説明

油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システム

【課題】メインポンプとは独立して旋回ポンプが設けられた油圧ショベルにおいて、旋回押付け作業時におけるリリーフロスを少なくして、無駄なエネルギー消費を抑える。
【解決手段】油圧ショベルの行う作業が旋回押付け作業であるか否かを判断する作業判断部を設け、該作業判断部により旋回押付け作業である判断された場合には、旋回押付け作業以外の旋回を伴う作業の場合よりも旋回ポンプのトルクを低減せしめる旋回トルク低減制御を行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインポンプとは独立して旋回ポンプが設けられた油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システムの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルは、下部走行体に上部旋回体を旋回自在に支持すると共に、上部旋回体にブーム、スティック、バケット等からなる作業装置を装着して構成されるが、該油圧ショベルのなかには、旋回モータの油圧供給源となる旋回ポンプを、ブームシリンダやアームシリンダ等の作業装置用油圧アクチュエータや走行モータの油圧供給源となるメインポンプとは独立して設けたものがある。この様に旋回ポンプを独立して設けることで、旋回動作を、作業装置の動作に影響されることなく行うことができるという利点があり、主に、大型の油圧ショベルに採用されている。
このものにおいて、前記メインポンプおよび旋回ポンプは、エンジンから供給されるトルクにより駆動するが、この場合、エンジンからの供給トルクをメインポンプおよび旋回ポンプに適切に配分することが要求される。そこで従来、旋回ポンプの出力を、旋回単独時には固定値となるように、また、ブームと旋回との連動時には経過時間とともに固定値に向けて徐々に増大するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−206903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、油圧ショベルの行う作業のなかには、旋回押付け掘削作業(旋回力でバケット側面を溝側面に押し付けながら溝掘削を行う作業)のように、旋回力を押付け力として用いる作業がある。この様な作業を行う場合、旋回モータは殆ど油量を必要としないため、旋回ポンプの吐出量の殆どは、リリーフ弁からリリーフロスしてしまうことになって、無駄なエネルギー消費になる。この場合、前記特許文献1のように、旋回ポンプの出力を、経過時間とともに固定値に向けて徐々に増大するように構成しても、経過時間とともにポンプ出力が増大するにつれてリリーフ量が増加し、やはり無駄にエネルギーを消費することになるという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、旋回モータの油圧供給源となる旋回ポンプを、作業装置用油圧アクチュエータや走行モータの油圧供給源となるメインポンプとは独立して設けてなる油圧ショベルにおいて、エンジンから前記旋回ポンプおよびメインポンプに供給されるトルクを制御するトルク制御手段と、油圧ショベルの行う作業が旋回力を押付け力として用いる旋回押付け作業であるか否かを判断する作業判断手段とを設けると共に、前記トルク制御手段は、作業判断手段により旋回押付け作業である判断された場合に、旋回押付け作業以外の旋回を伴う作業の場合よりも旋回ポンプのトルクを低減せしめる旋回トルク低減制御を行うことを特徴とする油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システムである。
請求項2の発明は、トルク制御手段は、旋回用操作レバーの操作量に応じて旋回ポンプのトルクを増減制御することを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システムである。
請求項3の発明は、油圧ショベルは、無負荷時エンジン回転数を設定するエンジン回転数設定操作具を備えると共に、トルク制御手段は、該エンジン回転数設定操作具の設定値に応じて旋回ポンプのトルクを増減制御することを特徴とする請求項1または2に記載の油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システムである。
請求項4の発明は、トルク制御手段は、作業判断手段による旋回押付け作業であるか否かの判断別に、旋回ポンプのトルクが設定された複数の旋回トルクテーブルを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システムである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、旋回押付け作業時に旋回ポンプは、旋回トルク低減制御により低減されたトルクに対応するポンプ出力となるよう流量が低減することになり、而して、殆ど油量を必要としない旋回押付け作業を行う場合のリリーフロスを減少せしめることができて、無駄なエネルギー消費を抑えることができ、低燃費化に大きく貢献できる。
請求項2の発明とすることにより、レバー操作量に応じたトルクが旋回ポンプに供給されることになり、而して、旋回用操作レバーの操作に基づいて旋回モータへの圧油供給流量を制御する旋回用コントロールバルブに対して過不足無く旋回ポンプの圧油を供給できることになって、回路の安定性、操作性の向上に寄与できる。
請求項3の発明とすることにより、エンジン回転数設定操作具の設定値に応じた適切なトルクを、旋回ポンプに供給することができる。
請求項4の発明とすることにより、旋回トルクテーブルによって、旋回押付け作業であるか否かの判断別に旋回ポンプのトルクを簡単に求めることができると共に、該旋回トルクテーブルの値を調整することで、油圧ショベルの機種や搭載されるエンジン、旋回ポンプの特性等の変更に簡単に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着される作業装置4から構成され、さらに該作業装置4は、基端部が上部旋回体3に上下動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるスティック6、該スティック6の先端部に取付けられるバケット7等から構成されている。
【0007】
さらに、前記油圧ショベル1には、左右の走行モータ8、9、旋回モータ10、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13等の各種油圧アクチュエータが設けられており、これら油圧アクチュエータの作動に基づいて、走行、上部旋回体3の旋回、ブーム5、スティック6、バケット7の揺動等が行われる構成になっている。尚、上記ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13は、本発明の作業装置用油圧アクチュエータに相当する。
【0008】
前記油圧アクチュエータが接続される油圧回路について、図2に示す油圧回路図に基づいて説明すると、該図2において、14、15はメインポンプ、16は旋回ポンプ、17は油タンクであって、上記メインポンプ14、15および旋回ポンプ16は、エンジン(図示せず)に連結されていてエンジンから供給されるトルクによって駆動するようになっている。
【0009】
ここで、前記メインポンプ14、15は、左右の走行モータ8、9、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13の油圧供給源となる可変容量型の油圧ポンプであって、該メインポンプ14、15の流量制御を行うメインポンプ用レギュレータ18、19は、後述する制御装置20によって制御されるメインポンプ制御用電磁比例減圧弁21からの制御信号圧を受けて、エンジンからメインポンプ14、15に供給されるトルクに応じたポンプ出力となるように、ポンプ流量を制御する。さらにメインポンプ用レギュレータ18、19は、定馬力制御やロードセンシングコントロール(或いはネガティブコントロール)も行うが、これらは汎用的に用いられている流量制御であるため、説明は省略する。
【0010】
一方、前記旋回ポンプ16は、旋回モータ10の油圧供給源となる可変容量型の油圧ポンプであって、前記メインポンプ14、15とは独立する状態で設けられているが、該旋回ポンプ16の流量制御を行う旋回ポンプ用レギュレータ22は、前記制御装置20から出力される制御信号に基づいて、エンジンから専用ポンプ16に供給されるトルクに応じたポンプ出力となるように、ポンプ流量を制御する。
【0011】
さらに、前記図2において、23〜28は左右の走行用、旋回用、ブーム用、スティック用、バケット用のコントロールバルブであって、これらコントロールバルブ23〜28は、それぞれ対応する操作具(操作レバーや操作ペダル)の操作に基づいて、左右の走行モータ8、9、旋回モータ10、ブームシリンダ11、スティックシリンダ12、バケットシリンダ13に対する油供給排出の方向および流量を制御するように構成されている。
【0012】
また、29、30は旋回用リリーフ弁であって、該旋回用リリーフ弁29、30は、旋回用コントロールバルブ25と旋回モータ10とを接続する油路の圧力が設定圧以上になると、該油路の油を油タンク17に逃がすように構成されている。
【0013】
一方、前記制御装置20は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されるものであって、図3のブロック図に示す如く、アクセルダイヤル31、旋回用操作レバー(図示せず)の操作方向および操作量を検出する旋回操作検出手段32、スティック用操作レバー(図示せず)の操作方向および操作量を検出するスティック操作検出手段33等からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前記メインポンプ制御用電磁比例減圧弁21および旋回ポンプ用レギュレータ22に制御信号を出力するが、該制御装置20には、後述する作業判断部(本発明の作業判断手段に相当する)34およびトルク制御部(本発明のトルク制御手段に相当する)35が設けられている。
【0014】
ここで、前記アクセルダイヤル31は、無負荷時エンジン回転数を設定するための操作ダイヤルであって、本発明のエンジン回転数設定操作具に相当するが、本実施の形態では、「1」〜「10」の10段階のアクセルダイヤル値Aが設けられていて、アクセルダイヤル値Aが高くなるほど無負荷時エンジン回転数が高くなるように設定される。
【0015】
次いで、前記制御装置20に設けられる作業判断部34について、図4に示す制御ブロック図に基づいて説明すると、作業判断部34は、スティック操作検出手段33から出力されるスティック操作信号をスティック操作判断テーブル36に入力し、該スティック操作判断テーブル36によって、スティック用操作レバーがイン側(上部旋回体3に近接する方向)に操作されたか否かを判断する。そして、スティック用操作レバーがイン側に操作された場合には、アンドゲート37にON信号を出力する一方、アウト側(上部旋回体3から離間する方向)に操作された場合或いは操作されていない場合には、アンドゲート37にOFF信号を出力する。さらに、作業判断部34は、旋回操作検出手段32から出力される旋回操作信号を旋回操作判断テーブル38に入力し、該旋回操作判断テーブル38によって、旋回用操作レバーが操作されたか否かを判断する。そして、旋回用操作レバーが操作された場合には、前記アンドゲート37にON信号を出力する一方、操作されていない場合には、アンドゲート37にOFF信号を出力する。
【0016】
そして、作業判断部34は、前記アンドゲート37にスティック操作判断テーブル36および旋回操作判断テーブル38の両方からON信号が入力された場合、つまり、スティックイン操作と旋回操作とが同時に行われた場合には、旋回力を押付け力として用いる旋回押付け作業の一つである旋回押付け掘削作業(旋回力でバケット側面を溝側面に押し付けながら溝掘削を行う作業)が行われていると判断して、旋回押付け作業ON信号を出力する。一方、アンドゲート37にスティック操作判断テーブル36或いは旋回操作判断テーブル38の少なくとも一方からOFF信号が入力された場合、つまり、スティックイン操作と旋回操作とが同時に行なわれていない場合には、旋回押付け作業が行われていないと判断して、旋回押付け作業OFF信号を出力する。
【0017】
一方、トルク制御部35は、図5に示す制御ブロック図に示す如く、後述する総ポンプトルクTTと、旋回操作検出手段32から入力される旋回操作信号と、前記作業判断部34から出力される旋回押付け作業ON/OFF信号と、アクセルダイヤル31から出力されるアクセルダイヤル値Aとを入力する。
【0018】
ここで、前記総ポンプトルクTTは、エンジンからメインポンプ14、15および旋回ポンプ16に供給可能なトルクの総計であって、例えば図示しないトルクマップ等により、アクセルダイヤル31の各ダイヤル値Aに応じて予め設定されている。この場合、総ポンプトルクTTは、アクセルダイヤル値Aが最大値のとき(本実施の形態ではアクセルダイヤル値A「10」のとき)に最大となり、アクセルダイヤル値Aが低くなるに従い総ポンプトルクTTも小さくなるように設定されるが、上記総ポンプトルクTTの最大値、つまりエンジンからメインポンプ14、15および旋回ポンプ16に供給可能なトルクの最大値は、最大総ポンプトルクTT−Ma(N・m)としてトルク制御部35に入力される一方、各アクセルダイヤル値Aに対応する総ポンプトルクTTは、上記最大総ポンプトルクTT−Ma(N・m)を100%としたときの比率(%)で表され、総ポンプトルクTT(%)としてトルク制御部35に入力される。
【0019】
前記トルク制御部35は、まず、入力した旋回操作信号を第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43に出力する。これら第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43は、旋回用操作レバーの操作量と旋回ポンプトルクTS(%)との関係を設定したテーブルであって、これら第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43によって、アクセルダイヤル値A別および前記作業判断部34から出力される旋回押付け作業ON/OFF信号別に、レバー操作量に対応する旋回ポンプトルクTS(%)が求められるが、この場合の旋回ポンプトルクTS(%)は、前記最大総ポンプトルクTT−Ma(N・m)を100%としたときの、エンジンから旋回ポンプ16に供給されるトルクの比率(%)である。
【0020】
そして、アクセルダイヤル値Aが低く(本実施の形態では、アクセルダイヤル値「1」〜「3」の場合)、且つ、旋回押付け作業OFFの場合には、第一旋回トルクテーブル40によって求められた旋回ポンプトルクTS(%)が選択されて、トルクレイトリミッター44に入力される。また、アクセルダイヤル値Aが低く、且つ、旋回押付け作業ONの場合には、第二旋回トルクテーブル41によって求められた旋回ポンプトルクTS(%)が選択されて、トルクレイトリミッター44に入力される。さらに、アクセルダイヤル値Aが高く(本実施の形態では、アクセルダイヤル値「4」〜「10」の場合)、且つ、旋回押付け作業OFFの場合には、第三旋回トルクテーブル42によって求められた旋回ポンプトルクTS(%)が選択されて、トルクレイトリミッター44に入力される。さらにまた、アクセルダイヤル値Aが高く、且つ、旋回押付け作業ONの場合には、第四旋回トルクテーブル43によって求められた旋回ポンプトルクTS(%)が選択されて、トルクレイトリミッター44に入力される。
【0021】
ここで、前記第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43において、旋回ポンプトルクTS(%)は、共に、旋回用操作レバーが操作されていないときは0%で、レバー操作量の増減に応じて略比例的に増減するように設定されているが、同じレバー操作量であっても、各旋回トルクテーブル40〜43毎に旋回ポンプトルクTS(%)が異なるように設定されている。つまり、前述したように、第一、第二旋回トルクテーブル40、41はアクセルダイヤル値Aが低い場合に選択される一方、第三、第四旋回トルクテーブル42、43はアクセルダイヤル値Aが高い場合に選択されるが、該第三、第四旋回トルクテーブル42、43の旋回ポンプトルクTS(%)の値は、それぞれ第一、第二旋回トルクテーブル40、41の旋回ポンプトルクTS(%)の値よりも大きく設定されている。これにより、アクセルダイヤル値Aに応じて、旋回ポンプトルクTS(%)が増減するように制御される。また、第一、第三旋回トルクテーブル40、42は旋回押付け作業OFFの場合に選択される一方、第二、第四旋回トルクテーブル41、43は旋回押付け作業ONの場合に選択されるが、該第二、第四旋回トルクテーブル41、43の旋回ポンプトルクTS(%)の値は、それぞれ第一、第三旋回トルクテーブル40、42の旋回ポンプトルクTS(%)の値よりも小さく設定されている。これにより、旋回押付け作業ONの場合には、旋回押付け作業OFFの場合よりも旋回ポンプトルクTS(%)が低減するように制御され、これによって、旋回押付け作業が行われている場合に、旋回押付け作業が行われていない場合よりも旋回ポンプトルクTS(%)を低減せしめる旋回トルク低減制御が実行されるようになっている。
尚、本実施の形態では、第一、第二、第三、第四旋回トルクテーブル40、41、42、43におけるレバー操作量が最大のときの旋回ポンプトルクTS(%)は、それぞれ20%、10%、50%、40%に設定されているが、こられの値は一例を示すものであって、油圧ショベル1の機種やエンジン、旋回ポンプ16の特性等に応じて適宜設定できる。
【0022】
さらに、前記トルクレイトリミッター44は、入力された旋回ポンプトルクTS(%)の変化速度を制限して、乗算器45および減算器46に出力する。
【0023】
前記乗算器45は、トルクレイトリミッター44から出力された旋回ポンプトルクTS(%)に、最大総ポンプトルクTT−Ma(N・m)を乗じることで、旋回ポンプトルクTSをトルクの単位(N・m)に換算する。そして、該換算された旋回ポンプトルクTS(N・m)の値は、旋回ポンプ用レギュレータ22に対する制御信号値に変換されて、旋回ポンプ用レギュレータ22に出力される。
【0024】
一方、前記減算器46は、総ポンプトルクTT(%)から旋回ポンプトルクTS(%)を減ずることで、エンジンからメインポンプ14、15に供給されるメインポンプトルクTM(%)を求める。そして、該メインポンプトルクTM(%)の値は、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁21に対する制御信号値に変換されて、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁21に出力される。
尚、前記メインポンプトルクTM(%)は、最大総ポンプトルクTT−Ma(N・m)を100%としたときの、エンジンからメインポンプ14、15に供給されるトルクの比率(%)として表される。
また、本実施の形態では、旋回ポンプトルクTSはトルクの単位(N・m)に換算される一方、旋回ポンプトルクTSは比率(%)のままでトルクの単位(N・m)に換算されないが、これは、旋回ポンプ用レギュレータ22、メインポンプ制御用電磁比例減圧弁21に対する制御信号値に変換する場合に使用するソフトに対応させたものである。
【0025】
叙述の如く構成された本形態において、メインポンプ14、15および旋回ポンプ16は、制御装置20からの制御信号に基づいて、エンジンから供給されるトルクに対応するポンプ出力となるように流量制御されることになるが、上記制御装置20には、油圧ショベル1の行う作業が旋回力を押付け力として用いる旋回押付け作業であるか否かを判断する作業判断部34と、エンジンからメインポンプ14、15および旋回ポンプ16に供給されるトルクを制御するトルク制御部35とが設けられていると共に、該トルク制御部35は、作業判断部34により旋回押付け作業が行われていると判断された場合には、旋回押付け作業以外の旋回を伴う作業の場合よりも、旋回ポンプ16に供給されるトルク(旋回ポンプトルクTS)を低減せしめる旋回トルク低減制御を行うことになる。
【0026】
この結果、旋回ポンプ16は、旋回押付け作業時には前記低減されたトルクに対応するポンプ出力となるように流量が低減することになり、而して、油圧モータ10が殆ど油量を必要としない旋回押付け作業を行う場合に、旋回リリーフ弁29、30からのリリーフロスを減少せしめることができることになって、無駄なエネルギー消費を抑えることができ、低燃費化に大きく貢献できる。
【0027】
さらに、旋回ポンプ16に供給されるトルクは、旋回用操作レバーの操作量に応じて増減するように制御されるから、レバー操作量に応じたトルクが旋回ポンプ16に供給されることになり、而して、旋回用操作レバーの操作に基づいて旋回モータ10への供給流量を制御する旋回用コントロールバルブ25に対して過不足無く旋回ポンプ16の圧油を供給できることになって、回路の安定性、操作性の向上に寄与できる。
【0028】
また、旋回ポンプ16に供給されるトルクは、無負荷時エンジン回転数を設定するアクセルダイヤル31のダイヤル値Aに応じて増減するように制御されるから、オペレータが設定したアクセルダイヤル値Aに応じた適切なトルクを、旋回ポンプ16に供給することができる。
【0029】
一方、メインポンプ14、15には、アクセルダイヤル値Aに応じて設定されるエンジンからメインポンプ14、15および専用ポンプ16に供給可能なトルクの総計(総ポンプトルクTT)から、専用ポンプ16に供給されるトルク(旋回ポンプトルクTS)を減じたトルクが供給されることになるから、エンジンからの供給トルクを、メインポンプ14、15および専用ポンプ16に無駄無く有効に分配できることになって、作業効率の向上に寄与できる。
【0030】
さらにこのものにおいて、トルク制御部35には、アクセルダイヤル値A別および作業部旋回押付け作業ON/OFF信号別に、旋回用操作レバーの操作量と旋回ポンプトルクTSとの関係を設定した第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43が設けられていて、これら第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43によって旋回ポンプ16に供給される旋回ポンプトルクTSを簡単に求めることができるが、さらに、これら旋回トルクテーブル40〜43の値を調整することで、油圧ショベル1の機種や搭載されるエンジン、旋回ポンプ16の特性等が変更しても、これら変更に簡単に対応することができる。尚、本実施の形態では、第一〜第四の四つの旋回トルクテーブル40〜43が設定されているが、例えばアクセルダイヤル値Aによる分別をより細かくすることで、より多くの旋回トルクテーブルを設けることも、勿論できる。
【0031】
しかも、前記第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43において、旋回ポンプトルクTSの値は、最大総ポンプトルクTT−Maに対する比率で求められるが、該最大総ポンプトルクTT−Maは、エンジンからメインポンプ14、15および旋回ポンプ16に供給可能なトルクの最大値として予め設定される固定の値であるから、旋回ポンプ16に供給されるトルクの値が安定し、もって、安定した旋回作動を行うことができる。
【0032】
さらに、前記第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43で求められた旋回ポンプトルクTSの値は、トルクレイトリミッター44によって変化速度が制限される構成になっているから、オペレータが旋回用操作レバーを急操作しても旋回ポンプ16に供給されるトルクが急激に変化することなく、而して、旋回ポンプ16の吐出流量が急激に増減して回路が不安定になってしまう不具合を回避できる。
【0033】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、上記実施の形態では、旋回ポンプトルクTS(%)を求めるにあたり、旋回用操作レバーの操作量と旋回ポンプトルクTS(%)との関係を設定した第一〜第四旋回トルクテーブル40〜43を用いているが、この様に旋回ポンプトルクTS(%)を求めるためのテーブルとして、旋回要求容量と旋回トルク供給割合TS(%)との関係を設定したテーブルを用いることもできる。この場合の旋回要求容量は、旋回用操作レバーの操作量に応じて要求される旋回ポンプ16のポンプ容量であって、図示しないゲインテーブル等によって、旋回用操作レバーの操作量の増減に対応して旋回要求容量DRも増減するように設定されている。
さらに、油圧ショベルの行う作業が旋回力を押付け力として用いる旋回押付け作業であるか否かを判断するにあたり、図6に示す第二の実施の形態の作業判断手段の如く、旋回ポンプ16の吐出圧に基づいて判断するように構成することもできる。つまり、第二の実施の形態の作業判断手段には、前述した実施の形態と同様のスティック操作判断テーブル36が設けられていると共に、旋回ポンプ16の吐出圧Pが入力されるポンプ吐出圧判断テーブル47が設けられている。そして、該ポンプ吐出圧判断テーブル47によって、旋回ポンプ吐出圧Pが予め設定される設定圧PSより高圧であると判断された場合には、アンドゲート48にON信号が出力され、また、設定圧PS未満と判断された場合にはOFF信号が出力される。そして、アンドゲート48にスティック操作判断テーブル36およびポンプ吐出圧判断テーブル47の両方からON信号が入力された場合には、旋回押付け作業が行われていると判断して、旋回押付け作業ON信号を出力する。一方、アンドゲート48にスティック操作判断テーブル36或いはポンプ吐出圧判断テーブル47の少なくとも一方からOFF信号が入力された場合には、旋回押付け作業が行われていないと判断して、旋回押付け作業OFF信号を出力するように構成されている。そして、この様に旋回ポンプ16の吐出圧に基づいて判断するように構成しても、旋回押付け作業が行われているか否かを的確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】油圧ショベルの油圧回路図である。
【図3】制御装置の入出力を示すブロック図である。
【図4】作業判断部の制御手順を示すブロック図である。
【図5】トルク制御部の制御手順を示すブロック図である。
【図6】第二の実施の形態における作業判断手段の制御手順を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
10 旋回モータ
14、15 メインポンプ
16 旋回ポンプ
31 アクセルダイヤル
34 作業判断部
35 トルク制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回モータの油圧供給源となる旋回ポンプを、作業装置用油圧アクチュエータや走行モータの油圧供給源となるメインポンプとは独立して設けてなる油圧ショベルにおいて、エンジンから前記旋回ポンプおよびメインポンプに供給されるトルクを制御するトルク制御手段と、油圧ショベルの行う作業が旋回力を押付け力として用いる旋回押付け作業であるか否かを判断する作業判断手段とを設けると共に、前記トルク制御手段は、作業判断手段により旋回押付け作業である判断された場合に、旋回押付け作業以外の旋回を伴う作業の場合よりも旋回ポンプのトルクを低減せしめる旋回トルク低減制御を行うことを特徴とする油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システム。
【請求項2】
トルク制御手段は、旋回用操作レバーの操作量に応じて旋回ポンプのトルクを増減制御することを特徴とする請求項1に記載の油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システム。
【請求項3】
油圧ショベルは、無負荷時エンジン回転数を設定するエンジン回転数設定操作具を備えると共に、トルク制御手段は、該エンジン回転数設定操作具の設定値に応じて旋回ポンプのトルクを増減制御することを特徴とする請求項1または2に記載の油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システム。
【請求項4】
トルク制御手段は、作業判断手段による旋回押付け作業であるか否かの判断別に、旋回ポンプのトルクが設定された複数の旋回トルクテーブルを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の油圧ショベルにおける旋回ポンプの制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−84832(P2009−84832A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253947(P2007−253947)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】