は一般的に破棄されるが、費用面を考慮しなければ、劣化した各汚泥炭化物3、4、5を500〜700℃で再度炭化して、再使用することも可能である。
【0080】
各汚泥炭化物3、4、5の交換が終了すると、各バルブ16a、16b、連通バルブ15aを元の状態に戻す。
【0081】
次に、中段の吸着塔2bの各汚泥炭化物3、4、5を交換する場合、中段の吸着塔2bの流入口と流出口の各バルブ16c、16dを閉じ、連通バルブ15cを開放する。すると、被処理ガス6は、導入管9、前段の吸着塔2a、連絡管14a、連通バルブ15c、後段の吸着塔2c、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。したがって、被処理ガス6中に含まれるアルカリ性ガス、酸性ガス、中性ガス等の除去対象ガスは前段の吸着塔2a及び後段の吸着塔2cで除去される。
【0082】
さらに、後段の吸着塔2cの各汚泥炭化物3、4、5を交換する場合、後段の吸着塔2cの流入口と流出口の各バルブ16e、16fを閉じ、連通バルブ15dを開放する。すると、被処理ガス6は、導入管9、前段の吸着塔2a、連絡管14a、中段の吸着塔2b、連絡管14b、連通バルブ15d、排出管10を通流して、処理済みガス12として排気される。したがって、被処理ガス6中に含まれるアルカリ性ガス、酸性ガス、中性ガス等の除去対象ガスは前段の吸着塔2a及び中段の吸着塔2bで除去される。
【0083】
このように構成された第7実施形態のガス処理装置13eにおいては、各吸着塔2a、2b、2c内に収納された汚泥炭化物3、4、5を各吸着塔2a、2b、2c毎に時間をずらせて交換でき、交換期間中においてもガス処理装置13eの稼働状態を維持でき、優れた効果を得ることができる。
【0084】
なお、各吸着塔2a、2b、2c内に収納されている酸添着汚泥炭化物3、アルカリ添着汚泥炭化物4、及び無添着汚泥炭化物5の各充填量は、被処理ガス6に含まれる除去対象ガスであるアルカリ性ガス、酸性ガス、中性ガスの組成及び濃度(含有率 例えば100:20:5)に応じて、当該除去対象ガスの各汚泥炭化物(酸添着汚泥炭化物3、アルカリ添着汚泥炭化物4、無添着汚泥炭化物5)の吸着容量(吸着量mg/g)から計算した値とし、吸着容量は、事前に小型試験装置で求めた値を用いることも可能である。
【0085】
こうすると、各汚泥炭化物3、4、5の3基の吸着塔2a、2b、2cが同じように劣化し、汚泥炭化物3、4、5の能力を有効に使用することができる。また寿命が各吸着塔2a、2b、2cでほぼ同時になるので一度に3基の吸着塔2a、2b、2cを交換することができ、前述した連続稼働が必須条件でなければ、各吸着塔2a、2b、2cを劣化した順に交換するより交換の手間が省ける。
【0086】
(第8実施形態)
図10は本発明の第8実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図である。図9に示す第7実施形態のガス処理装置13eと同一部分には同一符号を付して、重複する部分の詳細説明は省略する。
【0087】
この第8実施形態のガス処理装置17においては、図6(b)の第3実施形態のガス処理装置1eの吸着塔2と同一構成の3基の吸着塔2d、2e、2fが、導入管9に連通する供給管18aと排出管10に連通する出力管18bとで並列に接続されている。各吸着塔2d、2e、2fには、被処理ガス6の通流方向に向かって、酸添着汚泥炭化物3、アルカリ添着汚泥炭化物4、及び無添着汚泥炭化物5が積層されている。
【0088】
各吸着塔2d、2e、2fの被処理ガス6の流入口と流出口にはそれぞれバルブ16a、16b、16c、16d、16e、16fが取付けられている。さらに、導入管9には、このガス処理装置17に流入する被処理ガス6のガス流入量Qを計量するガス流量計19が設けられている。このガス流量計19で計量されたガス流入量Qは、コンピュータからなる監視制御部20へ送出される。
【0089】
監視制御部20内において、ガス流量計19から入力されたガス流入量Q(m3/s)は、流入量検出部21でデジタルのガス流入量Qに変換されて、稼働吸着塔数判定部22へ入力される。稼働吸着塔数判定部22内には、吸着塔2d、2e、2fの1基当たりの被処理ガス6のガス量の最適処理範囲(Amim〜Amax(m3/s))が記憶され、稼働吸着塔数判定部22は、入力されたガス流入量Qをこの最適処理範囲(Amim〜Amax(m3/s))で除算することによって、稼働すべき吸着塔2d、2e、2fの基数を判定して、次の開放バルブ決定部23へ送出する。
【0090】
開放バルブ決定部23は、稼働吸着塔数判定部22ら稼働すべき吸着塔の基数「1」が入力されると、吸着塔2dの流入口と流出口のバルブ16a、16bのみの開放指令をバルブ開閉駆動部24へ送出する。バルブ開閉駆動部24はバルブ16a、16bを開放する。
【0091】
その結果、被処理ガス6は、導入管9、供給管18a、吸着塔2d、出力管18b、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。したがって、被処理ガス6中に含まれるアルカリ性ガス、酸性ガス、中性ガス等の除去対象ガスは吸着塔2dで除去される。
【0092】
開放バルブ決定部23は、稼働吸着塔数判定部22ら稼働すべき吸着塔の基数「2」が入力されると、吸着塔2d、吸着塔2eの流入口と流出口のバルブ16a、16b、16c、16dの開放指令をバルブ開閉駆動部24へ送出する。バルブ開閉駆動部24はバルブ16a、16b、16c、16dを開放する。
【0093】
その結果、被処理ガス6は、導入管9、供給管18a、(吸着塔2d,2e)、出力管18b、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。したがって、被処理ガス6中に含まれるアルカリ性ガス、酸性ガス、中性ガス等の除去対象ガスは吸着塔2d、2eで除去される。
【0094】
開放バルブ決定部23は、稼働吸着塔数判定部22ら稼働すべき吸着塔の基数「3」が入力されると、吸着塔2d、吸着塔2e、吸着塔2fの流入口と流出口のバルブ16a、16b、16c、16d、16e、16fの開放指令をバルブ開閉駆動部24へ送出する。バルブ開閉駆動部24はバルブ16a、16b、16c、16d、16e、16fを開放する。
【0095】
その結果、被処理ガス6は、導入管9、供給管18a、(吸着塔2d,2e、2f)、出力管18b、排出管10を通流して、処理済ガス12として排気される。したがって、被処理ガス6中に含まれるアルカリ性ガス、酸性ガス、中性ガス等の除去対象ガスは吸着塔2d、2e、2fで除去される。
【0096】
このように構成された第8実施形態のガス処理装置17においては、たとえ、このガス処理装置17に流入する被処理ガス6のガス流入量Qが変動したとしても、その時点におけるガス流入量Qに最適の基数の吸着塔2d、2e、2fが稼働するので、各吸着塔2d、2e、2fを最適の条件で運転でき、被処理ガス6に含まれる除去対象ガスを効率的に除去できるとともに、ガス処理装置17全体の運転費用(ランニングコスト)を低減できる。
【0097】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。直列接続される吸着塔の基数は2、3に限定されるものではなく、同様に、並列接続される吸着塔の基数も3に限定されるものではい。ガス処理装置に流入する被処理ガスのガス流入量に応じて最適の基数に設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図
【図2】本発明に関連するガス処理装置の概略構成を示す模式図
【図3】本発明の動作原理を実証するために行った汚泥炭化物におけるガス吸着特性の実験結果を示す図
【図4】同じく汚泥炭化物におけるガス吸着特性の実験結果を示す図
【図5】同じく汚泥炭化物におけるガス吸着特性の実験結果を示す図
【図6】本発明の第2、3、4実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図
【図7】本発明の第5実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図
【図8】本発明の第6実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図
【図9】本発明の第7実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図
【図10】本発明の第8実施形態のガス処理方法が適用されるガス処理装置の概略構成を示す模式図
【符号の説明】
【0099】
1a〜1g,13a〜13e,17…ガス処理装置、2,2a〜2f…吸着塔、3…酸添着汚泥炭化物、4…アルカリ添着汚泥炭化物、5…無添着汚泥炭化物、6…被処理ガス、7…加圧ポンプ、8,11,16a〜16f…バルブ、9…導入管、10…排出管、12…処理済ガス、14a,14b…連絡管、15a〜15d…連通バルブ、18a…供給管、18b…出力管、19…ガス流量計、20…監視制御部、21…流入量検出部、22…稼働吸着塔数判定部、23…開放バルブ決定部、24…バルブ開閉駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を吸着塔に収納し、この吸着塔に除去対象ガスを含む被処理ガスを通流させて、この被処理ガスが前記吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法において、
前記吸着塔に収納する汚泥炭化物にアルカリ性薬剤及び酸性薬剤の少なくともいずれか一方の薬剤を添着することを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項2】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を吸着塔に収納し、この吸着塔に除去対象ガスを含む被処理ガスを通流させて、この被処理ガスが前記吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法において、
前記吸着塔内に、酸性薬剤が添着された汚泥炭化物とアルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物のいずれか一方の汚泥炭化物と、薬剤が添着されていない汚泥炭化物とを直列に積層して収納することを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項3】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を吸着塔に収納し、この吸着塔に除去対象ガスを含む被処理ガスを通流させて、この被処理ガスが前記吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法において、
前記吸着塔内に、酸性薬剤添着された汚泥炭化物と、アルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物と、薬剤が添着されていない汚泥炭化物とを直列に積層して収納することを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項4】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を直列接続された2基の吸着塔に収納し、除去対象ガスを含む被処理ガスを直列接続された2基の吸着塔における前段の吸着塔から後段の吸着塔へ順次通流させて、この被処理ガスが前記各吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記後段の吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法であって、
前記前段の吸着塔に収納された汚泥炭化物は、前記被処理ガスに含まれる除去対象ガスの組成及び濃度に応じて予め定められた酸性薬剤又はアルカリ性薬剤を添着するとともに、前記後段の吸着塔に収納された汚泥炭化物に薬剤を添着しないことを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項5】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を直列接続された3基の吸着塔に収納し、除去対象ガスを含む被処理ガスを直列接続された3基の吸着塔における前段の吸着塔から中段の吸着塔及び後段の吸着塔へ順次通流させて、この被処理ガスが前記各吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記後段の吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法であって、
前記前段の吸着塔に収納された汚泥炭化物及びに中段の汚泥炭化物は、前記被処理ガスに含まれる除去対象ガスの組成及び濃度に応じて予め定められた、アルカリ性薬剤と酸性薬剤との組合せ、又は酸性薬剤とアルカリ性薬剤との組合せを添着するとともに、前記後段の吸着塔に収納された汚泥炭化物に薬剤を添着しないことを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項6】
前記アルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物の吸着塔への充填量、前記酸性薬剤が添着された汚泥炭化物の吸着塔への充填量、及び薬剤が添着されていない汚泥炭化物の吸着塔への充填量は、前記被処理ガスに含まれる除去対象ガスの組成及び濃度に応じて、当該除去対象ガスの前記各汚泥炭化物の吸着容量から計算することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載の汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項7】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を並列接続された複数基の吸着塔に収納し、除去対象ガスを含む被処理ガスを前記並列接続された複数の吸着塔へ通流させて、この被処理ガスが前記各吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記各吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理方法であって、
前記並列接続された複数の吸着塔の各吸着塔内に、前記被処理ガスの通流方向に向かって、酸性薬剤添着された汚泥炭化物と、アルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物と、薬剤が添着されていない汚泥炭化物とを直列に積層して収納することを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項8】
前記被処理ガスのガス流入量を計量し、この計量されたガス流入量に応じて、前記並列接続された複数基の吸着塔における前記被処理ガスを通流させる吸着塔の基数を制御することを特徴とする請求項7記載の汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項9】
前記酸性薬剤は、リン酸、硫酸、クエン酸等の酸性物質であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項10】
前記アルカリ性薬剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ性物質であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の汚泥炭化物によるガス処理方法。
【請求項11】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を吸着塔に収納し、この吸着塔に除去対象ガスを含む被処理ガスを通流させて、この被処理ガスが前記吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理装置において、
前記吸着塔に収納された汚泥炭化物は、アルカリ性薬剤及び酸性薬剤の少なくともいずれか一方の薬剤が添着されていることを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理装置。
【請求項12】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を直列接続された2基の吸着塔に収納し、除去対象ガスを含む被処理ガスを直列接続された2基の吸着塔における前段の吸着塔から後段の吸着塔へ順次通流させて、この被処理ガスが前記各吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記後段の吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理装置であって、
前記前段の吸着塔に収納された汚泥炭化物は、前記被処理ガスに含まれる除去対象ガスの組成及び濃度に応じて予め定められた酸性薬剤又は及びアルカリ性薬剤が添着され、前記後段の吸着塔に収納された汚泥炭化物は、薬剤が添着されていないことを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理装置。
【請求項13】
水処理プロセスで生じた汚泥を脱水、乾燥した後炭化炉で炭化して得られた汚泥炭化物を並列接続された複数基の吸着塔に収納し、除去対象ガスを含む被処理ガスを前記並列接続された複数の吸着塔へ通流させて、この被処理ガスが前記各吸着塔内を通流する過程で被処理ガスに含まれる除去対象ガス成分を前記汚泥炭化物に吸着させて、前記除去対象ガス成分が除去された処理済ガスを前記各吸着塔から出力させる汚泥炭化物によるガス処理装置であって、
前記並列接続された複数の吸着塔の各吸着塔内に、前記被処理ガスの通流方向に向かって、酸性薬剤添着された汚泥炭化物と、アルカリ性薬剤が添着された汚泥炭化物と、薬剤が添着されていない汚泥炭化物とが直列に積層して収納されていることを特徴とする汚泥炭化物によるガス処理装置。
【請求項14】
前記被処理ガスのガス流入量を計量するガス流量計と、前記各吸着塔の被処理ガスの流入路に設けられた複数のバルブと、前記ガス流量計で計量されたガス流入量に応じて、前記各バルブを開閉制御することによって、前記並列接続された複数基の吸着塔における前記被処理ガスを通流させる吸着塔の基数を制御する稼働吸着塔数制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項13記載の汚泥炭化物によるガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−111649(P2007−111649A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307017(P2005−307017)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】