説明

油中水型エマルジョン系およびその調製方法

【課題】水放出効果を有する油中水型エマルジョン系およびその調製方法の提供。
【解決手段】1.5〜9重量%の疎水性シリカ、0.1〜5重量%の油中水型乳化剤、10〜40重量%の油相と、55〜85重量%の水相を含む油中水型エマルジョン及びその調整方法。ただし、前記疎水性シリカは、AEROSIL(登録商標)RY200疎水性ヒュームドシリカではなく、かつ、次の成分、すなわち、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンSH3775Eと、アルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンと、疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812とを含む配合物は除外される。疎水性シリカの油中水型乳化剤に対する重量比は、好ましくは0.7α〜1.2αの間であり、ここで、αは、疎水性シリカの油中水型乳化剤に対する最適比である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定な油中水型エマルジョン系およびその調製方法に関する。このエマルジョン系は、「水放出効果」を有し、化粧品工業で広く使用可能である。
【背景技術】
【0002】
中国特許出願公開第87107781A号には、皮膚への局所使用のための安定な組成物が開示され、また、アクリル酸系の変性ポリマーを含有する水中油型エマルジョンに関する。エマルジョンが電解質または皮膚に接触した時、それは、解乳化し、即座に合体してエマルジョンから油成分を放出することが可能である。
【0003】
中国特許出願公開第1223572A号には、疎極性(polarphobic)領域と高内部相とを含有する逆エマルジョンのクレンジング製品が開示されている。クレンジング製品に含有されるエマルジョンは、連続外部脂質相と分散内部極性相とを含む。エマルジョン中の連続脂質相は、非常に脆弱であり、使用時に剪断力に付されると破壊して分散内部相を放出する。
【0004】
以上の2つの技術により製造される製品に関して、それらもまた、皮膚との接触時または低剪断および適用過程時に水相を放出して保湿鎮静感を引き起こしうるが、それらはいずれも、皮膚表面上で多量のビーズ様水滴を迅速に生成することはできない。
【0005】
通常の適用過程時に水相を放出可能でありかつ即座に皮膚上で多量のビーズ様水滴を生成して消費者に新感覚の鎮静感をもたらしうることから消費者に人気がある油中水型エマルジョン系の他の製品が存在する(Asia Pacific PERSONAL CARE, issue 2, volume 9, March, 2008, page 45)。
【0006】
本発明では、皮膚表面上への適用時に多量のビーズ様水滴を生成するこの製品は、略して「水放出クリーム」と称され、皮膚表面上への適用時に多量のビーズ様水滴を生成するこの効果は、「水放出効果」と称される。そのような水放出クリーム製品は、市場ではほとんど見られない。なぜなら、こうした製品は、内部相(水相)の比率を極めて高くすることにより実現されるからである。通常、きわめて理想的な状態で水放出効果を達成するためには、内部相の量は、多くの場合、全量の少なくとも85重量%超であることが必要とされる。すなわち、15重量%未満の連続相を使用して85重量%超の分散水相を被覆する必要がある。
【0007】
内部相の含有率がきわめて高い上述の製品には、次の欠点が存在する。第1に、乳化剤による非常に高い乳化能力が必要とされる。言いかえれば、乳化剤の使用に特定の制限が存在する。たとえば、アルキル−コ−ポリシロキサンのような比較的高い乳化効率の乳化剤のみが使用可能であるにすぎない。第2に、調製方法を考えると、内部相の含有率が大きいので、内部相を徐々に添加することにより、より後の段階に達した時、系の粘度がすでに非常に高くなっている可能性があり、多くの場合、残りの内部相を内部に添加することが困難になる可能性がある。したがって、多くの場合、全内部相を添加するのに長時間を要し、全プロセスの技術的制御が非常に不安定になる可能性があり、工業製造時の失敗率がきわめて高くなる可能性がある。第3に、内部相(水相)の含有率が非常に高いので、乳化粒子は、非常に大きくなければならず、さもなければ、粘度が高すぎて操作できなくなる可能性がある。しかしながら、大きい乳化粒子は、剪断に対して高い感受性を呈する可能性があり、配合物の長期安定性を確保することが困難になる可能性がある。したがって、実際に大量生産および商業化を行うことが容易でない可能性がある。第4に、外部相(油相)の比率が非常に低いので、油および脂肪の選択がより限定される可能性があり、そのような配合物では、比較的高いSPF値を有するサンスクリーン製品のような他の機能性製品またはファンデーションメイクアップクリームのような製品を形成することが非常に困難である。第5に、同様に内部相の含有率がきわめて高いことが影響して、エマルジョン粒子が非常に大きくなければならず、製品全体の外観が比較的粗くなるので、輝きのある審美的に魅力的な外観を形成することができない。
【0008】
内部相の従来の含有率が、たとえば、70重量%、60重量%、さらには55重量%で良好な水放出効果を提供可能な水放出クリームを見いだすことができれば、配合物の操作性が大幅に向上する可能性があり、その機能の拡張もまた、容易に達成される可能性がある。しかしながら、そのような製品は、現在のところ存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に述べた先行技術の状況を考えて、本発明の目的は、次のような油中水型エマルジョン系を提供することである。すなわち、このエマルジョン系は、内部相の含有率が低い(たとえば、全量中の内部相の含有率パーセントが55重量%程度に低いものである)ときでさえも、良好な水放出効果を達成しうることを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
水放出効果を有する「水放出クリーム」製品に関する広範にわたる徹底的な研究を行い、結果として、驚くべきことに、油中水型エマルジョン系内に特定量の疎水性シリカとくに疎水性ヒュームドシリカを添加することにより、かつ疎水性シリカと油中水型乳化剤との重量比を指定の比範囲内に制御することにより、製品が従来の内部相含有率で以上に述べた「水放出効果」を有しうることを見いだした。
【0011】
本発明の利点は、内部相の量が低減されるので、操作の困難さが大幅に軽減されて配合物の調製時間が大幅に削減されるだけでなく、同時に、乳化剤および他の油相成分の選択の範囲が拡大され、これにより配合物の操作性および多様性が大幅に向上することである。
【0012】
以上の目的は、次のような油中水型エマルジョン系により達成される。すなわち、この油中水系は、エマルジョン系の全重量を基準にして、1.5〜9重量%の疎水性シリカと、0.1〜5重量%の油中水型乳化剤と、10〜40重量%の油相と(ここで、油相の含有率は、前記疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)、55〜85重量%の水相と、を含み、疎水性シリカの水中油型乳化剤に対する重量比は、好ましくは0.7α〜1.2αの範囲内であり、ここで、αは、疎水性シリカの水中油型乳化剤に対する最適比(特性比αとも称される)であり、以下に記載の方法により得られる。
【0013】
以上の目的はまた、次のような油中水型エマルジョン系により達成することも可能である。すなわち、この油中水系は、エマルジョン系の全重量を基準にして、1.5〜9重量%の疎水性シリカと、0.1〜5重量%の油中水型乳化剤と、10〜40重量%の油相と(ここで、油相含有率は、前記疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)、55〜85重量%の水相と、を含み、この油中水型エマルジョン系は、本発明の明細書中の以下に記載の良好な水放出効果を有する。
【0014】
指摘しておかなければならないこととして、本発明で使用可能な疎水性シリカは、AEROSIL(登録商標)RY200疎水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製)を含まず、さらには、次の成分、すなわち、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンSH3775E(東レシリコーン株式会社製)と、以下の式(I)
【化1】


で示されるアルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンと、疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812(Evonik Degussa GmbH製)と、を含む配合物(ここで、SH3775Eの前記アルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンに対する重量比は0.5であり、SH3775Eおよび前記アルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンの合計の前記疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812に対する重量比もまた0.5である)は、除外される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る油中水型エマルジョン系は、乳白色の霜のような輝きのある外観であるか、または要求に応じて屈折率を調整する方法により透明ゲル様外観または艶消し外観に変化させることが可能である。それと同時に、従来の方法で皮膚に適用した時、迅速にビーズ様水滴を放出して消費者に新感覚の鎮静感をもたらす。そのような配合物は、スキンケアの種々の分野で、ならびにヘアケア製品およびカラー化粧品において使用可能である。
【0016】
本発明に関して、油中水系の良好な水放出効果とは、水放出効果が以下に記載の評価システムでスコア3以上の評価結果を有することを意味する。試験システムの試験方法および評価スコアについては、以下に記載する。
【0017】
約0.2gの油中水型エマルジョンサンプルを採取して手の甲に配置し、次に、他方の手の中指および薬指で穏やかに円を描くように手の甲上に適用し、次に、円を描くような適用が20回に達した時、水放出効果の現象を観察して五段階スコア付けシステムにより評価する。スコア5は、3mm以上の平均直径を有する10個超のビーズ様水滴が現れるか、または1mm以上の平均直径を有する20個超のビーズ様水滴が現れることを表し、スコア4は、3mm以上の平均直径を有する2〜10個のビーズ様水滴が現れるか、または1mm以上の平均直径を有する10〜20個のビーズ様水滴が現れ、かつ3mm以上の平均を有するビーズ様水滴が10個以下であることを表し、スコア3は、1mm以上の平均直径を有する2〜9個のビーズ様水滴が現れ、かつ3mm以上の平均直径を有するビーズ様水滴が多くとも1個存在するか、または1mmの平均直径を有する10〜20個のビーズ様水滴が現れることを表し、スコア2は、1mmの平均直径を有する2〜9個のビーズ様水滴が現れることを表し、そしてスコア1は、水滴が現れないことを表す。スコアが5〜4の間、4〜3の間、3〜2の間、および2〜1の間にある各レベルは、水放出効果が以上に記載の2つの端値の間にあることを示し、スコアが低いほど、水放出効果は悪くなる。
【0018】
本発明に係る油中水型エマルジョン系の好ましい実施形態では、油中水型エマルジョン系は、エマルジョン系の全重量を基準にして、1.5〜5重量%の疎水性シリカと、0.3〜2.5重量%の油中水型乳化剤と、15〜40重量%の油相と(ここで、油相含有率は、疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)、55〜80重量%の水相と、を含む。
【0019】
本発明によれば、油中水型エマルジョン系において、疎水性シリカとくに疎水性ヒュームドシリカ(火炎熱分解から製造されるので、本発明では「パイロジェニックシリカ」と称されることもある)が油相中で比較的高い割合を占めることが好ましい。最適化された水放出効果を得るために、疎水性シリカ(とくに疎水性ヒュームドシリカ)の量は、油相(この場合、油相は、疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)の重量の5〜15重量%、好ましくは5.5〜15重量%、より好ましくは5.5〜13重量%、とくに好ましくは7〜13重量%を占めることが本発明に有利である。疎水性シリカとも称される本発明で使用される疎水性シリカは、疎水性ヒュームドシリカおよび疎水性沈降法シリカを包含するが、なかでも気相プロセスにより製造される疎水性シリカが好ましい。アルキル基により置換された後、シリカ製品は、さまざまな置換基によって、シリル化シリカ、ジメチルシリル化シリカ、トリメチルシリル化シリカ、およびポリジメチルシロキサンシリル化シリカに分類される。本発明にとくに適する疎水性シリカは、10〜85%、好ましくは25〜75%のメタノール湿潤性(疎水性)を有し、かつ70〜350m/g、好ましくは100〜280m/gのBET表面積を有する。
【0020】
疎水性ヒュームドシリカは、AEROSIL(登録商標)、Cab-o-Sil(登録商標)、およびHDK(登録商標)という商品名で供給される疎水性ヒュームドシリカを包含し、好ましくは、AEROSIL(登録商標)R202、AEROSIL(登録商標)R972、AEROSIL(登録商標)R805、AEROSIL(登録商標)R8200、AEROSIL(登録商標)R974、AEROSIL(登録商標)R812S、およびAEROSIL(登録商標)R812(すべてEvonik Degussa GmbHにより供給される)からなる群から選択される1種以上である。本発明に好適な疎水性沈降シリカとしては、SIPERNAT(登録商標)D17沈降シリカ(Evonik Degussa GmbHにより供給される)が挙げられる。
【0021】
メタノール湿潤性の測定方法については、米国特許第6899951号および中国特許授権公告第1264933C号の明細書の該当部分を参照されたい。
【0022】
本発明に係る油中水型エマルジョン系では、油中水型乳化剤が使用され、油中水型乳化剤は、油中水型エマルジョンで従来から使用されているものである。乳化剤は、好ましくは2〜8のHLB値を有する界面活性剤であり、以下の3つのタイプの少なくとも1つから選択される(ここで、疎水性基は、ポリエーテルグリコール基、好ましくは、ポリオキシエテニル基、ポリオキシプロペニル基、ポリグリセリル基、またはポリオキシエチレンソルビタン基である)。
【0023】
第1のタイプ:ポリシロキサン+親水性基+アルキルの分子鎖構造を有する乳化剤。これは、ポリシロキサンとポリエーテルポリオールと脂肪族アルカンとが共有結合により結合されたブロックコポリマーの乳化剤、主鎖としてのポリシロキサン鎖と、共有結合によりポリシロキサンの主鎖にそれぞれ結合された側基としてのポリエーテルポリオールおよび脂肪族アルキルとを有する乳化剤、ならびに主鎖としてのポリシロキサン鎖と、共有結合によりポリシロキサン鎖に結合された側基としての脂肪族アルキル変性ポリエーテルポリオールとを有する乳化剤を包含し、好ましくはC6〜C20アルキル共重合ポリオキシエテンポリジメチルシロキサン、より好ましくはセチルPEG/PPG−10/1ポリジメチルシロキサン(Evonik DegussaによりABIL(登録商標)EM90という商品名で供給される)である。
【0024】
第2のタイプ:ポリシロキサン+親水性基の分子鎖構造を有する乳化剤。この乳化剤は、ポリシロキサンとポリエーテルポリオールとが共有結合により結合されたブロックコポリマー乳化剤、主鎖としてのポリシロキサン鎖と、共有結合によりポリシロキサンの主鎖に結合された側基としてのポリエーテルポリオールとを有する乳化剤を包含し、好ましくはポリオキシエチレンポリジメチルシロキサン、ポリグリセロールポリジメチルシロキサン、より好ましくはビス−PEG/PPG−14/14ポリジメチルシロキサン(Evonik Degussa GmbHによりABIL(登録商標)EM97という商品名で供給される)である。
【0025】
第3のタイプ:非直鎖状構造もしくは直鎖状構造のポリエーテルポリオールのヒドロキシル基を介して脂肪酸と形成されたエステル乳化剤、またはポリエーテルポリオールのヒドロキシル基を介して脂肪アルコールと形成されたエーテル乳化剤。これは、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノグリセロール脂肪酸エステルまたはポリグリセロール脂肪酸エステル、モノグリセロールアルキルエーテルまたはポリグリセロールアルキルエーテルを包含し、好ましくは、ジイソステアリルポリグリセリル−3ダイマージリノレエート(Evonik Degussa GmbHによりISOLAN(登録商標)PDIという商品名で供給される)、ポリグリセリル−4ジイソステアレート/ポリヒドロキシステアレート/セバケート(Evonik Degussa GmbHによりISOLAN(登録商標)GPSという商品名で供給される)、およびポリオキシエチレンソルビタンアンヒドリド脂肪酸エステルである。
【0026】
本発明によれば、本発明では、使用される油中水型乳化剤の量は、使用される疎水性ヒュームドシリカの量を基準にした特定の比率に従って調整することが好ましい。乳化剤ABIL(登録商標)EM90(油中水型乳化剤として)およびシリル化シリカAEROSIL(登録商標)R812S(疎水性ヒュームドシリカとして)を例にとったとき、AEROSIL(登録商標)R812Sを油相(この場合、油相は、疎水性シリカおよび乳化剤を含まない)の7〜13重量%のパーセントに最初に規定し、使用されるABIL(登録商標)EM90の量を徐々に調整することにより、疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812Sの乳化剤ABIL(登録商標)EM90に対する重量比が3〜6である場合、とくに4.3に近い場合、得られる油中水型エマルジョン製品の水放出効果は、より良好になることが見いだされうる(実施例1参照)。比が6(1.4α)超の場合、乳化プロセスは、明らかに困難になり、安定なエマルジョン系を形成することができず、一方、3(0.7α)未満の場合、ごく少量の水滴(水放出効果はスコア2であるか、さらにはそれ未満である)が形成可能であるにすぎず、このため、本発明の良好な水放出効果の基準に達することができず、皮膚保湿感は現れない。
【0027】
次に、乳化剤ISOLAN(登録商標)PDIおよびシリル化シリカAEROSIL(登録商標)R812Sを例にとったとき(実施例13)、AEROSIL(登録商標)R812Sはエマルジョン系の3重量%に規定され、使用されるISOLAN(登録商標)PDIの量を徐々に調整することにより、疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812Sの乳化剤ISOLAN(登録商標)PDIに対する重量比が8.4〜15である場合、とくに12に近い場合、水放出効果がより良好になることが見いだされうる。比が15(1.25α)超の場合、乳化プロセスは、明らかに困難になり、安定なエマルジョン系を形成することができず、一方、8.4(0.7α)未満の場合、ごく少数の水滴(水放出効果はスコア2であるか、さらにはそれ未満である)が形成可能であるにすぎず、このため、本発明の良好な水放出効果の基準に達することができず、皮膚保湿感は現れない。
【0028】
本発明では、疎水性シリカの油中水型乳化剤に対する最適重量比は、特性比αとして参照され、特性αは、以下の方法、すなわち、
(i)油中水型エマルジョン中の疎水性シリカ、油相、および水相の重量部をそれぞれ重量部X、M、およびZとして提供することと(ここで、油相は、疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)、
(ii)油相混合物Aを得るために、X重量部の疎水性シリカとM重量部の油相とY重量部の油中水型乳化系とを均一に混合することと、
(iii)系を均一乳化状態にするために、油相混合物A中にZ重量部の水相を攪拌下で徐々に添加することと、
(iv)系を完全に乳化させるために、水相をこれ以上乳化できないことが目視観察されるまでZ重量部の水相を連続的に添加してから、エマルジョン系にY重量部の油中水型乳化剤を攪拌下で添加することと、
(v)Z重量部の水相がすべて油相混合物A中に添加されるまで、Zn+1重量部の水相とYn+1重量部の油中水型乳化剤とを用いて工程(iv)をn回反復することにより、均一な油中水型エマルジョン系Cを得ることと(ここで、Z=Z+Z+...+Zn+1であり、nは自然数であり、n>1である)、
(vi)エマルジョン系Cで使用された油中水型乳化剤の全重量Yを計算することにより(ここで、Y=Y+Y+...+Yn+1である)、疎水性シリカの油中水型乳化剤に対する最適重量比X/Y、すなわち特性比αを得ることと(ここで、nは自然数であり、n>1である)、
により決定可能である。
【0029】
特性比αを決定するための以上に述べた方法では、疎水性シリカのX重量部は、X重量部の疎水性シリカの含有率が油中水型エマルジョン系の全重量を基準にして1.5〜9重量%、好ましくは1.5〜5重量%になるようにすべきである。
【0030】
特性比αを決定するための以上に述べた方法では、油中水型乳化剤のY、YおよびYn+1重量部は、重量が同じであっても異なっていてもよい。また、それらはそれぞれ、その含有率が油中水型エマルジョン系の全重量を基準にして0.01〜0.3重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%になるように作製される。
【0031】
特性比αを決定するための以上に述べた方法では、水相のZ、Z、...Zn+1重量部は、重量が同じであっても異なっていてもよい。また、それらはそれぞれ、その含有率が油中水型エマルジョン系の全重量を基準にして2〜9重量%、好ましくは4〜9重量%になるように作製される。
【0032】
本発明のとくに好ましい実施形態では、疎水性シリカと油中水型乳化剤との以下の組合せが使用され、これらの組合せの好ましい特性比αは以下の表に示される。
【0033】
【表1】

【0034】
疎水性シリカ製品のほとんどは、油相増粘効果があり、通常の油中水型クリームエマルジョンでは、疎水性シリカは、一般的にはエマルジョンの全量の0.01〜1重量%を占める。しかしながら、本発明に係る油中水型エマルジョン系では、疎水性シリカがエマルジョン系の全重量に占める割合は、使用される通常の増粘剤の量よりも多く、1.5〜9重量%、好ましくは1.5〜5重量%に達する。現在のところ、これに対する明確なメカニズムは存在しないが、この場合、疎水性シリカは、エマルジョン粒子の界面を競合的に占有する可能性があり、疎水性シリカの乳化剤に対する比がある程度(0.7α)まで増大した後に、摩砕するような「適用」が行われると、エマルジョン粒子は、容易に内部相を放出して「水放出」効果を提供するのであろうと本発明者は考えている。疎水性シリカの乳化剤に対する比をさらに増大させた場合、水放出効果は、さらに向上するであろうが、特定の比(1.2α)を超えると、乳化剤は、もはや界面上に留まることができなくなるであろう。したがって、その場合、界面張力を効果的に減少させることができないので、効果的に乳化できない。疎水性シリカはそれ自体、油相を増粘させて外部相内にゲル状網状構造を形成しうるので、疎水性シリカは、系の安定性に対して顕著な促進効果を有する。しかしながら、特定の比範囲内では疎水性シリカと乳化剤との競合が起こるので、競合と相乗効果の両方について疎水性シリカと乳化剤とに特定の関係ができる。したがって、疎水性シリカと乳化剤との比が0.7α〜1.2αの特定の比範囲内にある場合、系は、撹拌や均一化のような従来の剪断に対しては敏感でなく、回転加圧下でのみ内部相を放出する。
【0035】
本発明では、油中水型エマルジョン系の粘度および油相の含有率に従って、使用される疎水性シリカの量を調整することが可能である。一般的にいえば、使用される疎水性シリカの量を増大させることにより、系の粘度を増大させることが可能であり、油相の含有率を比較的高くするにも、疎水性シリカの含有率を高くすることが必要とされる。油相中の油成分の粘度が比較的高い場合、使用される疎水性シリカの量を適切な量だけ減少させることが可能である。たとえば、比較的高粘度のジエチルヘキシルカーボネート(TEGO(登録商標)SOFT DEC)を用いて比較的低粘度の環状メチルシロキサンを代替した場合、この場合には、疎水性シリカの含有率を適切に減少させ(3重量%から1.5重量%に減少させる)、特性比α(AEROSIL(登録商標)R 974のABIL(登録商標)EM 90に対する特性比αは2.1〜2.3である)に従って乳化剤ABIL(登録商標)EM 90の量を調整すれば、得られる製品の水放出効果は、依然として非常に良好であろう(表6)。
【0036】
実際の試験結果によれば、疎水性シリカを使用しない場合または疎水性シリカをわずかに従来量だけ、たとえば0.5重量%未満で使用した場合、有意な水放出効果をもたせるには内部相中の水含有率を85重量%にまでする必要があるが(表1中の比較例1を参照されたい)、一方で、使用される乳化剤の量の変化は、水放出効果に有意な影響を及ぼさない。
【0037】
本発明に係る油中水型エマルジョン系では、油相は、油中水型エマルジョン中に従来から含有されている任意の油相であり、油相中の各油相成分の選択に関して他の特定の制約は存在せず、化粧品で使用可能なすべての油相成分をここで使用することが可能である。それは、伝統的に使用される植物油、鉱油、シリコーン油、および合成油から選択される少なくとも1種の油/脂肪でありうる。それはまた、伝統的に使用される種々のワックスでありうる。
【0038】
本発明に好適なシリコーン油のような油/脂肪は、たとえば、ポリジメチルシロキサンおよび環状メチルシロキサン、さらにはアリール置換型もしくはアルキル置換型もしくはアルコキシ置換型のポリメチルシロキサンまたは環状メチルシロキサンである。本発明に好適な油/脂肪はまた、2〜44個の炭素原子を有する直鎖状および/または分岐状のモノカルボン酸および/またはジカルボン酸と、1〜22個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の直鎖状および/または分岐状のアルコールと、のモノエステルまたはジエステルをも包含する。同様に、本発明で使用される油/脂肪として、2〜36個の炭素原子を有する二官能性脂肪族アルコールと、1〜22個の炭素原子を有する単官能性脂肪族カルボン酸と、のエステルを使用することも可能である。
【0039】
本発明で使用される油/脂肪として、とくに、12〜22個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル、たとえば、メチルエステルおよびイソプロピルエステル、たとえば、メチルラウレート、メチルステアレート、メチルオレエート、メチルエルケート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート、イソプロピルステアレート、および/またはイソプロピルオレエートを使用することも可能である。
【0040】
それに加えて、本発明で使用される油/脂肪として、同様にとくに好ましいのは、n−ブチルステアレート、n−ヘキシルラウレート、n−デシルオレエート、イソオクチルステアレート、イソノニルパルミテート、イソノニルイソノナノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−エチルヘキシルラウレート、2−ヘキシルデシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、オレイルオレエート、オレイルエルケート、および/またはエルシルオレエートである。
【0041】
本発明で使用される油/脂肪として、ジカルボン酸エステル、たとえば、ジ(n−ブチル)アジペート、ジ(n−ブチル)セバケート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(2−ヘキシルデシル)スクシネート、および/またはジイソトリデシルアゼレートも、同様にとくに好適である。本発明で使用される油/脂肪として、ジオールエステル、たとえば、エチレングリコールジオレエート、エチレングリコールジイソトリデカノエート、プロピレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)、ブタンジオールジイソステアレート、および/またはネオペンチルグリコールジカプリレートも、同様にとくに好適である。
【0042】
本発明で使用される油/脂肪として、石炭酸ジエステル、たとえばジエチルヘキシルカーボネートを使用することも可能である。
【0043】
比較的長鎖のトリグリセリド、すなわち、グリセロールと3つの酸分子(そのうちの少なくとも1つは比較的長鎖の酸分子である)とのトリプルエステルを使用することも同様に適用可能である。この場合、例として、カプリル酸/カプリン酸混合物の合成トリグリセリド、工業用オレイン酸のトリグリセリド、イソステアリン酸のトリグリセリド、およびパルミチン酸/オレイン酸混合物のトリグリセリドを包含する脂肪酸トリグリセリドが挙げられうる。そのほか、直鎖状もしくは分岐状の脂肪アルコール、たとえば、オレイルアルコールまたはオクチルドデカノール、さらには脂肪アルコールエーテル、たとえば、ジオクチルエーテル、PPG−3ミリスチルエーテルなどを使用することが可能である。
【0044】
本発明で使用される油/脂肪として、たとえば、天然植物油、たとえば、オリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ラッカセイ油、ナタネ油、アーモンド油またはパーム油またはホホバ油、さらにはヤシ油またはパーム核油の液体部分、さらには動物油、たとえば、マッコウクジラ油、牛脚油、または牛脂の液体部分を使用することも同様に適用可能である。
【0045】
本発明に係る油/脂肪として、さらに、炭化水素油、とくに流動パラフィンおよびイソパラフィンを使用することが可能である。使用可能な炭化水素油/脂肪の例は、パラフィン油、白色鉱油、イソヘキサデカン、ポリデセン、石油ゼリー、軽質流動パラフィン、またはスクアランである。そのうえさらに、アリールカルボン酸のエステル、たとえば、安息香酸のエステル、たとえば、1〜22個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和の直鎖状もしくは分岐状のアルコールと安息香酸とのエステル化により形成される安息香酸エステル、たとえば、イソステアリルベンゾエートおよびオクチルドデシルベンゾエート、好ましくはC12〜15アルキルベンゾエートも同様に好適である。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、油/脂肪の成分は、好ましくは、セチルポリジメチルシロキサン(ABIL(登録商標)WAX9801)、ジエチルヘキシルカーボネート(TEGO(登録商標)SOFT DEC)、環状メチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン(ABIL(登録商標)350)、白色鉱油、およびABIL(登録商標)OSW5環状メチルシロキサン/ジメチルシラノールなどからなる群から選択される1種以上を含む。また、油相中の各成分の含有率は、本発明ではとくに制約はなく、油中水型エマルジョンで使用される通常の量である。
【0047】
本発明に係る油中水型エマルジョン系では、水相は、油中水型エマルジョンの分散相を形成する。水相は、内部に水だけを含みうるか、または水に溶解可能な水以外の他の物質を含む。そのような物質は、パーソナルケア用およびメイクアップ用の調製物の油中水型エマルジョンに関連して水相中に一般に含有される物質でありうる。これは、特定的には、エタノールおよび/または2個以上のヒドロキシル基(たとえば3個のヒドロキシル基)を含有するC2〜C5ポリオールを含み、後者は、好ましくは、グリセロール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、またはそれらの任意の混合物、特定的にはグリセロールである。それに加えて、水相は、水溶性ポリマーを含みうる。この水溶性ポリマーは、次の群、すなわち、キサンタンガム、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、置換型メチルセルロース(たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリアクリル酸、および主鎖上にアルキル置換基を有するポリアクリル酸(たとえばTEGO(登録商標)Carbomer 341 ER)のうちの1つ以上から選択される。水溶性ポリマーは、特定的にはキサンタンガムである。
【0048】
当然ながら、当業者には理解されるであろうが、以上に述べた成分のほかに、本発明に係る油中水型エマルジョン系には、他の補助成分、たとえば、保湿剤、皮膚軟化剤、フリーラジカルスカベンジャー、キレート化剤、抗酸化剤、精油、保存剤(たとえば、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール)、皮膜形成剤、安定化剤(たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および硫酸マグネシウム)などもまた含有可能である。これらの補助成分は、水相および油相へのそれらの溶解性に依存して、油相または水相に含まれる。
【0049】
本発明に係る油中水型エマルジョン系では、任意の脂溶性もしくは脂分散性の成分、たとえば、サンスクリーン剤および疎水性改質粉末をそれに添加することも可能である。
【0050】
UV遮断剤として、たとえばサンスクリーン剤は、有機物質でありうる。それは、紫外線を吸収して、吸収されたエネルギーをより長波長の形態たとえば熱の形態で放射する。
【0051】
UV−B遮断剤は、油溶性または水溶性でありうる。油溶性UV−B遮断剤を使用する場合、それは、本発明ではエマルジョンの油相中に含まれ、水溶性UV−B遮断剤を使用する場合、それは、本発明ではエマルジョンの水相中に含まれる。
【0052】
油溶性UV遮断剤としては、たとえば、
3−ベンジリデンカンファーおよびその誘導体、たとえば、3−(4−メチルベンジリデン)カンファー、
4−アミノ安息香酸誘導体、たとえば、2−エチルヘキシル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよびペンチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、
シンナメート類、たとえば、2−エチルヘキシル4−メトキシルシンナメート、イソペンチル4−メトキシルシンナメート、および2−エチルヘキシル2−シアノ−2−フェニルシンナメート(オクトクリレン)、
サリチレート類、たとえば、2−エチルヘキシルサリチレート、4−イソプロピルベンジルサリチレート、およびメンチルサリチレート、
ベンゾフェノン誘導体、たとえば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、および2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
ベンジリデンマロネート類、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)4−メトキシベンジリデンマロネート、
トリアジン誘導体、たとえば、2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシルオキシ)−1,3,5−トリアジンおよびオクチルトリアゾン、ならびに
プロパン−1,3−ジオン類、たとえば、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン
が参照されうる。
【0053】
使用可能な水溶性UV−B遮断剤は、
2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸、ならびにそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、およびグルコースアンモニウム塩、
ベンゾフェノンスルホン酸誘導体およびその塩、たとえば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸およびその塩、
3−ベンジリデンカンファースルホン酸誘導体およびその塩、たとえば、4−(2−オキソ−3−ノルボルニレン−メチル)ベンゼンスルホン酸、2−メチル−5−(2−オキソ−3−ノルボルニレン)ベンゼンスルホン酸、およびそれらの塩
である。
【0054】
ベンゾイルメタン誘導体、たとえば、1−(4’−(tert−ブチル)フェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオンおよび1−フェニル−3−(4’−イソプロピルフェニル)プロパン−1,3−ジオンは、典型的なUV−A遮断剤としてとくに使用可能である。UV−A遮断剤およびUV−B遮断剤が、混合状態で使用可能であることは明らかである。
【0055】
記載の可溶性遮断剤物質のほかに、不溶性顔料、すなわち、微細化された金属酸化物または塩、たとえば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸塩(タルカム)、硫酸バリウム、およびステアリン酸亜鉛もまた、本発明で使用可能である。これに関連するものは、その平均粒径が100nm未満、たとえば5〜50nm、特定的には15〜30nmであるべきである。それらは、球形状をとりうるが、楕円体形状のものまたは他の方式で球形状から誘導される形状のものを使用することも可能である。比較的新しい遮断剤のクラスは、200nm未満の粒径を有するマイクロナイズド有機顔料、たとえば、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]を含み、たとえば、50重量%の水性分散物として取得可能である。
【0056】
それに加えて、他の好適なUV遮断剤は、SOFW-journal, volume 122, page 543 (1996)に記載のP. Finkelによるレビューに見いだしうる。
【0057】
以上に述べた主要なUV/光遮断剤の2つのグループのほかに、抗酸化剤タイプの副次的な光遮断剤を使用することも可能であり、UV線が皮膚に進入した場合に引き起こされる光化学反応連鎖は、それにより中断される。抗酸化剤として、たとえば、スーパーオキシドジスムターゼ、トコフェロール(ビタミンE)、2,6−ジヒドロキシルブチルトルエン、およびアスコルビン酸(ビタミンC)を使用することが可能である。
【0058】
固形分として、たとえば、酸化鉄顔料粒子、二酸化チタン粒子、または酸化亜鉛粒子を使用することが可能である。それに加えて、特別な感覚効果を生じる粒子、たとえば、ナイロン−12粒子、窒化ホウ素粒子、ポリマー粒子、たとえば、ポリアクリレート粒子もしくはポリメタクリレート粒子、または有機ケイ素エラストマーを使用することが可能である。
【0059】
真珠光沢添加剤として、たとえば、エチレングリコールジステアレートおよび/またはPEG−3ジステアレートを使用することが可能である。
【0060】
駆虫剤として、たとえば、N,N−ジエチル−m−トルアミド、1,2−ペンタンジオール、および/または駆虫剤3535を使用することが可能である。
【0061】
日焼け剤として、たとえば、ジヒドロキシアセトンおよびエリトルロースを使用することが可能である。
【0062】
保存剤として、たとえば、1種以上のアルキルp−ヒドロキシベンゾエートとフェノキシエタノールとの混合物を使用することが可能である。アルキルp−ヒドロキシベンゾエートは、メチルp−ヒドロキシベンゾエート、エチルp−ヒドロキシベンゾエート、プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、および/またはブチルp−ヒドロキシベンゾエートでありうる。フェノキシエタノールの代わりに、他のアルコール、たとえば、ベンジルアルコールまたはエタノールを使用することが可能である。それに加えて、他の従来の保存剤、たとえば、ソルビン酸、安息香酸、サリチル酸、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、クロロアセトアミド、ジアゾアルキルウレア、DMDMヒダントイン、ナトリウムヒドロキシルメチルアミノアセテート、メチルイソチアゾリン、クロロメチルイソチアゾリン、エチルヘキシルグリセロール、および/またはカプリリルエタンジオールを使用することが可能である。
【0063】
芳香剤として、天然もしくは合成の発香性物質またはそれらの混合物を使用することが可能である。天然の発香性物質は、花(ユリ、ラベンダー、バラ、ジャスミン、ネロリ、またはイランイラン)、茎および葉(ゼラニウム、パチョリ、プチグレン)、果実(アニス、コリアンダー、キャラウェー、ジュニパー)、果皮(ベルガモット、レモン、オレンジ)、根(メース、アンゼリカ、セロリ、カルダモン、コスツス(costus)、アイリス、タイム)、針葉および小枝(トウヒ、モミ、マツ、ヤママツ)、ならびに樹脂およびバルサム(ガルバヌム、エレミ、ベンゾイン、ミルラ、フランキンセンス、オポポナックス)の抽出物である。動物性原料、たとえば、シベットおよびカストリウムなどもまた、可能である。典型的な合成香料化合物は、エステル類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、アルコール類、および炭化水素型の製品である。エステル型の香料化合物は、たとえば、ベンジルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート、p−(tert−ブチル)シクロヘキシルアセテート、リナリルアセテート、フェニルエチルアセテート、リナリルベンゾエート、ベンジルホルメート、メチルフェニルグリシネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、スチラリルプロピオネート、およびベンジルサリチレートであり、エーテル類の香料化合物としては、たとえば、ベンジルエチルエーテルが挙げられ、アルデヒド類の香料化合物としては、たとえば、8〜18個の炭素原子を有する直鎖アルカナール類、すなわち、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシ−アセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアール、およびブルゲオナールが挙げられ、ケトン類の香料化合物としては、たとえば、イオノン類、すなわち、αイソメチルイオノンおよびメチルセドリルケトンが挙げられ、アルコール類の香料化合物としては、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロオール、フェニルエチルアルコール、およびテルピネオールが挙げられ、そして炭化水素類の香料化合物としては、主にテルペン類およびバルサム類が挙げられる。一緒になって魅力的な香気を生成するさまざまな発香性物質の混合物を使用することが可能である。風味成分として一般に使用される低揮発性の精油、たとえば、セージ油、カモミール油、チョウジ油、バルサム油、ペパーミント油、シナモンリーフ油、リンデンブロッサム油、ジュニパーベリー油、ベチバー油、フランキンセンス油、ガルバヌム油、ラブダナム油、およびラバンジン油もまた、芳香剤として好適である。ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアール、リラール、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、α−ヘキシル−シンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロオール、ボワサンブレンフォルテ(Boisambrene Forte)、アンブロキサン、インドール、エディオン(Hedione)、レモン油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、ラバンジン油、セージ油、ダマスコン、ゼラニウム油、シクロヘキシルサリチレート、ベルトフィックス・クール(Vertofix Coeur)、フェニル酢酸、ゲラニルアセテート、ベンジルアセテート、ローズオキシドを、単独でまたは混合状態で使用することが可能である。
【0064】
着色剤として、化粧品で使用するのに好適でありかつそれが認可されている物質は、たとえば、出版物”Kosmetische Farbemittel” [Cosmetic Colouring Agents] of the Farbstoffkommission der Deutschen Forschungsgemeinschaft [Colorant Commission of the German Research Association], Verlag Chemie, Weinheim, 1984, pp. 81-106にまとめられているものである。これらの着色剤は、全混合物を基準にして、0.001〜0.1重量%の濃度でのみ使用される。
【0065】
本発明に係る油中水型エマルジョン系では、従来量の生理活性物質を添加することも可能である。「生理活性物質」という用語は、たとえば、トコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体、レチノールおよびその誘導体、デオキシリボ核酸、コエンザイムQ10、ビサボロール、アラントイン、フィタントリオール、パンテノール、β−ヒドロキシ酸、サリチル酸、アミノ酸およびその誘導体、ヒアルロン酸、グルカン、クレアチンおよびその誘導体、グアニジンおよびその誘導体、セラミド、フィトスフィンゴシンおよびその誘導体、スフィンゴシンおよびその誘導体、擬似セラミド、精油、ペプチド、タンパク質加水分解物、植物抽出物、ならびにビタミンおよびビタミン混合物を意味するものと理解すべきである。
【0066】
水相:油相の比および特性比αを以上に述べた方法により決定した後、本発明はまた、以上の方法に従って本発明に係る油中水型エマルジョン系を調製する方法を提供する。この方法は、
(a)相Bを得るために、水相成分を均一に混合することと、
(b)相Aを得るために、疎水性シリカが均一に分散されるまで、油相成分、油中水型乳化剤、および疎水性シリカを500〜2500rpmの速度で攪拌しながら混合することと、
(c)油中水型エマルジョン系を得るために、300〜1000rpmの速度で撹拌しながら相Bを相Aに定常速度で5〜15分間添加することと、
を含む。
【0067】
他の選択肢として、本発明は、以上の調製方法の変法を提供する。この方法は、
(a)相Bを得るために、水相成分を均一に混合することと、
(b)油相成分を2つの部分に分割し、第1の部分を乳化剤と均一に混合して相A1を得て、第2の部分を疎水性シリカと均一に混合して相A2を得ることと、
(c)混合物C1を得るために、300〜1000rpmの速度で撹拌しながら相Bを相A1中に定常速度で徐々に添加し、次に、油中水型エマルジョン系を得るために、相A2を混合物C1中に添加し、これを均一に撹拌することと、
を含む。
【0068】
本発明に係る方法およびその変法の好ましい実施形態では、工程(c)に続いて、工程(d)、すなわち、
(d)エマルジョン系内へのすべての成分の添加が終了した後、撹拌速度を1000〜10000rpmに増大させることにより、これを1〜3分間ホモジナイズすること、
が含まれる。
【0069】
実施例により本発明をこれ以降さらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲をなんら拘束するものではない。
【実施例】
【0070】
実施例1〜5および比較例1〜2
実施例1
実施例1の配合物中の疎水性シリカの油中水型乳化剤に対する最適重量比(特性比α)を決定する工程は、以下のとおりである。
(a)100グラムの全量を有する配合物中、水相は、全量の70重量%を占め、したがって、水相は、70gであると決定され、油相は、全量の26.3重量%を占め、したがって、油相は、26.3gであると決定されると推定される。ここで、油相は、疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない。疎水性シリカとしてAEROSIL(登録商標)R812Sが使用され、経験値に従って(好ましくは、疎水性シリカは、エマルジョン系の全重量の1.5〜5重量%を占める)、疎水性シリカは、全重量の3重量%を占めると決定され、したがって、使用量は、3グラムの(X)であると決定される。それに加えて、油中水型乳化剤としてABIL(登録商標)EM90が使用される。この場合、70グラムの水相は、63.95グラムの脱イオン水、5グラムのプロパンジオール、1グラムの塩化ナトリウム、および0.05グラムの保存剤2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールを含む。
(b)油相混合物Aを得るために、3グラムのAEROSIL(登録商標)R812S、26.3グラムの油相(これは、1.6グラムのABIL(登録商標)WAX9801、8グラムのTEGO(登録商標)SOFT DEC、13.1グラムの環状メチルシロキサン、および3.6グラムのABIL(登録商標)350を含んでいた)、および0.05グラム(Y)のABIL(登録商標)EM90を均一に混合した。
(c)系が均一乳化状態になるように、500rpmの速度で撹拌しながら5グラム(Z)の水相を油相混合物A中に徐々に添加した。
(d)水相をこれ以上乳化できないことが目視観察されるまで、5グラム(Z)の水相を追加的に添加し、次に、系が完全に乳化されるように、500rpmの速度で撹拌しながら0.05グラム(Y)の油中水型乳化剤を油中水型乳化剤に追加した。
(e)70gの水相が油相混合物A中に完全に添加されるまで、Zn+1重量部の水相とYn+1重量部の油中水型乳化剤とを用いて工程(d)をn回反復し、均一な油中水型エマルジョン系Cを得た。ここで、70=Z+Z+...+Zn+1であり、その時点でn=13であった。
(f)エマルジョン系Cで使用された油中水型乳化剤の全重量Yを0.7グラムとして計算し(ここで、Y=Y+Y+...+Yn+1である)、それにより、疎水性シリカの油中水型乳化剤に対する最適重量比X/Yすなわち特性比αを得た。実施例1では、特性比α=4.3であった。
【0071】
実施例1では、最終的に得られた乳化系は、ちょうど100グラムの全量を有していた。実際の操作では、特性比αを決定するために最終的に得られた乳化系の全量が100グラム超または未満であった場合、油相が乳化系の全量に占める比率および水相が乳化系の全量に占める比率は、期待値に対して偏差を有するであろう。しかしながら、それでもなお、疎水性シリカの油中水型乳化剤に対する重量比から特性比αの値は得られる。この場合、特性比αは、実際のエマルジョン系の特性比であり、期待されたエマルジョン系のものではない。
【0072】
実施例1の油中水型エマルジョンを以下の工程に従って調製した。
(1)水相混合物Bを得るために、63.95gの脱イオン水、5gのプロパンジオール、1gのNaCl、および0.05gの保存剤(2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール)を撹拌しながら混合した。
(2)油相混合物A1を得るために、0.7gのABIL(登録商標)EM90、1.6gのABIL(登録商標)WAX9801、8gのTEGO(登録商標)SOFT DEC、および6.1gの環状メチルシロキサンを撹拌しながら均一に混合した。
(3)油相混合物A2を得るために、7gの環状メチルシロキサン、3.6gのABIL(登録商標)350、および3gのAEROSIL(登録商標)R812Sを撹拌しながら均一に混合した。
(4)混合物C1を得るために、800rpmの速度で撹拌しながら水相混合物Bを油相混合物A1中に均一に3分間添加した。
(5)混合物C2を得るために、800rpmの速度で撹拌しながら油相混合物A2を混合物C1中に1分間添加した。
(6)最後に、実施例1の油中水型エマルジョン系を得るために、1000rpmの速度で撹拌しながら混合物C2を3分間ホモジナイズした。
【0073】
本方法の利点は、大量生産で使用した場合に調製時間を効果的に節約できることにある。
【0074】
実施例2
相Bを得るために、実施例2用として表1に示された相Bの成分を撹拌しながら均一に混合した。相Aを得るために、疎水性シリカが均一に分散されるまで、実施例2用として表1に示された相A(この場合、それは、油相成分、油中水型乳化剤、および疎水性シリカを含んでいた)の成分を800rpmの速度で撹拌しながら均一に混合した。次に、500rpmの速度で撹拌しながら相Bを相A中に5分間添加した。実施例2の油中水型エマルジョン系を得るために、相Bの添加の終了後、撹拌速度を1500rpmに増大し、次に、得られたエマルジョンを3分間ホモジナイズした。
【0075】
実施例3〜5
実施例2用として示された相A成分および相B成分を実施例3〜5用として示された対応する相A成分および相B成分と置き換えたこと以外は実施例2のものと基本的に類似した方式で、実施例3〜5の油中水型エマルジョン系を調製した。
【0076】
比較例1〜2
実施例2用として示された相A成分および相B成分を比較例1〜2用として表1に示された対応する相A成分および相B成分と置き換えたこと以外は実施例2のものと基本的に類似した方式で、比較例1〜2の油中水型エマルジョン系を調製した。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例1〜5および比較例1〜2から得られた製品の水放出効果は、五段階スコアにより表されている。
【0079】
約0.2gの油中水型エマルジョンサンプルを採取して手の甲に配置し、次に、他方の手の中指および薬指で円を描くように適用し、次に、円を描くような適用が20回に達した時、水放出効果の現象を観察して五段階スコア付けシステムにより評価した。スコア5は、3mm以上の平均直径を有する10個超のビーズ様水滴が現れたか、または1mm以上の平均直径を有する20個超のビーズ様水滴が現れたことを表し、スコア4は、3mm以上の平均直径を有する2〜10個のビーズ様水滴が現れたか、または1mm以上の平均直径を有する10〜20個のビーズ様水滴が現れかつ3mm以上の平均を有するビーズ様水滴が10個以下であったことを表し、スコア3は、1mm以上の平均直径を有する2〜9個のビーズ様水滴が現れ、かつ3mm以上の平均直径を有するビーズ様水滴が多くとも1個存在したか、または1mmの平均直径を有する10〜20個のビーズ様水滴が現れたことを表し、スコア2は、1mmの平均直径を有する2〜9個のビーズ様水滴が現れたことを表し、そしてスコア1は、水滴が現れなかったことを表した。スコアが5〜4の間、4〜3の間、3〜2の間、および2〜1の間にある各レベルは、水放出効果が以上に記載の2つの端値の間にあったことを示し、スコアが低いほど、水放出効果は悪くなる。スコア3以上の評価結果を有する水放出効果は、本発明に係る「良好な水放出効果」として規定された。実施例1〜5および比較例1〜2の水放出効果は、表1に示されている。
【0080】
実施例1〜5は、内部相(水相)の含有率を約70重量%に固定して、ABIL(登録商標)EM90の乳化剤と種々の疎水性シリカ製品との比を変化させた事例であった。異なるタイプの疎水性ヒュームドシリカを用いた場合、使用されたABIL(登録商標)EM90の最適量もまた異なったものとなり、これにより、最適水放出効果を達成することが可能であった。
【0081】
比較例1の配合物は、少量の疎水性シリカ(0.1重量%)を含む従来の油中水型配合物であり、内部相(水相)中の水およびプロパンジオールの全量が約90重量%に達した時のみ良好な水放出効果が達成された。
【0082】
水放出効果に及ぼす粘度の影響を考えて、本発明者は、比較例2を設計した。この配合物は、実施例1〜5のものに近い粘度を得るために疎水性シリカを6重量%のマイクロクリスタリンワックスと置き換えたこと以外は実施例1〜5のものと非常に類似したものであったが、この配合物により得られた製品は、水放出効果を有していなかった。このことから、本発明では、疎水性ヒュームドシリカは、単に従来の増粘剤として機能するものではないことが実証された。疎水性シリカと乳化剤と間の相乗効果は、低含有率の水相を有する通常の油中水系に良好な水放出効果を与える。
【0083】
実施例6〜8
実施例2用として示された相A成分および相B成分を実施例6〜8用としてそれぞれ表2に示された対応する相A成分および相B成分と置き換えたこと以外は実施例2のものと基本的に類似した方式で、実施例6〜8の油中水型エマルジョン系を調製した。調製された製品を用いて実施例1のときと同一の方式で水放出効果試験を行い、結果を表2に示した。
【0084】
【表3】

【0085】
実施例6〜8で調製された油中水型エマルジョン系では、ABIL(登録商標)EM90とAEROSIL(登録商標)R812Sとの組合せが使用され、水相含有率は、それぞれ、55重量%、60重量%、および80重量%であった。
【0086】
実施例9〜13
実施例9〜13では、ISOLAN(登録商標)PDIと種々の疎水性ヒュームド相シリカとの組合せを示した。
【0087】
実施例2用として示された相A成分および相B成分を実施例9〜13用として示された対応する相A成分および相B成分と置き換えたこと以外は実施例2のものと基本的に類似した方式で、実施例9〜13の油中水型エマルジョン系を調製した。調製された製品を用いて実施例1のときと同一の方式で水放出効果試験を行い、結果を表3に示した。
【0088】
【表4】

【0089】
実施例14〜18
実施例14〜18では、ISOLAN(登録商標)GPSと種々の疎水性ヒュームド相シリカとの組合せを示した。
【0090】
実施例2用として示された相A成分および相B成分を実施例14〜18用として表4に示された対応する相A成分および相B成分と置き換えたこと以外は実施例2のものと基本的に類似した方式で、実施例14〜18の油中水型エマルジョン系を調製した。調製された製品を用いて実施例1のときと同一の方式で水放出効果試験を行い、結果を表4に示した。
【0091】
【表5】

【0092】
実施例19〜23
実施例19〜23では、ABIL(登録商標)EM97と種々の疎水性ヒュームド相シリカとの組合せを示した。
【0093】
実施例2用として示された相A成分および相B成分を実施例19〜23用として表5に示された対応する相A成分および相B成分と置き換えたこと以外は実施例2のものと基本的に類似した方式で、実施例19〜23の油中水型エマルジョン系を調製した。調製された製品を用いて実施例1のときと同一の方式で水放出効果試験を行い、結果を表5に示した。
【0094】
【表6】

【0095】
実施例24
相Bを得るために、表6に示されたB相の各成分を撹拌しながら均一に混合した。相Aを得るために、表6に示された相A(この場合、それは、油相成分、油中水型乳化剤、および疎水性シリカを含んでいた)の各成分を1000rpmの速度で撹拌しながら均一に混合してAEROSIL(登録商標)R974を分散させた。次に、500rpmの速度で撹拌しながら相Bを相A中に徐々に添加した。油中水型エマルジョン系を得るために、相Bの添加の終了後、撹拌速度を1300rpmに増大し、次に、得られたエマルジョンを3分間ホモジナイズした。調製された製品を用いて実施例1のときと同一の方式で水放出効果試験を行い、結果を表6に示した。
【0096】
【表7】

【0097】
実施例24では、高粘度の油相を使用した(低粘度の環状メチルシロキサンは使用しなかった)。その時、疎水性ヒュームドシリカの含有率を適切に減少させ(3重量%から1.5重量%に減少させ)、乳化剤ABIL(登録商標)EM90の量を比の関係に従って調整したところ(AEROSIL(登録商標)R974のABIL(登録商標)EM90に対する最適比は2.1〜2.3であった)、水放出効果は、依然として非常に良好であった。その時、疎水性ヒュームドシリカは、(疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含めずに)油相の7重量%を占めた。
【0098】
より高粘度の油相を使用し、かつ使用される疎水性ヒュームドシリカの量をさらに減少させた場合、たとえば、疎水性ヒュームドシリカの量を油相(疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)の5重量%未満に減少させて、使用される乳化剤の量を特性比αに従って調整した場合、この混合物は、乳化剤の量が少なすぎるため、安定な乳化系を形成することができないであろう。
【0099】
実施例25
実施例24用として示された相A成分および相B成分を実施例25用として表7に示された対応する相A成分および相B成分と置き換えたこと以外は実施例24のものと基本的に類似した方式で、実施例25の油中水型エマルジョン系を調製した。調製された製品を用いて実施例1のときと同一の方式で水放出効果試験を行い、結果を表7に示した。
【0100】
【表8】

【0101】
実施例26
実施例6用として示された相A成分および相B成分を実施例26用として表8に示された対応する相A成分および相B成分と置き換えたこと以外は実施例6のものと基本的に類似した方式で、実施例26の油中水型エマルジョン系を調製した。調製された製品を用いて実施例1のときと同一の方式で水放出効果試験を行い、結果を表8に示した。
【0102】
【表9】

【0103】
実施例27
相Bを得るために、実施例27用として表9に示されたB相の各成分を撹拌しながら均一に混合した。実施例27用として表9に示されたA相(この場合、それは、油相成分、油中水型乳化剤ABIL(登録商標)EM90、および疎水性沈降シリカSIPERNAT(登録商標)D17を含んでいた)の各成分を800rpmの速度で撹拌しながら、SIPERNAT(登録商標)D17が均一に分散されるまで均一に混合することにより、相Aを得た。次に、500rpmの速度で撹拌しながら相Bを相A中に定常速度で5分間添加した。相Bの添加の終了後、撹拌速度を1500rpmに増大し、次に、得られたエマルジョンを3分間ホモジナイズすることにより、油中水型エマルジョン系を得た。
【0104】
【表10】

【0105】
実施例1〜27で調製された各油中水系を、それぞれ、室温での安定性試験、耐熱性試験、および凍結融解試験に付した。室温での安定性試験とは、サンプルを20〜25℃の室温で3ヶ月間貯蔵することであり、耐熱性試験とは、サンプルを45℃で3ヶ月間貯蔵することであり、そして凍結融解試験は、サンプルを−15℃/室温で3回の低温/高温サイクルに付すことである。結果として、以上の試験に付した後、これらの製品の外観は、1つの例外もなく均一な状態に保持され、変色、離層などの現象は起こらなかった。それにより、本発明に係る油中水型エマルジョン系は、安定であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョン系の全重量を基準にして、
1.5〜9重量%の疎水性シリカと、
0.1〜5重量%の油中水型乳化剤と、
10〜40重量%の油相と(ここで、油相の含有率は、前記疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)、
55〜85重量%の水相と、
を含む油中水型エマルジョン系であって、
油中水型エマルジョン系が良好な水放出効果を有し、
ただし、前記疎水性シリカがAEROSIL(登録商標)RY200疎水性ヒュームドシリカではなく、かつ、次の成分、すなわち、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンSH3775E(東レシリコーン株式会社製)と、以下の式(I)
【化1】


で示されるアルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンと、疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812(Degussa company製)と、を含む配合物(ここで、SH3775Eの前記アルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンに対する重量比は0.5であり、SH3775Eおよび前記アルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンの合計の前記疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812に対する重量比もまた0.5である)が除外される、
油中水型エマルジョン系。
【請求項2】
エマルジョン系の全重量を基準にして、
1.5〜9重量%の疎水性シリカと、
0.1〜5重量%の油中水型乳化剤と、
10〜40重量%の油相と(ここで、油相の含有率は、疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)、
55〜85重量%の水相と、
を含む油中水型エマルジョン系であって、
疎水性シリカの水中油型乳化剤に対する重量比が、好ましくは0.7α〜1.2αの間にあり、ここで、αは疎水性シリカの水中油型乳化剤に対する最適比(特性比αとも称される)であり、かつ
(i)油中水型エマルジョン中の疎水性シリカ、油相、および水相の重量部をそれぞれ重量部X、M、およびZとして提供することと(ここで、油相は、疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)、
(ii)油相混合物Aを得るために、X重量部の疎水性シリカとM重量部の油相とY重量部の油中水型乳化系とを均一に混合することと、
(iii)系を均一乳化状態にするために、油相混合物A中にZ重量部の水相を攪拌下で徐々に添加することと、
(iv)系を十分に乳化させるために、水相をこれ以上乳化できないことが目視観察されるまで、Z重量部の水相を連続的に添加してから、エマルジョン系にY重量部の油中水型乳化剤を攪拌下で添加することと、
(v)Z重量部の水相がすべて、油相混合物A中に添加されるまで、Zn+1重量部の水相とYn+1重量部の油中水型乳化剤とを用いて工程(iv)をn回反復することにより、均一な油中水型エマルジョン系Cを得ることと(ここで、Z=Z+Z+...+Zn+1であり、nは自然数であり、n>1である)、
(vi)エマルジョン系Cで使用された油中水型乳化剤の全重量Yを計算することにより(ここで、Y=Y+Y+...+Yn+1である)、疎水性シリカの油中水型乳化剤に対する最適重量比X/Yすなわち特性比αを得ることと(ここで、nは自然数であり、n>1である)、
の方法により得られ、
ただし、前記疎水性シリカがAEROSIL(登録商標)RY200疎水性ヒュームドシリカではなく、かつ、次の成分、すなわち、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサンSH3775E(東レシリコーン株式会社製)と、以下の式(I)
【化2】


で示されるアルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンと、疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812(Degussa company製)と、を含む配合物(ここで、SH3775Eのアルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンに対する重量比は0.5であり、SH3775Eおよびアルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサンの合計の疎水性ヒュームドシリカAEROSIL(登録商標)R812に対する重量比もまた0.5である)が除外される、
油中水型エマルジョン系。
【請求項3】
油中水型乳化剤のY、Y、...Yn+1重量部は、重量が同じであっても異なっていてもよく、かつそれらがそれぞれ、その含有率が油中水型エマルジョン系の全重量を基準にして0.01〜0.3重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%になるように作製され、水相のZ、Z、...Zn+1重量部は、重量が同じであっても異なっていてもよく、かつそれらがそれぞれ、その含有率が油中水型エマルジョン系の全重量を基準にして2〜9重量%、好ましくは4〜9重量%になるように作製される、請求項2に記載のエマルジョン系。
【請求項4】
疎水性シリカが、油相の重量の5〜15重量%、好ましくは5.5〜15重量%、より好ましくは5.5〜13重量%、特定的には7〜13重量%を占め、かつこの場合の油相が、疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエマルジョン系。
【請求項5】
エマルジョン系の全重量を基準にして、
1.5〜5重量%の疎水性シリカと、
0.3〜2.5重量%の油中水型乳化剤と、
15〜40重量%の油相と(ここで、油相の含有率は、上記疎水性シリカおよび油中水型乳化剤を含まない)、
55〜80重量%の水相と、
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエマルジョン系。
【請求項6】
疎水性シリカが、疎水性ヒュームドシリカであり、特定的には、10〜85%、好ましくは25〜75%のメタノール湿潤性(疎水性)を有し、70〜350m/g、好ましくは100〜280m/gのBET表面積を有し、好ましくは、疎水性シリカが、AEROSIL(登録商標)R202、AEROSIL(登録商標)R972、AEROSIL(登録商標)R805、AEROSIL(登録商標)R8200、AEROSIL(登録商標)R974、AEROSIL(登録商標)R812S、AEROSIL(登録商標)R812、およびSIPERNAT(登録商標)D17からなる群から選択される1種以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエマルジョン系。
【請求項7】
油中水型乳化剤が、2〜8のHLB値を有する界面活性剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエマルジョン系。
【請求項8】
疎水性シリカと油中水型乳化剤との以下の組合せが使用され、これらの組合せの好ましい特性比αが以下の表に示される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエマルジョン系。
【表1】

【請求項9】
(a)相Bを得るために、水相成分を均一に混合することと、
(b)相Aを得るために、疎水性シリカが均一に分散されるまで、油相成分、油中水型乳化剤、および疎水性シリカを500〜2500rpmの速度で攪拌しながら混合することと、
(c)油中水型エマルジョン系を得るために、300〜1000rpmの速度で撹拌しながら相Bを相Aに定常速度で5〜15分間添加することと、
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の油中水型エマルジョン系の調製方法。
【請求項10】
(a)相Bを得るために、水相成分を均一に混合することと、
(b)油相成分を2つの部分に分割し、第1の部分を乳化剤と均一に混合して相A1を得て、第2の部分を疎水性シリカと均一に混合して相A2を得ることと、
(c)混合物C1を得るために、300〜1000rpmの速度で撹拌しながら相Bを相A1中に定常速度で徐々に添加し、次に、油中水型エマルジョン系を得るために、相A2を混合物C1中に添加し、これを均一に撹拌することと、
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の油中水型エマルジョン系の調製方法。
【請求項11】
工程(c)に続いて、工程(d)、すなわち、
(d)エマルジョン系内へのすべての成分の添加が終了した後、撹拌速度を1000〜10000rpmに増大させることにより、これを1〜3分間ホモジナイズすること、
をさらに含む、請求項9または10に記載の方法。

【公開番号】特開2010−280657(P2010−280657A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−126525(P2010−126525)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】