説明

油圧ショベルにおける冷却装置

【課題】キャブの後面下部を前方側にへこませて、エンジンルームの一部となる凹部を形成し、該凹部に冷却装置ユニットの一部を配設するにあたり、各冷却装置の大きさを考慮して、凹部を有効に利用できるようにする。
【解決手段】冷却装置ユニット9を構成する冷却装置のうち、アフタークーラー17の少なくとも一部を、キャブ5の後面5a下部を前方側にへこませて形成した凹部5b内に収納する一方、ラジエータ15及びオイルクーラー16は、凹部5b外に位置するように配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置としてラジエータ、オイルクーラー、アフタークーラーを備えた油圧ショベルにおける冷却装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルのなかには、冷却装置として、エンジン冷却水を冷却するためのラジエータ、作動油を冷却するためのオイルクーラー、及び過給機で圧縮された空気を冷却するためのアフタークーラーを備え、これら冷却装置を冷却装置ユニットとして一纏めにした状態でエンジンルームに配すると共に、エンジンに連結された冷却ファンによって前記冷却装置に冷却風を供給するように構成したものがある。このものにおいて、アフタークーラーは、ラジエータやオイルクーラーと比較して放熱面積は小さくて良いが低い温度まで冷却する必要があり、そこで、従来から、アフタークーラーは、ラジエータやオイルクーラーよりも放熱面積の小さい小型のものが採用されると共に、ラジエータやオイルクーラーに対して冷却風の流れの上流側に配されていた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
一方、狭小な作業現場においても上部旋回体を旋回させることができるように、上部旋回体の後端旋回半径を小さく設計した後方小旋回型の油圧ショベルが普及しているが、この様な油圧ショベルでは、エンジンやエンジン周りの各種機器装置が収納されるエンジンルームのスペースがどうしても狭くなる。そこで、従来、キャブの後面下部を前方側にへこませて凹部を形成し、該凹部を、キャブの後方に設けられたエンジンルームの一部として用いるようにした技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。このものでは、前記凹部に、ラジエータの一部が収納される構成になっている。
【特許文献1】特開2001−263060号公報
【特許文献2】特開2003−41622号公報
【特許文献3】実公平3−52833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献3のように、キャブの後面下部を前方側にへこませて、エンジンルームの一部となる凹部を形成する場合、該凹部の天井面は、キャブの居住空間になるべく影響を与えないように、エンジンルームの上面よりも低位置となるように設計することが提唱される。しかるに、この様に天井面の低い凹部に、前述したラジエータ、オイルクーラー、アフタークーラーからなる冷却装置ユニットの一部を収納しようとした場合、各冷却装置の大きさや、冷却風の流れに対する各冷却装置の位置関係等を考慮しなければならず、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、キャブの後方にエンジンルームを配設してなる油圧ショベルにおいて、前記キャブの後面下部を前方側にへこませて、天井面がエンジンルームの上面よりも低位置の凹部を形成し、該凹部をエンジンルームの一部として用いる一方、エンジンルームに、ラジエータ、オイルクーラー、及びアフタークーラーを備えた冷却装置ユニットを収納するにあたり、該冷却装置ユニットは、アフタークーラーの少なくとも一部が前記凹部内に収納され、ラジエータ及びオイルクーラーが凹部外に位置するように配設されることを特徴とする油圧ショベルにおける冷却装置である。
請求項2の発明は、オイルクーラーは、該オイルクーラーに接続される配管が冷却風の流れに対してアフタークーラーにオーバーラップする状態で、アフタークーラーよりも冷却風の流れの上流側に配されると共に、前記アフタークーラーにオーバーラップするオイルクーラーの配管に、断熱材を巻装したことを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベルにおける冷却装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、冷却装置ユニットを構成する冷却装置のうち、ラジエータやオイルクーラーと比較して放熱面積が小さくて良い小型のアフタークーラーを、キャブの後面下部に形成された凹部を有効に利用して収納できることになって、その分、エンジンルーム10のスペースを広く使うことができると共に、ラジエータおよびオイルクーラーは凹部外に配されることになるから、放熱面積の大きい背高のものを設置できることになる。
請求項2の発明とすることにより、オイルクーラーがアフタークーラーよりも冷却風の流れの上流側に配されていても、冷却風の流れに対してアフタークーラーにオーバーラップするのはオイルクーラーの配管であり、しかも、該配管には断熱材が巻装されているから、アフタークーラーに供給される冷却風が、上流側に配されたオイルクーラーによって加熱されてしまうことを回避することができ、効率の良い冷却を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1は後方小旋回型の油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業部4等から構成されている。
【0007】
前記上部旋回体3の前半部には、フロント作業部4の基端部が上下揺動自在に支持されると共に、該フロント作業部4の基端部の左側にはキャブ5が配され、また右側には作動油タンク6や燃料タンク7等が配されている。一方、上部旋回体3の後半部には、エンジン8や後述する冷却装置ユニット9が収納されるエンジンルーム10が配され、さらに該エンジンルーム10の後側には、カウンタウエイト11が装着されている。
【0008】
前記キャブ5には、オペレータが座するシート12や、図示しない各種操縦装置等が内装されているが、該キャブ5の後面5aの下部には、前方側に向けてへこんだ凹5bが形成されている。該凹部5bは、キャブ5の後方のエンジンルーム10に連通していて、エンジンルーム10の一部になっていると共に、該凹部5bの天井面5cは、エンジンルーム10の上面10aよりも低位置になっていて、凹部5bが形成されていてもキャブ5の居住空間がなるべく損なわれないように配慮されている。
【0009】
一方、前記エンジンルーム10には、エンジン8が横置き状態(クランク軸8aが上部旋回体3の左右方向を向く状態)で配されていると共に、該エンジン8のクランク軸8aの左端部には、冷却ファン13が連結されている。さらに、エンジン8の左方には、前記冷却ファン13が吸入する冷却風によって冷却される冷却装置ユニット9が配設されている。また、エンジン8の右方には、マフラー14や図示しないポンプ装置等が配設されている。
【0010】
前記冷却装置ユニット9は、エンジン冷却水を冷却するラジエータ15と、作動油を冷却するオイルクーラー16と、エンジン8に装備される過給機(図示せず)で圧縮された空気を冷却するアフタークーラー17とが、図示しないサポート部材によって一纏まり状に組付けられてユニット化されたものであって、該冷却装置ユニット9は、後述するように、その一部が、前記キャブ5の後面5a下部を前方側にへこませて形成した凹部5b内に収納される状態で配されている。
【0011】
ここで、前記ラジエータ15、オイルクーラー16、およびアフタークーラー17は、エンジンルーム10の床面積に占める占有面積がなるべく小さくなるよう、何れも縦長形状のものが採用されているが、この場合、アフタークーラー17は、ラジエータ15およびオイルクーラー16と比較して放熱面積の小さい小型のものが用いられていると共に、該アフタークーラー17の高さ寸法は、前記キャブ5の後面5a下部を前方側にへこませて形成した凹部5bに収納できる寸法に設定されている。また、ラジエータ15およびオイルクーラー16は、アフタークーラー17よりも放熱面積の大きいものが用いられていると共に、ラジエータ15およびオイルクーラー16の高さ寸法は、アフタークーラー17の高さ寸法よりも高く、前記凹部5bに収納することができない背高な寸法に設定されている。
【0012】
そして、前記冷却装置ユニット9を構成する冷却装置(ラジエータ15、オイルクーラー16、アフタークーラー17)のうち、前記アフタークーラー17とラジエータ15とは、冷却風の流れ(図2参照)に対して並列する状態で、且つ、アフタークーラー17が上部旋回体3の前後方向に対して前側に、ラジエータ15が後側に位置する状態で配されているが、この場合、アフタークーラー17は、その前側半部が上記凹部5b内に収納される状態で配され、また、アフタークーラー17の後側半部およびラジエータ15は、凹部5b外に位置するように配されている。
【0013】
一方、オイルクーラー16は、冷却風の流れに対して前記ラジエータ15およびアフタークーラー17よりも上流側に位置するように配されている。この場合、オイルクーラー16自体は、冷却風の流れに対してラジエータ15にオーバーラップするように配されていて、凹部5b外に位置しているが、オイルクーラー16に接続される配管16aは、冷却風の流れに対してアフタークーラー17にオーバーラップするように配されている。そして、該アフタークーラー17にオーバーラップするオイルクーラー16の配管16aには、例えばガラス繊維を材料とする断熱材18が巻装されており、これにより、オイルクーラー16に接続される配管16aからの熱によって、アフタークーラー17に供給される冷却風が加熱されにくくなるように構成されている。
【0014】
叙述の如く構成された本形態において、キャブ5の後面5aの下部には、前方側に向けてへこんだ凹部5bが形成されているが、該凹部5bは、キャブ5の後方に配設されたエンジンルーム10に連通していて、エンジンルーム10の一部として用いられる一方、凹部5の天井面5cは、オペレータのエンジンルーム10の上面10aよりも低位置に形成されている。そして、エンジンルーム10に収納される冷却装置ユニット9は、アフタークーラー17の少なくとも一部(本実施の形態ではアフタークーラー17の前側半部)が前記凹部5b内に収納され、ラジエータ15及びオイルクーラー16が凹部5b外に位置するように配設されることになる。
【0015】
この結果、冷却装置ユニット9を構成する冷却装置のうち、放熱面積の小さい小型のアフタークーラー17を、キャブ5の後面5a下部に形成された凹部5bを有効に利用して収納できることになって、その分、エンジンルーム10のスペースを広く使うことができると共に、ラジエータ15およびオイルクーラー16は凹部5b外に配されることになるから、放熱面積の大きい背高のものを設置できることになる。
【0016】
さらにこのものにおいて、アフタークーラー17とラジエータ15とは、冷却風の流れに対して並列する状態で配される一方、オイルクーラー16は、これらアフタークーラー17及びラジエータ15よりも上流側に配されているが、この場合、オイルクーラー16に接続される配管16aが、冷却風の流れに対してアフタークーラー17にオーバーラップするように配されていると共に、該アフタークーラー17にオーバーラップするオイルクーラー16の配管16aには、断熱材18が巻装されることになる。
【0017】
而して、アフタークーラー17よりも上流側にオイルクーラー16が配されていても、冷却風の流れに対してアフタークーラー17にオーバーラップするのはオイルクーラー16の配管16aであり、しかも、該配管16aには断熱材18が巻装されているから、アフタークーラー17に供給される冷却風が、上流側に配されたオイルクーラー16によって加熱されてしまうことを回避することができ、効率の良い冷却を行うことができる。
【0018】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、上記実施の形態では、キャブ5の後面5a下部に形成された凹部5bに収納されるのはアフタークーラー17の前側半部であるが、凹部5bの形状やアフタークーラー17の寸法等によって、アフタークーラー17の略全体が収納される構成にすることも、勿論できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】エンジンルームの上面を取り除いた上部旋回体の一部平面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】冷却装置ユニットの斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 油圧ショベル
5 キャブ
5b 凹部
5c 凹部の天井面
9 冷却装置ユニット
10 エンジンルーム
10a エンジンルームの上面
15 ラジエータ
16 オイルクーラー
16a 配管
17 アフタークーラー
18 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの後方にエンジンルームを配設してなる油圧ショベルにおいて、前記キャブの後面下部を前方側にへこませて、天井面がエンジンルームの上面よりも低位置の凹部を形成し、該凹部をエンジンルームの一部として用いる一方、エンジンルームに、ラジエータ、オイルクーラー、及びアフタークーラーを備えた冷却装置ユニットを収納するにあたり、該冷却装置ユニットは、アフタークーラーの少なくとも一部が前記凹部内に収納され、ラジエータ及びオイルクーラーが凹部外に位置するように配設されることを特徴とする油圧ショベルにおける冷却装置。
【請求項2】
オイルクーラーは、該オイルクーラーに接続される配管が冷却風の流れに対してアフタークーラーにオーバーラップする状態で、アフタークーラーよりも冷却風の流れの上流側に配されると共に、前記アフタークーラーにオーバーラップするオイルクーラーの配管に、断熱材を巻装したことを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベルにおける冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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