説明

油中水型乳化化粧料

【課題】粘度が安定で、保存安定性に優れ、使用性及び持続性が良好な油中水型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体
0.1〜30質量%、
(B)HLB1〜8のポリエーテル変性シリコーン 0.1〜6質量%、
(C)一般式(1)で表される揮発性シリコーン 0.1〜50質量%、
【化1】


(式中、nは1〜4の数を示す)
(D)水
を含有する油中水型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧持続性を向上させるため、化粧料中に表面保護性に優れた皮膜形成剤を配合することが行われている。この皮膜形成剤のひとつとして、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体を用いることにより、硬い化粧皮膜を形成させることができ、耐摩擦性などの化粧持続性が向上することが知られている(特許文献1〜3)。
【0003】
カルボシロキサンデンドリマーは、揮発性シリコーン、軽質流動イソパラフィン等の揮発性油剤に溶解することができるため、これらの揮発性油剤に溶解した状態で、好適に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−63225号公報
【特許文献2】特開2003−226611号公報
【特許文献3】特開2007−320960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体を乳化組成物に用いる場合、これを溶解する溶剤によっては、設定した十分な粘度が得られないために、仕上がりが粉っぽくなったり、ムラを生じたりする場合があった。また、経時により乳化状態が崩れ、粘度が著しく低下してしまうなど、安定性にも問題があった。すなわち、仕上がりで十分な効果を得つつ安定性を保つことに課題を生じた。
本発明の課題は、粘度が安定で、保存安定性に優れ、使用性及び持続性が良好な化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体と、特定のポリエーテル変性シリコーン及び揮発性シリコーンを特定の割合で組み合わせて用いることにより、粘度が安定で、保存安定性に優れ、使用性、仕上がり及び持続性が良好な油中水型乳化化粧料が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体
0.1〜30質量%、
(B)HLB1〜8のポリエーテル変性シリコーン 0.1〜6質量%、
(C)一般式(1)で表される揮発性シリコーン 0.1〜50質量%、
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、nは1〜4の数を示す)
(D)水
を含有する油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油中水型乳化化粧料は、粘度が安定で、保存安定性に優れ、使用性、仕上がり及び持続性が良好なものである。特に、油溶性ポリマーや金属石けん、疎水変性粘土等の増粘・ゲル化剤を用いることなく、所望の粘度の化粧料が得られることから、使用感や仕上がりを損ねることがない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いる成分(A)のカルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体において、カルボシロキサンデンドリマー構造としては、次式(2)で表される基が好ましい。
【0012】
【化2】

【0013】
式中、Zは2価の有機基であり、pは0又は1であり、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基又はアリール基である。X1はi=1とした場合の次式で示されるシリルアルキル基である。
【0014】
【化3】

【0015】
式中、R1は前記と同じであり、R2は炭素原子数2〜10のアルキレン基であり、R3は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Xi+1は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基及び上記シリルアルキル基からなる群から選択される基である。iは該シリルアルキル基の階層を示している1〜10の整数であり、aiは0〜3の整数である。
【0016】
式(2)中、Zは2価の有機基であり、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、エステル含有2価有機基、エーテル含有2価有機基、ケトン含有2価有機基、アミド基含有2価有機基が例示される。これらの中でも、次式で示される有機基が好ましい。
【0017】
【化4】

【0018】
式中、R9は炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が例示される。これらの中でもエチレン基、プロピレン基が好ましい。R10は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示される。これらの中でもメチル基が好ましい。R11は炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が例示される。これらの中でもエチレン基が好ましい。dは0〜4の整数であり、eは0又は1である。
【0019】
また、式(2)中、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基又はアリール基であり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が例示され、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が例示される。これらの中でもメチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
1はi=1とした場合の次式で示されるシリルアルキル基である。
【0020】
【化5】

【0021】
式中、R1は前記と同じである。R2は炭素原子数2〜10のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基などの直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基が例示される。これらの中でも、エチレン基、メチルエチレン基、ヘキシレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基が好ましい。R3は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基が例示される。Xi+1は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基および上記シリルアルキル基からなる群から選択される基である。aiは0〜3の整数である。iは1〜10の整数であり、これは該シリルアルキル基の階層数、即ち、該シリルアルキル基の繰り返し数を示している。
【0022】
成分(A)のビニル系重合体としては、(A1)(A2)以外のビニル系単量体 0〜99.9質量部と、(A2)一般式(3):
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Yはラジカル重合可能な有機基であり、R1及びX1は前記と同じである。)
で表されるラジカル重合可能な有機基を有するカルボシロキサンデンドリマー 100〜0.1質量部とを(共)重合させてなるカルボシロキサンデンドリマー構造を含有するビニル系重合体が好ましい。
【0025】
上記式中、Yはラジカル重合可能な有機基であり、R1は炭素原子数1〜10のアルキル基もしくはアリール基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が例示される。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が例示される。これらの中でもメチル基,フェニル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0026】
このビニル系重合体において、(A1)成分のビニル系単量体は、ラジカル重合性のビニル基を有するものであれば良く、その種類等については特に限定されない。かかるビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の低級アルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の高級アルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル;スチレン、ビニルトルエン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド等のアミド基含有ビニル型単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリセリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の水酸基含有ビニル型単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボン酸含有ビニル型単量体及びそれらの塩;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2ーエチルヘキシルビニルエーテル等のエーテル結合含有ビニル型単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アリルグリシジルエーテル、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の反応性基含有モノマー;片末端に(メタ)アクリル基を含有したポリジメチルシロキサン、片末端にスチリル基を含有するポリジメチルシロキサンなどのマクロモノマー類;ブタジエン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリロニトリル;フマル酸ジブチル;無水マレイン酸;スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のようなスルホン酸基を有するラジカル重合性不飽和単量体、およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドのような(メタ)アクリル酸から誘導される4級アンモニウム塩;メタクリル酸ジエチルアミノエチルのような3級アミノ基を有するアルコールのメタクリル酸エステル、ビニルピリジンおよびそれらの4級アンモニウム塩などが例示される。
【0027】
また、多官能ビニル系単量体も使用可能であり、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、スチリル基封鎖ポリジメチルシロキサンなどの不飽和基含有シリコ−ン化合物等が例示される。
【0028】
成分(A2)のカルボシロキサンデンドリマーは、一般式(3)で表されるラジカル重合可能な有機基を有するものであれば良く、その種類等については特に限定されない。一般式(3)中、Yはラジカル重合可能な有機基であり、ラジカル反応可能な有機基であればよいが、具体的には、下記一般式で表される(メタ)アクリロキシ基含有有機基、(メタ)アクリルアミド基含有有機基、スチリル基含有有機基、炭素原子数2〜10のアルケニル基等が挙げられる。
【0029】
【化7】

【0030】
(式中、R4及びR6は水素原子又はメチル基であり、R5及びR8は炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、R7は炭素原子数1〜10のアルキル基である。bは0〜4の整数であり、cは0または1である。)
【0031】
このようなラジカル重合可能な有機基としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、2−メタクリロイルオキシエチル基、3−メタクリロイルオキシプロピル基、4−ビニルフェニル基、3−ビニルフェニル基、4−(2−プロペニル)フェニル基、3−(2−プロペニル)フェニル基、2−(4−ビニルフェニル)エチル基、2−(3−ビニルフェニル)エチル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、5−ヘキセニル基が挙げられる。
【0032】
一般式(3)において、i=1、すなわちシリルアルキル基の階層数が1である場合、(A2)成分のカルボシロキサンデンドリマーは、一般式:
【0033】
【化8】

【0034】
(式中、Y,R1,R2およびR3は前記と同じであり、R12は水素原子または前記R1と同じである。a1は前記aiと同じであるが、1分子中のa1の平均合計数は0〜7である。)で表される。
このようなラジカル重合可能な有機基を含有するカルボキシデンドリマー(A2)としては、下記平均組成式で示されるカルボシロキサンデンドリマーが例示される。
【0035】
【化9】

【0036】
【化10】

【0037】
このようなカルボシロキサンデンドリマーは、例えば、特開平11―1530号公報、特開2000−63225号公報等に記載された製造方法に従って製造することができる。
【0038】
本発明で用いられるデンドリマー構造を含有するビニル系重合体において、上記(A1)成分と(A2)成分の質量割合は、(A1):(A2)=0:100〜99.9:0.1が好ましく、5:95〜90:10がより好ましく、更に10:90〜80:20となる範囲であるのが好ましい。
【0039】
本発明で用いられる成分(A)のカルボシロキサンデンドリマー構造を有するビニル系重合体の数平均分子量は、化粧品原料としての配合のしやすさから、好ましくは、3,000〜2,000,000であり、さらに好ましくは、5,000〜800,000である。また、その性状は、常温で液状、ガム状、ペースト状、固体状などのいずれでも良いが、得られる化粧皮膜の持続性の観点から、固体状のものが好ましい。また、配合性の観点からは、溶媒によって希釈された溶液や分散液であることが好ましい。
【0040】
カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体としては、シリコーンデンドリマー・アクリル共重合体が好ましく、ジメチルポリシロキサン(1−3cs)溶液であることが好ましく、特にジメチルポリシロキサン(2cs)溶液であることが好ましい。
【0041】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%含有される。0.1質量%未満では、調整初期の粘度(調整24時間後に測定。翌日粘度と略す場合がある)が低く簡単に仕上がらず、30質量%を超えると使用感ののびが悪くなる。
【0042】
本発明で用いる成分(B)のポリエーテル変性シリコーンは、HLB1〜8、好ましくはHLB2〜7のものである。
ここで、HLBとは、親水親油バランス(Hydrophile−Lipophile−Balance)のことであり、Griffinの定義に習い、親水基の重量分率に20を乗じた値をいう。
【0043】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体等が挙げられる。これらのポリエーテル変性シリコーンは、ペンダント型変性、片末端型変性、両末端型変性のいずれでも構わない。さらに、マルチブロック変性体であったり、シリコーン鎖が分岐した構造であってもよい。
【0044】
成分(B)のポリエーテル変性シリコーンとしては、市販品を用いることができ、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体として、シリコーンKF−6011、KF−6013、KF−6015、KF−6017(信越化学工業社製)、SH−3771、SH3775(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられ、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体として、KF−6012(信越化学工業社製)等が挙げられる。また、ポリエーテル変性シリコーンは、デカメチルシクロペンタシロキサンとの混合物であってもよく、市販品としては、BY11−030(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0045】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜6質量%、好ましくは0.2〜5質量%含有される。この範囲内であれば、化粧持続性が良くムラが無く滑らかに仕上がるので好ましい。
【0046】
本発明で用いる成分(C)の揮発性シリコーンは、前記一般式(1)で表されるものである。式中、nは1〜4の数であり、特にn=3が好ましい。かかる揮発性シリコーンの具体例としては、SH200C Fluid 1CS(東レ・ダウコーニング社製)、SH200 Fluid 1.5CS(東レ・ダウコーニング社製)、SH200C Fluid 2CS(東レ・ダウコーニング社製)、KF−96A−1cs(信越化学工業社製)、KF−96L−1.5cs(信越化学工業社製)、KF−96L−2cs(信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0047】
成分(C)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜40質量%、より好ましくは1.5〜30質量%含有される。この範囲内であれば、使用感の伸びが良く、ムラが無く滑らかな仕上がりとなる。
【0048】
本発明においては、成分(C)以外に揮発性シリコーンや揮発性炭化水素を含有しないのが好ましく、特に、デカメチルシクロペンタシロキサン及びイソドデカンの含有量が、それぞれ1質量%未満であるのが、初期粘度が高いものが得られやすく、また経時的にも粘度が安定で、油浮きや粉体の沈降のない組成物が得られる点で好ましい。
【0049】
成分(D)の水は、全組成中に0.1〜90質量%、特に10〜60質量%含有するのが好ましい。
【0050】
本発明の油中水型乳化化粧料は、更に(E)25℃で液状の不揮発性油剤を含有することができる。ここで、液状とは流動性を有するもので、クリーム状やペースト状のものも含まれる。また、不揮発性とは、油剤1gを直径48mmのガラスシャーレに広げて25℃、常圧で24時間放置後の重量減少率が1%以下のものである。不揮発性油性物質の分子量は、好ましくは250〜2000、より好ましくは300〜1000の範囲である。分子量がこれよりも低いと拡散してしまう傾向があり、逆に高いと成分(A)との相溶性が低下して可塑化効果が得られにくくなる場合がある。
【0051】
また、成分(E)の不揮発性油性油剤は、溶解度パラメーター(SP値)が16.5以上、好ましくは17.5〜23、より好ましくは19〜22のものである。この範囲のSP値の不揮発性油性物質であれば、カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体と相溶し、粘着性を発現する。また、ポリジメチルシロキサン等の低粘度シリコーン油の溶解度パラメーター(約15)と大きく異なるため、低粘度シリコーン油には非相溶であり、化粧膜の強度や接着性が低下することがない。
【0052】
ここで、油性物質のSP値とは、溶解度パラメーターδであって、液体の分子凝集エネルギーEと分子容Vからδ=(E/V)1/2(J/cm3)で与えられる物質定数である。SP値は、各種方法で求められるが、本発明においては、Fedorsの方法に従い、J. BRANDR UP著「POLYMER HANDBOOK 4th 」(JHON WILEY & SONS,INC 1999年発行)、VII685〜686項に示されるパラメーターを用いて求めたものである。
【0053】
具体的には、例えば、イソノナン酸イソトリデシル(16.5)、リンゴ酸ジイソステアリル(17.9)、ミリスチン酸イソステアリル(16.9)、トリイソステアリン(17.1)、リン酸トリスエトキシジグリコール(18.1)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(18.2)、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(18.6)、ジイソステアリン酸ジグリセリル(18.7)、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル(19.1)、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(19.2)、dl−α−トコフェロール(19.4)、メチルフェニルポリシロキサン(20.0)、モノイソステアリン酸ジグリセリル(21.7)等の極性油性物質が挙げられる。
【0054】
これらの不揮発性油剤は1種以上用いることができ、全組成中に0.1〜30質量%、特に0.5〜20質量%含有されるのが、皮膜感が無く、伸びが重くならず使用感が良好な点で好ましい。
【0055】
さらに、油性物質は2種以上を使用することがより好ましく、特にSP値が16.8〜18.4の範囲の油性物質と18.5〜23の範囲の油性物質を組み合わせ、かつSP値16.8〜18.4の油性物質/SP値18.5〜23の油性物質の値が0.01〜100であるのが使用感、化粧持続性および組成物の安定性の点で好ましい。
【0056】
また、成分(A)と成分(E)の質量割合は、(A)/(E)=0.1〜10、好ましくは0.3〜5、より好ましくは0.5〜4である。10を超えた場合には、十分な粘着性が得られず、皮膚追従性が低下する傾向があり、0.1未満でも、十分な強度の粘着性が得られないうえに、べたつくなど使用感が悪化する傾向がある。
【0057】
本発明の油中水型乳化化粧料は、更に(F)着色顔料を含有することができる。
着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型等)、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化鉄/酸化チタン焼結物、カドミウムレッド、モリブデンレッド、酸化セリウム、ビスマスバナジウムイエロー、黄鉛、カドミウムイエロー等が挙げられる。
着色顔料の平均一次粒子径は0.1〜1μmであるのが好ましい。
【0058】
着色顔料は、そのままの状態で用いることができるが、更にその表面に、通常用いられている疎水化処理剤で疎水化処理を施して用いることもできる。
疎水化処理剤としては、通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、アルキルトリアルコキシシラン等のアルキルシリル化剤、ハイドロジェンオルガノポリシロキサン等のシリコーン油、脂肪酸金属塩、アルキルリン酸、アルキルリン酸のアルカリ金属塩又はアミン塩、炭素数8〜22のN−モノ脂肪族アシル塩基性アミノ酸、パーフルオロアルキル基を有するリン酸エステル等が挙げられ、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。疎水化処理剤のうち、特に、シリコーン油及びパーフルオロアルキル基を有するリン酸エステルが好ましい。
【0059】
成分(F)の着色顔料は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜30質量%、好ましくは2.0〜10質量%含有される。含有量を0.1質量%以上とすることでシミ・ソバカスが目立たず、カバー力に優れる。また、含有量を30質量%以下とすることで、粉っぽくない仕上がりが得られる。
【0060】
本発明の化粧料は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油性物質、前記以外の粉体、前記以外の界面活性剤、水溶性高分子、酸化防止剤、香料、色素、防腐剤、紫外線吸収剤、増粘剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤等を、本発明の目的、効果を損なわない質的、量的範囲内で含有することができる。
【0061】
本発明の化粧料は、前記各成分を用い、常法に従って製造することができ、油中水型乳化化粧料とされる。
油中水型乳化化粧料は、25℃における粘度が500〜20万mPa・s、特に1000〜10万mPa・s、更に2000〜5万mPa・sであるのが、配合安定性、使用性、使用感の点で好ましい。ここで、粘度はB型粘度計を用い、ローター及び回転数は指示値がフルスケールの10〜100%の範囲となるように選択して測定したものである。なお、複数のローターと回転数の組合せで測定できる場合は、もっとも回転数の低い条件での値を採用する。
【0062】
本発明の化粧料は、特に液状ファンデーション、乳化液状ファンデーション、油性固形ファンデーション、化粧下地、口紅、アイシャドウ、頬紅等のメイクアップ化粧料;サンスクリーン乳液等の薬用化粧料などにすることができ、特に、液状ファンデーション、乳化液状ファンデーションとして好適である。
【実施例】
【0063】
実施例1〜6及び比較例1〜2
表1に示す組成の油中水型乳化化粧料を製造し、粘度変化、初期粘度、高温保存安定性、仕上がりについて評価した。結果を表1に併せて示す。
【0064】
(製法)
油相成分及びポリマー成分を均一混合した後、粉体成分を油相成分にディスパーで分散させた。これに、水相成分の混合物を攪拌しながら徐々に添加して乳化し、目的の油中水型乳化ファンデーションを得た。
【0065】
(評価方法)
(1)粘度変化:
25℃における初期粘度、25℃及び40℃で7日間保存後、25℃の恒温槽に3時間浸した後の粘度を、化粧料を振とうして均一にした後、粘度計(VISCOMETER TVB-10, ローター番号 M3, 回転数 6.0rpm)で1分間測定した。
【0066】
(2)初期粘度:
設定粘度を10000mPa・s以上とし、化粧料を振とうして均一にした後、25℃における初期粘度を、粘度計(VISCOMETER TVB-10, ローター番号 M3, 回転数 6.0 rpm)で1分間測定し、設定値からのずれを下記評価基準により判定した。
A+;初期粘度が10000mPa・s以上である。
A ;初期粘度が6000mPa・s以上10000mPa・s未満である。
B ;初期粘度が5000mPa・s以上6000mPa・s未満である。
C ;初期粘度が4000mPa・s以上5000mPa・s未満である。
D ;初期粘度が4000mPa・s未満である。
【0067】
(3)高温保存安定性:
化粧料を40℃で7日間保存後、25℃の恒温水相に3時間浸した後の粘度を、化粧料を振とうして均一にした後、粘度計(VISCOMETER TVB-10, ローター番号 M3, 回転数 6.0 rpm)で1分間粘度を測定し、下記評価基準により判定した。
(評価基準)
A+;初期粘度から1000mPa・s未満の粘度変化である。
A ;初期粘度から1000mPa・s以上2000mPa・s未満の粘度変化がみられる。
B ;初期粘度から2000mPa・s以上4000mPa・s未満の粘度変化がみられる。
C ;初期粘度から4000mPa・s以上6000mPa・s未満の粘度変化がみられる。
D ;初期粘度から6000mPa・s以上の粘度変化がみられる。
【0068】
(4)粉っぽくない仕上がり:
専門評価者10人により、各油中水型乳化化粧料を使用したときの粉っぽくない仕上がりを官能評価し、以下の基準で判定した。
A+;8人以上が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
A ;6〜7人が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
B ;5人が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
C ;3〜4人が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
D ;0〜2人が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
【0069】
(5)ムラがない仕上がり:
専門評価者10人により、各油中水型乳化化粧料を使用したときのムラがない仕上がりを官能評価し、以下の基準で判定した。
A+;8人以上がムラがない仕上がりであると評価した。
A ;6〜7人がムラがない仕上がりであると評価した。
B ;5人がムラがない仕上がりであると評価した。
C ;3〜4人がムラがない仕上がりであると評価した。
D ;0〜2人がムラがない仕上がりであると評価した。
【0070】
(6)簡単に仕上がる:
専門評価者10人により、各油中水型乳化化粧料を使用したとき、簡単に仕上がるかを官能評価し、以下の基準で判定した。
A+;8人以上が簡単に仕上がると評価した。
A ;6〜7人が簡単に仕上がると評価した。
B ;5人が簡単に仕上がると評価した。
C ;3〜4人が簡単に仕上がると評価した。
D ;0〜2人が簡単に仕上がると評価した。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例7(化粧下地)
以下に示す組成の化粧下地(油中水型乳化化粧料)が、常法により得られる。
(成分)
(1)ジメチルポリシロキサン・ポリオキシエチレン共重合体*1 3.0(質量%)
(2)シリコーンデンドリマー・アクリル共重合体*2 10.0
(3)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 2.0
(4)ジメチルポリシロキサン(2cs) 5.0
(5)ジメチルポリシロキサン(6cs) 17.5
(6)水 残量
(7)エタノール 5.0
(8)タルク 5.2
(9)マイカ 5.2
(10)フッ素処理酸化チタン*3 3.0
(11)フッ素処理酸化鉄(赤、黄、黒)*3 0.5
(12)フッ素処理ウレタンパウダー*3 1.3
(13)フッ素処理ナイロンパウダー*3 1.3
合計 100
*1:FZ2233(東レ・ダウコーニング社)
*2:シリコーンデンドリマー・アクリル共重合体の30%ジメチルポリシロキサン(2cs)溶液:特開2000−63225号公報にならって溶媒をデカメチルシクロペンタシロキサンからジメチルポリシロキサン(2cs)にかえて得た。
*3:パーフルオロアルキルリン酸エステルで5質量%処理したもの

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)カルボシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系重合体
0.1〜30質量%、
(B)HLB1〜8のポリエーテル変性シリコーン 0.1〜6質量%、
(C)一般式(1)で表される揮発性シリコーン 0.1〜50質量%、
【化1】

(式中、nは1〜4の数を示す)
(D)水
を含有する油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
デカメチルシクロペンタシロキサン及びイソドデカンの含有量が、それぞれ1質量%未満である請求項1記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
更に、(E)25℃で液状であり、かつ溶解度パラメーターが16.5以上の不揮発性油剤を含有する請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項4】
更に、(F)着色顔料を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の油中水型乳化化粧料。

【公開番号】特開2011−126808(P2011−126808A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285652(P2009−285652)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】