説明

油化装置

【課題】コンパクトな構成で処理量の多いプラスチックの油化装置を提供する。
【解決手段】押出し装置4でプラスチック片をゲル状とし、このゲル状半溶融プラスチックを送り管3とこれに接続されたL字管で送り管3からヘッド圧でバッファタンク7に送り込み、バッファタンク7で所定時間加熱された後に、溶融プラスチックは傾斜管8に送られて400℃前後で熱分解されプラスチック蒸気とされ、コンデンサ12で液化され、バッファタンク7の設置により傾斜管8の作用を補うので、コンパクトで処理量の多いプラスチックの油化装置となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックを熱分解して油化するためのプラスチックの油化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、廃プラスチックを一定の大きさのピースに切断したものを加熱した傾斜管に送り込んで、加熱しながら熱分解させてプラスチックの蒸気とし、この蒸気をコンデンサで冷却して油を採集する油化装置として特願2009−137913号に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2009−137913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における油化装置においては、傾斜管内にリードスクリューを設け、このリードスクリューによって連続的にプラスチック片を送給しているが、傾斜管内のみで熱を加えて熱分解をさせているので、その処理量に限界があり、大容量のプラスチックを処理するためには、傾斜管の数やその径を増やさなければならず効率が悪いという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプラスチックの油化装置は、プラスチックを押出し溶融してゲル状化する押出し装置と、この押出し装置から送り出された溶融プラスチックを一旦貯溜して加熱溶融するバッファタンクと、このバッファタンクからの溶融プラスチックを受けて溶融プラスチックを熱分解してプラスチック蒸気とする傾斜管とからなり、前記傾斜管からのプラスチック蒸気は冷却されて液状油とされる。
【0006】
また、前記バッファタンクは、押出し装置の押出し口より下方に位置する溶融プラスチックが流入する流入部と、この流入部から立設される加熱筒と、この加熱筒の上部に接続され傾斜管の下部に溶融プラスチックを送り出す送出部とからなり、この送出部は押出し装置の押出し口とほぼ同一高さ位置にあることが好ましい。更に、また、前記加熱筒の周囲には、電熱ヒータが設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は押出し装置を備えているので、大量のプラスチックを短時間でゲル状化できるとともに、バッファタンクは、この押出されたゲル状のプラスチックを400℃前後で溶融して逐次傾斜管に送り込むので、プラスチックの加熱時間が長くなり、傾斜管の熱分解の負担が減少し、傾斜管を大きくしなくてもプラスチックの処理量が著しく増大する。前記バッファタンクは垂直に立設されるヒータ加熱の加熱管を有し、ゲル状プラスチックは下部の流入部から逐次上方に押上げられつつ溶融して上記の送出部から傾斜管下部に送り出され、前記送出部は押出し機の押出し口とほぼ同一高さ位置にあるので、加熱管には特に溶融プラスチックを押し上げる部材は必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のプラスチックの油化装置の正面図である。
【図2】図2は、本発明のプラスチックの油化装置の平面図である。
【図3】図3は、押出し装置の正面図である。
【図4】図4は、押出し装置の内部構造図である。
【図5】図5は、バッファタンクの縦断面図である。
【図6】図6は、バッファタンクの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明の形態について説明する。
【0010】
図1、2において、本発明のプラスチックの油化装置Mは、フレーム1を有し、このフレーム1は、キャスター2、2上に載置されており、このフレーム1内に油化装置Mの主要部材が収納され、全体として移動自在とされている。前記フレーム1の中央部には、やや前方に傾斜し、リードスクリューを内蔵した送り管3が設けられ、この送り管3の左端部に溶融プラスチックを押出すための押出し装置4が設けられ、この押出し装置4でプラスチック片が短時間で大量に圧縮溶融されて送り管3に送られ、前記押出し装置4と送り管3との接続部には、送り管3内に設けられたリードスクリューを回転するための駆動部5が形成されている。
【0011】
前記送り管3の先端部(右端部)からは、L字管6が接続され、このL字管6は垂直部6aと水平部6bとからなり、水平部6bの先端部は左右に分岐し(図2)、この分岐管6cは、左右に並立するバッファタンク7、7の底部に連なっている。前記バッファタンク7、7の上部から流出した溶融プラスチックは、左右に並設された傾斜管8、8に送られて熱分解されつつプラスチックの蒸気となる。前記傾斜管8、8の上部には、プラスチック蒸気を分解する触媒筒9、9が上方に伸びるように設けられるとともに傾斜管8、8内に設けたリードスクリューによって斜めに送り上げた残渣を貯溜するための残渣タンク10、10が触媒筒9、9とは反対側で下方に伸びるように設けられている。前記傾斜管8、8の上端部には、前記リードスクリューを回転駆動するための駆動部11、11が設けられている。
【0012】
前記触媒筒9、9を通って分解されたプラスチックガスは、フレーム1の上面に設けられたコンデンサ12、12によって冷却され液状とされ、この炭化水素液(油)は圧力調整タンク13、13内に一旦貯溜される。この圧力調整タンク13、13はコンデンサ12、12、触媒筒9、9及び傾斜管8、8内の圧力を調整するためのもので、油管14、14を所定長採集油内に浸漬させて圧損を与え、炭化物等の細粒の飛沫成分の進入を減少させ、これらの部分内で気化ガスが急激に膨張して圧力が上昇してもその圧力を吸収し、これにより重い未分解の気化ガスが生じた場合には、それをその底部に貯溜する。圧力調整タンク13、13から送り出された油は、オフガス分離器15、15を経て油タンク16、16に貯溜される。
【0013】
前記押出し装置4は、図3、4に示すように、ホッパー20を有し、このホッパー20内のプラスチック片は、互いに協働するコニカルスクリュー21、21によって圧縮されつつゲル状とされ、押出し管22内に供給される。
【0014】
この押出し管22内には、リードスクリュー23が回転駆動され、この押出し管22の先端に押出し口24が形成され、この押出し口24が前記送り管3の端部に接続される。前記送り管3は保温され、この中のゲル状プラスチックは送り管3からさらに保温されたL字管6に自重で落下して前記バッファタンク7の流入部をなす下部ヘッダ30に流入する。
【0015】
図5、6に示すように、下部ヘッダ30の入口31の反対側には、掃除口32が形成され、この下部ヘッダ30の上部には、フランジ33が形成され、このフランジ33に垂設された4本の加熱筒34、…34、34を保持した底板35が結合されている。
【0016】
前記加熱筒34の下端は下部ヘッダ30に開口しており、その上端は溶融プラスチックの送出部をなす上部ヘッダ36に開口している。前記加熱筒34の周囲にはヒータ37が巻回され、加熱筒34は350〜400℃程度に加熱される。前記上部ヘッダ36は、前記送り管3と平行にガイド管38をその中心に保持し、このガイド管38の中央下半部39は上部ヘッダ36に対して開口している。そして、前記ガイド管38の一端は掃除口40をなし、他端は、前記傾斜管8の下端部に伸びる連結管41に接続される(図2)。
【0017】
前記ガイド管38の高さ位置は、前記送り管3の先端部とほぼ同一であり(押出し装置の押出し口より下方)、したがって、溶融プラスチックは重力によりL字管6を落下してバッファタンク7の下部ヘッダ30に流入し更にL字管6によるヘッド圧によって加熱筒34を上昇して上部ヘッダ36に入り、更にガイド筒38から傾斜管8の下端部に送られる。この間溶融プラスチックは加熱筒34内で一定時間加熱されるので熱分解が促進され、傾斜管8内では、完全に熱分解されプラスチックの蒸気となる。また、プラスチックの処理量も増大し、傾斜管の容量が小さくても大量のプラスチックの熱分解が可能となる。
【0018】
なお、前記傾斜管8の下端部にはフランジ接合部8aが設けられ、傾斜管8の分解が容易となるように形成している。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の油化装置は、廃プラスチックの処理として主として使用され、主として農業用フィルム、魚網、ペットボトルその他一般のプラスチックの使用後の処理に使われる。
【符号の説明】
【0020】
1…フレーム
3…送り管
4…押出し装置
6…L字管
7…バッファタンク
8…傾斜管
10…残渣タンク
12…コンデンサ
13…圧力調整タンク
30…下部ヘッダ
34…加熱筒
36…上部ヘッダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを押出し溶融してゲル状化する押出し装置と、この押出し装置から送り出された溶融プラスチックを一旦貯溜して加熱溶融するバッファタンクと、このバッファタンクからの溶融プラスチックを受けて溶融プラスチックを熱分解してプラスチック蒸気とする傾斜管とからなり、前記傾斜管からのプラスチック蒸気は冷却されて液状油とされるプラスチックの油化装置。
【請求項2】
前記バッファタンクは押出し装置の押出し口より下方に位置する溶融プラスチックが流入する流入部と、この流入部から立設される加熱筒と、この加熱筒の上部に接続され傾斜管の下部に溶融プラスチックを送り出す送出部とからなる請求項1に記載のプラスチックの油化装置。
【請求項3】
前記加熱筒の周囲には伝熱ヒータが設けられている請求項2に記載のプラスチックの油化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−40246(P2013−40246A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176665(P2011−176665)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(502018567)株式会社ブレスト (5)
【Fターム(参考)】