説明

汚泥特性の改善

【課題】汚泥がバルキングする傾向を減少させることによる汚泥特性の改善を提供する。
【解決手段】アルキル置換ホスホニウム化合物、アルキル置換ホスフィン、アルキル置換ホスフィン縮合物又は第四アンモニウム重合体化合物を含む非酸化性水溶性殺生物剤の使用により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥特性の改善に水溶性殺生物剤を使用すること、特に汚泥のバルキング傾向を減少させることによる汚泥特性の改善に非酸化性水溶性殺生物剤を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
工業廃水及び都市廃水を処理する際に、汚泥の特性が変化し得る。バルキングへの傾向を有せず、且つ、比較的高い沈降速度を有し、そのため清水から容易に分離できる良好な特性の汚泥を得ることが好ましい。そうでなければ、該廃水は、混濁のおそれがあるため、これが排水される水(例えば、河川水)を汚染させるであろう。
【0003】
特に、汚泥中に比較的低レベルの糸状菌及び/又は比較的短い糸状の細菌が存在することが好ましい。というのは、糸状菌の存在、特に長さの長い糸状菌の存在は、汚泥のバルキングを引き起こし得るからである。
【0004】
また、汚泥中に原生動物及び/又は他の高等生物(蠕虫類を含む)も存在することが好ましい。というのは、これらのものは汚泥の特性を改善させるからである。これは、停止−成長の系にある多くの原生動物及びワムシ類が細菌をえさにする捕食者であるためである。従って、これらのものは、分散した微生物及び有機体をえさとするため凝集及び浄化の両方を向上させると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、汚泥の特性を改善させる方法に対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の態様では、汚泥特性の改善のための有効量の水溶性殺生物剤の使用を提供する。
【0007】
特に、本発明は、汚泥のバルキング傾向を減少させることによる汚泥特性の改善のための有効量の非酸化性水溶性殺生物剤の使用であって、該殺生物剤がアルキル置換ホスホニウム化合物、アルキル置換ホスフィン、アルキル置換ホスフィン縮合物又は第四アンモニウム重合体化合物を含む使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、フラッシュ混合の方法を例示する図である。
【図2】図2は、半連続ケモスタット反応装置系の図である。
【図3】図3A〜Cは、様々な量の殺生物剤を添加することによって達成された汚泥の沈殿を示す写真図である。
【図4】図4A〜Cは、様々な量の殺生物剤を添加した後の汚泥を示す顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましくは、水溶性殺生物剤は、モールマン指標によって測定されるときの汚泥容量指標(SVI)を200cm3/g以下、好ましくは180cm3/g以下、より好ましくは170cm3/g以下、最も好ましくは150cm3/g以下、例えば140cm3/g以下に低下させることによる汚泥特性の改善に使用される。
【0010】
好ましくは、水溶性殺生物剤は、糸状菌のレベルを低下させることによる汚泥特性の改善に使用される。高いSVI(>300cm3/g)によって特徴付けられる糸状菌によるバルキングの場合には、糸状菌の減少は、上記のような好ましいレベルまでのSVIの有意な低下によって検出できる。糸状菌のレベルは、該細菌を死滅させることによって永久的に、又は、例えば該細菌を不活性化させることによって一時的に低下し得る。糸状菌を実際に死滅させるのに有効な量よりむしろ、糸状菌のレベルを一時的に低下させるのに有効な量で水溶性殺生物剤を添加することが好ましい。これはさらに低い分量の殺生物剤を使用することを可能にするが、それによってさらに経済的となる。さらに、該細菌を死滅させるレベルで殺生物剤を使用すると、汚泥活性に過度の影響を及ぼし得るが、これは廃水処理方法における多数の工程で望ましくない。
【0011】
糸状菌の減少とは、好ましくは、SVIが予備処理SVI値の80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは55%以下のような60%以下、例えば50%以下にまで低下するということである。
【0012】
特に、水溶性殺生物剤を、次のもの:チオトリクス属(Thiothrix sp.)021N型、H. hydrossis 0092型、N. limicola 0041型及び0803型から選択される1種以上の糸状菌のレベルを低下させることによる汚泥特性の改善に使用することが好ましい。
【0013】
代わりに又はさらに、水溶性殺生物剤は、好ましくは、長く連鎖した糸状菌のレベルを低下させることによる汚泥特性の改善に使用できる。長く連鎖した糸状菌のレベルは、長く連鎖した糸状菌を死滅させることによって永久的に、又は、例えば長く連鎖した糸状菌を不活性化させたり長く連鎖した糸状菌をそれよりも短い糸状体に破壊させたりすることによって一時的に低下できる。長く連鎖した糸状菌を実際に死滅させるのに有効な量よりもむしろ該細菌のレベルを一時的に低下させるのに有効な量で水溶性殺生物剤を添加することが好ましい。これはさらに低い殺生物剤の分量を使用することを可能にし、それによってさらに経済的になる。さらに、細菌を死滅させるレベルで殺生物剤を使用すると、汚泥活性に過度の影響を及ぼし得るが、これは廃水処理方法の多数の工程で望ましくない。
【0014】
好ましくは、>500μmの長さを有する長く連鎖した糸状菌のレベルが低下し、好ましくは、例えば>600μmの長さを有する長く連鎖した糸状菌のレベルが低下し得る。好ましくは、>500μmの長さを有する長く連鎖した糸状菌のレベルが2分の1以下、より好ましくは3分の1以下、最も好ましくは4分の1以下、例えば約5分の1低下する。
【0015】
顕微鏡視野当たりの糸状体全長が減少するように糸状菌のレベルを低下させることによる汚泥特性の改善に水溶性殺生物剤を使用することが特に好ましい。好ましくは、顕微鏡視野当たりの糸状体全長は、2分の1以下、より好ましくは3分の1以下、最も好ましくは7分の1以下のような5分の1以下、例えば約10分の1減少する。
【0016】
好ましくは、汚泥特性の改善に使用される水溶性殺生物剤の有効量は、原生動物及び/又は他の高等生物のレベルを低下させず、且つ、原生動物及び/又は他の高等生物のレベルをさらに増大させ得る。
【0017】
好ましくは、汚泥特性の改善に使用される水溶性殺生物剤の有効量は、汚泥活性を減少させず、且つ、汚泥活性を増大させ得る。
【0018】
使用される水溶性殺生物剤の有効量は、好適には0.01〜5000ppm、例えば0.1〜1000ppmのような0.05〜3000ppmである。好ましくは、該使用量は0.05〜500ppm、例えば0.5〜200ppmのような0.1〜300ppmである。より好ましくは、該使用量は、0.1〜100ppm、例えば0.5〜80ppm、例えば0.75〜50ppm、例えば1〜40ppmである。最も好ましくは、該使用量は、0.1〜30ppm、好ましくは0.5〜25ppm、例えば0.75〜20ppm、例えば1〜15ppmである。一具体例では、該使用量は、0.5〜20ppm、好ましくは1〜10ppm、例えば2〜7ppm、例えば3〜5ppmである。好適な量は、勿論、処理されるべき汚泥の初期特性及び望まれる特性の改善に依存する。
【0019】
斯界には、酸化性水溶性殺生物剤と非酸化性水溶性殺生物剤の両方が知られている。本発明で使用される水溶性殺生物剤は非酸化性である。非酸化性殺生物剤は不活性有機物質とさほど反応しないため、細菌にさらに特異的に作用すると考えられる。
【0020】
該殺生物剤は、任意の水系に適用するために好適なものであるべきであり、そのため、好ましくは低い環境毒性を有するものであるべきである。例えば、環境での持続性が短い殺生物剤及び/又は良好な生分解性を有する殺生物剤が好ましい。
【0021】
従って、水性環境に使用するのが好適ではないことが知られている殺生物剤、例えば、比較的高い環境毒性を有する殺生物剤(例えば、フェノール化合物、例えば2,4−ジニトロフェノール及びp−ニトロフェノール;シアン化カリウムのようなシアン化物含有化合物;酢酸トリフェニル錫のような錫化合物;及びトルエン)は、本発明では使用しない。
【0022】
本発明で使用される非酸化性水溶性殺生物剤は、アルキル置換ホスホニウム化合物、又はアルキル置換ホスフィン、又はアルキル置換ホスフィン縮合物、又は第四アンモニウム重合体化合物を含む。
【0023】
この非酸化性水溶性殺生物剤は、所望ならば、このような化合物の2種以上の混合物を含むことができる。或いは、該非酸化性水溶性殺生物剤は、このような化合物を1種だけ含むことができる。
【0024】
一具体例では、本発明で使用される非酸化性水溶性殺生物剤は、アルキル置換ホスホニウム化合物、又はアルキル置換ホスフィン、又はアルキル置換ホスフィン縮合物を含む。
【0025】
より好ましくは、該非酸化性水溶性殺生物剤は、式(I)のアルキル置換ホスホニウム化合物、又は式(II)のアルキル置換ホスフィン、又は式(III)の縮合物:
【化1】

(式中、
Xは陰イオンであり、
nは、mで表されるXの原子価であり、
それぞれのAは、同一又は異なっていてよく、そしてOH、ORa、SO3a、PO3a2、COOH、COORa、SO3H、PO32、CH2COOH、置換アルキル、アリール及び置換アミノ基から選択され、
それぞれのA基内のそれぞれのR及びそれぞれのRa(存在するならば)は、水素、C1〜C20アルキル、アリール、置換アルキル又はアリール、カルボキシ又はカルボキシエステルから独立して選択され、ここで、それぞれのCR2基は同一又は異なっていてよく、
R”は、2〜20個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、且つ、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ若しくはPR1mCH2OH基よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてよく及び/又は1個以上のエーテル若しくはカルボニル結合で中断されていてよく、
それぞれのR1は、独立して、1〜25個の炭素原子を有する1価の炭化水素基であり、且つ、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ若しくはPR1vCH2OH基よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてよく及び/又は1個以上のエーテル若しくはカルボニル結合で中断されていてよく、
式(III)において、それぞれのvは1又は2であり、kは0〜10(例えば1〜10)であり、xは、v=2を有する分子内における基数であり、そして、Xは該化合物が水溶性であるように原子価yの交換可能な陰イオンである。)
を含む。
【0026】
Xは、好ましくは、塩化物、スルフェート、ホスフェート、アセテート及び臭化物よりなる群から選択される。
【0027】
特に好ましい具体例では、アルキル置換ホスホニウム化合物は、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート(THPS)である。
【0028】
しかしながら、アルキル置換ホスホニウム化合物は、好ましくは、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムブロミド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムアセテート及びテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムホスフェートよりなる群から選択することもできる。
【0029】
アルキル置換ホスフィンは、好ましくは、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THP)である。
【0030】
縮合物は、好ましくは、トリス(ヒドロキシオルガノ)ホスフィンの縮合物、より好ましくはトリス(ヒドロキシオルガノ)ホスフィンと窒素含有化合物との縮合物である。
【0031】
窒素含有化合物は、好ましくは尿素である。或いは、該窒素含有化合物は、C1〜20アルキルアミン、ジシアンジアミド、チオ尿素及びグアニジンから選択できる。
【0032】
一具体例では、非酸化性水溶性殺生物剤は、第四アンモニウム重合体化合物、例えば、ポリオキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロリドを含むことができる。好適な第四アンモニウム重合体化合物としては、GLOKILL PQ(ロディア社から入手できる)が挙げられる。
【0033】
殺生物剤は、所望ならば、他の水溶性殺生物化合物をさらに含むことができる。例えば、このものは、
・第四アンモニウム化合物、例えば、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム及び塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム;
・高分子ビグアニド塩酸塩、例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩、ドデシルグアニジン塩酸塩;
・トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン;
・4,4−ジメチルオキサゾリジン;
・フェノキシプロパノール;
・フェノキシエタノール;
・グリオキサール;
・アクロレイン;
・アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド;
・トリアジン、例えば、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−1,3,5−ヘキサヒドロトリアジン;
・第四ホスホニウム化合物、例えば、塩化トリブチルテトラデシルホスホニウム及び塩化テトラデシルトリブチルホスホニウム;
・2−ブロム−4−ヒドロキシアセトフェノン;
・カルバメート、例えば、N−ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、エチレンビスジチオカルバミン酸二ナトリウム;
・t−ブチラジン;
・テトラクロル−2,4,6−シアノ−3−ベンゾニトリル;
・チアゾール及びイソチアゾール誘導体、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロル−2−メチル−3(2H)−イソチアゾロン及び1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン;
・活性化ハロゲン基を有する化合物、例えば、2−ブロム−2−ニトロプロパン−1, 3−ジオール;
・ビスクロルメチルスルホン、並びに
・メチレンビスチオシアネート
から選択される非酸化性化合物をさらに含むことができる。
【0034】
水溶性殺生物剤は、さらに、廃水処理に慣用されている次の化学物質のうち1種以上とともに処方できる:
界面活性剤;
消泡剤;
スケール防止剤;
防蝕剤;
殺生物剤;
凝集剤;
脱水助剤;及び
分散剤。
【0035】
汚泥は、工業廃水及び都市廃水からのものであることができる。特に、汚泥は、紙生産、食品加工及び化学工業プロセスを含め、産業プロセスからのものであることができ、又は住宅地及び工業地などからのものであることができる。
【0036】
水溶性殺生物剤は、水処理プロセス中に好適に使用でき、且つ、このようなプロセス中の任意の好適な時点で使用できる。特に、水溶性殺生物剤は、廃水処理プラントで実施される水処理プロセス中に好適に使用できる。該水溶性殺生物剤は、好ましくは、例えば、沈殿槽又はラグーンでの好気性消化工程後の水処理プロセス中に使用される。しかしながら、別法では、水溶性殺生物剤は、好気性消化工程の前又はその間に使用してもよい。
【0037】
水溶性殺生物剤は、汚泥への連続的な又は断続的な添加によって使用できる。好ましくは、水溶性殺生物剤は、例えば、必要に応じ該殺生物剤の1回以上の個別的な添加を使用することによって断続的に添加される。
【0038】
一具体例では、有効量の殺生物剤を汚泥に個別的に1回添加し、次いで、必要に応じ有効量の殺生物剤を汚泥に1回以上さらに個別的に添加する。特に、殺生物剤の第1回目の個別的な添加の後に、汚泥の特性を監視することができ(例えば、SVIを監視することによって)、そしてその特性が所望の基準(例えば、上記のような達成されるべき好ましい基準の一つ、例えば、モールマン指標によって測定されるときのSVIが200cm3/g以下であるという基準)を満たさないたび毎に、有効量の殺生物剤の汚泥へのさらなる個別的な添加を実施する。
【0039】
従って、有効量の殺生物剤を汚泥に2回以上個別的に添加することができ、そしてこれらの添加は、任意の好適な期間で区切ることができる。一具体例では、この期間は、12時間以上、例えば24時間以上、例えば48時間以上であることができる。
【0040】
好ましい具体例では、水溶性殺生物剤は、必要に応じ、沈殿槽又はラグーンでの1回以上の個別的な添加の使用によって、例えば、沈殿槽又はラグーンの入口での添加によって添加される。
【0041】
また、本発明は、汚泥のバルキング傾向を減少させることによる汚泥特性の改善方法であって、非酸化性水溶性殺生物剤を汚泥に添加することを含み、しかも殺生物剤がアルキル置換ホスホニウム化合物、アルキル置換ホスフィン、アルキル置換ホスフィン縮合物又は第四アンモニウム重合体化合物を含む汚泥特性の改善方法も提供する。
【0042】
この方法の好ましい特徴は、本発明の使用に関して上で議論した通りである。
【0043】
ここで、次の実施例及び添付した図面を参照して、本発明をほんの一例として説明する。
図1は、フラッシュ混合の方法を例示する図である。
図2は、半連続ケモスタット反応装置系の図である。
図3A〜3Cは、様々な量の殺生物剤を添加することによって達成された汚泥の沈殿を示す写真図である。
図4A〜4Cは、様々な量の殺生物剤を添加した後の汚泥を示す顕微鏡写真図である。
【0044】
図1を参照すると、典型的なバイオリアクターBが循環ラインRと共に示されており、その循環ラインに水溶性殺生物剤を注入することができる。該バイオリアクターは汚泥を含有するが、該汚泥は、本質的には、細菌、原生動物、蠕虫類及び菌類のような典型的な廃水処理微生物の塊である。該バイオリアクターBは、廃水用の注入口I及び処理水用の放水口Oを有する。汚泥は、ポンプPの手段によって該バイオリアクターから循環ラインRに抜き取られる。典型的には蠕動ポンプが使用される。候補の水溶性殺生物剤を、シリンジポンプNに連結された弁体によって循環ライン内の汚泥に導入する。商業規模のバイオリアクターでは、水溶性殺生物剤を、ティー接合部又は注入用よこ管を介して導入し、蠕動ポンプをプログレッシブキャビティーポンプと交換できることが理解されるであろう。これは、汚泥と水溶性殺生物剤とを直接接触させることを可能にする。水溶性殺生物剤をポンプPの後方又は前方の位置で循環ラインRに導入することができる。
【0045】
しかしながら、本発明の実施形態は、「フラッシュ混合」を使用することに限定されるものではなく、所望ならば他の供給方法を使用してもよい。
【実施例】
【0046】
例1:フラッシュ混合による半連続予備実験
1.装置
一連の半連続ケモスタット反応装置を組み立てて廃水処理プロセスをシミュレートした。半連続ケモスタット反応装置の配置を図2に示している。
該装置の中心部は、生物学的ケモスタット反応装置1である。該反応装置の容器2はガラス製で、10リットルの内部体積を有しており、しかもpH検出器3と、溶存酸素検出器4と、空気分散器5とが取り付けられている。このものは汚泥を含むが、この汚泥は、本質的に、典型的な廃水処理微生物の塊である。この反応装置は周囲温度(およそ20℃)で作動する。
シミュレートされる廃水13は別個の容器6に収容されており、そしてこれを4℃に維持して微生物腐敗を防止する。このものを、供給ライン7及び蠕動ポンプ8を介して反応器に移す。
該反応装置上には循環ライン9が設けられており、所定の長さの可撓性シリコーン管及び蠕動ポンプ10が備えられている。該蠕動ポンプは、汚泥を反応装置から取り出して循環ラインに送る。候補の水溶性殺生物剤をこのライン9に弁体11を介して導入するが、これはシリンジポンプ12で供給される。この系を使用して、水性殺生物剤と汚泥微生物との迅速な接触を確実にする「フラッシュ混合」を達成することが可能である。該循環ラインの内径は8mmであり、流速は1秒当たり0.5メートルであったが、これは、反応器に再度入る前に3秒の候補水溶性殺生物剤と汚泥との接触時間を与えた。
処理済み廃水17を該反応装置から出口ライン15を介して収集容器16に移す。
【0047】
2.手順
該反応装置にCourly社(フランス国リヨン)での都市廃水処理作業によって得られた汚泥を装入した。この汚泥を、プロセスを開始させるための「種」とした。次いで、反応装置に、5リットルの水準にまで、ほぼpH7.5に調整されたシミュレート廃水を満たし、そして曝気を開始した。該反応装置に、1日当たり800mLの速度で、表Bに示された配合通りのシミュレート廃水を連続的に供給した。
平日毎(すなわち1週間当たり5回)に、該バイオリアクターの内容物の13.3%を取り出して平衡を保持した。これによって汚泥の年齢が7.5日の範囲に確保された。
また、平日毎に、先に説明した調整後、候補の水溶性殺生物剤(希釈溶液として)を、フラッシュ混合循環ラインを介してこの系に注入した。該希釈溶液は、10グラムの炭酸水素ナトリウムをほぼ900mLの脱イオン水に溶解させ、次いで5グラムの候補の水溶性殺生物剤を添加し、そしてよく混合することによって調製した。次いで、混合物を脱イオン水で1リットルに合わせた。この希釈溶液の好適な容量を注入して所望の添加レベルを達成した。
この実験を52日間にわたって実施した後にこの系を閉鎖した。
【0048】
3.試験濃度
この試験では化合物Xを評価した。この化合物は、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート(THPS)の75%水溶液である。2種の濃度を評価した:2及び4ミリグラム/リットル/日並びに化合物Xで処理していない対照。
【0049】
4.結果
対照(未処理)での検討から、汚泥中での糸状菌の増殖が示されたが、これらは化合物Xで処理された系からの汚泥中には実質的に存在しなかった。
処理された汚泥中には、処理されていないものよりも有意に高い濃度の原生動物及び他の高等生物が存在していた。
化合物X処理は、汚泥凝集を害しなかった。
【0050】
5.解説
この研究から、低い添加レベルでの化合物Xフラッシュ処理が汚泥特性を有意に改善させ、さらに容易に凝集するため操作上の利益を提供するであろう汚泥を生じさせることができることが確証された。
【0051】
シミュレート廃水組成物
【表1】

【0052】
例2:試験管沈殿試験
1.手順
試料を、該試験の開始後48日目に、例1で説明した半連続反応装置から得、そして試験管の中に置いた。
例1の反応装置内で試験した化合物X濃度のそれぞれの試料をこの試験で評価した。従って、2及び4ミリグラム/リットル/化合物Xの処理日を有する試料を試験し、同様に化合物Xによって処理されていない対照も試験した。
これらの試験管を1時間の沈殿時間にわたって放置して汚泥を水から沈殿させた。
【0053】
2.結果
沈殿時間にわたって放置した後の試験管を図3A〜3Cに示している。
【0054】
【表2】

【0055】
3.解説
この研究から、低い添加レベルでの化合物Xによる廃水の処理は、汚泥沈降速度を有意に改善させることができるため、操作上の利益を提供することが確証された。
【0056】
例3:汚泥特性の観察
1.手順
試料を、該試験の開始後48日目に、例1で説明した半連続反応装置から得た。
例1の反応装置内で試験した化合物X濃度のそれぞれの試料をこの試験で評価した。従って、2及び4ミリグラム/リットル/化合物Xの処理日を有する試料を試験し、同様に化合物Xによって処理されていない対照も試験した。
該試料を、×220倍率の位相差顕微鏡によって観察した。
【0057】
2.結果
汚泥試料の顕微鏡写真を図4A〜4Cに示している。
【0058】
【表3】

【0059】
糸状菌の減少、しかして汚泥沈殿の改善が4mg/L/日の2回の添加(すなわち、2日連続して4mg/Lの添加量)で達成でき、しかも糸状菌のレベルは、さらに処理することなく1週間以上にわたって低いままだった。
【0060】
3.解説
この研究から、低い添加量レベルでの化合物Xによる廃水処理は、汚泥中の糸状菌レベルを有意に低下させることができ、並びに原生動物及び蠕虫類のような有益な生物のレベルを増大させることができるため、操作上の利益を提供することができることが確証された。
【符号の説明】
【0061】
B バイオリアクター
R 循環ライン
I 注入口
O 放水口
P ポンプ
1 ケモスタット反応装置
3 pH検出器
4 溶存酸素検出器
5 空気分散器
6 容器
7 供給ライン
8 蠕動ポンプ
9 循環
11 弁体
12 シリンジポンプ
13 廃水
15 出口ライン
16 収集容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥のバルキング傾向を減少させることによる汚泥特性の改善のための有効量の非酸化性水溶性殺生物剤の使用であって、該殺生物剤がアルキル置換ホスホニウム化合物、アルキル置換ホスフィン、アルキル置換ホスフィン縮合物又は第四アンモニウム重合体化合物を含む使用。
【請求項2】
前記水溶性殺生物剤が、モールマン指標によって測定されるときの汚泥容量指標(SVI)を200cm3/g以下に減少させることによる汚泥特性の改善に使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
SVIを180cm3/g以下に減少させる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
SVIを150cm3/g以下に減少させる、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
SVIを予備処理SVI値の80%以下に減少させる、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
SVIを予備処理SVI値の60%以下に減少させる、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記水溶性殺生物剤が、糸状菌レベルを低下させることによる汚泥特性の改善に使用される、請求項1〜6に記載の使用。
【請求項8】
前記水溶性殺生物剤が、チオトリクス属(Thiothrix sp.)021N型、hydrossis 0092型、limicola 0041型及び0803型から選択される1種以上の糸状菌のレベルを低下させることによる汚泥特性の改善に使用される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記水溶性殺生物剤が、長く連鎖した糸状菌のレベルを低下させることによる汚泥特性の改善に使用される、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
>500μmの長さを有する長く連鎖した糸状菌のレベルを低下させる、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
>500μmの長さを有する長く連鎖した糸状菌のレベルを2分の1以下に低下させる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
>500μmの長さを有する長く連鎖した糸状菌のレベルを4分の1以下に低下させる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記水溶性殺生物剤が、顕微鏡視野当たりの糸状体全長が減少するように糸状菌のレベルを低下させることによる汚泥特性の改善に使用される、請求項7〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
顕微鏡視野当たりの糸状体全長が2分の1以下に減少する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
顕微鏡視野当たりの糸状体全長が5分の1以下に減少する、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
使用される水溶性殺生物剤の有効量が0.01〜5000ppmである、請求項1〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
使用される水溶性殺生物剤の有効量が0.05〜500ppmである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
使用される水溶性殺生物剤の有効量が0.1〜100ppmである、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
使用される水溶性殺生物剤の有効量が0.1〜30ppmである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
非酸化性水溶性殺生物剤がアルキル置換ホスホニウム化合物、アルキル置換ホスフィン又はアルキル置換ホスフィン縮合物を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
非酸化性水溶性殺生物剤が、式(I)のアルキル置換ホスホニウム化合物、式(II)のアルキル置換ホスフィン、又は式(III)の縮合物:
【化1】

(式中、
Xは陰イオンであり、
nは、mで表されるXの原子価であり、
それぞれのA は、同一又は異なっていてよく、そしてOH、ORa、SO3a、PO3a2、COOH、COORa、SO3H、PO32、CH2COOH、置換アルキル、アリール及び置換アミノ基から選択され、
それぞれのA基内のそれぞれのR及びそれぞれのRa(存在するならば)は、水素、C1〜C20アルキル、アリール、置換アルキル又はアリール、カルボキシ又はカルボキシエステルから独立して選択され、ここで、それぞれのCR2基は同一又は異なっていてよく、
R”は、2〜20個の炭素原子を有する2価の炭化水素基であり、且つ、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ若しくはPR1mCH2OH基よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてよく及び/又は1個以上のエーテル若しくはカルボニル結合で中断されていてよく、
それぞれのR1 は、独立して、1〜25個の炭素原子を有する1価の炭化水素基であり、且つ、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ若しくはPR1vCH2OH基よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてよく及び/又は1個以上のエーテル若しくはカルボニル結合で中断されていてよく、
式(III)において、それぞれのvは1又は2であり、kは0〜10(例えば1〜10)であり、xは、v=2を有する分子内における基数であり、そして、Xは該化合物が水溶性であるように原子価yの交換可能な陰イオンである。)
を含む、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
アルキル置換ホスホニウム化合物がテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート(THPS)である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
アルキル置換ホスホニウム化合物が、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムブロミド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムアセテート及びテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムホスフェートよりなる群から選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
アルキル置換ホスフィンがトリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THP)である、請求項21に記載の使用。
【請求項25】
縮合物がトリス(ヒドロキシオルガノ)ホスフィンの縮合物である、請求項21に記載の使用。
【請求項26】
縮合物がトリス(ヒドロキシオルガノ)ホスフィンと窒素含有化合物との縮合物である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
縮合物がトリス(ヒドロキシオルガノ)ホスフィンと尿素との縮合物である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
非酸化性水溶性殺生物剤が第四アンモニウム重合体化合物を含む、請求項1〜27のいずれかに記載の使用。
【請求項29】
第四アンモニウム重合体化合物がポリオキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロリドである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記水溶性殺生物剤が、さらに、廃水処理に慣用されている次の化学物質:
界面活性剤、消泡剤、スケール防止剤、防蝕剤、殺生物剤、凝集剤、脱水助剤及び分散剤
のうち1種以上と共に処方された、請求項1〜29のいずれかに記載の使用。
【請求項31】
汚泥が工業廃水及び都市廃水からのものである、請求項1〜30のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
汚泥が、紙生産、食品加工及び化学工業プロセスを含めた産業プロセスからのもの又は住宅地及び工業地などからのものである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記水溶性殺生物剤が廃水処理プラントで実施される水処理プロセス中に使用される、請求項1〜32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
前記水溶性殺生物剤が好気性消化工程後の水処理プロセス中に使用される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記水溶性殺生物剤が沈殿槽又はラグーンでの水処理プロセス中に使用される、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記水溶性殺生物剤が断続的に添加される、請求項1〜35のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−78983(P2011−78983A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16869(P2011−16869)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【分割の表示】特願2007−517444(P2007−517444)の分割
【原出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(306001161)ロディア ユーケイ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】