説明

治療用化合物

下記の(I)を含む化合物、またはその製薬上許容し得る塩、またはそのプロドラッグを開示する:
【化1】


(I)
(式中、J、B、YおよびAは、説明しているとおりである)。
また、これらの化合物に関連する方法、組成物および医薬品も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2008年5月9日に出願された米国仮出願第61/051,753号の権利を主張する;この出願の開示は、その全体を参考として本明細書に合体させる。
【背景技術】
【0002】
眼圧降下剤は、術後およびレーザー線維柱帯切除術後の高眼圧症エピソード、緑内障のような多くの各種高眼圧症状の治療において、さらに、術前補助薬として有用である。
緑内障は、眼圧上昇に特徴を有する眼の疾患である。その病因に基づき、緑内障は、原発性または続発性として分類されている。例えば、成人における原発性緑内障(先天性緑内障)は、開放隅角または急性もしくは慢性閉塞隅角のいずれかであり得る。続発性緑内障は、ブドウ膜炎、眼球腫瘍または膨化白内障のような先在眼疾患に由来する。
【0003】
原発性緑内障の根底にある原因は、今のところ未知である。眼圧上昇は、房水流出の障害に基づく。慢性開放隅角緑内障においては、前眼房およびその解剖構造は正常のようであるが、房水の排出が阻害されている。急性または慢性閉塞隅角緑内障においては、前眼房が浅く、濾過胞角が狭窄し、虹彩が小柱網をシュレム管の入口で遮断し得る。瞳孔散大は、虹彩の根元を隅角の前方へ押圧し得、また、瞳孔ブロックを発生させ得、従って、急性発作が生ずる。狭前眼房角を有する目は、種々の重篤度の急性閉塞隅角緑内障発作にかかりやすい。
【0004】
続発性緑内障は、房水の後眼房から前眼房への、そして、その後のシュレム管への流れによる何らかの干渉に起因する。前眼部の炎症性疾患は、膨隆虹彩内に完全虹彩後癒着を生じることによって房水散逸を妨げ得、排出チャンネルを滲出液で閉塞し得る。他の一般的な病因は、眼球腫瘍、膨化白内障、網膜中心静脈閉塞症、眼の外傷、手術処置および眼内出血である。
全てのタイプをまとめて検討すると、緑内障は、40歳以上の全人口の約2%において発症し、急速な失明に進行する前の数年間は無症状であり得る。手術が適応でない場合においては、局所β‐アドレナリン受容体拮抗薬が、伝統的に、緑内障治療における選択薬物である。
【0005】
ある種のエイコサノイド類およびその誘導体は、緑内障の管理に使用するのに現在商業的に入手可能である。エイコサノイド類および誘導体としては、プロスタグランジン類およびその誘導体のような多くの生物学的に重要な化合物がある。プロスタグランジン類は、下記の構造式を有するプロスタン酸の誘導体として説明することができる:
【化1】

【0006】
種々のタイプのプロスタグランジンが、プロスタン酸骨格の構造およびその脂環式環上に担持された置換基に応じて知られている。さらなる分類は、包括的タイプのプロスタグランジンの後の下付き数字[例えば、プロスタグランジンE1(PGE1)、プロスタグランジンE2(PGE2)]によって示される側鎖中の不飽和結合の数、およびαまたはβ[例えば、プロスタグランジンF(PGF)]によって示される脂環式環上の置換基の構造に基づく。
【0007】
プロスタグランジンEP2選択性作用薬用は、数種の医薬用途を有するものと信じられている。例えば、米国特許第6,437,146号は、プロスタグランジンEP2選択性作用薬の“関節および筋肉の炎症および疼痛(例えば、関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、痛風性関節炎、若年性関節炎等)、炎症性皮膚症状(例えば、日焼け、火傷、湿疹、皮膚炎等)、炎症性眼症状(例えば、結膜炎等)、炎症に関与する肺疾患(例えば、喘息、気管支炎、ハト病(pigeon fancier's disease)、農夫肺等)、炎症に関連する胃腸管症状(例えば、アフター性潰瘍、クローン病、萎縮性胃炎、ガストリチス バリアロフォーム(gastritis varialoforme)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群等)、歯肉炎、炎症、術後または負傷後の疼痛および腫れ、発熱、炎症に関連する疼痛および他の症状、アレルギー性疾患、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、シェーグレン症候群、ベーチェット病、甲状腺炎、I型糖尿病、糖尿病性合併症(糖尿病性細小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性ネフロパシー等)、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、重症筋無力症、ブドウ膜炎接触性皮膚炎、乾癬、川崎病、サルコイドーシス、ホジキン病、アルツハイマー病、腎臓機能障害(腎炎、腎炎症候群等)、肝機能障害(肝炎、肝硬変等)、胃腸障害(下痢、炎症性腸疾患等)、ショック、骨粗しょう症のような異常骨代謝に特徴を有する骨疾患(特に閉経後骨粗しょう症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨パジェット病、骨溶解、骨への転移を有するまたは有さない悪性腫瘍の高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、骨関節炎、骨痛、骨減少症、癌悪液質、結石症(calculosis)、結石症(lithiasis) (特に、尿石症)、固形癌、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、浮腫(例えば、心臓性浮腫、脳水腫等)、悪性高血圧症等のような高血圧症、月経前緊張症、尿石、急性または慢性不全に起因する疾患のような乏尿症、高リン酸塩尿症等の治療および予防における”使用を教示している。
【0008】
米国特許第6,710,072号は、EP2作用薬の“骨粗しょう症、便秘、腎障害、性機能障害、脱毛症、糖尿病、癌および免疫調節障害;…急性心筋梗塞、血管内血栓、高血圧症、肺高血圧症、虚血性心疾患、うっ血性心不全および狭心症のような種々の病態生理学的疾患”の治療および予防における使用を教示している。
【発明の概要】
【0009】
本明細書においては、緑内障、炎症性腸疾患の治療;育毛の刺激;および、産毛の硬毛への転換の刺激において有用な化合物を開示する。これらの化合物自体を、下記に開示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書においては、下記の構造を有する化合物またはその製薬上許容し得る塩、またはそのプロドラッグを開示する:
【化2】

(式中、Yは、下記:
【化3】

であり;
Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐または‐CH2C≡C‐(CH2)3‐であり、これらにおいて、1個または2個の炭素原子はSまたはOによって置換されてもよく;或いは、Aは、‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、式中、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの和は1、2、3または4であり、1個のCH2はSまたはOによって置換されてもよい;
Jは、C=O、CHOH、CHF、CHCl、CHBr、CF2、CCl2、CBr2またはCHCNであり;そして、
Bは、置換アリールまたはヘテロアリールである)
但し、上記化合物は、下記ではないことを条件とする。
【化4】

もう1つの実施態様においては、上記化合物は、下記ではない。
【化5】

【0011】
また、本明細書においては、下記の構造を有する化合物またはその製薬上許容し得る塩またはそのプロドラッグも開示する:
【化6】

(式中、Yは、下記:
【化7】

であり;
Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐または‐CH2C≡C‐(CH2)3‐であり、これらにおいて、1個または2個の炭素原子は、SまたはOによって置換されてもよく;或いは、Aは、‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、式中、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの和は1、2、3または4であり、1個のCH2はSまたはOによって置換されてもよい;
Jは、C=O、CHOH、CHF、CHCl、CHBr、CF2、CCl2、CBr2またはCHCNであり;そして、
Bは、C1-10オキソアルキル置換アリールまたはヘテロアリールである)。
【0012】
本明細書において示した上記化学構造において開示しているAの属性に関しては、Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐または‐CH2C≡C-(CH2)3‐であり、これらにおいて、1個または2個の炭素原子はSまたはOによって置換されてもよく;或いは、Aは、‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、式中、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの和は1、2、3または4であり、1個のCH2はSまたはOによって置換されてもよい。
【0013】
限定するつもりはないが、Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐、または‐CH2C≡C‐(CH2)3‐であり得る。
また、Aは、いずれかの炭素がSおよび/またはOによって置換されているこれら3つの成分の1つに関連する基であり得る。例えば、本発明の範囲を如何なる形でも限定するものではないが、Aは、下記の1つ等のような、Sによって1個または2個の炭素原子を置換している成分であり得る。
【化8】

【0014】
【化9】

【0015】
また、本発明の範囲を如何なる形でも限定するものではないが、Aは、下記の1つ等のような、Oによって1個または2個の炭素原子を置換している成分であり得る。
【化10】

【0016】
また、本発明の範囲を如何なる形でも限定するものではないが、Aは、下記の1つ等のような、1個の炭素原子を置換しているOおよびもう1個の炭素原子を置換しているSを有し得る。
【化11】

【0017】
また、本発明の範囲を如何なる形でも限定するものではないが、ある種の実施態様においては、Aは、‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、式中、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの和は1、2、3または4であり、1個のCH2はSまたはOによって置換されてもよい。換言すれば、本発明の範囲を如何なる形でも限定するものではないが、
1つの実施態様においては、Aは、1、2、3または4個のCH2成分と、Ar、例えば、‐CH2‐Ar‐、‐(CH2)2‐Ar‐、‐CH2‐Ar‐CH2‐、‐CH2Ar‐(CH2)2‐、‐(CH2)2‐Ar‐(CH2)2‐等とを含み;
もう1つの実施態様においては、Aは、O;0、1、2または3個のCH2成分;および、Ar、例えば、‐O‐Ar‐、‐Ar‐CH2‐O‐、‐O‐Ar‐(CH2)2‐、‐O‐CH2‐Ar‐、‐O‐CH2‐Ar‐(CH2)2等を含み;或いは、
もう1つの実施態様においては、Aは、S;0、1、2または3個のCH2成分;および、Ar、例えば、‐S‐Ar‐、‐Ar‐CH2‐S‐、‐S‐Ar‐(CH2)2‐、‐S‐CH2‐Ar‐、‐S‐CH2‐Ar‐(CH2)2、‐(CH2)2‐S‐Ar等を含む。
【0018】
もう1つの実施態様においては、mとoの和は2、3または4であり;1個のCH2は、SまたはOによって置換されてもよい。
もう1つの実施態様においては、mとoの和は3であり;1個のCH2は、SまたはOによって置換されてもよい。
もう1つの実施態様においては、mとoの和は2であり;1個のCH2は、SまたはOによって置換されてもよい。
もう1つの実施態様においては、mとoの和は4であり;1個のCH2は、SまたはOによって置換されてもよい。
【0019】
インターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンとは、分子の2つの他の部分を連結している、アリール環もしくは環系またはヘテロアリール環もしくは環系を称する、即ち、上記2つの部分は、上記環に2つの異なる環位置において結合している。インターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンは、置換されていてもまたは置換されていなくてもよい。非置換インターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンは、これらのアリーレンが連結している分子の上記2つの部分以外の置換基を有さない。置換インターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンは、これらのアリーレンが連結している分子の上記2つの部分以外の置換基を有する。
【0020】
1つの実施態様においては、Arは、置換または非置換のインターフェニレン、インターチエニレン、インターフリレン、インターピリジニレン、インターオキサゾリレンおよびインターチアゾリレンである。もう1つの実施態様においては、Arは、インターフェニレン (Ph)である。もう1つの実施態様においては、Aは、‐(CH2)2‐Ph‐である。本発明の範囲を如何なる形でも限定するものではないが、置換基は、4個以下の重原子を有し得る;重原子は、任意の安定な組合せにおけるC、N、O、S、P、F、Cl、Brおよび/またはIである。また、特定の置換基において必要な任意の数の水素原子も含ませる。置換基は、当該化合物が本明細書において説明しているように有用であるために十分に安定でなければならない。上記した原子以外に、置換基は、置換基が酸性でありその塩形が安定である場合、金属カチオンまたは上記していない原子を有する任意の他の安定なカチオンも有し得る。例えば、‐OHは、‐O‐Na+塩を形成し得;或いは、CO2Hは、CO2‐K+塩を形成し得る。上記塩の存在し得るカチオンは、上記“4個以下の重原子”には計数しない。
【0021】
従って、置換基は、C4までのアルキル、アルケニル、アルキニル等のような、4個までの炭素原子を有するヒドロカルビル;C3までのヒドロカルビルオキシ;CO2H、SO3H、P(O)(OH)2等のような有機酸およびその塩類;CF3;F、ClまたはBrのようなハロヒドロキシルNH2およびC3までのアルキルアミン官能基;CN、NO2等のような他のNまたはS含有置換基等であり得る。
【0022】
1つの実施態様においては、Aは、‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、式中、Arはインターフェニレンであり、mとoの和は1、2または3であり、1個のCH2はSまたはOによって置換されてもよい。
もう1つの実施態様においては、Aは‐CH2‐Ar‐OCH2‐である。もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2‐Ar‐OCH2‐であり、Arはインターフェニレンである。もう1つの実施態様においては、Arは、1および3位置で結合しており、Aが下記に示す構造を有するときのように、m‐インターフェニレンとしても知られている。
【化12】

【0023】
もう1つの実施態様においては、Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐または‐CH2C≡C‐(CH2)3‐であり、1個または2個の炭素原子はSまたはOによって置換し得;或いは、Aは、‐(CH2)2‐Ph‐であり、1個のCH2はSまたはOによって置換されてもよい。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐または‐CH2C≡C‐(CH2)3‐であり、1個または2個の炭素原子はSまたはOによって置換し得;或いは、Aは、‐(CH2)2‐Ph‐である。
【0024】
他の実施態様においては、Aは、Yが上記芳香環または芳香族複素環に結合している下記の構造の1つを有する。
【化13】

【0025】
他の実施態様においては、Aは、Yが上記芳香環または芳香族複素環に結合している下記の構造の1つを有する。
【化14】

【0026】
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2OCH2Arである。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2SCH2Arである。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐(CH2)3Arである。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2O(CH2)4である。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2S(CH2)4である。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐(CH2)6‐である。
もう1つの実施態様においては、Aは、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐である。
【0027】
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2C≡C‐(CH2)3‐である。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐S(CH2)3S(CH2)2‐である。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐(CH2)4OCH2‐である。
もう1つの実施態様においては、Aは、シス‐CH2CH=CH‐CH2OCH2‐である。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2CH≡CH‐CH2OCH2‐である。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐(CH2)2S(CH2)3‐である。
【0028】
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2‐Ph‐OCH2‐であり;Phは、インターフェニレンである。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2‐mPh‐OCH2‐であり;mPhは、m‐インターフェニレンである。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2‐O‐(CH2)4‐である。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2‐O‐CH2‐Ar‐であり;Arは、2,5‐インターチエニレンである。
もう1つの実施態様においては、Aは、‐CH2‐O‐CH2‐Ar‐であり;Arは、2,5‐インターフリレンである。
【0029】
もう1つの実施態様においては、Aは、(3‐メチルフェノキシ)メチルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、(4‐ブチ‐2‐イニルオキシ)メチルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、2‐(2‐エチルチオ)チアゾール‐4‐イルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、2‐(3‐プロピル)チアゾール‐5‐イルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、3‐(メトキシメチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、3‐(3‐プロピルフェニル)である。
【0030】
もう1つの実施態様においては、Aは、3‐メチルフェネチルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、4‐(2‐エチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、4‐フェネチルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、4‐メトキシブチルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、5‐(メトキシメチル)フラン‐2‐イルである。
【0031】
もう1つの実施態様においては、Aは、5‐(メトキシメチル)チオフェン‐2‐イルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、5‐(3‐プロピル)フラン‐2‐イルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、5‐(3‐プロピル)チオフェン‐2‐イルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、6‐ヘキシルである。
もう1つの実施態様においては、Aは、(Z)‐6‐ヘキセ‐4‐エニルである。
【0032】
下記に示す各々の構造に従う化合物、およびその製薬上許容し得る塩、およびそのプロドラッグを、個々の実施態様として意図する。換言すれば、各構造体は、異なる実施態様を示す。
【化15】

【0033】
Jは、C=O、CHOH、CHF、CHCl、CHBr、CF2、CCl2、CBr2またはCHCNである。従って、下記に示す各構造体は、個々に意図する化合物の実施態様を示す。また、下記の構造に従う化合物の製薬上許容し得る塩およびそのプロドラッグも意図する。
【化16】

【0034】
アリールは、フェニル、ナフチル、ビフェニル等のような芳香族環または環系である。
ヘテロアリールは、環中に1個以上のN、OまたはS原子を有するアリールである、即ち、1個以上の環炭素が、N、Oおよび/またはSによって置換されている。限定するつもりはないが、ヘテロアリールの例としては、チエニル、ピリジニル、フリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、イミジゾールオリル(imidizololyl)、インドリル等がある。
【0035】
アリールまたはヘテロアリールの置換基は、各々、任意の安定な組合せにおける20個までの非水素原子と必然なだけの水素原子を有し得る;非水素原子は、任意の安定な組合せにおけるC、N、O、S、P、F、Cl、Brおよび/またはIである。しかしながら、組合せた全ての置換基における非水素原子の総数も、20個以下でなければならない。置換基は、当該化合物が本明細書において説明しているように有用であるために十分安定でなければならない。上記に挙げた原子以外に、置換基は、置換基が酸性でありその塩形が安定である場合、金属カチオンまたは上記に挙げていない原子を有する他の安定なカチオンも有し得る。例えば、‐OHは、‐O‐Na+塩を形成し得;或いは、CO2Hは、CO2‐K+塩を形成し得る。
【0036】
従って、本発明の範囲を如何なる形でも限定するつもりはないが、置換基は、下記であり得る:
ヒドロカルビル、即ち、アルキル、アルケニル、アルキニル等のような炭素と水素のみからなり、線状、枝分れまたは環状のヒドロカルビルおよびこれらの組合せを包含する成分;
OCH3、OCH2CH3、O‐シクロヘキシル等のようなO‐ヒドロカルビルを意味する、19個までの炭素原子のヒドロカルビルオキシ
CH2OCH3、(CH2)2OCH(CH3)2等のような他のエーテル置換基;
S‐ヒドロカルビルおよび他のチオエーテル置換基のようなチオエーテル置換基;
CH2OH、C(CH3)2OH等のようなヒドロカルビル‐OHを意味する、19個までの炭素原子のヒドロキシヒドロカルビル
NO2、CN等のような、また、NH2、NH(CH2CH3OH)、NHCH3等のような19個までの炭素原子のアミノを包含する窒素置換基
CO2H、エステル、アミド等のようなカルボニル置換基
クロロ、フルオロ、ブロモ等のようなハロゲン
CF3、CF2CF3等のようなフルオロカルビル
PO32‐等のようなリン置換基
S‐ヒドロカルビル、SH、SO3H、SO2‐ヒドロカルビル、SO3‐ヒドロカルビル等のようなイオウ置換基
【0037】
置換アリールまたはヘテロアリールは、環または環系が担持する限りの置換基を有し得、それらの置換基は、同一または異なるものであり得る。従って、例えば、アリール環またはヘテロアリール環は、クロロとメチル;メチル、OHおよびF;CN、NO2およびエチル等によって置換し得、本開示に照らして可能性のある任意の考えられる置換基または置換基の組合せを含み得る。
【0038】
また、置換アリールまたは置換ヘテロアリールは、1個以上の環が芳香族であり、そして1個以上の環が芳香族ではない二環式または多環式環系も含む。例えば、インダノニル、インダニル、インダノリル、テトラロニル等は、置換アリールである。このタイプの多環式環系においては、非芳香環ではない芳香環または芳香族複素環は、分子の残余に結合していなければならない。換言すれば、本明細書において‐B(‐は結合である)を示すいずれの構造においても、その結合は、芳香族環への直接結合である。
【0039】
1つの実施態様においては、Bは、置換アリールまたはヘテロアリールである。
もう1つの実施態様においては、Bは、置換フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、ハロゲン原子を有さない。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1-ヒドロキシ‐2,2-ジメチルプロピル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロパン‐2‐イル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロピル)フェニルである。
【0040】
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシブチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシヘプチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシヘキシル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシペンチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシプロピル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(3‐ヒドロキシ‐2‐メチルヘプタン‐2‐イル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(3‐ヒドロキシ‐2‐メチルオクタン‐2‐イル)フェニルである。
【0041】
もう1つの実施態様においては、Bは、1‐ヒドロキシ‐2,3‐ジヒドロ‐1H‐インデン‐5‐イルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、2,3‐ジヒドロ‐1H‐インデン‐5‐イルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、3‐(ヒドロキシ(1‐プロピルシクロブチル)メチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシ‐5,5‐ジメチルヘキシル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(ヒドロキシ(1‐プロピルシクロブチル)メチル)フェニルである。
【0042】
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐tert‐ブチルフェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐ヘキシルフェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシ‐2‐フェニルエチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシ‐3‐フェニルプロピル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(1‐ヒドロキシシクロブチル)フェニルである。
【0043】
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(2‐シクロヘキシル‐1‐ヒドロキシエチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(3‐シクロヘキシル‐1‐ヒドロキシプロピル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(シクロヘキシル(ヒドロキシ)メチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(シクロヘキシルメチル)フェニルである。
もう1つの実施態様においては、Bは、4‐(ヒドロキシ(フェニル)メチル)フェニルである。
【0044】
もう1つの実施態様は、下記の構造に従う化合物である。
【0045】
“C1-10”ヒドロカルビルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するヒドロカルビルである。
ヒドロカルビルは、炭素と水素のみからなる成分であり、限定するものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル等;さらにある場合にはアリール;並びにこれらの組合せを包含する。
アルキルは、下記のような二重または三重結合を有さないヒドロカルビルである:
メチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、n‐ペンチル、n‐ヘキシル等のような線状アルキル
イソプロピル、各枝分れブチル異性体(即ち、sec‐ブチル、tert‐ブチル等)、各枝分れペンチル異性体(即ち、イソペンチル等)、各枝分れヘキシル異性体およびより高級の枝分れアルキルフラグメントのような枝分れアルキル
シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等のようなシクロアルキル;および、
末端、内部または環炭素原子のような任意の利用可能な位置で分子の残余に結合し得る、環状および非環状成分(線状または枝分れのいずれか)の双方からなるアルキルフラグメント。
【0046】
アルケニルは、線状アルケニル、枝分れアルケニル、環状アルケニルおよびアルキルと同様なこれらの組合せのような、1個以上の二重結合を有するヒドロカルビルである。
アルキニルは、線状アルキニル、枝分れアルキニル、環状アルキニルおよびアルキルと同様なこれらの組合せのような、1個以上の三重結合を有するヒドロカルビルである。
アリールは、フェニル、ナフチル、ビフェニル等のような非置換または置換芳香族環または環系である。アリールは、アリールがヘテロ原子を含む置換基を有するかどうかによって、ヒドロカルビルであり得るか或いはあり得ない。
【0047】
アリールアルキルは、アリールによって置換されているアルキルである。換言すれば、アルキルは、分子の残余部分にアリールを連結している。例としては、‐CH2‐フェニル、‐CH2‐CH2‐フェニル等である。アリールアルキルは、アリール成分がヘテロ原子を含む置換基を有するかどうかによって、ヒドロカルビルであり得るか或いはあり得ない。
非共役ジエンまたはポリエン類は、共役していない1個以上の二重結合を有する。これらのジエンまたはポリエン類は、線状、枝分れまたは環状、或いはこれらの組合せであり得る。
また、上記の組合せも可能である。
【0048】
オキソアルキルは、1個の炭素原子がC=Oであるアルキルである。C1-10オキソアルキルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するオキソアルキルである。また、オキソアルキル成分は、アリールまたはヘテロアリール基を有する環を形成し得る。従って、例えば、Bは、置換または非置換のテトラロニル、インダノニル等であり得る。
もう1つの実施態様においては、Bは、C1-10オキソアルキル置換フェニルである。
【0049】
従って、下記の構造体の各々を意図する。これらの構造体またはその製薬上許容し得る塩またはそのプロドラッグは、個々に、本発明において意図する実施態様である化合物を示す。換言すれば、各構造体は、異なる実施態様を示す。
【化17】

【0050】
【化18】

【0051】
【化19】

【0052】
上記各実施態様においては、xは5、6または7であり、y+zは2x+1である。
1つの実施態様においては、xは5であり、y+zは11である。
もう1つの実施態様においては、xは6であり、y+zは13である。
もう1つの実施態様においては、xは7であり、y+zは15である。
【0053】
有用な化合物の想定例を下記に示す。
【化20】

【0054】
【化21】

【0055】
【化22】

【0056】
化合物例
以下は、有用な化合物の想定例である:
化合物例1
下記の構造を有する化合物またはその製薬上許容し得る塩、またはそのプロドラッグ:
【化23】

(式中、Yは、下記:
【化24】

であり;
Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐または‐CH2C≡C‐(CH2)3‐であり、これらにおいて、1個または2個の炭素原子はSまたはOによって置換し得;或いは、Aは、‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、式中、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの和は1、2、3または4であり、1個のCH2はSまたはOによって置換し得;
Jは、C=O、CHOH、CHF、CHCl、CHBr、CF2、CCl2、CBr2またはCHCNであり;そして、
Bは、C1-10オキソアルキル置換アリールまたはヘテロアリールである)。
【0057】
化合物例2
Bが、置換フェニルである、化合物例1に従う化合物。
化合物例3
下記の構造を有する化合物例1に従う化合物またはその製薬上許容し得る塩または、そのプロドラッグ:
【化25】

(式中、Rは、水素またはC1-10ヒドロカルビルである)。
【0058】
化合物例4
Rが、アルキルである、化合物例3に従う化合物。
化合物例5
Rが、アリールアルキルである、化合物例3に従う化合物。
【0059】
化合物例6
下記の構造を有する、化合物例1〜5のいずれか1つの化合物例に従う化合物またはその製薬上許容し得る塩、またはそのプロドラッグ:
【化26】

(式中、Rは、水素またはC1-10ヒドロカルビルである)。
【0060】
化合物例7
下記の構造を有する化合物またはその製薬上許容し得る塩、またはそのプロドラッグ:
【化27】

(式中、Yは、有機酸官能基または14個までの炭素原子を含むそのアミドもしくはエステルであり;Yは、下記:
【化28】

であり;
Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐または‐CH2C≡C‐(CH2)3‐であり、これらにおいて、1個または2個の炭素原子はSまたはOによって置換し得;或いは、Aは、‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、式中、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの和は1、2、3または4であり、1個のCH2はSまたはOによって置換し得;
Jは、C=O、CHOH、CHF、CHCl、CHBr、CF2、CCl2、CBr2またはCHCNであり;そして、
Bは、置換アリールまたはヘテロアリールである)
但し、上記化合物は、下記ではないことを条件とする:
【化29】

(式中、Y1は、CO2Hまたはアミドまたはカルボン酸である)。
【0061】
化合物例8
Aが、(3‐メチルフェノキシ)メチルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例9
Aが、(4‐ブチ‐2‐イニルオキシ)メチルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例10
Aが、2‐(2‐エチルチオ)チアゾール‐4‐イルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例11
Aが、2‐(3‐プロピル)チアゾール‐5‐イルである、化合物例1〜7に従う化合物。
【0062】
化合物例12
Aが、3‐(メトキシメチル)フェニルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例13
Aが、3‐(3‐プロピルフェニル)である、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例14
Aが、3‐メチルフェネチルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例15
Aが、4‐(2‐エチル)フェニルである、化合物例1〜7に従う化合物。
【0063】
化合物例16
Aが、4‐フェネチルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例17
Aが、4‐メトキシブチルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例18
Aが、5‐(メトキシメチル)フラン‐2‐イルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例19
Aが、5‐(メトキシメチル)チオフェン‐2‐イルである、化合物例1〜7に従う化合物。
【0064】
化合物例20
Aが、5‐(3‐プロピル)フラン‐2‐イルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例21
Aが、5‐(3‐プロピル)チオフェン‐2‐イルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例22
Aが、6‐ヘキシルである、化合物例1〜7に従う化合物。
化合物例23
Aが、(Z)‐6‐ヘキセ‐4‐エニルである、化合物例1〜7に従う化合物。
【0065】
化合物例24
Bが、3‐(1‐ヒドロキシヘキシル)チオフェン‐2‐イルである、化合物例7〜23のいずれか1つに従う化合物。
化合物例25
Bが、3‐(1‐ヒドロキシヘキシル)チオフェン‐3‐イルである、化合物例7〜23のいずれか1例に従う化合物。
化合物例26
Bが、3‐(1‐ヒドロキシヘキシル)フラン‐2‐イルである、化合物例7〜23のいずれか1例に従う化合物。
【0066】
化合物例27
Bが、3‐(1‐ヒドロキシヘキシル)フラン‐3‐イルである、化合物例7〜23のいずれか1例に従う化合物。
化合物例28
Bが、3‐(1‐ヒドロキシヘキシル)ピリジン‐2‐イルである、化合物例7〜23のいずれか1例に従う化合物。
化合物例29
Bが、3‐(1‐ヒドロキシヘキシル)ピリジン‐3‐イルである、化合物例7〜23のいずれか1例に従う化合物。
【0067】
以下は、上記の各想定化合物例を使用する組成物、キット、方法、用途および医薬品の想定例である。
組成物例
化合物例1〜29のいずれか1例に従う化合物を含む組成物;該組成物は、眼科的に許容し得る液体である。
【0068】
医薬品例
化合物例1〜29のいずれか1例に従う化合物の、哺乳類の緑内障または高眼圧症の治療用医薬品の製造における使用。
化合物例1〜29のいずれか1例に従う化合物の、ヒトの脱毛症の治療用医薬品の製造における使用。
化合物例1〜29のいずれか1例に従う化合物を含む医薬品;該組成物は、眼科的に許容し得る液体である。
【0069】
方法例
化合物例1〜29のいずれか1例に従う化合物を哺乳類に緑内障または高眼圧症の治療のために投与することを含む方法。
化合物例1〜29のいずれか1例に従う化合物を哺乳類に脱毛症の治療のために投与することを含む方法。
【0070】
キット例
化合物例1〜29のいずれか1例に従う化合物を含む組成物、容器、並びに緑内障または高眼圧症の治療のために上記組成物を哺乳類に投与することについての使用説明書を含むキット。
化合物例1〜29のいずれか1例に従う化合物を含む組成物、容器、並びに脱毛症の治療のために上記組成物を哺乳類に投与することについての使用説明書を含むキット。
【0071】
“製薬上許容し得る塩”とは、親化合物の活性を保持し、親化合物と比較して、投与する対象者に対してまた投与するのに関連して何らさらなる有害なまたは厄介な作用を与えない任意の塩である。また、製薬上許容し得る塩は、酸、他の塩、または酸もしくは塩に転換するプロドラッグの投与の結果として生体内で生じ得る任意の塩も称する。
【0072】
酸性官能基の製薬上許容し得る塩類は、有機または無機塩基から誘導し得る。塩は、一価または多価イオンを含み得る。特に興味あるのは、無機イオンのリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムである。有機塩は、アミン類、特に、モノ‐、ジ‐およびトリアルキルアミンまたはエタノールアミンのようなアンモニウム塩によって製造し得る。また、塩は、カフェイン、トロメタミンおよび同様な分子によっても形成し得る。塩酸またはある種の他の製薬上許容し得る酸は、アミンまたはピリジン環のような塩基性基を含有する化合物と塩を形成し得る。
【0073】
“プロドラッグ”は投与後に治療活性化合物に転換する化合物であり、この用語は、当該技術において一般に理解されているように本明細書においても広く解釈すべきである。本発明の範囲を限定するつもりはないが、転換は、エステル基またはある種の他の生物学的に不安定な基の加水分解によって生じ得る。一般的には(必然的ではなく)、プロドラッグは、転換する治療活性化合物よりも不活性であるかまたはあまり活性でない。本明細書において開示する化合物のエステルプロドラッグを、特に意図する。エステルは、C1のカルボン酸(即ち、天然プロスタグランジンの末端カルボン酸)から誘導し得、或いはエステルは、フェニル環上のような分子の他の部分上のカルボン酸官能基から誘導し得る。限定するつもりはないが、エステルは、アルキルエステル、アリールエステルまたはヘテロアリールエステルであり得る。用語アルキルとは、当業者が一般的に理解している意味を有し、線状、枝分れまたは環状アルキル成分を称する。エステルのアルキル成分が1〜6個の炭素原子を有するC1‐6アルキルエステルは、特に有用であり、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、イソ‐ブチル、t‐ブチル、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよび1〜6個の炭素原子を有するこれらの組合せ等がある。
【0074】
当業者であれば、医薬品の投与または製造に当っては、本明細書において開示する化合物を当該技術においてそれ自体周知である製薬上許容し得る賦形剤と混合し得ることは容易に理解し得るであろう。特に、全身投与すべき薬物は、経口投与または非経口投与または吸入に適する粉末、ピル、錠剤等として、或いは、溶液、エマルジョン、懸濁液、エアゾール、シロップまたはエリキシル剤として調合し得る。
【0075】
固形の投与剤形または医薬品用には、無毒性固形担体として、限定するものではないが、製薬級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン酸ナトリウム、ポリアルキレングリコール、タルカム、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムがある。固形投与剤形は、コーティーングしてなくてもよく、或いは、既知の方法によってコーティーングして胃腸管内での崩壊および吸収を遅延させ、それによって、長期に亘る持続作用を付与し得る。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質を使用し得る。また、固形投与剤形は、米国特許第4,256,108号、第4,166,452号および第4,265,874号に記載された方法によってコーティーングして、制御放出用の浸透性治療用錠剤を調製することもできる。薬物投与可能な液体投与剤形は、例えば、例えば水、生理食塩水、含水デキストロース、グリセリン、エタノール等のような担体中の1種以上の現在有用な化合物および任意成分としての製薬用アジュバントの溶液または懸濁液を含み、それによって、溶液または懸濁液を調製することができる。必要に応じて、投与すべき製薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等のような少量の無毒性補助物質もまた含有し得る。そのような助剤の典型的な例は、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等である。そのような投与剤形の実際の調製方法は、既知であり、当業者にとっては明白であろう;例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 16th Edition, 1980を参照されたい。投与すべき製剤組成物は、いずれにしても、一定量の1種以上の現在有用な化合物を所望する治療効果を与える有効量で含有する。
【0076】
非経口投与は、一般的には、皮下、筋肉内または静脈内のいずれかの注射に特徴を有する。注射物質は、通常の剤形で、液体の溶液または懸濁液、注入前に液体中溶液または懸濁液にするのに適する固形剤形、またはエマルジョンのいずれかとして調製し得る。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノール等である。さらに、必要に応じて、投与する注射用製薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等のような少量の無毒性補助物質も含有し得る。
【0077】
投与する現在有用な化合物(1種以上)の量は、所望する治療効果(単数または複数の)、治療する特定の哺乳類、哺乳類症状の重篤度および性質、投与方式、使用する特定化合物(1種以上)の有効性および薬力学、並びに処方医師の判断による。現在有用な化合物(1種以上)の製薬上有効な投与量は、約0.5または約1〜約100mg/kg/日の範囲内であり得る。
【0078】
眼科的に許容し得る液体は、眼に局所投与し得るように調合する。快適性を可能な限り最大限にするべきであるが、場合によっては、製剤検討事項(例えば、薬物安定性)は、最適よりも低い快適性を必要とする。快適性を最大限にできない場合、液体は、液体が患者にとって局所眼科使用において寛容であるように調合すべきである。さらに、眼科的に許容し得る液体は、単回使用用に包装するか、或いは、多数回使用における汚染を防止するために防腐剤を含有しなければならない。
【0079】
眼科用途においては、液剤または医薬品は、多くの場合、主ビヒクルとして生理食塩溶液を使用して調製し得る。眼科用液剤は、好ましくは、適切な緩衝系によって快適なpHに維持すべきである。また、製剤は、通常製薬上許容し得る防腐剤、安定剤および界面活性剤も含有し得る。
【0080】
本発明の製薬組成物において使用し得る防腐剤は、限定するものではないが、ベンズアルコニウムクロリド、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀がある。有用な界面活性剤は、例えば、Tween 80である。同様に、各種の有用なビヒクルを、本発明の眼科用調製物において使用し得る。これらのビヒクルとしては、限定するものではないが、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび精製水がある。
【0081】
張度調節剤は、必要に応じてまたは便宜上添加し得る。張度調節剤としては、限定するものではないが、塩類、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム;マンニトールまたはグリセリン;或いは任意の他の適切な眼科的に許容し得る張度調節剤がある。
pHを調整するための種々の緩衝液および手段は、得られる製剤が眼科的に許容し得る限り使用し得る。従って、緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液およびホウ酸塩緩衝液がある。酸または塩基類は、これらの製剤のpHを必要に応じて調整するのに使用し得る。
【0082】
同様な趣旨において、本発明において使用する眼科的に許容し得る酸化防止剤としては、限定するものではないが、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンがある。
眼科用製剤に含ませ得る他の賦形剤成分は、キレート剤である。有用なキレート剤は、エデト酸二ナトリウムであるが、他のキレート剤もエデト酸二ナトリウムの代りにまたは一緒に使用し得る。
【0083】
上記の各成分は、通常、下記の量で使用する:


【0084】
育毛刺激のための用途
1つの実施態様においては、本明細書において開示する化合物は、禿頭症および/または脱毛の治療において有用であり得る。脱毛症(禿頭症)は、正常または異常毛髪いずれかの欠乏症であり、主として、ヒトにおける美容上の問題である。脱毛症は、容易に見受けられる硬毛、幅広直径、染髪の欠乏症である。しかしながら、いわゆる禿頭症の人においては、硬毛の顕著な欠乏があるものの、皮膚には産毛が存在し、この産毛は、その存在を判定するのに顕微鏡検査を必要とし得る微細で無色の毛である。この産毛は、硬毛へのプレカーサーである。
【0085】
本明細書において説明する化合物は、産毛が硬毛として成長するような転換並びに硬毛の成長速度の増進を刺激するのに使用し得る。本明細書において説明する化合物の育毛の刺激における有用性は、下記のようにして発見した。
【0086】
緑内障患者を治療する過程においては、治療が片目においてのみ適切である可能性がある。日常の診療過程において、ビマトプロスト(bimatoprost)、即ち、プロスタグランジンのアナログで治療している患者が、治療していない目におけるよりも治療している目において長くて、濃くそして太いまつげが生えることを発見した。検査すると、違いは、極めて顕著であることが判明した。まつげは、治療した目において、より長く、且つより太くて濃密な外観を有していた。治療した目の眼瞼上のまつげ外観は、その外観が両側的現象を示す場合、全く魅力的なようであった。その非対称性の結果としては、一方側での長いまつげは、美容的観点からは嫌悪的であると解釈し得た。系統的検査を、その非対称現象の結果として実施した。この変貌した外観は単独所見ではなかったことがまもなく明らかとなった。片目のみにビマトプロストを投与した複数の患者の眼瞼を比較すると、数名の患者におけるビマトプロストで治療した方のまつげおよび隣接体毛において微妙な変化が明らかになった。明確な差異は、6ヶ月よりも長く片側基準で上記薬物を投与した全ての患者のまつげおよび隣接体毛において変動する度合で識別し得た。
【0087】
まつげの変化は、注意をこの問題に絞った時点で、数名の患者における肉眼検査で明白であった。淡色の体毛およびまつげを有する患者においては、上記の差異は、細隙灯生体顕微鏡の高倍率および照明機能の助けによってのみ容易に観察された。緑内障のフォローアップ検査過程においては、注意は、一般的に、目自体に直接絞られる。必要な高出力倍率の結果として、片目のみが1回観察され、その目が、まつげには焦点が当てられない高い十分な出力で観察される。これらの高出力においては、両目間の如何なるまつげの非対称性も、両目の眼瞼のまつげおよび隣接体毛の注意深い意図的な比較による以外には、注目されないようである。
【0088】
より健全な育毛が上記プロスタグランジンアナログの投与後の治療領域において生じたという結論に至った観察パラメーターは、複数であった、これらのパラメーターとしては、まつげの長さ増大;正常なまつげ線に沿ったまつげ数の増大;まつげの厚さおよび光沢の増大;正常なまつげ成長領域に隣接する暫定的領域における助まつげ(auxiliary lash)様硬毛の増加;内および外眼角領域における助まつげ様硬毛の増大;まつげの色素増大;隣接眼瞼の皮膚上の微細毛の数の増加、長さの増大および光沢と厚さの増大;および、最後の、まつげおよびまつげ様硬毛の垂直角度形成の増大がある。育毛がビマトプロストのようなプロスタグランジンアナログによって刺激を受けているという上記の結論は、そのように、単一のパラメーターにおける差異の証拠によって裏付けされているのではなく、多数の対象者における対照領域に対する治療領域の体毛外観の複数のパラメーターに基づいている。
【0089】
本明細書において説明する化合物は、プロスタグランジンアナログであり、従って、ビマトプロストと同様な活性を有し、構造的類似性を有し、従って、育毛を刺激し、産毛の硬毛への転換の刺激が期待される。1つの実施態様においては、本明細書において説明する化合物およびそのプロドラッグは、育毛の刺激において使用し得る。本明細書において使用するとき、育毛とは、動物の頭皮、眉、眼瞼、髭および他の皮膚領域に関連する体毛を包含する。
【0090】
1つの実施態様においては、上記化合物は、皮膚科的に適合し得るビヒクルまたは担体と混合する。本発明において説明するような組成物を調製するのに使用し得るビヒクルは、例えば、例えば生理食塩水のような水溶液、オイル溶液または軟膏を含み得る。さらにまた、上記ビヒクルは、例えば、塩化ベンザルコニウムのような皮膚科的に適合し得る防腐剤;例えば、ポリソルベート80のような界面活性剤;リポソームまたはポリマー類、例えば、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびヒアルロン酸も含み得る;これらは、粘度を増大させるために使用し得る。さらにまた、薬物を投与すべき場合、可溶性または不溶性の薬物挿入物を使用することも可能である。
【0091】
1つの実施態様においては、有効な養毛刺激量の上記で定義したような1種以上の化合物と皮膚科的に適合し得る担体とを含む皮膚科用組成物を、養毛の刺激のための局所治療用に製剤化し得る。活性化合物の有効量は、当業者であれば、決定し得ることであるが、使用する化合物、投与頻度および所望する結果に応じて変動するであろう。上記化合物は、上記皮膚科組成物の一般に約0.0000001〜約50質量%の範囲である。好ましくは、上記化合物は、皮膚科組成物全体の約0.001〜約50質量%、より好ましくは上記組成物の約0.1〜約30質量%の範囲である。
【0092】
1つの実施態様においては、本発明の化合物の養毛の刺激における使用は、ヒトおよび動物の双方を含む哺乳類種における使用を見出している。ヒトにおいては、本明細書において説明する化合物は、例えば、頭皮、顔髭、頭、恥部領域、上唇部、眉および眼瞼に使用し得る。その生皮のために飼育する動物、例えば、ミンクにおいては、本明細書において説明する化合物は、身体表面の全体に亘って適用して、生皮全体を商業的理由のために改良し得る。また、この方法は、動物における美容的理由においても使用し得、例えば、疥癬またはある程度の脱毛症を生じる他の疾患による地肌を有するイヌおよびネコの皮膚に適用し得る。
【0093】
育毛の刺激を意図する製薬組成物としては、局所および局部作用に適する製薬組成物がある。本明細書において使用するときの用語“局所”とは、適切な製薬用担体中に混入し且つ薄毛または禿頭部位に適用して局所作用を発揮させるための、本明細書において説明するような化合物の使用に関連する。従って、そのような局所用組成物としては、上記化合物を治療すべき皮膚と直接接触させることによって外的に適用する製剤形がある。この目的のための通常の製剤形としては、軟膏、塗布薬(liniment)、クリーム、シャンプー、ローション、ペースト、ゼリー、スプレー、エアゾール等があり、治療すべき身体部分に応じてパッチまたは含浸包帯において適用し得る。用語“軟膏”は、油性、水溶性およびエマルジョンタイプの基剤、例えば、ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物を含む製剤(クリームを含む)を包含する。
【0094】
典型的には、上記化合物は、治療すべき身体部、例えば、眼瞼、眉、皮膚または頭皮に局所的に長時間繰返して使用し得る。好ましい投与処方は、一般に、少なくとも1ヶ月、より好ましくは少なくとも3ヶ月、最も好ましくは少なくとも6ヶ月の治療期間における毎日のような規則的な投与を含む。
【0095】
眼瞼または眉においての局所使用においては、上記活性化合物は、製薬上許容し得る緩衝剤または塩を添加することによって生理学的に許容し得るオスモル濃度を示す水溶液、クリーム、軟膏またはオイル中で製剤化し得る。そのような製剤は、ディスペンサーに応じて、添加剤として、ベンズアルコニウムクロリド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、パラヒドロキシ安息香酸並びに硝酸塩、塩化物、酢酸塩およびホウ酸塩のようなフェニル水銀塩のような防腐剤;または、酸化防止剤;並びに、EDTA、ソルビトール、ホウ酸等のような添加剤を含有し得または含有し得ない。さらにまた、特に、水溶液は、多糖類、例えば、メチルセルロース;ムコ多糖類、例えば、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、または多価アルコール、例えば、ポリビニルアルコールのような粘度上昇剤も含有し得る。また、種々の遅延放出性ゲルおよびマトリックス、並びに、例えば、その場でゲルを形成する物質をベースとする可溶性および不溶性接眼挿入物も使用し得る。使用する実際の製剤および化合物に応じて、種々の量の薬剤および種々の投与処方を使用し得る。典型的には、眼瞼の治療における化合物の日量は、眼瞼当り約0.1ng〜約100mgであり得る。
【0096】
皮膚および頭皮においての局所使用においては、上記化合物は、活性成分の担体として軟膏、クリーム、塗布薬またはパッチを使用して有利に製剤化し得る。また、これらの製剤は、ディスペンサーおよび使用の性質に応じて、防腐剤を含有し得または含有し得ない。そのような防腐剤としては、上述したような防腐剤;および、メチル‐、プロピル‐またはブチル‐パラヒドロキシ安息香酸;ベタイン;クロルヘキシジン;ベンズアルコニウムクロリド等がある。また、遅延放出伝達用の各種マトリックスも使用し得る。典型的には、頭皮に適用すべき投与量は、化合物および製剤に応じて、1日当り約0.1ng〜約100mg、より好ましくは1日当り約1ng〜約10mg、最も好ましくは1日当り約10ng〜約1mgの範囲である。製剤に応じた投与日量を達成するために、上記化合物は、酸化防止剤と一緒にまたは酸化防止剤なしで、1日1回または数回投与し得る。
【0097】
局所用途においては、本明細書において開示する化合物を含有するクリーム、軟膏、ゲル、液剤または懸濁液等を使用する。局所製剤は、一般に、製薬用担体、共溶媒、乳化剤、浸透促進剤、防腐剤系および皮膚軟化剤からなり得る。
本発明の活性化合物の実際の投与量は、特定の化合物および治療すべき症状による;適切な投与量の選択は、明らかに熟練技術者の知識範囲内である。
【0098】
2004年12月10日に出願された米国特許出願第11/009,298号および2005年12月6日に出願された米国仮特許出願第60/742,779号に開示されている合成方法は、当業者であれば、本明細書において開示する化合物をえるのに容易に適応化し得るであろう;両出願は、本明細書に参考として明確に合体させる。
【0099】
JがCN化合物である化合物は、2006年5月22日に出願された米国仮特許出願第60/747835号に開示されている手順を適応化することによって調製し得る。
JがCHFである化合物は、米国特許出願第11/009,298号および米国仮特許出願第60/742,779号に開示されている手順を適応化することによって調製し得る。
JがCHBrである化合物は、Tani, K. et al. (ONO) Bioorganic and Medicinal Chemistry 2002, 10, 1883に開示されている手順を適応化することによって調製し得る。
【0100】
JがCCl2またはCBr2である化合物は、2006年5月3日に出願された引用米国仮特許出願第60746275号に開示されている手順を適応化することによって調製し得る;この出願は、本明細書に参考として明確に合体させる)。
JがCF2である化合物は、JがC=Oである相応する化合物から、Lal et.al. J.Org.Chem. 1999, 64, 7048に従ってJがCHFである化合物を製造するのと同様な手順で調製し得る。
【0101】
合成方法:
【化30】

【0102】
(Z)‐7‐{(1R,2S,3R,5R)‐5‐クロロ‐3‐ヒドロキシ‐2‐[4‐(1‐ヒドロキシ‐ヘキシル)‐フェニル]‐シクロペンチル}‐ヘプテ‐5‐エン酸メチルエステル (1)
化合物1を、米国仮特許出願第60/742,779号に記載されているようして合成した。
【0103】
(Z)‐7‐[(1R,2S,3R,5R)‐5‐クロロ‐2‐(4‐ヘキサノイル‐フェニル)‐3‐ヒドロキシ‐シクロペンチル]‐ヘプテ‐5‐エン酸メチルエステル (2)
DDQ (13mg、0.056 ミリモル)を、ジクロロメタン(1mL)/H2O (50μL)中の1(23mg、0.052ミリモル)の溶液に添加した。6時間後、さらに、DDQ (16mg)とジクロロメタン(1mL)/H2O (50μL)を添加した。得られた混合物を1夜撹拌し、その後、5mLのNaHCO3飽和溶液を添加した。混合物をジクロロメタン(3×30mL)で抽出し、混ぜ合せたジクロロメタン溶液を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、蒸発させた。残留物のシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(20%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、化合物2(13mg、57%)を得た。
【0104】
(Z)‐7‐[(1R,2S,3R,5R)‐5‐クロロ‐2‐(4‐ヘキサノイル‐フェニル)‐3‐ヒドロキシ‐シクロペンチル]‐ヘプテ‐5‐エン酸 (3)
米国特許出願第11/009,298号に記載されているLiOH加水分解手順。
【0105】
化合物4aおよび4b
化合物4a:トリエチルアミンとクロロギ酸エチルを、室温のCH2Cl2中の化合物3の溶液に順次添加する。2.5時間後、トリエチルアミンとエチレングリコールを添加する。室温で1夜撹拌した後、反応混合物をH2OとCH2Cl2間に分配する。相を分離し、水相をCH2Cl2 (2×)で抽出する。混ぜ合せた有機相を1N HClで洗浄し、次いで、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮する。残留物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(10%CH3OH/CH2Cl2)により精製して、化合物4aを得る。
【0106】
化合物4b:トリエチルアミンとクロロギ酸エチルを、室温のCH2Cl2中の化合物3の溶液に順次添加する。2.5時間後、トリエチルアミンと4‐(2‐ヒドロキシエチル)‐モルフィンを添加する。室温で1夜撹拌した後、反応混合物をH2OとCH2Cl2間に分配する。相を分離し、水相をCH2Cl2 (2×)で抽出する。混ぜ合せた有機相を1N HClで洗浄し、次いで、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮する。残留物をシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィー(10%CH3OH/CH2Cl2)により精製して、化合物4bを得る。
【0107】
下記の化合物は、本説明に従い有用であり得る。
【化31】

【0108】
生体内例
上記に説明したような化合物を生体内試験して、これらの化合物の眼内圧降下能力を測定する。化合物1を正常眼内圧イヌにおいて試験する。眼内圧(IOP)はベースラインから降下する。また、この化合物をレーザー誘発高眼圧サルにおいても試験したところ、IOPはベースラインから降下する。
化合物2を正常眼圧イヌにおいて試験する。眼内圧(IOP)はベースラインから降下する。また、この化合物をレーザー誘発高眼圧サルにおいても試験したところ、IOPはベースラインから降下する。
【0109】
化合物3を正常眼圧イヌにおいて試験する。眼内圧(IOP)はベースラインから降下する。また、この化合物をレーザー誘発高眼圧サルにおいても試験したところ、IOPはベースラインから降下する。
化合物4を正常眼圧イヌにおいて試験する。眼内圧(IOP)はベースラインから降下する。また、この化合物をレーザー誘発高眼圧サルにおいても試験したところ、IOPはベースラインから降下する。
【0110】
化合物5を正常眼圧イヌにおいて試験する。眼内圧(IOP)はベースラインから降下する。また、この化合物をレーザー誘発高眼圧サルにおいても試験したところ、IOPはベースラインから降下する。
化合物6を正常眼圧イヌにおいて試験する。眼内圧(IOP)はベースラインから降下する。また、この化合物をレーザー誘発高眼圧サルにおいても試験したところ、IOPはベースラインから降下する。
【0111】
化合物7を正常眼圧イヌにおいて試験する。眼内圧(IOP)はベースラインから降下する。また、この化合物をレーザー誘発高眼圧サルにおいても試験したところ、IOPはベースラインから降下する。
化合物8を正常眼圧イヌにおいて試験する。眼内圧(IOP)はベースラインから降下する。また、この化合物をレーザー誘発高眼圧サルにおいても試験したところ、IOPはベースラインから降下する。
【0112】
当業者であれば、ハッチ型ウェッジ/固形ウェッジ(hatched wedge/solid wegde)構造特性に関連する立体化学の意味は理解していることである。例えば、入門有機化学教本(Francis A. Carey, Organic Chemistry, New York: McGraw‐Hill Book Company 1987, p. 63)は、“ウェッジは紙面から観察者に向かう結合を示す”、さらに“点線”として示されるハッチ型ウェッジは“観察者から後退する結合を示す”と説明している。立体化学的に明確に断らない限り、構造体は、純粋なまたは任意の可能性ある混合物中双方でのあらゆる可能性ある立体異性体を包含するものとする。立体化学的に明確に断らない限り、構造体は、純粋なまたは任意の可能性ある混合物中双方でのあらゆる可能性ある立体異性体を包含するものとする。
【0113】
上記の説明は、本発明を実施するのに使用し得る特定の方法および組成物を詳述しており、また、意図する最良の形態を示している。しかしながら、当業者にとっては、所望の薬理特性を有するさらなる化合物を同様な方法で調製し得ること、また、開示した化合物は種々の出発化合物から種々の化学反応を介しても得ることができることが明白である。同様に、種々の製薬組成物も、実質的に同じ結果でもって調製し使用することができる。従って、詳細ではあるが、上記は、明細書に示されており、本発明の範囲全体を限定するものと解釈すべきではなく、むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲の法的解釈によってのみ決定すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造を有する化合物またはその製薬上許容し得る塩:
【化1】

(式中、Yは、下記:
【化2】

であり;
Aは、‐(CH2)6‐、シス‐CH2CH=CH‐(CH2)3‐または‐CH2C≡C‐(CH2)3‐であり、これらにおいて、1個または2個の炭素原子はSまたはOによって置換されてもよく;或いは、Aは、‐(CH2)m‐Ar‐(CH2)o‐であり、式中、Arはインターアリーレンまたはヘテロインターアリーレンであり、mとoの和は1、2、3または4であり、1個のCH2はSまたはOによって置換されてもよい;
Jは、C=O、CHOH、CHF、CHCl、CHBr、CF2、CCl2、CBr2またはCHCNであり;そして、
Bは、C1-10オキソアルキル置換アリールまたはヘテロアリールである)。
【請求項2】
Aが、下記から選ばれる構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化3】


【請求項3】
Aが、5‐(3‐プロピル)チオフェン‐2‐イルである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記Aが、6‐ヘキシルである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記Aが、(Z)‐6‐ヘキセ‐4‐エニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Bが、置換フェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
下記の構造を有する請求項1記載の化合物またはその製薬上許容し得る塩:
【化4】

(式中、Rは、水素またはC1-10ヒドロカルビルである)。
【請求項8】
下記の構造を有する請求項1記載の化合物またはその製薬上許容し得る塩:
【化5】

(式中、Rは、水素またはC1-10ヒドロカルビルである)。
【請求項9】
Rが、アルキルである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
Rが、アリールアルキルである、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
下記の構造を有する請求項1記載の化合物またはその製薬上許容し得る塩:
【化6】


【請求項12】
下記の構造を有する請求項1記載の化合物またはその製薬上許容し得る塩:
【化7】


【請求項13】
必要とする対象者に治療上有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む、脱毛症の治療方法。

【公表番号】特表2011−519939(P2011−519939A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508563(P2011−508563)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/042479
【国際公開番号】WO2009/137345
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】