説明

河川等の水位表示方法と表示装置及び構築用擁壁ブロック

【課題】河川管理を遺憾なく行うためには、河川水位についての多くのデータが必要であり、従来の橋脚や河口堰、堤防などに水位目盛りを表示する方法では、設定場所の確保が困難で、しかも、水位が表示された目盛りのどの部位にあるか、目視によって確認するのが困難であるといった問題があった。
【解決手段】数多くの設置スペースを確保できる河川等の護岸擁壁面に、護岸擁壁の造成と共に計測機構を構築できる浮子摺動溝2を、水位目盛り23に並列して設定し、同摺動溝に浮子3を摺動自在に嵌着して河川水位の上昇、下降に対応して浮子が昇降して河川水位を表示するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の護岸擁壁面に沿って、端縁に水位目盛りを表示した浮子摺動溝を設定し、河川水位の上昇、下降に対応して摺動溝に嵌着した浮子の昇降によって河川等の水位を表示するようにした河川等の水位の表示方法と表示装置及びその構築用擁壁ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダムや河川等の水位を簡易に表示する手段としては、河川に架かる橋の橋脚や河口堰、堤防などの見やすい場所に水位目盛りを表示して表示する方法が知られている。
【0003】
しかし、この方法において水位目盛りを表示する場所は、表面が滑らかで目盛りを刻む塗料等が載り易く剥がれにくい相当に広いスーペスを必要とし、しかも、対岸等の目視できる見易い場所が存在する等の条件が必要で設定場所も極めて限定されざるを得ない。
【0004】
また、河川等の水は、通常時は、自然流下でそれ程の関心を呼ばないが、大雨等により本流河川側の水位が高くなった場合は、本流河川から支流側に逆流が起こり、河川の氾濫が生じる恐れがある。このため、大雨時には河川の本支流が合流する付近に設けられた水門を閉鎖して、本流河川から支流への逆流を防止した上で、排水ポンプにより支流の水を本流に放流する等の対応が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
上記のような、異常時における河川等に遺憾なく対応するためには、通常時における河川管理と河川水位についての多くのデータが必要であり、橋脚や河口堰、堤防などに水位目盛りを表示する方法では、設定場所の確保が困難で、しかも、水位が表示された目盛りのどの部位にあるか、目視によって確認するのが困難であるといった問題がある。
【0006】
更に、河川の氾濫に繋がる河川管理は極めて重要な問題であるため、特許文献1や2に記載のように河川管理のための水位予測装置が開発されている。しかし、これら水位予測による河川管理も、現場の基礎データが基本となるものであり、現場河川の水位計測が重要なものとなってきている。
【0007】
このような現場河川の水位計測については、水面に浮上させたフロートに索条を接続して水面の水位変化に伴い、索条を介して回転される主軸の回転から水位を計測するものとして、例えば特許文献3記載のような計測装置が存在する。
【特許文献1】特許第4030372号公報
【特許文献2】特許第3100322号公報
【特許文献3】特開2002−372449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3記載の発明のように水面の昇降を直接捉えるフロートの動きを索条を介して回転される主軸の回転に変換して計測する方法は、間接的となるため必ずしも正確を期しがたい一面があると共に、索条のプーリに対する掛け回し作業における捲装方向など熟練した技術者によるメンテナンスが必要である等の問題がある。
【0009】
間接的計測方法には上記のような問題があり、できるだけ多くの地点における計測データを得ることが理想であってコスト的にも橋脚等に水位目盛りを表示する直接的な計測方法に比して大きな負担となるため、単純な構成で故障の少ない直接的な方法が注目されるものである。
【0010】
しかし、直接的な計測方法については、水位目盛りの表示について前記のような制約を受けるため、設置スペースの環境条件が極端に限定されることになるほか、目視により水位目盛りのどの部位に河川の水面が来ているのかを確認しなければならないので、水位目盛りの見易さと明確さが強く要請されるところとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記した課題に対応しようとするものであり、数多くの設置スペースを確保できる場所として堰堤等の護岸擁壁面を選定し、護岸擁壁の造成と共に計測機構を構築できるようにしたものである。また、水位目盛りに並列して浮子摺動溝を設定し、同摺動溝に浮子を摺動自在に嵌着して河川水位の上昇、下降に対応して浮子が昇降して河川水位を表示するように構成した。
【0012】
更に、河川水位表示機構を構築する素材として、ブロックの前面に摺動溝を構成する開口部を形成し、同開口部の奥に浮子アンカー部を収容摺動する摺動スペースを積み上げ傾斜角に対応する角度に傾斜させて形成すると共に、前記開口部に沿って端縁に水位目盛りを表示した表示部を形成した擁壁ブロックを用いるようにし、プレハブ的にこれを積み上げることにより水位表示機構が構成されるようにして擁壁の造成と共に表示機構を構築できるようにした。
【0013】
また、夜間などにも目視によりどの部位に河川の水面が来ているのかを確認し易いように摺動溝端縁に表示する水位目盛りとそのレベル指標となる浮子にそれぞれが識別できるように蛍光材料によって識別表示するようにし、更に、摺動溝を構成する開口部の河川上流側端縁に、防流障壁を形成して溝に嵌着されて摺動する浮子が水流によって揺動したりするのを防止した。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記のように堰堤など河川岸辺に擁壁ブロックを用いる等して、水位表示機構を構築でき、対岸から望遠鏡を用いるなどして容易に水位を計測確認できるので、多くの設置スペースを確保できると共に、構造が単純でメンテナンスも容易なのでコスト的にも有利に河川管理を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例を示すもので、河川岸の擁壁に沿って構築された河川水位表示装置の全体正面図
【図2】同じく、図1の河川水位表示装置を浮子摺動溝の中心部A−Aラインに沿って断面として河川水位の変位に伴って浮子が昇降する浮子の作動状况と水位表示装置の構造を示す河川水位表示装置の縦断側面図
【図3】同じく、河川水位表示機構を構築する構築用擁壁ブロックと浮子摺動溝に嵌着した浮子の関係を示す構築用擁壁ブロックの平面図
【図4】同じく、構築用擁壁ブロックの構造を示すブロックの正面図
【図5】同じく、構築用擁壁ブロックの構造を示すもので、図3のB−Bラインに沿って断面とした構築用擁壁ブロックの断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明すると、1は河川水位表示機構を構築する構築用擁壁ブロックで、前面に摺動溝2を構成する開口部21を形成し、同開口部21の奥に浮子3のアンカー部31を収容摺動する摺動スペース22を積み上げ傾斜角に対応する角度に傾斜させて(図2の実施例ではブロックが直方体であるので傾斜角はないが、断面菱形のブロックの場合には前面盤の傾斜角に対応する角度に傾斜させる)形成すると共に、開口部21に沿って端縁に水位目盛りを表示した表示部23が形成される。
【0017】
水位目盛りの表示部23は、ブロック本体に蛍光材料によって直接表記し、或いは目盛り表示板として別に制作して擁壁構築後に摺動溝2の隣接部に貼付けるようにしても良い。浮子3は摺動スペース22に収容されて指標部32を水位表示部23の面上に支持するアンカー部31と指標部32を連結する連結部33とから成り、アンカー部31が摺動スペース22を、連結部33が開口部21を摺動して指標部32を表示部23上に昇降させるものである。
【0018】
指標部32の頂部には表示部23とは色違いの蛍光材料等によって表示部23と識別容易な形態のレベル表示(図示しない。)がされ、対岸等から容易に水位レベルを読み取ることができるようになっている。
また、開口部21の河川上流側端縁には防流障壁4が形成され、開口部21から突出する浮子の指標部32が水流やゴミによって揺動したり、作動が妨害されたりしないようになっている。
【0019】
ブロック1の上面には、摺動溝2を挟んで両側に、上部に積み上げられるブロック11の底面に形成される凹陥条11bと嵌合する蒲鉾状の突条11aが形成され、更に、突条11aの頂部からブロックの底面に貫通するテーパー孔12が摺動溝2を挟んで両側に設定される。
【0020】
テーパー孔12はブロック積み上げに対応して上下ブロックを貫通する鉄筋等を挿通して充填材を充填してブロックの積み上げを固定するものである。また、13、13は隣接する隔壁工5等との嵌合構造等を構成するブロック両側の凹陥条である。
【0021】
水位表示機構の構築は、先ず、対象となる設置スペースの河川床を掘削して基礎採石等による基礎工6の設定と裏込め工事61を行って河川底の基礎レベルGを確定し、基礎工の上部に上記のように構成した構築用擁壁ブロック1を積載し、裏込めと上下ブロック間の鉄筋挿入を行いながら、両側の堰堤擁壁Y、Yの造成施工と共に積み上げ施工を行って河川水位表示機構の構築し、浮子3を摺動溝2に落とし込んで天端にコンクリート62を打設するか、或いは、浮子3の修理、交換等のための開閉機構を設置して完成する。
【0022】
構築用擁壁ブロック1は前記のように構成されているので、ブロック1の積み上げ施工によって河川水位表示機構が完成し、浮子3を摺動溝2に落とし込むことにより水位の計測表示が可能となるものであるが、ブロック1の積み上げ施工部の両側に、両側の堰堤擁壁Y、Y造成部とを隔絶する隔壁工5を施工することによって水位表示機構は構造的に安定したものとなる。
【0023】
本発明による河川水位表示機構は、上記のようにブロック1の積み上げ施工によって自動的に形成されるので、前記のように両側の堰堤擁壁Y、Yの造成と共に形成することも可能であるが、河川土手に単体として多数を形成し、多数の水位データ収拾拠点として活用することもできる。
なお、構築用擁壁ブロック1を用いずに独自の方法によって河川水位表示機構を構築しても良いことは勿論である。
【0024】
以上のように構成された河川水位表示装置は、確定された河川底の基礎レベルGを基準として水位目盛り表示部23が構成され、浮子3は図2示すように平常水位W1に浮遊しているが、増水によって水位がW2に上昇すると浮子3がW2に上昇して水位を表示するものである。また、設定施工が両岸の護岸擁壁の造成の機会に同時施工できるので両岸に対向して設置すれば、対岸から常に水位を確認することができ、きめ細かい河川管理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は以上のように構成したので、河川氾濫などの緊急に対応するための水位変動予測データを低コストで収拾することに貢献できるほか、目視により常に水位を確認できるので河川管理に極めて有益であり、水利施設産業上に高度の利用価値を有するものである。
【符号の説明】
【0026】
1 構築用擁壁ブロック
11 上部に積み上げられるブロック
11a 構築用擁壁ブロック上面の嵌合突条
11b 積み上げブロック底面の嵌合凹陥条
12 ブロックの貫通テーパー孔
13 隣接部材との嵌合凹陥条
2 浮子摺動溝
21 浮子摺動溝の開口部
22 浮子摺動溝の浮子アンカー摺動スペース
23 水位目盛り表示部
3 浮子
31 浮子のアンカー部
32 浮子の水位指標部
33 浮子の連結部
4 浮子摺動溝の防流障壁
5 隔壁工
6 基礎採石等による基礎工
61 裏込め工
62 天端コンクリート
G 河川底の基礎レベル
Y 堰堤擁壁部
W1 平常水位
W2 上昇水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川等の護岸擁壁面に沿って、端縁に水位目盛りを表示した浮子摺動溝を設定し、水位の上昇、下降に対応する前記摺動溝に嵌着した浮子の昇降によって河川等の水位を表示するようにしたことを特徴とする河川等の水位表示方法
【請求項2】
河川等の護岸擁壁面に沿って、端縁に水位目盛りを表示した浮子摺動溝を設定すると共に、同摺動溝に浮子を摺動自在に嵌着して水位の上昇、下降に対応して浮子が昇降して河川等の水位を表示するように構成したことを特徴とする河川等の水位表示装置
【請求項3】
ブロックの前面に摺動溝を構成する開口部を形成し、同開口部の奥に浮子アンカー部を収容摺動する摺動スペースを積み上げ傾斜角に対応する角度に傾斜させて形成すると共に、前記開口部に沿って端縁に水位目盛りを表示した表示部を形成したことを特徴とする河川等の水位表示堰堤構築用擁壁ブロック
【請求項4】
摺動溝を構成する開口部の河川等の上流側端縁に、防流障壁を形成するようにした請求項3記載の河川等の水位表示堰堤構築用擁壁ブロック
【請求項5】
表示部に表示する水位目盛りと浮子に、蛍光材料によって識別容易な形態のレベル表示をするようにした請求項3又は請求項4記載の河川等の水位表示堰堤構築用擁壁ブロック

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−209096(P2011−209096A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76723(P2010−76723)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000157315)丸高コンクリート工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】