説明

油圧クラッチおよびそれを備えた変速装置

【課題】コンパクトかつ簡易な構成の油圧クラッチおよびそれを備えた変速装置の提供。
【解決手段】複数のクラッチプレート32が嵌合される第1外筒部301および第1外筒部301から径方向内側に延出される第1側壁部302を含むクラッチドラム30と、第1係合側油室34に供給される油圧によりクラッチプレート32,33を押圧可能なクラッチピストン35と、クラッチピストン35と共に第1キャンセル油室37を画成するキャンセルプレート36とを備えたクラッチC1では、クラッチドラム30の第1側壁部302に、径方向に延びると共に第1係合側油室34と連通する第1油路302aと、径方向に延びると共に第1キャンセル油室37と連通する第2油路302cとが形成されており、第1油路302aの軸方向における幅Daと、第2油路302cの軸方向における幅Dcとが同一に定められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のクラッチプレートが嵌合されるクラッチドラムと、当該クラッチドラムと共に係合側油室を画成するクラッチピストンと、当該クラッチピストンと共に遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル油室を画成するキャンセルプレートとを備えた油圧クラッチ、およびそれを備えた変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力軸に付与された動力を複数の油圧クラッチの係合状態の切り替えにより変速比を複数段に変更して出力軸に伝達可能な変速装置として、第1クラッチと、当該第1クラッチと軸方向にオーバーラップするように第1クラッチの内側に配置された第2クラッチとを有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この変速装置の第1のクラッチは、複数の摩擦板を保持するアウタドラムと、当該アウタドラムの一部をシリンダとして複数の摩擦板を押圧するように軸方向に移動可能なピストン部材を支持すると共にアウタドラムと一体回転可能なインナドラムとからなるクラッチドラムを有し、当該アウタドラムとインナドラムとの間には、変速装置の入力軸側から外周側に延びる第1の隙間が第1クラッチの油圧サーボへの油路として設けられている。また、第1クラッチのクラッチドラムと第2クラッチのクラッチドラムとの間には、変速装置の入力軸側から外周側に延びる第2の隙間が第1クラッチのキャンセル油室への油路として設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−30654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の変速装置では、油圧サーボへの油路としての径方向に延びる第1の隙間と、第1クラッチのキャンセル油室への油路として径方向に延びる第2の隙間とが軸方向に並んで配置されるため、変速装置の軸長が大きくなってしまい、油圧クラッチおよびそれを搭載する変速装置全体のコンパクト化が困難となる。また、第1クラッチの油圧サーボへの油路としての第1の隙間を形成するためには、第1クラッチの構成部材以外の部材(特許文献1に記載の変速装置では、第2クラッチのクラッチドラム)が必要であり、部品点数が増加すると共に装置全体が複雑化・大型化してしまうおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、コンパクトかつ簡易な構成の油圧クラッチおよびそれを備えた変速装置の提供を主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の油圧クラッチは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の油圧クラッチは、
複数のクラッチプレートが嵌合される外筒部と側壁部とを少なくとも含むクラッチドラムと、該クラッチドラムと共に係合側油室を画成すると共に該係合側油室に供給される油圧により前記クラッチプレートを押圧するように軸方向に移動可能なクラッチピストンと、該クラッチピストンと共に遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル油室を画成するキャンセルプレートとを備えた油圧クラッチにおいて、
前記クラッチドラムの前記側壁部には、前記径方向に延びると共に前記係合側油室と連通する第1油路と、前記径方向に延びると共に前記キャンセル油室と連通する第2油路とが形成されており、前記第1および第2油路の何れか一方の前記軸方向における幅の範囲内に該第1および第2油路の他方の少なくとも一部が含まれることを特徴とする。
【0008】
この油圧クラッチでは、クラッチドラムの側壁部に、径方向に延びると共に係合側油室と連通する第1油路と、径方向に延びると共にキャンセル油室と連通する第2油路とが形成されている。そして、第1および第2油路の何れか一方の軸方向における幅の範囲内に当該第1および第2油路の他方の少なくとも一部が含まれる。これにより、係合側油室に油を供給するための第1油路と、キャンセル油室に油を供給するための第2油路とは、クラッチドラムの側壁部内の概ね同一平面上に形成されるため、第1および第2油路が軸方向に並んで形成されないようにして油圧クラッチの軸長の増加を抑制することができる。また、第1および第2油路が共にクラッチドラムの側壁部内に形成されるため、油路を形成するために別部材を用いる必要がなく、部品点数の増加を抑制すると共に、油圧クラッチの構成を単純化・小型化することが可能となる。従って、本発明によれば、コンパクトかつ簡易な構成の油圧クラッチを実現することが可能となる。
【0009】
また、前記第1油路と第2油路とは、前記クラッチドラムの前記側壁部に放射状かつ交互にそれぞれ複数形成されてもよい。このように、第1および第2油路を放射状かつ交互に形成することにより、第1油路と第2油路とが軸方向からみて互いに重ならないようにして油圧クラッチの軸長の増加を抑制すると共に、係合側油室およびキャンセル油室に対して均等に油を供給することが可能となる。
【0010】
更に、前記第1および第2油路は、前記クラッチドラムの前記側壁部の外周から径方向内側に向けて穿設される孔部からなるものであって、前記側壁部の外周側に位置する前記孔部の開口部は、蓋体により閉鎖されてもよい。これにより、第1および第2油路を容易に形成することができる。
【0011】
また、本発明による変速装置は、上記何れかの油圧クラッチを備えたものであって、前記油圧クラッチの内周側に配置される第2の油圧クラッチを更に備えることを特徴とする。すなわち、本発明によれば、変速装置の軸長の増加を抑制しつつ第2のクラッチの外側に配置される上記油圧クラッチの係合側油室およびキャンセル油室に油を供給することが可能となる。
【0012】
更に、前記第2の油圧クラッチは、前記クラッチドラムの内周側に配置される第2クラッチドラムと、前記第2クラッチドラムの内周側に配置されるクラッチハブと、前記第2クラッチドラムの内周と前記クラッチハブの外周とに交互に嵌合される複数の第2クラッチプレートと、前記クラッチドラムと共に第2係合側油室を画成すると共に該第2係合側油室に供給される油圧により前記第2クラッチプレートを押圧するように軸方向に移動可能な第2クラッチピストンとを有してもよく、前記クラッチドラムの前記側壁部からは、環状の固定部が前記軸方向に延出されてもよく、前記固定部の内周側には、前記軸方向に延びる調心部が形成されてもよく、前記油圧クラッチの前記キャンセルプレートおよび前記第2クラッチドラムは、前記固定部の前記調心部に嵌合されてもよく、前記第2油路は、前記クラッチドラムの前記固定部に形成された油路を介して前記キャンセル油室と連通するものであってもよい。これにより、上記油圧クラッチと第2の油圧クラッチとを径方向からみて重なるように配置しつつ、第2油路と上記キャンセル油室とを連通させることが可能となる。
【0013】
また、前記クラッチドラムは、前記側壁部の内周部から軸方向に延出される内筒部を含んでもよく、該内筒部には、前記変速装置の固定部材により回転自在に支持される円筒状のスリーブが一体回転可能に嵌合されてもよく、前記第1油路は、前記スリーブに形成された第1油孔および前記内筒部に形成された第1中継油路を介して前記固定部材に形成された第1供給路と連通すると共に、前記第2油路は、前記スリーブに形成された第2油孔および前記内筒部に形成された第2中継油路を介して前記固定部材に形成された第2供給路と連通するものであってもよい。これにより、変速装置の動力入力部材に形成された第1および第2供給路の構造を単純化しても、第1または第2油路を当該第1および第2供給路と容易に連通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係るクラッチC1およびC2を備えた自動変速機20の要部を示す断面図である。
【図2】クラッチドラム30を図1中の右側からみた正面図である。
【図3】クラッチドラム30の固定部304の近傍を示す拡大断面図である。
【図4】クラッチドラム30の第1側壁部302に形成された第2油路302cの近傍を示す拡大断面図である。
【図5】スリーブ52とクラッチドラム30の内筒部303の段部303dとの当接部を示す拡大断面図である。
【図6】スリーブ52の端部を示す要部拡大図である。
【図7】クラッチドラム30の固定部304の近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例に係るクラッチC1およびC2を備えた自動変速機20の要部を示す拡大断面図である。実施例の自動変速機20は、有段式変速機として構成されて車両に搭載されるものであり、図1に示すように、入力軸21と、入力軸21から図示しない出力軸までの動力伝達経路を変更するためのクラッチC1およびC2やその他の図示しない複数のクラッチおよびブレーキ、遊星歯車機構50等を含む。クラッチC1およびC2やその他の複数のクラッチおよびブレーキ、遊星歯車機構50等は、図示しないトランスミッションケースの内部に収容される。なお、自動変速機20の入力軸21は、トルクコンバータ等を介してエンジンのクランクシャフトに接続され、出力軸は、差動機構(デファレンシャルギヤ)等を介して駆動輪に接続される(何れも図示せず)。
【0017】
クラッチC1は、多板摩擦式油圧クラッチとして構成されており、入力軸21の周りに軸受51を介して回転自在に支持されたクラッチドラム30と、遊星歯車機構50の例えばリングギヤに固定されたクラッチハブ31と、クラッチドラム30の内周面にスプラインを介して摺動自在に支持された複数の環状のクラッチプレート(相手板)32と、クラッチハブ31の外周面にスプラインを介して摺動自在に支持された複数の環状のクラッチプレート(摩擦板)33と、クラッチドラム30の内周面にスプラインを介して軸方向に摺動自在に嵌合されてクラッチプレート32,33に向けて移動可能であると共にクラッチドラム30と共に第1係合側油室34を画成するクラッチピストン35と、第1係合側油室34内で発生する遠心油圧をキャンセルするための第1キャンセル油室37をクラッチピストン35と共に画成するキャンセルプレート36と、クラッチピストン35とキャンセルプレート36との間に配置されるリターンスプリング38とを含む。クラッチドラム30は、クラッチプレート32が嵌合される第1外筒部301と、第1外筒部301の一端から径方向内側に延出された第1側壁部302と、第1側壁部302の内周部から軸方向に延出された内筒部303とから構成される。クラッチドラム30の内筒部303には、スリーブ52が一体回転可能に圧入(嵌合)され、当該スリーブ52は、例えばトランスミッションケースと一体化されると共に入力軸21を回転自在に支持する固定部材(固定軸)600により回転自在に支持される。これにより、クラッチドラム30は、入力軸21の軸回りに回転自在となる。スリーブ52は、一方(図中左側)の端面が内筒部303に形成された段部303dの内面と当接し、それにより軸方向に位置決めされる。
【0018】
クラッチC2は、多板摩擦式油圧クラッチとして構成されており、径方向からみてクラッチC1と重なるように当該クラッチC1の内周側に配置される。クラッチC2は、リターンスプリング38により図中左側に付勢されるキャンセルプレート36の径方向に延びる内周部と当接する(軸方向に支持する)と共に当該キャンセルプレート36と共にクラッチドラム30に締結されたクラッチドラム(第2クラッチ)40と、遊星歯車機構50の例えばキャリアに固定されたクラッチハブ41と、クラッチドラム40の内周面にスプラインを介して摺動自在に支持された複数の環状のクラッチプレート(相手板)42と、クラッチハブ41の外周面にスプラインを介して摺動自在に支持された複数の環状のクラッチプレート(摩擦板)43と、クラッチドラム40の内周面にスプラインを介して軸方向に摺動自在に嵌合されてクラッチプレート42,43に向けて移動可能であると共にクラッチドラム30と共に第2係合側油室44を画成するクラッチピストン45と、第2係合側油室44内で発生する遠心油圧をキャンセルするための第2キャンセル油室47をクラッチピストン45と共に画成するキャンセルプレート46と、クラッチピストン45とキャンセルプレート46との間に配置されるリターンスプリング48とを含む。クラッチドラム40は、クラッチプレート42を支持する第2外筒部401と、第2外筒部401の一端から径方向内側に延出された第2側壁部402とから構成される。
【0019】
クラッチC1のクラッチドラム30の第1側壁部302の径方向略中央部からは、環状の固定部304が軸方向内側に延出されると共に、当該固定部304の内周側の端部からは、環状の調心部305が更に軸方向内側に延出される。また、クラッチC1のキャンセルプレート36は、クラッチピストン35の内周部にシール部材を介して摺接する外周部361と、外周部361から軸方向に延出された連結部362と、連結部362から径方向内側に延出された内周部363とを含む。そして、キャンセルプレート36は、内周部363の一方の端面がクラッチドラム30の固定部304の軸方向内側の端面と当接すると共に他方の端面がクラッチC2のクラッチドラム40の第2側壁部402に当接した状態で、当該クラッチドラム40の第2側壁部402と共に固定部304から延出された調心部305の外周面に嵌合される。
【0020】
図2は、クラッチドラム30を図1における右側からみた正面図であり、図3は、固定部304の要部を示す拡大断面図である。図示するように、クラッチドラム30の固定部304には、クラッチドラム30の第1側壁部302の端面から軸方向内側に延びる複数のリベット孔306が形成されている。複数のリベット孔306は、第1側壁部302の端面から軸方向内側に延びる第1孔部306aと、当該第1孔部306aから軸方向内側に向けて徐々に内径が小さくなるように延びる第2孔部306bと、当該第2孔部306bから更に軸方向内側に向けて徐々に内径が小さくなるように延びる第3孔部306cとからなる。また、クラッチC1のキャンセルプレート36には、当該キャンセルプレート36の内周部363を調心部305に嵌合したときに固定部304のリベット孔306の第3孔部306cと連通するように複数のリベット孔363aが形成されると共に、クラッチC2のクラッチドラム40の第2側壁部402には、当該第2側壁部402の内周部を調心部305に嵌合したときにキャンセルプレート36のリベット孔363aと連通するように複数のリベット孔402aが形成されている。そして、これらのリベット孔306,363aおよび402aにリベット53が挿通されると共に、クラッチドラム30の軸方向外側から当該リベット53がカシメられ、キャンセルプレート36とクラッチドラム40の第2側壁部402とがクラッチドラム30の固定部304に締結される。これにより、クラッチドラム30、キャンセルプレート36およびクラッチドラム40を容易に締結することができ、キャンセルプレート36は、内周部363が当接するクラッチドラム40の第2側壁部402により軸方向に支持される。なお、クラッチドラム30、キャンセルプレート36およびクラッチドラム40は、ボルトおよびナットにより締結してもよい。
【0021】
クラッチC1のクラッチピストン35は、シール部材を介してクラッチドラム30の固定部304により軸方向に摺動自在に支持されると共に、シール部材を介してクラッチドラム30の第1外筒部301の内周面と摺接する。これにより、クラッチピストン35は、クラッチドラム30の第1外筒部301と第1側壁部302と固定部304と共に第1係合側油室34を画成する。また、クラッチC2のクラッチピストン45は、シール部材を介してクラッチドラム30の内筒部303により軸方向に摺動自在に支持されると共に、シール部材を介してクラッチドラム30の固定部304の内周面と摺接する。これにより、クラッチピストン45は、クラッチドラム30の内筒部303と第1側壁部302と固定部304と共に第2係合側油室44を画成する。このように、クラッチドラム30の第1側壁部302に形成された固定部304を利用することにより、第1および第2クラッチを容易に構成することが可能となる。
【0022】
固定部材600には、入力軸21に形成された図示しない油路を介して油圧制御装置(図示省略)に接続される供給路31a,31bが形成されると共に、自動変速機20に搭載された遊星歯車機構50等の潤滑対象へと潤滑用のオイルを供給する図示しない潤滑系の油圧回路からドレンされた作動油が供給される供給路31cが形成される。また、クラッチC1のクラッチドラム30に圧入されたスリーブ52には、固定部材600に形成された供給路31aと連通する油孔52aおよび供給路31bと連通する油孔52bが形成されると共に、クラッチドラム30の内筒部303には、スリーブ52の油孔52aと連通する中継油路303aおよび油孔52bと連通する中継油路303bが形成される。中継油路303bは、第2係合側油室44と連通する。そして、クラッチドラム30の第1側壁部302には、図1および図2に示すように、径方向かつ放射状に延びる複数(実施例では、4つ)の第1油路302aが形成されており、複数の第1油路302aは、内周側で内筒部303に形成された中継油路303aと連通すると共に固定部304よりも外周側で第1側壁部302の内部を軸方向に延びる油路302bを介して第1係合側油室34と連通する。これにより、固定部材600の供給路31a,クラッチドラム30の内筒部303の中継油路303a,第1側壁部302の第1油路302aおよび油路302bを介して油圧制御装置と第1係合側油室34とが接続されると共に、固定部材600の供給路31bおよびクラッチドラム30の内筒部303の中継油路303bを介して油圧制御装置と第2係合側油室44とが接続される。
【0023】
また、クラッチC1のクラッチドラム30に圧入されたスリーブ52には、固定部材600に形成された供給路31cと連通する油孔52cが形成されると共に、クラッチドラム30の内筒部303には、スリーブ52の油孔52cと連通する中継油路303cが形成される。中継油路303cは、クラッチドラム30の内筒部303の内周面に軸方向に延びるように形成されると共に、一端(図1中の左側の端部)で径方向に延出されてクラッチC2の第2キャンセル油室47と連通する。そして、クラッチドラム30の第1側壁部302には、図1および図2に示すように、上記複数の第1油路302aと軸方向からみて重ならないように交互に径方向かつ放射状に延びる複数(実施例では、4つ)の第2油路302cが形成されており、複数の第2油路302cは、内周側で内筒部303に形成された中継油路303cと連通すると共に固定部304の内部を軸方向に延びる油路302dを介して第1キャンセル油室37と連通する。これにより、固定部材600の供給路31c,クラッチドラム30の内筒部303の中継油路303c,第1側壁部302の第2油路302cおよび油路302dを介して潤滑系の油圧回路のドレン用の油路と第1キャンセル油室37とが連通されると共に、固定部材600の供給路31cおよびクラッチドラム30の内筒部303の中継油路303cを介して潤滑系の油圧回路のドレン用の油路と第2キャンセル油室47とが連通される。そして、実施例では、図1に示すように、第1油路302aの軸方向における幅Daと、第2油路302cの軸方向における幅Dcとが同一に定められている。すなわち、第1油路302aの軸方向における幅Daの範囲内に第2油路302cが含まれ、第2油路302cの軸方向における幅Dcの範囲内に第1油路302aが含まれる。これにより、第1油路302aと第2油路302cとが第1側壁部302の内部の概ね同一平面上に形成されることから、クラッチC1,C2の軸長の増加を抑制することができる。また、第1油路302aと第2油路302cとを軸方向からみて交互にそれぞれ複数形成することにより、第1油路302aと第2油路302cと軸方向からみて互いに重ならないようにしてクラッチC1ひいてはクラッチC1およびC2を含む自動変速機20の軸長の増加を抑制すると共に、環状に形成された第1係合側油室34や第1キャンセル油室37に対して均等に作動油を供給することが可能となる。ここで、このような第1および第2油路302a,302cは、図4中に矢印で示すように、クラッチドラム30の第1側壁部302の外周から径方向内側に向けて孔部を穿設した後に、図4中に白抜矢印で示すように第1側壁部302の外周側に位置する孔部の開口部にプラグ(蓋体)54を圧入して閉鎖することにより、容易に形成することができる。
【0024】
図5は、スリーブ52とクラッチドラム30の内筒部303の段部303dとの当接部を示す拡大断面図であり、図6は、スリーブ52の端部を示す要部拡大図である。図示するように、スリーブ52の端部には、クラッチドラム30の内筒部303の内周面に形成された中継油路303cと連通すると共に内筒部303の段部303dと当接する端面520に向けて軸方向に延びる第1通路521が当該スリーブ52の外周の複数箇所(実施例では、8箇所)に形成される。また、スリーブ52の端部には、内筒部303の段部303dと当接する端面520よりも軸方向に凹むように形成されると共に径方向に延在して第1通路521とスリーブ52の内部とを連通させる第2通路522が複数箇所(実施例では、8箇所)に形成される。第2通路522は、第1通路521と連通する位置で最も大きく開口し、当該第1通路521と連通する位置からスリーブ52の径方向中央部付近まで徐々に軸方向に狭まった後、スリーブ52の内周面までは同一の断面形状となるように形成されている。また、内筒部303の段部303dには、図示するように油路303eが形成されている。
【0025】
次に、上述のように構成された自動変速機20のクラッチC1,C2の各油室に作動油を供給する際の動作について説明する。実施例のクラッチC1を係合する際には、固定部材600の供給路31a,クラッチドラム30の内筒部303の中継油路303a,第1側壁部302の第1油路302aおよび油路302bを介して油圧制御装置からの作動油が第1係合側油室34に供給される。これにより、第1係合側油室34に作用する油圧によりクラッチピストン35がクラッチプレート32,33に向けて移動し、クラッチピストン35とクラッチドラム30に固定された当接部材との間にクラッチプレート32,33が挟み付けられることで、クラッチプレート32,33間に作用する摩擦力によりクラッチドラム30とクラッチハブ31とが連結される。一方、クラッチC1を解放する際には、図示しない油圧制御装置により、第1係合側油室34への油圧の供給が停止され、クラッチピストン35がリターンスプリング38により付勢されてクラッチプレート32,33の逆側へと移動し、クラッチドラム30とクラッチハブ31との連結が解除される。また、クラッチC2を係合する際には、固定部材600の供給路31b,クラッチドラム30の内筒部303の中継油路303bを介して油圧制御装置からの作動油が第2係合側油室44に供給される。これにより、第2係合側油室44に作用する油圧によりクラッチピストン45がクラッチプレート43,44に向けて移動し、クラッチピストン45とクラッチドラム40に固定された当接部材との間にクラッチプレート43,44が挟み付けられることで、クラッチプレート43,44間に作用する摩擦力によりクラッチドラム40とクラッチハブ41とが連結される。一方、クラッチC2を解放する際には、図示しない油圧制御装置により、第2係合側油室44への油圧の供給が停止され、クラッチピストン45がリターンスプリング48に付勢されてクラッチプレート43,44の逆側へと移動し、クラッチドラム30とクラッチハブ31との連結が解除される。
【0026】
また、上述のように第1および第2係合側油室34,44に作動油が充填された状態で自動変速機20が運転されると、第1および第2係合側油室34,44には遠心油圧が発生するため、クラッチC1およびC2を解放しようとして第1および第2係合側油室34,44への油圧の供給を停止したとしても、遠心油圧によりクラッチピストン35,45が軸方向内側(図1中左側)に押圧されてしまいクラッチC1,C2の解放が遅れてしまうおそれがある。そのため、第1および第2係合側油室34,44に作動油が充填された状態で自動変速機20が作動するときには、固定部材600の供給路31c,クラッチドラム30の内筒部303の中継油路303c,第1側壁部302の第2油路302cおよび油路302dを介して潤滑系の油圧回路からドレンされた作動油がクラッチC1の第1キャンセル油室37に供給されると共に、固定部材600の供給路31c,クラッチドラム30の内筒部303の中継油路303cを介して潤滑系の油圧回路からドレンされた作動油がクラッチC2の第2キャンセル油室47に供給される。これにより、第1および第2キャンセル油室37,47にも遠心油圧が発生し、当該遠心油圧によりクラッチピストン35,45が軸方向外側(図1中右側)に向けて押圧されるため、第1および第2係合側油室34,44に発生する遠心油圧からクラッチピストン35,45に働く力を打ち消すことができる。
【0027】
ここで、車両の運転が開始された直後には、第1および第2キャンセル油室37,47には作動油が完全に充填されておらず、第1および第2キャンセル油室37,47内には空気が存在する。このような第1キャンセル油室37の内部に存在する空気は、第1キャンセル油室37内に作動油が供給されると、油路302d,第1側壁部302の第2油路302c,クラッチドラム30の内筒部303の中継油路303cおよびスリーブ52に形成された第1および第2通路521,522を介してクラッチC1の外部へと排出される。また、第2キャンセル油室47の内部に存在していた空気は、油路302d,第1側壁部302の第2油路302c,クラッチドラム30の内筒部303の中継油路303cおよびスリーブ52に形成された第1および第2通路521,522を介してクラッチC1の外部へと排出される。この際、比重の大きい作動油が遠心力により第1および第2キャンセル油室37,47内の外周側へと移動することで第1および第2キャンセル油室37,47内の空気は内周側へと移動するため、空気を排出するための経路の一部として、スリーブ52の端面520に沿って径方向内側に延びる第2通路522を用いることにより、第1および第2キャンセル油室37,47内の空気を速やかに外部に排出しつつ、第2通路522を介した作動油の流出を抑制することができる。また、第1通路521とスリーブ52の内部とを連通させる第2通路522がスリーブ52の外周面から内周面まで延在することから、第1および第2キャンセル油室37,47における遠心油圧の0基点を当該スリーブ52の内周面とすることができる。この結果、第1および第2キャンセル油室37,47への作動油の充填に際して空気の排出を促進させつつ作動油の流出を抑制すると共に、第1および第2キャンセル油室37,47における遠心油圧をより適正に確保することが可能となる。なお、スリーブ52の第1および第2通路521,522を介してクラッチC1,C2の外部に排出された空気は、トランスミッションケースの内部を介して車外へと排出される。また、スリーブ52の第1および第2通路521,522を介して第1および第2キャンセル油室37,47内の作動油が排出された場合には、当該作動油は、クラッチドラム30の内筒部303の段部303dに形成された油路303eや軸受51の隙間を介して遊星歯車機構50といった潤滑対象へと供給された後に図示しないオイルパンへと還流される。
【0028】
このようにして第1キャンセル油室37に作動油が充填された状態で自動変速機20が運転され、第1キャンセル油室37に遠心油圧が発生すると、遠心油圧によりキャンセルプレート36の内周部363がクラッチC2のクラッチドラム40の第2側壁部402を軸方向に押圧する。ここで、上述したように、キャンセルプレート36の内周部363とクラッチドラム40の第2側壁部402とがクラッチドラム30の固定部304に締結されるため、キャンセルプレート36がクラッチドラム40を押圧した際にクラッチドラム40に作用するねじりモーメントの支点(クラッチドラム40とクラッチドラム30との締結部)と力点(クラッチドラム40がキャンセルプレート36を支持する部分、すなわちキャンセルプレート36の内周部363とクラッチドラム40の第2側壁部402との当接部)とは概ね同じ位置となる。これにより、クラッチドラム40に大きなねじりモーメントが作用するのを抑制してクラッチドラム40の変形を良好に抑制することができる。
【0029】
以上説明した実施例の自動変速機20に搭載されたクラッチC1では、クラッチドラム30の第1側壁部302に、それぞれ径方向に延びると共に第1係合側油室34と連通する複数の第1油路302aと、それぞれ径方向に延びると共に第1キャンセル油室37と連通する複数の第2油路302cとが形成されている。そして、上記実施例では、第1油路302aの軸方向における幅Daと、第2油路302cの軸方向における幅Dcとが同一に定められており、第1油路302aの軸方向における幅Daの範囲内に第2油路302cが含まれ、第2油路302cの軸方向における幅Dcの範囲内に第1油路302aが含まれる。これにより、第1係合側油室34へ油を供給するための第1油路302aと、第1キャンセル油室37へ油を供給するための第2油路302cとが、クラッチドラム30の第1側壁部302内の概ね同一平面上に形成されるため、第1および第2油路302a,302cが軸方向に並んで形成されないようにしてクラッチC1ひいてはクラッチC1およびC2を含む自動変速機20の軸長の増加を抑制することができる。また、第1および第2油路302a,302cが共にクラッチドラム30の第1側壁部302内に形成されるため、油路を形成するために別部材を用いる必要がなく、部品点数の増加を抑制すると共に、クラッチC1の構成を単純化・小型化することが可能となる。従って、実施例の自動変速機20に搭載されたクラッチC1によれば、コンパクトかつ簡易な構成の油圧クラッチを実現することが可能となる。ただし、第1油路302aの軸方向における幅Daと、第2油路302cの軸方向における幅Dcとは、必ずしも同一に定められる必要はなく、第1および第2油路302a,302cの何れか一方の軸方向における幅の範囲内に第1および第2油路302a,302cの他方の少なくとも一部が含まれるようにすれば、クラッチC1ひいては自動変速機20の軸長の増加を抑制することができる。
【0030】
また、第1油路302aと第2油路302cとは、クラッチドラム30の第1側壁部302に放射状かつ交互にそれぞれ複数形成される。このように、第1および第2油路302a,302cを放射状かつ交互に形成することにより、第1油路302aと第2油路302cとが軸方向からみて互いに重ならないようにしてクラッチC1ひいては自動変速機20の軸長の増加を抑制すると共に、環状に形成された第1係合側油室34および第1キャンセル油室37に対して均等に油を供給することができる。
【0031】
更に、第1および第2油路302a,302cは、クラッチドラム30の第1側壁部302の外周から径方向内側に向けて穿設される孔部からなるものであって、第1側壁部302の外周側に位置する孔部の開口部は、プラグ(蓋体)54により閉鎖される。これにより、第1および第2油路302a,302cを容易に形成することができる。
【0032】
また、第2の油圧クラッチとしてのクラッチC2は、クラッチドラム30の内周側に配置される第2クラッチドラムとしてのクラッチドラム40と、当該クラッチドラム40の内周側に配置されるクラッチハブ41と、クラッチドラム40の内周とクラッチハブ41の外周とに交互に嵌合される複数のクラッチプレート(第2クラッチプレート)42,43と、クラッチドラム30と共に第2係合側油室44を画成すると共に第2係合側油室44に供給される油圧によりクラッチプレート42,43を押圧するように軸方向に移動可能なクラッチピストン(第2クラッチピストン)45とを有する。更に、クラッチドラム30の第1側壁部302からは、環状の固定部304が軸方向に延出されており、固定部304の内周側には、軸方向に延びる調心部305が形成されている。そして、クラッチC1のキャンセルプレート36およびクラッチドラム40は、固定部304の調心部305に嵌合され、第2油路302cは、クラッチドラム30の固定部304に形成された油路302dを介して第1キャンセル油室37と連通する。これにより、クラッチC1とクラッチC2とを径方向からみて重なるように配置しつつ、第2油路302cと第1キャンセル油室37とを連通させることが可能となる。
【0033】
更に、実施例のクラッチC1を備えた自動変速機20では、クラッチドラム30は、第1側壁部302の内周部から軸方向に延出される内筒部303を含み、当該内筒部303には、自動変速機20の固定部材600により回転自在に支持される円筒状のスリーブ52が一体回転可能に圧入され、第1油路302aは、スリーブ52に形成された油孔52aおよび内筒部303に形成された中継油路303aを介して固定部材600に形成された供給路31aと連通すると共に、第2油路302cは、スリーブ52に形成された油孔52cおよび内筒部303に形成された中継油路303cを介して固定部材600に形成された供給路31cと連通する。これにより、自動変速機20の固定部材600に形成される供給路31a,31cの構造を単純化しても、第1または第2油路302a,302cを当該第1および第2供給路と容易に連通させることができる。
【0034】
そして、実施例のクラッチC1を備えた自動変速機20は、径方向からみてクラッチC1と重なるようにクラッチC1よりも内側に配置されるクラッチC2を更に備える。本発明は、このように、外周側に配置される油圧クラッチにおいて好適なものである。すなわち、本発明によれば、自動変速機20の軸長の増加を抑制しつつ第2の油圧クラッチとしてのクラッチC2の外側に配置されるクラッチC1の第1係合側油室34および第1キャンセル油室37に作動油を供給することが可能となる。
【0035】
なお、キャンセルプレート36は、図7に示すように、内周部363の図中左側の端面がクラッチドラム30とクラッチドラム40との連結部の近傍で当該クラッチドラム40に支持されるものであれば、固定部304に締結されなくともよい。また、本発明の油圧クラッチは、実施例の自動変速機20に限らず、手動式の変速機に適用されてもよいことは言うまでもない。
【0036】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、複数のクラッチプレート32を保持する第1外筒部301および第1外筒部301から径方向内側に延出される第1側壁部302を少なくとも含むクラッチドラム30と、クラッチドラム30と共に第1係合側油室34を画成すると共に第1係合側油室34に供給される油圧によりクラッチプレート32,33を押圧するように軸方向に移動可能なクラッチピストン35と、クラッチピストン35と共に遠心油圧をキャンセルするための第1キャンセル油室37を画成するキャンセルプレート36とを備えたクラッチC1が「油圧クラッチ」に相当し、クラッチドラム30の第1側壁部302に形成された第1油路302aが「第1油路」に相当し、第1キャンセル油室37と連通すると共に軸方向からみて第1油路302aと重ならないように放射状に第1側壁部302に形成された第2油路302cが「第2油路」に相当し、径方向からみてクラッチC1と重なるようにクラッチC1よりも内側に配置されるクラッチC2が「第2の油圧クラッチ」に相当し、自動変速機20が「変速装置」に相当する。
【0037】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、油圧クラッチおよびそれを備えた変速装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
20 自動変速機、21 入力軸、30 クラッチドラム、301 第1外筒部、302 第1側壁部、302a 第1油路、302b,302d 油路、302c 第2油路、303 内筒部、303a,303b,303c 中継油路、303d 段部、303e 油路、304 固定部、305 調心部、306 リベット孔、306a 第1孔部、306b 第2孔部、306c 第3孔部、31 クラッチハブ、31a,31b,31c 供給路、32,33 クラッチプレート、34 第1係合側油室、35 クラッチピストン、36 キャンセルプレート、361 外周部、362 連結部、363 内周部、363a リベット孔、37 第1キャンセル油室、38 リターンスプリング、40 クラッチドラム、401 第2外筒部、402 第2側壁部、402a リベット孔、41 クラッチハブ、42,43 クラッチプレート、44 第2係合側油室、45 クラッチピストン、46 キャンセルプレート、47 第2キャンセル油室、48 リターンスプリング、50 遊星歯車機構、51 ブッシュ、52 スリーブ、52a,52b,52c 油孔、520 端面、521 第1通路、522 第2通路、53 リベット、54 プラグ、600 固定部材、C1,C2 クラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクラッチプレートが嵌合される外筒部および該外筒部と側壁部とを少なくとも含むクラッチドラムと、該クラッチドラムと共に係合側油室を画成すると共に該係合側油室に供給される油圧により前記クラッチプレートを押圧するように軸方向に移動可能なクラッチピストンと、該クラッチピストンと共に遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル油室を画成するキャンセルプレートとを備えた油圧クラッチにおいて、
前記クラッチドラムの前記側壁部には、前記径方向に延びると共に前記係合側油室と連通する第1油路と、前記径方向に延びると共に前記キャンセル油室と連通する第2油路とが形成されており、前記第1および第2油路の何れか一方の前記軸方向における幅の範囲内に該第1および第2油路の他方の少なくとも一部が含まれることを特徴とする油圧クラッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧クラッチにおいて、
前記第1油路と前記第2油路とは、前記クラッチドラムの前記側壁部に放射状かつ交互にそれぞれ複数形成されることを特徴とする油圧クラッチ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油圧クラッチにおいて、
前記第1および第2油路は、前記クラッチドラムの前記側壁部の外周から径方向内側に向けて穿設される孔部からなり、
前記側壁部の外周側に位置する前記孔部の開口部は、蓋体により閉鎖されることを特徴とする油圧クラッチ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の油圧クラッチを備えた変速装置において、
前記油圧クラッチの内周側に配置される第2の油圧クラッチを更に備えることを特徴とする変速装置。
【請求項5】
請求項4に記載の変速装置において、
前記第2の油圧クラッチは、
前記クラッチドラムの内周側に配置される第2クラッチドラムと、
前記第2クラッチドラムの内周側に配置されるクラッチハブと、
前記第2クラッチドラムの内周と前記クラッチハブの外周とに交互に嵌合される複数の第2クラッチプレートと、
前記クラッチドラムと共に第2係合側油室を画成すると共に該第2係合側油室に供給される油圧により前記第2クラッチプレートを押圧するように軸方向に移動可能な第2クラッチピストンとを有し、
前記クラッチドラムの前記側壁部からは、環状の固定部が前記軸方向に延出され、
前記固定部の内周側には、前記軸方向に延びる調心部が形成され、前記油圧クラッチの前記キャンセルプレートおよび前記第2クラッチドラムは、前記固定部の前記調心部に嵌合され、
前記第2油路は、前記クラッチドラムの前記固定部に形成された油路を介して前記キャンセル油室と連通することを特徴とすることを特徴とする変速装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の変速装置において、
前記クラッチドラムは、前記側壁部の内周部から軸方向に延出される内筒部を含み、該内筒部には、前記変速装置の固定部材により回転自在に支持される円筒状のスリーブが一体回転可能に嵌合され、
前記第1油路は、前記スリーブに形成された第1油孔および前記内筒部に形成された第1中継油路を介して前記固定部材に形成された第1供給路と連通すると共に、前記第2油路は、前記スリーブに形成された第2油孔および前記内筒部に形成された第2中継油路を介して前記固定部材に形成された第2供給路と連通することを特徴とする変速装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−215284(P2012−215284A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231179(P2011−231179)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】