説明

油圧作業機

【課題】現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態なのかどうかを、オペレータがランプ表示部を見て直ちに知ることができる。
【解決手段】現実に実施されている作業に係るエンジントルクを求めるエンジントルク演算部35aと、このエンジントルク演算部35aで求められたエンジントルクとエンジンコントロールダイヤル19から出力されるエンジン目標回転数とに基づいて、負荷体33を駆動して現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であるかどうかを判断する燃費効率判断部35bとを有し、この燃費効率判断部35bにおける判断結果をモニタ21のランプ表示部21aに表示させる処理を行なうメインコントローラ35を備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃費効率に関する情報を表示可能な表示部を備えた油圧ショベル等の油圧作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、エンジンと、このエンジンの目標回転数を指令する回転センサ、すなわち目標回転数指令手段と、エンジンによって駆動される可変容量油圧ポンプとを備えている。なお、この特許文献1には示されていないが、この種の建設機械すなわち油圧作業機には、可変容量油圧ポンプから吐出される圧油の最大圧を規定するメインリリーフ弁が備えられている。また、この特許文献1に示される従来技術は、可変容量油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータによって駆動されるブーム、アーム等を備えた作業機すなわち作業装置、及び旋回体等を含む負荷体とを備えている。さらに、この従来技術は、旋回体内に設けられた運転室内に、燃費効率に関する情報を表示可能なモニタ装置、すなわち表示部を備えている。この表示部には、燃費効率を向上させる操作が文章、メッセージで表示されるようになっている。
【0003】
なお、本発明が対象とする油圧作業機とは異なるが、特許文献2に、自動車にあってランプの点灯によって燃費効率を良好にする運転状態とするようにアドバイス表示させるようにした発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−98073号公報
【特許文献2】特開2008−88844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2に示される従来技術は、エンジンの駆動状態で燃費効率をみるようにしてあるが、本発明が対象としているような油圧作業機にあっては、燃費効率を計る要素として、直接に燃費効率に影響を与えるエンジンの駆動状態とともに、間接的に燃費効率に影響を与える作業装置を含む負荷体の操作状態が存在するものであり、したがって油圧作業機にこの特許文献2に示される従来技術、すなわち自動車におけるようなエンジンの駆動状態のみによって燃費効率をみるような考え方を採用することは基本的にできない。
【0006】
また、上述した特許文献1に示される従来技術は、表示部において燃費効率を向上させる操作を文章、メッセージで表示するだけのものであり、現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であるのかどうかを、直ちにオペレータが知ることはできない問題がある。
【0007】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態なのかどうかを、オペレータが直ちに知ることができる油圧作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る油圧作業機は、エンジンと、このエンジンの目標回転数を指令する目標回転数指令手段と、上記エンジンによって駆動される可変容量油圧ポンプと、この可変容量油圧ポンプから吐出される圧油の最大圧を規定するメインリリーフ弁と、上記可変容量油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータによって駆動される作業装置を含む負荷体とを備えるとともに、燃費効率に関する情報を表示可能な表示部を備えた油圧作業機において、現実に実施されている作業に係るエンジントルクを求めるエンジントルク演算部と、このエンジントルク演算部で求められたエンジントルクと上記目標回転数指令手段から出力されるエンジン目標回転数とに基づいて、上記負荷体を駆動して現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であるかどうかを判断する燃費効率判断部とを有し、この燃費効率判断部における判断結果を上記表示部に表示させる処理を行なう制御装置を備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明に係る油圧作業機は、制御装置の燃費効率判断部が、エンジントルク演算部で求められる現実に実施されている作業に係るエンジントルクと、目標回転数指令手段から出力される現実に実施されている作業に係るエンジン目標回転数とに基づいて、現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であるかどうかを判断するものであり、オペレータは表示部の表示を見ることによって、現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良いものであるのか、悪いものであるのかを一目で確認することができる。すなわち、本発明は、制御装置がエンジントルク演算部と燃費効率判断部とを有するとともに、燃費効率判断部における判断結果を表示させる表示部を備えたことから、エンジンの駆動状態と、作業装置を含む負荷体の操作状態の両要素を含む現実に実施されている作業に係る運転状態が、燃費効率の良い運転状態なのかどうかを、オペレータは直ちに知ることができる。
【0010】
また、本発明に係る油圧作業機は、上記発明において、上記負荷体の動作を検出する動作検出手段を備えるとともに、上記制御装置が、上記動作検出手段の検出結果に基づいて、上記負荷体の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作かどうか判断する動作判断部を含み、上記制御装置は、上記動作判断部で上記負荷体の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作であると判断されたとき、燃費効率の良い運転状態と見做し得ることを上記表示部に表示させる処理を行なうことを特徴としている。このように構成した本発明は、燃費効率に悪影響を及ぼさない負荷体の動作による作業に際しては、オペレータに燃費運転の意識付けを求めないようにすることができる。
【0011】
また、本発明に係る油圧作業機は、上記発明において、上記メインリリーフ弁の作動を検出する作動検出手段を備えるとともに、上記制御装置が、上記作動検出手段の検出結果に基づいて、上記メインリリーフ弁が作動したかどうか判断するリリーフ作動判断部を含み、上記制御装置は、上記リリーフ作動判断部で上記メインリリーフ弁が作動したと判断されたとき、燃費効率の良い運転状態ではないと見做し得ることを上記表示部に表示させる処理を行なうことを特徴としている。このように構成した本発明は、メインリリーフ弁の作動時には、それまで燃費効率の良い運転状態で作業が行なわれていたとしても、オペレータに燃費運転の意識付けを求めるようにすることができる。
【0012】
また、本発明に係る油圧作業機は、上記発明において、上記油圧アクチュエータがストロークエンドに達したことを検出するストローク検出手段を備えるとともに、上記制御装置が、上記ストローク検出手段の検出結果に基づいて、上記油圧アクチュエータがストロークエンドに達したかどうか判断するストロークエンド判断部を含み、上記制御装置は、上記ストロークエンド判断部で上記油圧アクチュエータがストロークエンドに達したと判断されたとき、燃費効率の良い運転状態ではないと見做し得ることを上記表示部に表示させる処理を行なうことを特徴としている。このように構成した本発明は、油圧アクチュエータがストロークエンドに達したときには、それまで燃費効率の良い運転状態で作業が行なわれていたとしても、オペレータに燃費運転の意識付けを求めるようにすることができる。
【0013】
また、本発明に係る油圧作業機は、上記発明において、上記目標回転数指令手段が配置される運転室と、この運転室内に設置されるモニタとを備えるとともに、上記表示部が、上記モニタに設けられたランプ表示部から成ることを特徴としている。このように構成した本発明は、例えば、燃費効率の良い運転状態のときにはランプ表示部を点灯表示させ、燃費効率の悪い運転状態のときにはランプ表示部を消灯させるようにすることができる。すなわち、オペレータはモニタのランプ表示部の点灯、消灯の状態を見ることによって、現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であるのか、悪い運転状態であるのかを直ちに知ることができる。したがって、ランプ表示部が消灯状態にあるときには、オペレータに燃費運転の意識付けを求めるようにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、現実に実施されている作業に係るエンジントルクを求めるエンジントルク演算部と、このエンジントルク演算部で求められたエンジントルクと目標回転数指令手段から出力されるエンジン目標回転数とに基づいて、負荷体を駆動して現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であるかどうかを判断する燃費効率判断部とを有し、この燃費効率判断部における判断結果を表示部に表示させる処理を行なう制御装置を備えたことから、エンジンの駆動状態と、作業装置を含む負荷体の操作状態の両要素を含む現実に実施されている作業に係る運転状態が、燃費効率の良い運転状態なのかどうかを、オペレータは表示部の表示を見て直ちに知ることができる。したがって、従来に比べてオペレータに対する燃費運転の意識付けを強く行なうことができ、省エネの実現に大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る油圧作業機の一実施形態である油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る油圧ショベルに備えられる運転室の内部を示す平面図である。
【図3】図2に示す運転室内に備えられるスイッチボックスを拡大して示す図である。
【図4】本実施形態に係る油圧ショベルに備えられるエンジン・油圧制御系統を示すブロック図である。
【図5】本実施形態に係る油圧ショベルで得られるエンジンコントロールダイヤルの切換位置とエンジンの回転数の関係を示す特性図である。
【図6】本実施形態に係る油圧ショベルに備えられる制御装置で設定される燃費効率の良い領域Rを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る油圧作業機の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0017】
本発明に係る油圧作業機の一実施形態は、例えば油圧ショベルから成っている。この油圧ショベルは、図1に示すように、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられる作業装置3とを備えている。作業装置3は、旋回体2に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に取り付けられるバケット6と、ブーム4を作動させるブームシリンダ7、アーム5を作動させるアームシリンダ8、及びバケット6を作動させるバケットシリンダ9とを備えている。
【0018】
上述した旋回体2上には、前側位置に運転室10を配置してあり、後側位置に重量バランスを確保するカウンタウエイト11を配置してあり、運転室10とカウンタウエイト11との間に、後述するすなわちエンジンや、可変容量油圧ポンプ等が収納されるエンジン室12を配置してある。
【0019】
図2に示すように、運転室10内には、オペレータが座る運転席13を配置してあり、この運転室13の前側位置には、走行体1を走行させる図示しない左右一対のモータのうちの右走行モータを操作する右走行レバー14及び右走行ペダル14aと、左走行モータを操作する左走行レバー15及び左走行ペダル15aとを配置してある。運転席13の右側位置には、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9を操作する操作装置16を配置してあり、運転席13の左側位置には、アームシリンダ8及び旋回体2を旋回させる図示しない旋回モータを操作する操作装置17を配置してある。また、運転席13の右前方位置には、この油圧ショベルに係る駆動情報等を含む各種の表示が可能なモニタ21を配置してある。
【0020】
また、運転席13の右側に位置する操作装置16付近には、スイッチボックス18を配置してある。このスイッチボックス18は、図3に示すように、後述のエンジンの基準目標回転数NMを指令する回転数指令手段、例えばエンジンコントロールダイヤル19と、作業モードスイッチ20とを設けてある。作業モードスイッチ20は、重負荷作業時のモードに対応しエンジンの目標回転数を、図5の回転数特性N1で示すように最大トルク目標回転数に維持するハイパワーモード切換位置20aと、通常作業時のモードに対応しエンジンの目標回転数を、図5の回転数特性N2に示すように最大トルク目標回転数よりも少し低い目標回転数に維持する通常モード切換位置20bと、燃費を向上させるエコモードに対応しエンジンの目標回転数を、図5の回転数特性N3で示すようにハイパワーモード時、通常モード時の基準目標回転数NMに比べて低い所定の低目標回転数NSに維持するエコモード切換位置20cとが設定されている。
【0021】
図4に示すように、本実施形態に係る油圧ショベルは、エンジン室12に配置されるエンジン30と、このエンジン30の回転数を制御するエンジンコントローラ36と、エンジン30によって駆動される可変容量油圧ポンプ31と、この可変容量油圧ポンプ31から吐出された圧油の最大圧を規定するメインリリーフ弁45と、可変容量油圧ポンプ31の押しのけ容積、すなわち傾転角を制御するレギュレータ31aとを備えている。また、作業装置3、旋回体2、あるいは走行体1等の負荷体33を作動させる前述したブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行モータ、旋回モータ等の油圧アクチュエータ32と、可変容量油圧ポンプ31から油圧アクチュエータ32のそれぞれに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブ34とを備えている。なお、前述した操作装置16,17等は操作装置37として示してある。
【0022】
また、本実施形態に係る油圧ショベルは、例えば操作装置37の操作量を検出する操作量検出手段と負荷体33の動作を検出する動作検出手段とを兼ねる圧力センサ50と、メインリリーフ弁45の作動を検出する作動検出手段、すなわち作動検出センサ51と、油圧アクチュエータ32がストロークエンドに達したことを検出するストローク検出手段、すなわちストロークセンサ52とを備えている。
【0023】
また、上述したエンジンコントロールダイヤル19、作業モードスイッチ20、圧力センサ50、作動検出センサ51、及びストロークセンサ52のそれぞれから出力される信号を入力し、所定の処理を行なった後に該当する信号をエンジンコントローラ36、レギュレータ31a、及びモニタ21へ出力する制御装置、すなわちメインコントローラ35を備えている。
【0024】
このメインコントローラ35は、図4に示すように、例えば圧力センサ50で検出される操作装置37の操作量に基づいて求められるポンプトルクに対応する現実に実施されている作業に係るエンジントルクを求めるエンジントルク演算部35aと、このエンジントルク演算部35aで求められたエンジントルクとエンジンコントロールダイヤル19から出力されるエンジン目標回転数とに基づいて、負荷体33を駆動して現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であるかどうかを判断する燃費効率判断部35bとを有している。
【0025】
燃費効率判断部35bには、図6に示す燃費効率の良い領域Rが設定されている。この燃費効率の良い領域Rは、エンジン目標回転数とエンジントルクとの関係から経験的に求められるものである。同図6中、NMは、作業モードスイッチ20がハイパワーモード切換位置20aあるいは通常作業モード切換位置20bに切り換えられたときの基準目標回転数であり、NSは、作業モードスイッチ20がエコモード切換位置20cに切り換えられたときの所定の低回転数を示している。また、同図6中、40はエンジン馬力線図を示している。
【0026】
例えば、作業モードスイッチ20がエコモード切換位置20cに切り換えられていない状態で、ブーム4、アーム5、バケット6を含む作業装置3、すなわち負荷体33を駆動して、地面のならし作業等の軽作業を実施した場合は、現実に実施されている作業に係る運転状態が、エンジントルクとエンジン目標回転数との関係から燃費効率の良い領域Rに含まれない軽作業領域S1内に存在する状態と判断されることがある。すなわち、現実に実施されている作業に係る運転状態が、燃費効率の良い運転状態ではないと判断されることがある。このような場合に、作業モードスイッチ20をエコモード切換位置20cに切り換えると、エンジン目標回転数が同図6に示す所定の低回転数NSまで自動的に下げられ、現実に実施されている作業に係る運転状態は、燃費効率の良い領域Rに含まれる軽作業領域S2に移行する。したがって、このような状態となったときには燃費効率判断部35bで、現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であると判断されることになる。
【0027】
また、例えば、作業モードスイッチ20がハイパワーモード切換位置20aに切り換えられている状態で、作業装置3を含む負荷体33の駆動によって土石等の重掘削作業が実施されている場合には、現実に実施されている作業に係る運転状態は、エンジントルクとエンジン目標回転数との関係から、燃費効率の良い領域Rに含まれる重掘削領域S3内に存在すると判断される。すなわち、燃費効率判断部35bで、現実に実施されている作業に係る運転状態は、燃費効率の良い運転状態であると判断される。なお、同図6中、S3aはリリーフ領域を示している。
【0028】
また、図示しないが本実施形態に係る油圧ショベルに備えられるメインコントローラ35は、例えば圧力センサ50の検出結果すなわち検出値に基づいて、負荷体33の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作かどうか判断する動作判断部を含んでいる。ここで、燃費効率に悪影響を及ぼさない動作とは、例えばブーム4を自由落下させるブーム下げ動作とか、旋回体2を停止させる際の旋回体2の減速動作などが該当する。
【0029】
また、図示しないがメインコントローラ35は、作動検出センサ51の検出結果に基づいて、メインリリーフ弁45が作動したかどうか判断するリリーフ作動判断部と、ストローク検出手段の検出結果に基づいて、油圧アクチュエータ32がストロークエンドに達したかどうか判断するストロークエンド判断部を含んでいる。
【0030】
また、本実施形態に係る油圧ショベルは、モニタ21に燃費効率に関する情報を表示可能な表示部、例えばランプ表示部21aを設けてある。上述したメインコントローラ35は、燃費効率判断部35bにおける判断結果をランプ表示部21aに表示させる処理を行なう。この場合、例えば燃費効率判断部35bにおける判断で、負荷体33を駆動して現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であると判断されたときには、メインコントローラ35はランプ表示部21aを点灯させる処理を行ない、燃費効率の良い運転状態ではないと判断されたときには、メインコントローラ35はランプ表示部21aを消灯させる処理を行なう。
【0031】
また、メインコントローラ35の上述した図示しない動作判断部で、負荷体33の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作であると判断されたときには、燃費効率の良い運転状態と見做し得ることをモニタ21の表示ランプ21aに表示させるために、メインコントローラ35はランプ表示部21aを点灯させる処理を行なう。
【0032】
また、メインコントローラ35の上述した図示しないリリーフ作動判断部でメインリリーフ弁45が作動したと判断されたとき、及びメインコントローラ35の上述した図示しないストロークエンド判断部で油圧アクチュエータ32がストロークエンドに達したと判断されたときには、燃費効率の良い運転状態ではないと見做し得ることをモニタ21の表示ランプ21aに表示させるために、メインコントローラ35はランプ表示部21aを消灯させる処理を行なう。
【0033】
このように構成した本実施形態に係る油圧ショベルは、メインコントローラ35の燃費効率判断部35bが、エンジントルク演算部35aで求められる現実に実施されている作業に係るエンジントルクと、エンジンコントロールダイヤル19から出力される現実に実施されている作業に係るエンジン目標回転数とに基づいて、現実に実施されている作業に係る運転状態が、図6の燃費効率の良い領域Rに含まれる運転状態であるかどうかを判断するものであり、オペレータはモニタ21のランプ表示部21aの点灯、消灯の状態を見ることによって、現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良いものであるか、悪いものであるかを一目で確認することができる。
【0034】
この場合、モニタ21のランプ表示部21aが点灯していれば、その点灯状態を見てオペレータは、現実に実施されている作業に係る運転状態は燃費効率が良い運転状態であると確認でき、また、ランプ表示部21aが消灯していれば、その消灯状態を見てオペレータは、現実に実施されている作業に係る運転状態は燃費効率が良くない運転状態であると確認でき、燃費効率を良くする運転状態とするように促される。すなわち、本実施形態は、メインコントローラ35がエンジントルク演算部35aと燃費効率判断部35bとを有するとともに、モニタ21に燃費効率判断部35bにおける判断結果を表示させるランプ表示部21aを備えたことから、エンジン30の駆動状態と、作業装置3を含む負荷体33の操作状態の両要素を含む現実に実施されている作業に係る運転状態が、燃費効率の良い運転状態なのかどうかを、オペレータはランプ表示部21aを見て直ちに知ることができる。したがって、オペレータに対する燃費運転の意識付けを強く行なうことができ、省エネの実現に大きく貢献する。
【0035】
また、本実施形態はメインコントローラ35が、負荷体33の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作、例えばブーム下げ、アームクラウド、旋回減速時のように慣性体であるブーム4、アーム5が自重により下がる方向の動作であるかどうか、または旋回減速時のように慣性体である旋回中の旋回体2を減速させる方向の動作であるかどうかを判断する図示しない動作判断部を含み、この動作判断部で負荷体33の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作であると判断されたときには、燃費効率の良い運転状態と見做し得ることを表示するために、ランプ表示部21aを点灯させる処理を行なうことから、このように燃費効率に悪影響を及ぼさない負荷体33の動作による作業に際しては、オペレータに燃費運転の意識付けを求めないようにすることができる。また、メインコントローラ35の燃費効率判断部35bで、燃費効率の良い図6の重掘削作業領域S3で作業が行なわれていると判断されているときに、軽負荷の作業が入って一時的に燃費の悪い軽作業領域S1に存在すると判断されることがあっても、メインコントローラ35の動作判断部によって上述したように、負荷体33の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作が行なわれていると判断されているときには、ランプ表示部21を点灯し続ける処理が行なわれる。また逆に、メインコントローラ35の燃費効率判断部35bで、燃費の悪い軽作業領域S1で作業が行なわれていると判断されているときに、高負荷になって一時的に燃費の良い重掘削作業領域S3に入ったと判断されることがあっても、その作業がリリーフやストロークエンドの場合には、ランプ表示部21を消灯し続ける処理が行なわれる。
【0036】
また、本実施形態はコントローラ35が、メインリリーフ弁45が作動したかどうか判断する図示しないリリーフ作動判断部を含み、このリリーフ作動判断部でメインリリーフ弁45が作動したと判断されたとき、すなわち現実に実施されている作業に係る運転状態が、図6のリリーフ領域S3aに含まれるものであると判断されたときには、燃費効率の良い運転状態ではないと見做し得ることを表示するために、ランプ表示部21aを消灯させる処理を行なうものである。したがって、メインリリーフ弁45の作動時には、それまで燃費効率の良い運転状態で作業が行なわれていたとしても、オペレータに燃費運転の意識付けを求めるようにすることができる。すなわち、オペレータはメインリリーフ弁45の作動を停止させる運転状態に戻す操作を行なうように促される。
【0037】
また、本実施形態はメインコントローラ35が、油圧アクチュエータ32がストロークエンドに達したときリリーフすることがある場合を考慮して、油圧アクチュエータ32がストロークエンドに達したかどうか判断する図示しないストロークエンド判断部を含んでおり、このストロークエンド判断部で油圧アクチュエータ32がストロークエンドに達したと判断されたときも、リリーフすることによって燃費効率の良い運転状態ではないと見做し得ることを表示するために、ランプ表示部21aを消灯させる処理を行なうものである。したがって、油圧アクチュエータ32がストロークエンドに達したときには、それまで燃費効率の良い運転状態で作業が行なわれていたとしても、オペレータに燃費運転の意識付けを求めるようにすることができる。すなわち、オペレータは該当する油圧アクチュエータ32に対応する操作装置37の操作量を適宜調整するように促される。
【符号の説明】
【0038】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
8 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
9 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
10 運転室
14 右走行レバー
15 左走行レバー
16 操作装置
17 操作装置
19 エンジンコントロールダイヤル(目標回転数指令手段)
21 モニタ
21a ランプ表示部(表示部)
30 エンジン
31 可変容量油圧ポンプ
31a レギュレータ
32 油圧アクチュエータ
33 負荷体
35 メインコントローラ(制御装置)
35a エンジントルク演算部
35b 燃費効率判断部
37 操作装置
40 エンジン馬力線図
45 メインリリーフ弁
50 圧力センサ(操作量検出手段)(動作検出手段)
51 作動検出センサ(作動検出手段)
52 ストロークセンサ(ストローク検出手段)
S1 軽作業領域
S2 軽作業領域
S3 重掘削作業領域
S3a リリーフ領域
R 燃費効率の良い領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンの目標回転数を指令する目標回転数指令手段と、上記エンジンによって駆動される可変容量油圧ポンプと、この可変容量油圧ポンプから吐出される圧油の最大圧を規定するメインリリーフ弁と、上記可変容量油圧ポンプから吐出される圧油によって作動する油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータによって駆動される作業装置を含む負荷体とを備えるとともに、燃費効率に関する情報を表示可能な表示部を備えた油圧作業機において、
現実に実施されている作業に係るエンジントルクを求めるエンジントルク演算部と、このエンジントルク演算部で求められたエンジントルクと上記目標回転数指令手段から出力されるエンジン目標回転数とに基づいて、上記負荷体を駆動して現実に実施されている作業に係る運転状態が燃費効率の良い運転状態であるかどうかを判断する燃費効率判断部とを有し、この燃費効率判断部における判断結果を上記表示部に表示させる処理を行なう制御装置を備えたことを特徴とする油圧作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧作業機において、
上記負荷体の動作を検出する動作検出手段を備えるとともに、
上記制御装置が、上記動作検出手段の検出結果に基づいて、上記負荷体の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作かどうか判断する動作判断部を含み、
上記制御装置は、上記動作判断部で上記負荷体の動作が燃費効率に悪影響を及ぼさない動作であると判断されたとき、燃費効率の良い運転状態と見做し得ることを上記表示部に表示させる処理を行なうことを特徴とする油圧作業機。
【請求項3】
請求項1に記載の油圧作業機において、
上記メインリリーフ弁の作動を検出する作動検出手段を備えるとともに、
上記制御装置が、上記作動検出手段の検出結果に基づいて、上記メインリリーフ弁が作動したかどうか判断するリリーフ作動判断部を含み、
上記制御装置は、上記リリーフ作動判断部で上記メインリリーフ弁が作動したと判断されたとき、燃費効率の良い運転状態ではないと見做し得ることを上記表示部に表示させる処理を行なうことを特徴とする油圧作業機。
【請求項4】
請求項1に記載の油圧作業機において、
上記油圧アクチュエータがストロークエンドに達したことを検出するストローク検出手段を備えるとともに、
上記制御装置が、上記ストローク検出手段の検出結果に基づいて、上記油圧アクチュエータがストロークエンドに達したかどうか判断するストロークエンド判断部を含み、
上記制御装置は、上記ストロークエンド判断部で上記油圧アクチュエータがストロークエンドに達したと判断されたとき、燃費効率の良い運転状態ではないと見做し得ることを上記表示部に表示させる処理を行なうことを特徴とする油圧作業機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の油圧作業機において、
上記目標回転数指令手段が配置される運転室と、この運転室内に設置されるモニタとを備えるとともに、
上記表示部が、上記モニタに設けられたランプ表示部から成ることを特徴とする油圧作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157751(P2011−157751A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21252(P2010−21252)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】