説明

油組成物

【課題】火災発生のリスクを著しく低減でき、リサイクル使用時や、貯蔵時に発泡を抑制することができ、潤滑性、乳化安定性に優れるエマルジョンタイプの油組成物を提供する。
【解決手段】本発明の油組成物は、鉱油及び/又は合成油からなる基油、ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤、及び水を配合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼付や摩耗を抑制する優れた潤滑性能を有し、水を含有するため難燃性であり、低泡性、安定な乳化特性を示す油組成物に関する。本発明に係る油組成物は、切削油、研削油、プレス油、圧延油、引き抜き油、押出し油、作動油などとして好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
金属やセラミック加工に使用される潤滑油には、鉱物油や合成油をベースオイルとした非水溶性タイプや、これに水を含有したエマルジョンタイプ、及び、水溶性ポリアルキレングリコール誘導体を水に希釈する水溶性タイプ等がある。近年、潤滑油による火災発生の危険性低減や、加工時の冷却効果、及び、加工後の洗浄性向上等を目的として、組成物中に水を含有する水溶性タイプやエマルジョンタイプが広く使用されている。
【0003】
しかしながら、水溶性ポリアルキレングリコール誘導体を水に希釈する水溶性タイプは、泡立ちが激しく、排水処理性が悪い等の問題が指摘されている。一方、エマルジョンタイプとしては、鉱物油及び水を、界面活性剤としてポリオキシエチレンモノアルキルエーテルなどの非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などを組み合わせて使用することにより乳化するものが知られているが(特許文献1、2参照)、安定した乳化作用を発揮することが困難であり、リサイクル使用時や、貯蔵時の乳化安定性、潤滑性、加工性能の低下、泡立ちなどの問題があった。
【0004】
その他のエマルジョンタイプとして、基油及び水を、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用して乳化する例も知られている(特許文献3)。しかしながら、基油として、より火災発生のリスクを低減することができるポリエーテル系合成油を用いる場合、満足できる乳化力を発揮することが困難であった。すなわち、基油としてポリエーテル系合成油を使用する場合にも安定した乳化作用を発揮できるエマルジョンタイプの油組成物であって、火災発生のリスクを著しく低減でき、リサイクル使用時や、貯蔵時に発泡を抑制することができ、潤滑性、乳化安定性に優れるエマルジョンタイプの油組成物が見出されていないのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平10−17886号公報
【特許文献2】特開平10−140176号公報
【特許文献3】特開2001−254092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、火災発生のリスクを著しく低減でき、リサイクル使用時や、貯蔵時に発泡を抑制することができ、潤滑性、乳化安定性に優れるエマルジョンタイプの油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、鉱油及び/又は合成油からなる基油に、ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤及び水を配合することにより得られるエマルジョンタイプの油組成物は、火災発生のリスクを著しく低減でき、リサイクル使用時や、貯蔵時に発泡を抑制することができ、潤滑性、乳化安定性に優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき、さらに研究を重ねて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、鉱油及び/又は合成油からなる基油、ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤、及び水を配合してなる油組成物を提供する。
【0009】
前記ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤は、グリセリンの平均量体数が1〜40であることが好ましく、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値が2〜20であることが好ましい。
【0010】
ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤としては、(A)ポリグリセリンアルキルエーテル、(B)ポリグリセリンアルケニルエーテル、(C)ポリグリセリンアルキルアリールエーテル、(D)ポリグリセリンソルビタン脂肪酸エステル、(E)ポリグリセリンソルビトール脂肪酸エステル、(F)ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤の配合量としては、組成物全量の0.01〜30重量%であることが好ましく、水の配合量としては、組成物全量の1重量%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る油組成物は、ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤を使用して乳化するため、安定した乳化作用を発揮することができ、リサイクル使用時や、貯蔵時に発泡を抑制することができ、潤滑性、乳化安定性に優れる。また、水を含有するエマルジョンタイプであるため、火災発生のリスクを低減することができる。本発明に係る油組成物は、切削油、研削油、プレス油、圧延油、引き抜き油、押出し油、作動油などとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤]
本発明に係るポリグリセリン系非イオン性界面活性剤には、エーテル型と酸エステル型とが含まれる。
【0014】
エーテル型ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤は、下記式(1)
RO−(C362)n−H (1)
(式中、Rは有機基を示し、nはグリセリンの平均量体数で、1〜40を示す)
で表される。
【0015】
式(1)の括弧内のC362は、下記式(2)及び(3)で示される両方の構造を有する。
−CH2−CHOH−CH2O− (2)
−CH(CH2OH)CH2O− (3)
【0016】
Rは、有機基を示し、例えば、炭化水素基、複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等のC1-6アルコキシ基など)、N,N−ジ置換アミノ基(N,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基など)など、及びこれらが2以上結合した基などが挙げられる。前記カルボキシル基などは有機合成の分野で公知乃至慣用の保護基で保護されていてもよい。これらの有機基のなかでも、炭化水素基、複素環式基などが好ましい。炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。
【0017】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、ウンデシル、ブチルオクチル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、イソミリスチル、ペンタデシル、セチル、イソセチル、ヘプタデシル、ヘキシルデシル、ステアリル、イソステアリル、ベヘニル、イソベヘニル、オクチルデシル、オクチルドデシル基などの直鎖状、又は分岐鎖状の炭素数1〜25(好ましくは10〜25、さらに好ましくは11〜22)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、ウンデセニル、トデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オレイル基などの炭素数2〜25(好ましくは10〜20)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜25(好ましくは10〜25)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0018】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜25員(好ましくは10〜25員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜25員(好ましくは10〜25員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。
【0019】
芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0020】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-20アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、n−ヘキシルフェニル、n−ヘプチルフェニル、n−オクチルフェニル、n−ノニルフェニル、n−デシルフェニル、n−ウンデシルフェニル、n−ドデシルフェニル、n−トリデシルフェニル、テトラデシルフェニル基などの、1〜4個程度のC1-20アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基、好ましくは、C6-14アルキル基が置換したフェニル基)などが含まれる。
【0021】
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0022】
複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキシラン環などの3員環、オキセタン環などの4員環、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
【0023】
本発明におけるエーテル型ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤としては、(A)ポリグリセリンアルキルエーテル、(B)ポリグリセリンアルケニルエーテル、(C)ポリグリセリンアルキルアリールエーテル、(D)ポリグリセリンソルビタン脂肪酸エステル、(E)ポリグリセリンソルビトール脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0024】
(A)ポリグリセリンアルキルエーテルとしては、Rがウンデシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、ヘプタデシル、ステアリル、ベヘニル基等の炭素数11〜25の直鎖アルキル基であるR−OHと、グリシドールを付加重合することにより得られるポリグリセリンアルキルエーテルであることが好ましく、なかでも、ポリグリセリンラウリルエーテル、ポリグリセリントリデシルエーテル、ポリグリセリンセチルエーテル、ポリグリセリンステアリルエーテル、ポリグリセリンベヘニルエーテルが好ましい。
【0025】
(B)ポリグリセリンアルケニルエーテルとしては、Rがウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オレイル基等の炭素数11〜25の直鎖アルケニル基であるR−OHと、グリシドールを付加重合することにより得られるポリグリセリンアルケニルエーテルであることが好ましく、なかでも、ポリグリセリンオレイルエーテルが好ましい。
【0026】
(C)ポリグリセリンアルキルアリールエーテルとしては、Rがn−ヘキシルフェニル、n−ヘプチルフェニル、n−オクチルフェニル、n−ノニルフェニル、n−デシルフェニル、n−ウンデシルフェニル、n−ドデシルフェニル、n−トリデシルフェニル、テトラデシルフェニル基等の炭素数12〜20のアルキルアリール基であるR−OHと、グリシドールを付加重合することにより得られるポリグリセリンアルキルアリールエーテルであることが好ましく、なかでも、ポリグリセリンオクチルフェニルエーテル、ポリグリセリンノニルフェニルエーテル、ポリグリセリンドデシルフェニルエーテルが好ましい。
【0027】
(D)ポリグリセリンソルビタン脂肪酸エステルとしては、3つのヒドロキシル基のうち1以上が脂肪酸とエステル結合したソルビタンとグリシドールが付加重合することにより得られるポリグリセリンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、脂肪酸としては、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、トリデセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エイコセン酸等の炭素数10〜20の脂肪酸などが挙げられる。本発明におけるポリグリセリンソルビタン脂肪酸エステルとしては、なかでも、ポリグリセリンソルビタンモノラウレート、ポリグリセリンソルビタンモノパルミテート、ポリグリセリンソルビタンモノステアレート、ポリグリセリンソルビタントリステアレート、ポリグリセリンソルビタンモノオレート、ポリグリセリンソルビタントリオレートが好ましい。
【0028】
(E)ポリグリセリンソルビトール脂肪酸エステルとしては、5つのヒドロキシル基のうち1以上が脂肪酸とエステル結合したソルビトールとグリシドールが付加重合することにより得られるポリグリセリンソルビトール脂肪酸エステルが好ましく、脂肪酸としては、上記脂肪酸の例と同様の例を挙げることができる。本発明におけるポリグリセリンソルビトール脂肪酸エステルとしては、なかでも、ポリグリセリンソルビトールモノラウレート、ポリグリセリンソルビトールモノパルミテート、ポリグリセリンソルビトールモノステアレート、ポリグリセリンソルビトールトリステアレート、ポリグリセリンソルビトールモノレート、ポリグリセリンソルビトールテトラオレートが好ましい。
【0029】
エステル型ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤は、下記式(4)
R’(C=O)−O−(C362)n−H (4)
(式中、R’は、炭化水素基を示し、nはグリセリンの平均量体数で、1〜40を示す)
で表される。式(4)の括弧内のC362は、上記式(2)及び(3)で示される両方の構造を有する。
【0030】
R’は炭化水素基を示し、炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。R’における炭化水素基としては、上記Rの例と同様の例を挙げることができる。
【0031】
本発明におけるエステル型ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤としては、(F)ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0032】
(F)ポリグリセリン脂肪酸エステルは、R’(C=O)−OHで表されるカルボン酸化合物と、グリシドールを付加重合することにより得られる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルには、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸ジエステルが含まれる。R’(C=O)−OHで表されるカルボン酸化合物には、炭素数10〜20の直鎖飽和又は直鎖不飽和脂肪酸が含まれる。直鎖不飽和脂肪酸の場合、含有する二重結合の位置は特に限定されることがない。脂肪酸としては、上記脂肪酸の例と同様の例を挙げることができる。本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンモノラウレート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノオレエートが好ましい。
【0033】
本発明におけるポリグリセリン系非イオン性界面活性剤としては、(A)ポリグリセリンアルキルエーテル、(B)ポリグリセリンアルケニルエーテル、(C)ポリグリセリンアルキルアリールエーテル、(D)ポリグリセリンソルビタン脂肪酸エステル、(E)ポリグリセリンソルビトール脂肪酸エステル、(F)ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択された1種、又は2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0034】
上記式(1)、及び式(4)中、nはグリセリンの平均量体数であり、1〜40(好ましくは、1〜20)を示す。グリセリンの平均量体数が40を上回ると、室温(25℃)で固体となり、基油に対する溶解性、絶縁性が低下し、吸湿性が高くなる傾向がある。
【0035】
また、本発明におけるポリグリセリン系非イオン性界面活性剤は、HLB値が2〜20であり、好ましくは、5〜18である。HLB値が2を下回ると、潤滑性が低下する傾向がある。一方、HLB値が20を上回ると、室温(25℃)で固体となり、基油に対する溶解性、絶縁性が低下し、吸湿性が高くなる傾向がある。
【0036】
ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤の配合量としては、油組成物全量の0.01〜30重量%程度、好ましくは、0.01〜15重量%程度である。ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤の配合量が、油組成物全量の0.01重量%を下回ると、潤滑性が低下し、基油に対する溶解性が低下する傾向がある。一方、ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤の配合量が、油組成物全量の30重量%を上回ると、不経済であるだけでなく、基油に対する溶解性が低下する場合がある。
【0037】
[基油]
本発明においては、基油として、鉱油及び/又は合成油を使用する。鉱油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、芳香族系鉱油、及びこれらの混合油等が挙げられる。合成油としては、例えば、分子中にエーテル基、エステル基、ケトン基、カーボネート基、ヒドロキシル基から選択された少なくとも1種の基を含有する含酸素有機化合物や、前記基と共にヘテロ原子(S、P、F、Cl、Si、N等)を含有する含酸素有機化合物が挙げられる。合成油としての含酸素有機化合物としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオールエステル、カーボネート誘導体、ポリエーテルケトン、フッ素化油などが挙げられる。本発明においては、これらを単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
本発明における基油としては、なかでも、火災発生のリスクをより低減することができる点で、ポリエーテル系合成油を好適に使用することができる。ポリエーテル系合成油としては、特に制限されることなく周知慣用のポリエーテル系合成油を使用することができ、例えば、ポリ(オキシエチレン)グリコールジメチルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)グリコールジメチルエーテル、ポリ(オキシプロピレン)グリコールエーテル、ポリ(オキシエチレン)グリコールエーテル等を挙げることができる。
【0039】
また、基油の100℃における動粘度としては、1〜100mm2/s(なかでも、2〜60mm2/s、特に、3〜40mm2/s)程度、分子量としては、200〜3000(好ましくは、700〜2000)であることが好ましく、基油の低温流動性の指標である流動点としては、−10℃以下であることが好ましい。
【0040】
[水]
本発明における水は、硬水、軟水の何れでもよく、例えば、工業用水、水道水、イオン交換水、蒸留水などが挙げられる。水の配合量としては、用途に応じて適宜調整することができ、例えば、油組成物全量の1重量%以上、好ましくは1〜50重量%程度、特に好ましくは、20〜40重量%程度である。
【0041】
本発明に係る油組成物には、鉱油及び/又は合成油からなる基油、ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤及び水以外にも、必要に応じて添加剤を適宜添加することができる。添加剤としては、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステルなどの極圧剤;フェノール系、アミン系の酸化防止剤;フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、エポキシ化合物(例えば、エポキシ化大豆油)などの安定剤;ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体などの銅不活性化剤;シリコーン油、フッ素シリコーン油などの消泡剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0043】
実施例1〜5、比較例1〜4
基油、及び、界面活性剤を表1に示される割合(重量比)で配合し、室温(25℃)にてホモミキサーを使用して5000rpmで均一に溶解又は分散するまで撹拌した。その後、25℃に調温した水を逐次添加して油組成物(エマルジョン組成物)を得た。得られた油組成物について、乳化安定性、泡立ち性、潤滑性について、下記方法により試験を行い評価した。
【0044】
[乳化安定性試験]
実施例及び比較例で得られた各油組成物について、100mL共栓付メスシリンダーに100mL入れ、25℃、75%RHの条件下で5日間放置した。その後、油組成物の状態を目視により観察し、下記基準に従って評価した。
評価基準
分離が全く生じていない:◎
分離量が全体の5%未満:○
分離量が全体の5〜10%:△
分離量が全体の10%を超える:×
【0045】
[泡立ち性試験]
実施例及び比較例で得られた各油組成物について、調製後30秒以内に100mL共栓付メスシリンダーに100mL入れ、泡が消えるまでの時間を計測し、下記基準に従って評価した。
評価基準
1分以内に消えた:◎
1分を超え、5分以内に消えた:○
5分を超え、10分以内に消えた:△
10分を超えても消えなかった:×
【0046】
[潤滑性試験]
四球試験機を使用し、JIS−2519に基づき下記条件の下、潤滑性試験を実施し、下記基準に従って評価した。
試験条件
荷重:0.098MPa(1.0kgf/cm2
回転数:750rpm
時間:30分
評価基準
摩耗痕径が0.6mmより小:○
摩耗痕径が0.6〜0.8mm:△
摩耗痕径が0.8mmより大:×
【0047】
【表1】

【0048】
[基油]
ポリオキシプロピレングリコールジメチルエーテル(動粘度:9.3mm2/s(100℃)、分子量:1150)
【0049】
[界面活性剤]
A:ポリグリセリンラウリルエーテル(グリセリンの平均量体数:4、HLB:12.0)
B:ポリグリセリンノニルフェニルエーテル(グリセリンの平均量体数:10、HLB:15.9)
C:ポリグリセリンラウリルエーテル(グリセリンの平均量体数:10、HLB:15.5)
D:ポリグリセリンソルビタンモノオレート(グリセリンの平均量体数:6、HLB:10.0)
E:ポリグリセリンソルビトールテトラオレート(グリセリンの平均量体数:6、HLB:10.5)
F:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(商品名「エマルゲン409P」(花王(株)製)、オキシエチレンの平均量体数:9、HLB:12.0)
G:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名「エマルゲン905」(花王(株)製)、オキシエチレンの平均量体数:5、HLB:8.2)
H:ポリオキシエチレンモノラウレート(商品名「エマノーン1112」(花王(株)製)、オキシエチレンの平均量体数:11、HLB:13.7)
I:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(商品名「レオドールTW−O106」(花王(株)製)、オキシエチレンの平均量体数:6、HLB:10.0)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油及び/又は合成油からなる基油、ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤、及び水を配合してなる油組成物。
【請求項2】
ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤のグリセリンの平均量体数が1〜40である請求項1に記載の油組成物。
【請求項3】
ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤のHLB値が2〜20である請求項1又は2に記載の油組成物。
【請求項4】
ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤が、(A)ポリグリセリンアルキルエーテル、(B)ポリグリセリンアルケニルエーテル、(C)ポリグリセリンアルキルアリールエーテル、(D)ポリグリセリンソルビタン脂肪酸エステル、(E)ポリグリセリンソルビトール脂肪酸エステル、(F)ポリグリセリン脂肪酸エステルから選択された少なくとも1種である請求項1〜3の何れかの項に記載の油組成物。
【請求項5】
ポリグリセリン系非イオン性界面活性剤の配合量が組成物全量の0.01〜30重量%である請求項1〜4の何れかの項に記載の油組成物。
【請求項6】
水の配合量が組成物全量の1重量%以上である請求項1〜5の何れかの項に記載の油組成物。

【公開番号】特開2010−6917(P2010−6917A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166689(P2008−166689)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】