説明

治療、診断、G‐テトラド形成オリゴヌクレオシド及びアプタマーといった生物学的応用のための新規修飾を取り入れたアラ‐2’‐O‐メチル‐ヌクレオシド、当該ホスホラミダイト及びオリゴヌクレオチドの合成

本発明は、種々のアラビノヌクレオシドからなる高純度な新規2’‐アラビノ‐O‐メチルヌクレオシド及び当該ホスホラミダイトを得るための合成、精製、及び方法、ならびにそれらユニットの既知配列合成DNA及びRNAへの導入に関する。HIVインテグラーゼ阻害剤‐14mer及びトロンビン結合オリゴヌクレオチドであるトロンビン‐1といったアラ‐2’‐O‐メチル修飾を有する種々のオリゴヌクレオチドを合成した。これらのモノマーを取り込んだ前記オリゴヌクレオチドは、アンチセンス法、より優れたSiRNAの設計、診断薬に関連する生物学的活性を示すことが期待される。同様に、そのような新規ヌクレオシドを取り込んだオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの構造、フォールディングトポロジー、生化学的性質の評価、及び治療薬としての設計・開発のための安定なグアニン四重鎖及びアプタマーをデザインする治療薬候補の開発に有益であることが期待される。前記ヌクレオシド、本発明のリン酸塩及び三リン酸塩は、治療薬として発展することがさらに期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のアラビノヌクレオシド塩基よりなる高純度の新規2’‐アラビノ‐O‐メチルヌクレオシドの合成、精製、及び取得方法、ならびに当該ユニットの既知の合成DNA及びRNA配列への導入に関する。これらのモノマーを取り入れたヌクレオチドはより優れたSiRNA及び診断薬の創造を導き、オリゴヌクレオチドの構造として安定なグアニン四重鎖及びアプタマーを組み込んだ治療薬候補の開発に有益であろう。
【0002】
なお、本出願は、本発明者によって2009年2月22日に出願された米国における仮特許出願(シリアルナンバー 61/208287)に基づく優先権の主張を伴う。前記仮出願における構成のすべては、本件において援用されている。
【背景技術】
【0003】
治療への応用が大いに期待され、治療的及び診断的応用に関わる主要クラスのオリゴヌクレオチドは、アンチセンス(すなわち、“センス”鎖、通常はmRNAに相補的な配列)、あるいは干渉(例えば、“デコイ”)オリゴヌクレオチド(ここではASO’sと総称する)であり、それらはDNAの翻訳阻害に基づいて種々のステップを阻害することにより圧倒的な知名度を得ている。この制御だった阻害は、多くの疾患及びウィルス性感染症の治療に役立てることができる。そのような配列は、その一部がmRNAの一部に対して相補的である(すなわち、アンチセンス)。また、HIVのようなウィルスの他の制御システムは、相補鎖(すなわち、アンチセンス)又はデコイ(すなわち、センス)オリゴヌクレオチド、及び特異性のあるオリゴヌクレオチドの使用、あるいはワトソン−クリック塩基対によって生じる構造により容易に干渉される。その高い結合定数は、強い二重鎖構造の形成と低濃度における有効性を暗示している。ASOの設計における重要な基準のひとつは、インビボでの分解に対する安定性、細胞内での保持性、細胞内他要素との非特異的反応性が低いこと、低毒性、非抗原性、非変異原性、及び、治療応用の幅が広いことである。理想的には、当該標的への結合時にRNA分解酵素Hの活性を有し、mRNAに対するアンチセンスとしての非常に優れた利点を発揮し、前記mRNAを分解し、且つ、前記ASOを放出して反応サイクルを潜在的に形成することである。このことは、HIVのような、多くのウィルス感染の場合に特に重要である。なぜならば、前記ウィルスの逆転写酵素は、それ自体が細胞質に局在し、RNA分解酵素Hの活性を有しているからである。細胞のRNA分解酵素Hは基本的には核に局在しており、そのうちの一定量が細胞質に局在していると考えられている。リン酸ジエステル結合を有する天然のASOsは核酸分解酵素による分解を受けやすいので、半減期が短い。
【0004】
2’‐フルオロ基‐による2’‐アラ‐OH基の修飾は、近年報告された。一般には2’‐F‐ANAと略記される(C.J.Wilds and M.J.Damha, Nucleic Acids. Res.,28,18,3625−3635,2000;C.G.Peng and M.J.Damha, Nucl.Acids Res.,35,15,4977−4988,1997)、2’‐デオキシ‐2’‐フルオロD‐アラビノ核酸の類似体(図1)は、物理化学的及び生物学的に興味深い性質を有し、グアニン四重鎖構造を安定化する。さらに、前記2’‐F‐ANAは、DNA及びホスホロチオエートDNAと比べてRNAへの親和性が亢進している。また、前記2’‐F‐ANAは、一本鎖DNAに好ましい塩基対を有している。前記2’‐F‐ANAユニットから派生するオリゴヌクレオチドは、RNA分解酵素Hの基質であることが明らかとなった。これは、2’‐F‐ANAユニットの“近接するデオキシ構造”に起因すると仮定されている。一般にANAと略記される、アラビノ核酸から生じるオリゴヌクレオチドは、RNAとハイブリッドを形成することが示されている。それらもまた、RNA分解酵素Hの基質であることが示されている。ANAとRNAの違いは、ANA 2’‐ヒドロキシルは複素環塩基に対してシス(構造2)というように、立体配座の違いに起因する。DNAとRNAはハイブリットを形成するが、その二重鎖安定性は天然のDNA/RNAハイブリット又は一本鎖DNA/RNAハイブリットの安定性よりも低い。グアニン四重鎖構造の形成においては、デオキシグアノシンを2’‐アラ‐フルオロ‐2’‐デオキシグアノシン(FANA)に置換することは、このヌクレオシドがグアニン豊富なオリゴ配列に組み込まれたときにアンチ配座(構造1)を適合されることが示されている。一方、アラグアノシン中の2’‐ヒドロキシル基は、シン配座を適合させる。FANA配列は、G‐カルテットを安定化し、当該グアニン四重鎖構造を維持させることが示されている。また、オリゴヌクレオチド‐ベースの2’‐F‐ANAは、SiRNAの改良開発に用いられる(Dowler T.,Bergeron D.,Tedeschi A.L.,Pacqet L.,Ferrari N.,Damha M.J.,Nucl.Acids Res.,34:1669−1675、2006)。
【0005】
シン及びアンチグリコシド結合の立体配置が、種々のグアニン四重鎖オリゴヌクレオチドにおけるフォールディングトポロジーを決定する。各々、前記グアノシン残基はシン配座又はアンチ配座のいずれかとして存在することができ、前記デオキシ‐D‐リボースのパッカリングはエンド型又はエクソ型(構造3及び4)のいずれかを取り得る。あるいは、オキシトリカ トリファラックスのテロメアDNA配列であるOxy28のクロスオーバー・バスケット型に見出されるグアノシン残基は、当該G‐4トラックに沿ったシン‐アンチ‐シン配座であり、糖は各々前記2’‐エンド配座となる(Blacburn,E.H.,J.Biol.Chem.265,5919−5921,1990)。
【0006】
テロメアにおけるグアニン四重鎖構造は、一本鎖DNA中又はDNA二本鎖間のG‐トラックのフォールディングトポロジーに基づいて、種々の形態を取り得ることが示されている。それらは、平行(構造5)又は逆平行(構造6)ストランドを取ることができる。ヒトのテロメアDNA配列では、すべてのグアノシン残基は当該分子内の平行グアニン四重鎖構造内においてアンチ型である(Smith,F.W.,Schultze,P.,Feigon,J.,Structure 3,997−1008,2000)。
【0007】
当該3’端構造において制約された糖は、アンチ配座でのグリコシド結合の形成を余儀なくされる(構造3)。それゆえ、我々は、オリゴヌクレオチド内の2’‐O‐メチル‐アラ‐グアノシン残基は当該糖に堅い2’‐エンド配座(サウス/イースト)を取らせ、当該グアノシンユニットは塩基と2’‐アラ‐O‐メチル基による強い立体反発を生じるだろうと仮定した。アデノシン、シトシン、ウラシルといった他のヌクレオシド塩基であっても、前記アンチ配座を取るであろう(構造5)。我々は、アラ‐G含有配列による配座の強力なロックを期待している。さらに、前記ロックされた配座のデザインが特異的アプタマーの開発を促す可能性が十分に考えられる。
【0008】
前記グアニン豊富な四重鎖構造の配列は、テロメアのG‐テトラド配列中に存在する。テロメアは染色体末端の特異的なDNA構造で、タンパクと複合体を形成している。テロメア内のDNAはグアニン豊富な四重鎖構造の高度な繰り返し配列に富んでおり、それらは多くの重要な生化学的プロセスを担っている(Williamson,J.R., Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,23,703−730,1994;Williamson,J.R.,Raghuraman,M.K., and Cech,T.R., Cell,59,871−880,1989;Smith,F.W., and Feigon,J., Nature,356,164−168,1992;Borman,S., Targeting telomerase. Chem.Eng.News,84:32−33,2006;Mcaya,R.F.,Schultz,P.,Smith,F.W.,Roe,J.A., and Feigon,J. Proc.Nal.Acad.Sci.USA 90,3745−3749,1993;Mazumdar,A.,Neamati.,N.,J.Ojwang,J.O.,Sunder,S.,Rando,R.F., and Pommier,Y.,Biochemistry,35,13762−13771,1996)。テロメア内に広く分布し、多くの重要な生化学的プロセスを担うグアニン豊富な配列は、精力的な研究課題である。グアニン四重鎖構造の並外れた安定性とその三次元構造のトポロジーについてはこれまでにも広く研究が行われ、安定なグアニン四重鎖構造を有するDNAを合成できるよう、塩基を修飾する試みが行われてきた。2’‐デオキシ‐2’‐フルオロ‐アラビノ核酸(2’‐F‐ANA)を含むオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドのG‐カルテットの安定化とグアニン四重鎖構造の形成を促す。
【0009】
天然のグアニン塩基から成るグアニン四重鎖構造の形成はテロメアタンパクの手助けを必要とし、前記天然のグアニン塩基単独ではグアニン四重鎖構造に不十分であることが明らかにされている。テロメラーゼの過剰な活性化は多種形態の癌を引き起こす。安定なグアニンカルテット(オリゴヌクレオチドの作製においても安定)をデザインする体系だった試みは既に行われている(Wyatt,J.R.,Vickers,T.A.,Roberson,J.L.,Buckheit,R.W.,Klimkait、T.,Debaets,F.,Davis,P.W.,Rayner,B.,Imbach,J.L., and Ecker,D.J., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,1356−1360,1994;Jing,N.J., and Hogan,M.E., J.Biol.Chem.,273,34992−34999,1998;Jing,N.,Rando,R.F.,Pommier,Y., and Hogan,M.E., Biochemistry,36,12498−12505,1997;Kuwasaki,T.,Hatta,M.,Takeuch,H., and Takaku,H., J.Antimicrob.Chemother.,51(4):813−819,2003)。グアニンとチミンのみを含む多くのオリゴヌクレオチド(G‐テトラド形成能をもつ)は、培養下におけるヒト免疫不全ウィルス1型(HIV‐1)の強力な複製阻害剤であることが知られている(Phan,A.T.,Kuryavyi,V.,Ma,J.B.,Faure,A.,Andreola,M.L.,Patel,D.J., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102:634−639,2005;Jing,N.,Li,Y.,Xiong,W.,Sha,W.,Jing,L.,Tweardy,D.J., Cancer Research,64(18):6603−6609,2004)。インビトロでのヒト免疫不全ウィルス1の複製阻害は、2’‐O‐メチル グアノシン‐ウリジン四重鎖モチーフによって自己安定化したオリゴヌクレオチドによって観察される。DNA四重鎖が平行ストランドで連結した二量体は、HIV‐1のインテグラーゼの強力な阻害剤であることがわかっている(Siddiqi−Jain,A.,Grand,C.L.,Bearss,D.J.,Hurley,L.H., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,11593−11598,2002)。
【0010】
グアニン四重鎖オリゴヌクレオチドは、前立腺癌及び乳癌の増殖におけるシグナル伝達及び活性化に、転写阻害及びアポトーシスによって関与することが明らかにされている(Jing,N.,Li,Y.,Xiong,W.,Sha,W.,Jing,L.,Tweardy,D.J., Cancer Research,64(18):6603−6609,2004)。グアニン四重鎖は、プロモーター領域に存在し、c‐MYC転写阻害に用いられる小分子の標的に成り得ることが示されている(Siddiqi−Jain,A.,Grand,C.L.,Bearss,D.J.,Hurley,L.H., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,11593−11598,2002)。
【0011】
グアノシン−チミジン四重鎖モチーフを有する自己安定化オリゴヌクレオチドによってヒト免疫不全ウィルス1の活性が阻害されることは証明されている(Suzuki,J.I.,Miyano−Kurosaki,N.,Kuwasaki,T.,Takeuchi,G.,Kawai,G.,Takaku,H., J.Virol.,76(6),3015−3022,2002)。
【0012】
抗HIV創薬の骨子となる、HIVの有力な阻害剤としてのG‐テトラド形成能を有したオリゴヌクレオチドファミリーの構造−活性相関に関する包括的レビューが行われた(Jing,N.,De Clerque,E.,Rando,R.F.,Pallansch,L.,Lackman−Smith,C.,Lee,S.,Hogan,M.E., Biol.Chem.,275(5),3421−3430,2000)。グアニン四重鎖を有する数種類のアプタマーは、インビトロにおいて、HIVの細胞感染を阻害することがわかっている。グアニン四重鎖を有するアプタマーは、血液凝固における重要な酵素であるトロンビンに結合し阻害する(Macaya,R.F.,Schultz,P.,Smith,F.W.,Roe,J.A.,Feigon,J., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,3745−3749,1993;Wang,K.Y.,McCurdy,S.N.,Shea,R.G.,Swaminathan,S., and Bolton,P.H., Biochemistry,32,1899−1904,1993)。トロンビンは血液凝固カスケードにおいて鍵となる酵素である。化学的修飾がグアニン四重鎖を形成しうる異なるオリゴヌクレオチドの熱安定性に及ぼす効果についての研究が、現在行われている(Sacca,B.,Lacroix,L.,Mergny,J−L., Nucl.Acids Res.,33:1182−1192,2005)。ホスホロチオエート(S)、p‐メチルホスホン酸、2’‐O‐メチル(2’‐3’‐ジオール系)アナログといったシス修飾が研究され、そのような研究によってグアニン四重鎖を調節するための有益な情報が提供され得ると結論された。前記有益な情報とは、治療に役立つオリゴヌクレオチドの開発のための情報、及び、グアニン四重鎖の形成及び安定化の制御要因をより理解するためのグアニン四重鎖の構造的要素を特定するための情報である。構造的に制約されたヌクレオチドアナログは、デオキシグアノシンを含むオリゴヌクレオチドより成るグアニン四重鎖のフォールディング トポロジーを制御することが示されている(Rottman,J.A.,F., and Heinlein,K., Biochemistry,7,2634−2641,1968)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Smith,F.W.,Schultze,P.,Feigon,J. Structure,3,997−1009(2000).
【非特許文献2】Keniry,M.A., Biopolymers,56,123−146(2000).
【非特許文献3】Blackburn,E.H., J.Biol.Chem.,265,5919−1921(1990).
【非特許文献4】Blackburn,E.H., Nature,350,569−573(1991).
【非特許文献5】Zachian,V.A., Annu.Rev.Genet.,23,579−604(1989).
【非特許文献6】Williamson,J.R., Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,23,703−730(1994).
【非特許文献7】Williamson,J.R.,Raghuraman,M.K., and Cech,T.R., Cell,59,871−880(1989).
【非特許文献8】Smith,F.W., and Feigon,J., Nature,356,164−168(1992).
【非特許文献9】Borman,S., “Targeting telomerase.”,Chem.Eng.News,84,32−33(2006).
【非特許文献10】Mcaya,R.F.,Schultz,P.,Smith,F.W.,Roe,J.A., and Feigon,J., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,3745−3749(1993).
【非特許文献11】Mazumdar,A.,Neamati,N.,Ojwang,J.O.,Sunder,S.,Rando,R.F., and Pommier,Y., Biochemistry,35,13762−13771(1996).
【非特許文献12】Wyatt,J.R.,Vickers,T.A.,Roberson,J.L.,Buckheit,R.W.,Klimkait,T.,Debaets,F.,Davis,P.W.,Rayner,B.,Imbach,J.L., and Ecker,D.J., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,1356−1360(1994).
【非特許文献13】Jing,N.J., and Hogan,M.E., J.Biol.Chem.,273,34992−34999(1998).
【非特許文献14】Jing,N.,Rando,R.F.,Pommier,Y., and Hogan,M.E., Biochemistry,36,12498−12505(1997).
【非特許文献15】Kuwasaki,T.,Hatta,M.,Takeuchi,H., and Takaku,H., J.Antimicrob.Chemother.,51(4),813−819(2003).
【非特許文献16】Phan,A.G.,Kuryavyi,Ma.J.B.,Faure,A.,Andreola,M.L., and Patel,D.J., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102,634−639(2005).
【非特許文献17】Jing,N.,Li,Y.,Sha,W.,Jing.W.,and Tweardy,D.J., Cancer Research,64(18),6603−6609(2004).
【非特許文献18】Siddiqi−Jain,A.,Grand,C.L.,Bearss,D.J., and Hurley,L.H., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99,11593−11598(2002).
【非特許文献19】Suzuki,J.−I.,Miyno−Kurosaki,N.,Kuwasaki,T.,Takeuchi,G.,Kawai,G, and Takaku,H., J.Virol.,76(6),3015−3022(2022).
【非特許文献20】Jing,N.,De Clerque,E.,Rando,R.F.,Pallansch,L.,Lackman−Smith、C.,Lee,S., and Hogan,M.E., Biol.Chem.,275(5),3421−3430(2000).
【非特許文献21】Macaya,R.F.,Schultz,P.,Smith,F.W.,Roe,J.A., and Feigon,J., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,3745−3749(1993).
【非特許文献22】Wang,K.Y.,McCurdy,S.N.,Shea,R.G.,Swaminathan,S., and Bolton,P.H., Biochemistry,32,1899−1904(1993).
【非特許文献23】Sacca,B.,Lacroix,L., and Mergny,J.−L., Nucl.Acids Res.,33,1182−1192(2005).
【非特許文献24】Rottman,F., and Heinlein,K., Biochemistry,7,2634−2641(1968).
【非特許文献25】Hideo Inoue,Yoji Hayase,Akihiro Imura,Shigenori Iwai,Kazunobu Miura, And Eiko Ohtsuka,Soc.,126,500−5051.
【0014】
上記の先行技術文献(一部は前記において引用されている)は、当該分野の現在の状況を総括するものである。
【発明の概要】
【0015】
前記2’‐アラ‐O‐メチルヌクレオシド及び当該ホスホラミダイトは、アンチセンス、アプタマーといった種々の生化学的プロセスを標的とする機会、及び、最も重要には安定なグアニン四重鎖をベースとしたオリゴヌクレオチドを開発する機会を与える。
【0016】
本発見の論点は、未だ新規のヌクレオシドと、当該ヌクレオシドに由来するホスホラミダイト分子及びオリゴヌクレオチドの開発に基づいていた。2’‐OMe‐ANAと略記される2’‐Oメチル‐D‐アラビノ核酸アナログは、DNA及びRNA配列を標的とした生化学的及び生物学的特性が改善されていることが期待されている。その塩基は、ピリミジン塩基のH‐6又はプリン塩基のH‐8といった塩基の水素原子と相互作用するとは考えにくいので、前記アラ‐2’‐Oメチルサブユニットから遠く離れていると予想されている。
【0017】
アラ‐2’‐O‐メチル(当該ヌクレオシドの塩基に対してシス)を導入した概念は新規で、インビボでの分解に対してより優れた安定性を有するRNA配列の創出が予想される。さらに、これらの分子は標的RNA配列に対して一段と優れた結合能を有することが期待される。
【0018】
前記分子はDNA/RNA配列中でまるで2’‐デオキシヌクレオシドのように振る舞うと予想される。アラヌクレオシドを1又は2の修飾塩基として当該オリゴ配列に導入することは、そのような修飾の生化学的役割を研究する上で非常に有益なオリゴヌクレオチド配列を提供することになるだろう。
【0019】
これまでの2’‐O‐メチル(ヌクレオシド塩基に対してトランスで、天然のRNAと立体化学的に同じ)で修飾された天然のRNAでは塩基はRNA配列に取り込まれており、そのようなRNAはもっぱらオリゴヌクレオチド、オリゴデオキシヌクレオチド、及びオリゴリボヌクレオチドのアンチセンス阻害のために開発されてきた。2’‐O‐メチルリボヌクレオチドを配列中に含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、制御だった阻害を起こし、多くの疾患及び感染症に対する治療効果をもたらすことが示されている。
【0020】
特定のタンパクの一部に相補的な2’‐O‐メチルオリゴヌクレオチド(例として、アンチセンス)を用いたウィルスタンパクの選択的阻害に関する膨大な量のデータが利用可能である。HIVのようなウィルス配列を制御することにより、可能性のある薬剤及び薬剤候補を導くための膨大な研究が行われた。そのような薬剤候補は、アンチセンスを利用した理想的なオリゴヌクレオチド治療法を導くためのプログラムの一部となる。数種類の薬剤候補が、2’‐O‐メチル又は2’‐O‐アルキル修飾を施すことにより、最終段階にある。
【0021】
それゆえ、より優れた治療薬を創出し得るアンチセンス及びRNAiを介して、一段と優れて効果的な治療用薬剤候補を創出し得る修飾方法を改善・開発する必要がある。それらは、インビボでの分解に対して安定であることが求められる。さらに、2’‐O‐メチルアラオリゴヌクレオチドは効率よく細胞に取り込まれ、当該細胞内で天然のRNA及びDNA配列よりも長い半減期を有することが求められている。2’‐O‐メチルアラオリゴヌクレオチドは、標的mRNA配列と効率よく相互作用することが期待されている。
【0022】
2’‐Oメチル‐アラビノヌクレオシドを含むオリゴヌクレオシドの前記可能性に加えて、本発明に係るヌクレオシドは、ヌクレオシドをベースとする治療法への応用の可能性を有している。よって、N‐9‐[β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(アラG)は、Bリンパ芽球よりもTリンパ芽球内で一層効率の良いグアノシンヌクレオシドアナログである。
【0023】
アラGはプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)による分解に対して比較的抵抗性を有しており、そのTリンパ芽球選択的な細胞毒性はPNP非存在下でのデオキシグアノシンの細胞毒性に似ている。このデオキシグアノシンとその関連アナログが引き起こす細胞種特異的細胞毒性の分子メカニズムについては、ほとんど解明されていない。しかしながら、最近の研究によって、dGTPのミトコンドリア内蓄積及びDNA修復阻害とともに、このメカニズムにおけるミトコンドリアの役割が示唆されている。アラGを当該三リン酸にするリン酸化反応の律速段階は、当該一リン酸にする際の最初のリン酸化反応であり、その反応は、ミトコンドリアのマトリックスに局在するデオキシグアノシンキナーゼ(dGK)と、核のサイトゾルに局在するデオキシシチジンキナーゼ(dCK)という2つの異なる酵素によって触媒される。精製したdCK及びdGKの研究と細胞抽出液中のアラGリン酸化活性の解析により、アラG濃度が低いときの主要なリン酸化酵素はdGKであるのに対し、アラG濃度が高いときにはdCKの方がより重要であることが示唆されている。これらの結果は、低濃度のアラGがミトコンドリアDNAに優先的に取り込まれる結果と整合するものである。臨床試験におけるネララビン、アラGの投与毒性は、神経毒性である。また、副作用には、筋疾患、骨髄抑制、及びpe感受性の喪失といったミトコンドリア毒性薬による症状と似た症状が含まれる。
【0024】
1‐[β‐D‐アラビノフラノシルシチジン、2‐フルオロ‐2’‐アラビノフラノシルアデニン、及び2‐クロロ‐デオキシアデノシンといったヌクレオシドアナログは、一般に血液悪性腫瘍の治療に用いられている。これらの化合物はヌクレオシドトランスポーターによって細胞膜を横断して輸送され、細胞内ではヌクレオシド・ヌクレオチドキナーゼによって当該三リン酸誘導体へとリン酸化される。その後、前記ヌクレオシドアナログ三リン酸誘導体はDNAへと取り込まれ、DNA鎖の伸長停止やその他のDNA異常を引き起こす。DNA複製は核内とミトコンドリアマトリックス内の両方で行われているので、ヌクレオシドアナログの標的になり得るものは2つある。
【0025】
これらのモノマーを取り込んだ前記オリゴヌクレオチドは、アンチセンス法、より良いSiRNAの設計、診断薬に関連する生物学的活性を示すことが期待される。同様に、そのような新規ヌクレオシドを取り込んだオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの構造、フォールディングトポロジー、生化学的性質の評価、及び治療薬としての設計・開発のための安定なグアニン四重鎖及びアプタマーをデザインする治療薬候補の開発に有益であることが期待される。
【0026】
合成法についての議論
従来法では、2’‐O‐メチルグアノシン誘導体は、2’,3’‐シス‐ジオール系をジアゾメタンを用いてモノメチル化することにより調整された。N2‐イソブチリル‐2’‐O‐メチルグアノシの合成は、ヨウ化メチルとAg20を用いて、N‐1イミノ基が保護されたN2‐イソブチリル5’,3’‐O‐TIPDSグアノシンとその誘導体上で試みられた。しかしながら、各反応において、塩基部分のメチル化は同時に起きた。
5’,3’‐TIPDSで保護されたグアノシン上での選択的な2’‐O‐メチル化は順調には起こり得ないので、グアノシンのメチル化は、ジアゾメタンを用いて5’NMT‐N2‐Ibu‐グアノシンのシス‐ジオール系上で起きた。
【0027】
保護された2’‐O‐メチル‐アラビノヌクレオシド誘導体を合成する公知の手法はない。我々の方法はスキーム1−4に概説するが、CHI及びNaHを用いた適度な反応収率が得られる方法で、5’,3’−及びn−保護されたアラヌクレオシドの選択的メチル化の鍵となる反応工程を伴っている。
【0028】
【化1】

【0029】
スキーム1:5’‐O‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐アデノシン‐3’‐ホスホラミダイト(化合物14)の合成
i)TIPS‐Cl/ピリジン、ii)CHI/NaH/THF、iii)TBAF/THF、iv)DMT‐Cl/ピリジン、v)N,N‐ジイソプロピルアミノ‐シアノエチルホスホルアミド酸クロリド/DIPEA/THF
【0030】
【化2】

【0031】
スキーム2:5’‐O‐DMT‐2’‐O‐メチル‐(n‐ibu)‐アラ‐グアノシン‐3’‐ホスホラミダイト(化合物14)の合成
i)TIPS‐Cl/ピリジン、ii)CHI/NaH/THF、iii)TBAF/THF、iv)DMT‐Cl/ピリジン、v)N,N‐ジイソプロピルアミノ‐シアノエチルホスホルアミド酸クロリド/THF、vi)NH/ピリジン
【0032】
【化3】

【0033】
スキーム3:5’‐O‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐ウリジン‐3’‐ホスホラミダイト(化合物26)の合成
i)TIPS‐Cl/ピリジン、ii)CHI/NaH/THF、iii)TBAF/THF、iv)DMT‐Cl/ピリジン、v)N,N‐ジイソプロピルアミノ‐シアノエチルホスホルアミド酸クロリド/DIPEA/THF
【0034】
【化4】

【0035】
スキーム4:5’‐O‐DMT‐2’‐O‐メチル‐(n‐bz)‐シチジン‐3’‐ホスホラミダイト(化合物27)の合成
i)無水酢酸/ピリジン、ii)POCl/1,2,4‐トリアゾ‐ル/TEA/ACN、iii)メタノール/NH、iv)TMS‐Cl/Bz‐Cl/ピリジン、v)DMT‐Cl/ピリジン、vi)N,N‐ジイソプロピルアミノ‐シアノエチルホスホルアミド酸クロリド/DIPEA/THF
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、2’‐FANA‐グアノシン(アンチ配座)を表す。
【図2】図2は、2’‐アラ‐グアノシンdG(シン配座)を表す。
【図3】図3は、(C‐2’‐エンド配座)を示す。
【図4】図4は、(C‐3’‐エンド配座)を示す。
【図5】図5は、2’‐アラ‐O‐メチル‐ウリジン‐フリー塩基(アンチ配座を取りやすい)を表す。
【図6】図6は、プリン環の2’‐O‐メチルによるロッキング(2’‐アラ‐O‐メチル‐グアノシン‐フリー塩基)を表す。
【図7】図7aは、複数のdG(デオキシグアニン)による平行状態を表す(図7:グアニン四重鎖構造)。図7bは、G(グアニン)による逆平行状態を表す(図7:グアニン四重鎖構造)。
【図8a】図8aは、2’‐アラ‐O‐メチル塩基より構成されるHIV阻害剤‐14merの3次元図を表す。
【図8b】図8aは、2’‐アラ‐O‐メチル塩基より構成されるHIV阻害剤‐14merの化学式表記を表す。
【図9a】図9aは、2’‐アラ‐O‐メチル塩基より構成されるトロンビン1の3次元図を表す。
【図9b】図9bは、2’‐アラ‐O‐メチル塩基より構成されるトロンビン1の化学式表記を表す。
【図10a】図10aは、HIV阻害剤‐DNA塩基からなるオリゴヌクレオチドの3次元図を表す。
【図10b】図10bは、HIV阻害剤‐DNA塩基からなるオリゴヌクレオチドの化学式の略図を表す。
【図11】図11は、4つのグアノシン配列の環状配置を表す。
【図12】図12は、アラ‐ヌクレオシドオリゴを表す。
【図13】図13は、2’‐O‐メチル‐アラ‐グアノシン(構造19a)の1‐H NMRを表す。
【図14】図14は、2’‐O‐メチル‐アラ‐ウリジン(構造24)の1‐H NMRを表す。
【図15】図15は、2’‐O‐メチル‐アラ‐シチジン(構造29)の1‐H NMRを表す。
【図16】図16は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐グアノシン‐n‐ibu(構造19)の1‐H NMRを表す。
【図17】図17は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐ウリジン(構造25)の1‐H NMRを表す。
【図18】図18は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐シチジン‐n‐bz(構造31)の1‐H NMRを表す。
【図19】図19は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐G‐n‐ibu(構造19)の13C NMRを表す。
【図20】図20は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐ウリジン(構造25)の13C NMRを表す。
【図21】図21は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐シチジン‐n‐ibu(構造31)の13C NMRを表す。
【図22】図22は、2’‐O‐メチル‐アラ‐グアノシン‐n‐ibu(構造19)のESI/MSを表す。
【図23】図23は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐ウリジン(構造25)のESI/MSを表す。
【図24】図24は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐シチジン‐n‐bz(構造31)のESI/MSを表す。
【図25】図25は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐グアノシン‐n‐ibu(構造20)のESI/MSを表す。
【図26】図26は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐リボグアノシン‐n‐ibuの1H NMRを表す。
【図27】図27は、図26は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐アザ‐グアノシン(構造19)の1H NMRを表す(5−10ppmに拡張)。
【図28】図28は、5’‐DMT‐2’‐O‐メチル‐リボ‐ウリジンの1H NMRを表す。
【図29】図29は、2’‐O‐メチル‐リボ‐グアノシンの1H NMRを表す。
【図30】図30は、DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐G‐n‐ibu‐3’‐シアノエチルホスホラミダイト(構造20)の1H NMRを表す。
【図31】図31は、DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐U‐3’‐シアノエチルホスホラミダイト(構造26)の1H NMRを表す。
【図32】図32は、DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐G‐3’‐シアノエチルホスホラミダイト(構造20)の31P NMRを表す。
【図33】図33は、DMT‐2’‐O‐メチル‐アラ‐U‐3’‐シアノエチルホスホラミダイト(構造26)の31P NMRを表す。
【図34】図34は、配列名:HIV‐阻害剤‐14mer、配列:(5’−3’)aomGaomGaomGaomGaomUaomGaomGaomGaomUaomGaomGaomUaomGaomG6を表し、当該マイグレーションタイムシーケンス(左から右へ):11.554、11.877、12.217、12.521、12.817、12.967、13.338、13.658、14.517、15.488、17.275、17.992(ロット番号 071008−01)を示す。
【図35】図35は、配列名:トロンビン−1、配列:(5’−3’)aomGaomGaomUaomUaomGaomGaomUaomGaomUaomGaomGaomUaomUaomGGを表し、当該マイグレーションタイムシーケンス(左から右へ):13.571、14.117、14.700、15.249(ロット番号 071008−02)を示す。
【図36】図36は、UVスペクトル、及び250/260と260/280の比を表す。配列名:HIV‐阻害剤‐14mer配列:(5’−3’)aomGaomGaomGaomGaomUaomGaomGaomGaomUaomGaomGaomUaomGaomG6ロット番号 071008−01
【図37】図37は、UVスペクトル、及び250/260と260/280の比を表す。配列名:トロンビン−1配列:(5’−3’)aomGaomGaomUaomUaomGaomGaomUaomGaomUaomGaomGaomUaomUaomGGロット番号 071008−02
【図38】図38は、オリゴヌクレオチド合成過程におけるトリチルヒストグラムを表す。配列名:HIV‐阻害剤‐14mer、配列:(5’−3’)aomGaomGaomGaomGaomUaomGaomGaomGaomUaomGaomGaomUaomGaomG6、3’のdGで、aom:アラ‐2’‐O‐メチル。
【図39】図39は、オリゴヌクレオチド合成過程におけるトリチルヒストグラムを表す。配列名:トロンビン−1、配列:(5’−3’)aomGaomGaomUaomUaomGaomGaomUaomGaomUaomGaomGaomUaomUaomGG、3’のdGで、aom:アラ‐2’‐O‐メチル。
【発明を実施するための形態】
【0037】
アラ‐(2’)‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシドホスホラミダイト、三リン酸塩、及び固相
【0038】
【化5】

【0039】
前記式2A及び式2Bは、ZがH及びXがH、Bは天然の核酸塩基でアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、又は任意の当該修飾ヌクレオシド(任意で非保護)、を表している。前記式2Aはアラ‐(2’)‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシドを表し、式2Bは鏡像であるアラ‐(2’)‐O‐メチル‐β‐L‐ヌクレオシドを表している。前記式2A及び2Bはさらに次のことを表している。すなわち、Z及びXは、ZまたはXの位置で一リン酸塩、ニリン酸塩、又は三リン酸塩のいずれか、あるいはH(水素原子)である。
【0040】
アラ‐(2’)‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシドホスホラミダイト及び三リン酸塩
高度に安定なグアニン四重鎖オリゴ及びグアニン四重鎖アプタマーをデザインするための新規修飾。それは染色体内のテロメアDNAにおいて非常に重要な役割を担い、多くの分野で非常に大きな可能性を発揮することが期待されている。
【0041】
アラ‐(2’)‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシド三リン酸塩(前記式2Aにおいて、Zが三リン酸でXがH)
【0042】
【化6】

【0043】
アラ‐2’‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシドホスホラミダイト及び三リン酸塩:前記ホスホラミダイトは式1A及び1Bによって表され、Zは通常DMT(ジメトキシトリフェニル)基で、Rはリン酸切断基、一般には2‐シアノエチル基である。前記式1Bは、前記ヌクレオシドのβ‐L‐配座(一般には鏡像と呼ばれる)を表している。
【0044】
アラ‐2’‐O‐メチル‐β‐D‐ヌクレオシドホスホラミダイト及び三リン酸塩:アラ‐2’‐O‐メチル‐RNAホスホラミダイト
修飾されたアラヌクレオシドは、修飾ヌクレオシドの新規分類となる。そのような修飾ヌクレオシドをホスホラミダイトとすることで新規分類のオリゴの作製が期待され、また、高度に安定なグアニン四重鎖オリゴ及びアプタマーを創作するための多くの重要な種類のオリゴヌクレオチドが作製される可能性がある。
【0045】
グアニン四重鎖は染色体のテロメアにおいて非常に重要な役割を果たしているが、下記のような多くの分野においても計り知れない可能性を有している。
癌治療(1)、HIV阻害剤(2−4)、オリゴヌクレオチドの構造安定性の制御(5−8)、抗凝固アプタマー(9)、グアニン四重鎖を有するアプタマー設計(10)、ナノテクノロジー(11)、バイオセンサーの設計(12)。
【0046】
(1)Patel,D.J.,Phan,A.T., and Kuryavyi,V., N.A.R.,35(22),7429−7455(2007),Jing,N., et.al., Cancer Res.,64(18),6603−6609(2004).G−quadruplexes as cancer targets and Breast tumors.
(2)Phan,A.T., et.al., P.N.A.S.USA,102,634−639(2005).G−Tetrads as Potent HIV inhibitors.
(3)Ping,N.J., and Hogan,M.E., J.B.C.,273,34992−34999(1998).G tetrads as potent HIV inhibitors.
(4)Wyatt,J.R., et.al., P.N.A.S.USA,91,1356−1360(1994).Potent anti HIV drug.G−Quartet aptamers.
(5)Giusto,D.A.D., and King,G.C., J.B.C.,35(15),4977−4988(2007).
(6)Peng,C.G., and Damha,M.J., N.A.R.,35(15)、4977−4988(2007).
(7)Schultze,P.,Hud,N.V.,Smith,F.W., and Feigon,J., N.A.R.,27(2),3018−3028(1999).Conformation of Dimeric quadruplexes with G rich sequences.
(8)Dominick,P.K., and Jarstfer,M.B., J.Am.Chem.Soc.,126,18,5050−5051(2004).Folding topology of G−quadruplexes is controlled by conformational constrains.
(9)Padmanabhan,K.,et.al., J.B.C.,268,17651−17654(1993).Inhibition of Thrombin.
(10)Tang,C.F., and Shafer,R.H., J.Am.Chem.Soc.,128,5966−5973(2006).Engineering Guanosine Quadruplexes.
(11)Alberti,P., and Mergny,J.L., P.N.A.S.,100,1569−1573(2003).Nanotechnology.
(12)Ueyama,H.,Takagi,M.,Takenaka,S., J.A.C.S.,124,14286−14287(2001).Biosensor design.
【0047】
【化7】

【0048】
式1A及び1Bにおいて、ZはDMT、MMT、TMT、又は下記化学式で表される基である。
【0049】
【化8】

【0050】
Qは、a)切断されるとヒドロキシル基を生じ得る結合基とスペーサーからなる支持相、又は、b)脂肪族鎖、芳香族基、置換又は非置換芳香族、置換又は非置換フェノキシ、もしくはレブリニルである。
は、置換又は非置換(C−C12)アルキル基、置換又は非置換(C−C20)シクロアルキル基、もしくは置換又は非置換(C−C20)シクロアルキル(C−C12)アルキル基で、前記アルキル又はシクロアルキル基は任意で介在する異種原子(NH、NR、O及びSから独立して選ばれる)を含む。
は、置換又は非置換(C−C12)アルキル基、置換又は非置換(C−C20)シクロアルキル基、もしくは置換又は非置換(C−C20)シクロアルキル(C−C12)アルキル基で、前記アルキル又はシクロアルキル基は任意で介在する異種原子(NH、NR、O及びSから独立して選ばれる)を含む。ないしは、R1及びR2は窒素原子とともに4−7員環の非芳香族ヘテロシクリルを形成し、当該ヘテロシクリルは任意で介在する異種原子(NH、NR、O及びSから独立して選ばれる)を含んでもよい。
は、リン酸保護基である。
【0051】
Zは、酸に不安定な保護基である。
は、水素、又は任意で置換した核酸塩基(環外アミンがアミン保護基で任意に官能基化)である。前記核酸塩基は、以下から選ばれる:N6、N6‐ジメチルアデニン、N6‐ベンゾイルアデニン、N‐1‐メチルアデニン、7‐デアザアデニン、7‐デアザ‐8‐アザアデニン、3‐デアザアデニン、エテノアデニン、イソグアニン、N1‐メチルグアニン、7‐ヨード‐7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐7‐ヨードアデニン、7‐デアザ‐7‐ヨード‐6‐オキソプリン、5‐ヨード‐5‐メチル‐7‐デアザグアニン、−C≡C(CH1−8‐フタルイミドで置換された7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐8‐アザグアニン、8‐メチルグアニン、8‐ブロモグアニン、8‐アミノグアニン、ヒポキサンチン、6‐メトキシプリン、7‐デアザ‐6‐オキソプリン、6‐オキソプリン、2‐アミノプリン、2、6‐ジアミノプリン、8‐ブロモプリン、8‐アミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、チミン、N‐3メチルチミン、5‐アクロキシメチルシトシン、5‐アザシトシン、イソシトシン、N‐4(C‐C)アルキルシトシン、N‐3(C−C)アルキルシチジン、5‐プロピニルシトシン、5‐ヨード‐シトシン、5‐(C−C)アルキルシトシン、5‐アリル(C−C)アルキルシトシン、5‐トリフルオロメチルシトシン、5‐メチルシトシン、エテノシトシン、−CH=CH−C(=O)NH(C−C)アルキルで置換されたシトシン及びウラシル、−C≡C−CH‐フタルイミドで置換されたシトシン及びウラシル、NH(C−C)アルキル、4‐チオウラシル、2‐チオウラシル、N‐チオベンゾイルエチルウラシル、5‐プロピニルウラシル、5‐Oアセトキシメチルウラシル、5‐フルオロウラシル、5‐クロロウラシル、5‐ブロモウラシル、5‐ヨードウラシル、4‐チオウラシル、N‐3‐(C−C)アルキルウラシル、5‐(3‐アミノアリル)‐ウラシル、5‐(C−C)アルキルウラシル、5‐アリル(C−C)アルキルウラシル、5‐トリフルオロメチルウラシル、4‐トリアゾリル‐5‐メチルウラシル、2‐ピリドン、2‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、2‐オキソ‐4‐メチルチオ‐5‐メチルピリミジン、2‐チオカルボニル‐4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、及び4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン。
上記において、前記核酸塩基又は前記環外アミン内の置換可能な窒素原子はいずれも、任意でフルオレニルメチルオキシカルボニル、−C(=O)Oフェニル、−C(=O)(C−C16)アルキル、−C(=O)(C−C16)アルケキル[edertz1]、−C(=O)(C−C16)アルキレン‐C(=O)OH、−C(=O)(C−C16)アルキレン‐C(=O)O(C−C16)アルキル、[edertz2]=CRN(C−C)アルキル、−C(=O)‐NR‐(CH1−16NRC(=O)CF、−C(=O)−(CH1−16NRC(=O)CF、−C(=O)‐NR(CH1−16NRC(=O)‐フタルイミド、−C(=O)−(CH1−16‐フタルイミド、及び下記化学式で表される基に置換してもよい。
【0052】
【化9】

【0053】
また、上記において、前記核酸塩基内の置換可能な酸素原子はいずれも、任意で−C(=O)N(C−Cアルキル)‐C(=O)N(フェニル)に置換してもよい。
【0054】
さらに、式1A及び式1Bに基づく他の化合物は下記の通りである。
1.前記化合物が式1A及び式1Bで表される、前記段落で説明した化合物。
2.Zが非置換又は置換アリル基、非置換又は置換トリアリルメチル基、非置換又は置換トリチル基、非置換又は置換テトラヒドロピラニル基、又は非置換又は置換9‐フェニルキサンチル基である、前記段落の化合物。
3.Zがジ‐p‐アニシルフェニルメチル、p‐フルオロフェニル‐1‐ナフチルフェニルメチル、p‐アニシル‐1‐ナフチルフェニルメチル、ジ‐O‐アニシル‐1‐ナフチルメチル、ジ‐O‐アニシルフェニルメチル、p‐トリルジフェニルメチル、ジ‐p‐アニシルフェニルメチル、ジ‐O‐アニシル‐1‐ナフチルメチル、ジ‐p‐アニシルフェニルメチル、ジ‐O‐アニシルフェニルメチル、ジ‐p‐アニシルフェニルメチル、又はp‐トリルジフェニルメチルである、前述の化合物。
4.Zが下記構造式で表される前述の化合物。
【0055】
【化10】

【0056】
5.Zが4‐メトキシトリチル、4、4’‐ジメトキシトリチル、又は4、4’、4”‐トリメトキシトリチルである前述の化合物。
6.前記核酸塩基内又は前記環外アミン内の置換可能な窒素原子が任意で以下の化学式で表される基、
=CHN(CH、−C(=O)CH(CH、−C(=O)CH、=C(CH)N(CH、−C(=O)Oフェニル、‐C(=O)CHCHCH=CH、‐C(=O)CHCH−C(=O)O(C−C)アルキル、−C(=O)−NR‐(CH1−16NRC(=O)CF、−C(=O)‐(CH1−16NRC(=O)CF、−C(=O)‐NR(CH1−16NRC(=O)‐フタルイミド、−C(=O)−(CH1−16‐フタルイミド、
又は以下の化学式で表される基に置換された前記化合物。
【0057】
【化11】

【0058】
7.Rが−CHCHCN、−CHCH−Si(CHCH、−CHCH−S(O)−CHCH、−CHCH−C−NO、−CHCH−NH−C(O)−C、又は−CHCH−O−C−C(O)CH、及びRは−O−Si(R11である前記化合物。
【0059】
8.前記化合物が下記構造式のうちの一つで表される、前記化合物。
が−CHCHCN、である前記化合物。
上記において、a)、b)、c)、d)、又はe)基における核酸塩基又は環外アミン内の置換可能な窒素原子はいずれも任意で、イソブチリル、フェノキシアセチル、tert‐ブチルフェノキシアセチル、イソプロピルフェノキシアセチル、アセチル、−C(O)OCH、ジ(C−C)アルキルホルムアミジン、p‐クロロベンゾイル、o‐クロロベンゾイル、o‐ニトロベンゾイル、p‐ニトロベンゾイル、フルオレニルメチルオキシカルボニル、ニトロフェニルエチル、フタロイル、ベンジル(Bn)基、p‐メトキシベンジル(PMB)、3,4‐ジメトキシベンジル(DMPM)、p‐メトキシフェニル(PMP)基、及び=CR15N((C−C)アルキル)
14又はR15はそれぞれ、独立して置換又は非置換された(C−C)アルキル基、置換又は非置換の(C−C)アルケニル基、又は置換又は非置換の(C−C)アルキニル基、及び、
各々におけるmは独立して0〜12の値を取る。
【0060】
保護された核酸塩基は、当該塩基の反応性官能基が保護されたヌクレオシド塩基である。同様に、保護された複素環は、前記複素環の反応性置換基が保護された複素環である。核酸塩基又は複素環は通常、アミド又は炭酸塩といったアミン保護基で保護されたアミン基を有する。例として、アデニン及びシトシンのアミン基は通常ベンゾイル及びアルキルエステルといった保護基でそれぞれ保護されており、グアニンのアミン基は通常イソブチリル基、アセチル基、又はt‐ブチルフェノキシアセチル基で保護されている。しかしながら、他の保護方法を考えることもできる。例として、迅速な脱保護のために、アデニン及びグアニンの当該アミン基はフェノキシアセチル基で保護され、シトシンの当該アミン基はイソブチリル基又はアセチル基で保護してもよい。前記核酸塩基又は複素環の保護基を除去する条件は、用いられた当該保護基に依存する。アミド保護基が用いられた場合には、前記オリゴヌクレオチドを、水酸化アンモニウムの濃縮溶液、N‐メチルアミン溶液、又はt‐ブチルアミンの水酸化アンモニウム溶液といった塩基性溶液で処理することで除去することができる。
【0061】
また、核酸塩基にはイソシチジン(isoC)及びイソグアノシン(IsoG)が含まれる。IsoC及びIsoGはワトソン−クリック塩基対機構を活用するために用いることができ、当該機構によりisoCとisoG間には下記構造式に示すように3つの水素結合が形成される。
【0062】
【化12】

【0063】
これらの塩基は平行及び逆平行二重鎖として対を成すことができ、DNA配列中において、DNA鎖伸長反応(例として、PCR)の際にDNAポリメラーゼによって認識される。それ故、これらの分子は、診断及び治療のためのRNA配列の一部としても非常に重要である(Jurczyk、S.C.,et.al., Helvetica Chimica Acta.,81,793−811(1998),and,Roberts,C.,et.al., Tetradhedron Lett.,36,21,3601−3604(1995)を参照,これらの教示はすべて参照することにより本書に組み込まれる)。
【0064】
また、ヌクレオシド塩基には7‐デアザ‐リボヌクレオシドが含まれる。これらの7‐デアザ‐リボヌクレオシド(7‐デアザグアノシン及びアデノシン及びイノシンを含む)は、さらに当該7位に種々の置換基を導入することで修飾することができる。例として、修飾にはハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード)、アルキニル、トリメチルシリルアルキニル、プロピニルアミノトリフルオロメチル、又はプロピニルアミノフタルイミドの付加を含むことができる(Xiaohua Peng and Frank Seela, Round Table on Nucleosides,Nucleosides and Nucleic Acids,IRT−XVII,Sep 3−7,page 82(2006),Bern,Switzerlandを参照,これらの教示はすべて参照することにより本書に組み込まれる)。
【0065】
特に、7‐デアザ‐2’‐デオキシヌクレオシドは前記RNA配列中のdグアノシン塩基の代わりに取り入れることができ、オリゴデオキシヌクレオチドのクランピングを減少させるため、配列解析において分離能の向上をもたらす。この修飾は、相補鎖とのハイブリダイゼーション過程での配列のtm値を減少させない。この修飾を施したDNA及びRNAは、診断及び治療分野において、多くの生物学的意義のある特性を有している(N.Ramazaeva,et.al.,XIII International Round Table,Nucleosides,Nucleosides and Their Biological Application、Montpellier,France,Sep.6−10(1998),poster304;Ramazaeva,N.,et.al., Helv.Chim.Acta.,80,1809(1997),本書にて引用;Sheela,F.,et.al., Helvetica Chimica Acta.,73,1879(1990)を参照,これらの教示はすべて参照することにより本書に組み込まれる)。RNAにおいては、RNA分子は二次構造を取る傾向が非常に強いので、G−C塩基対の影響はより顕著である。グアノシンを7‐デアザ‐リボグアノシンに置換することは、RNAを用いた治療及び診断において非常に有意義である。7位が置換された7‐デアザ‐リボヌクレオシドは、G−C塩基対の特性を変えることなく種々のリガンド及び発色団を7位に結合させられる可能性があるので、有意義である。
【0066】
アラ‐2’‐O‐メチルヌクレオシド
分子モデリング実験より、我々は、オリゴヌクレオチド中の2’‐O‐メチル‐アラ‐グアノシン残基が当該糖に固い2’‐エンド配座(サウス/イースト)を取らせることを見出した。前記グアノシンユニットは、塩基と2’‐アラ‐O‐メチル基の強い立体反発を有している。
アラ‐2’‐O‐メチル‐アデノシン、シトシン、ウラシルのようなヌクレオシド塩基は、アンチ配座を好むようである。
【0067】
2’‐O‐メチル修飾塩基を用いた、平行、逆平行、環状配列等のような定義されたトポロジーを伴うオリゴヌクレオチドの好ましいデザイン
【0068】
【化13】

【0069】
新しい代謝拮抗物質としての(2’)‐O‐メチル‐アラビノヌクレオシド及び三リン酸塩のポテンシャル
(2’)‐O‐メチル‐アラビノヌクレオシドの前記潜在的能力に加えて、本解析のヌクレオシドは、ヌクレオシドに基づいた治療応用への潜在的可能性を有している。それ故、N‐9‐[β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(アラG)は、B‐リンパ芽球よりもT‐リンパ芽球において高い効率を示すグアノシンヌクレオシドアナログである。アラGはプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)による分解に対して比較的耐性で、T‐リンパ芽球における前記選択的細胞毒性は、PNP活性非存在下でのデオキシグアノシンによる細胞毒性と同程度である。このデオキシグアノシン及びその類縁アナログによる細胞腫特異的細胞毒性の分子メカニズムについては、ほとんどわかっていない。しかしながら、最近の研究により、dGTPのミトコンドリア内蓄積及びDNA損傷修復阻害による、このメカニズムにおけるミトコンドリアの役割が示唆されている。アラGの当該三リン酸塩へのリン酸化における律速段階は、当該一リン酸塩への最初のリン酸化である。この最初のリン酸化反応は、前記ミトコンドリアのマトリックスに局在するデオキシグアノシンキナーゼ(dGK)及び前記核のサイトゾルに局在するデオキシシチジンキナーゼ(dCK)という2つの異なる酵素によって触媒される。細胞抽出液中のアラGリン酸化活性だけでなく、精製したdCK及びdGKを用いた研究により、dGKはアラG濃度が低いときの主たるアラGリン酸化酵素であり、dCKはアラG濃度が高いときにより重要なリン酸化酵素であることが示唆されている。これらの結果は、アラG濃度が低いときにはミトコンドリアDNAに優先的に取り込まれる結果と整合している。臨床試験におけるネララビン、アラGの投与毒性は、神経毒性である。また、副作用には、筋疾患、骨髄抑制、及びpe感受性の喪失といったミトコンドリア毒性薬による症状と似た症状が含まれる。
【0070】
1‐[β‐D‐アラビノフラノシルシチジン、2‐フルオロ‐2’‐アラビノフラノシルアデニン、及び2‐クロロ‐デオキシアデノシンといったヌクレオシドアナログは、一般に血液悪性腫瘍の治療に用いられている。これらの化合物はヌクレオシドトランスポーターによって細胞膜を横断して輸送され、細胞内ではヌクレオシド・ヌクレオチドキナーゼによって当該三リン酸誘導体へとリン酸化される。その後、前記ヌクレオシドアナログ三リン酸誘導体はDNAへと取り込まれ、DNA鎖の伸長停止やその他のDNA異常を引き起こす。DNA複製は核内とミトコンドリアマトリックス内の両方で行われているので、ヌクレオシドアナログの標的になり得るものは2つある。
【0071】
ヌクレオシド抗代謝拮抗剤
我々の発明によるヌクレオシド(式2A及び2B)は、癌やウィルス感染症といった多くの疾患を治療するための治療薬として用いられることが期待できるので、ヌクレオシドをベースとした抗代謝拮抗剤の分野で現在用いられている多くのテクノロジーについて議論することは適切である。前記概説がヌクレオシド抗代謝拮抗剤とそれらの癌化学療法における有効性の概要を説明し、抗ウィルス剤については以下に説明する。
前記概説がヌクレオシド抗代謝拮抗剤とそれらの癌化学療法における有効性の概要を説明し、抗ウィルス剤については以下に説明する。
【0072】
併用化学療法において、ヌクレオシドをベースとする2つの抗代謝拮抗剤と、1又は1以上のヌクレオシドの組み合わせの併用は、より優れた治療効果をもたらす。それ故、デオキシシチジンの新しいヌクレオシド抗代謝拮抗剤であり、構造及び代謝の両方においてシタラビン(アラ‐C)と似ていて、ヌクレオシド抗代謝剤でもあるゲムシタビン(dFdC)が、白血病細胞の増殖に対する併用化学療法として用いられた。同様に、併用化学療法におけるゲムシタビン及び他のヌクレオシド抗代謝剤は、培養下での正常及び白血病細胞の増殖に対しても(Lech−Maranda,E.,Korycka,A., and Robak,T., Haematologica,85,issue6,588−594(2000))も非常に有用であることが明らかとなった。デオキシシチジンの新しいヌクレオシド抗代謝拮抗剤であり、構造及び代謝の両方においてシタラビン(アラ‐C)と似ていて、ヌクレオシド抗代謝剤でもあるゲムシタビン(dFdC)が、白血病細胞の増殖に対する併用化学療法として用いられた。
【0073】
この仕事についてのさらなる引用文献、応用、用途、研究報告、及びコメントには以下のものが含まれる。
(13)DMDCの抗増殖活性はシチジンデアミナーゼの阻害により調節される。
Cancer Research,58,1165−1169,March 15(1998),Hiroyuki Eda,Masako Ura,Kaori F.−Ouchi,Yutaka Tanaka,Masanori Miwa, and Hideo Ishitsuka.
要旨:新規の2’‐デオキシシチジン(2’‐dCyd)アナログ、2’‐デオキシ‐2’‐メチリデンシチジン(DMDC)、ヌクレオシド抗代謝剤は、多種の癌細胞株において抗癌剤として非常に前途有望であることが明らかとなった。研究は作用モード及び作用メカニズムを確立するために行われた。さらに、ゲムシタビンと他の修飾ヌクレオシドであるテトラヒドロウリジンを用いた併用化学療法も評価され、期待がもてることがわかった。
【0074】
(14)血液悪性腫瘍の治療におけるヌクレオシドアナログ。
S.A.Johnson, Expert Opin.Pharmacother.,2(6),929−943,June 1(2001).
要旨:この論文は、種々のヌクレオシド抗代謝剤を細胞毒として総括している。シタラビン、クラドリビン、フルダラビン、ゲムシタビン、ネララビン、クロファラビン、及びトロキサシタビンといった多くの例が治療特性の詳細/目録として選ばれている。前記抗癌剤の多くが本来は免疫抑制的であるとの指摘が興味深い。
【0075】
(15)潜在的抗腫瘍剤としての1‐(2‐デオキシ‐2‐イソシアノ‐β‐D‐アラビノフラノシル)シトシン及び関連ヌクレオシドの合成。
A.Matsuda,A.Dan,N.Minakawa,S.J.Tregear,S.Okazaki,Y.Sugimoto, and T.Sasaki, J.Med.Chem.,36(26),4190−4194,December 24(1993),Nucleosides and nucleotides,123.
要旨:この論文は、ヌクレオシド抗代謝剤であるβ‐D‐アラビノフラノシルシトシン、ヌクレオシド抗代謝剤であるβ‐D‐アラビノフラノシルウラシル、及びヌクレオシド抗代謝剤であるβ‐D‐アラビノフラノシルチミンに関連した種々のヌクレオシドの新規化学的修飾の合成について詳細に説明している。中程度の抗腫瘍活性のみ認められた。
【0076】
(16)抗代謝剤としてのヌクレオシド:チオグアニン、メルカプトプリン:抗代謝剤としての当該アナログ及びヌクレオシド。
G.H.Elegemeie, Curr.Pharm.Des.,9(31),2627−2642,January 1(2003).
要旨:この論文は、既知のプリン−ベース抗代謝剤、及びチオプリン−ベースのヌクレオシド抗代謝剤の種々の修飾を総括している。前記チオプリン−ベースのヌクレオシド抗代謝剤の多くの有害副作用を踏まえて、安全な治療薬としての他の手法及び修飾について議論している。
【0077】
(17)ピリミジンアナログと当該ヌクレオシドの代謝。
G.C.Daher,B.E.Harris, and R.B.Diasio, Pharmacol.Ther.,48(2),189−222,January 1(1990).
要旨:この論文では、ヌクレオシド抗代謝剤、特にピリミジンヌクレオシド代謝剤の作用モード、及びそれらがどうやって細胞内環境で細胞毒性を発揮するかについて議論している。最もよく知られた4つのピリミジン−ベースヌクレオシド抗代謝剤、すなわち、フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、シトシンアラビノシド、及びアザシチジン。
【0078】
(18)癌細胞におけるヌクレオシド抗代謝剤の輸送:ヌクレオシド抗癌剤:癌化学療法に対する抵抗性におけるヌクレオシド輸送の役割。
V.L.Damaraju,S.Damaraju,J.D.Young,S.A.Baldwin,J.Mackey,M.B.Sawyer, and C.E.Cass, Oncogene,22(47),7524−7536,October 20(2003).細胞内での抗代謝剤、及び種々の可能なメカニズムの概要。
要旨:この論文は、ヌクレオシド抗代謝剤の細胞内への輸送メカニズムについて議論し、hENTs、hCNTsといった種々の因子と、それらのヌクレオシド剤(有害な化学療法)の輸送における役割について概説している。この理解は、より優れたヌクレオシド抗代謝剤デザインのために非常に重要である。
【0079】
(19)多機能性抗腫瘍剤としてのヌクレオシドとアナログ:広域活性を有した新規多機能性抗腫瘍ヌクレオシドとしての1‐(3‐C‐エチニル‐β‐D‐リボ‐ペントフラノシル)‐シトシン、1‐(3‐C‐エチニル‐β‐D‐リボ‐ペントフラノシル)‐ウラシル、及びそれらの核酸塩基アナログ。
H.Hattori,M.Tanaka,M.Fukushima,T.Sasaki, and A.Matsuda, Nucleosides and nucleotides,158,39(25),5055−5011,December 6(1996).
要旨:この論文は、多機能性抗腫瘍ヌクレオシド抗代謝剤の開発戦略としての新規修飾(1‐(3‐C‐エチニル‐β‐D‐リボ‐ペントフラノシル)ウラシル、EUrd)の合成について説明している。著者は、“生化学的に活性な”エチニル基をウラシルヌクレオシドに導入し、修飾ウリジン(ベータ‐D‐リボ‐ペントフラノシル)ウラシル)とした。しかしながら、中程度の生物学的活性のみが認められた。
【0080】
(20)TAS−106、1‐(3‐C‐エチニル‐β‐D‐リボ‐ペントフラノシル)‐シトシンの抗腫瘍活性及び薬物動態。
Y.Shimamoto,A.Fujioka,H.Kazuno,Y.Murakami,H.Ohshima,T.Kato,A.Matsuda,T.Sasaki, and M.Fukushima, Jpn.J.Cancer Res.,92(3),343−351,March 1(2001).
要旨:この論文は、シトシンヌクレオチドの3‐C‐エチニル修飾の合成を説明した先行論文と同様である。この修飾により、癌化学療法に有益な抗腫瘍活性と強い細胞毒性を有し、副作用がより少ないことが明らかな修飾ヌクレオシド抗代謝剤が得られる。
【0081】
(21)5‐フルオロウラシルと3‐炭素鎖から分離されたN‐(2‐クロロエチル)‐N‐ニトロソウレア部の組み合わせ:5‐フルオロウラシルと3‐炭素鎖から分離されたN‐(2‐クロロエチル)‐N‐ニトロソウレア部を分子的に組み合わせたマウスにおける抗腫瘍活性の生成。
R.S.McElhinney,J.E.McCormick,M.C.Bibby,J.A.Double,M.Radacic, and P.Dumont, J.Med.Chem.,39(7),1403−1412,March 29(1996).Nucleoside analogs,14.
要旨:この論文は、ヌクレオシド抗代謝剤である5‐フルオロウラシルとN‐(2‐クロロエチル)‐N‐ニトロソウレア部の結合による組み合わせに由来する修飾ヌクレオシドを説明している。ある程度の抗腫瘍活性が認められた。
【0082】
(22)調和したヌクレオシド輸送のDNA合成阻害剤による調節。
J.Pressacco,J.S.Wiley,G.P.Jamieson,C.Erlichman, and D.W.Hedley, Br.J.Cancer,72(4),939−942,October 1(1995).
要旨:この研究は、デノボのヌクレオシド合成経路の当該段階における感受性の高いヌクレオシドトランスポーター(es)の活性の測定及び調節と、それによるヌクレオシド抗代謝剤の制御を目的として行われた。ヒドロキシウレア及び5‐フルオロウラシル(5‐FU)といったDNA前駆体のデノボ合成を阻害するDNA合成阻害剤はesの発現増加を引き起こしたのに対し、別のヌクレオシド抗代謝剤であるシトシンアラビノシド(アラ‐C)はes発現レベルの有意な増加は引き起こさなかった。
【0083】
(23)M.Moorghen,P.Ince,K.J.Finney,A.J.Watson, and A.L.Harris, In Vitro Cell Dev.Biol;Br.J.Cancer,72(4),939−942,October 1(1995).27A(11),873−877,November 1(1991).
要旨:ヌクレオシド輸送阻害剤はヌクレオシド抗代謝剤の生物活性を調節する。この論文では、ヌクレオシド輸送を担う酵素と結合しうるニトロベンジルチオイノシン(NBMPR)及びジピリダモールといったヌクレオシド輸送阻害剤の効果が研究されている。
【0084】
(24)α1‐酸性糖タンパクの結合低下を伴うジピリダモールアナログによるチミジル酸合成酵素(TS)阻害剤の細胞毒性の増強。
N.J.Curtin,K.J.Bowman,R.N.Turner,B.Huang,P.J.Loughlin,A.H.Calvert,B.T.Golding,R.J.Griffin, and D.R.Newell, Br.J.Cancer,80(11),1738−1746,August 1(1999).
要旨:本著者によって、ヌクレオシド輸送阻害剤を開発することにより、当該ヌクレオシド抗代謝剤の生物活性を促進する新規手法が用いられた。多くのジピリダモールが、ヌクレオシドの取り込みを阻害しうる活性を有し、それによりDNA合成を阻害しうることが示された。
【0085】
(25)1‐β‐D‐アラビノフラノシルシトシンへの自然発生的耐性を示す多剤耐性ヒト赤白血病細胞株(K562)の解析。
S.Grant,A.Turner,P.Nelms, and S.Yanovich, Leukemia,9(5),808−814,May 1(1955).
要旨:抗癌剤に伴う重要な問題の一つに、化学療法中に生じる多剤耐性(MDR)がある。この論文では、著者はヌクレオシドアナログ代謝剤である1‐β‐D‐アラビノフラノシルシトシン(アラ‐C)を用いた場合のMDRのメカニズムについて研究を行った。これらのヌクレオシドのモノリン酸塩の形成及び当該リン酸化を担う酵素が、耐性をコントロールする因子のようである。
【0086】
(26)クロファラビン:バイオエンビジョン/ILEX.
A.Sternberg, Curr.Opin.Investig.Drugs,4(12),1479−1487,December 1(2003).
要旨:この論文では、種々の型の腫瘍及び種々の型の癌の治療に有望な新規の修飾ヌクレオシド代謝剤であるクロファラビンについて議論している。
【0087】
(27)コルチコステロイド反応性のフルダラビンの肺毒性。
G.S.Stoica,H.E.Greenberg, and L.J.Rossoff(Division of Pulmonary and Critical Care Medicine,Long Island Jewish Medical Center,New Hyde Park,New York,11042−1101,USA.),Oncol.,25(4),340−341,August 1(2002).
要旨:修飾ヌクレオシド(フリーの5’‐ヒドロキシル基を有する)のみがヌクレオシド抗代謝剤ではなく、これらヌクレオシドの当該5’‐一リン酸塩もヌクレオシド抗代謝剤であり、前記フリーの5’‐ヒドロキシル基を有するヌクレオシドと同様の原理、すなわち、DNA合成時に取り込まれて(その結果として)DNA合成を止めることにより作用する。2位にフルオロ基を有するフルダラビンは、既知のヌクレオシド抗代謝剤であるアラ‐A(9‐β‐D‐アラビノフラノシルアデニン、ビダラビン)にフッ素を導入することにより開発された。本論文は、このヌクレオシド抗代謝剤の臨床的効用データ及び毒性への寄与について報告している。
【0088】
(28)非ヒト霊長類における、アラビノシル‐5‐アザシトシン(ファザラビン、NSC281272)の脳脊髄液薬物動態と脳室内及び髄空内投与による毒性。
R.L.Heideman,C.McCully,F.M.Balis, and D.G.Poplack, Invest.New Drugs,11(2−3),135−140,May 1(1993).
要旨:5‐アザ‐2’‐デオキシシチジン及び5‐アザ‐シチジンは大変強力な抗癌剤で、現在癌の化学療法に用いられている。新規ヌクレオシド抗代謝剤であるアラビノシル‐5‐アザシトシン(AAC)は構造的に5‐アザ‐2’‐デオキシシチジン及び5‐アザ‐シチジンに似ており、強い抗腫瘍活性も示す。本論文は、霊長類における臨床的評価について報告している。
【0089】
(29)週単位で投与したチアゾフリンの第1相試験及び生物学的評価。
T.J.Melink,G.Sarosy,A.R.Hanauske,J.L.Phillips,J.H.Bayne,M.R.Grever,H.N.Jayaram, and D.D.Von Hoff, Sel.Cancer Ther.,6(1),51−61,March 1(1990).
要旨:本論分は、他のヌクレオシド抗代謝剤であるチアゾフリン(2‐B‐D‐リボフラノシルチアゾール‐4‐カルボキサミド、NSC286193)を用いた薬理学的及び生化学的研究を報告している。プリンヌクレオシドそのものの合成の生合成経路に作用する別クラスのヌクレオシド抗代謝剤もある。このことは、DNA合成を阻害と抗腫瘍活性をもたらす。しかしながら、この化合物は、かなりのレベルの細胞毒性を伴うことがわかった。
【0090】
(30)FMCAを用いた軽度のリンパ球増殖性疾患患者由来ヒト腫瘍細胞におけるプリン及びピリミジンアナログの評価。
Aleskog,R.Larsson,M.Hoglund,C.Sundstrom, and J.Kristensen, Eur.J.Haematol.,62(5),293−299,May 1(1999).
要旨:この論文は、(CdA)、シタラビン(アラC)、及びゲムシタビンといった確立されている数少ないピリミジン抗代謝剤を用いた臨床研究データを報告している。細胞毒性について行った実験により、非ホジキンリンパ腫(NHL)、軽度NHL、及び急性白血病に対する有効性が明らかとなった。ゲムシタビン及びアラCは軽度NHLに対して有望であることが示された。
【0091】
(31)分化したHL‐60細胞の抗腫瘍剤誘発性アポトーシスに対する感受性変化。
G.Del,Bino,X.Li,F.Traganos, and Z.Darzynkiewicz, Leukemia,8(2),281−288,February 1(1994).
要旨:この研究では、細胞周期を変化させる薬剤又は化学物質が先に投与されていると(S‐期やアポトーシスの間)、化学療法薬(放射線を含む)、ヌクレオシド抗代謝剤の有効性が減少するようであることが示された。反対に、細胞周期を変化させる薬剤又は化学物資を前記とは逆の順番で投与した場合には、細胞死又はアポトーシスの促進が期待される。
【0092】
(32)特定の天然ヌクレオシドとそれらの合成アナログのポーラログラフ的特性と潜在的発癌性。
L.Novotny,A.Vachalkova, and A.Piskala, Bioenerg.,48(1),129−134,February 1(1999).
要旨:一群のヌクレオシド代謝剤から選んだ一連の天然、合成ヌクレオシドについて、潜在的発癌性が研究された。種々のヌクレオシド代謝剤が発癌性を有することは特筆すべき興味深いことである。
【0093】
(33)この論文は次の本からの引用である。“薬剤耐性と選択性、生化学的且つ細胞学的根拠”、Enrico Mihich編集、Roswell Park Memorial Cancer Institute,Buffalo,NY;Academic Press(1973),Pages 83−93,第3章。交差耐性と付帯感受性、Dorris,J.Hutchinson and Franz,A.Schmis.
要旨:多くのプリン及びピリミジン抗代謝剤を網羅するこの論文は、E.Michich(Roswell Park Memorial Cancer Institute,Buffalo,NY)によって編集された本の章の一部であり、多くの著名な科学者(概して抗癌化学療法の分野を含む)によって書かれたものである。抗癌剤と特に修飾プリン及びピリミジンからなるヌクレオシド抗代謝剤に対する交差耐性は、早期から認識されていた重要な議題である。この現象のさまざまな機構が研究された。ヌクレオシド抗代謝剤は癌化学療法において非常に有望で効果的だが、この章では概して有意な細胞毒性だけでなく深刻な非有効性を取り上げている。この論文は前記欠点を解消するための種々の取り組みを提示している。
【0094】
(34)併用化学療法におけるゲムシタビン及びその他ヌクレオシド抗代謝剤;マウス白血病L1210又はP388、及びヒト正常細胞と白血病細胞のインビトロでの増殖に対するゲムシタビンとシタラビンの相互作用。
E.Lech−Maranda、A.Korycka, and T.Robak, Haematologica,85(6),588−594.
背景と目的:ゲムシタビン(dFdC)はデオキシシチジンよりなる新規のヌクレオシド抗代謝剤であり、当該構造と代謝の両面においてシタラビン(アラ‐C)と類似している。単独投与、他の薬剤との併用投与のいずれにも関わらず、血液悪性腫瘍におけるdFdCの有効性についてはほとんどわかっていない。本研究では、我々はアラ‐Cの細胞毒性がdFdCと併用した場合に増強されるかについて明らかにすることを試みた。
研究方法:本研究のインビボ実験として、L1210又はP388白血病を有するマウスにdFdCとアラ‐Cを投与した。前記薬剤は、以下の投与計画に従い単独及び併用で投与した。アラ‐CとdFdCの同時投与、アラ‐Cの前にdFdCを投与、及び、dFdCの前にアラ‐Cを投与。白血病に対する当該治療の有効性(生存期間の増加、ILS、と定義)は、前記投与群(T)の生存期間の中間値(MST)の当該コントロール群(C)の当該中間値に対する割合で評価した:ILS=[(MST(C)/MST(T)−1]×100。
本研究のインビトロ実験としては、正常な顆粒細胞‐マクロファージ コロニー形成ユニット(CFU−GM)細胞を、慢性骨髄性白血病(CML)患者由来のCFU−GM細胞と同様に、dFdC又はアラ‐Cのいずれか、もしくは適正濃度で組み合わせたこれら薬剤とともに培養した。
結果:前記インビボ実験から、解析した2種類の白血病において、dFdCをアラ‐Cの前に投与、及びdFdCをアラ‐Cと同時に投与した併用治療は、dFdC又はアラ‐Cの単独投与よりも効果的であることが明らかとなった。他の投与計画(dFdCの前にアラ‐Cを投与)では、前記投与群マウス(L1210又はP388白血病を有する)の生存期間はdFdC単独投与群に比べて有意には増加しなかった。
前記インビトロ実験からは、アラ‐Cと併用したdFdCは、CML CFU−GM細胞だけでなく正常細胞に対しても相加的に作用することが明らかとなった。さらに、前記併用投与した薬剤は、CML CFU−GM細胞が形成するコロニーの増殖を、正常CFU−GM細胞よりも顕著に阻害した。この違いは、最も高濃度で薬剤を併用した場合には統計的に有意であった。
解釈と結論:ゲムシタビンはアラ‐Cの活性を増加させる。これらの薬剤はDNAに取り込まれてDNA鎖の伸長を阻害し、さらにdFdCはアラ‐Cの細胞毒性に影響を与えるので、我々の結果は前記薬剤がこのようなレベルで作用することにより説明できる。アラ‐Cと併用したdFdCは、CML及び他の血液悪性腫瘍の治療において、将来重要な意義を有するかもしれない。ゲムシタビンを含有する投薬計画は、進行性非小細胞肺癌、膵臓癌、又は膀胱癌の標準的治療方法の範疇のものである。ゲムシタビンはヌクレオチドアナログであり、その細胞毒性はゲノムDNAへの取り込みとその結果引き起こされるDNA合成阻害と相関している。しかしながら、ゲムシタビンの取り込みがどのような機構により細胞死を導くのかについては未だ不明である。
実験系のデザイン:我々は、ゲムシタビンの取り込みがトポイソメラーゼI(topI)活性に及ぼす効果を調べるために、精製オリゴデオキシヌクレオチドを用いて、ゲムシタビン‐誘発性細胞毒性におけるtopI中毒の役割を癌細胞において解析した。
結果:我々は、ゲムシタビンがtopI切断部位の3’側から取り込まれると、topIが媒介するDNA切断が非切断鎖上で促進されることを見出した。この部位特異的促進効果は、topIによるDNA切断の増加に起因すると考えられ、ゲムシタビンによって誘発される構造変化と静電効果を原因とするようであった。ゲムシタビンはカンプトセシンによって誘発される切断複合体も促進する。また、我々は、ゲムシタビン処理したヒト白血病CEM細胞においてtopI切断複合体が検出されること、及び、topI欠損P388/CPT45細胞ではゲムシタビンに対する耐性が5倍増加することを検出しており、これらの結果はtopIの毒性がゲムシタビンの抗腫瘍活性に貢献できることを示している。
結論:本結果は、我々の最近の発見、すなわち、1‐β‐D‐アラビノフラノシルシトシンのDNAへの取り込みによりtopI切断複合体を誘発できること(P.Pourquier,et.al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,1885−1890(2000))を発展させたものである。カンプトセシンによって誘発されるtopI切断複合体の促進は、少なくともある程度は、ヒト乳癌又は肺癌細胞において、トポテカン及びイリノテカンと併用した際のゲムシタビンの相乗的又は相加的効果に寄与するかもしれない。
【0095】
(35)ヌクレオシドアナログであるゲムシタビンの前立腺癌に対する抑制効果。
M.V.Cronauer,H.Klocker,H.Talasz,F.H.Geisen,A.Hobisch,C.Radmayr,G.Bock,Z.Culig,M.Schirmer,A.Reissigl,G.Bartsch, and G.Konwalinka,(Department of Urology,University of Innsbruck,Austria), Prostate,28(3),172−181,March 1(1996).
ゲムシタビン(2’,2’‐ジフルオロ‐2’‐デオキシシチジン、dFdC)は、細胞のピリミジンヌクレオシド代謝の合成抗代謝剤である。初期のインビトロ実験では、前記薬剤は、アンドロゲン感受性ヒト腫瘍細胞株であるLNCaPならびにアンドロゲン非感受性細胞株であるPC‐3及びDU‐145の増殖及びコロニー形成に対して強力な効果を示した。最大阻害効果は、dFdCを30nMの低濃度で投与することで得られた。前立腺癌患者の転移性病変部位に由来する細胞株とは対照的に、正常な前立腺上皮の初代細胞では、濃度を100nMまで上げても抑制効果は全く認められなかった。ゲムシタビンの効果は、その天然アナログであるデオキシウリジンを10−100マイクロM共投与することで打ち消された。この抗腫瘍剤を将来的に進行性前立腺癌に臨床応用することを考慮して、我々は、前立腺癌細胞と骨髄顆粒球系−マクロファージ前駆細胞に対するゲムシタビンの効果を比較した。なぜならば、好中球減少症はゲムシタビン投与に共通した副作用だからである。2種類の細胞に対する作用のタイムコースは顕著に異なっていた。腫瘍細胞のコロニー形成の2分の3は、約3.5nMのゲムシタビンによって阻害された。同様の効果を顆粒球系−マクロファージ前駆細胞で得るには9nMを要した。ゲムシタビンを投与した腫瘍細胞の培養系にデオキシシチジンを共投与すると、ゲムシタビンの前記効果は完全に打ち消された。一方、ゲムシタビン投与から48時間後にデオキシシチジンを投与しても、前記腫瘍細胞に及ぼすゲムシタビンの作用を阻害することはできなかった。これとは対照的に、半数以上の骨髄顆粒球系−マクロファージ前駆細胞は、48時間後のデオキシシチジンの投与によってもまだ救済することができた。これらの発見及び前立腺の腫瘍細胞と正常細胞における前記感受性の顕著な違いは、ゲムシタビンが有望な物質であること、すなわち、進行性前立腺癌に投与した際の効用のさらに評価すべきで物質であることを示唆している。
【0096】
(36)シタラビンのエライジン酸−エステル(P−4055)、ヌクレオシド抗代謝剤:シタラビンと比較した際のP−4055(エライジン酸−シタラビン)の転移性及びs.c.ヒト腫瘍異種移植モデルにおける抗腫瘍活性:メラノーマ細胞における生物学的活性がシタラビンの当該活性よりも非常に高いことが明らかとなった。
Knut Breistol,Jan Balzarini,Marit Liland Sandvold,Finn Myhren,Marita Martinsen,Erik De Clercq, and Oystein Fodstad, Cancer Research,59,2944−2949,June 1(1999).
P−4055、シタラビンの5’‐エライジン酸(C18:1、不飽和脂肪酸)エステル、血液悪性腫瘍の治療において汎用されるヌクレオシド抗代謝剤、の抗腫瘍効果を数種類のヒト癌インビトロモデル系において解析した。
ヌードマウスを用いた最初の投与量決定試験では、P−4055の効果は毎日連続で投与した場合が最も高かった。ラジ バーキット軟膜リンパ腫癌腫症のヌードラットモデルでは、コントロールのシタラビン投与及び生理食塩水投与動物(各群ごとに5匹)では生存期間の中央値が13.2日であったのに対し、P−4055を投与した動物では5匹のうち3匹が長寿であった(>70日)。全身性ラジ白血病のヌードマウスモデルでは、P−4055を投与した動物10匹のうち8匹がシタラビン投与動物(生存期間の中央値、34.2日)と比べてより長く生存した(>80日)。
s.c.異種移植モデルにおいて、ボーラス投与、点滴、注射を毎日5日間行い、4週にわたって最大耐性容量のP−4055とシタラビンを投与して、7種類の腫瘍(3種類の黒色腫、1種類の肺腺癌、1種類の乳癌、及び2種類の骨肉腫)に対する当該効果を解析した。P−4055は、3種類の悪性黒色腫すべてに対してと同様に、前記肺腺癌においても腫瘍の部分的又は完全な退縮を引き起こした。2種類の黒色腫では、当該活性はシタラビンの活性よりも優れていた。P−4055とシタラビンはいずれも、前記同じ腫瘍モデルを用いて過去に試験され、臨床的に確立されている数種類の薬剤よりも概して効果的であった。インビトロの研究では、ヌクレオシド担体に依存した輸送の阻害剤であるニトロベンジルメルカプトプリン リボシド及びジピリダモールが、細胞のシタラビン感受性は強力に低下させるが、P−4055に対する感受性は低下させない。このことは、P−4055は、シタラビンが細胞に取り込まれるメカニズムとは異なる/付加的なメカニズムを用いていることを示している。これらの結果は、少なくとも部分的には前記2種類の化合物間で認められたインビトロでの効率の違いを説明するものであり、また、当該データはP−4055の臨床研究での評価を強く支持するものである。
【0097】
(37)卵巣癌治療におけるゲムシタビン。
S.W.Hansen, Int.J.Gynecol.Cancer,11,Suppl.1,39−41,January 1(2001).
ゲムシタビンは、数種類の固形癌に対する活性が確立しているヌクレオシド抗代謝剤である。当該薬剤の卵巣癌患者における活性は、単独投与及び併用化学療法を受けた患者の両方において試験されている。ゲムシタビン単独投与の場合の奏効率は、過去に投与経験のある患者と投与経験のない患者の両方において13〜24%の範囲である。ゲムシタビン−シスプラチン又はゲムシタビン−パクリタキセルからなる二重投与では、投与経験のある患者においては、53%及び40%の奏効率をそれぞれ誘導した。3つの研究において、シスプラチンとゲムシタビンの併用を第一段階で行うことにより53%〜71%の患者において寛解が誘導された。ゲムシタビン及びパクリタキセルに加えてシスプラチン又はカルボプラチンのいずれかを含む三重投与が投与経験のある患者に対して行われ、100%の奏効率が観察された。投与経験のない患者には、毒性プロフィールがより良好となるのことから、ゲムシタビン、パクリタキセル、及びカルボプラチンの組み合わせが推奨される。この組み合わせによる活性は、患者全員において奏効が認められたが、特に25人の評価可能患者において非常に高かった。前記患者の60%において腫瘍の完全な退縮が認められ、40%において部分的退縮が認められた。これらの有望なデータに基づき、ゲムシタビン、パクリタキセル、及びカルボプラチンからなる三重投与が、USとヨーロッパでのランダム化試験に含まれている。
【0098】
(38)卵巣癌治療におけるゲムシタビン。
S.W.Hansen,M.K.Tuxen, and C.Sessa, Ann.Onc,10,Suppl.1,51−53,January 1(1999).
ゲムシタビンは、固形癌に対する活性が確立している新規のヌクレオシド抗代謝剤である。過去に投与経験のある患者では、前記薬剤を単独で投与した場合の奏効率は13%程度であった。8名の投与経験のある患者に対して行ったパイロットテストではすべての患者で寛解が得られ、投与経験のない患者でも評価可能患者(臨床的又はCA125の減少測定により評価)全員で寛解が得られた。用量制限毒性は主に血液学的である。
【0099】
(39)齧歯類P388白血病に対するインビトロ ゲムシタビン交差耐性の欠如。
W.R.Waud,K.S.Gilber,G.B.Grindey, and J.F.Worzalla, Pharmacol.,38(2),178−180,January 1(1996).
新規ピリミジン抗代謝剤であるゲムシタビンは、数種類の腫瘍(乳癌、小細胞及び非小細胞肺癌、膀胱癌、膵臓癌、及び卵巣癌)に対する臨床的抗腫瘍活性を有することが示されている。我々は、ゲムシタビンのさらなる治験のための患者選出に有益なガイドラインの作製及びゲムシタビンと組み合わせても非交差性となる薬剤の同定を目的として、8種類の薬剤耐性P388白血病を用いてゲムシタビン薬剤耐性プロファイルを調べた。多剤耐性P388白血病(ドキソルビシン及びエトポシド耐性の白血病)は、ゲムシタビンに交差耐性を示さなかった。ビンクリスチン(非多剤耐性)、シクロホスファミド、メルファラン、シスプラチン及びメトトレキサート耐性の白血病もゲムシタビン交差耐性ではなかった。1-β-D-アラビノフラノシルシトシン耐性白血病だけがゲムシタビン交差耐性だった。この結果は、(1)1-β-D-アラビノフラノシルシトシン投与経験のある患者は除外又は要注意観察を行う必要があること、(2)ゲムシタビン交差耐性の欠如はゲムシタビンを他薬剤と併用した際に治療上の相乗効果として寄与するかもしれないこと、を示唆している。
【0100】
(40)進行性肉腫に対するゲムシタビンの第2相試験。
S.Okuno,J.Edmonson,M.Mahoney,J.C.Bucker,S.Frytak, and E.Galanis, Cancer,94(12),3225−3229,June 1(2002).
背景:進行性肉腫患者に対する治療はもっぱら一次しのぎである。ヌクレオシド抗代謝剤であるゲムシタビンはデオキシシチジンのアナログであり、数種類の腫瘍に対する抗腫瘍活性が示されている。本研究の目的は、肉腫患者におけるゲムシタビンの臨床的活性を明らかにすることであった。
方法:本著者は、組織化学的に肉腫と確認された患者に対するゲムシタビンを、化学療法の前に1回投与することで評価した。非病変部位に投与する際には放射線治療も行った。治療はゲムシタビン1250mg/m(2)を30分以上かけて静脈内投与し、各週×3、のサイクルをq28日繰り返した。
結果:30名の患者のうち29名が評価可能であった。1名の患者は治験の開始を拒否した。年齢の中央値は50歳(22−81歳の範囲)、59%は男性で、35%は米国東海岸癌臨床試験グループの一般状態が0(vs.1又は2)であった。患者は組織化学的に平滑筋肉腫(7名は胃腸、4名は後腹膜、2名は下大静脈閉塞、3名は四肢で2名は子宮)、滑膜(2名)、悪性線維性組織球腫(2名)、線維肉腫(1名)、骨肉種(2名)、脂肪肉腫(1名)、血管肉腫(1名)、又は巨細胞(1名)である。患者は平均して2サイクル(1−8の範囲)投与された。患者の83%が病状進行のため継続を中断し、14%は毒性/拒絶のため中断した。血液学的毒性>又は=グレード3は患者の32%において認められ、白血球減少症と血小板減少症であった。食欲不振(6名でグレード1/2、1名でグレード3)、吐き気(7名でグレード1/2、1名でグレード3)、及び無気力(19名でグレード1/2)が非血液学的毒性として最も多く見られたものであった。1名はグレード3の浮腫と筋梗塞を呈した。別患者1名は、不可解な胸の痛み(グレード3)を呈した。子宮平滑筋肉腫では、少なくとも3ヶ月持続する部分的奏効が観察された。全体での奏効率は3%(95%信頼区間[CI]:0−95)だった。無増悪機関の中央値は2.1ヶ月(95%CI:1.8−3.0)であった。
結論:現行のゲムシタビン投与計画は許容可能な毒性レベルであることが証明されたが、この研究を発展させるのに必要な数の奏効を生じさせることができなかった。この投与計画は、進行性肉腫には推奨できない。
【0101】
(41)ゲムシタビン:薬理学的及び臨床額的総括。
M.Barton−Burke, Cancer Nurs.,22(2),176−183,April 1(1999).
過去数年において、抗癌治療の分野では画期的な新発展があった。そのような治療の一つにゲムシタビン(GemzarR)を用いるものがある。ゲムシタビンは、局所進行性(切除不能ステージII又はステージIII)又は転移性(ステージIV)膵腺癌の第一次治療薬として、1996年に食品医薬品局(FDA)に承認された抗代謝剤である。この新規のヌクレオシドアナログは天然のピリミジンヌクレオシドデオキシシチジンに似ているが、固有の作用機序を有している。ゲムシタビンを用いた臨床研究により、膵臓癌、非小細胞肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、及び小細胞肺癌における抗癌活性が示されている。膵臓癌患者に対する臨床試験では、ゲムシタビンの疾患関連症状に及ぼす効果を評価するために、臨床上有益効果(CBR)と呼ばれる新しい研究評価項目が用いられた。前記CBRは一般状況、痛み、及び体重増加からなる総合評価である。研究の結果、ゲムシタビンは、主たる容量制限毒性として骨髄抑制を伴う、比較的マイルドで安全性の高いプロファイルを有することが示された。本総括の目的は、この薬剤の投与を受ける患者の看護上の留意点はもちろん、ゲムシタビンの薬理学的総括に基づいた癌看護学、画期的な臨床治験評価基準、及び臨床パフォーマンスを供することである。
【0102】
(42)進行性非小細胞肺癌患者のためのゲムシタビンとカルボプラチン。
Domine,V.Casado,L.G.Estevez,A.Leon,J.I.Martin,M.Castillo,G.Rubio, and F.Lobo, Semin. Oncol.,28(3,Suppl.,10),4−9,June 1(2001).
進行性非小細胞肺癌患者の生存は依然として良くない。シスプラチンに基づいた化学療法では、最良の看護を行った場合と比べて、生存についてある程度の効果が得られる。新規ヌクレオシドであるゲムシタビン(Gemzar,Eli Lilly and Company,インディアナポリス、IN)は、活性がありよく許容されている。ゲムシタビン/シスプラチンの組み合わせは、シスプラチン単独よりも、奏効率と生存の有意な改善をもたらすことが示されている。ゲムシタビン/シスプラチンの効果を従来の組み合わせ(シスプラチン/エトポシド又はマイトマイシン/イホスファミド/シスプラチン)による効果と比較した第3相試験により、ゲムシタビン/シスプラチンの方が活性がより高いことが示された。しかしながら、これらの最善の組み合わせ方法については不明のままである。加えて、3週投与計画ではより少ない毒性でより高い用量強度が得られ、4週投与計画でも同様の効果であった。カルボプラチンを新規薬剤と組み合わせた場合の効果については目下検討中である。ゲムシタビン/カルボプラチンは、投与量が変更可能で非血液学的毒性が低い、良い選択肢のようである。前記4週投与計画では、ある研究においては、頻繁なグレード3/4の好中球減少症及び血小板減少症が引き起こされた。ゲムシタビンを1、8日目に投与し、カルボプラチンを1日目に投与する前記3週投与計画は、簡便で許容しやすい投与計画である。当該毒性プロファイルも深刻な症状もなく許容可能である。この投与計画は標準的投与計画の優れた選択肢として考慮することができる。
【0103】
(43)ゲムシタビン(Gemzar)のヒトTT細胞株の増殖及び神経内分泌活性に与える影響の予備的評価:免疫細胞化学的研究。
S.Dadan,B.Wolczynski,B.Sawicki,L.Chyczewski,A.Azzadin,J.Dzieciol, and Z.Puchalski, Cytobiol.,39(2),187−188,January 1(2001).
甲状腺髄様癌(MTC)治療の選択肢は、甲状腺の全摘出である。MTCの発症率が低いために、化学療法による効用の評価は難しい。ゲムシタビンは、1996年以来癌治療に用いられている抗代謝ヌクレオシドグループに属する新薬である。本研究の目的は、MTC由来ヒトTT細胞株の増殖及び神経内分泌活性に与えるゲムシタビンの影響を評価することであった。前記細胞は、10、25、及び50マイクログラム/mlの濃度のゲムシタビンに24時間暴露した。Hsu,et.al.,によるカルシトニン、クロモグラニンA、シナプトフィジン、及び神経特異的エノラーゼをTT細胞内で検出するためのアビジン-ビオチン過酸化物複合体(ABC)法に従い、免疫細胞化学的実験を行った。TT細胞の増殖活性に対するゲムシタビンの濃度依存的な阻害作用が観察された。また、前記免疫染色も、特に神経特異的エノラーゼにおいて低下していた。カルシトニンを検出する反応だけが持続的に促進されていた。
TT細胞の増殖活性に対するゲムシタビンの濃度依存的な阻害作用が観察された。また、前記免疫染色も低下していた。DMDCと同様の作用機序は、前記酵素の発現量が高い腫瘍において少しだけ活性化していた。本研究では、我々は、前記2種類の2’-dCyd抗代謝剤の抗腫瘍活性におけるCydデアミナーゼの役割を、13種類のヒト癌細胞株において解析した。Cydデアミナーゼの阻害剤であるテトラヒドロウリジンは、DMDCの抗増殖活性を低下させた(p=0.0015)。さらに、ヒトCydデアミナーゼの遺伝子を導入された腫瘍細胞は、インビトロとインビボの両方においてDMDCに対してより感受性となった。これらの結果は、CydデアミナーゼがDMDC活性に実質的に必須であることを示している。これとは対照的に、ゲムシタビンの抗腫瘍活性は、特にCydデアミナーゼが高い腫瘍細胞株において、テトラヒドロウリジンによってある程度にまで増加した(p=0.0277)。このことは、Cydレベルが高いとゲムシタビンが不活性化されることを示唆している。
解析したヌクレオシドとデオキシヌクレオシドのなかで、Cydデアミナーゼ及びdCydキナーゼの本来の基質であるdCydだけが、DMDCの抗腫瘍活性を150倍も抑制した。dCydキナーゼに対するDMDCのVmaxはdCydの値よりも8倍低いので、dCydキナーゼによるDMDCのDMDC一リン酸塩(DMDCMP)への活性化はdCydによって拮抗的に阻害されるかもしれない。加えて、ヒト癌異種移植片におけるdCyd濃度はCydデアミナーゼ活性のレベルと逆相関していた。それゆえ、Cydデアミナーゼのレベルが高いと、腫瘍では内在性dCydの細胞内濃度が下がり、結果としてdCydキナーゼによるDMDCからDMDCMPへの活性化が効率良く起きることが示唆される。これらの結果は、DMDCの効率は治療開始前の腫瘍組織でのCydデアミナーゼ活性を測定することで予測できるかもしれないこと、及びDMDCは新規治療様式に利用できるかもしれないことを示している。
【0104】
(44)DMDCの抗腫瘍活性はシチジンデアミナーゼの阻害によって調節される。
Hiroyuki Eda,Masako Ura,Kaori F.−Ouchi,Yutaka Tanaka,Masanori Miwa, and Hideo Ishitsuka,Cancer Research,58,1165−1169,March 15(1998).
我々は、新規の2’-デオキシシチジン(2’-dCyd)アナログ抗代謝剤2’-デオキシ-2’-メチリデンシチジン(MDMC)の効率は、ヒト癌異種移植片モデルにおいてシチジン(Cyd)デアミナーゼの腫瘍レベルと良く相関していることを明らかにした。DMDCはCydデアミナーゼレベルが高い腫瘍で活性が高いが、レベルが低いとわずかな活性しか生じなかった。これとは対照的に、DMDCと似た作用機序を有するゲムシタビン(2’,2’-ジフルオロデオキシシチジン)は、前記酵素のレベルが高い腫瘍においてのみ、わずかに活性を生じる。本研究では、我々は、前記2種類の2’-dCyd抗代謝剤の抗腫瘍活性におけるCydデアミナーゼの役割を、13種類のヒト癌細胞株において解析した。Cydデアミナーゼの阻害剤であるテトラヒドロウリジンは、DMDCの抗増殖活性を低下させた(p=0.0015)。さらに、ヒトCydデアミナーゼの遺伝子を導入された腫瘍細胞は、インビトロとインビボの両方においてDMDCに対してより感受性となった。これらの結果は、CydデアミナーゼがDMDC活性に実質的に必須であることを示している。これとは対照的に、ゲムシタビンの抗腫瘍活性は、特にCydデアミナーゼが高い腫瘍細胞株において、テトラヒドロウリジンによってある程度にまで増加した(p=0.0277)。このことは、Cydレベルが高いとゲムシタビンが不活性化されることを示唆している。
解析したヌクレオシドとデオキシヌクレオシドのなかで、Cydデアミナーゼ及びdCydキナーゼの本来の基質であるdCydだけが、DMDCの抗腫瘍活性を150倍も抑制した。dCydキナーゼに対するDMDCのVmaxはdCydの値よりも8倍低いので、dCydキナーゼによるDMDCのDMDC一リン酸塩(DMDCMP)への活性化はdCydによって拮抗的に阻害されるかもしれない。加えて、ヒト癌異種移植片におけるdCyd濃度はCydデアミナーゼ活性のレベルと逆相関していた。それゆえ、Cydデアミナーゼのレベルが高いと、腫瘍では内在性dCydの細胞内濃度が下がり、結果としてdCydキナーゼによるDMDCからDMDCMPへの活性化が効率良く起きることが示唆される。これらの結果は、DMDCの効率は治療開始前の腫瘍組織でのCydデアミナーゼ活性を測定することで予測できるかもしれないこと、及びDMDCは新規治療様式に利用できるかもしれないことを示している。
【0105】
(45)血液悪性腫瘍の治療におけるヌクレオシドアナログ。
S.A.Johnson, Expert Opin.Pharmacother.,2(6),929−943,June 1(2001).
ヌクレオシドアナログは抗代謝細胞毒の1グループであり、概してDNAに取り込まれる前に当該ヌクレオチドに代謝されなくてはならないものである。シタラビンは急性白血病の治療薬として確立されているものであり、基本的に分裂中の細胞に作用する。新規処方には、長期外来患者に適した髄腔内用リポソームでカプセル化された産物、及び経口用シタラビンオクホスファートが含まれる。ペントスタインはデオキシヌクレオチドの蓄積を引き起こすことで作用し、有毛細胞白血病に対しては効果的だが、寛容性の低さと関わっている。クラドリビンとフルダラビンは、慢性白血病(CLL)と軽度の非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療に優れた効果を有している。フルダラビンは前記2つのうちでより精力的に研究されており、近年CLLとNHLの併用治療に開発され、また、シタラビンとの併用治療は急性骨髄性白血病の治療として開発された。フルダラビンの免疫抑制効果は、非骨髄破壊的幹細胞移植を行う患者のコンディショニングに利用できる。ゲムシタビンは多くの固形癌の治療薬として確立されており、また、投与計画を延長することで血液悪性腫瘍においても効果的である。ネララビン、クロファラビン、及びトロキサシタビンを含むより新しい薬剤は現在臨床的評価を行っており、有望な活性を示している。
【0106】
(46)潜在的抗腫瘍剤としての1‐(2‐デオキシ‐2‐イソシアノ‐β‐D‐アラビノフラノシル)シトシン及び関連ヌクレオシドの合成。
A.Matsuda,A.Dan,N.Minakawa,S.J.Tregear,S.Okazaki,Y.Sugimoto, and T.Sasaki, J.Med.Chem.,36(26),4190−4194,December 24(1993),Nucleosides and nucleotides,123.
2’-デオキシ-2-イソシアノ-β-D-アラビノフラノシルシトシン(8,NCDAC)は、当該2’-アジド-2’-デオキシ-1-β-D-アラビノフラノシルウラシル派生体2a由来の強力な抗腫瘍抗代謝剤である。ウラシルとチミンアナログ6a及び8の6bも調整した。2’-デオキシ-2-イソシアノシチジン(14b)を合成する試みは、当該2’-αイソシアノ基を2’,3’-オキサゾリン派生体15bを供する当該3’-OH基への挿入により失敗した。イソシアノ派生体6a及び2’,3’-オキサゾリン派生体15aの塩基性及び酸性条件下での安定性を解析した。6a内のイソシアノ基は塩基性条件下で安定だが、弱い酸性条件下でも不安定で当該2’-βホルムアミド派生17を供した。化合物15aは室温でのH2O処理によって容易に当該2’-αホルムアミド派生体16に加水分解された。マウスとヒトの腫瘍細胞における8、6a、及び6bの細胞毒性をインビトロで解析し、アラ-Cの当該毒性と比較した。これらのヌクレオシドのうち、8はこれらの細胞株に対してある程度毒性であった。また、8のインビトロでのルイス肺癌に対する抗腫瘍活性を解析し、8は腫瘍サイズをある程度抑制することがわかった。
【0107】
(47)抗代謝剤としてのヌクレオシド:チオグアニン、メルカプトプリン:抗代謝剤としての当該アナログ及びヌクレオシド。
G.H.Elegemeie, Curr.Pharm.Des.,9(31),2627−2642,January 1(2003).
メルカプトプリン(6MP)及び6-チオグアニン(6TG)は天然プリンであるヒポキサンチン及びグアニンのアナログである。メルカプトプリン及び6-チオグアニンはいずれもヒポキサンチン-グアニン ホスホリボシルトランスフェラーゼの基質であり、当該リボヌクレオチドである6-チオグアノシン一リン酸塩(6-チオGMP)及び6-チオイノシン一リン酸塩(T-IMP)にそれぞれ変換される。これらの一リン酸塩の蓄積は、いくつかの必須代謝反応を阻害する。今日、これらのチオプリン塩基は、骨髄性及び急性リンパ球性白血病患者における寛解の誘導及び維持に重要な薬剤である。これらの臨床的に証明された重要性にも関わらず、6MP及び6TGはある臨床上の欠点を有しており、このことがプリン派生体の治療効果促進のための研究を促している。前記抗腫瘍活性が改善された他の新規のメルカプトプリン及びチオグアニンアナログ、ならびにそれらのヌクレオシドを調整するために大変な努力が行われた。これらのチオプリンのある腫瘍細胞株に対する効果により、これらのメルカプトプリンアナログ及びこれらのヌクレオシドは、これらが正常細胞よりも腫瘍細胞に選択的な効果を示すか、あるいは、これらが6MPと6TGに耐性となった疾患を有する患者に対しても有効か、について検討する必要があることが示唆された。本総括では、抗代謝剤としてのメルカプトプリンアナログ及びそれらのヌクレオシドに焦点を当てる。
【0108】
(48)ピリミジンアナログと当該ヌクレオシドの代謝。
G.C.Daher,B.E.Harris, and R.B.Diasio, Pharmacol.Ther.,48(2),189−222,January 1(1990).
前記ピリミジン抗代謝剤は、天然に存在するピリミジンであるウラシル、チミン、及びシトシンの塩基及びヌクレオシドアナログから構成される。典型的な抗代謝剤であるので、これら薬剤は内在性の核酸前駆体と構造的に非常に類似している。前記構造上の相違点は、通常、ピリミジン環内炭素のうちの1つの炭素の置換、あるいはピリミジン又は糖環(リボース又はデオキシリボース)に結合する水素部位における置換である。上述した相違点にも関わらず、これらのアナログは細胞内に依然として取り込まれ、内在性ピリミジンに用いられる同化又は異化経路を介して代謝される。細胞毒性は、前記抗代謝剤が前記天然に存在するピリミジン代謝物の代わりに重要な分子(例としてRNA、又はDNA)に取り込まれた場合、あるいは、重要な酵素に対して前記天然に存在するピリミジン代謝物と競合した場合に生じる。近年、4種類のピリミジン抗代謝剤が、癌の臨床治療に頻繁に用いられている。これらには、前記フルオロピリミジン フルオロウラシル及びフルオロデオキシウリジン、ならびに前記シトシンアナログ、シトシンアラビノシド及びアザシチジンが含まれる。
【0109】
(49)癌細胞におけるヌクレオシド抗代謝剤の輸送:ヌクレオシド抗癌剤:癌化学療法に対する抵抗性におけるヌクレオシド輸送の役割。
V.L.Damaraju,S.Damaraju,J.D.Young,S.A.Baldwin,J.Mackey,M.B.Sawyer, and C.E.Cass, Oncogene,22(47),7524−7536,October 20(2003).細胞内での抗代謝剤、及び種々の可能なメカニズムの概要。
ヌクレオシド抗癌剤の臨床的効果は、ヌクレオシド薬剤の細胞内への移動を担うトランスポーター、薬剤を細胞内区画から排出する機構、及び活性代謝物での細胞内代謝の複雑な相互作用に依存している。ヌクレオシドトランスポーター(NTs)は使用済みヌクレオシドのサルベージにおける重要な決定因子であり、ヌクレオチド抗代謝剤の標的細胞への取り込みを媒介する。本書評の焦点は、前記2種類のヒトヌクレオシドトランスポーター(hENTs、hCNTs)と、細胞毒性を有するヌクレオシド化学療法薬の輸送におけるそれらの役割である。ヌクレオシド抗癌剤に対する耐性は、NTsを用いる際の臨床上の主たる問題である。薬剤トランスポーターにおける単一ヌクレオチド多型(SNPs)は、ヌクレオシド薬に対する個人間の反応性の差異に寄与している。この書評で我々は、ヒトNTsの機能及び分子特性ならびにヌクレオシド薬剤耐性におけるそれらの潜在的役割を総括し、薬剤耐性解明に向けたNTsの遺伝的多型解析の潜在的有用性を議論している。
【0110】
(50)多機能性抗腫瘍剤としてのヌクレオシドとアナログ:広域活性を有した新規多機能性抗腫瘍ヌクレオシドとしての1‐(3‐C‐エチニル‐β‐D‐リボ‐ペントフラノシル)‐シトシン、1‐(3‐C‐エチニル‐β‐D‐リボ‐ペントフラノシル)‐ウラシル、及びそれらの核酸塩基アナログ。
H.Hattori,M.Tanaka,M.Fukushima,T.Sasaki, and A.Matsuda, Nucleosides and nucleotides,158,39(25),5055−5011,December 6(1996).
我々は以前、潜在的多機能抗腫瘍ヌクレオシド抗代謝剤として、1-(3-C-エチニル-β-D-リボ-ペントフラノシル)ウラシル(EUrd)を設計した。それは種々のヒト腫瘍細胞に対して、インビトロ及びインビボにおいて、強力で広域な抗腫瘍活性を示した。当該構造-活性相関を調べるために、5-フルオロウラシル、チミン、シトシン、5-フルオロシトシン、アデニン、及びグアニン派生体といった種々のEUrdヌクレオシドアナログを、1-O-アセチル-2,3,5-トリ-O-ベンゾイル-3-C-エチニル-α-,β-D-リボ-ペントフラノース(6)と当該パートリメチルシリル化核酸塩基をルイス酸としてSnCl4又はTMSOTf存在下でCH3CN中で縮合させ、続いて脱ベンゾイル化させることにより合成した。これらの3’-C-エチニルヌクレオシドのマウス白血病L1210及びヒト鼻咽頭KB細胞に対するインビトロでの腫瘍細胞増殖阻害活性は、1-(3-C-エチニル-β-D-リボ-ペントフラノシル)シトシン(ECyd)及びEUdが、前記シリーズ中最も強い阻害剤(各々、L1210細胞に対するIC50値は0.016及び0.13マイクロM、KB細胞に対しては0.028及び0.029マイクロM)であることを示した。5-フルオロシトシン、5-フルオロウラシル、及びアデニンヌクレオシドはより低い活性を示した(IC50値が0.4−2.5マイクロM)が、チミン及びグアニンヌクレオシドは300マイクロMまで上げても活性を全く示さなかった。我々は次に、ECyd及びEUrdの36種類のヒト腫瘍細胞株に対する腫瘍細胞増殖阻害活性をインビトロで評価し、それらがこれらの細胞株に対して非常に効果的(IC50値がナノM〜マイクロMの範囲)であることを見出した。これらのヌクレオシドは阻害スペクトラムが類似していた。3つの胃癌、3つの大腸癌、2つの膵臓癌、1つの腎臓癌、1つの乳癌、及び1つの胆管癌を含む11のヒト腫瘍異種移植断片に対するECyd及びEUrdのインビトロでの抗腫瘍活性を、5-フルオロウラシルの当該活性と比較した。ECyd及びEUrdは、0.25及び2.0mg/kgで10日間連続で髄腔内投与した場合には、ヒト腫瘍11種類のうちの9種類、11種類のうちの8種類でそれぞれ高い腫瘍抑制率(コントロールに対して73−92%抑制)を示した。一方、5-フルオロウラシルは1種類の腫瘍に対してのみ、高い抑制効果を示した。そのような優れた抗腫瘍活性は、ECyd及びEUrdをヒト癌治療に用いることを検討する価値があることを示唆している。
【0111】
(51)TAS−106、1‐(3‐C‐エチニル‐β‐D‐リボ‐ペントフラノシル)‐シトシンの抗腫瘍活性及び薬物動態。
Y.Shimamoto,A.Fujioka,H.Kazuno,Y.Murakami,H.Ohshima,T.Kato,A.Matsuda,T.Sasaki, and M.Fukushima, Jpn.J.Cancer Res.,92(3),343−351,March 1(2001).
我々は、新規ヌクレオチド抗代謝剤である1-(3-C-エチニル-β-D-リボ-ペントフラノシル)シトシン(ECyd、TAS−106)の最適投与計画を決定するために、当該処方計画が抗腫瘍活性に与える影響をインビトロ及びインビボにおいて解析した。TAS−106のヒト腫瘍に対するインビトロでの細胞毒性を、3通りの薬剤投与期間で評価した。TAS−106はわずか4時間の投与でも非常に強い細胞毒性を示し、24及び72時間の投与で細胞毒性はほぼ頭打ちした。これらの結果は、TAS−106の細胞毒性が最大となるのに長期間投与は必要ないことを示唆している。TAS−106のインビボでの抗腫瘍活性を、ヒト腫瘍を有するヌードラットモデルにおいて、週1回、週3回、及び週5回で2又は4週間続けるという3通りの投与計画で比較した。TAS−106は3通り全ての投与計画において深刻な細胞毒性もなく強力な抗腫瘍活性を示したが、前記抗腫瘍活性はこれらのモデルでは顕著な投与計画依存性は示さなかった。腫瘍を有するヌードラットに[(3)H]TAS−106を単回髄腔内投与を行った場合には、腫瘍組織の放射能活性は種々の正常組織の当該活性と比べて長期にわたって高いままであった。さらに、TAS−106の前記腫瘍における代謝を調べたところ、TAS−106ヌクレオシド(当該活性代謝物、TAS−106の三リン酸塩を含む)が長期にわたって高濃度のままであることがわかった。TAS−106のこのような薬効学的特性は(ヒト腫瘍を有するヌードラットモデルでは)、断続的投与計画でみられたような、深刻な毒性を伴わない強い抗腫瘍活性を説明しているのかもしれない。それゆえ、我々はTAS−106を、固形癌を有する患者においてさらに解析する価値のある有望な化合物と考えている。
【0112】
(52)5‐フルオロウラシルと3‐炭素鎖から分離されたN‐(2‐クロロエチル)‐N‐ニトロソウレア部の組み合わせ:5‐フルオロウラシルと3‐炭素鎖から分離されたN‐(2‐クロロエチル)‐N‐ニトロソウレア部を分子的に組み合わせたマウスにおける抗腫瘍活性の生成。
R.S.McElhinney,J.E.McCormick,M.C.Bibby,J.A.Double,M.Radacic, and P.Dumont, J.Med.Chem.,39(7),1403−1412,March 29(1996).Nucleoside analogs,14.
当該“糖”部としてN-(2-クロロエチル)-N-ニトロソウレア基を有する2-炭素(C2)側鎖を有する5-フルオロウラシル(5-FU)セコ-ヌクレオシドを、抗代謝剤とアルキル化剤の分子的組み合わせとして設計した。しかし、フリー5-FUの加水分解による切り離しは、マウスの大腸癌及び乳癌に対して示された当該高い活性に十分寄与できるほど早くなかった。前記反応性がより高いC3セコ-ヌクレオシドの合成に係る本研究では、当該前駆体であるフタルイミドの中心アルデヒドに結合する種々の基のうち、前記アルコキシ/ウラシル-1-イルタイプだけが標準的方法によって都合よく得られることが明らかになった。前記メチルチオ/ウラシル-1-イルタイプアナログは比較的大量のメタンチオール試薬を要し、アルキルメチルサルファイドのα-塩素化又は当該S-酸化物のプメラー転移、もしくはイソチオウロニウムの完璧な加水分解及びメチル化を含む代替物の探索では失望させられる結果となった。前記アルコキシ/ウラシル-1-イル化合物を効率よく調整するために、C2ホモログに用いた前記手段にかなりの実験的変更を行うことが必要であった。これらのO,N‐及びS,N‐アセタールに加えて、2つの5‐FU残基を有するN,N‐アセタールを調整した。前記新規薬剤は、マウスにおいて一連の実験的腫瘍パネルを用いて試験した。これらのC3セコ‐ヌクレオシドでさえインビトロで非常にゆっくりと5‐FUを放出することは平行研究から明らかだが、これらのうちのいくつかのものでは素晴らしい抗癌活性が認められた。より早い分子的組み合わせにおけるこれらの特性を評価すると、7つの短いリスト[B.4151(6)、B.4015(5)、B.4030(10)、B.3999(4)、B.3995(2)、B.4083(3)、及びB.3996(1のN‐3置換アナログ)]はさらに解析されるべきである。このことは、クロロエチル化試薬の作用機所についての現時点での理解を考慮すると大変適切である。制限された選択的作用に起因するニトロソウレアを用いた増大しつつある臨床的切望を受けて、これらの強力な薬剤は、O6‐ベンジルグアニン及び他のより効果的な修復酵素阻害剤(現在開発中のO6‐アルキルグアニン‐DNA‐アルキルトランスフェラーゼのような)との組み合わせで益々研究されるので、新しい時代が確実に期待される。
【0113】
(53)調和したヌクレオシド輸送のDNA合成阻害剤による調節。
J.Pressacco,J.S.Wiley,G.P.Jamieson,C.Erlichman, and D.W.Hedley, Br.J.Cancer,72(4),939−942,October 1(1995).
前記平衡的S‐(p‐ニトロベンジル)‐6‐チオイノシン(NBMPR)‐感受性ヌクレオシドトランスポーター(es)、ヌクレオシドサルベージ経路の構成要素、の発現を、増殖を抑制しない濃度の種々の抗代謝剤に暴露後、増殖非抑制下で測定した。前記プローブ5‐(SAENTA‐x8)‐フルオレセインは、アデノシンにフルオレセイン分子が導入された、高度に修飾された形態である。それは、前記(es)ヌクレオシドトランスポーターに1:1の化学量論で高親和性及び高特異性で結合し、フローサイトメトリーを用いたes発現量の信頼性の高い推測を可能にする。前記重要なDNA染色剤であるヘキスト‐33342及び5‐(SAENTA‐x8)‐フルオレセインを組み合わせた二重ラベリング技術を用いることで、我々はesの細胞表面での発現量は細胞周期のG1期とG2+M期の間で約2倍に増えることを明らかにした。esの発現はDNA前駆体のデノボ合成を阻害する薬剤に暴露した細胞内部で調節できるのかという問いに答えるために、細胞を種々の作用機序を有する抗代謝剤に暴露した。DNA前駆体のデノボ合成を阻害するヒドロキシウレア及び5‐フルオロウラシル(5‐FU)は、es発現の増加を引き起こした。対照的に、DNA合成を直接阻害するシトシンアラビノシド(アラ‐C)及びアフィディコリンは、es発現の有意な増加を引き起こさなかった。リボヌクレオシド還元酵素のアロステリック阻害剤であり、dTTPプールは充足させるがdATP、dCTP及びdGTPプールを枯渇させるチミジン(TdR)は、es発現に有意な効果を及ぼさなかった。これらの結果は、細胞表面でのesヌクレオシドトランスポーターの発現量は、デオキシヌクレオチドの供給に感受性を示す機構によって制御されていることを示唆している。5‐FU(dTTPプールを特異的に枯渇させる)は発現の大幅な増加を引き起こすのに対し、TdR(dTTP以外の全ての前駆体を枯渇させる)が引き起こさないことから、このメカニズムはdTTPプールにとりわけ感受性なのかもしれない。
【0114】
(54)M.Moorghen,P.Ince,K.J.Finney,A.J.Watson, and A.L.Harris, In Vitro Cell Dev.Biol;Br.J.Cancer,72(4),939−942,October 1(1995).27A(11),873−877,November 1(1991).
ヒドロキシウレア、ヌクレオシド抗代謝剤である5-FU及び5-FUdRのインビトロにおける効果は、細胞株技術を用いた実験系において精力的に研究されている。本研究において我々は、これらの薬剤がラベル化ヌクレオチドのDNAへの取り込みレベルに与える効果を、インタクトなラット結腸粘膜の外植片の組織培養系を用いて解析した。ヌクレオシド輸送阻害剤であるニトロベンジルチオイノシン(NBMPR)及びジピリダモール(これらは抗代謝細胞毒性の調節剤である)の、トリチル化チミジン([3H]TdR)のDNAへの取り込みに及ぼす効果も解析した。前記トリチル化TdRのDNAへの取り込みはヒドロキシウレアによって減少したが、5‐FU又は5‐FUdRのいずれによっても変化しなかった。前記トリチル化デオキシウリジンのレベルは5‐FU及び5‐FUdRによって独立実験系において減少し、このことはチミジル酸合成酵素阻害と合致している。また、NBMPR及びジピリダモールは3H‐TdRのDNAへの取り込みを減少させた。これらの結果は、これらの薬剤の既知の作用機序によって説明することができる。それゆえ、この実験モデルは、インタクトな結腸粘膜における抗代謝剤及びヌクレオシド輸送阻害剤の効果の解析に有用である。
【0115】
(55)α1‐酸性糖タンパクの結合低下を伴うジピリダモールアナログによるチミジル酸合成酵素(TS)阻害剤の細胞毒性の増強。
N.J.Curtin,K.J.Bowman,R.N.Turner,B.Huang,P.J.Loughlin,A.H.Calvert,B.T.Golding,R.J.Griffin, and D.R.Newell, Br.J.Cancer,80(11),1738−1746,August 1(1999).
ジピリダモールは、ヌクレオシドトランスポートの抑制を介して抗代謝抗癌剤の活性を促進することがインビトロで示されている。しかしながら、ジピリダモールの臨床的潜在能力については、当該薬剤が細胞膜タンパクであるα1‐酸性糖タンパク(AGP)に強固に結合するために、理解されていない。AGP存在下で強いヌクレオシドトランスポート阻害活性を保持しているジピリダモールアナログを説明し、チミジル酸合成酵素(TS)阻害剤の増殖阻害効果及び細胞毒性効果を促進するこれらアナログの能力を評価した。3種類のジピリダモールアナログ(NU3026、NU3059、及びNU3060)は、TS阻害剤CB3717の増殖抑制活性を促進することが示され、L1210細胞においてチミジンの救済をブロックした。アナログ濃度を一定(10マイクロM)にした場合の促進の程度は、チミジン取り込み阻害の強さと相関していた。さらなるアナログNU3076は、チミジン取り込み阻害のKi値(0.1マイクロM)において、ジピリダモール(0.28マイクロM)よりも強力であることがわかった。ジピリダモールとの顕著な違いとして、NU3076によるチミジン取り込み阻害はAGP(5mg ml(−1))の存在によって有意には影響されない。NU3076及びジピリダモールは、L1210細胞内で両化合物ともLC90が有意に減少し(サルベージ可能なピリミジンの非存在下で>3倍)、非古典的抗葉酸TS阻害剤であるノラトレキセドとほぼ同等の強さの細胞毒性を生じた。L1210細胞のノラトレキセド細胞毒性からのチミジン救済は、1マイクロMのNU3076及び1マイクロMのジピリダモールの両方によって部分的に阻害された。また、NU3076はL1210細胞内でFU細胞毒性を有意に増幅した。これらの研究は、AGPが前記ジピリダモール活性基と結合しない条件下でヌクレオシドトランスポート阻害が維持され得ること、及び、そのようなアナログはTS阻害剤の細胞毒性を促進し得ることを証明している。
【0116】
(56)1‐β‐D‐アラビノフラノシルシトシンへの自然発生的耐性を示す多剤耐性ヒト赤白血病細胞株(K562)の解析。
S.Grant,A.Turner,P.Nelms, and S.Yanovich, Leukemia,9(5),808−814,May 1(1955).
我々は、既に解析した多剤耐性(MDR)ヒト赤白血病細胞株(K562R)の前記ヌクレオシドアナログ抗代謝剤1-β-D-アラビノフラノシルシトシン(アラ-C)に対する反応について調べた。この細胞株は、当該最初の単離過程において、アラ-Cでなくダウノルビシン断続的投与による選択圧を受けている。当該親株(K562S)と比べて、K562R株は、3H-dThdの取り込み、MTT染色剤還元、及びクローン形成能で調べたところ、アラ-Cに対して約15倍耐性であった。10マイクロMのアラ-Cに4時間暴露後、K562S株は当該耐性株と比較して約7倍以上のアラ-CTPを蓄積し、約250%以上のアラ-CをDNAに取り込んだ。各細胞株での細胞内アラ-C産生は、前記シチジンデアミナーゼ阻害剤THU又は前記デオキシシチジレートデアミナーゼ阻害剤dTHU(各々1mM)によって、有意には影響されなかった。リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチド三リン酸塩の細胞内レベルと同様に、アラ-C脱リン酸化速度は感受性及び耐性株で同等であった。しかしながら、K562S株と比べて、K562R株は前記ピリミジンサルベージ経路の酵素、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)の活性レベルの有意な減少(すなわち、70%)を示した。U937白血病細胞とは対照的に、10マイクロMのアラ-Cに6時間暴露されたK562S及びK562Rから抽出したDNAは、アガロースゲル電気泳動において、薬剤誘導アポトーシスに典型的なヌクレオソーム内DNA切断の特徴を示さなかった。最後に、ノザン解析によって、前記2種類の細胞株におけるdCKメッセージのレベルは同等であることが示された。K562R株は、前記抗代謝剤アラ-Cに対する自然発生的な交差耐性を示す古典的多剤耐性ヒト白血病細胞株の例外であり、インビボで併用化学療法投与計画(前記多剤耐性現象と古典的には関連していない薬剤を含む)に暴露されたヒト白血病性骨髄芽球が生存できるメカニズムの理解に努める意義を証明している。
【0117】
(57)クロファラビン:バイオエンビジョン/ILEX.
A.Sternberg, Curr.Opin.Investig.Drugs,4(12),1479−1487,December 1(2003).
クロファラビンは、バイオエンビジョン(サザンリサーチインスチチュートから許可取得)/ILEXにより、固形癌、急性骨髄性白血病、非ホジキン性リンパ腫、及び急性リンパ芽球性及び慢性リンパ球性白血病の潜在的治療のために開発されたプリンヌクレオチド抗代謝剤である。2003年9月にバイオエンビジョンはヨーロッパにおいて小児急性リンパ芽球白血病の第2相試験を開始し、2003年10月にはILEXが小児急性白血病のためのローリングNDAの基部をFDAに提出した。
【0118】
(58)コルチコステロイド反応性のフルダラビンの肺毒性。
G.S.Stoica,H.E.Greenberg, and L.J.Rossoff(Division of Pulmonary and Critical Care Medicine,Long Island Jewish Medical Center,New Hyde Park,New York,11042−1101,USA.),Oncol.,25(4),340−341,August 1(2002).
フルダラビン一リン酸塩は、リンパ球増殖性疾患及び慢性リンパ球性白血病の治療に有用なプリンヌクレオチド抗代謝剤である。それは9-β-D-アラビノフラノシルアデニン(アラ-A、ビダラビン)の2-フルオロ,5’-リン酸塩誘導体であり、当該作用機序はDNA合成阻害及びエンドヌクレアーゼ非依存アポトーシスの誘導を介した細胞毒性である。
【0119】
(59)非ヒト霊長類における、アラビノシル‐5‐アザシトシン(ファザラビン、NSC281272)の脳脊髄液薬物動態と脳室内及び髄空内投与による毒性。
R.L.Heideman,C.McCully,F.M.Balis, and D.G.Poplack, Invest.New Drugs,11(2−3),135−140,May 1(1993).
新規ヌクレオチド抗代謝剤であるアラビノシル-5-アザシトシン(AAC)は、前臨床腫瘍スクリーニング試験において広域効果的である。この薬剤の髄腔内投与の可能性を探るべく、我々は、非ヒト霊長類に髄腔内及び腹腔内投与した際の当該毒性及び薬理動態を解析した。4匹の成人アカゲザル(オス)にAAC10mgを髄腔内(n=1)及び腹腔内(n=3)に単回投与し、当該急性毒性と薬理動態パラメーターを決定した。さらに3匹に10mgを各週で4週間髄腔内投与し、慢性投与に付随する全身性の神経毒性を解析した。当該能脊髄液(CSF)からの消失はバイエクスポネンシャルで、CSFクリアランセは0.2ml/分とCSF全体の流速より5倍も早かった。前記濃度×タイムカーブの10mgの腹腔内投与により得られたCSF濃度のピーク値及び部位は100で、先行実験として200mg/kg(1500−2400mg)の腹腔内投与後に得られた当該値よりもそれぞれ50倍大きかった。前記単回投与群又は週ごと×4回投与群のいずれにおいても、臨床的に顕著な神経毒性は認められなかった。軽微で一過的なCSF髄液細胞増加とCSFタンパクの増加が観察された。全身性の毒性は週ごと×4回投与群の1匹に限られており、当該動物はヘマトクリット値又は血小板数の変化を伴わずに末梢白血球数の軽微で一過的な減少を呈した。非霊長類でのこれらの研究は、AACの全身投与に対する髄腔内投与の薬理動態的観に際立った利点を証明している。このことは、全身投与によって得られる値に比べて1/200量の髄腔内及び腹腔内投与でCSFが50倍高い薬剤濃度に暴露されたことにより証明される。(要旨は250文字で欠失)。
【0120】
(60)週単位で投与したチアゾフリンの第1相試験及び生物学的評価。
T.J.Melink,G.Sarosy,A.R.Hanauske,J.L.Phillips,J.H.Bayne,M.R.Grever,H.N.Jayaram, and D.D.Von Hoff, Sel.Cancer Ther.,6(1),51−61,March 1(1990).
チアゾフリン(2‐B‐D‐リボフラノシルチアゾール-4-カルボキサミド、NSC286193)は、IMPデハイドロゲナーゼの強力な阻害剤として作用し、グアニンヌクレオチドの枯渇を引き起こすヌクレオシド抗代謝剤である。肝臓癌を有するラットを用いたインビボでの最近の生化学的観察より、グアニンヌクレオチドの枯渇と抗腫瘍活性は相関していることが示唆された。本第1相試験では、週×3ボーラス点滴による投与計画が5週間繰り返された。GTP及びdGTPの生化学的測定は、患者において各投与レベルごとに行った。12名の患者に、1100〜2050mg/m2、週ごと×3、の範囲で16通りの当該薬剤を投与した。当該用量制限毒性は心膜炎で、臨床的症状は一般的な漿膜炎(胸と腹の痛み)であることを示唆していた。他の毒性には、CPK(MMバンドのみ)及びSGOTの可逆的上昇、吐き気、嘔吐、及び関節痛が含まれていた。神経毒性は概して穏やかで、頭痛、不安、及び不快感が含まれた。チアゾフリンの生化学的活性が認められた6名の患者のうち1名だけに、グアニンヌクレオチドプールの持続的枯渇が認められた。抗腫瘍活性は認められなかった。この週ごと×3の断続的投与計画でのチアゾフリンの最大許容量は1650mg/m2であった。臨床的に可能な投与量での毒性及び生化学的・生物学的効果の欠如は、この薬剤の週単位投与でのさらなる臨床的評価を妨げるかもしれない。我々の研究で観察された前記毒性は、非常に高い投与量を毎日×5投与計画で行った第1相試験で報告されたものと同様であった。
【0121】
(61)FMCAを用いた軽度のリンパ球増殖性疾患患者由来ヒト腫瘍細胞におけるプリン及びピリミジンアナログの評価。
Aleskog,R.Larsson,M.Hoglund,C.Sundstrom, and J.Kristensen, Eur.J.Haematol.,62(5),293−299,May 1(1999).
プリンアナログであるフルダラビン及びクラドリビン(CdA)は、軽度のホジキンリンパ腫(NHL)に対して有効な治療であることが近年確立された。ピリミジンアナログであるシタラビン(アラ-C)は急性白血病の治療において重要な地位にあり、ゲムシタビンは固形癌に対する臨床的効果が示された新規のピリミジン抗代謝剤である。我々は、フルオレセイン二酢酸塩(FDA)の細胞内加水分解によって生じる蛍光測定に基づいた、半自動フルオメトリックミクロ培養細胞毒性アッセイ(FMCA)を用いてこれらの薬剤を研究した。
軽度のNHLを有する60名の患者に由来する80のサンプルを解析した。急性リンパ性白血病(ALL)の患者由来50のサンプル、及び、急性骨髄性白血病(AML)患者由来118サンプルを比較のために用いた。当該結果は、解析したプリン及びピリミジンヌクレオシドアナログは、急性白血病と同様に軽度NHLに対しても効果的かもしれないことが示された。軽度NHLでは、アラ-CはCdA(p=<0.0001)及びフルダラビン(p=0.001)よりも効果的のようだった。非投与患者は、投与歴のある患者よりもより薬剤感受性であった。ゲムシタビンがアラ-C(0.90)と最も高い相関を示したのに対し、CdAはフルダラビン(0.84)と最も高い相関を示した。これらの結果に基づき、我々はアラ-C及びゲムシタビンが軽度NHLの治療に一定の役割を果たすかもしれないことを提案する。
【0122】
(62)分化したHL‐60細胞の抗腫瘍剤誘発性アポトーシスに対する感受性変化。
G.Del,Bino,X.Li,F.Traganos, and Z.Darzynkiewicz, Leukemia,8(2),281−288,February 1(1994).
ヒト前骨髄球性白血病HL-60細胞が、抗腫瘍剤、特にDNAトポイソメラーゼ阻害剤で処理された際に、アポトーシスを起こさずに分化することが報告された。S期にある細胞はこれらの薬剤に選択的に感受性であり、また分化過程ではS期にある細胞の割合が減少するため、前記の報告されたアポトーシス細胞数の減少は単に当該培養系における感受性細胞の減少を反映したものと考えられる。我々は、アポトーシスと細胞周期を関連付けられるサイトメトリック法を用いて、HL-60細胞のアポトーシス反応性を対数増殖期とジメチルスルホキシド(DMSO)によって誘導される骨髄分化後において比較した。前記細胞は、(i)前記DNAトポイソメラーゼ阻害剤、カンプトテシン(CAM)、当該薬剤はS期の細胞選択的にアポトーシスを誘導する、(ii)前記ヌクレオシド抗代謝剤、5-アザシチジン(AZC)及び温熱療法、両方ともG1期の細胞優先的に作用する、及び(iii)ガンマ線照射、G2+M期の細胞優位にアポトーシスを誘導する、によって処理した。1.4%DMSOに24時間又は48時間暴露した細胞は、当該試薬の性質にも関わらず、且つ、当該細胞の細胞周期にも関わらず、アポトーシスによる反応に対して顕著により耐性であった。それゆえ、分化誘導は、アポトーシスによりダメージを与える種々の試薬に対する細胞の反応性を下げ、この効果は細胞周期の時期とは無関係である。加えて、前記反応性に対する違いは、アポトーシス調節タンパクであるbcl‐2の発現とは関係なく、当該発現はDMSOに暴露後24時間は不変だった。一方、前記細胞を低濃度のCAM又はAZCで前処理し、洗って当該試薬を除去し、その後DMSOで処理した場合には、アポトーシスに向かう細胞数は薬剤で処理した後にDMSOなしの培地に戻した細胞と比べて顕著に増加した。本データは、アポトーシス誘導とリンクした前記薬剤誘導障害スクリーニング機構が増殖期の細胞により適している一方で、アポトーシスのエフェクターは分化に向かった細胞内でより多く発現していることを示しているのかもしれない。また、このデータは、仮に分化誘導試薬が併用化学療法に用いられ、当該試薬が最初に投与された場合には、化学療法薬又は放射線療法の効果は減少するかもしれないことも示唆している。しかしながら、前記分化誘導試薬が逆の順序で投与された場合には、アポトーシスの促進が期待される。
【0123】
(63)特定の天然ヌクレオシドとそれらの合成アナログのポーラログラフ的特性と潜在的発癌性。
L.Novotny,A.Vachalkova, and A.Piskala, Bioenerg.,48(1),129−134,February 1(1999).
非プロトン性条件下及び9種類の天然及び合成ピリミジンと6種類の合成1,3,5‐トリアジン(5‐アザ)ヌクレオシドからなるα‐リポ酸の存在下におけるポーラログラフ的に決まるポーラログラフ還元及び潜在的発癌性の指標tgαを、8種類の合成1,3,6‐トリアジン(5‐アザ)ヌクレオシドの当該還元と比較した。ヌクレオシドが核酸構造において果たす役割の重要性、及び当該アナログの抗代謝的及び細胞毒性/抗白血病的特性により、ヌクレオシドは興味深い。前記解析した化合物のポーラログラフ還元は、6‐アザ<5‐アザ<ピリミジンヌクレオシドの順番で徐々に増加することが示された。一方、解析した化合物の潜在的発癌性は、通常のピリミジン<6‐アザ<<5‐アザヌクレオシドの順番で増加した。本研究で顕著な潜在的発癌性が同定されたのは、前記5‐アザ(1,3,5‐トリアジン)抗代謝剤シリーズ−アラビノシル‐5‐アザシトシン(0.275)、5‐アザ‐シチジン(0.295)及び5‐アザ‐ウラシル(0.400)‐及び2,2‘‐アンヒドロウリジン(0.260)から選ばれる1つであった。本研究で得られたデータとヌクレオシドの生物学的活性の関係について議論している。
【0124】
(64)この論文は次の本からの引用である。“薬剤耐性と選択性、生化学的且つ細胞学的根拠”、Enrico Mihich編集、Roswell Park Memorial Cancer Institute,Buffalo,NY;Academic Press(1973),Pages 83−93,第3章。交差耐性と付帯感受性、Dorris,J.Hutchinson and Franz,A.Schmis.

【0125】
プリンアナログ剤耐性例
プリンアナログ耐性の例は、LawとBoyle(1951)により、L1210マウス白血病での8‐アザグアニンについて初めて示された。化学療法に有益な他の全抗腫瘍剤とともに、前記実験系での活性報告後ほどなく、6‐MPに耐性を示す腫瘍及び他のモデル系が記載された(Hutchison,(1963))。生物学的レベルでは、Brockman(1963a,b)及びBalis(1968)によって、プリンアナログ耐性の生物システムに係る初期研究について書評及び総括された。プリンアナログ耐性変異と当該野生型親株との信頼性の高い比較研究により、野生型システムのみが利用できた場合に比べて、プリン生合成及び代謝を理解する上でのより多くの情報が供された。
【0126】
プリンアナログ耐性の最も一般的なメカニズムは、前記アナログをヌクレオシド、すなわち、生物学的に活性なプリン派生体に変換する酵素活性を低下又は除去することであった。しかしながら、もし前記ピロホスホリラーゼが機能を有してはいるが野生型よりも低活性である場合(一部の細胞集団で失われている場合、酵素タンパクの活性が低い場合、等)には、関連する化合物系においてある程度の反応が認められるであろう。他のメカニズムは表にまとめられており(Hutchison,(1963,1965))、より一般的には第7章で議論している。
【0127】
化学療法研究の対象であり、我々がこれまで総括しなかった6‐MP、チオグアニン、及び6‐メチルチオ‐プリンリボヌクレオシド(6‐MeMPR)に耐性な動物腫瘍は、表6に記載してある。
メトトレキサート、アザセリン、及びマイトマイシンCに感受性であることが報告(Hutchison,et.al,(1962))されているL1210/MP(III)細胞株は、前記抗生剤であるネオカルチノスタチン、前記アルキル化剤であるカルバジルキノン、及び3種類の新規抗葉酸剤にも付帯感受性であることが示されている。それは、6‐MeMPR及びアラ‐Cに対する感受性も保持している。
L1210株のチオグアニン耐性株を用いたRutman et.al.(1962)及びRutman(1964)は、シトキサンへの反応は不変だが6種類のアルキル化剤に対する付随的な感受性を報告した。L1210/MP(III)と異なり、L1210/TG/Rのメトトレキサートとアザセリンに対する感受性は不変で、当該親株と同程度であった。
【0128】
Patersonと彼のグループ(Caldwell,et.al.,(1967);Wang,et.al.,(1967);Paterson and Wang,(1970))は、6‐MP又はチオグアニンのいずれかに耐性のエーリッヒ腹水細胞は、6‐MeMPRに部分的に交差耐性であることを見出した。同様に、6‐MeMPRに耐性なエーリッヒ腹水細胞は6‐MPに対しても部分的に交差耐性であった。これらの交差耐性と呼ぶべき観察結果(前記薬剤である6‐MP又は6‐MeMPRは、野生型エーリッヒ腹水細胞又は前記数種の耐性株の処理において2倍効果的と考えられる)は、前記生物学的データ(Wang,et.al.,(1967);Paterson and Wang,(1970))と合致するものである。
2種類のチオグアニン耐性エーリッヒ腹水細胞株を6‐MeMPRで処理した化学療法の結果も同様であった(表6)。
チオグアニンと6‐MPに耐性株が6‐MeMPRに交差耐性を示すのは、これらの細胞株が6‐MeMPRを6‐MeMPR‐5’‐一リン酸塩に酵素的に変換できることに起因すると考えられる。しかしながら、前記6‐MeMPR耐性株は、酵素的にある程度の6‐MPヌクレオシドを作ることができる。前記化学療法のデータと、エーリッヒ腹水細胞の前記種々のプリンアナログ耐性の相対的生化学的活性は矛盾しないものである。
【0129】
ピリミジンアナログ剤耐性例
Heidelberger,et.al.,(1958)によって、フルオロピリミジンに対する耐性が初めて報告された。それ以来、フルオロピリミジン耐性の動物腫瘍及び他の生物システムが数多く記載された(Hutchison,(1963),(1965))。それらの全ては概して、他のフルオロ‐ピリミジンアナログに対しても交差耐性だが、抗葉酸剤、プリンアナログ、及びアルキル化剤に対する感受性は保持していた。
【0130】
Rutman,et.al.,(1962)とRutman(1964)は、アルキル化剤と抗代謝剤に対する付随的感受性の探査を目的として、5‐フルオロウラシル耐性P815腫瘍細胞(P815−E176)を用いた大規模な化学療法実験を指揮した。これらの試験の結果は表7に総括されている。5種類のアルキル化剤に対する感受性の増加が認められ、そのうちの3種類は新規に合成された化合物であったが、トリエチレンチオホスホラミド(チオ‐TEPA)に対する交差耐性が認められ、シトキサンとナイトロジェンマスタード(HN)といった抗代謝剤に対しては変化が認められなかった。Rutman(1964)は、付随的感受性は“全か無か”現象として起こる必要はなく、すなわち、一群のアルキル化剤への反応には予測可能なパターンはないことを解いた。
ピリミジンアナログとその結果であるアラ‐C(Walwick,et.al.,(1959))及び1β‐D‐アラビノフラノシル‐5‐フルオロシトシン(アラ‐C)(Fox,et.al.,(1966))の合成について興味深いこととして、Burchenal,et.al.,(1966)は、5‐フルオロウラシル(FU)に耐性なP815細胞株が、両シトシンアナログに対して当該P815親株と同様の感受性を保持していることを見出した。
【0131】
HeidelbergerとAnderson(1964)は、5‐フルオロデオキシウリジン(FUdR)耐性エーリッヒ腹水細胞を含む種々の動物腫瘍に対する5‐トリフルロメチル‐2’‐デオキシウリジン(FTdR)の抗腫瘍活性を記載した。前記耐性腫瘍は、FTdRに対して交差耐性であることが明らかとなった。FUdRの作用機序とFUdR耐性エーリッヒ腹水細胞の生化学的違いに関する情報に基づき、チミジル酸合成酵素の阻害は、当該アナログがDNAに取り込まれる過程よりも、腫瘍抑制機構において一層重要であろうと結論された。
フッ素化ピリミジンに対する耐性とそれらの開発の歴史は総括されている(Hutchison,(1963),(1965))。最近の研究は先行結果にほとんど追加していない。
【0132】
前記エーリッヒ腹水細胞の6‐アザウラシルと6‐アザウリジンに対する耐性発現を追跡したBlairとHall(1969)によって、興味深い研究が記載された。しかしながら、彼らは、ウリジンキナーゼ又はウリジンホスホリラーゼの活性低下又は活性増加と耐性発現とを関連付けることができなかった。6‐アザウラシル耐性株の1つが6‐アザウリジンと交差耐性を示し、FUに対して付帯感受性であった(表7)。
【0133】
前述したように、幾つかの研究室の興味はシトシン派生体に移っていた。Veselyと彼の同僚は((1968)、(1970))、1株は5‐アザシチジン耐性(AKR/r‐AzCR)で他1株は5‐アザ‐2’‐デオキシシチジン(AKR/r‐AzCdR)耐性なAKRマウス白血病細胞2株を解析した。5‐アザシチジン(AzCR)耐性の亜株は、5‐アザ‐2’‐デオキシシチジン(AzCdR)及びアラ‐Cに交差耐性であった。このことは、前記酵素デオキシシチジンキナーゼの一部欠損又は欠失に基づいて説明することができる。一方で、AzCdR耐性の当該亜株はAzCRに感受性であったがアラ‐Cには交差耐性であった。この株では、ウリジンキナーゼは正常に機能し、リボ核酸(RNA)合成酵素の活性は増加していた。前記アラ‐Cへの交差耐性は、恐らくはデオキシシチジンキナーゼの部分欠損のためと考えられる。
【0134】
1‐β‐D‐アラビノフラノシルシトシンはUpjohnのグループによって1959年に合成された(Walwick,et.al.,(1959))。Smith(1967)は、この興味深いピリミジンアナログの背景と開発について詳細に総括している。アラ‐Cを抗代謝剤として用いた生化学的研究、及びアラ‐C耐性培養細胞と動物腫瘍を用いた生化学的研究が数多く行われた。アラ‐Cを急性リンパ性白血病及び急性顆粒球性白血病患者に投与した臨床結果では好ましい結果が得られている(Howard,et.al.,(1966);Ellison,et.al.,(1968))。
【0135】
WodinskyとKensler(1964)は、前記L1210マウス白血病細胞株からアラ‐C耐性亜株の分離を報告している。耐性は3移植ジェネレーションでは実現しなかったが、当該10番目のジェネレーションで達成した。広範な作用機序を示す24の厳選された薬剤グループを、L1210及びL1210/アラ‐Cに対して試験した。表7に示したとおり、どの化合物に対しても交差耐性は認められず、同様に感受性の増加も認められなかった。アルキル化剤であるニトロソウレア、プリン及びピリミジンアナログ、又は抗葉酸剤に対して交差耐性が認められなかったことは、臨床応用を検討する上で重要と考えられた。メトトレキサート、6‐MP、及びシトキサン耐性L1210/C95株がアラ‐Cに感受性であるという報告がある(表5)。
【0136】
DixonとAdamson(1965)は、L1210マウス白血病細胞のアラ‐C耐性変異株が1ジェネレーションで分離できたことを報告した。この観察は、WodinskyとKensler(1964)の観察とはかなり異なるものである。前記アラ‐C耐性変異株の1株を、数種類の既知の抗白血病薬(表7)に対する反応性に注目して、L1210株と比較した。交差耐性及び付随的感受性はいずれも認められなかった。
【0137】
他のアラ‐C耐性腫瘍を数種類の選んだところ(表7)、ヒドロキシウレア、グアナゾール、ピリミジン‐2‐カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン(TSC)、ビス(グアニルヒドラゾン)、及びカルバジルキノンといった化合物に対する交差耐性は認められなかった。L51787/アラ‐C株(Schmid and Hutchison,(1971b))は、L5178Y/CA55のL‐アスパラギナーゼに対する前記感受性増加に合わせて(Schmid and Hutchison,(1971b))、L‐アスパラギナーゼに対して付帯感受性だった。
【0138】
前記アラ‐Cは、ヒドロキシウレア‐、ビンクリスチン‐、VLB‐、TSC‐、コルチゾン‐、及びメチルグリオキサールビス(グアニルヒドラゾン)(MGGH)‐耐性マウス白血病細胞(表23及び表24、参照)に対して効果的であった。MGGH耐性L1210株は、アラ‐Cに対して付帯感受性であった(表23、参照)。
【0139】
アラ‐C耐性のメカニズムはUchidaとKreis(1969)及びDrahovskyとKreis(1970)によって書評及び総括され、第7章でも議論している。しかしながら、アラ‐C耐性腫瘍において交差耐性が認められないこと、反対に他の効果的な抗白血病薬に耐性な種々の腫瘍において交差耐性が生じないこと、を総合的に考えると、アラ‐Cは周期的化学療法での多くのステージ又はステップにおいて有効な化学療法薬として期待できる地位に据えられる。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2A】

【0142】
【表2B】

【0143】
表についての付記
a:α アラ‐C‐1β‐D‐アラビノフラノシルシトシン、アラ‐FC‐1β‐アラビノフラノシル‐5‐フルオロシトシン、No.300024‐1‐ビス(β‐クロロエチル)アミノ‐2‐ジメチルアミノエタン、DCM‐3’,5’‐ジクロロメトプテリン、MGGH‐メチルグリオキサールビス(グアニルヒドラゾン)、DDUG‐4’,4’‐ジアセチルジフェニルウレアビス(グアニルヒドラゾン)、BCNU‐1,3‐ビス(2‐クロロエチル)‐1‐ニトロソウレア、TSC‐ピリジン‐2‐カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン、チオ‐TEPA‐トリエチレンチオホスホラミド、F3TdR‐5‐トリフルオロメチル‐2’‐デオキシウリジン、AzCdR‐5‐アザ‐2’‐デオキシシチジン、L‐PAM‐L‐フェニルアラニンマスタードメタノール、A‐139‐2,5‐ビス(1‐アジリジニル)‐3,6‐ビス(2‐メトキシエトキシ)‐p‐ベンゾキノン、No.30020‐6‐ヒドロキシ‐9‐{3‐[ビス(2”‐クロロエチル)アミノ}プリン、No.30025‐1ビス(β‐クロロエチル)アミノ‐4‐アミノペンタン、No.30035‐1‐ビス(β‐クロロエチル)アミノ‐2‐アミノエタン。
カッコ内の数字は各基中の化合物の数を示す。
【実施例】
【0144】
本願で報告する全ての反応は、TLCプレート上でモニターされたものである(メルク社製、シリカゲル60F264)。溶媒系は各化合物ごとに記載した通りである。UV解析はケミトスペクトロスキャンモデル2700上で行った。250、260、280nmでの値と光学密度比(ORDと略記)を報告した。HPLC解析は島津の計測機器(SCL‐10 AVPモデル)を用いて行い、波長254及び270nmでの吸光度をモニターした。使用したカラムはバリアン‐ミクロソーブC‐18である。プロトンNMRは500MHzの機器を用いて行った。質量分析は、ポジティブ・ネガティブ両モードのエレクトロスプレーイオン化法によって解析した。
【0145】
略語
以下の略語は、下記の実験報告の文中で用いられるものである。
Ac:アセチル、CAN:アセトニトリル、Bz:ベンゾイル、DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン、DMT:4,4’‐ジメトキシトリチル、Et:エチル、EtOAc:酢酸エチル、Hex:ヘキサン、Ibu:イソブチル、Me:メチル、MeOH:メタノール、TIPDS:テトライソプロピルジシロキサン、ODR:光学密度比。
‐Bz‐9‐[3,5‐O‐β‐D‐アラビノフラノシル]アデニン(化合物9):2’‐アラ‐アデノシンの塩化ベンゾイル反応によって得られる化合物で、続いて部分的アルカリ加水分解を受ける。
【0146】
‐Bz‐9‐[3,5‐O‐(テトライソプロピルジシロキサン1,3‐ジイル)‐β‐D‐アラビノフラノシル]アデニン(化合物10):1,3‐ジクロロ‐1,1,3,3,‐テトライソプロピルジジロキサン(11.4ml、34.98モル)を、氷冷した化合物9(10グラム、26.93モル)のピリジン(120ml)に加える。室温で2.5時間攪拌した後、メタノール(10ml)を前記混合溶液に加える。当該全混合液をバキューム中で濃縮し、クロロホルム‐飽和重炭酸水溶液で分配する。当該有機層は、水洗後に硫酸ナトリウム上で乾燥し、バキューム中で濃縮して溶媒を除去した。当該残余は、クロロホルム:ヘキサン:アセトン(50:30;20)‐2%メタノール溶媒を用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、高純度の産物を得た。収率は8.5グラム、51.45%である。化合物はTLCにより同定した。
【0147】
‐Bz‐9‐[‐(2‐O‐メチル)‐3,5‐O‐(テトライソプロピルジシロキサン‐1,3‐ジイル)‐β‐D‐アラビノフラノシル]アデニン(化合物11):化合物10のナトリウム塩(7.5グラム、12.21ミリモル)のTHF溶液(150ml)は、水素化ナトリウム(0.293グラム、12.20ミリモル)を10℃で加えることにより作製した。当該反応混合物は10℃で15分間攪拌した後、さらに室温で15分間攪拌を行った。前記混合物には20℃にてヨウ化メチルの滴(6.09ml、97.73ミリモル)を追加した。前記反応混合物をきつく密閉し、40℃で3時間攪拌した。その後、前記混合物をバキューム中で濃縮し、クロロホルム‐水で分配し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。前記有機層はバキューム中で濃縮し、溶媒を除去した。当該残余は、クロロホルム‐2%メタノールのグラジエント溶媒溶出によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。収率は2グラムである。純度約90%の産物が得られ、当該産物を次のステップに供した。
【0148】
‐Bz‐9‐[2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル)]アデニン(化合物12):化合物11(2グラム、3.18ミリモル)をTIIF(20ml)中に溶解し、テトラブチルフッ化アンモニウム(IM THF溶液、7.96ml)を加えた。当該反応混合物を室温で1.5時間攪拌し、その後バキューム中で濃縮して溶媒を除去した。当該粗混合物をシリカゲルカラムに充填し、クロロホルム‐15%メタノールのグラジエント溶媒による溶出を行った。収率は240グラムである。純度約70%の産物が得られ、当該産物を次のステップに供した。
【0149】
‐Bz‐9‐[5‐O‐4,4’‐ジメトキシトリチル)‐2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]アデニン(化合物13):化合物12(240ミリグラム、0.62ミリモル)を2.88mlのピリジンに溶解し、当該反応混合物を0℃に冷却した。DMT‐Cl(25ミリグラム、0.74ミリモル)を30分の投与間隔で5回に分けて加えた。前記反応混合物は、さらに0℃で1時間攪拌した。前記TLCを5%メタノール含有クロロホルムでチェックした。前記混合物はメタノールで反応を停止させ、続いて2/3量のピリジンをバキューム中で濃縮し、クロロホルム−水飽和重炭酸溶液で分配した。当該有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。前記溶液は続くバキューム中で濃縮を行い、溶媒を除去した。当該残余は、クロロホルム:ヘキサン:アセトン(50:30:20)‐5%メタノールのグラジエント溶媒溶出によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、高純度の泡状産物を得た。収率は70ミリグラム、16.35%である。化合物はTLC、UVスペクトル解析、及びHPLC解析により同定した。
【0150】
‐Bz‐9‐[5‐O‐4,4’‐ジメトキシトリチル)‐2‐O‐メチル‐3‐O‐{ビス(1‐メチルエチル)アミノ‐(2‐シアノエトキシ)ホスフィニル}‐β‐D‐アラビノフラノシル]アデニン(化合物14):
【0151】
‐Ibu‐9‐[β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(化合物15):アラGのイソブチル化によって得られ、続いて部分的アルカリ加水分解を受ける。
【0152】
‐Ibu‐9‐[3,5‐O‐(テトライソプロピルジシロキサン‐1,3‐ジイル)‐β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(化合物16):1,3‐ジクロロ‐1,1,3,3テトライソプロピルジシロキサン(6.9ml、21.68ミリモル)を氷冷した化合物15(3.0グラム、8.49ミリモル)のピリジン溶液(36.9ml)に加える。室温で3時間攪拌した後、メタノール(3ml)を当該反応混合物に加える。前記全混合物はバキュームを用いて濃縮し、クロロホルム−水飽和重炭酸溶液により分配する。当該有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、バキュームにより濃縮して溶媒を除去した。当該残余は、3%メタノールを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。前記高純度の分画を濃縮し、泡状産物(44.17%)を得た。化合物はTLC及びUVスペクトル解析により同定した。
【0153】
‐Ibu‐9‐[2‐O‐メチル‐(3,5‐O‐(テトライソプロピルジシロキサン‐1,3‐ジイル)‐β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(化合物17):前記化合物16(2.2グラム、3.69ミリモル)のTHF溶液(LiAH4により蒸留、44ml)に、10℃、無水条件下で水酸化ナトリウム(0.088グラム、3.6ミリモル)を加えた。当該反応混合物を10℃で15分間攪拌し、その後室温でさらに15分間攪拌した。前記混合物には25℃にてヨウ化メチルの滴(2.3ml、36.91ミリモル)を追加した。前記反応混合物をきつく密閉し、40℃で3時間攪拌した。その後、前記混合物をバキューム中で濃縮し、クロロホルム‐水で分配し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。前記有機層はバキューム中で濃縮し、溶媒を除去した。当該残余は、クロロホルム‐2%メタノールのグラジエント溶媒溶出によるシリカゲル(70−230メッシュ粒径A)カラムクロマトグラフィーによって精製した。当該高純度の分画は泡状産物として濃縮した(500ミリグラム、収率23.0%)。化合物はTLC及びUVスペクトル解析により同定した。
【0154】
‐Ibu‐9‐[2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(化合物18):化合物18(500ミリグラム、0.82ミリモル)をTHF(5ml)に溶解し、テトラブチルフッ化アンモニウム(1M THF溶液、2.05ml)を加えた。当該反応混合物は室温で1.5時間攪拌し、その後バキューム中で濃縮して溶媒を除去した。当該粗反応混合物をシリカゲルカラム(70−230メッシュ粒径A)に充填し、クロロホルム‐15%メタノールのグラジエント溶媒溶出に供した。高純度産物(250ミリグラム、収率82.78%)が結晶性固体として得られた。HPLC解析:純度98.5%。
【0155】
‐Ibu‐9‐[5‐O‐(4,4’‐ジメトキシトリチル)2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(化合物19):化合物18(250ミリグラム、0.68ミリモル)をピリジン(3ml)に溶解し、当該反応混合物を0℃に冷却した。DMT‐Cl(1.2eq、0.276グラム)を30分の投与間隔で5回に分けて加え、前記反応混合物を同温でさらに1時間攪拌した。前記反応はメタノールで停止させた。2/3量のピリジンをバキューム中で濃縮し、クロロホルム‐水飽和重炭酸溶液で分配した。当該有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、バキュームで濃縮して溶媒を除去した。当該残余は、クロロホルム:ヘキサン:アセトン(5.0:3.0:2.0)‐5%メタノールのグラジエント溶媒溶出によるシリカゲル(70−230メッシュ粒径A)カラムクロマトグラフィーに供した。高純度の泡状化合物(300ミリグラム、収率65.93%)を得た。HPLC解析:純度99.06%。質量分析:計算値:671.85。測定値:m/e:670.8。
【0156】
9‐[2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(化合物19a):化合物18(0.1グラム、0.27ミリモル)をピリジン(1.0ml)に溶解し、続いて25%メタノール‐アンモニア溶液(1.0ml)を加えた。当該反応混合物を密封し、40℃で24時間放置した。全溶媒は揮発し、5.0mlのアセトニトリルをバキュームを用いて2回気化させた。当該残余を10mlのジエチルエーテルで3回洗浄し、当該溶媒を傾斜法により除去した。当該ゴム状物質は少量のエタノールを用いて結晶化した。前記産物をろ過し、乾燥させた。収率:28.0ミリグラム、35.0%。HPLC解析:純度99.23%、質量分析:計算値:297.23、測定値:m/e:320.30(M+23)。
【0157】
‐Ibu‐9‐[5’‐O‐(4,4’‐ジメトキシトリチル)2‐O‐メチル‐3‐O‐{ビス(1‐メチルエチル)アミノ‐(2‐シアノエトキシ)ホスフィニル}‐β‐D‐アラビノフラノシル]グアニン(化合物20):化合物19(0.9グラム、1.3ミリモル)をTHF(7.0ml)に溶解し、DIPEA(0.93ml、5.55ミリモル)を加えた。当該反応混合物を0℃に冷却し、n,n‐ジイソプロピルアミノシアノエチル‐ホスホルアミド酸クロリド(0.59ml、264ミリモル)の滴を加えた後、室温で1.5時間攪拌した。前記反応混合物は酢酸エチル‐水飽和重炭酸溶液で分配した。当該有機層をブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。当該残余は、クロロホルム:酢酸エチル:トリエチルアミン(5.0:4.0:1.0)及び酢酸エチル:アセトン:トリエチルアミン(6.0:3.0:1.0)のグラジエント溶媒溶出によるシリカゲル(70−230メッシュ粒径A)カラムクロマトグラフィーに供した。当該高純度の分画を泡状に濃縮した。前記化合物は少量のクロロホルムに溶解した後、ヘキサン:酢酸エチル(8.5:1.5)溶媒系を用いて沈殿させ、その後傾斜法により前記溶媒を除去した。最終的に、アセトニトリルに可溶化した当該ゴム状物質を得て、当該固形分をろ過し、乾燥させた。収率:700ミリグラム、60%。TLC:酢酸エチル:ヘキサン:トリエチルアミン(6.0:3.0:1.0)、R値(表参照)、UVスペクトル:λmax、Emax=表参照。HPLC解析。
【0158】
1‐[3,5‐O‐(テトライソプロピルジシロキサン‐1,3‐ジイル)‐β‐D‐アラビノフラノシル]ウラシル(化合物22):化合物21(10.0グラム、41.28ミリモル)を乾燥ピリジン(150ml)に溶解し、攪拌した。1,3‐ジクロロ‐1,1,3,3‐テトライソプロピル‐ジシロキサン(17.34ml、53.51ミリモル)の滴を0℃で加えた。試薬を加えた後、前記反応混合物を室温で3.0時間攪拌し続けた。続いて2/3量のピリジンをローター式エバポレーターで気化させ、当該残余を200mlのクロロホルムに溶解し、水飽和重炭酸溶液(150ml)で分配し、有機層を分離して水層を75mlのクロロホルムで2回抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムをくぐらせ、ローター式エバポレーターで気化させた。
前記粗産物は、クロロホルム:ヘキサン:アセトン(50:30:20)‐1%及び2%メタノールを溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。収率は12グラム、60.3%である。化合物はTLC、UVスペクトル解析により分析した。
【0159】
1‐[2‐O‐メチル‐3,5‐O‐(テトライソプロピルジシロキサン‐1,3‐ジイル)‐β‐D‐アラビノフラノシル]ウラシル(化合物23):前記化合物22のナトリウム塩(18グラム、37.15ミリモル)を、10℃で水酸化ナトリウム(1.78グラム、74.16ミリモル)を加えてTHF中で調整した。当該混合物を10℃で15分間攪拌した。当該反応混合物は10℃で15分間攪拌した後、さらに室温で15分間攪拌を行った。前記混合物にはヨウ化メチル(6.94ml、111.38ミリモル)を30分間隔で4回に分けて室温で追加し、その後、前記反応混合物を10℃でさらに2時間攪拌した。続いて、前記混合物をバキューム中で濃縮し、クロロホルム‐水で分配し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。前記有機層はバキューム中で濃縮し、溶媒を除去した。当該残余は、クロロホルム:ヘキサン:アセトン(50:30:20)溶媒系によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。当該高純度分画を泡状物質として濃縮した。収率は18.5グラム、62.0%である。化合物はTLC、UVスペクトル解析により同定した。
【0160】
1‐[2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]ウラシル(化合物24):化合物23(12グラム、24ミリモル)を120mlのTHF中に溶解し、60mlのテトラブチルフッ化アンモニウム(1M THF溶液、2.05ml)を加えた。当該反応混合物は室温で1.5時間攪拌し、その後バキューム中で濃縮して溶媒を除去した。当該粗反応混合物を、クロロホルム‐15%メタノールのグラジエント溶媒溶出系のシリカゲルカラムに充填した。収率は6.0グラム、97.4%である。化合物はTLC、UVスペクトル解析により同定した。HPLC解析:純度100%、質量分析:計算値:258.23、測定値:281.3(M+23)。
【0161】
1‐[5‐O‐(4,4’‐ジメトキシトリチル)‐2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]ウラシル(化合物25):化合物24(720ミリグラム、2.81ミリモル)をピリジン(8.6ml)に溶解し、当該反応混合物を0℃で冷却した。DMT‐Cl(1.14グラム、3.36ミリモル)を30分の投与間隔で5回に分けて加え、前記反応混合物を同温でさらに1時間攪拌した。前記TLCを5%メタノール含有クロロホルムでチェックした。前記反応はメタノールで停止させ、続いてローター式エバポレーターを用いて2/3量のピリジンを除去した。当該残余をクロロホルムに溶解し、水飽和重炭酸水溶液で洗浄した。前記有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、当該ろ過物をバキュームで濃縮して溶媒を除去した。前記粗精製物は、クロロホルム:ヘキサン:アセトン(50:30:20)‐5%メタノールのグラジエント溶媒溶出によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。収率は1.1グラム、70.5%である。HPLC解析:純度99.68%。質量分析:計算値:560.56、測定値:538.6、二量体:計算値:1121.12、測定値:1144.5(二量体+Na)。
【0162】
1‐[5‐O‐4,4’‐ジメトキシトリチル‐2‐O‐メチル‐3‐O‐{ビス(1‐メチルエチル)アミノ‐(2‐シアノエトキシ)ホスフィニル}‐β‐D‐アラビノフラノシル]ウラシル(化合物26):化合物25(0.6グラム、1.07ミリモル)をTHF(5ml)中に溶解し、DIPEA(0.74ml、4.27ミリモル)を加えた。当該反応混合物を0℃に冷却し、N,N‐ジイソプロピルアミノシアノエチルホスホルアミド酸クロリド(0.47m2.14ミリモル)の滴を加えた後、室温で1.5時間攪拌した。前記反応混合物は酢酸エチル‐水飽和重炭酸溶液で分配した。当該有機層をブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、バキュームで濃縮して溶媒を除去した。当該粗精製物は、酢酸エチル:ヘキサン:TEA(5.0:4.0:1.0)を展開及び溶出溶媒系としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。当該高純度の分画を泡状産物として濃縮した。前記泡状産物をアセトニトリルに溶解後、ろ過し、バキュームを用いて再度乾燥させた。収率:300ミリグラム、40%。TLC:酢酸エチル:ヘキサン:TEA(5.0:4.0:1.0)、R値、UVスペクトルは表に記載した。HPLC解析。
【0163】
1‐[3,5‐ジ‐O‐アセチル‐2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]ウラシル(化合物27):化合物24(6グラム、23.23ミリモル)をピリジン(72ml)に溶解し、無水酢酸(10.96ml、105.98ミリモル)を加えて室温で3時間攪拌した後、バキュームで濃縮して2/3量のピリジンを除去した。当該残余をクロロホルムに溶解し、水飽和重炭酸水溶液で洗浄した。続いて前記有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、バキュームで濃縮して溶媒を除去した。前記粗混合物を150mlのヘキサン:酢酸エチル(70:30)に溶解し、よく混合した。固形分をろ過し、ヘキサン:酢酸エチル(70:30)で洗浄することにより、高純度の産物を得た。収率は6.5グラム、82.2%である。化合物は、表に記載したように、TLC及びUVスペクトルによって同定した。
【0164】
4‐トリアゾイル‐1‐[3,5‐ジ‐O‐アセチル‐2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]ウラシル(化合物28):1,2,4トリアゾール(20.33グラム、294.33ミリモル)を無水アセトニトリル(65.0ml)に懸濁し、塩化ホスホリル(5.27ml、56.60ミリモル)を0℃で攪拌しながら摘下し、41.26ml、294.36ミリモルのトリエチルアミンを加えた。トリエチルアミンを加えた後、前記混合物を無水アセトニトリル(65ml)で希釈した。この混合物を、前記化合物27(6.5グラム、18.87ml)の無水アセトニトリル溶液(65ml)に0℃、窒素雰囲気下で加えた。前記反応混合物を室温でさらに2時間攪拌した。続いて2/3量の溶媒を気化させ、化合物をクロロホルム(100ml)に溶解し、水洗した。当該有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、バキュームで濃縮して溶媒を除去した。前記粗反応混合物は、クロロホルム‐30%アセトンを用いたシリカゲルカラムに充填し、収率6.5グラム、86.0%で高純度の泡状化合物を得た。化合物はTLC及びUVスペクトルによって同定したTLC及びUVスペクトルによって同定した。
【0165】
1‐[2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル]シトシン(化合物29):化合物28を20%メタノール‐アンモニア(65.0ml)に溶解した。前記反応混合物をきつく密閉し、30℃で30時間放置した。溶媒は気化し、20mlのアセトニトリルも2回気化した。前記粗反応混合物をクロロホルム‐25%メタノールのグラジエント溶媒溶出を用いたシリカゲルカラムに充填し、収率6.5グラム、70.0%で高純度の産物を得た。HPLC解析:純度99.94%。質量分析:計算値:257.24、測定値:258.1及び280、二量体存在:計算値:(514.48)、測定値:515.6及び537.5(二量体+Na)。
【0166】
‐Bz‐1‐[2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル] シトシン(化合物30):化合物29(3グラム、11.74ミリモル)を乾燥ピリジン(36.0ml)に懸濁し、トリメチルクロロシラン(4.43ml、34.97ミリモル)を0℃で滴下した。前記反応混合物を室温で1.5時間攪拌した。前記反応混合物を0℃に冷却し、塩化ベンゾイル(2.71ml、23.32ミリモル)を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却し、冷却した蒸留水(10ml)を同温で加えた。15分後、10mlの冷却したアンモニア水溶液を加え、前記反応混合物を同温でさらに20分間攪拌した。前記反応混合物はバキュームを用いて濃縮乾燥させた。前記粗混合物は25mlの水に溶解し、固形物をろ過して水洗(10ml)した後、酢酸エチル、ジエチルエーテルでそれぞれ洗浄することで、結晶性固体の高純度産物を得た。収率:2.66グラム、63.33%。HPLC解析:純度99.34%。
【0167】
‐Bz‐1‐[5‐O‐4,4’‐ジメトキシトリチル‐2‐O‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル] シトシン(化合物31):化合物30(1.66グラム、4.59ミリモル)を乾燥ピリジン(19.92ml)に溶解し、当該反応混合物を0℃に冷却した。DMT‐Cl(1.86グラム、5.48ミリモル)を30分の投与間隔で5回に分けて加えた。前記反応混合物は、0℃でさらに1時間攪拌した。前記TLCを5%メタノール含有クロロホルムでチェックした。前記混合物はメタノールで反応を停止させ、続いて2/3量のピリジンをバキューム中で濃縮し、クロロホルム‐水飽和重炭酸溶液で分配した。当該有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。前記溶液は続くバキューム中で濃縮を行い、溶媒を除去した。当該残余は、クロロホルム:ヘキサン:アセトン(50:30:20)‐6%メタノールのグラジエント溶媒溶出によるシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、高純度の泡状産物を得た。収率:2.81グラム、77.0%。質量分析:計算値:663.57、測定値:664.7及び686.7(M+23)、二量体存在:計算値:1327、測定値:1350.4(二量体+Na)。
【0168】
‐Bz‐1‐[5‐O‐4,4’‐ジメトキシトリチル‐2‐O‐メチル‐3‐O‐{ビス(1‐メチルエチル)アミノ‐(2‐シアノエトキシ)ホスフィニル}‐メチル‐β‐D‐アラビノフラノシル] シトシン(化合物32):
【0169】
【表3】

【0170】
【表4】

【0171】
【表5】

【0172】
【表6】

【0173】
【表7】

【0174】
【表8】

【0175】
【表9】

【0176】
【表10】

【0177】
【表11】

【0178】
構造的考察:ヌクレオシドと同様にオリゴヌクレオチドにおいても、フラノース環はしぼんで緊張を解消しており、C’‐エンド又はC’‐エンド配座のいずれかをとることができる。ヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドは通常、室温で速やかに平衡状態に達する。我々の本研究では、前記糖はC’‐エンド配座でロックされると推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラ‐O‐メチルを当該構造の一部として含むヌクレオシド。
【請求項2】
請求項1に記載のヌクレオシドにおいて、
N6、N6‐ジメチルアデニン、N6‐ベンゾイルアデニン、N‐1‐メチルアデニン、7‐デアザアデニン、7‐デアザ‐8‐アザアデニン、3‐デアザアデニン、エテノアデニン、イソグアニン、N1‐メチルグアニン、7‐ヨード‐7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐7‐ヨードアデニン、7‐デアザ‐7‐ヨード‐6‐オキソプリン、5‐ヨード‐5‐メチル‐7‐デアザグアニン、−C≡C(CH1−8‐フタルイミドで置換された7‐デアザグアニン、7‐デアザ‐8‐アザグアニン、8‐メチルグアニン、8‐ブロモグアニン、8‐アミノグアニン、ヒポキサンチン、6‐メトキシプリン、7‐デアザ‐6‐オキソプリン、6‐オキソプリン、2‐アミノプリン、2、6‐ジアミノプリン、8‐ブロモプリン、8‐アミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、8‐アルキルアミノプリン、チミン、N‐3メチルチミン、5‐アクロキシメチルシトシン、5‐アザシトシン、イソシトシン、N‐4(C‐C)アルキルシトシン、N‐3(C−C)アルキルシチジン、5‐プロピニルシトシン、5‐ヨード‐シトシン、5‐(C−C)アルキルシトシン、5‐アリル(C−C)アルキルシトシン、5‐トリフルオロメチルシトシン、5‐メチルシトシン、エテノシトシン、−CH=CH−C(=O)NH(C−C)アルキルで置換されたシトシン及びウラシル、−C≡C−CH‐フタルイミドで置換されたシトシン及びウラシル、NH(C−C)アルキル、4‐チオウラシル、2‐チオウラシル、N‐チオベンゾイルエチルウラシル、5‐プロピニルウラシル、5‐Oアセトキシメチルウラシル、5‐フルオロウラシル、5‐クロロウラシル、5‐ブロモウラシル、5‐ヨードウラシル、4‐チオウラシル、N‐3‐(C−C)アルキルウラシル、5‐(3‐アミノアリル)‐ウラシル、5‐(C−C)アルキルウラシル、5‐アリル(C−C)アルキルウラシル、5‐トリフルオロメチルウラシル、4‐トリアゾリル‐5‐メチルウラシル、2‐ピリドン、2‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、2‐オキソ‐4‐メチルチオ‐5‐メチルピリミジン、2‐チオカルボニル‐4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、及び4‐オキソ‐5‐メチルピリミジン、
からなる基から選ばれる環外アミン保護基を取り込んだヌクレオシド。
【請求項3】
請求項2に記載のヌクレオシドにおいて、さらに5’‐又は3’‐4,4’‐ジメトキシトリチルを取り込んだヌクレオシド。
【請求項4】
請求項2に記載のヌクレオシドにおいて、さらに5’‐又は3’‐4,4’,4”‐トリメトキシトリチルからなる基のいずれかを取り込んだヌクレオシド。
【請求項5】
請求項2に記載のヌクレオシドにおいて、さらにホスホラミダイト基を取り込んだヌクレオシド。
【請求項6】
請求項5に記載のヌクレオシドにおいて、前記ホスホラミダイトがリン酸保護基としてシアノエチル基からなるヌクレオシド。
【請求項7】
請求項6に記載のヌクレオシドにおいて、前記ホスホラミダイトがn,n‐ジイソプロピルアミノ基からなるヌクレオシド。
【請求項8】
請求項2に記載のヌクレオシドにおいて、さらに5’‐又は3’‐4’‐モノメトキシトリチルを取り込んだヌクレオシド。
【請求項9】
請求項5、6、又は7に記載のヌクレオシドを構成要素として合成されたオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、さらに修飾塩基を取り込んだオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、特定のタンパク又はペプチドを標的とするアプタマーを含むように設計されたオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、テロメラーゼ、及び安定なグアニン四重鎖構造を形成することが知られているテロメラーゼ結合活性を標的として設計されたオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
請求項11に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、ウィルス内に存在する特定のタンパクを標的として合成されたオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、前記標的タンパクがウィルスの生活環に関わるタンパクであるオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
請求項11に記載のオリゴヌクレオチドにおいて、ヒト又は動物において抗代謝剤として重要な特定のタンパクを標的として合成されたオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
請求項1に記載のヌクレオシドにおいて、治療用として合成されたヌクレオシド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公表番号】特表2013−520395(P2013−520395A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551073(P2011−551073)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/000524
【国際公開番号】WO2010/096201
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511055429)ケムジーンズ コーポレーション (3)
【出願人】(312000941)
【氏名又は名称原語表記】SRIVASTAVA, Suresh, C.
【住所又は居所原語表記】7 Donald Rd., Burlington,MA 01803 US
【出願人】(312000952)
【氏名又は名称原語表記】PANDEY, Divya
【住所又は居所原語表記】7 AlfaFarm, Chini Godam Road, Barabirwa, Kanpur Road,Lucknow up IN
【出願人】(312000963)
【氏名又は名称原語表記】SRIVASTAVA, Naveen, P.
【住所又は居所原語表記】8 Baron Park Lane, Apt−18, Burlington, MA 01803 US
【出願人】(312000974)
【氏名又は名称原語表記】SRIVASTAVA, Alok
【住所又は居所原語表記】2 Baron Park Lane, Apt−29 , Burlington, MA 01803 US
【Fターム(参考)】