説明

沸騰水型原子力プラント及び原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験方法

【課題】原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験における冷却材の管理温度が高い場合でも、容易に原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験を行うことができる沸騰水型原子力プラントを提供する。
【解決手段】沸騰水型原子力プラント1は、原子炉圧力容器2に接続された残留熱除去系配管34に原子炉浄化系8の浄化系配管9を接続している。再生熱交換器10、非再生熱交換器11、浄化系ポンプ12及び炉水浄化装置13が浄化系配管9に設けられる。熱交換器15が設けられたバイパス配管16が、炉水浄化装置13の下流で、再生熱交換器10をバイパスするように浄化系配管9に接続される。原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験時には、炉水浄化装置13で浄化された冷却水が、熱交換器15で、所内ボイラ23から供給される蒸気により加熱され、給水配管30を通して原子炉圧力容器2に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子力プラント及び原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子力プラントでは、原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験(例えば、特開平10−26575号公報参照)において、原子炉圧力容器内の冷却水(冷却材)の温度調整を行っている。その冷却水の加熱は、原子炉圧力容器内の炉心に装荷された複数の燃料集合体内に存在する核燃料物質の崩壊熱、及び炉心に冷却水を供給する再循環ポンプの回転に伴う発熱によって行っている。冷却水の冷却は、その耐圧漏洩試験前では残留熱除去系により行い、その耐圧漏洩試験中では制御棒駆動水系からの低温水の供給による冷却に頼っている。原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験時には原子炉圧力が高くなるため、残留熱除去系は停止される。
【0003】
原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験時には、原子炉圧力容器内の冷却水の温度を、温度制限値内で管理することが必要である。
【0004】
沸騰水型原子力プラントは、運転年数が増加するにつれて、原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験時における原子炉圧力容器内の冷却水の管理温度が上昇する。耐圧漏洩試験における冷却水の加熱時の入熱は核燃料物質の崩壊熱、及び再循環ポンプの駆動による入熱のみであり、耐圧漏洩試験における冷却水の冷却は制御棒駆動水系から供給する冷却水の温度及び流量を調整して行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−26575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
沸騰水型原子力プラントの運転停止期間が長期に亘る場合には、炉心に装荷されている複数の燃料集合体に含まれる核燃料物質で発生する崩壊熱が低下する。この様な状態で、原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験を行うとき、その崩壊熱及び再循環ポンプの駆動による入熱によって冷却水を所定の温度まで加熱しようとしても、その耐圧漏洩試験時における冷却水の管理温度まで冷却水の温度が上昇しない可能性がある。特に、その沸騰水型原子力プラントが、運転年数が長いプラントである場合には、その耐圧漏洩試験時における冷却水の管理温度が高くなるので、なお更である。
【0007】
本発明の目的は、原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験における冷却材の管理温度が高い場合でも、容易に原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験を行うことができる沸騰水型原子力プラント及び原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉圧力容器に両端が連絡されて原子炉圧力容器内の冷却材が流れる配管系に熱交換器を設け、この熱交換器に、冷却材を加熱する蒸気を供給する蒸気供給管を接続しており、その熱交換器から蒸気を排出する蒸気排気管が熱交換器に接続されていることにある。
【0009】
原子炉圧力容器に両端が連絡されて原子炉圧力容器内の冷却材が流れる配管系に設けられた熱交換器に、冷却材を加熱する蒸気を供給する蒸気供給管を接続しているので、原子炉圧力容器を有する沸騰水型原子力プラントの運転停止時において、その熱交換器に供給される冷却材を蒸気によって加熱し、昇温した冷却材を、配管系を通して原子炉圧力容器に供給することができる。このため、原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験における冷却材の管理温度が高い場合でも、原子炉圧力容器内の冷却材の温度をその管理温度まで容易に上昇させることができ、容易に原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験における冷却材の管理温度が高い場合でも、容易に原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の沸騰水型原子力プラントの構成図である。
【図2】本発明の他の実施例である実施例2の沸騰水型原子力プラントの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の好適な一実施例である沸騰水型原子力プラントを、図1を用いて説明する。本実施例の沸騰水型原子力プラント1は、原子炉圧力容器2、再循環系5、原子炉浄化系8、残留熱除去系33及び熱交換器15を備えている。
【0014】
給水配管30、及びタービン(図示せず)に接続された主蒸気管31が原子炉圧力容器2に接続されている。原子炉圧力容器2内には、複数の燃料集合体が装荷された炉心3が配置されている。複数のジェットポンプ4が、原子炉圧力容器2内で炉心3の周囲に配置される。再循環系5は、再循環系配管6、及び再循環系配管6に設置された再循環ポンプ7を有している。再循環系配管6は、原子炉圧力容器2に接続され、ジェットポンプ4のノズル(図示せず)に連絡される。残留熱除去系33は、残留熱除去系配管34、熱交換器(冷却器)35及びポンプ36を有する。残留熱除去系配管34の両端が原子炉圧力容器2に接続され、熱交換器35及びポンプ36が残留熱除去系配管34に設けられる。原子炉浄化系8は、残留熱除去系配管34と原子炉圧力容器2に接続された給水配管30を連絡する浄化系配管9に、再生熱交換器10、非再生熱交換器11、浄化系ポンプ12及び炉水浄化装置(例えば、ろ過脱塩器)13をこの順に設置している。浄化系配管9は、ポンプ36の上流で残留熱除去系配管34に接続される。浄化系配管9は、非再生熱交換器11よりも上流で、再生熱交換器10内に設けられた伝熱管(図示せず)に接続され、炉水浄化装置13よりも下流で、再生熱交換器10のシェル側に連絡される。開閉弁14が、炉水浄化装置13よりも下流で再生熱交換器10よりも上流で、浄化系配管9に設けられる。
【0015】
熱交換器15を設置したバイパス配管16が、炉水浄化装置13と開閉弁14の間で浄化系配管9に接続され、再生熱交換器10と給水配管30の間で浄化系配管9に接続される。開閉弁17が熱交換器15の上流でバイパス配管16に設けられ、開閉弁18が熱交換器15の下流でバイパス配管16に設けられる。バイパス配管16は熱交換器15の伝熱管に接続される。所内ボイラ23に接続される、開閉弁20が設けられた蒸気供給管19が、熱交換器15に接続され、熱交換器15のシェル側に連絡される。開閉弁22が設けられた蒸気排気管21が、熱交換器15に接続され、熱交換器15のシェル側に連絡される。蒸気供給管19及び蒸気排気管21が、熱交換器15のシェル側を介して相互に連絡される。開閉弁25及びポンプ32を設けた冷却水供給管24が熱交換器15のシェル側に接続され、開閉弁27を設けた冷却水排出管26が熱交換器15のシェル側に接続される。冷却水供給管24、冷却水排出管26及び熱交換器15によって、閉ループが形成される。冷却水供給管24及び冷却水排出管26が熱交換器28の伝熱管に接続される。熱交換器28のシェル側に冷却水配管29が接続される。開閉弁25及びポンプ32を設けた冷却水供給管24、開閉弁27を設けた冷却水排出管26、熱交換器28及び冷却水配管29は、補機冷却系を構成している。
【0016】
原子炉圧力容器2内の冷却水(冷却材)は、沸騰水型原子力プラント1の運転中においても原子炉浄化系8によって浄化されている。浄化系ポンプ12の駆動によって、原子炉圧力容器2内の冷却水は、残留熱除去系配管34を通って浄化系配管9内に流入する。この冷却水は、再生熱交換器10及び非再生熱交換器11で冷却され、炉水浄化装置13に導かれる。冷却水に含まれている放射性物質(イオンを含む)等は炉水浄化装置13で除去される。炉水浄化装置13で浄化された冷却水は、再生熱交換器10で加熱されて給水配管30を通って原子炉圧力容器2に戻される。沸騰水型原子力プラント1の運転中では、残留熱除去系33が停止・待機状態であり、原子炉圧力容器2内の冷却水が熱交換器35に供給されない。
【0017】
再循環ポンプ7も駆動されており、原子炉圧力容器2から再循環系配管6に流入した冷却水は、再循環ポンプ7により昇圧されてジェットポンプ4のノズル(図示せず)から噴射される。噴射された冷却水と共に、ジェットポンプ4のノズルの周囲に存在する冷却水も、ジェットポンプ4内に吸引されて炉心3に供給される。
【0018】
沸騰水型原子力プラント1の定期検査が、沸騰水型原子力プラント1の運転停止後に開始される。沸騰水型原子力プラント1の運転停止後、開閉弁14が閉じられて開閉弁17,18が開けられる。炉水浄化装置13で浄化された冷却水が、後述するように、熱交換器15によって冷却され、浄化系配管9及び給水配管10を通って原子炉圧力容器2に供給される。その定期検査の期間中において、原子炉圧力容器2の蓋(図示せず)が取り外され、原子炉圧力容器2から蒸気乾燥器(図示せず)及び気水分離器(図示せず)が取り出される。その後、炉心3内に存在する一部の燃料集合体である、寿命になった燃料集合体が使用済燃料集合体として取り出され、新しい燃料集合体が炉心3に装荷される。
【0019】
原子炉圧力容器2、再循環系5及び原子炉浄化系8の定期検査が終了し、燃料交換が終了した後、蓋が原子炉圧力容器2に取り付けられ、原子炉圧力容器2が密封される。その後、沸騰水型原子力プラント1の運転開始前に、原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験が行われる。
【0020】
その耐圧漏洩試験の開始前に、熱交換器15による原子炉圧力容器2内の冷却水の昇温操作が行われる。この冷却水の昇温操作が行われるとき、開閉弁20及び22が開いて開閉弁25,27が閉じられる。炉水浄化装置13から排出された冷却水は、再生熱交換器10に供給されずに、バイパス配管16を通って熱交換器15に供給されている。所内ボイラ23で発生した蒸気が蒸気供給管19を通って熱交換器15のシェル側に供給される。熱交換器15に供給された冷却水が、この蒸気によって加熱される。シェル側に供給された蒸気は蒸気排気管21に排気される。熱交換器15で加熱された冷却水は、バイパス配管16、浄化系配管9及び給水配管30を通って原子炉圧力容器2内に供給される。
【0021】
原子炉圧力容器2内の冷却水は、熱交換器15による加熱、及び駆動している再循環ポンプ7からの入熱によって、原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験時の所定温度まで上昇する。原子炉圧力容器2の底部に取り付けられた、制御棒駆動機構(図示せず)を内蔵する制御棒駆動機構ハウジング(図示せず)に、制御棒駆動系の配管(図示せず)が接続されている。その耐圧漏洩試験は、制御棒駆動系の配管及び制御棒駆動機構ハウジングを通して原子炉圧力容器2内に供給する冷却水の圧力を調節することによって、原子炉圧力容器2内の圧力を高めて行われる。原子炉圧力容器2内の圧力が耐圧漏洩試験中において設定圧力に保持され、原子炉圧力容器2及び原子炉圧力容器2に設けられた複数のノズル等から内部の冷却水が漏洩していないかが確認される。耐圧漏洩試験の間、熱交換器15で所定温度に加熱された冷却水が、原子炉圧力容器2内に供給される。
【0022】
原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験を実施する沸騰水型原子力プラント1が運転年数の長いプラントである場合でも、耐圧漏洩試験時に熱交換器15で加熱された冷却水を加熱して原子炉圧力容器2内に供給するので、原子炉圧力容器2内の冷却水の温度を容易に冷却水の管理温度まで高めることができる。このため、原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験における冷却材の管理温度が高い場合でも容易に原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験を行うことができる。また、本実施例は、原子炉圧力容器2内の冷却水の温度を冷却水の管理温度まで高めるのに要する時間を短縮することができる。さらには、沸騰水型原子力プラントの運転停止が長期間に亘って炉心内の複数の燃料集合体に含まれる核燃料物質の崩壊熱が低下した場合でも、熱交換器15で加熱された冷却水を加熱して原子炉圧力容器2内に供給するので、原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験における冷却材の管理温度が高い場合でも容易に原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験を行うことができる。
【0023】
沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、沸騰水型原子力プラントに設けられた残留熱除去系33が駆動される。原子炉圧力容器2内の冷却水は、核燃料物質の崩壊熱により加熱される。この冷却水は残留熱除去系33で冷却され、崩壊熱による冷却水の温度上昇が抑制される。すなわち、ポンプ36が駆動されて原子炉圧力容器2内の冷却水が、残留熱除去系配管33を通って熱交換器35に供給され、この熱交換器35によって冷却される。熱交換器35で冷却された冷却水は、残留熱除去系配管33により原子炉圧力容器2内に戻される。さらに、本実施例では、沸騰水型原子力プラントの運転停止後、熱交換器15及び補機冷却系により、浄化系配管9及び給水配管10を通して原子炉圧力容器2に供給される冷却水が冷却される。
【0024】
すなわち、沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、開閉弁14を閉じて開閉弁17,18を開くと共に、開閉弁25,27も開く。開閉弁20,22は閉じられている。ポンプ32が駆動され、補機冷却水が、閉ループを形成している冷却水供給管24、冷却水排出管26及び熱交換器15のシェル側内を循環する。補機冷却水は、冷却水配管29により熱交換器28のシェル側に供給される冷却水(例えば、海水)によって冷却される。このため、バイパス配管16によって熱交換器15に供給される冷却水は、熱交換器15において冷却された補機冷却水によって冷却される。熱交換器15で温度が低下した冷却水は、バイパス配管16、浄化系配管9及び給水配管10を経て原子炉圧力容器2内に供給される。炉心3で核燃料物質の崩壊熱によって加熱された冷却水は、残留熱除去系33だけでなく、熱交換器15によっても冷却される。
【0025】
補機冷却水が供給される熱交換器15による原子圧力容器2内の冷却水の冷却は、原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験を実施する前の準備期間及びその耐圧漏洩試験の期間を除いて、沸騰水型原子力プラント1の運転停止において実施される。その耐圧漏洩試験の準備段階において、原子炉圧力容器2内の冷却水温度を耐圧漏洩試験における冷却水の管理温度まで上昇させるために、開閉弁25,27を閉じて熱交換器15による冷却水の冷却が停止される。そして、開閉弁20,22を開いて前述した熱交換器15による冷却水の加熱が行われる。
【0026】
本実施例は、原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験の期間およびこの耐圧漏洩試験の準備期間を除いて、沸騰水型原子力プラント1の運転停止期間中で、原子圧力容器2内の冷却水の冷却を、熱交換器15を用いて行うことができる。このため、沸騰水型原子力プラント1の定期検査期間中における原子炉圧力容器2内の冷却水の冷却能力が向上し、残留熱除去系33の停止時間を伸ばすことができる。これによって、残留熱除去系33のメンテナンス性が向上する。また、沸騰水型原子力プラント1の運転停止直後においては、原子炉圧力容器2内の冷却水が高温になっている。この冷却水の温度が所定温度以下に低下しないと、原子炉圧力容器2の蓋をあけることができない。本実施例は、残留熱除去系33だけでなく熱交換器15によっても原子炉圧力容器2内の冷却水を冷却することができるので、沸騰水型原子力プラント1の運転停止した時点から、原子炉圧力容器2内の冷却水の温度が低下して所定温度になるまでに要する時間を短縮することができる。したがって、原子炉圧力容器2の蓋を早く開けることができ、燃料交換作業、及び原子炉圧力容器2及び炉内構造物の保守点検に早く取り掛かることができる。
【実施例2】
【0027】
本発明の他の実施例である実施例2の沸騰水型原子力プラントを、図2を用いて説明する。本実施例の沸騰水型原子力プラント1Aは、熱交換器15を、原子炉圧力容器の底部に接続されたドレン配管41に設けた構成を有している。沸騰水型原子力プラント1Aの他の構成は沸騰水型原子力プラント1と同じである。開閉弁42がドレン配管41に設けられる。炉水浄化装置13をバイパスするバイパス配管39の両端が、浄化系配管9に接続される。開閉弁40がバイパス配管39に設けられる。炉水浄化装置13の上流でバイパス配管39と浄化系配管9の接続点の下流で、開閉弁37が浄化系配管9に設けられる。炉水浄化装置13の下流でバイパス配管39と浄化系配管9の接続点の上流で、開閉弁38が浄化系配管9に設けられる。バイパス配管39及びドレン配管41は、図1に図示されていないが、沸騰水型原子力プラント1にも設けられている。
【0028】
本実施例の沸騰水型原子力プラント1Aでは、沸騰水型原子力プラント1Aの運転停止後、開閉弁42が開いて原子炉圧力容器2内の冷却水がドレン配管41を通って熱交換器15に供給される。熱交換器15への補機冷却水及び蒸気の供給は、実施例1と同様に行われる。ドレン配管41により熱交換器15に供給された冷却水は、熱交換器15で補機冷却水により冷却される。熱交換器15で冷却された冷却水は、浄化系配管9内に流入し、再生熱交換器10及び非再生熱交換器11でさらに冷却されて炉水浄化装置13で浄化される。浄化された冷却水は、再生熱交換器10を通り給水配管30から原子炉圧力容器2に供給される。熱交換器15によって原子炉圧力容器2内の冷却水が冷却され、この冷却された冷却水が浄化系配管9及び給水配管30を介して原子炉圧力容器2内に供給されるので、原子炉圧力容器2内で崩壊熱による冷却水の温度上昇を避けることができる。熱交換器15による冷却水の冷却は、原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験を実施する前の準備期間及びこの耐圧漏洩試験の期間を除いて、沸騰水型原子力プラント1Aの運転停止において実施される。熱交換器15による冷却水の冷却が行われている間では、開閉弁37,38が開いており、開閉弁40が閉じている。
【0029】
原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験を実施する前の準備期間において、ドレン配管41により熱交換器15に供給された冷却水は、熱交換器15において、実施例1と同様に、所内ボイラ23から供給される蒸気によって加熱される。このとき、開閉弁37,38が閉じられ、開閉弁40が閉じている。熱交換器15で加熱された冷却水は、ドレン配管41を介して浄化系配管9に流入し、炉水浄化装置13を通らずにバイパス配管39内を流れ、給水配管30を経て原子炉圧力容器2内に導かれる。原子炉圧力容器2の耐圧漏洩試験中においても、熱交換器15で加熱された冷却水が原子炉圧力容器2内に供給される。
【0030】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0031】
実施例1及び2は、ジェットポンプの替りにインターナルポンプを有しているABWRにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、沸騰水型原子力プラントに適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…沸騰水型原子力プラント、2…原子力圧力容器、3…炉心、5…再循環系、6…再循環系配管、8…原子炉浄化系、9…浄化系配管、11…再生熱交換器、12…非再生熱交換器、13…炉水浄化装置、14,17,18,20,22,25,27,42…開閉弁、15,28…熱交換器、16,39…バイパス配管、19…蒸気供給管、21…蒸気排気管、24…冷却水供給管、26…冷却水排出管、41…ドレン配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器に両端が連絡されて前記原子炉圧力容器内の冷却材が流れる配管系に熱交換器を設け、前記熱交換器に、前記冷却材を加熱する蒸気を供給する蒸気供給管を接続しており、前記熱交換器から蒸気を排出する蒸気排気管が前記熱交換器に接続されていることを特徴とする沸騰水型原子力プラント。
【請求項2】
前記配管系が、原子炉浄化系の、前記冷却材を流す浄化系配管を含んでおり、前記原子炉浄化系が再生熱交換器、非再生熱交換器及び浄化装置を有し、前記浄化系配管が、再生熱交換器、非再生熱交換器、浄化装置及び前記再生熱交換器をこの順に連絡し、前記熱交換器が設けられたバイパス配管が、前記浄化装置の下流において前記再生熱交換器をバイパスして配置され、前記バイパス配管の両端が浄化系配管に接続された請求項1に記載の沸騰水型原子力プラント。
【請求項3】
前記配管系が、前記原子炉圧力容器に接続されて前記冷却材を流すドレン配管、及び前記ドレン配管が接続される、原子炉浄化系の、前記冷却材を流す浄化系配管を含んでおり、前記熱交換器を前記ドレン配管に設け、前記原子炉浄化系が再生熱交換器、非再生熱交換器及び浄化装置を備え、前記浄化系配管が、再生熱交換器、非再生熱交換器、浄化装置及び前記再生熱交換器をこの順に連絡し、第5弁を設けたバイパス配管が前記浄化装置をバイパスして配置され、前記バイパス配管の両端が前記浄化系配管に接続され、第6弁を、前記バイパス配管と前記浄化系配管との接続点と前記浄化装置の間の前記浄化系配管に設けた請求項1に記載の沸騰水型原子力プラント。
【請求項4】
第1弁を前記蒸気供給管に設け、第2弁を前記蒸気排気管に設け、補機冷却系の冷却水供給管及び冷却水排出管を前記熱交換器にそれぞれ接続しており、第3弁を前記冷却水供給管に設け、第4弁を前記冷却水排出管に設けた請求項1ないし3のいずれか1項に記載の沸騰水型原子力プラント。
【請求項5】
原子炉圧力容器に両端が連絡されて前記原子炉圧力容器内の冷却材が流れる配管系に設けられた熱交換器に蒸気を供給し、前記熱交換器内で前記冷却材をその蒸気によって加熱し、加熱された前記冷却材を、前記配管系を通して前記原子炉圧力容器内に供給することによって、前記原子炉圧力容器内の前記冷却材の温度を設定温度まで上昇させ、その後、前記原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験を行うことを特徴とする原子炉圧力容器の耐圧漏洩試験方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−38891(P2011−38891A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186243(P2009−186243)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】