説明

治具

【課題】 クランパや支持具を任意の箇所に取り付け可能であり多様なワーク形状に対応できるものであって、新規の設計・製造が最小限で済む治具を提供する。
【解決手段】 治具プレートと、調整プレートと、クランパと、支持具とを備え、治具プレートが格子状であって、格子枠と、格子枠の間に形成された空隙部からなり、調整プレートが一つの空隙部を覆うものであって治具プレートに着脱自在であり、クランパがアームを有しワークをクランプするものであり、支持具がワークを支持するものであり、治具プレート上のワーク、クランパおよび支持具が配置される範囲に調整プレートが取り付けられ、調整プレート上にワーク、クランパおよび支持具が載置され、クランパおよび支持具が載置された調整プレートには空隙部を通って下方から配管が接続されており、クランパおよび支持具が調整プレートに形成された接続路により配管と接続されて作動流体が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの加工や搬送の際にワークを固定するための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、治具プレートの上にワークをクランプするクランパやワークを支持する支持具を取り付けた治具がある。ここで支持具としては、基準片、ロケートピン、ナチュラルクランプ、リフタなど種々のものがある。そして、クランパや支持具のうち可動なものについては、外部配管や治具プレートの内部に形成されたマニホールドにより作動流体が供給される。こうした治具は、工作機械でワークを加工する際や、搬送機械でワークを搬送する際など、種々の場面で用いられている。
【0003】
ところで、こうした治具はワークの形状や大きさによりクランパや支持具の数や配置が異なり、外部配管やマニホールドの構成も異なる。よって従来、ワークに合わせて都度治具のほとんどすべてを新たに設計・製造しなければならず、治具種類が増え、設計・製造コストが高くなることや納期が長くなることが問題であった。そこで特許文献1および2において、多様なワーク形状に対応できる治具が提案されている。特許文献1の発明は、プレート上に縦横に延びる溝が形成されており、溝に沿った任意の位置にクランパを取り付け可能であり、さらにクランパとプレートの各所に形成された流体供給口とが外部配管により接続されて作動流体が供給される。また特許文献2の発明は、プレート上に複数の縦孔が形成されており、任意の縦孔の上にクランパを取り付け可能であり、この縦孔を通して作動流体が供給される。いずれの発明においても、クランパの取り付け可能な場所は溝や縦孔の上に限られるが、クランパの場合はアームの長さを調整すればクランパ自体の位置はある程度融通が利くので、問題ないものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−70728号公報
【特許文献2】特開昭61−109639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2の治具は多様なワーク形状に対応可能ではあるが、ワークの形状に応じてプレートに追加工を施す場合には、当該ワークの専用品となり、これを他のワークに再使用することはできなくなってしまう。また、クランパのほかに基準片やロケートピンなどの支持具を用いる場合、これらはワークに対する支持箇所が定められるものであり、プレート上のあらゆる箇所、すなわち溝や縦孔がない箇所にも取り付け可能でなければならないから、特許文献1および2の治具では対応することができない。さらに、特許文献1の治具のように、作動流体を供給するための配管がプレート上に露出していると、配管に切粉が堆積したり、配管によって他の支持具などの配置が妨げられたりするおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、クランパや支持具を任意の箇所に取り付け可能であり多様なワーク形状に対応できるものであって、新規の設計・製造が最小限で済む治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1の発明は、治具プレートと、調整プレートと、クランパとを備え、治具プレートが、格子状であって、格子枠と、格子枠の間に形成された空隙部からなり、調整プレートが、一つ以上の空隙部を覆うものであって治具プレートに着脱自在であり、クランパが、アームを有しワークをクランプするものであり、治具プレート上のワークおよびクランパが配置される範囲に調整プレートが取り付けられ、調整プレート上にワークおよびクランパが載置され、クランパが載置された調整プレートには空隙部を通って下方から配管が接続されており、クランパが調整プレートに形成された接続路により配管と接続されて作動流体が供給されることを特徴とする。
【0008】
本発明のうち請求項2の発明は、ワークを載置する調整プレートに、ワークを支持する支持具が取り付けられ、かつ空隙部を通って下方から配管が接続されており、支持具が調整プレートに形成された接続路により配管と接続されて作動流体が供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1の発明によれば、治具プレート、調整プレートおよびクランパをすべて標準品とすることができ、クランパを任意の位置に取り付け、クランパを取り付けた調整プレートについてのみ新たに設計・加工を行えばよいので、コストの低減および納期の短縮が可能となる。そして治具プレートや加工を施さない調整プレートについては、他のワークに繰り返し使用することができる。また、調整プレートの下方から配管が接続されているので、調整プレート上に配管が露出することがなく、配管に切粉が堆積したり、配管によって他の構造物の配置が妨げられたりすることがない。さらに、調整プレートの位置はいずれかの空隙部の位置になるから、配管の経路もパターン化されるので、配管も標準品とすることができる。また、治具プレートの調整プレートが配置されない部分は空隙部となっているから、ワークの加工の際にはそこから切粉や切削油を排出することができる。
【0010】
本発明のうち請求項2の発明によれば、クランパに加えて種々の支持具もすべて標準品とすることができ、クランパおよび支持具を任意の位置に取り付け、クランパおよび支持具を取り付けた調整プレートについてのみ新たに設計・加工を行えばよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の治具を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の治具の具体的な構成について、図面に基づいて説明する。この治具は、図1に示すように、治具プレート1と、調整プレート2と、クランパ3と、その他の支持具4とを備える。なお、支持具4としては、基準片41、ロケートピン42、ナチュラルクランプ43が設けられている。また以下において、図1の左右方向を治具プレート1の幅方向、上下方向を治具プレート1の奥行方向とする。
【0013】
治具プレート1は、治具ベース5上に載置されるもので、矩形の平板に複数個の孔を空けて格子状にしたものであり、孔を空けた残りの部分を格子枠11、孔を空隙部12とする。空隙部12は正方形で、幅方向に四つ、奥行方向に三つ並んでおり、各空隙部12の周囲には調整プレート2をボルト止めするためのネジ孔14が設けられている。
【0014】
調整プレート2は、正方形の平板であり、一つの空隙部12を覆う大きさである。四隅にはボルトを挿入するための挿入孔22が設けられている。
【0015】
そして、この治具にワークWを固定する際には、まず、治具プレート1上において、ワークW、クランパ3および支持具4を配置する場所を決定する。この配置については、治具プレート1に対するワークWの大きさや、この治具を用いて行われる加工や搬送に伴う条件により定まる。配置が決定したら、クランパ3および支持具4を載置する範囲にのみ調整プレート2を載置し、挿入孔22にボルトを挿入してボルト止めして、調整プレート2上にクランパ3および支持具4を取り付ける。本実施例では、治具プレート1に対して八枚の調整プレート2を取り付け、二つのワークWを載置している。なお、ワークWは支持具4を介して調整プレート2に載置されるものであり、調整プレート2に直接載置されるものではなく、その一部が調整プレート2からはみ出してもよい。また、調整プレート2を取り付けない部分は、空隙部12が露出したままの状態となる。
【0016】
クランパ3は、上下動可能なアーム31を有しており、下面にはアーム31の作動流体を供給するための二つの供給口32a,32bが開口していて、それぞれクランプ用とアンクランプ用のものである。そして、調整プレート2には上面から下面へ連通する二本の接続路21a,21bが形成されており、供給口32a,32bが接続路21a,21bの上端と連通している。さらに、接続路21a,21bの下端には配管13a,13bが接続され、それぞれ治具ベース5に設けられた流体供給口51と接続されて、クランパ3へ作動流体が供給される。この際、調整プレート2上のクランパ3の位置に合わせて調整プレート2の接続路21a,21bを形成するものとすれば、調整プレート2と治具ベース5とを接続する配管13a,13bは、常に決まった位置に接続する標準品とすることができる。
【0017】
また、支持具4としては、基準片41、ロケートピン42、ナチュラルクランプ43が用いられ、これらによってワークWが支持される。基準片41は、ワークWの高さ位置の基準となるもので、ワークWは三つの基準片41により三点支持されるものであって、基準片41とクランパ3のアーム31とでワークWを挟み込む。各基準片41は、ワークWの接地検出用のエア供給路411と、ワークWの接地面を洗浄するための洗浄液供給路412を有しており、エア供給路411および洗浄液供給路412は、いずれも基準片41の下面に開口している。そして、調整プレート2には上面から下面へ連通する接続路21c,21dが形成されており、エア供給路411および洗浄液供給路412が接続路21c,21dの上端と連通している。さらに、接続路21c,21dの下端には配管13c,13dが接続され、それぞれ治具ベース5に設けられたエア供給口および流体供給口(図示省略)と接続されて、基準片41へエアおよび洗浄液が供給される。この際、基準片41の位置に合わせて調整プレート2の接続路21c,21dを形成するものとすれば、調整プレート2と治具ベース5とを接続する配管13c,13dは、常に決まった位置に接続する標準品とすることができる。また、ロケートピンは、ワークWの水平方向位置を定めるものである。さらに、ナチュラルクランプ43は、ワークWを変形させない範囲の力でワークWに当接し、かつ加工時にワークWに働く力に抗することができるものであり、当接部が内蔵されたバネの弾性力により付勢されているものである。
【0018】
このように構成された治具によれば、治具プレート、調整プレート、クランパおよび支持具をすべて標準品とすることができ、クランパおよび支持具を任意の位置に取り付け、クランパおよび支持具を取り付けた調整プレートについてのみ新たに設計・加工を行えばよいので、治具部品の種類の増大を防ぎ、設計・製造コストの低減および納期の短縮が可能となる。そして治具プレートや加工を施さない調整プレートについては、他のワークに繰り返し使用することができる。また、調整プレートの下方から配管が接続されているので、調整プレート上に配管が露出することがなく、配管に切粉が堆積したり、配管によって他の構造物の配置が妨げられたりすることがない。さらに、調整プレートの位置はいずれかの空隙部の位置になるから、配管の経路もパターン化されるので、配管も標準品とすることができる。また、治具プレートの調整プレートが配置されない部分は空隙部となっており上下に貫通しているから、ワークの加工の際にはそこから切粉や切削油を排出することができる。なお、複数のクランパや支持具について、同一系統の配管を分岐して接続すれば、一律に動作させることができるし、それぞれ別系統の配管を接続すれば、一つ一つを独立して動作させることができる。
【0019】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、固定されるワークの個数は単数でも複数でもよい。また、治具プレートは矩形に限られず、ワークの形状や、この治具を用いる工作機械や搬送機械の構成に合わせて適宜変形できる。また、治具プレートは、複数種類の大きさのものを用意しておき、ワークの大きさに合わせて選択できるようにするのが望ましい。さらに、空隙部の形状は正方形に限られず、円形などでもよいし、調整プレートの形状も、空隙部を覆って治具プレート上に敷き詰めることができるものであれば、どのようなものであってもよい。また、調整プレートは一枚で二つ以上の空隙部を覆うものであってもよい。さらに、調整プレート上に載置する支持具は、基準片、ロケートピンやナチュラルクランプ以外にも、リフタやサイドクランプなど、種々のものを用いることができる。また、これらの支持具を用いずに、調整プレート上に直接ワークを載置してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 治具プレート
2 調整プレート
3 クランパ
4 支持具
11 格子枠
12 空隙部
13a,13b,13c,13d 配管
21a,21b,21c,21d 接続路
31 アーム
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具プレートと、調整プレートと、クランパとを備え、
治具プレートが、格子状であって、格子枠と、格子枠の間に形成された空隙部からなり、調整プレートが、一つ以上の空隙部を覆うものであって治具プレートに着脱自在であり、クランパが、アームを有しワークをクランプするものであり、
治具プレート上のワークおよびクランパが配置される範囲に調整プレートが取り付けられ、調整プレート上にワークおよびクランパが載置され、クランパが載置された調整プレートには空隙部を通って下方から配管が接続されており、クランパが調整プレートに形成された接続路により配管と接続されて作動流体が供給されることを特徴とする治具。
【請求項2】
ワークを載置する調整プレートに、ワークを支持する支持具が取り付けられ、かつ空隙部を通って下方から配管が接続されており、支持具が調整プレートに形成された接続路により配管と接続されて作動流体が供給されることを特徴とする請求項1記載の治具。

【図1】
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