説明

沈着物の閉込めとウェル内自己参照を特徴とするバイオセンサー

検査装置は、1つ以上の試料ウェルと、該試料ウェルに配置されたバイオセンサーを有する。バイオセンサーは、沈着した物質、例えば表面化学物質が、試料ウェル内の指定された所定の領域内にとどまるように閉じ込めることを促進する構造的特徴を有する。バイオセンサーは、異なる共鳴値(ピーク波長値またはPWV)を示す2つ以上の異なる空間的領域を用いて構成される。1つの異なる空間的領域は、上記の物質が沈着する指定された所定の領域内を取り囲み、PWV1で共鳴する。該指定された所定の領域内を取り囲む別の空間的領域はPWV2で共鳴する。上記の2つの領域の間に緩衝領域を設けることもできる。該検査装置は、低濃度の分析物の検出を可能とし、かつバイオセンサーに対するウェル内自己参照能を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、バイオセンサー装置であって、該装置の表面または内部への生物学的分析物または化学的分析物、例えば、DNA、タンパク質、ウィルス、細胞および薬品等の吸着を光学的に検出するために設計された該バイオセンサーに関する。
【0002】
本明細書では、「分析物」という用語は、溶液中に存在する物質であって、バイオセンサーの表面に固定された標的種に結合する物質を指すために使用される。反応性被膜形成作用(本明細書では「表面化学作用」(surface chemistry)という。)を示す物質、例えばポリビニルアルコール(PVA)は、バイオセンサーの一部の領域に沈着すると、標的種をバイオセンサーに対して比較的高濃度で結合させる。続いて、バイオセンサーは標的種に対する分析物の結合を検出する。バイオセンサーによる、分析物−標的種結合の変換には、アッセイ信号が含まれる。標識不使用のフォトニック結晶型バイオセンサーにおいて、バイオセンサーが共鳴状態にある時のバイオセンサー表面からの反射光のピーク波長値のシフトによってこのアッセイ信号が決定され、該シフトの大きさは分析物−標的種結合の量に関連づけられる。
【背景技術】
【0003】
格子型バイオセンサーは、光学装置の新たな部類を示すものであって、該光学装置は近年の半導体製造ツールの進歩により可能となったものであり、該ツールによれば、物質の堆積とエッチングを100nm未満の精度で行うことができる。
【0004】
フォトニック結晶は、その複数の特性により、格子型光学バイオセンサーとしての応用の理想的な候補となっている。第1に、フォトニック結晶の反射特性および透過特性は、タンパク質、DNA、細胞、ウィルス粒子およびバクテリア等の生物学的物質の該結晶上への吸着によって容易に調整することができる。これらの種類の物質について、それらの有限誘電率(finite dielectric permittivity)により、それら自身を通過する光の光路長を変化させることができることが示されている。第2に、フォトニック結晶の反射/透過スペクトルは非常に狭くできるので、簡単な照明装置と検出装置を用いるだけで、生化学的結合に伴う光学的特性のシフトを高分解能で決定することができる。第3に、フォトニック結晶構造は、電磁場の伝搬を高度に局在化させるように設計できるので、一つのフォトニック結晶の表面を用いることにより、複数の生化学的結合現象を、3〜5ミクロン未満の範囲内において、隣接領域間で光学的干渉を起こすことなく、同時に測定することができる。最後に、高い表面/体積比率と、生化学的検査試料と接触する領域に電磁場強度を集中させる機能とを備えた実用的なフォトニック結晶装置を組み立てるために、広範囲の材料と作製方法を用いることができる。材料と作製方法は、プラスチック系材料を用いる大量生産または半導体材料を用いる高感度性能を最適化するように選択することができる。
【0005】
格子型バイオセンサーの代表的な例が、
B.T.カニングハム、P.リ、B,リン及びJ.ペパー、センサーズ・アンド・アクチュエーターズ B、第81巻(2002年)、第316頁〜第328頁(「直接的な生化学的アッセイ法としての熱量測定による共鳴反射」)、
B.T.カニングハム、J.キュウ、P.リ、J.ペパー及びB.フー、センサーズ・アンド・アクチュエーターズ B、第85巻(2002年)、第219頁〜第226頁(「標識の介在しない生化学的相互作用の多重同時検出のための熱量測定によるプラスチック製共鳴光学的バイオセンサー」)、及び
A.J.ヘス及びR.P.V.ドゥイン、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー、第124巻(2002年)、第10596頁〜第10604頁(「ナノスケールの光学的バイオセンサー:三角形状の銀ナノ粒子の局存化表面プラスモン共鳴スペクトロスコピーに基づくアプローチの感度と選択度」)、に開示されている。
【0006】
フォトニック結晶型バイオセンサーと組み合わせることによる利益を、他の標識不使用のバイオセンサー技術が超えることはないであろう。高感度で、小型で、低コストで、高度に並列的であるバイオセンサーと、簡単で、小型で、耐久性のある読取り装置の開発により、従来経済的観点から使用できなかった用途において、医薬の開発、診断試験、環境関連試験および食品安全等の分野におけるバイオセンサーの応用が可能となるであろう。
【0007】
バイオセンサーとして機能するようにフォトニックバンドギャップ装置を適合させるためには、該装置構造のいくつかの部分は検査試料に接触している必要がある。生体分子、細胞、タンパク質、または他の物質が、フォトニック結晶の一部に導入され、共鳴時において局所的に閉じ込められた電磁場強度が最大となる場所に吸着される。その結果、結晶への光の共鳴結合が変更され、反射または透過の出力(すなわち、ピーク波長値または本明細書のPWV)が調整される(すなわち、シフトする)。反射による出力のシフト量は、センサー上に存在する物質の量に関係している。センサーは、センサーの中に光を導入して反射光または透過光を捕捉する照明−検出装置と共に用いられる。反射光または透過光は、ピーク波長のシフトを測定する分光器へ送られる。
【0008】
共鳴光結合(resonant light coupling)の高い品質係数(Q)、高い電磁エネルギー密度、および漏れのない光学的閉じ込めを提供するフォトニック結晶の機能を利用して、高感度の生化学的センサーを製造することができる。ここで、Qは、共鳴周波数におけるピーク波長の鋭さを示す尺度である。フォトニック結晶型バイオセンサーは、検査試料が周期格子に浸透し、生体分子または細胞の付着による該結晶の表面誘電率の変化によって共鳴性の光学的結合条件に同調するように設計される。共鳴による高いQ値および結合電磁場と表面結合物質との強い相互作用に起因して、報告されている最高感度を有するいくつかのバイオセンサー装置がフォトニック結晶から得られている(カニンガムらによる前記の論文参照)。この種の装置が、200ダルトン(Da)未満の分子量を有する分子を高い信号対雑音の許容範囲で検出する機能及び個々の細胞を検出する機能を有していることは証明されている。フォトニック結晶内において共鳴的に結合した光は空間的に効果的に閉じ込めることができるので、フォトニック結晶表面は、アレイ形式による複数の同時におこなわれる生化学的アッセイを可能にする。この場合、互いに約10μm未満の範囲内にある隣接領域は独立して測定することができる。この点に関しては次の文献を参照されたい:P.リ、B.リン、J.ゲルステンマイヤー及びB.T.カニンガム、センサーズ・アンド・アクチュエーターズ B、2003年(「生体分子の相互作用の標識を介在させないイメージングに関する新規な方法」)。
【0009】
フォトニック結晶構造に基づく標識不使用バイオセンサーには多くの実用的な利点がある。蛍光物質、放射性リガンド又は二次的レポーターを使用しない生化学的な細胞性結合の直接的検出法は、実験上の不正確さ、即ち、分子のコンフォメーションに対する標識の効果、活性な結合性エピトープの遮断、立体障害、標識サイトへの不到達性、又は実験における全ての分子に対して同等に機能する適当な標識を見出すことができないことによってもたられる不正確さの問題を除去する。標識を使用しない検出法は、アッセイ法の開発に要する時間と労力を著しく単純化すると共に、失活、貯蔵寿命及びバックグラウンド蛍光のための必要な実験的道具を必要としない。標識を使用しないその他の光学的バイオセンサーに比べて、フォトニック結晶の機能は、広帯域の光源(例えば、白熱電球又はLED)から垂直の入射角で光を照射し、反射される色彩のシフトを測定することによって容易に調べることができる。簡単な励起/読取りスキームの利用により、実験室用器具に使用するのに適した安価で小型の強靱なシステム、及びケア医療用診断法や環境の監視に使用される手持ちの携帯システムを得ることが可能となる。フォトニック結晶自体は電力を消費しないので、この種の装置は、種々の液体状又は気体状のサンプリングシステム内へ容易に埋設することができる。あるいは、この種の装置は、単一の照明/検出基地によって建物内の何千ものセンサーの状態が追跡される光学的ネットワーク中に配置させることができる。フォトニック結晶型バイオセンサーは広範囲の材料と方法によって製造することができるが、連続的なフィルム状シートを用いておこなうプラスチックに基づく製法によれば、高感度の構造体が得られることが判明している。従来はその他のバイオセンサーに対しては経済的に不適当とされていたプラスチックに基づく設計と製法によれば、低コスト/アッセイが要求される用途において使用されるべきフォトニック結晶型バイオセンサーが得られる。
【0010】
本発明の譲受人の一人は、フォトニック結晶型バイオセンサー及び標識不使用下での結合の検出のためのこれに関連する検出装置を開発した。このセンサーと検出装置は次の特許文献に記載されている:米国特許出願公開公報2003/0027327号、同2002/0127565号、同2003/0059855号および同2003/0032039号。共鳴ピーク波長のシフトの検出法は、米国特許出願公開公報2003/0077660号に教示されている。これらの特許文献に記載されているバイオセンサーは、プラスチック製のフィルム又は基体の連続的シート上へ適用された一次元的又は二次元的な周期的構造化表面を含む。この結晶の共鳴波長は、垂直入射におけるピーク反射率を、0.5ピコメーターの波長分解能が得られる分光計を用いて測定することによって決定される。三次元的なヒドロゲル表面の化学的性質を利用しないで得られた質量検出感度(1pg/mmよりも小さな値)は、その他の市販のバイオセンサーによっては証明されていない。
【0011】
前記の特許出願の明細書に記載されているバイオセンサー装置の基本的な利点は、プラスチック材料を用いる連続的な工程(1〜2フィート/分)によって大量生産できることである。このようなセンサーを大量生産する方法は、米国特許出願公開公報2003/0017581号に記載されている。読取り用フォトニック結晶型バイオセンサー用の読取り装置に関する詳細は、公開された米国特許出願公開公報2003/0059855号に記載されている。センサー自体を製造した後、底なしマイクロウェルプレートまたは同様の試験体の底にバイオセンサーを取り付けて、使用可能な検査器具を作製する。それらの構造は、前記の特許文献に記載されている。
【0012】
関連する他の特許文献としては、米国特許公報第7264973号、米国特許公報第7309614号および米国特許出願公開公報2006/0141527号がある。
【0013】
一般に、分析物が低濃度であっても強い信号を有することが望ましい。バイオセンサーの中で標的に占有される領域の大きさに比例して、分析物の低濃度検出限界(LDL)が決められる。バイオセンサーの表面上の標的スポットの大きさを小さくすると、所定のバイオセンサー信号を発生するのに必要なウェル中の分析物の量をより少なくすることができる。バイオセンサーの表面構造および/またはバイオセンサーの表面エネルギーに影響を与える要素が、小さな表面物質スポットの沈着を困難にすることがある。例えば、一次元のバイオセンサー構造(格子)では、表面上に置かれた液体は格子線の方向へ流れる。物質は、ウェルの壁の方向に広がる。壁に接触すると、表面物質は壁を伝い、必要以上に大きな面積をコートする。
【0014】
米国特許公報第7309614号は、バルクの屈折率変化により誘起されたバイオセンサーの信号を温度および組成に対して正規化するための、ウェル内参照(intra-well referencing)の概念を導入した。本明細書に記載された概念は、この技術の実施可能性と実用性を改良するものである。本発明は、出願人の譲受人の保有するBINDスキャナー等の高分解のイメージャー(imager)に依存するのではなく、出願人の譲受人の保有する高スループットのBINDプレートリーダーを備えたウェル間参照を特に実用可能にするものである。
【0015】
前記の引用した文献は、すべて本明細書の一部となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0027327号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0127565号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0059855号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0032039号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0077660号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0017581号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0059855号明細書
【特許文献8】米国特許第7264973号明細書
【特許文献9】米国特許第7309614号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2006/0141527号明細書
【特許文献11】米国特許第7309614号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】B.T.カニングハム、P.リ、B,リン及びJ.ペパー、センサーズ・アンド・アクチュエーターズ B、第81巻(2002年)、第316頁〜第328頁(「直接的な生化学的アッセイ法としての熱量測定による共鳴反射」)
【非特許文献2】B.T.カニングハム、J.キュウ、P.リ、J.ペパー及びB.フー、センサーズ・アンド・アクチュエーターズ B、第85巻(2002年)、第219頁〜第226頁(「標識の介在しない生化学的相互作用の多重同時検出のための熱量測定によるプラスチック製共鳴光学的バイオセンサー」)
【非特許文献3】A.J.ヘス及びR.P.V.ドゥイン、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー、第124巻(2002年)、第10596頁〜第10604頁(「ナノスケールの光学的バイオセンサー:三角形状の銀ナノ粒子の局存化表面プラスモン共鳴スペクトロスコピーに基づくアプローチの感度と選択度」)
【非特許文献4】P.リ、B.リン、J.ゲルステンマイヤー及びB.T.カニンガム、センサーズ・アンド・アクチュエーターズ B、2003年(「生体分子の相互作用の標識を介在させないイメージングに関する新規な方法」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本明細書は、いくつかの利点を有するフォトニック結晶型バイオセンサー等の新規なサブ波長(sub-wavelength)共鳴バイオセンサーについて記載している。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)微小な標的(タンパク質)スポットを試料ウェル内に沈着させることにより、低濃度でも分析物を検出することが可能となる。本明細書に記載されているバイオセンサー構造は、表面化学作用物質が指定された所定の領域内にとどまるように該物質の沈着を制限するのに寄与する。特に、バイオセンサーの活性領域の格子構造の特定のパターニングは、指定された標的領域の外側に表面化学作用物質が広がるのを防止するのに寄与する。
【0020】
(2)ウェル内の自己参照機能を向上させる。これは、マイクロウェル等の検査器具の読み取りを行い、かつ本明細書に記載したようにバイオセンサーを組み込んだ、高処理性の読取装置にとって重要な特徴である。
【0021】
本発明の一の態様として、試料ウェルを形成する構造体と、該試料ウェルの中に配置されたバイオセンサーとを備えた検査装置が開示される。試料ウェルを形成する該構造体は、試料ウェルに特徴を有するマルチウェルプレートの形状、または他の検査器具の形状をとることができる。本発明のバイオセンサーは2つの特徴を有している:すなわち、1)ウェル内に沈着した物質(例えば表面化学作用を示す物質)がバイオセンサー表面の指定された所定の領域内にとどまるように閉じ込めることを促進する構造的特徴;および2)バイオセンサーはさらに2つ以上の互いに異なる空間的領域を用いて構成され、該空間的領域は、バイオセンサーへの光の照射に応答して、十分に光学的分離がなされた異なる共鳴値(PWV1、PVW2、・・・)を示し、該光学的分離は検査装置を読み取る検出装置により分析できる。異なるPWV値についての必要な光学的分離の値は、検出装置の感度、異なる領域の数および他の要素によって変わるが、5〜15nmの光学的分離が特に規定される。
【0022】
互いに異なる空間的領域の一の領域は、物質が沈着する指定された所定の領域を含み、該空間的領域の別の領域は、前記の指定された所定の領域を囲む領域を含む。以下に詳細に説明するように、この2つの互いに異なる空間的領域の特徴は、自己参照機能を促進するものである。基本的に、閉じ込めおよび異なる空間的領域を、異なる共鳴値と組み合わせることは、分析物の下限検出限界値を低くくし、かつ所定の分析物濃度におけるSN比を増大させるのに寄与する。小さな標的スポットは、所定の信号レベルを確保するのに必要な、結合した分析物の絶対量を減らす。ウェル内参照機能を用いれば、バイオセンサーのノイズは減少する。
【0023】
一の特定の態様において、バイオセンサーは、フォトニック結晶型バイオセンサーの形態をとる。しかしながら、本発明の特徴は格子型バイオセンサー、例えば標識された分析物を検出するいわゆるエバネッセント共鳴(ER)バイオセンサーとともに用いることができる。
【0024】
第1および第2の空間的領域のための種々の空間的配置が開示されている。一例として、第1の空間的領域はウェルの中心部を占有する領域であり、第2の空間的領域はウェルの中心部の周辺領域を占有する領域である。チェッカー盤状の複数のタイプも開示されている。さらに、空間的領域を、緩衝領域により分離されたクラスター群として配置することもできる。いくつかの態様では、各クラスターは少なくとも3個の異なる空間的領域を有しており、それぞれが異なる共鳴値を示す。9個の異なる空間的領域を有し、それぞれが異なるPWVを有する態様が記載されている。
【0025】
指定された所定の領域内にとどまるようにウェル内に沈着した物質の閉じ込めを促進する、バイオセンサーの表面上の構造的特徴としては、複数の形態が可能である。一の形態として、該構造的特徴は、該所定の領域の境界と並列した状態に配置された周期的格子の形態をとることができ、その格子の配置が、沈着した物質が指定された所定の領域を越えて毛管現象等により移動することを抑制する。例えば、前記の所定の領域はウェルの中心部に配置された円形領域の形態をとることができ、構造的領域は環状の緩衝領域の形態をとることができ、該緩衝領域は中央の円形領域を囲む同心円状に配置された格子を有している。別の態様として、沈着した物質の閉じ込めを促進する構造的特徴は、バイオセンサーの表面の隆起した領域の形態をとることができる。
【0026】
別の態様として、複数の試料ウェルを有し、各ウェルが底部を有するマルチウェルの検査器具と、各ウェルの底部に配置されたフォトニック結晶型バイオセンサーとを備えた検査装置が開示されている。各ウェルでは、フォトニック結晶型バイオセンサーは、共鳴状態で第1のピーク波長値(PWV1)を示すように設計され、ウェルの第1の空間的領域内に配置された第1の周期的格子構造体と、共鳴状態で第2のピーク波長値(PWV2)を示すように設計され、ウェルの第2の空間的領域内に配置された第2の周期的格子構造体とを用いて構成されている。第1および第2の空間的領域は、ウェルの異なる空間的領域を有している。
【0027】
いくつかの態様では、第1および第2の空間的領域は、緩衝領域を介して相互に分離されている。別の態様では、空間的領域は相互に接触しており(他の領域と少なくとも1つの境界を有している)、さらにクラスター群として配置されている。クラスターは緩衝領域により相互に分離されている。ウェル当たりに2つまたはそれ以上のクラスターがあってもよい。
【0028】
第1領域内に沈着した液相物質が第2の空間的領域内に移動するのを抑制するように、周期的表面格子を用いて緩衝領域は構成されている。例えば、緩衝領域の該周期的表面格子は、第1の空間的領域の外形形状と並列した状態にある格子を用いて構成されている。例えば、PWV1を発生させる第1の空間的領域は、円形の外形形状を有し、緩衝領域はその円形の外形形状を囲む環状領域であり、該環状領域の格子は同心円として配置されている。別の例では、第1の空間的領域は四つの側面を有する矩形の外形形状を有し、緩衝領域の格子は、該矩形の外形形状の四つの側面と並列した状態に配置されている。さらに、緩衝領域は、PWV1およびPWV2を発生させる空間的領域のピーク波長値とは異なるピーク波長値を示す領域を含んでもよい。
【0029】
本明細書のバイオセンサーは、高処理性の細胞アッセイを含む種々の検査アッセイ(testing assays)に用いることができる。一の態様として、高処理性の細胞試料アッセイ方法が開示され、該方法は、
(a)区分されたバイオセンサーと貯蔵ウェルとを備え、該貯蔵ウェルが検査ウェルと液体を介して連絡している検査装置を用意し、
(b)該検査ウェルに細胞試料を添加し、
(c)該貯蔵ウェルに検査化合物を添加し、ここで該検査化合物は該貯蔵ウェルから該検査ウェルへ移動し、および
(d)区分されたバイオセンサーからのピーク波長値を測定する、ことからなる。
好ましくは、区分されたバイオセンサーは、検査ウェル内に配置された複数のPWV領域で構成される形態をとることができ、該形態は、工程(d)で行われる測定を、細胞試料と検査化合物との間の相互作用に応答して検査ウェル内で細胞試料の移動が起きているかどうか、およびその移動の方向が、高濃度の検査化合物を含む検査ウェル内の領域へ近づく方向かまたは該領域から離れる方向であるかどうか、を決定するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
典型的な実施形態が図面中の参照図に記載されている。本明細書に開示された実施形態および図は、例示であって、限定的に解釈されるべきではない。
【図1】図1は、複数の試料ウェルを有するマルチウェル器具の一部を示す斜視図である。格子型バイオセンサーは、試料ウェルの底部に配置されている。
【図2】図2は、図1の切断線2−2における、図1の器具の断面図である。
【図3】図3は、図1の一つのウェルの平面図であり、ウェルの底部におけるバイオセンサーの配置およびウェル内に置かれた表面化学作用を示す物質を示している。バイオセンサーは、中心部の空間的領域を占有する一つの第1の検出領域を有し、該第1の検出領域は一つの波長(PWV1)で共鳴するように設計された格子構造体で構成されている。バイオセンサーは、第1の検出領域を囲む別の空間的領域を占有する第2の周辺領域を有し、該第2の周辺領域は、第2の波長(PWV2)で共鳴するように設計された格子構造体で構成されている。これらの2つの空間的領域は環状の緩衝領域で分離されている。緩衝領域は、沈着した表面化学溶液が中央領域から周辺領域へと移動するのを抑制する特徴を有しており、例えば、該特徴は、同心円として配置された格子、または中央領域の格子の高さより高い隆起部を有する格子である。
【図4】図4は、図3のバイオセンサー配置の別の実施形態を示す平面図であり、各ウェルは、一つの波長で共鳴するように設計された格子構造体で構成された1個の第1の検出領域と、第1の検出領域を囲む4個の第2の領域であって、それぞれが第2の波長で共鳴するように設計された格子構造体で構成された第2の領域とを有している。第1の検出領域と4個の第2の領域は緩衝領域によって分離されている。
【図5】図5は、バイオセンサーに占有された複数のウェルを有するマイクロウェル検査装置の平面図であり、各ウェルのバイオセンサーは9個の空間的領域からなるクラスターとして構成され、各空間的領域は、クラスターが9個の異なる共鳴波長を持つように、異なる周期的表面格子構造体で構成されている。
【図6】図6は、図5のマイクロウェル検査器具の模式図であり、連続する場所を示しており、該場所において、マイクロウェル検査器具の読取装置がPWV測定値を取得する。装置は、各場所で9個のバイオセンサーからのピーク波長値の測定値を集める。9個の領域のそれぞれにおいて、各PWV測定値に十分なスペクトル分離が存在していれば(好ましくは少なくとも5nm)、装置は1個またはそれ以上のクラスターから同時に9個の異なるPWV測定値を取得することができる。
【図7】図7は、共鳴波長と、一次元周期的表面格子のフォトニック結晶周期との関係を示すプロットであり、入射光はTMモード、格子深さは275nmで、格子上には厚さが85nmのTiOの高屈折率被膜を有する。
【図8】図8は、格子型バイオセンサーの一部を示す詳細図であり、周期的表面格子構造体の一部およびバイオセンサーを読み取るための読取装置の要素を示している。円はバイオセンサーの表面に塗布された標的種を表し、「+」記号は標的種に結合する分析物を表す。いくつかの実施形態では、標的種は格子構造体の表面に結合している。一の可能な実施形態では、標的種は細胞に結合せず、分析物は細胞中に重要な動きを発生させる検査化合物である。
【図9】図9は、マイクロウェル検査器具を読み取り、検査器具中のバイオセンサーからPWV測定値を取得する、プレート読取装置および接続されたコンピュータワークステーションを示している。
【図10】図10は、マルチウェル検査器具用のバイオセンサーの別のもう一つの配置を示している。バイオセンサーは、同心円領域および中心領域からなる。各領域は異なる格子構造体を有し、各該領域は異なるPWV共鳴波長を有する。細胞は、単位セルの概中央にあるバイオセンサーの上に播種されている。単位セルの周囲の領域は、細胞に引き寄せられる(または反発する)検査化合物でコーティングされている。各領域のPWV測定のシフトを長時間測定することにより、細胞が検査被膜へ近づくのかまたは試験被膜から離れるのかを測定するために装置を用いることができる。
【図11】図11は、ウェル対を有する検査器具の一部を示しており、該ウェル対の一方のウェルが検査ウェルであって区分けされたPWVセンサーを含み、他方のウェルは貯蔵部として使用され、化学的誘引物質または反発試薬(repulsion agent)等の検査化合物を含んでいる。図11の検査器具は、走化性(chemo-taxis)研究の新規な方法を代表する細胞移動アッセイに用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、複数の試料ウェル12を形成する構造体を有するマルチウェルの検査器具の一部を示す斜視図である。バイオセンサー14は試料ウェルの底部に配置されている。図示された実施形態において、バイオセンサーはフォトニック結晶型バイオセンサーである。しかしながら、他の格子型光学バイオセンサーもバイオセンサー14として用いることが可能である。図2は、図1の切断線2−2における、図1の検査器具の断面図である。図8は、より詳細な断面図である。検査器具10は、底のないマルチウェルマイクロプレートの形状を有している。バイオセンサー14は、格子層102から成り、該格子層はポリエチレンテレフタレート(PET)シート等の透明基板材料100の上に形成されている。高屈折率物質104(図8)の層を格子層102の表面上に沈着させている。層100,102および104から成る層構造を検査器具の底部に結合することにより、バイオセンサー14がウェル14の底面を形成する。デュアルファイバー束112のファイバーから器具に対して光による応答指令信号が送られ、特定波長の光を器具に照射することによりバイオセンサーに共鳴を生じさせる。反射光は束112の別のファイバーにより捕獲され、分光器に送られる。バイオセンサー14の表面に分析物が結合すると、反射光のピーク波長値のシフトが発生し、このシフトは分光器により検出される。
【0032】
図3は、図1および2のウェル12の一つの平面図であり、ウェルの底部におけるバイオセンサー14の配置およびウェル内に置かれた表面化学作用を示す沈着物22を示している。図3では、表面化学作用を示す沈着物22は黒のハッチングで表されている。バイオセンサーはウェル12の中心に位置する一つ第1の検出領域20を有し、該検出領域は一つの波長(PWV1)で共鳴するように設計された格子構造体で構成されている。バイオセンサーは、第1の検出領域を囲む第2の周辺領域16を有しており、該周辺領域は第2の波長(PWV2)で共鳴するように設計された格子構造体で構成されている。2つの領域は、環状緩衝領域18を介して互いに空間的に分離されている。緩衝領域18は、沈着した表面化学作用を示す溶液22が中央領域20から周辺領域16へと移動するのを抑制する特徴を有しており、例えば、該特徴は、中央領域20の表面外形を同心とする同心円として配置された表面格子構造体である。あるいは、緩衝領域18の格子が、中央領域20の格子の高さより高い隆起部を有する。
【0033】
検査器具10を読み取るための機器として用いるプレートリーダー(plate reader)は、光を照射し、リーダーの光路の中の開口の直径で規定される、マイクロプレートウェル12のいずれかの領域からのバイオセンサーの共鳴位置を測定する。この「読取領域」は、図2および3の30において破線で示される円形領域であり、典型的には1から3mmの直径を有する。本明細書では、開口の大きさ30が、ウェル内の表面化学−標的スポット22よりも大きな面積範囲を有する読取領域となるような特別かつ典型的なケースを考えている。よって、測定される光は、生物学的に活性なスポット20と、該スポットの外側にあるかなり活性の低いセンサー領域の両方、すなわち、緩衝領域と領域「PWV2」とから来る。そのような条件で、2つの異なる波長を有する共鳴測定値が得られる。詳しくは、PWV1(ピーク波長値1)は領域20、すなわち、標的スポットおよび表面化学作用を示す被膜がバイオセンサーを覆っているバイオセンサーの領域から来る。PWV2は、領域20と空間的に分離されかつ領域20の外側にある領域16、すなわち、表面化学作用を示す標的被膜がないバイオセンサーの領域から来る。PWV1はPWV2よりも大きい。領域20および16の両方を同時にサンプリングする読取装置は、PWV1−PWV2が共鳴幅(半値幅、FWHM)を越える場合には、2つの、分光学的な共鳴特徴を分離する。しかし、2つの領域間のPWVの差が小さければ(標的量が少ない)、2つの重なり合った共鳴は一つの広い共鳴として現れる。
【0034】
図3の構造は上記の2つの領域間のスペクトルの違いを際立たせるものであり、同時参照点としてのPWV2(領域16からの測定値)の使用を促進するものである。本明細書では、表面被膜効果のみによってではなく、構造によりPWV1とPWV2との分離を行う。特に、値PWV2(領域16)の信号を発生させるバイオセンサー領域用の格子構造体は、2つの分光学的共鳴特徴であるPWV2およびPWV1を検出機器により決定できるように、PWV2が信号PWV1(領域20から発生)から十分に分離されるように設計されている。典型的な実施形態では、PWV2とPWV1は少なくとも5nmで隔てられ、典型的にはこの差は5〜15nm、あるいはそれ以上であるが、異なるPWVを有する異なる領域が、所定の読取領域30内のバイオセンサー上にどの程度の数存在しているのかによる。
【0035】
2つの特徴の組み合わせ、すなわち、1)表面化学作用を示す沈着物22からなる沈着物を閉じ込め、指定された所定領域内(20に加えて、緩衝領域18の一部またはすべて)に留めること、および2)十分にスペクトルが分離した2つの異なる共鳴値(PWV1およびPWV2)を持つ異なる空間的領域(20と16)を有するバイオセンサー格子構造体を用意することは、分析物の検出下限値を下げ、かつ所定の分析物濃度におけるS/N比を大きくする。小さな標的スポットは、所定の信号レベルを確保するに必要な結合する分析物の絶対量を減少させる。ウェル内参照機能を用いれば、バイオセンサーのノイズは減少する。
【0036】
別の態様として、本発明は、バイオセンサーにより占有された表面領域をパターン化する方法を記載しており、該方法は、すべてのウェルを一度にサンプリングする、低分解能で高処理の読取機器により、微小標的領域の作製と測定を促進する。一つの可能な実施形態として、読取機器により1回の読み取りでサンプリングされた領域30は、ウェル12のすべての空間範囲と同一の広がりを有する。
【0037】
例えば、図3を再度参照すると、この実施形態では、ウェル領域12には異なる機能性バイオセンサー領域のパターンが付与されており、該バイオセンサー領域は意図的に異なる共鳴波長を生じさせるとともに、バイオセンサーの表面上に沈着した機能性化合物を含有し易くするように配列された格子特徴を有する。一例では、バイオセンサー14がマイクロプレートウェル12の底部に置かれている。バイオセンサーは、同心領域として配置された3つの領域を有している。最も内側の領域20は概ね円形の形状を有し、ゾーン1と呼ばれ、波長PWV1の信号を発生させる。表面化学作用を示す物質および標的物質(図3にまとめて22として示す)を、バイオセンサーを使用している間にゾーン1に沈着させる。中間の環状形状の緩衝領域18はゾーン1(22)に外接している。外側の領域16(ゾーン2)は中間の緩衝領域18を囲み、円形ウェル用に環状形状を有している。ゾーン2(16)は波長PWV2の信号を発生させる。一例では、ゾーン2(16)はウェルの残りの部分を覆う。ゾーン1(20)とゾーン2(16)のバイオセンサーの表面に形成されたサブ波長格子構造体の周期は十分に異なっており、各共鳴のFWHMを越える値でPWV1とPWV2とを分離でき、それにより、確実に、全てのウェルで測定されるスペクトルから常に2つの分離可能なPWVを得ることができる。
【0038】
緩衝領域18は、2つの実際的な目的のために役立つ。第1に、ゾーン2(16)の参照機能を低下させることなく、表面化学標的物質22の配置と広がりに自由度を与える。第2に、緩衝領域18は、表面化学標的物質22が広がるのを物理的に制限する役割も有する。これは、緩衝領域にあるバイオセンサーの表面に形成された格子構造体を配向および/または作製することにより達成され、該格子構造体は、ゾーン1に沈着した物質22の、例えば毛管作用による外向きの流れを防止または抑制する方向に向けてまたは配向を有するように形成されている。例えば、図3の実施形態では、緩衝領域18は、同心の環状格子構造体から成るものでもよい。表面化学標的物質をさらに閉じ込めるために、ゾーン1の隣接した格子構造体よりも高さの高い格子構造体を緩衝領域の中に設けることもできる。パターン用マスター製造に関する問題等の製造上の観点からは、緩衝領域の格子構造体が、ゾーン1のバイオセンサー領域の活性なサブ波長格子と同じ高さを有していれば、1回のエッチング工程でマスターを製造することが可能となる、ことを指摘できる。物質を保持するという特徴を確保すること、例えば高さを高くすること、は2回目のエッチング工程を必要とする。
【0039】
別の実施形態では、緩衝領域18は、例えば、PWV1(ゾーン1の)またはPWV2(ゾーン2の)のいずれとも異なるPWV緩衝を発生させるサブ波長格子構造体から成るものでもよい。
【0040】
図3の説明を続けると、読取装置の測定領域30は、ウェル12の大部分を覆う。そのため、1個のウェルにより生じるスペクトルは、PWV1、PWV2および恐らくPWV緩衝に対応する2個または3個の共鳴を含む。
【0041】
ゾーン1および2のサブ波長格子構造体は、直線状でもよく、同じ配置または異なる配置を持ってもよい。それらは穴または柱のアレイ等の2次元構造体であってもよい。それらは、同心の環状構造体から構成されてもよい。
【0042】
PWV2を有するゾーン2(16)の存在は2つの利点を提供する。第1に、記載したように、標的で覆われていない離れたセンサー領域から作用する光の影響を受けることなく、ゾーン1(20)からの共鳴(PWV1)を標的領域(22)上での結合に対して明確に応答させることができる。第2に、ゾーン2からの共鳴は、いわゆる「バルク」効果および/または「非特異的」な結合に対して応答し、観測されたPWV1シフトのための参照測定または補正係数を提供するものである。バルクシフトは、バイオセンサー14の上の液体の屈折率が変化した時に生じるものであり、分析物と標的との結合を検出するのに必要な信号とは関係のないバイオセンサー信号を発生させる。これは、例えば、温度または緩衝液の変化に応じて発生する。非特異的結合は、標的以外の物質への分析物の結合を検出することをいう。両現象は、特定の分析物−標的結合の測定に対し誤差を与える。
【0043】
図3のバイオセンサー配置用の読取機器の最適化には、全ウェル領域、すなわちすべての領域からできる限り光を集めることができるように、照射用機器および検出用光学系を設計することが含まれる。ウェルの境界を越えても、通常は問題とはならない。その理由は、接着剤(センサー14をマイクロウェルプレート10のフレームに結合するために用いられる)で覆われたバイオセンサーの共鳴は、センサーの実用範囲の長波長側で発生するからである。同様のピーク強度を維持するために、必要な積算時間(信号収集時間)は増加する。何故なら、各共鳴を発生させる領域が減少するからである。
【0044】
図4は、3個の異なる共鳴波長を発生させる3個の異なる格子ピッチを有する区分けされたバイオセンサー14のパターンを示している。破線12が境界を示す領域は、384ウェルのマイクロウェルプレートの中の矩形ウェルの領域を示しているが、ウェルの外形は重要ではなく、円形でもよい。領域30は、検出機器によりサンプリングされる領域を示している。ウェルの中心の領域50にある周期的表面格子は、第1の波長における共鳴を発生させる。領域50は、緩衝領域52に囲まれ、該緩衝領域は、図示するように、領域50の矩形領域の外形と配列した状態で配置されている。緩衝領域52は、第2の波長で共鳴を発生させる。50で示す格子は、384ウェルのアッセイにおける最初の検出のために使用される。バイオセンサーは、ウェル当たり、周囲を囲む4個の四角(square)54も含み、各四角54は隣接する緩衝領域52により囲まれている。ウェル当たり4個の四角54があり、384ウェルプレートではそのような四角が1536個ある。図4に示すこのパターンを、標準的な384ウェルおよび1536ウェルのマイクロプレート型式の両方で使用できるように、四角54は離間配置されている。四角54は第3の波長で共鳴を発生させる。標的物質は、四角50および/または54の中心に置かれ、緩衝領域52は、外側の参照領域、領域60上への流出を防止する。全緩衝領域の周囲の外側領域60により取得された共鳴信号は、ウェルの中心の四角50から得られる最初の共鳴信号のための参照信号となる。
【0045】
異なるPWVを有する複数の領域の概念を拡げることにより、他の利点が得られる。例えば、バイオセンサーをチェッカー盤パターンを用いて設計することができ、該チェッカー盤パターンは、各四角の間が十分に分光学的に分離された、異なるサブ波長格子構造体周期(よって異なる共鳴波長)を各四角の中に有している。検出機器がチェッカー盤のセンサーパターンの上をスキャンすると、読取機器の各位置で複数の四角が撮像される。そのようなセンサーは、読取装置の大きなサンプリング領域を用いながら、低分解能の空間映像効果を生じさせることができる。スペクトルの各共鳴ピークは、ウェルマップ上の既知の領域に対応する。このようにして、細胞がウェルを横切る時の運動性を異なるPWVを用いてモニターすることができる。
【0046】
別のさらに微細なチェッカー盤パターンは、PWV1で「黒」の四角が共鳴し、PWV2で「赤」の四角が共鳴するもので、両方の波長を同時に分解できるので、映像機器の分解能を効果的に2倍にすることができる。撮像された画素当たり4個の共鳴領域は、分解能を4倍に増加させる。光源および分光器のスペクトルの幅が、システムが分解できる異なるPWVの数を制限している。
【0047】
空間的位置とPWVとを相関させることは、所定の空間的分解能を確保するために読取装置が読取ヘッドの位置を正確にモニターする必要がない場所への、スキャニング型読取装置の接近も促進する。例えば、図3に示す区分されたセンサーを用いると、該センサーは、ゾーン1ではPWV1で共鳴し、ゾーン2ではPWV2で共鳴し、読取装置はPWV1がウェルの中心に対応することを「知る」。読取ヘッドは、ウェルのそばをスキャンし、正確な位置で停止することなくPWV1の値を記録する。
【0048】
例えば、複数のPWV色の区分を有するチェッカー盤のようなパターンを形成するPWVnの複数領域の実施形態について詳しく説明すると、非画素化(non-pixilated)の読取型機器は低分解能のスキャナーになる。読取装置の開口部は、n個の四角を有する領域に光を照射し、各四角は、単一のPWVを示し、および機器内で信号が分解できるように、各四角のスペクトルは十分に分離されている。実際には、センサーのチェッカー盤パターンにより画素化が行われている。読取装置が、センサー領域の上でその開口部をスキャンすると、四角パターンは空間的頻度で繰り返し、PWVnを有する1個の四角のみに対して一度に照射を行うことを可能とする。次いで、読取装置のソフトウェアは、開口部の既知の位置に基づいてPWVnのシフトの対応付け(map)を行い、分解能が「開口部の大きさ/n」である非標識のシフト画像を作製する。
【0049】
さらに、読取装置(光源および分光器)の使用可能なスペクトル幅が、開口部の中に存在できる領域の数を規定している。現在のセンサーおよび検査の実務に従えば、PWVnとPWVn+1は、10nm以下の範囲で分離している必要がある。そのため、使用可能なスペクトル幅が100nmである読取装置は、10個以下の異なるPWV領域を多重送信することができる。センサー製造においては、この方法は9個の領域に制限される可能性がある。
【0050】
本発明の別の態様は、細胞運動性検査の必要性に応えるPWV領域を備えたウェルの底をパターン化することを含む。簡単な例として、PWV1を有するセンサー領域上のウェルの中に細胞を置くことができる。PWV1のシフトがセンサー表面へのこれらの細胞の付着を記録する。次いで細胞は検査化合物に曝され、該検査化合物により細胞に重要な運動が発生する。PWV2を有する隣接する領域は、細胞がPWV1とPWV2との間の空間部分を横切る時に、ピーク波長のプラスの波長シフトを記録するが、PWV1は、細胞がこの領域を通過すると低下する。この考え方をさらに拡張すると、ウェルの底は、ウェルを横切る細胞の移動を監視する、n個のストライプ状または環状の領域を備えることもできる。最初の細胞播種領域から離れた領域が、細胞を誘引する検査化合物皮膜を備えることもできる。細胞がこれらの検査皮膜に接近する時または遠ざかる時に、PWVn領域におけるシフトが細胞の動きを記録する。以下に、図10を用いて実施例について説明する。
【0051】
図5は、12で示される複数のウェルを備えたマイクロウェル検査器具の平面図であり、図5に示されていない検査器具の構造は、図示のために削除されている。各ウェルのバイオセンサーは、行列状に配列された9個の領域62からなる1個のクラスターとして構成され、各領域は、該クラスターが9個の異なる共鳴波長を示すように、異なる周期的表面格子構造体で形成されている。本実施例では、9個の領域は互いに分離されておらず、別の領域と少なくとも一つの共通の境界を共有している。バイオセンサークラスター60は、9個の領域とは異なるPWVを有する緩衝領域64を介して互いに分離され、開口部のサンプリングの固有性を確保するとともに、前述の自己参照機能を提供している。
【0052】
図6は、図5のマイクロウェル検査器具の模式図であり、連続する場所群、70A、70B7、70C、70D、70Eを示しており、該場所群においてマイクロウェル検査器具の読取装置がPWV測定値を取得する。計器が、70A、70B等の各場所においてバイオセンサーの9個の領域のピーク波長の測定値を収集する。例えば、70Aの場所では、右側のクラスターのPWV1からPWV6の示す値と、左側のクラスターのPWV7、PWV8およびPWV9の示す値を収集する。9個の領域のそれぞれについて、各PWV測定値のスペクトルが十分に分離されていれば(好ましくは少なくとも5nm)、計器は、9個の異なるPWV測定値を同時に取得することができる。公知の開口部位置と公知のPWVn領域地図を組み合わせることにより、空間的に分解されたPWVの画像を得ることができ、それによって連続掃引により得られるPWV値を比較することにより、結合活性を表す画像を得ることができる。
【0053】
図7は、一次元周期の表面格子に対してTMモードの入射光を用いた場合の、フォトニック結晶周期と共鳴波長との関係を示すプロット80であり、該表面格子は格子深さが275nmで、格子上には85nmのTiOの高屈折率被膜を有している。このプロットは、格子周期が約540nmから580nmの範囲では、波長周期1nmの増加に対し1.44nmの傾きで共鳴波長が増加することを示している。図7は、図5および図6に示す9個のPWV領域に、9個のフォトニック結晶周期、すなわち、約540nm、545nm、550nm、560nm、565nm、570nm、575nmおよび580nmを設けることにより、約7nmの間隔で分光学的に分離された9個の共鳴波長が得られることを示している。
【0054】
図8は、格子型バイオセンサー14の一部の詳細図であり、周期性表面格子構造体の一部およびバイオセンサーを読み取るための読取装置の構成部品の一部を示している。層100は、基材であり、ガラス、透明プラスチックまたは他の材料を用いることができる。格子構造体は層102であり、紫外線硬化性材料の形をとってもよい。高屈折率材料層104(例えばTiO)を、格子層の上に堆積させている。円の印200は、バイオセンサーの表面に沈着または塗布された標的種および/または表面化学作用を示す物質を示し、”+”の印202は、標的種に結合する分析物を示す。いくつかの態様では、標的種200は格子構造体の表面に結合する。一の可能な態様として、標的種200が結合していない細胞であり、分析物202が細胞に大きな動きを発生させる検査化合物である。標的および/または分析物をバイオセンサーの表面に空間的に分布させてもよい。図8は、検出装置の主たる部品、すなわち、光源110および光ファイバー束112も示しており、該光ファイバー束112は光源に結合され、114で示すようにバイオセンサーの表面に光を向ける一方、116で示すように反射光を取り込む。取り込まれた光は分光器118に向けられる。検出装置はXYステージ(図示せず)を備えていてもよく、該XYステージは、検出装置の光学系に対して検査器具を、例えば矢印150で示すように相対移動させる。
【0055】
図9は、プレート読取装置300を示す図であり、該プレート読取装置は、光源110、光ファイバー束112、図8の分光器118、およびプレート読取装置の中の分光器118からのデータを取り込む付属のコンピュータワークステーション302を備えている。プレート読取装置300は、マイクロウェル検査器具10を読み取り、検査器具10の中のバイオセンサーからのPWV測定値を取り込むように設計されている。ワークステーションは、中央演算ユニット306、キーボード308およびマウス310を備えている。オペレータは、ワークステーションを用いて、分光器から得られたデータ、例えば図9に示すPWV信号のプロットをディスプレイ上で見ることができる。プレート読取装置は、BINDプレート読取装置の形をとることができ、該BINDプレート読取装置は、出願人の譲受人から購入することができ、前述の参考特許文献に記載されている。
【0056】
図10は、マルチウェル検査器具用バイオセンサーの別の代替配置を示す図である。バイオセンサー14は、同心円状領域62と中心領域PWV8とのクラスターまたはユニットとして構成されている。各領域は異なる格子構造体を有しており、例えば各領域は、PWV1、PWV2、・・・・、PWV8で示される異なるPWV共鳴波長を示す。各クラスターは、マルチウェル検査器具10の中では、ウェルと実質的に同一の広がりを有している。沈着した細胞22は、バイオセンサー上の概ねクラスターの中央に播種されている。クラスターの周囲の領域は、細胞に引きつけられるあるいは反発する検査化合物で被覆されている(PWV1およびPWV2の領域の影の部分)。検出装置の光学系は、全ウェル12から一度にデータを取り込めるように設計されている。各領域においてPWV測定値のシフトを長時間測定することによって、該装置を、検査被膜に接近または遠ざかる細胞の遊走を測定することに用いることができる。
【0057】
読取装置の構造が、図4,5,6または10に示す器具またはそれらの変形例の器具で同時に取得することのできるPWV測定値の数nを制限する。おそらく、1台で同時に10をはるかに越える領域を読み取ることができるだろう。用途に応じて、領域間の間隔または領域の大きさを小さくすることができ、それにより、各読取領域にさらに多くの領域を設けることができる。nの値としては100が可能と思われる。
【0058】
細胞遊走検査
図11は、サンプル用検査器具10の一部を示し、該検査器具は、高処理性の細胞遊走検査に適した一対のウェル12Aおよび12Bを有している。好ましい態様として、検査器具10は、ウェル12Aおよび12Bの対が何百も配列されたマルチウェルプレートであり、図11はその一対のみを示している。図11の器具の使用は、化学遊走の研究に対する新規なアプローチである。その検査は、検査ウェル12Aの底に形成されたフォトニック結晶センサー14の表面に置かれた細胞の母集団を、貯蔵ウェルまたは付随ウェル(companion well)12Bに最初に添加された検査化合物の濃度勾配に曝すものである。2つのウェル12Aと12Bは、互いに液体連絡可能であり、例えば、マイクロ流体流路400により互いに連結され、それにより検査化合物が貯蔵ウェル12Bから検査ウェル12Aへと移動することができる。もし、検査化合物に引き寄せられると、細胞はフォトニック結晶センサーの表面を横切って左から右へと矢印410の方向に沿って検査化合物の濃度が高い方向へ移動し、もし検査化合物により反発されれば、矢印412の方向に沿って右から左へと移動して、ウェル12Aのマイクロウェル流路の中に移動する。この例は、複数の共鳴領域(共鳴領域PWV1 402、PWV2 404、PWV3 406、およびPWV4 408)でパターン化されたバイオセンサーが、検査用マルチウェルプレートおよび高処理性読取装置を用いる自動化された高処理性の化学遊走検査を可能とする方法を示すものである。
【0059】
この検査を実施するために、マイクロプレートウェル12A(例えば、384個のウェルを有するプレートの中にウェルとして形成されたもの)には、区分されたフォトニック結晶センサー14が組み込まれており、該フォトニック結晶センサーは、複数のストライプ状領域(402、404、406および408)を有する上記のサブ波長格子構造体を有し、該ストライプ状領域は、液体流路400と貯蔵ウェル12Bの方向とに垂直に配置され、それにより、予想される実際の細胞の運動(左から右および右から左)に対して垂直になる。領域またはストライプ402、404、406および408は、液体流路400が検査ウェル12Aに入る場所を中心とする同心状の曲線の形をとることもできる。各領域は、隣接する領域と、例えば5nmで分光学的に分離された異なる共鳴値またはPWV値を有している。読取装置により記録されるウェル領域16は、すべての領域の全ウェルに及ぶ。この検査ウェル12Aは、検査中の細胞を含んでいる。自動化されたディスペンサー装置が、細胞試料を各ウェル12Aの中に供給し、そこで、センサー14に塗布された細胞外マトリックス物質の被膜にそれら細胞試料が付着する。
【0060】
隣接するウェル12B(四角形、円形または他の形状であってもよい)は、検査化合物を含み、該検査化合物は、検査ウェル12Aの中のセンサー14に細胞が付着した後でウェル12Bの中に供給されたものである。マイクロ流路400は、検査化合物の貯蔵ウェル12Bを検査ウェル12Aに接続する。拡散または他の能動制御によって、検査化合物の流動が促され、流路400を通って、貯蔵ウェル12Bから、細胞を含む検査ウェル12Aへ流動する。流路400から検査ウェル12Aへの検査化合物の緩やかな移動は、矢印410で示される濃度勾配を生成させる。貯蔵ウェル12Bを検査ウェル12Aに接続する別の流路400を設けることにより、該濃度勾配をより制御することが可能となる。マイクロ流路は、プレート10のフレームの中あるいはバイオセンサー14の基材層の中に形成することができる。
【0061】
検査器具は、読取装置(図9の300)の中に置かれる。読取装置は、そのウェルを含むプレート全領域を速やかにスキャンし、各領域を同定する共鳴のスペクトル位置に対する変化を監視する。時間ゼロでは、読取装置のデータが、中間の空間分布を有する細胞が付着したすべての検査ウェル12A中のすべての領域に対する基準共鳴値を決定する。隣接する貯蔵ウェル12Bに検査化合物を添加すると、マイクロ流路400を介して検査ウェル12A中に勾配が発生する。細胞がマイクロ流路の開口の方向(検査ウェル12Aの右側)へ移動すると、誘因物質の場合と同様に、流路400から離れた領域(すなわち、領域402と404)は、該領域を去る細胞の数に比例して減少する共鳴波長を記録する。流路の開口に近い領域(領域406と408)は、該領域に細胞が到着すると実質的にプラスの共鳴シフトを示す。ウェル12Aの中のすべての領域(402,404,406,408)の実質的なPWV応答を評価することにより、ウェル内において、検査化合物に曝した時の、細胞母集団の移動方向および移動距離を簡単に決定することができる。周期的に、領域の再読み取りを行うと、細胞の移動速度の情報が得られる。細胞を添加する前に基準値を測定することにより、細胞母集団の密度に比例する領域の信号を得ることができるので、母集団百分率で細胞運動信号を表現することができる。
【0062】
図11の態様では、検査器具10は、384ウェルのマイクロプレートであり、該マイクロプレートは、例えば、192個の検査ウェル12Aと192個の隣接する化合物用貯蔵ウェル12Bを有している。384個のすべてのウェルは、ウェル12Aについて示される領域パターンを有するバイオセンサー14を含んでもよく、それにより検査配置に自由度が得られる。最新式の読取装置は、192個のウェルを10秒以内で読み取ることができるので、細胞移動の監視のための適切な時間分解法を提供する。
【0063】
化合物用貯蔵ウェル12Bは、読み取りを行わないでおくこともでき、あるいはさらに有用な結合情報を提供することもできる。例えば、検査化合物用貯蔵ウェル12Bは、固定された結合ターゲットを含むことができ、それにより、濃度勾配の発生に伴う検査化合物の結合情報を提供することができる。
【0064】
このように、本態様では、高処理性の細胞試料検査方法が企図され、該方法は、(a)区分されたバイオセンサー14および貯蔵ウェル12Bを有する検査ウェル12Aを備え、該貯蔵ウェル12Bが該検査ウェルと流体を介して連通する(例えば流路400を介して)、検査装置(10)を用意する工程と、(b)該検査ウェル12Aに細胞試料を添加する工程と、(c)検査化合物を貯蔵ウェル12Bに添加し、該検査化合物を該貯蔵ウェルから該検査ウェルに移動させる工程と、および(d)区分されたバイオセンサー14からのピーク波長値を測定する工程を有する。好ましくは、区分されたバイオセンサーが、複数のPWV領域の形態をとり、該複数のPWV領域は、検査ウェルの中に図11に示すような状態で配置され、該状態では、細胞試料の移動が、細胞試料と検査化合物との間の相互作用に対応して検査ウェル内で発生したかどうかを決定するために、およびその移動の方向が、高濃度の検査化合物を含む検査ウェルの領域の方向かあるいは該領域から離れる方向であるのかを決定するために、工程(d)で実施される測定を用いることができる。
【0065】
図11は、検査ウェル12A当たり1個の貯蔵ウェル12Bを示し、多くの検査化合物を検討対象とするよりは、細胞母集団の置換(permutation)を検討対象としているが、貯蔵ウェルが、例えば適切な流路ネットワークにより、結合した検査ウェルと流体を介して連通すれば、1個の貯蔵ウェル12Bを多くの検査ウェル12Aのための貯蔵ウェルとして機能させることができる。例えば、マルチウェル検査器具は、貯蔵ウェルよりも多くの検査ウェルをマルチウェル検査器具の中に持つことができ、おそらく1個の貯蔵ウェル当たりに96個あるいは可能性として何百もの検査ウェルを持つことができる。検査ウェルは、ウェル内部に異なる多くの領域を持つこともできる。
【0066】
さらに、細胞遊走検査の別の変形例も可能である。種類の異なる細胞を種々の異なる検査ウェルに配置することができる。種類の異なる細胞を同じ検査ウェルの中に配置することができる。一つの可能な変形例では、検査器具の各検査ウェルが種類の異なる細胞を含んでいる。検査は、所定の検査化合物に対するウェル間の異なる応答を期待する。また、各検査ウェルが同じ種類の細胞を含み、各貯蔵ウェルが異なる検査化合物を含む。
【0067】
上記の説明においては、多くの例示的な観点と実施形態について議論したが、当業者であれば、これらに関連する特定の修正、変更、追加及び下位概念的組合せが上記の開示内容に包含されることを認識できる。したがって、添付の特許請求の範囲および今後提示される特許請求の範囲は、それらすべての修正、変更、追加及び下位概念的組合せが特許請求の範囲によって規定される技術的思想と技術的範囲に包含されるものと理解されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
10 マルチウェル検査器具、12,12A,12B 試料ウェル、14 バイオセンサー、16 周辺領域、18 緩衝領域、20 中心領域、22 表面化学沈着物、30 読み取り領域、50 領域、52 緩衝領域、54 矩形領域、60 外部領域、62 クラスター、64 緩衝領域、70A,70B,70C,70D,70E 位置、
100 透明基材、102 格子層、104 屈折材料層、110 光源、112 光ファイバー束、118 分光器、202 分析物、300 プレートリーダー、302 ワークステーション、304 ディスプレイ、306 CPU、308 キーボード、310 マウス、400 流路、402,404,406,408 ストライプ領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料ウェルを有し、各試料ウェルが底部を有するマルチウェル検査器具と、各試料ウェルの底部に配置されたフォトニック結晶型バイオセンサーとを備えた検査装置であって、
各試料ウェルにおいては、試料ウェルの第1の空間的領域内に配置されて共鳴状態で第1のピーク波長値を示すように設計された第1の周期的格子構造体と、試料ウェルの第2の空間的領域内に配置されて共鳴状態で第2のピーク波長値を示すように設計された第2の周期的格子構造体とによってフォトニック結晶型バイオセンサーが構成され、
第1および第2の空間的領域が、試料ウェルの異なる空間的領域を含む、該検査装置。
【請求項2】
第1および第2の空間的領域が、緩衝領域により互いに分離される請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
第1の空間的領域内に沈着した液相物質が第2の空間的領域内へ移動するのを抑制するように、周期的表面格子を用いて緩衝領域が構成されている請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
第1の空間的領域が外形形状を有し、緩衝領域の周期的表面格子が、第1の空間的領域の外形形状と並列した状態にある格子によって構成される請求項2記載の検査装置。
【請求項5】
第1の空間的領域が円形の外形形状を有し、緩衝領域が該円形の外形形状を囲む環状領域を有し、該環状領域の格子が同心円として配置される請求項4記載の検査装置。
【請求項6】
第1の空間的領域が四つの側面を有する矩形の外形形状を有し、緩衝領域の格子が、該矩形の外形形状の四つの側面と並列した状態に配置される請求項4記載の検査装置。
【請求項7】
上記フォトニックバイオセンサーが、少なくとも3つの空間的に分離された領域を用いて構成され、各領域が、それぞれ異なるピーク波長値を示すように構成される請求項1記載の検査装置。
【請求項8】
検査装置に接続され、少なくとも3つの空間的に分離された領域を同時にすべて読み取る読取装置を用いて各ピーク波長値が検出できるように、各ピーク波長値が分光学的に分離される請求項7記載の検査装置。
【請求項9】
分光学的な分離が5〜15nmである請求項8記載の検査装置。
【請求項10】
第1および第2の空間的領域が、チェッカー盤状に配置される請求項1記載の検査装置。
【請求項11】
空間的に分離された各領域が行列状に配置され、空間的に分離された各領域が別の空間的に分離された領域と境界を共有する請求項7記載の検査装置。
【請求項12】
空間的に分離された領域はクラスターに群化され、該クラスターが緩衝領域により分離される請求項11記載の検査装置。
【請求項13】
ウェル当たり2つ以上のクラスターが存在する請求項11記載の検査装置。
【請求項14】
緩衝領域が、第1および第2のピーク波長値とは異なる第3のピーク波長値を示す領域を含む請求項2記載の検査装置。
【請求項15】
試料ウェルを形成する構造体と、該試料ウェルの中に配置されたバイオセンサーとを備えた検査装置であって、
該バイオセンサーが2つの特徴、すなわち、
1)ウェル内に沈着した物質がバイオセンサー表面の指定された所定の領域内にとどまるように閉じ込めることを促進する構造的特徴、および
2)該バイオセンサーが2つ以上の異なる空間的領域によって構成され、該空間的領域が、バイオセンサーへの光の照射に応答して、十分に分光学的に分離された異なる共鳴値を示すことにより該分光学的な分離が、該検査器具を読み取る検出装置により分析されるという特徴を有し、
異なる空間的領域の1つの領域が、指定された所定の領域を含み、異なる空間的領域の別の領域が、該所定の領域を囲む領域を含む、該検査装置。
【請求項16】
バイオセンサーが、フォトニック結晶型バイオセンサーを含み、
第1の空間的領域が試料ウェルの中心部を占有する領域を含み、
第2の空間的領域が第1の空間的領域の周囲の領域を占有する領域を含む請求項15記載の検査装置
【請求項17】
上記の、ウェル内に沈着した物質がバイオセンサー表面の指定された所定の領域内にとどまるように閉じ込めることを促進する構造的特徴が、上記の所定の領域の境界と並列した状態に配置された周期的格子を有する請求項15記載の検査装置。
【請求項18】
ウェル内に沈着した物質がバイオセンサー表面の指定された所定の領域内にとどまるように閉じ込めることを促進する構造的特徴が、バイオセンサーの表面の隆起した領域を含む請求項15記載の検査装置。
【請求項19】
異なる共鳴値を示す2つ以上の異なる空間的領域が、チェッカー盤状に配置された2つの空間的領域を含む請求項15記載の検査装置。
【請求項20】
異なる共鳴値を示す2つ以上の異なる空間的領域が、緩衝領域により囲まれた異なる空間的領域の1つ以上のクラスターを含む請求項15記載の検査装置。
【請求項21】
各クラスターが、それぞれ異なる共鳴値を示す少なくとも3つの異なる空間的領域を含む請求項20記載の検査装置。
【請求項22】
各クラスターが、3つ〜9つの空間的領域を含む請求項21記載の検査装置。
【請求項23】
試料ウェルが、検査化合物を含有する貯蔵ウェルと検査ウェルとを含み、該貯蔵ウェルがマイクロ流路により該検査ウェルに接続される請求項1記載の検査装置。
【請求項24】
底部を備えた複数の試料ウェルを有するマルチウェル検査器具であって、該複数の試料ウェルが検査ウェルと少なくとも1つの貯蔵ウェルとを有する該マルチウェル検査器具と、
各検査ウェルの底部に配置されたフォトニック結晶型バイオセンサーと、
少なくとも1つの貯蔵ウェルと検査ウェルとを接続する流路または流路群を備えた検査装置であって、
各検査ウェルにおいては、フォトニック結晶型バイオセンサーは、区分されたバイオセンサーを含み、該区分されたバイオセンサーは、試料ウェルの第1の空間的領域内に配置されて共鳴状態で第1のピーク波長値を示すように設計された第1の周期的格子構造体と、試料ウェルの第2の空間的領域内に配置されて共鳴状態で第2のピーク波長値を示すように設計された第2の周期的格子構造体とによって構成され、
第1および第2の空間的領域が、試料ウェルの異なる空間的領域を含む、該検査装置。
【請求項25】
第1および第2の空間的領域が、検査ウェルを貯蔵ウェルに接続すると共に検査化合物を検査ウェルに導く流路の方向に対して直交するように配置される請求項24記載の検査装置。
【請求項26】
マルチウェルプレートを含む請求項24記載の検査装置。
【請求項27】
検査器具が、同数の検査ウェルと貯蔵ウェルを含む請求項24記載の検査装置。
【請求項28】
(a)(1)区分されたバイオセンサーを含む複数の検査ウェルおよび(2)該検査ウェルと流体を介して連通する1つ以上の貯蔵ウェルを有する検査装置を用意する工程と、
(b)該検査ウェルに細胞試料を添加する工程と、
(c)検査化合物を1つ以上の貯蔵ウェルに添加し、該検査化合物を1つ以上の該貯蔵ウェルから該検査ウェルに移動させる工程と、および
(d)区分されたバイオセンサーからのピーク波長値を測定する工程を含む、高処理性の細胞試料アッセイ方法。
【請求項29】
区分されたバイオセンサーが、複数のPWV領域を含み、
細胞試料の移動が、細胞試料と検査化合物との間の相互作用に応答して検査ウェル内で発生したかどうかを決定すると共に、該細胞試料の移動の方向が、より高濃度の検査化合物を含む検査ウェルの領域への方向かあるいは該領域から離れる方向であるのかを決定するために、工程(d)で実施される測定を用いることができるような状態に該複数のPWV領域が配置される請求項28記載の方法。
【請求項30】
検査ウェルが、少なくとも2種類の細胞を含む請求項28記載の方法。
【請求項31】
上記検査装置が、複数の貯蔵ウェルを有し、該複数の貯蔵ウェルが異なる検査化合物を含む請求項28記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの検査ウェル内に、複数種の細胞を存在させる請求項28記載の方法。
【請求項33】
区分されたバイオセンサーが、ストライプ群として配置されたセンサー表面を有するフォトニック結晶型バイオセンサーを含み、各ストライプが異なる公称共鳴ピーク波長値を有する請求項28記載の方法。
【請求項34】
ストライプ群が、隣接する矩形群として配置される請求項33記載の方法。
【請求項35】
ストライプ群が、隣接する同心状の曲線群として配置される請求項33記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−527571(P2011−527571A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517398(P2011−517398)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/003541
【国際公開番号】WO2010/005466
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(503159210)エス アール ユー バイオシステムズ,インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】