説明

汽水分離装置、この汽水分離装置を用いた研磨装置及びこの研磨装置を用いた半導体デバイス製造方法

【課題】 汽水分離槽内を真空状態に保ったまま槽内に溜まった水を外部に排出できるようにする。
【解決手段】 第1蓄水槽52内の圧力を真空圧レベルに調整するとともに第1連通路PL1を開放して汽水分離槽51内の水を第1蓄水槽52内へ流入させる第1の蓄水動作及び第2連通路PL2を閉止するとともに第2蓄水槽53内の圧力を大気圧レベルに調整して第2蓄水槽53内の水を外部に排出させる第1の排水動作を同時に行う第1の工程と、第2蓄水槽53内の圧力を真空圧レベルに調整するとともに第2連通路PL2を開放して汽水分離槽51内の水を第2蓄水槽53内へ流入させる第2の蓄水動作及び第1連通路PL1を閉止するとともに第1蓄水槽52内の圧力を大気圧レベルに調整して第1蓄水槽52内の水を外部に排出させる第2の排水動作を同時に行う第2の工程とを交互に繰り返し行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ラインに介装されて真空ライン内の空気中から水を分離排出させる汽水分離装置に関する。また本発明は、この汽水分離装置を用いた研磨装置及びこの研磨装置を用いた半導体デバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプにより空気を吸引し、或いは高圧ポンプが生成した高圧空気(圧縮空気)がノズル等からなる膨張拡散路を通過する際に生じる負圧を利用することによって真空を発生させる真空発生装置は公知である。また、この真空発生装置が発生する真空を利用した装置としては、真空吸着力を用いて保持対象を所定の位置に保持する真空吸着装置などが知られている。例えば、半導体ウエハなどの基板を平坦研磨するためのCMP装置(化学的機械的研磨装置)においては、研磨対象となる基板を回転テーブル上に保持し、或いは研磨パッドが貼り付けられたプレート部材を研磨工具に固定する吸着チャック機構として使用されている。このような真空発生装置や真空を利用した装置では、空気中に含まれる水(上記CMP装置の例では更に研磨液)が、真空ラインを通って真空発生装置にまで達するのを防止する必要があるため、真空ラインには真空ライン内の空気から水を分離排出させる汽水分離装置が介装されている(例えば、下記の特許文献参照)。
【0003】
この汽水分離装置は真空ラインに介装された汽水分離槽と、この汽水分離槽内に溜まった水を排出させるための排水機構を備えて構成されている。汽水分離槽内には汽水分離壁が設けられており、真空ラインから吸い出された空気をこの汽水分離壁に衝突させて減速及び減圧することにより、空気から水を分離させる。そして、この分離された水は汽水分離槽内に蓄積され、所定の水位に達したときに排水機構より排出される。
【特許文献1】特開2000−153448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の汽水分離装置では、汽水分離槽内の圧力が真空圧レベルに保持されている状態では外部との圧力差によって排出できないため、汽水分離槽内に溜まった水が所定の水位に達したときには一旦真空発生装置の稼動を停止し、汽水分離槽を大気に開放したうえで排水を行う必要があった。このため、真空発生装置や真空を利用した装置の稼動率はその分悪くなり、作業性を低下させる原因となっていた。
【0005】
本発明はこのような目的に鑑みてなされたものであり、汽水分離槽内を真空状態に保ったまま槽内に溜まった水を外部に排出することが可能な構成の汽水分離装置を提供することを目的としている。更にはこの汽水分離装置を用いた研磨装置及びこの研磨装置を用いた半導体デバイス製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る汽水分離装置は、真空ラインに介装されて真空ライン内の空気中から水を分離させる汽水分離装置であって、真空ラインに介装された汽水分離槽と、汽水分離槽と第1連通路により繋がれ、汽水分離槽において空気から分離された水を受け入れる第1蓄水槽と、汽水分離槽と第2連通路により繋がれ、汽水分離槽において空気から分離された水を受け入れる第2蓄水槽と、第1蓄水槽内の圧力を真空圧レベルに調整するとともに第1連通路を開放して汽水分離槽内の水を第1蓄水槽内へ流入させる第1の蓄水動作及び第2連通路を閉止するとともに第2蓄水槽内の圧力を大気圧レベルに調整して第2蓄水槽内の水を外部に排出させる第1の排水動作を同時に行う第1の工程と、第2蓄水槽内の圧力を真空圧レベルに調整するとともに第2連通路を開放して汽水分離槽内の水を第2蓄水槽内へ流入させる第2の蓄水動作及び第1連通路を閉止するとともに第1蓄水槽内の圧力を大気圧レベルに調整して第1蓄水槽内の水を外部に排出させる第2の排水動作を同時に行う第2の工程とを交互に繰り返し実行する蓄排水工程実行手段とを備える。
【0007】
上記汽水分離装置においては、真空ラインに繋がる真空発生装置が、高圧空気を生成する高圧空気生成手段と、高圧空気生成手段により生成された高圧空気を通過させてこの空気を膨張拡散させる膨張拡散路と、膨張拡散路内に開口し、真空ラインに接続された負圧路とから構成されたことが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る研磨装置は、研磨対象物を保持する研磨対象物保持部材と、研磨対象物保持部材に保持された研磨対象物の研磨を行う研磨工具とを備えて構成される研磨装置において、研磨工具は、研磨対象物保持部材に対して相対回転自在に設けられた回転体及び回転体に保持されて研磨対象物の表面と接触する研磨体から構成されており、研磨対象物保持部材に研磨対象物を保持させる研磨対象物保持手段及び回転体に研磨体を保持させる研磨体保持手段の少なくとも一方が吸着チャック機構からなり、吸着チャック機構が上記本発明に係る汽水分離装置に繋がる真空ラインに接続されている。また、本発明に係る半導体デバイス製造方法は、上記研磨対象物が半導体ウエハであり、上記本発明に係る研磨装置を用いて研磨対象物の表面を研磨加工する工程を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る汽水分離装置によれば、汽水分離槽を真空状態に保持したまま、汽水分離槽に溜まった水を外部に排出することができる。また、本発明に係る研磨装置によれば、効率のよい研磨作業を行うことができる。また、本発明に係る半導体デバイス製造方法によれば、半導体ウエハの研磨工程のスループットが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図3は本発明の一実施形態に係る汽水分離装置を備えたCMP装置(化学的機械的研磨装置)1を示している。このCMP装置1は研磨対象物である半導体ウエハWを水平姿勢に保持する回転テーブル10と、この回転テーブル10に保持された半導体ウエハWの被研磨面(ここでは上面)と対向する面に研磨パッド22bが取り付けられた研磨工具20と、これら回転テーブル10及び研磨工具20の作動制御をはじめとする種々のCMP装置1の作動に関する制御を行うCMP装置制御部30を備えて構成されている。なお、本実施形態に示すCMP装置1は本発明に係る汽水分離装置を用いた研磨装置の一実施形態に相当する。
【0011】
回転テーブル10は上下方向に延びた回転支柱11の上端部に設けられており、回転支柱11を上下軸まわりに回転させることにより回転テーブル10を水平面内で回転させることができる。回転テーブル10の内部には回転テーブル10の上面に開口する吸着チャック機構12が設けられており、研磨対象物である半導体ウエハWの下面をこの吸着チャック機構12により吸着することにより、半導体ウエハWを回転テーブル10の上面に固定保持できるようになっている。
【0012】
研磨工具20は上下方向に延びたスピンドルSPの下端部に取り付けられた回転体21と、この回転体21の下面に取り付けられた研磨体22とからなり、更に研磨体22は円盤状のプレート部材22a及びこのプレート部材22aの下面に取り付けられた研磨パッド22bからなる。研磨パッド22bは不織布やウレタン等を原材料として構成されており、プレート部材22aとほぼ同じ直径を有する薄い円盤状に成形されている。なお、研磨パッド22bは消耗品であるため、接着剤や両面テープ等によりプレート部材22aの下面に着脱自在に取り付けられる。研磨工具20が取り付けられるスピンドルSPは、図示しない複数のモータ等により回転テーブル10に対して三次元的に移動できるとともに、自身の中心軸まわりに回転できるようになっている。
【0013】
このような構成のCMP装置1を用いて半導体ウエハの平坦化研磨を行うには、先ず、研磨対象物である半導体ウエハWを回転テーブル10の上面に吸着させる。これにより半導体ウエハWは被研磨面を上方に露出された状態で回転テーブル10の上面に保持される。この際、半導体ウエハWはその中心が回転テーブル10の回転中心と一致するように設置される。半導体ウエハWが回転テーブル10に保持されたら回転テーブル10を半導体ウエハWとともに水平面内で回転させる。続いて上述のモータを作動させてスピンドルSPを上下軸まわりに回転させ、研磨工具20全体を回転させる。これにより研磨パッド22bが水平面内で回転する。研磨工具20が回転を始めたら、研磨工具20全体を降下させ、研磨パッド22bを半導体ウエハWの被研磨面に上方から接触させる。研磨パッド22bが半導体ウエハWの被研磨面と接触して半導体ウエハWの研磨が始まったら、研磨工具20全体を半導体ウエハWと研磨パッド22bとの接触面と平行な方向(すなわち水平方向)に揺動移動させて被研磨面の全体を研磨していく。なお、この半導体ウエハWの研磨中においては、図示しない研磨液供給装置より研磨液(スラリー)を半導体ウエハWの被研磨面上に供給する。このように、回転テーブル10に保持された半導体ウエハWの被研磨面は研磨液の供給を受けつつ、半導体ウエハW自身の回転運動と研磨工具20の(すなわち研磨パッド22bの)回転及び揺動運動とにより全体が満遍なく研磨され、半導体ウエハWの被研磨面は高精度に平坦化される。
【0014】
半導体ウエハWは前述したように、回転テーブル10内に設けられた吸着チャック機構12を介して回転テーブル10上に取り付けられるが、この吸着チャック機構12による半導体ウエハWの吸着は、真空発生装置40よりCMP装置制御部30を介して空気を吸引することにより行う(図3参照)。真空発生装置40とCMP装置制御部30との間には汽水分離装置50が介装されており、真空発生装置40と汽水分離装置50との間、汽水分離装置50とCMP装置制御部30との間、及びCMP装置制御部30と吸着チャック機構12との間はそれぞれ真空管路61,62,63により連結されている。なお、以下の説明においては、これら真空管路61,62,63を総称して真空ライン60と称する。
【0015】
真空発生装置40は図2に示すように、高圧空気を生成してこれを高圧流路HL0に供給する高圧ポンプHPPと、高圧流路HL0に介装されたストップバルブSTVと、高圧流路HL0の分岐流路である第1真空圧発生流路VPL1に介装された第1レギュレータバルブRV1、第1エジェクタEJ1、オートドレンATD及び第3エジェクタEJ3と、高圧流路HL0の分岐流路である第2真空圧発生流路VPL2に介装された第2レギュレータバルブRV2及び第2エジェクタEJ2と、高圧流路HL0に介装された第3レギュレータバルブRV3と、第1エジェクタEJ1の負圧路である第1負圧路NL1に介装された真空フィルタVF1と、第2エジェクタEJ2の負圧路である第2負圧路NL2に介装された真空フィルタVF2とを備える。なお、上記第1エジェクタEJ1の負圧路である第1負圧路NL1と第2エジェクタEJ2の負圧路である第2負圧路NL2とは真空発生装置40と汽水分離装置50との間を繋ぐ前述の真空管路61を構成する。
【0016】
上記第1真空圧発生流路VPL1及び第2真空圧発生流路VPL2は図1に示すように真空発生装置40の外部においてサイレンサSLに接続されており、サイレンサSLを収容するサイレンサ収容槽SBから延びた排水流路(サイレンサ収容槽排水流路SBDL)及び第1真空圧発生流路VPL1に介装された上記オートドレンATDのドレン流路ATDLは、ともに集合排水装置CDに繋がれている。
【0017】
汽水分離装置50は、吸着チャック機構12より水及び研磨液(以下、まとめて水と称する)が真空ライン60内に入ったときに、この水を空気から分離排出させる働きをするものであり、図1に示すように、真空ライン60中に(具体的には真空管路61と真空管路62との間に)介装された汽水分離槽51と、この汽水分離槽51と並列に繋がれた第1蓄水槽52及び第2蓄水槽53とを備えている。汽水分離槽51と第1蓄水槽52とは第1連通路PL1により繋がれており、第1連通路PL1には第1連通路開閉バルブPV1が介装されている。また、汽水分離槽51と第2蓄水槽53とは第2連通路PL2により繋がれており、第2連通路PL2には第2連通路開閉バルブPV2が介装されている。更に、第1蓄水槽52は第1排水路DL1を介して集合排水装置CDに繋がれており、第1排水路DL1には第1排出路開閉バルブDV1が介装されている。また、第2蓄水槽53は第2排水路DL2を介して集合排水装置CDに繋がれており、第2排水路DL2には第2排出路開閉バルブDV2が介装されている。ここで、集合排水装置CDは図示しない蓄水槽及びこの蓄水槽の排水を行うバルブを備えてなり、蓄水槽に溜まった水が所定の水位に達したとき等にバルブを開いて蓄水槽に溜まった水を排出させることができるようになっている。
【0018】
真空発生装置40を構成する第3エジェクタEJ3の負圧路である第3負圧路NL3は図1に示すように第1蓄水槽52に繋がる第1真空流路VL1と第2蓄水槽53に繋がる第2真空流路VL2とに分岐しており、第1真空流路VL1には第1真空流路開閉バルブVV1、第1中間バルブMV1及び真空フィルタF1が介装されており、第2真空流路VL2には第2真空流路開閉バルブVV2、第2中間バルブMV2及び真空フィルタF2が介装されている。そして、真空フィルタF1は第1フィルタドレン流路FL1を介して第1排水路DL1に繋がっており、第1フィルタドレン流路FL1には第1フィルタドレン流路開閉バルブFV1が介装されている。また、真空フィルタF2は第2フィルタドレン流路FL2を介して第2排水路DL2に繋がっており、第2フィルタドレン流路FL2には第2フィルタドレン流路開閉バルブFV2が介装されている。
【0019】
また、図1に示すように、真空発生装置40から延びた高圧流路HL0は第1蓄水槽52に繋がる第1高圧流路HL1と第2蓄水槽53に繋がる第2高圧流路HL2とに分岐している。そして、第1高圧流路HL1には開度(流量)調整が可能な第1高圧流路開閉バルブHV1が介装されており、第2高圧流路HL2には同じく開度(流量)調整が可能な第2高圧流路開閉バルブHV2が介装されている。
【0020】
上記12個の開閉バルブ(VV1,VV2,PV1,PV2,DV1,DV2,MV1,MV2,FV1,FV2,HV1,HV2)はいずれも空気圧(油圧でもよい)を受けて作動するようになっており、その空気圧(油圧)の制御は汽水分離装置50の制御装置54(図3参照)が行う図示しない電磁パイロットバルブの作動制御を介してなされるようになっている。また、真空発生装置40を構成する高圧ポンプHPPの始動及び停止制御も汽水分離装置50の制御装置54が行うようになっている(図3参照)。
【0021】
図1に示すように汽水分離槽51には水位センサWS0が設けられており、汽水分離槽51内に溜まった水の水位の情報が汽水分離装置50の制御装置54に入力されるようになっている。また、第1蓄水槽52には水位センサWS1が設けられており、第1蓄水槽52内に溜まった水の水位の情報が制御装置54に入力されるようになっている。同様に第2蓄水槽53には水位センサWS2が設けられており、第2蓄水槽53内に溜まった水の水位の情報が制御装置54に入力されるようになっている(図3参照)。
【0022】
また、図1に示すように、汽水分離槽51には差圧計DP0が設置されており、汽水分離槽51内の圧力と槽外の圧力(大気圧)との差圧の情報が汽水分離装置50の制御装置54に入力されるようになっている。また、第1蓄水槽52には差圧計DP1が設置されており、第1蓄水槽52内の圧力と槽外の圧力(大気圧)との差圧の情報が制御装置54に入力されるようになっている。同様に、第2蓄水槽53には差圧計DP2が設置されており、第2蓄水槽53内の圧力と槽外の圧力(大気圧)との差圧の情報が制御装置54に入力されるようになっている(図3参照)。
【0023】
次に、このような構成の汽水分離装置50の動作を真空発生装置40の動作と併せて説明する。図3に示す作動開始スイッチ31はCMP装置1による研磨工程を開始させるためのスイッチであり、CMP装置制御部30に備えられている。また、作動停止スイッチ32はCMP装置1による研磨工程を停止させるためのスイッチであり、同じくCMP装置制御部30に備えられている。この作動開始スイッチ31がオフの状態では高圧ポンプHPPは停止しており、上記12個の開閉バルブ(VV1,VV2,PV1,PV2,DV1,DV2,MV1,MV2,FV1,FV2,HV1,HV2)はいずれも閉止状態にある。オペレータにより作動開始スイッチ31が操作されるとCMP装置制御部30より作動開始指令信号S1が真空発生装置40へ出力され、高圧ポンプHPPが作動を開始する。これにより高圧流路HL0への高圧空気(圧縮空気)の供給が開始される。また、オペレータにより作動停止スイッチ32が操作されるとCMP装置制御部30より作動停止信号S2が真空発生装置40へ出力され、高圧ポンプHPPが作動を停止する。なお、作動開始スイッチ31からの作動開始指令信号S1及び作動停止スイッチ32からの作動停止信号S2は汽水分離装置50の制御装置54へも出力される(図3参照)。
【0024】
高圧空気が高圧流路HL0に供給されると、その高圧空気はストップバルブSTVを介して第1真空圧発生流路VPL1及び第2真空圧発生流路VPL2に供給される。第1真空圧発生流路VPL1に供給された高圧空気は第1レギュレータバルブRV1により所定の圧力に調圧された後、第1ノズルNZ1等を備えた膨張拡散路である第1エジェクタEJ1を通過する。このとき第1真空圧発生流路VPL1内の高圧空気は膨張拡散し、第1エジェクタEJ1内に開口した第1負圧路NL1内の空気を吸い出すので、第1負圧路NL1内の圧力は低下する。また同様に、第2真空圧発生流路VPL2に供給された高圧空気は第2レギュレータバルブRV2により所定の圧力に調圧された後、第2ノズルNZ2等を備えた膨張拡散路である第2エジェクタEJ2を通過する。このとき第2真空圧発生流路VPL2内の高圧空気は膨張拡散し、第2エジェクタEJ2内に開口した第2負圧路NL2内の空気を吸い出すので、第2負圧路NL2内の圧力も低下する。このように高圧ポンプHPPが作動を開始すると、真空発生装置40と汽水分離装置50との間を繋ぐ真空管路61である第1負圧路NL1及び第2負圧路NL2内の圧力が低下するので、汽水分離槽51を含む真空ライン60内全域の圧力も低下し、これが真空圧レベルとなったときに、CMP装置1を構成する吸着チャック12の真空吸着作動が可能となる。
【0025】
ここで、第1真空圧発生流路VPL1に介装された第1エジェクタEJ1は高真空・低吸い込み型のエジェクタ、第2真空圧発生流路VPL2に介装された第2エジェクタEJ2は低真空・高吸い込み型のエジェクタとなっている。前者は単位時間あたりの空気の吸い込み量は小さいが外乱的な圧力変化に対する真空度の保持能力が高く、後者は外乱的な圧力変化に対する真空保持能力はやや低いが、単位時間あたりの空気吸い込み量は大きいという特徴がある。本実施形態のように、これらタイプの異なる2つのエジェクタを汽水分離槽51に対して並列に配置することにより、空気の引き始めは第2エジェクタEJ2の働きにより真空ライン60内の圧力を急速に真空圧レベルまで近づけ、その後は第1エジェクタEJ1の働きにより強力な真空度維持を図ることが可能となる。また、上記タイプの異なる2つのエジェクタを汽水分離槽51に対して直列に配置することも可能ではあるが、この場合には各エジェクタの性能を上記のように独立に発揮させることは困難であるので好ましくない。
【0026】
上記のように汽水分離槽51内にはCMP装置1側からの空気が流入するが、この流入した空気は汽水分離槽51内に設けられた汽水分離壁WL0に衝突して減速及び減圧されるので、その空気に含まれていた水は空気より分離して落下し、汽水分離槽51内に蓄積される。更に、汽水分離槽51を通過する際に空気から分離されなかった水の一部は、第1エジェクタEJ1或いは第2エジェクタEJ2内に流入する前に、真空フィルタVF1,VF2によって空気から分離される。
【0027】
高圧ポンプHPPより供給され、或いは第1負圧路NL1から流入して第1エジェクタEJ1を通過した空気はオートドレンATDにおいてその含有水分の一部が除かれた後、今度は第3エジェクタEJ3を通過する。このとき第1真空圧発生流路VPL1内の高圧空気は膨張拡散し、第3エジェクタEJ3内に開口した第3負圧路NL3内の空気を吸い出すので、第3負圧路NL3内の圧力は低下して真空となる。ここで、第1真空流路開閉バルブVV1及び第1中間バルブMV1を同時に開き、かつ第1排出路開閉バルブDV1、第1フィルタドレン流路開閉バルブFV1及び第1高圧流路開閉バルブHV1を同時に閉じれば第1蓄水槽52内の空気は真空発生装置40側へ吸い出され、第1蓄水槽52内の圧力は低下して一定時間の経過の後に真空圧レベルとなる(第1蓄水槽52内の圧力の真空圧レベルへの調整)。また、第2真空流路開閉バルブVV2及び第2中間バルブMV2を同時に開き、かつ第2排出路開閉バルブDV2、第2フィルタドレン流路開閉バルブFV2及び第2高圧流路開閉バルブHV2を同時に閉じれば第2蓄水槽53内の空気は真空発生装置40側へ吸い出され、第2蓄水槽53内は低下して一定時間の経過の後に真空圧レベルとなる(第2蓄水槽53内の圧力の真空圧レベルへの調整)。
【0028】
第1真空圧発生流路VPL1を通った空気と第2真空圧発生流路VPL2を通った空気は前述のようにともにサイレンサSLに送られる。第1真空圧発生流路VPL1及び第2真空圧発生流路VPL2を通ってきた高圧空気のエネルギーはこのサイレンサSLにおいて吸収され、消音されたうえでダクトDCTより排気される。また、サイレンサSLに流入した空気に含まれていた水は空気より分離して落下し、サイレンサ収容槽SB内に一時的に蓄積された後、サイレンサ排水流路SBDLから集合排水装置CDに送られる。
【0029】
また、高圧流路HL0に供給された高圧空気は第3レギュレータバルブRV3により所定の圧力に調圧される(但し、第1真空発生流路VPL1及び第2真空発生流路VPL2の分岐点よりも下流側において)。ここで、第1真空流路開閉バルブVV1、第1中間バルブMV1及び第1連通路開閉バルブPV1を同時に閉じ、かつ第1排出路開閉バルブDV1、第1フィルタドレン流路開閉バルブFV1及び第1高圧流路開閉バルブHV1を同時に開けば高圧ポンプHPPにより生成された高圧が第1蓄水槽52内に供給され、第1蓄水槽52内の圧力は上昇して一定時間の経過の後に大気圧レベルとなる(第1蓄水槽52内の圧力の大気レベルへの調整)。また、第1蓄水槽52内の圧力が大気圧レベルになることによって、第1蓄水槽52内に溜まっていた水は自重により第1排水路DL1から集合排水装置CDへ排出される。また、このように第1蓄水槽52内の圧力を大気圧レベルまで高めると、第1蓄水槽52内に蓄積されていた水分が気化して霧状となるが、この霧状となった水分は真空フィルタF1により捕獲された後、第1フィルタドレン流路FL1及び第1排水路DL1から集合排水装置CDへ排出される(真空フィルタF1のリフレッシュ)。
【0030】
同様に、第2真空流路開閉バルブVV2、第2中間バルブMV2及び第2連通路開閉バルブPV2を同時に閉じ、かつ第2排出路開閉バルブDV2、第2フィルタドレン流路開閉バルブFV2及び第2高圧流路開閉バルブHV2を同時に開けば高圧ポンプHPPにより生成された高圧が第2蓄水槽53内に供給され、第2蓄水槽53内の圧力は上昇して一定時間の経過の後に大気圧レベルとなる(第2蓄水槽53内の圧力の大気レベルへの調整)。また、第2蓄水槽53内の圧力が大気圧レベルになることによって、第2蓄水槽53内に溜まっていた水は自重により第2排水路DL2から集合排水装置CDへ排出される。また、この場合も第2蓄水槽53内の圧力を大気圧レベルまで高めると、第2蓄水槽53内に蓄積されていた水分が気化して霧状となるが、この霧状となった水分は真空フィルタF2により捕獲された後、第2フィルタドレン流路FL2及び第2排水路DL2から集合排水装置CDへ排出される(真空フィルタF2のリフレッシュ)。
【0031】
次に、図4のタイムチャートを用いて本実施形態に係る汽水分離装置50の蓄排水工程のシーケンス動作を説明する。なお、ここに示すシーケンス動作は本汽水分離装置50が行い得るシーケンス動作の一例に過ぎない。
【0032】
CMP装置制御部30に備えられた作動開始スイッチ31がオペレータにより操作されると、CMP装置制御部30は真空発生装置40に作動開始指令信号S1を出力して高圧ポンプHPPの作動を開始させる(図4における時間t1参照)。これにより汽水分離槽51を含む真空ライン60内の圧力は次第に低下していき、汽水分離槽51内の圧力と槽外の圧力(大気圧)との差圧は大きくなっていく。そして、一定時間の経過の後、汽水分離槽51内の圧力は真空圧レベルとなり、その後汽水分離槽51内の圧力は所定の真空圧レベルの圧力に保持される(図4におけるDP0のグラフ参照)。真空発生装置40により空気が引かれている間、真空ライン60内の空気は汽水分離槽51を通過するが、このとき空気中に含まれる水は汽水分離壁WL0に衝突して分離されるので、汽水分離槽51内には水が蓄積されていく(図4におけるWS0のグラフ参照)。
【0033】
また、オペレータにより作動開始スイッチ31が操作されると、汽水分離装置50の制御装置54は第1真空流路開閉バルブVV1及び第1中間バルブMV1を開く。これにより第1蓄水槽52内の圧力は低下(大気圧との差圧が上昇)していき、次第に真空圧レベルに達する(図4におけるDP1のグラフ参照)。そして制御装置54は、差圧計DP1が示す差圧(第1蓄水槽52内の圧力と大気圧との差圧)と差圧計DP0が示す差圧(汽水分離槽51内の圧力と大気圧との差圧)とが一致したことを検知したときに(時間t2参照)、第1連通路開閉バルブPV1を開く。これにより高圧ポンプHPPの作動開始後、汽水分離槽51内に蓄積されていた水の一部はその自重によって第1連通路PL1を通って第1蓄水槽52内に流入するようになる(時間t2〜t3の間のWS0及びWS1のグラフ参照)。そして、水位センサWS1により第1蓄水槽52内に蓄積された水が所定量に達したことを検知したときに(時間t3参照)、第1真空流路開閉バルブVV1、第1中間バルブMV1及び第1連通路開閉バルブPV1を閉じるとともに、第1排出路開閉バルブDV1、第1フィルタドレン流路開閉バルブFV1及び第1高圧流路開閉バルブHV1を開く。これにより高圧ポンプHPPが生成した高圧空気が高圧流路HL0及び第1高圧流路HL1経由で第1蓄水槽52内に流入し、第1蓄水槽52内の圧力は上昇(大気圧との差圧が低下)する(図4におけるDP1のグラフ参照)。また、これにより第1蓄水槽52内に溜まっていた水は第1排水路DL1から排出される(図4におけるWS1のグラフ参照)。
【0034】
続いて制御装置54は、上記のように水位センサWS1により第1蓄水槽52内に蓄積された水が所定量に達したことを検知したとき(時間t3参照)、第2真空流路開閉バルブVV2及び第2中間バルブMV2を開く。これにより第2蓄水槽53内の圧力は低下(大気圧との差圧が上昇)していく(図4におけるDP2のグラフ参照)。
【0035】
続いて制御装置54は、差圧計DP2が示す差圧(第2蓄水槽53内の圧力と大気圧との差圧)と差圧計DP0が示す差圧(汽水分離槽51内の圧力と大気圧との差圧)とが一致したことを検知したとき(時間t4参照)、第2連通路開閉バルブPV2を開く。これにより第1連通路開閉バルブPV1が閉じられていた間(時間t3〜t4)汽水分離槽51内に蓄積されていた水の一部はその自重によって第2連通路PL2を通って第2蓄水槽53内に流入するようになる(t4〜t5の間のWS0及びWS2のグラフ参照)。そして、水位センサWS2により第2蓄水槽53内に蓄積された水が所定量に達したことを検知したとき(時間t5参照)、第2真空流路開閉バルブVV2、第2中間バルブMV2及び第2連通路開閉バルブPV2を閉じるとともに、第2排出路開閉バルブDV2、第2フィルタドレン流路開閉バルブFV2及び第2高圧流路開閉バルブHV2を開く。これにより高圧ポンプHPPが生成した高圧空気が高圧流路HL0及び第2高圧流路HL2経由で第2蓄水槽53内に流入し、第2蓄水槽53内の圧力は上昇(大気圧との差圧が低下)する(図4におけるDP2のグラフ参照)。また、これにより第2蓄水槽53内に溜まっていた水は第2排水路DL2から排出される(図4におけるWS2のグラフ参照)。
【0036】
続いて制御装置54は、上記のように水位センサWS2により第2蓄水槽53内に蓄積された水が所定量に達したことを検知したとき(時間t5参照)、第1真空流路開閉バルブVV1及び第1中間バルブMV1を開くとともに、第1排出路開閉バルブDV1、第1フィルタドレン流路開閉バルブFV1及び第1高圧流路開閉バルブHV1を閉じる。これにより第1蓄水槽52内の圧力は低下(大気圧との差圧が上昇)していく(図4におけるDP1のグラフ参照)。
【0037】
続いて制御装置54は、差圧計DP1が示す差圧(第1蓄水槽53内の圧力と大気圧との差圧)と差圧計DP0が示す差圧(汽水分離槽51内の圧力と大気圧との差圧)とが一致したことを検知したとき(時間t6参照)、第1連通路開閉バルブPV1を開く。これにより第2連通路開閉バルブPV2が閉じられていた間(時間t5〜t6)汽水分離槽51内に蓄積されていた水の一部はその自重によって第1連通路PL1を通って第1蓄水槽52内に流入するようになる(t6〜t7の間のWS0及びWS2のグラフ参照)。そして、水位センサWS1により第1蓄水槽52内に蓄積された水が所定量に達したことを検知したとき(時間t7参照)、第1真空流路開閉バルブVV1、第1中間バルブMV1及び第1連通路開閉バルブPV1を閉じるとともに、第1排出路開閉バルブDV1、第1フィルタドレン流路開閉バルブFV1及び第1高圧流路開閉バルブHV1を開く。これにより高圧ポンプHPPが生成した高圧空気が高圧流路HL0及び第1高圧流路HL1経由で第1蓄水槽52内に流入し、第1蓄水槽52内の圧力は上昇(大気圧との差圧が低下)する(図4におけるDP1のグラフ参照)。また、これにより第1蓄水槽52内に溜まっていた水は第1排水路DL1から排出される(図4におけるWS1のグラフ参照)。
【0038】
続いて制御装置54は、上記のように水位センサWS1により第1蓄水槽52内に蓄積された水が所定量に達したことを検知したとき(時間t7参照)、第2真空流路開閉バルブVV2及び第2中間バルブMV2を開くとともに、第2排出路開閉バルブDV2、第2フィルタドレン流路開閉バルブFV2及び第1高圧流路開閉バルブHV2を閉じる。これにより第2蓄水槽53内の圧力は低下(大気圧との差圧が上昇)していく(図4におけるDP2のグラフ参照)。以下、制御装置54は、時間t7〜t10の間に行った動作と同じ動作を繰り返す。そして、オペレータにより作動停止スイッチ32が操作されて作動停止信号S2が出力されたとき、本蓄排水工程のシーケンス動作を終了する(同時に真空発生装置40は高圧ポンプHPPの作動を停止させる)。
【0039】
上記のように本実施形態に係る汽水分離装置50は、第1蓄水槽52内の圧力を真空圧レベルに調整するとともに第1連通路PL1を開放して汽水分離槽51内の水を第1蓄水槽52内へ流入させる第1の蓄水動作(時間t1〜t3、時間t5〜t7、時間t9〜t11、・・・の動作)及び第2連通路PL2を閉止するとともに第2蓄水槽53内の圧力を大気圧レベルに調整して第2蓄水槽53内の水を外部に排出させる第1の排水動作(時間t5〜t7、時間t9〜t11、・・・の動作)を同時に行う第1の工程と、第2蓄水槽53内の圧力を真空圧レベルに調整するとともに第2連通路PL2を開放して汽水分離槽51内の水を第2蓄水槽53内へ流入させる第2の蓄水動作(時間t3〜t5、時間t7〜t9、・・・の動作)及び第1連通路PL1を閉止するとともに第1蓄水槽52内の圧力を大気圧レベルに調整して第1蓄水槽52内の水を外部に排出させる第2の排水動作(時間t3〜t5、時間t7〜t9、・・・の動作)を同時に行う第2の工程とを交互に繰り返し行う蓄排水工程実行手段55を備えている。この蓄排水工程実行手段55は、本実施形態では真空発生装置40、開閉バルブ(VV1,VV2,PV1,PV2,DV1,DV2,MV1,MV2,FV1,FV2,HV1,HV2)、水位センサWS1,WS2、差圧計DP0,DP1,DP2及び制御装置54等から構成される。
【0040】
すなわち、この実施形態に係る汽水分離装置50では、汽水分離槽51に溜まった水を一時的に蓄積する蓄水槽を2つ備え(第1蓄水槽52と第2蓄水槽53)、汽水分離槽51内の水を一方の蓄水槽に移しつつ、これと同時に他方の蓄水槽からはそれ以前に汽水分離槽から移されていた水を排出させるという工程を2つの蓄水槽における上記一方と他方とを交代しながら繰り返し行うようになっている。ここで、汽水分離槽51内の水を蓄水槽に移す際には、その蓄水槽内の圧力が汽水分離槽51と同じ真空圧レベルまで低下してから初めて汽水分離槽51と連通されるようになっているので、汽水分離槽51内の真空状態を保持したまま汽水分離槽51内の水を蓄水槽に移すことができる。すなわち本実施形態に係る汽水分離装置50では、汽水分離槽51を常時真空状態に保持したまま、汽水分離槽51に溜まった水を外部に排出させることができる。このため本汽水分離装置50によれば、この汽水分離装置50が使用される装置(本実施形態ではCMP装置1)の稼動率を上げて作業性を向上させることができる。また、本汽水分離装置50では、汽水分離槽51に溜まった水を一時的に蓄積する蓄水槽を2つ有しており、これら2つの蓄水槽が交互に水の蓄積動作と排出動作とを行うので、汽水分離離槽51内に溜まる水の量を常時少量に抑えることができる。このため汽水分離槽51内の水蒸気密度を常に低く抑えることが可能であり、汽水分離性能を従来に比して向上させることもできる。
【0041】
また、上記実施形態では、真空発生装置40が、高圧空気を生成する高圧空気生成手段たる高圧ポンプHPPと、高圧ポンプHPPにより生成された高圧空気を通過させてこの空気を膨張拡散させる膨張拡散路としてのエジェクタ(第1エジェクタEJ1及び第2エジェクタEJ2)と、エジェクタ内に開口し、真空ライン60に接続された負圧路(NL1,NL2)とから構成されているが、エジェクタは構成が簡単かつ軽量であるため安価でありコンパクトである。このため真空発生装置40内に組み込んでユニット化することも容易である。また、エジェクタには可動部がないためメンテナンスの必要がなく使用可能寿命が長いうえ、熱発生もないので冷却装置も不要であるという特徴を有する。また、真空圧レベルの調整は高圧空気の流量を調節することによって行うことができるので、構成が複雑で圧力変化指示に対する応答性が悪い真空(吸引)ポンプを用いる場合よりも真空圧力(真空度)の調整が容易である。
【0042】
また、本発明に係る研磨装置の一実施形態である上記CMP装置1では、吸着チャック機構12が上記本発明に係る汽水分離装置50に繋がる真空ライン60(具体的には真空管路63)に接続されている。このため、CMP装置1は、空気から分離された真空ライン60中の水が多量となる場合であっても排水のたびに真空発生装置40を停止させる必要がなく、CMP装置1の稼動率を上げて効率のよい研磨作業を行うことが可能である。
【0043】
次に、本発明に係る半導体デバイス製造方法の実施形態について説明する。図5は半導体デバイスの製造プロセスを示すフローチャートである。半導体デバイス製造プロセスをスタートすると、先ずステップS200で次に挙げるステップS201〜S204の中から適切な処理工程を選択し、いずれかのステップに進む。ここで、ステップS201はウエハの表面を酸化させる酸化工程である。ステップS202はCVD等によりウエハ表面に絶縁膜や誘電体膜を形成するCVD工程である。ステップS203はウエハに電極を蒸着等により形成する電極形成工程である。ステップS204はウエハにイオンを打ち込むイオン打ち込み工程である。
【0044】
CVD工程(S202)若しくは電極形成工程(S203)の後で、ステップS205に進む。ステップS205はCMP工程である。CMP工程では本発明による研磨装置により、層間絶縁膜の平坦化や半導体デバイス表面の金属膜の研磨、誘電体膜の研磨によるダマシン(damascene)の形成等が行われる。
【0045】
CMP工程(S205)若しくは酸化工程(S201)の後でステップS206に進む。ステップS206はフォトリソグラフィ工程である。この工程ではウエハへのレジストの塗布、露光装置を用いた露光によるウエハへの回路パターンの焼き付け、露光したウエハの現像が行われる。更に、次のステップS207は現像したレジスト像以外の部分をエッチングにより削り、その後レジスト剥離が行われ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くエッチング工程である。
【0046】
次に、ステップS208で必要な全工程が完了したかを判断し、完了していなければステップS200に戻り、先のステップを繰り返してウエハ上に回路パターンが形成される。ステップS208で全工程が完了したと判断されればエンドとなる。
【0047】
本発明に係る半導体デバイス製造方法では、半導体ウエハWの研磨工程(CMP工程)において本発明に係る研磨装置を用いているため、半導体ウエハWの研磨工程のスループットが向上する。また、これにより、従来の半導体デバイス製造方法に比べて低コストで半導体デバイスを製造することができる。また、本発明に係る半導体デバイス製造方法により製造された半導体デバイスは上記のように高スループットで製造されるので、低コストの半導体デバイスとなる。
【0048】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態において示したものに限定されない。例えば上述の実施形態では、蓄排水工程実行手段55は真空発生装置40、開閉バルブ(VV1,VV2,PV1,PV2,DV1,DV2,MV1,MV2,FV1,FV2,HV1,HV2)、水位センサWS1,WS2、差圧計DP0,DP1,DP2及び制御装置54等から構成されるとしていたが、上述の第1の工程と第2の工程とを交互に繰り返し行うことができる構成のものであれば、蓄排水工程実行手段は上記実施形態において示したものに限定されない。
【0049】
また、上述の実施形態において示した研磨装置(CMP装置1)は、回転テーブル10の上面側に取り付けられた研磨対象物(半導体ウエハW)の表面を、回転テーブル10の上方に位置してその下面に研磨パッド22bが取り付けられた研磨工具20によって研磨する構成であったが、スピンドルの下端に取り付けられた研磨対象物の表面を、その下方に位置する回転テーブルの上面側に取り付けられた研磨パッドにより研磨する構成等であってもよい。また、本発明に係る研磨装置(例えば実施形態において示したCMP装置1)により研磨される対象、すなわち研磨対象物は半導体ウエハに限られず、液晶基板等の他の物であってもよい。
【0050】
また、上記CMP装置1において、回転体21に研磨体22を保持させる研磨体保持手段を回転体21内に設けた吸着チャック機構から構成し、この吸着チャック機構が本発明に係る汽水分離装置50と繋がる真空ライン60に接続されるようにしてもよい。また、本発明に係る汽水分離装置は、真空発生装置と繋がる真空ラインを有し、その真空ライン内の空気中から水を分離させる必要のある装置であれば、上述のCMP装置などの研磨装置に限られず、他の装置に対しても広く適用することが可能である。また、本発明に係る汽水分離装置と真空ラインを介して繋がる真空発生装置は、上述の実施形態において示したような高圧ポンプが生成した高圧空気が膨張拡散路を通過する際に生じる負圧を利用する構成のものに限られず、空気を吸引して真空を発生させる真空ポンプ等を用いるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る汽水分離装置の構成図である。
【図2】図1において示す真空発生装置の構成図である。
【図3】上記汽水分離装置を備えたCMP装置の簡易構成図である。
【図4】上記汽水分離装置の蓄排水工程のシーケンス動作を説明するためのタイムチャートである。
【図5】本発明に係る半導体デバイス製造方法の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 CMP装置(研磨装置)
10 回転テーブル(研磨対象物保持部材)
12 吸着チャック機構(研磨対象保持手段)
20 研磨工具
21 回転体
22 研磨体
40 真空発生装置
50 汽水分離装置
51 汽水分離槽
52 第1蓄水槽
53 第2蓄水槽
55 蓄排水工程実行手段
60 真空ライン
HPP 高圧ポンプ(高圧空気生成手段)
PL1 第1連通路
PL2 第2連通路
EJ1 第1エジェクタ(膨張拡散路)
EJ2 第2エジェクタ(膨張拡散路)
NL1 負圧路
NL2 負圧路
W 半導体ウエハ(研磨対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ラインに介装されて前記真空ライン内の空気中から水を分離させる汽水分離装置であって、
前記真空ラインに介装された汽水分離槽と、
前記汽水分離槽と第1連通路により繋がれ、前記汽水分離槽において空気から分離された水を受け入れる第1蓄水槽と、
前記汽水分離槽と第2連通路により繋がれ、前記汽水分離槽において空気から分離された水を受け入れる第2蓄水槽と、
前記第1蓄水槽内の圧力を真空圧レベルに調整するとともに前記第1連通路を開放して前記汽水分離槽内の水を前記第1蓄水槽内へ流入させる第1の蓄水動作及び前記第2連通路を閉止するとともに前記第2蓄水槽内の圧力を大気圧レベルに調整して前記第2蓄水槽内の水を外部に排出させる第1の排水動作を同時に行う第1の工程と、前記第2蓄水槽内の圧力を真空圧レベルに調整するとともに前記第2連通路を開放して前記汽水分離槽内の水を前記第2蓄水槽内へ流入させる第2の蓄水動作及び前記第1連通路を閉止するとともに前記第1蓄水槽内の圧力を大気圧レベルに調整して前記第1蓄水槽内の水を外部に排出させる第2の排水動作を同時に行う第2の工程とを交互に繰り返し実行する蓄排水工程実行手段とを備えたことを特徴とする汽水分離装置。
【請求項2】
前記真空ラインに繋がる真空発生装置が、高圧空気を生成する高圧空気生成手段と、前記高圧空気生成手段により生成された高圧空気を通過させてこの空気を膨張拡散させる膨張拡散路と、前記膨張拡散路内に開口し、前記真空ラインに接続された負圧路とから構成されたことを特徴とする請求項1記載の汽水分離装置。
【請求項3】
研磨対象物を保持する研磨対象物保持部材と、
前記研磨対象物保持部材に保持された前記研磨対象物の研磨を行う研磨工具とを備えて構成される研磨装置において、
前記研磨工具は、前記研磨対象物保持部材に対して相対回転自在に設けられた回転体及び前記回転体に保持されて前記研磨対象物の表面と接触する研磨体から構成されており、
前記研磨対象物保持部材に前記研磨対象物を保持させる研磨対象物保持手段及び前記回転体に前記研磨体を保持させる研磨体保持手段の少なくとも一方が吸着チャック機構からなり、前記吸着チャック機構が請求項1又は2記載の汽水分離装置に繋がる前記真空ラインに接続されていることを特徴とする研磨装置。
【請求項4】
前記研磨対象物が半導体ウエハであり、請求項3に記載の研磨装置を用いて前記研磨対象物の表面を研磨加工する工程を有したことを特徴とする半導体デバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−289256(P2006−289256A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113092(P2005−113092)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】