説明

治療用組成物

インゲノールアンゲレートは強力な抗癌剤であり、酸性緩衝液の存在下で非プロトン性溶媒中にそれを溶解させることにより安定化し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーホルビア(Euphorbia)種から入手可能でかつ皮膚癌の処置において有用である化合物の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物インゲノールアンゲレート(ingenol angelate)はさまざまなユーホルビア種、特にEuphorbia peplus及びEuphorbia drummondiiから単離され得る。インゲノールアンゲレートアンゲレートは、インゲノール−3−アンゲレート(イソ型「b」)、インゲノール−5−アンゲレート(イソ型「a」)そしてインゲノール−20−アンゲレート(イソ型「c」)という3つのイソ型で存在する。これらのうちの第1のものは本明細書においてI3Aと呼ばれ、以下の構造を有する:
【化1】

【0003】
インゲノールアンゲレートは、健康な細胞には影響を及ぼさない一方で、急速なミトコンドリア崩壊(mitochondrial disruption)及び原発性壊死による細胞死を介して皮膚癌細胞にとってきわめて高い毒性をもつことが明らかになっている。
【0004】
米国特許第6432452号明細書は、Euphorbia peplus、Euphorbia hirta及びEuphorbia drummondii種の植物に由来する活性成分の中に存在する、複数の異なる癌細胞系統に対する選択的細胞毒性を示す化合物について開示している。この化合物は、癌、特に悪性黒色腫及び扁平上皮細胞癌(SCC)の効果的治療において有用である。この化合物は、ジャトロファン類(jatrophanes)、ペプルアン類(pepluanes)、パラリアン類(paralianes)及びインゲナン類(ingenanes)から選択される。好ましい化合物は、Euphorbia peplusの樹液から得られるアンゲロイル置換型インジェナンである。
【0005】
マイクログラム量のインゲノールアンゲレートは、標準的に治療上有効である。しかしながらイソ型「b」からイソ型「a」へ、そしてその後イソ型「c」への転位を経る傾向は、製剤を特定のイソ型又はイソ型比のいずれかに制限することが所望の場合に製剤設計上の問題を提起する。このことは特に、異なるイソ型が異なる溶解度を有することから、I3Aについて問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その他の薬物が関与する全身的処置は、必然的に体の非標的部分における健康な感受性細胞を細胞毒性化学物質に曝露する結果となることから、効果的で局所的な皮膚癌処置に対する必要性がある。さらに、全身性抗癌処置は、経口的に投与されるか又は注射により投与されるかに関わらず、患者の受容度が比較的低い。
【0007】
好ましくは局所的投与向けの、安定したインゲノールアンゲレート製剤を提供する必要性がある。
【0008】
今般、意外なことに、受容可能な混和性酸性緩衝液の存在下で、受容可能な非プロトン性溶媒中に、実質的にイソ型間の転位無くインゲノールアンゲレートを可溶化させることができるということが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして、第1の態様においては、本発明は、治療中で使用するためのインゲノールアンゲレート製剤であって、インゲノールアンゲレートが薬学的に受容可能な非プロトン性溶媒中で溶解しており、前記製剤がさらに、溶媒と少なくとも部分的に相容性があり4.5以下の見かけのpHをもつ製剤を提供する薬学的に受容可能な酸性化剤を含む、インゲノールアンゲレート製剤を提供する。
【0010】
本発明は、インゲノールアンゲレートのいずれかのイソ型又はそれらの混合物の製剤を想定している。現在のところ好ましいイソ型は、本明細書でI3Aとも呼ばれているイソ型「b」である。「インゲノールアンゲレート」及び「I3A」に対する言及は、特に別段明らかでないかぎり、その他のイソ型及びそれらの混合物に対する言及も含まれることが理解されよう。
【0011】
インゲノールアンゲレートは、数多くの溶媒中で溶解可能であり、さまざまな溶媒が、添付の実施例1の中で例示されている。ただし、インゲノールアンゲレートは一般にプロトン性溶媒中で転位を受けやすく、植物由来の生成物については標準的に約1%を超える、ただしより好ましくは約0.5%を超える、任意の実質的な程度の転位が、薬学的製剤においては望ましくない。
【0012】
ポリエチレングリコールのような、一般に溶液にプロトンを供与しない溶媒である非プロトン性溶媒中では、溶解にはいくらか長い時間がかかる可能性があり、かつこのことは、所要の温度と併せて、受容可能なレベルを超える程度までの転位をも導き得る。
【0013】
アセトン及びアセトニトリルといったような物質は、I3Aを溶解させる能力をもつが一般に薬学的に受容可能でなく、長期貯蔵に適していない可能性がある。より受容可能であるものとしてメチルエチルケトン、酢酸エチル又はジエチルエーテルといったような物質があり得るが、一般にベンジルアルコールが最も好ましい。
【0014】
I3Aを溶解させるのに数多くの物質が適しているが、安定性は保証されず、一般に、12時間といった短時間から6カ月又は1年といった長期に至るまでの期間の後に、受容不可能な転位レベルが観察される可能性がある。
【0015】
水又はその他のプロトン性溶媒が無い状態では、測定可能なpHは無くなる。このような条件の下では、特に高温で、転位の確率は高い。従って、適切な酸の存在により転位を阻害することが一般に可能であることが明らかとなった。
【0016】
I3Aが約3というpHよりはるかに低いpHで分解し得、一方転位は約4.5というpHより高いpHで発生する確率が高いことから、適切な酸は、一般に有機酸である。1カ月以上といったような任意の長さの期間製剤を貯蔵することが意図されている場合には、酸が緩衝液の形をしていることが好ましい。適切な緩衝液には、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液そして、クエン酸−リン酸緩衝液が含まれるが、その他の緩衝液も当業者には明らかであるだろう。特に、緩衝液が4.5以下2.5以上の見かけのpHを製剤に提供することが好ましい。4未満の製剤pHがさらに好ましく、見かけの製剤pHが3.8以下、好ましくは約3.5又はそれ以下であることが特に好ましい。約3の見かけのpHが有用である。2.75というpHをもつ緩衝液が特に有利であり、添付の実施例の中で例示されているような量で使用された場合に最終製剤に約pH3.5という見かけのpHを付与することがわかっている。緩衝液の好ましいpH範囲は2.6〜2.85の間、好ましくはpH2.7〜pH2.8であり、好ましくはクエン酸緩衝液である。別段の指示がないかぎり、酸が一般に水溶液、好ましくは脱イオン水中の水溶液の形をとることが認識されるであろう。クエン酸緩衝液が好ましい。酢酸緩衝液が使用される場合、これは標準的に3.5〜5.5のpH範囲を有していてよく、一方クエン酸−リン酸緩衝液は2.75〜7.0のpH範囲を標準的に有し得る。
【0017】
pHはHイオンの測定値であることから溶媒が非プロトン性である溶液がpHをもち得ないことが理解されよう。ただし、かかる溶液が少なくとも部分的に酸又は酸性緩衝液と混和でき、かつそれが存在する場合には、pHを測定しようとする試みは一定の結果をもたらすことになる。本発明の好ましい製剤は、局所投与形態として構成されており、一般に大部分の緩衝液又はイオン溶液を含むことになるが、つねに非プロトン性溶媒を含み、かくして、測定されるpHはイオン構成要素のみに関係することから、絶対pHではなくむしろ見かけのpHのみが測定可能である。見かけのpHを測定するための適切な手段は、Jen way3320pH計を用いるものである。従って、特に酸又は緩衝液の量が少ない場合、結果は通常イオン溶液に帰属するような意味をもたない可能性があるが、何らかのイオン環境が存在するかぎりその環境は酸性であるという意義はある。酸の量が増大するにつれて、見かけのpHもpHとより等価のものとなる。理論により束縛されものではないが、インゲノールアンゲレートは、水溶解度が非常に低いことから、主として非プロトン性溶媒中に溶解する確率が高い。その後、酸性化されたイオン溶液に溶媒中のインゲノールアンゲレート溶液を添加することで、適切で、所望により水性の、インゲノールアンゲレートのイオン溶液を調製することが可能となり、かくして、プロトン性溶媒中へのインゲノールアンゲレートの直接的溶解(その際に最大量の転位が起こると思われる)が回避される。かくして、プロトン性溶媒との接触は直ちにその他のイソ型の形成をもたらす可能性があるが、これは、別段明らかでないかぎりここでは同義的に用いる用語である酸又は酸性緩衝液が少量添加された場合には、最小限におさえることができる。プロトン性溶媒中への溶解という行為でさえ、必要な長さの時間及び条件にすると、望ましくないほどに高いレベルのイソ型形成を導く可能性があり、かくして、インゲノールアンゲレートは転位を受けやすくなる。
【0018】
非プロトン性溶媒及び酸は、これら2つの安定した調製物を形成できるという点で、少なくとも部分的に相容性がある。酸及び溶媒は好ましくは混和性があり、好ましくは全ての比率で混和性がある。特に、見かけのpHを比較的低レベルに保つため、インゲノールアンゲレートの可溶化の間又はその直後に溶媒に対し少量の緩衝液を添加することが好ましい。その後、初期可溶化の間に使用された緩衝液の余剰分中で、可溶化インゲノールアンゲレートを構成することが望ましいことがあり得る。余剰の緩衝液で構成した安定調製物が、以下の実施例9に例示されている。
【0019】
非混和性又はより低い混和性の溶媒及び酸を、エマルジョン又はマイクロエマルジョンの形で調製することも可能であるものの、この酸及び溶媒は単相を形成できるよう充分な混和性を有することが好ましいということが認識されるであろう。かかるエマルジョンは安定したものであり得るが、単相としての溶媒及び酸の混合物の提供は一般に、アンゲレートの転位のあらゆる危険性をさらに最小限におさえる。
【0020】
本発明において特に有用な溶媒は、親水性及び新油性の両方の特長を示す溶媒であり、例えば、好ましくは同素環式(homocyclic)でであって、環構造から少なくとも1つの炭素原子によって分離されているヒドロキシ基がその上に置換している環系である。かかる溶媒の特に好ましい例は、ベンジルアルコールである。
【0021】
緩衝液ではなくむしろ酸を使用することも可能であるが、pHの変動を最小限におさえるために酸性緩衝液を使用することが一般に好ましい。従って、本明細書では「緩衝液」という用語が一般に用いられるものの、この用語は同様に、該当する場合に、酸及び酸調製物をも包含するということが認識されるであろう。特に好ましい緩衝液は、pH3以下、好ましくはpH2.75のクエン酸緩衝液である。ベンジルアルコール中で、2.5%w/wの量のpH2.5クエン酸緩衝液は一般に測定不可能な見かけのpHを生み出すことになるが、さらに多い量では約pH3のpHを生ずる。緩衝液のpHと見かけのpHの間の関係は、添付の実施例の中で詳しく試験されている。溶媒中でI3Aを溶解させる場合、少ない量の緩衝液においては、単に環境を酸性に保つことが好ましく、これらのレベルにおける好ましい緩衝液の性質は、使用のためその後製剤を希釈するときに好ましい緩衝液の性質に類似している。溶媒、好ましくはベンジルアルコールを、I3Aの添加に先立ち好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜5%の量の酸性緩衝液で酸性化することが一般に好ましい。
【0022】
使用のために製剤を希釈する必要はないが、一般にI3Aは強力な物質であり、溶媒、好ましくはベンジルアルコール中のI3Aの原液を、好ましくは少なくとも8℃以下で、貯蔵用に構成することができる。かかる原液は、任意の最終製剤又は調製物を作り上げる時点で、必要に応じて緩衝液で希釈することができる。
【0023】
インゲノールアンゲレートを可溶化する時点で用いられる緩衝液の量は、約0〜100%の間で変動可能である。この量が0である場合、何らかの転位が発生する確率を最小限におさえるため、溶媒にインゲノールアンゲレートを添加した直後に一定量の緩衝液を添加することが好ましい。一般的には、緩衝液中への直接的溶解は概して容易には達成不可能であることから、溶媒の重量の100%超の量の緩衝液を用いることは避けるのが好ましい。インゲノールアンゲレートの溶解中に何らかの実質的量のプロトン性溶媒を提供することなく溶媒の見かけのpHを低レベルに保つための手段として緩衝液を利用することが好ましい。インゲノールアンゲレートがひとたび実質的に溶解されたならば、所望の場合には例えば抗生物質といったようなその他の所望のプロトン性成分を含む、余剰の緩衝液で製剤を構成することが可能であり、さらには望ましいことであり得る。好ましい緩衝液レベルは、0.5%〜10%、好ましくは1%〜5%の間にあり、約2〜3%が溶解段階中で最も好ましい。溶解段階は、溶媒中にインゲノールアンゲレートの少なくとも大部分を、そして好ましくは溶媒中に少なくとも95%w/wのインゲノールアンゲレート、より好ましくは少なくとも99%w/wを溶解することを含む。
【0024】
本発明の製剤は直接使用可能であるか、又は将来の使用のために貯蔵可能である。さらに、本発明の製剤は、その後使用に先立ちさらに修正され得る基本製剤を提供し得る。例えば、上述の通り、この製剤は余剰の緩衝液中に構成するか又は例えばゲルの形に製剤化することができる。
【0025】
本発明の製剤が一般に、より低い温度でより安定していることも又見出された。ベンジルアルコール及びクエン酸緩衝液を含むものといったような本発明の特に好ましい製剤は、40℃といった高い温度で実質的な安定性を示し得るが、一般に、常温常圧(RTP)より低い温度で、漸増的安定性が観察され、最大の安定性は約8℃未満の温度で観察される。凍結が安定性を高めるとは思われず、かくして一般的には、単に約2℃〜8℃の間の温度の従来の冷蔵庫内に本発明の製剤を置くことによって最大の安定性が達成される。
【0026】
本発明はさらに、薬学的に受容可能な非プロトン性溶媒中にインゲノールアンゲレートを溶解させるステップを含むインゲノールアンゲレートの溶液を調製するための方法であって、前記製剤がさらに、溶媒と少なくとも部分的に相容性がありかつ4.5以下の見かけのpHをもつ製剤を提供する薬学的に受容可能な酸性化剤を含み、前記酸が、インゲノールアンゲレートと共に、その前に、又はその後で添加される、前記方法を提供する。
【0027】
一変形形態においては、本発明は、薬学的に受容可能な非プロトン性溶媒中にインゲノールアンゲレートを溶解させるステップを含むインゲノールアンゲレートの溶液を調製するための方法であって、前記方法は、溶媒と少なくとも部分的に相容性がありかつ4.5以下の見かけのpHをもつ製剤を提供する薬学的に受容可能な酸性化剤の添加を含み、前記酸性化剤が、インゲノールアンゲレートと共に、その前に、又はその後で添加される、前記方法を提供する。この酸性化剤は好ましくは緩衝液である。
【0028】
約1%以下そして好ましくは約0.5%以下の「b」イソ型のみが「a」イソ型に転化するようにするため、酸又は緩衝液をI3Aの添加後充分早い時期に添加することが好ましい。好ましくは、酸又は緩衝液はI3Aを添加する前に溶媒に添加されるが、3つの成分全てを同時に組合せることもできる。この後者が最も好ましくない選択肢である。
【0029】
この方法はまた、直接的可溶化が受容不可能なレベルの転位と関連づけされ得る場合に、ポリエチレングリコールといったようなその他の化合物及び溶媒を用いてインゲノールアンゲレート製剤を調製するためにも使用可能である。I3AはPEG中で溶解可能であるが、それには高温で約1時間を要し、これは一般に、受容不可能なレベルの「a」イソ型の生成を導く。I3Aをまず緩衝されたベンジルアルコール中に溶解させる場合、これを次に長時間熱に曝露することなく、PEG中に直接導入することができる。I3Aを可溶化させるのに充分なベンジルアルコールしか必要とされないことから、このとき、最終PEG製剤中のベンジルアルコールの合計量は、1%w/w以下の領域内にあるだけでよい。
【0030】
これらの製剤は、特に8℃以下の温度に保たれた場合、長期間保持することができる。好ましい組成物では、3カ月後、より好ましくは6カ月後に「b」イソ型から「a」イソ型への約1%以下、好ましくは約0.5%以下の転位しか見られない。
【0031】
さらに、皮膚癌の処置における本発明の製剤の使用も提供される。
【0032】
本発明はまた、皮膚癌の治療又は予防のための薬剤の製造におけるインゲノールアンゲレートの使用であって、インゲノールアンゲレートが薬学的に受容可能な非プロトン性溶媒中で溶解させられ、前記製剤がさらに、溶媒と少なくとも部分的に相容性があり4.5以下の見かけのpHをもつ製剤を提供する薬学的に受容可能な酸性化剤を含む、前記の使用をも提供する。
【0033】
本発明に従った処置に適した癌としては、扁平上皮癌又は基底細胞癌が含まれる。
【0034】
本明細書で使用される「処置」には、治療と予防の両方が含まれるということが認識されるであろう。
【0035】
本発明はまた、癌性条件の部域に本発明の組成物を治療上有効な量だけ局所施用することを含む、癌性皮膚条件を患う対象の処置方法をも提供する。
【0036】
処置に適した対象は、ヒト、霊長類、家畜動物(乳牛、馬、羊、豚及び山羊を含む)、コンパニオン動物(犬、猫、ウサギ、モルモットを含む)、捕獲された野生動物及び実験動物、例えばウサギ、マウス、ラット、モルモット及びハムスタを含めた哺乳動物である。本発明の組成物はヒトの皮膚癌の処置に特に適している。
【0037】
本発明の製剤を、任意の適切な癌予防又は処置において使用できるということが認識されるであろう。投与形態は適切な任意のものであり得、局所施用向けのクリーム、ゲル、軟こう、ローション、スプレー、ラッカー及び塗布剤、気道用の粉末、溶液及び懸濁液、注射用の溶液及びエマルジョン、経口投与向けのカプセル、シロップ及びエリキシル剤、及びペッサリ及び座薬を含むことができる。その他の適切な投与形態も当業者にとっては容易に明らかとなり得、例えば経皮貼布を含み得る。本発明の好ましい一実施形態においては、インゲノールアンゲレート製剤は、局所的投与向けに製剤化される。
【0038】
あらゆる場合において、初期製剤は、本発明の製剤である。この製剤を、製剤の調製後、使用の直前又は望まれるだけ早く、最終形態にすることができるが、通常これはどの時点でも本発明の製剤であり続ける。
【0039】
製剤は以下に記載する通り、付加的な成分を含んでいてよい。製剤に高い安定性を提供すると思われることから、酸化防止剤を用いることが特に好ましい。適切な酸化防止剤の例としてはレチノール、アスコルビン酸、リコピン、ブチル化ヒドロキシトルエン及びトコフェロールが含まれる。
【0040】
薬学的有効性のために必要とされるインゲノールアンゲレートの量は当業者には明らかであり、患者の年令、体重及び性別といったような生理学的パラメータならびに病巣のサイズに従って適用され得る。一般に約0.01μg・cm−2〜約1mgcm−2を提供するのに適した量のインゲノールアンゲレートを利用することができ、0.1mgcm−2〜約100μgcm−2の範囲がより好ましい。添付の実施例においては、15μgcm−2を提供する製剤が使用されたが、1μg・cm−2以下の製剤が有効であることが明らかになった。あるいは、本発明の製剤は、0.001%(w/w)〜0.15%(w/w)、より好ましくは最高約0.1〜0.12%(w/w)の量でI3Aを含有していてよい。
【0041】
局所製剤は、本発明の好ましい一実施形態である。この点において、インゲノールアンゲレートのこれまで認識されていない特性が特に有用であり、これらは血管収縮特性を有することが発見された。従って、処置付近での血流の減少のため、活性成分の全身的分配は最小限におさえられる。
【0042】
製剤の性質が皮膚を横断しての透過速度を決定することになる。従って、少なくとも約11ngcm−2−1の透過速度が達成されるような形で製剤を調製することが一般に好ましい。特別な上限は存在しないものの、これが約1μgcm−2−1を上回らないことが一般に好ましい。
【0043】
局所製剤は適切なあらゆる形態をとることができる。一般に、流出無く所望の部域に対してそれらを向けるようにするため、この製剤は一定レベルの粘度を示していることが好ましい。従って、クリーム、ゲル、軟こう及び塗布剤としてインゲノールアンゲレートを製剤化することが一般に好ましい。インゲノールアンゲレートの効力を考えると、塗布剤は活性成分レベルに応じて控えめに塗布できることから、これを利用することができる。
【0044】
本発明の好ましい製剤の中で、ポロキサマーを使用することができる。ポロキサマーはポロキシエチレン(POE)の2つの親水性分子の間にはさまれた疎水性ポロキシプロピレン(POP)分子からなる共重合体である。かくして、ポロキサマーは、疎水性コア内で新油性薬物を可溶化する能力を有する。その上、ポロキサマーベースの水性ゲル製剤は、薬物の局在化された持続的送達のために有利であり得る熱−レオロジー特性を示す。臨界ミセル温度(cmt)として知られている一定温度より高い温度で、ポロキサマーゲルの粘度は劇的に増大する。粘度の増大は、ゲル内に溶解したあらゆる薬物の拡散を減少させ、かくしてゲルからの薬物の放出が減速し、持続的送達が導かれる。粘度の増大はまた、作用部位において長時間の局在化された「デポー(depot)」をも提供し得る。
【0045】
cmtは、ポロキサマー及びその他の添加剤(例えばプロピレングリコール)の濃度といったような多くの変数により左右される。理想的には、cmtは、製剤が液体として病巣内に注入され得(投与の容易さ)、体温と接触した時点で、薬物の局在化された持続的送達を達成する目的でゲルが形成されるような温度にあるべきである。USPには5つのポロキサマーが列挙されており、ポロキサマー188及びポロキサマー407を含む。ポロキサマー188は、IV製剤のための賦形剤として承認されている( http://www.accessdata.fda.gov)。
【0046】
ポロキサマーゲルは、インシュリンの皮下送達(Barichello et al., 1999年)及びその他の経皮的使用のための薬物送達系(Tobiyama et al., 1994年)のために使用されてきた。1つの特別な共重合体であるポロキサマー407は、インタロイキン−2及びヒト成長ホルモンを含むペプチド及び治療用タンパク質の徐放のために皮下投与されてきた(Morikawa et al., 1987年;Katakama et al., 1997年)。投与の後、ゲルは1〜2日間にわたって、捕獲されたタンパク質分子を徐放した。さらに、このポロキサマーの実質的部分は、場合によって腎排せつされた。
【0047】
ポロキサマーは一般に、非毒性かつ非刺激性の材料とみなされる。イヌ及びウサギでの動物毒性試験は、ポロキサマーが、眼、歯肉及び皮膚に5%w/v及び10%w/vの濃度で塗布された場合に非刺激性かつ非感作性であることを示した。最高0.5g/kg/日の濃度でのウサギに対する静脈内投与の14日間試験においては、いかなる顕在的な不利な効果も指摘されなかった。イヌでの類似の試験も同じく最高0.5g/kg/日の用量レベルでいかなる不利な効果も示さなかった。その上、0.001〜10%w/vのポロキサマー溶液で、25℃で18時間にわたり、ヒト血球のいかなる溶血反応も観察されなかった(Wade and Weller, 1994年)。しかしながら、ポロキサマー407の腹腔内(IP)注射(1.0g/kg)が導入された時に、ラット体内の脂質異常症が報告された(Wasan et al., 2003年)。
【0048】
本発明では、油もまた使用可能である。乾癬治療のためのエマルジョンベースの病巣内製剤の使用は、すでに報告されている(Ho et al., 1990年)。投与に先立ち、エマルジョンを形成させるためにポリオキシエチル化されたヒマシ油といったようなビヒクルが、通常、生理食塩水で希釈される。しかしながら我々の試験では、生理食塩水でのI3Aの希釈が、イソ型「b」から「a」への変換を増大させるということが示された。この変換は、製剤の投与時間が短い場合には最小限におさえることができる。
【0049】
例えばエナント酸プロリキシン(Bristol Myers Squibb)といったように、筋肉投与(IM)のための油性溶液として製剤化される数多くの親油性生成物が存在する。使用されるビヒクル(油)は、ラッカセイ油(ジメルカプロール注射B.P.において安息香酸ベンジルと共に使用される)及びゴマ油(エナント酸フルフェナジン注射B.P.のデポー注射において使用される)といったように植物油から大きく変動する。油質ビヒクルを使用すると、油から水性体液への薬物の遅延分割に起因して吸収が減速する可能性がある(Ford, 1987年)。(筋肉組織といったような)水性環境内に注入された場合、油相内に溶解したI3Aといったような比較的親油性の薬物は、油を残さず「瞬間的に」水相中に分配する傾向を有する。このようにして、持続放出効果を達成することができる。
【0050】
口腔製剤を利用することもできる。治療薬の経粘膜送達は、粘膜が比較的透過性を有し、全身性循環内への薬物の急速な摂取を可能にし初回通過代謝を回避することから、好評な投与形態である。経粘膜製品は、粘膜接着剤を用いて鼻腔経路及び経口/口腔経路を介して投与されるように設計することができる。これらの薬物送達系の開発においては、デバイス/製剤の粘膜接着が重要な要素である。「粘膜接着性(剤)」という用語は、生体膜のムチン層に接着する材料について一般に使用される。粘膜接着性重合体は、異なる粘膜を通した薬物の全身的及び局所的送達の達成のために、数多くの異なる剤形で利用されてきた。これらの剤形には、錠剤、パッチ、テープ、フイルム、半固体及び粉末が含まれる。
【0051】
粘膜接着性重合体として役立つためには、重合体は、数多くの水素結合形成基を有し、主としてアニオン性であること、粘液/粘膜組織表面を湿潤化させるための適切な表面特性及び粘液網又は組織のすきまに侵入するのに充分な柔軟性及び長さ(分子量)といったような物理化学的特長を有しているべきである。カルボマー(ポリアクリル酸)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ならびに天然に発生する重合体、例えばヒアルロン酸及びキトサンといったようなさまざまな種類の重合体が、潜在的粘膜接着剤として報告されている。
【0052】
適切な製剤の調製は、当業者の技能範囲内に入り、任意のこのような製剤内に内含するための適切な賦形剤としては例えば、ゲル化剤、増粘剤、浸透促進剤、防腐剤、例えば抗生物質及び抗真菌剤、及び化粧品成分例えば香料及び着色剤が含まれる。
【0053】
適切なゲル化剤としては、水溶性セルロース由来の重合体例えばヒドロキシアルキルセルロース重合体(例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロース、カルボマー(例えばカルボポール);及びカラギナンが含まれる。ゲル化剤は、1〜5%(w/w)といったような任意の適切な量で添加され得る。好ましいゲル化剤は、セルロース由来のものであり、最も好ましくはヒドロキシアルキルセルロース、特にヒドロキシエチルセルロースである。
【0054】
適切な防腐剤は、当業者に明らかであり、パラベン(メチル、エチル、プロピル及びブチル)、安息香酸及びベンジルアルコールが含まれる。防腐剤目的だけに用いられる場合、一般に最終的局所製剤の1%(w/w)以下を形成することになる。
【0055】
適切な浸透促進剤にはイソプロピルアルコール、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド、DMSO)、アゾン(例えばラウロカプラム)、ピロリドン(例えば2−ピロリドン)、アルカノール(例えばデカノール)、及びグリコール(例えばプロピレングリコール)が含まれる。
【0056】
本発明の好ましい組成物には、以下のものが含まれる:
a) I3A;
b) 浸透促進剤
c) 防腐剤
d) ゲル化剤;及び
e) 緩衝液
なおここで、組成物は3以上4以下の見かけのpHを有する。
【0057】
特に好ましい組成物は、以下のものを含む:
a) 0.1%(w/w)のI3A;
b) 30%(w/w)のイソプロピルアルコール;
c) 0.9%(w/w)のベンジルアルコール;
d) 1.5%(w/w)のヒドロキシエチルセルロース;及び
e) pH3、好ましくはpH2.75の67.5%(w/w)のクエン酸緩衝液。
【0058】
本発明は添付の図面を参照しながらも説明される。
【0059】
本発明について、以下の限定的意味のない例に関してさらに例示する。
【実施例】
【0060】
実施例1
I3Aの安定性を、アセトン、アセトニトリル、メタノール/水、水、DMSO、リン酸緩衝液(pH範囲4.5〜7)及びアンモニウム緩衝液(pH4.5)を含めたさまざまな溶媒系の中で調査し、アセトン、アセトニトリル、DMSO、pH4.5リン酸緩衝液、及びアンモニウム緩衝液(pH4.5)中で安定していることが示された。インゲノールアンゲレートの転位は、異性体「b」が異性体「a」に、そして次に異性体「c」にという順序で発生するように思われた。使用される活性物質の数量が少ないことから、化合物の安定性の尺度を、ピーク「b」の面積対ピーク「a」の面積の比として計算した。
【0061】
材料
【0062】
【表1】

【0063】
I3Aの最終製剤中で使用された全ての賦形剤は公定書グレードである。
【0064】
方法
溶媒/賦形剤中のI3Aの安定性試験
以下の溶媒/賦形剤/賦形剤組合せ中のI3Aの安定性試験は、14日間(別段の記載のある場合を除く)にわたり室温で実施された:
アセトン
アセトニトリル
メタノール
メタノール/水(70/30)

リン酸緩衝液pH4.5、pH5.5、pH6.5、pH7.0
DMSO
鉱油
ミグリオール810
ポリエチレングリコール300
プロピレングリコール
オレイン酸
2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(Cavasol(登録商標)/HO)
2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(Cavasol(登録商標)/POpH4.5)
トゥイーン80/スパン80/H
トゥイーン80/スパン80/POpH4.5
β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(Captisol(登録商標))H**
β−シクロデキストリンスルホブチルエーテル(Captisol(登録商標))POpH4.5**
ヒアルロン酸ナトリウム(HA)POpH4.5***
ヒアルロン酸ナトリウム(HA)HOpH4.5***
10日試験 ** 7日試験 *** 2日試験
【0065】
アセトニトリル中のI3Aの0.5mg/mlの原液を調製した。ビュレットにより個別のガラス試料バイアルに1.0mlのアリコートを移し、空気ジェットで溶液を乾燥させ、次にバイアルに対しそれぞれの溶媒/賦形剤/賦形剤組合せ1.0gを添加した。0日目、5日目及び14日目に、安定性試料のアリコートを、以下の「DMSO中の安定性」の項で記述するクロマトグラフィ条件を用いたHPLC分析のために取出した。安定性は、ピーク「b」対ピーク「a」(そして存在する場合にはピーク「c」)の比として表現されており、高い比率は特定の賦形剤中の安定性を標示している。
【0066】
賦形剤試験におけるI3Aの安定性についてのHPLC分析
I3Aの一部の調製物について見られたピーク「b」上に現われる「肩部」を分離するために、代替的HPLC方法が開発された。
【0067】
賦形剤安定性試験に用いたクロマトグラフィ条件は以下の通りであった:
カラム:Hypercarb (ThermoQuest, Phenomenex) (S/no.3-34070)
カラム長:100×4.60mm
カラム温度:25℃
ガードカラム:C18Columbus(Phenomenex) (S/no.202678)
ガードカラム長:50×4.60mm
移動相:50%v/vリン酸緩衝液pH4.5/50%v/vアセトニトリル
流速:1.0ml/分
UV波長:230nm
注入量:10μl
実行時間:35分
【0068】
予備インビトロ拡散試験
賦形剤及び浸透促進剤中のI3Aの安定性がひとたび確立された時点で、一部の単純な製剤由来のI3Aによる角質層の透過を判定するために予備インビトロ拡散実験を実施することができると思われる。フランツ拡散セルは、インサイチュで皮膚の生理学及び解剖学的条件を模倣するように設計されている。これは、ドナー区画、レセプタ区画及びサイドアーム試料採取ポートを含む空気/流体相静置型セルである(図1参照)。外科的に切除された皮膚を、薬物塗布を可能にするべく角質層をドナー区画に対面させた状態で2つの半分の間に位置づけする。
【0069】
ミグリオール(myglyol)中のI3Aの単純な製剤を用いた初期インビトロ拡散実験を実施した。角質層を横断した薬物の流束は全く存在せず、このことは、I3Aがミグリオール中でその最大熱力学活性で製剤化されなかったということを示唆している。この製剤は、その後の拡散セル実験において負の対照として用いられ、この製剤からの薬物の拡散が全く存在しない場合角質層は無傷状態にとどまっていると仮定できることから、角質層の無欠性を確認するためにも供与された。
【0070】
製剤の製造
I3Aの溶解度及び安定性及び薬物の流束を増大させる目的でβ−シクロデキストリン(Captisol(登録商標))を添加した状態で、リン酸緩衝液(pH4.5)中でI3A製剤を調製した。既知の浸透促進剤であるDMSO中の第2の製剤も比較目的で、負の対照として役立ったミグリオール中の製剤と同様に調製した。これらの製剤からの角質層を横断するI3Aの拡散を調査した。
【0071】
以下の製剤を調製した:
【0072】
【表2】

【0073】
表2は、製剤中に存在する各成分の%w/wを示す。成分を、密封可能なガラスバイアル内に正確に検量し、室温で数時間磁気撹拌棒を用いて激しく撹拌した。
【0074】
【表3】

【0075】
レシーバ流体の選択
PO緩衝液(pH4.5)中の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(Cavasol(登録商標)、1.38mM)が、シンク条件の維持を試みるために本試験において使用されたレシーバ流体であった。角質層を通したエタノールの「逆拡散」が製剤中に存在するI3Aを分解した可能性があったことから、エタノール/水系といったようなその他のタンク流体についての制約が課された。
【0076】
皮膚の調製
腹部形成術の直後に、外科的に切除したヒトの皮膚の新鮮な試料を得た。ドナーは、56才の喫煙しないWhite Europidの女性であった。鉗子及び外科用メスを用いて皮膚試料から皮下脂肪を入念に除去した、次に皮膚の一部分を45秒間60℃で水中に浸漬した。その後皮膚を、真皮側を下にしてコルク板上にピンで留め、(角質層及び生存能力ある表皮を含む)表皮を下にある真皮から穏やかに除去した。真皮を廃棄し、表皮膜を水面上に浮かせ、Whatman第1号ろ紙上に取り上げた。結果としての表皮シートを撤底的に乾燥させ、使用するまで−20℃でアルミホイル中に平らに保管した。
【0077】
表皮シートの切片を(ろ紙側を上にして)狭持し、0.1%w/vのトリプシン溶液中に浸漬させた状態で4℃で4時間インキュベートした。その後、37℃で1時間皮膚をさらにインキュベートした。挟持具を側方の運動と共に穏やかに振とうさせることにより物理的に角質層を除去した。結果として得た角質層を、まずは脱イオン水で、次に0.1%w/vの抗トリプシン溶液で2回洗浄して、酵素活性を遮断し、さらに脱イオン水で2回洗浄した。角質層を乾燥させ、使用するまで−20℃でアルミホイル内に平らに保管した。
【0078】
フランツセル拡散試験
拡散実験を行なうためには、0.56±0.05cmの平均拡散表面積及び1.79±0.06mlの平均レシーバ体積をもつ個別に較正したフランツ拡散セルを使用した。(上述の通りに調製した)角質層をリン酸緩衝液(pH4.5)で洗浄し、10インチの穿孔器で切断し、フランツセル上に取付けた(図1に例示)。利用されたレシーバ流体は、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(Cavasol(登録商標))/リン酸緩衝液(pH4.5)であり、これをフランツセル内に取込み、磁気攪拌器で絶えず撹拌し、37℃に維持した。膜を30分間レシーバ相で平衡化させてから、製剤を塗布した。容積式Finpipette(登録商標)を用いて膜表面上に各々の製剤を無限投与で塗布し、ドナーチャンバをParafilm(登録商標)で保護した。5つの試料採取時間(1、2、4、6及び24時間)を調査し、これにより、200μlのレシーバ流体をフランツセルのアームから入念にひき抜いた。取出した各試料を、等体積の新鮮な(37℃)レシーバ流体で交換した。実験を通して、フランツセルからの蒸発に起因するレシーバ流体内のあらゆる損失を補充して、一定の体積を維持した。試料を、HPLC(上記参照)を介して分析した。
【0079】
インビトロ拡散調査のためのHPLC分析
使用したクロマトグラフィ条件は以下の通りであった:
カラム:Hypercarb (ThermoQuest, Phenomenex) (S/no.3-34070)
カラム長:100×4.60mm
カラム温度:25℃
ガードカラム:C18Columbus(Phenomenex) (S/no.202678)
ガードカラム長:50×4.60mm
移動相:50%v/vアンモニウム緩衝液pH4.5/50%v/vアセトニトリル
流速:1.0ml/分
UV波長:230nm
注入量:10μl
実行時間:35分
【0080】
結果
溶媒及び賦形剤中のI3Aの安定性
下表3は、さまざまな溶媒系内のI3Aの安定性の表示を提示する。室温で14日後(別段の記述の無いかぎり)の溶媒及び賦形剤中のI3Aの安定性は、イソ型「b」対イソ型「a」及び「c」の比の形で定量化され、「b」が優勢であることが安定性に等しい。結果は表3に要約されている。I3Aが安定でない賦形剤については、その他の同じような賦形剤も適さないはずであるものと想定される。
【0081】
【表4】

【0082】
予備インビトロ拡散試験
表4は、単位面積あたりの透過したI3Aの累積量から決定される通りのI3Aの製剤間の流束の比較を提供している。DMSOは、最も早くから最も広く調査された浸透促進剤の1つであり、数多くの薬物のインビトロ及びインビボ実験の経皮浸透を増強することが示されてきた。かくして、DMSOは、I3Aによる角質層の浸透を確認するための有用な比較賦形剤であった。しかしながら、この溶媒の毒性が極めて高いことそしてそれが不可逆的な皮膚損傷を生成するという事実を考えると、DMSOは最終的製剤中では使用されないものと思われる。ミグリオール製剤ではI3Aの透過は全く見られなかった。角質層を横断してのミグリオールからのI3Aの拡散がこのように欠如していることは、この賦形剤中でI3Aが高い溶解度を示すということによって説明がつく。
【0083】
【表5】

【0084】
この結果は、I3Aが検出可能なレベルで(大部分の薬物の拡散のための主要な障壁を形成する)角質層を横断して拡散するということを示している。
【0085】
4〜8℃での安定性試験
4〜8℃でのさまざまな溶媒中におけるI3Aの安定性を調査した。I3Aの1.26mgの原液を検量し、2mlのアセトン中で溶解させた。この原液を、以下の通りに安定性試料を調製する目的で使用した。
【0086】
各試料間で注射器を入念に洗い流し乾燥させながら、ハミルトン注射器を介して個々のガラスHPLCバイアルに、100μlの原液のアリコートを移した。試料を空気ジェットによって乾かし、次に0.5mlの適切なテスト溶媒系を添加した。溶媒系を以下に列挙され、3回テストした:
1. 100%v/vのアセトン、
2. 100%v/vのアセトニトリル、
3. 100%v/vのメタノール
4. 70%v/vのメタノール;30%w/wの水
5. 100%w/wの水
【0087】
原液の代りに100μlのアセトンを用いてブランク試料も3回調製した。このブランク試料を次に乾燥させ、各バイアルに対し0.5mlのアセトンを添加した。バイアルを全てクリンプし、parafilm(登録商標)で密封し、安定性試験の持続時間中4〜8℃に置いた。HPLC分析を、安定性試験の0日目、1日目、5日目及び14日目に試料に対し実施した。以下で記述する通りに、HPLC検定のために試料を調製した。
【0088】
安定性試料を4〜8℃から取出し、30分間周囲温度に放置した。ハミルトン注射器を用い、各試料間で注射器を入念に洗い流し乾燥させながら、100μlのアリコートを新鮮なガラス製HPLCバイアルに移した。試料の乾燥を容易にするため、各バイアルに対して0.5mlのアセトンを添加し、その後試料を空気ジェットにより乾燥させた。試料を1mlのアセトニトリルでもどし、以上で規定したクロマトグラフィ条件を用いてHPLCにより分析した。
【0089】
かくして、I3Aは、14日間にわたり両方の溶媒についてピーク「b」の優位性において反映されている通り、4〜8℃でアセトン及びアセトニトリル中で安定している。プロトン性溶媒においては、異性体「a」そして次に異性体「c」の形成は急速に増大する。
【0090】
さまざまなpHにおける安定性
I3Aの安定性を2つの緩衝液すなわちリン酸一カリウム/リン酸二ナトリウム及び酢酸/酢酸アンモニウム中で、24時間、室温でpH4.5で調査した。HPLC分析は、I3AがpH4.5で両方の緩衝液中で安定していること、すなわち、24時間後になお異性体「b」の優位性が存在することを示していた(図1)。
【0091】
I3Aの安定性を、室温で14日間、pH5.5、6.5及び7.0で調査し、これがpHの増大と共に減少することがわかった。すなわちイソ型「a」そしてその後にイソ型「c」の形成が、14日目までに発生する。
【0092】
DMSO中の安定性
I3Aを、10日間にわたり室温及び37℃でDMSO中での安定性について調査した。アセトニトリル中のI3Aの対照試料をテスト試料と同じ条件下に保った。実験開始時点(0日目)、48時間後(2日目)そして再び10日後にHPLCにより試料を分析した。
【0093】
利用したクロマトグラフィ条件は以下の通りであった:
カラム:Hypercarb (ThermoQuest, Phenomenex) (S/no.3-34070)
カラム長:100×4.60mm
カラム温度:25℃
ガードカラム:C18Columbus(Phenomenex) (S/no.202678)
ガードカラム長:50×4.60mm
移動相:50%v/vリン酸緩衝液pH4.5/50%v/vアセトニトリル
流速:1.0ml/分
UV波長:230nm
注入量:10μl
実行時間:35分
保持時間:15分、24分
【0094】
I3Aは、室温及び37℃で10日間DMSO中で安定しているように思われる。
【0095】
実施例2
イソプロパノールゲルpH6.5
イソプロパノールゲル調製物(pH6.5)中でのI3「b」の安定性を調査した。プロトコルは以下の通りであった:
【0096】
【表6】

【0097】
carbopol(登録商標)を水及びグリセリン中に分散させ、水浴中で40℃まで加熱することにより溶解させた。その後プロピルアルコールをこの溶液に添加した。イソプロピルアルコール中にシクロメチコンを溶解させ、この第2の溶液をcarbopol(登録商標)溶液と充分に混合して、次に撹拌しながら水を100%になるまで添加した。ゲルのpHを、エタノールアミンの滴下による添加によってpH6.5にした。使用するまでイソプロパノールゲルを2〜8℃で保管した。
【0098】
イソプロパノールゲル(pH6.5)中でのI3A「b」の安定性を調査するため、0.02%(w/w)のI3A「b」/イソプロパノールゲル製剤を調製し、2〜8℃、RTP及び40℃での保管のため3つの試料に分割した。定期的に試料を、イソ型「a」の形成という観点でのI3A「b」の安定性について2回分析し、その結果を図2に記した。I3A「b」は、まずイソ型「a」に転位し、その後イソ型「c」に転位する。これは、I3A「b」からイソ型「a」及び「c」へのこの変換を促進するイソプロパノールゲル中の水の存在及びより高いpHに起因すると考えられる。
【0099】
30%w/wのイソプロピルアルコール/クエン酸緩衝液pH3.0中のI3A「b」
2〜8℃及び40℃で保管した場合の30%w/wのIPA/クエン酸緩衝液(pH3)中のI3A「b」(バッチ番号240902)の安定性を2回調査し、その結果を図3に記した。
【0100】
防腐剤
防腐剤有効性試験に合格する確率の高い濃度で、I3A「b」の製剤中での使用に対するその適合性に関して、さまざまな防腐剤を調査した。最初に、クエン酸緩衝液(pH3)中で防腐剤を調製し、HPLCにより分析してI3Aイソ型についての検定と干渉しうるクロマトグラム内のピークについてチェックした。結果は表5に要約されている。
【0101】
【表7】

【0102】
防腐剤からのクロマトグラム内に数多くの干渉ピークがあると、製剤中の薬物の分析が困難となり防腐剤について別途検定を導入する必要がでてくる可能性があるため、望ましくない。
【0103】
I3A「b」(0.05%w/w)を、選択された防腐剤(ベンジルアルコール及びフェノキシエタノール)の中で別々に溶解させ、2〜8℃、RTP及び40℃で保管し、一定の間隔でイソ型「a」の形成という観点で2回安定性についてチェックした。この安定性試験の結果は表4及び5に記されている。
【0104】
これらの結果は、ベンジルアルコールがテストされたもののうち最も適した防腐剤であることを示している。
【0105】
I3A「b」製剤の調製
以下の3つの製剤及びそのそれぞれのプラシーボを調製した:
A. 0.1%(w/w)のI3A「b」/防腐剤として1.0%(w/w)のベンジルアルコールを伴うマクロセチルエーテルクリーム
B. 0.1%(w/w)のI3A「b」/30%(w/w)のIPA/1.5%(w/w)のHEC/1.0%(w/w)のベンジルアルコール/クエン酸pH3
C. 0.1%(w/w)のI3A「b」/9.5%(w/w)のシクロメチコン/9.5%(w/w)IPM/1.0%(w/w)のベンジルアルコール/エラストマ10
【0106】
ベンジルアルコール中でI3A「b」の原液を調製し(表6)、この原液を用いて製剤を調製した。プラシーボについては、I3A「b」/ベンジルアルコール原液の代りにベンジルアルコールを単独で使用した。I3A「b」製剤の構成要素の正確な質量については、表7〜9の中で詳細に記されている。製剤及びそのそれぞれのプラシーボを次のように調製した。
【0107】
製剤A:I3A「b」/マクロセチルエーテルクリーム
マクロセチルエーテル乳化性軟こうをガラス製バイアル内に正確に検量し、その後60℃の水浴中で融解させた。調製したばかりのクエン酸緩衝液(pH3)を、別のガラス製バイアル内に正確に検量し、水浴中で温め、次に冷却するまでつねに撹拌しながら融解した乳化性軟こう内に漸進的に取込んだ。この方法によりマクロセチルエーテルクリームが生成された。製剤を調製するためには、ベンジルアルコール中のI3A「b」をガラス製バイアル内に正確に検量し、この上にマクロセチルエーテルクリームを絶えず撹拌しながら漸進的にかつ正確に検量した。
【0108】
製剤B:I3A「b」/30%のIPAゲル
ガラス製バイアル内にI3A「b」/ベンジルアルコールを正確に検量した。残りの構成要素を、まずはIPA、次にクエン酸緩衝液そして次にHECという順序で、各添加間で勢い良く混合しながらこの溶液上に正確に検量した。
【0109】
製剤C:I3A「b」/シリコーン
I3A「b」/ベンジルアルコールをガラス製バイアル内に正確に検量した。残りの構成要素を、まずはElastomer 10、次にシクロメチコンそして次にIPMという順序で、各添加間で激しく混合しながらこの溶液上に正確に検量した。
【0110】
製剤分析
製剤を試験の始めに分析してその中のI3A「b」(w/w)の濃度を確認し、約0.1%(w/w)のI3A「b」であることがわかった。この総I3A「b」含有量のうち、製剤中には0.7%未満のイソ型「a」が存在し、イソ型「c」は全く存在しなかった。試験の結論づけの時点までにイソ型「a」の出現について製剤をチェックし、2〜8℃で保管した場合、0.3%未満のイソ型「a」を有することがわかった。いずれの製剤の中にもイソ型「c」は検出されなかった。
【0111】
【表8】

【0112】
【表9】

【0113】
【表10】

【0114】
【表11】

【0115】
72時間にわたる検定溶媒系中のI3Aイソ型の安定性
72時間(長いHPLC分析ランの間オートサンプラー内に試料が保持され得ると考えられる最大限の時間的長さに等しい)にわたる3つの試料系内でのI3Aイソ型「a」、「b」及び「c」の安定性を、以下のように確認することができた。I3Aの3つのイソ型(約100μg/ml)の標準をアセトニトリル、アセトニトリル/クエン酸緩衝液(pH3)及びアセトニトリル/酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.5)内で新しく調製し、直ちにHPLCにより分析した。その後標準を各々3つの等体積に分割し、72時間2〜8℃、室温及び40℃に置き、次に再びHPLCにより分析した。この試験の結果は表10に提示されている。室温でのI3A「b」からイソ型「a」への最大の変換は、100%v/vのアセトニトリル内で調製された試料で発生し、一方アセトニトリル/クエン酸塩(pH3)でのI3A「b」標準は、40℃でさえイソ型「a」への変換をきわめてわずかしか示さず、このことは、この溶媒系が、試料採取時間全体にわたり試料が確実に安定状態にとどまるようにするために最も適したものであり得るということを示唆している。
【0116】
【表12】

【0117】
実施例3
pH範囲2.5〜4.0内のクエン酸緩衝液を用いて調製されたIPAゲル中のI3A「b」のpH安定性試験を2〜8℃及び40℃(加速された安定性)で実施した。
【0118】
材料
【0119】
【表13】

【0120】
方法
pH範囲2.5〜4.0内のクエン酸緩衝液を用いたI3A「b」ゲル及びプラシーボの調製
pH範囲安定性試験のために調製された活性及びプラシーボIPAゲルの組成はそれぞれ表11及び12の中に記されている。時間0でのプラシーボゲルのpHの測定を容易にするため、大量のプラシーボを調製した。試験のために利用可能な薬物の量が制限されていたことから、より少ない量の活性ゲルすなわち各々30gを調製した(プラシーボ及び活性ゲルの見かけのpHを12カ月にわたって監視した)I3AIPAゲルについて以前に行なわれた安定性試験は、これら2つの間に顕著な差異が全く存在しないということを示していた。さらに活性及びプラシーボゲルの両方について、同じ見かけのpHを測定した。かくして、安定性試験の開始時点ではゲルの見かけのpHを判定するために、プラシーボゲルのpHのみを測定した。一晩水和させた後、T=0の時点についてゲルを分析し、プラシーボの見かけのpH値を測定した。異なる時点で試料採取する場合に材料の温度サイクルを回避するために、試料を7ml入りソーダガラスバイアルに分割し、バイアルをそれぞれ2〜8℃及び40℃(加速された安定性)で保管した。
【0121】
【表14】

【0122】
【表15】

【0123】
pH範囲2.5〜4.0内のクエン酸緩衝液を用いて調製されたIPAプラシーボゲルの見かけのpHの測定。
【0124】
pH範囲2.5〜4.0内のクエン酸緩衝液を用いて調製されたIPAプラシーボゲルの見かけのpHを、Jenway 3320 pH計を用いて測定した。
【0125】
IPAゲルからのI3Aの抽出
以下の通りにIPAゲルから薬物を抽出した。ゲル又はそのそれぞれのプラシーボの各々1グラムを、2回又は3回で10ml入りの容量フラスコ中に正確に検量した。試料をまず、最高速度に設定されたボルテックスミキサー上で激しくくり返し混合することにより1mlのクエン酸緩衝液(pH3)と混合し、次に400rpmで30分間オービタルシェーカー上で振とう状態で放置した。その後容積フラスコをHPLCグレードのアセトニトリルで容量マークまで補い、その後試料を最高速度に設定したボルテックスミキサー上での反復的混合により再び激しく混合し、その後400rpmで60分間オービタルシェーカー上での振とう状態に放置した。分析のためHPLCバイアルにアリコートを移した。
【0126】
ゲルからのI3Aの抽出を、3回で、すなわち3回の別々の検量と時間0及び時間=3カ月(2〜8℃の試料)の時点の2回の注入で、及び2回で、すなわち2回の別々の検量と時間=1週及び4週(40℃の試料)の2回の注入で、実施した。
【0127】
HPLC分析
以下のシステム及び条件を用いて分析を行なった:
【0128】
機器
Waters Alliance 2695分離モジュール(S/no.B98SM4209M)
Waters 2487二重λ吸光度検出器(S/no.M97487050N)
Waters Alliance 2695 D分離モジュール(S/no.G98SM8039N)
Waters 2487二重λ吸光度検出器(S/no.L02487106M)
【0129】
Empower Pro Empower TMソフトウェア
利用したクロマトグラフィ条件は以下の通りであった:
カラム:Hypercarb (Thermo Quest, Phenomenex) S/no.3-34070及びS/no.1034024A
カラム長:100×4.60mm
カラム温度:周囲温度
ガードカラム:C18Columbus(Phenomenex) S/no.202678及びS/no.74554-7
ガードカラム長:50×4.60mm
移動相:50%v/v酢酸ナトリウム緩衝液pH4.5/50%アセトニトリル(v/v)
流速:1.0ml/分
UV波長:230nm
注入量:30μl
実行時間:35分
オートサンプラー温度:8℃±12℃
保持時間:13分±2分イソ型「a」;22分±2分イソ型「b」;23分±2分イソ型「c」;0.93±0.02のイソ型「b」に対する相対的保持時間を伴う未帰属ピーク。
【0130】
結果
時間0におけるプラシーボゲルの見かけのpHの測定
プラシーボゲルの見かけのpHの測定の結果は、表13に示されている。安定性時点のいずれにおいても、pH測定は行なわれなかった。
【0131】
【表16】

【0132】
活性ゲル内のI3Aイソ型のピーク純度の決定
安定性試験の開始時(T=0)、及び40℃での1週間の保管後、40℃での4週間の保管後及び2〜8℃で3週間の保管後の活性ゲル中のI3A「b」のピーク純度百分率は、それぞれ表14、15、16及び17の中に記されている。I3A「b」のピーク純度百分率は、98%超であり、一方イソ型「a」のピーク純度百分率は−28℃での3カ月の保管後全てのゲルについて1.2%未満であった。40℃での加速された安定性試験については、4週間にわたる「b」のピーク純度百分率の最大の減少は、4.74という見かけのプラシーボ値をもつゲルで観察された。I3A「b」はイソ型「a」に変換することが示されたことから、イソ型「a」の形成も又安定性マーカーとして検討した。40℃で1週間及び4週間の保管そして2〜8℃で3カ月の保管後の、時間0からのイソ型「a」のピーク純度百分率の増加を計算し、結果を表18に示した。
【0133】
【表17】

【0134】
【表18】

【0135】
【表19】

【0136】
【表20】

【0137】
【表21】

【0138】
このデータは、ゲルが3カ月間2〜8℃で保管された時点でさえイソ型「a」の形成に対しpHが効果を及ぼすことを示唆している。pH3.5のクエン酸緩衝液で調製したゲルについてのイソ型「a」のピーク面積百分率の0.44%の増加に比べて、pH3.00のクエン酸緩衝液で調製したゲルでは0.21%のイソ型「a」のピーク面積百分率の増加が測定された。40℃でT=4週間までに、イソ型「a」のピーク純度百分率の増加という観点から見たゲル間の差異は増幅された。
【0139】
実施例4
油製剤
材料
【0140】
【表22】

【0141】
方法
適切な油/賦形剤の選択
非経口投与のためのビヒクルとして、ゴマ油、ヤシ油(中鎖トリグリセリド)、大豆油、トウモロコシ油及びピーナツ油を同定した。各々を最高100%のレベルで使用することができる。
【0142】
非経口油製剤中に含み入れることのできるその他の賦形剤を、使用される最高濃度と合わせて以下に示す。
【0143】
【表23】

【0144】
予備安定性試験用のI3A及びプラシーボ製剤の調製
【0145】
ヤシ油の滅菌
約50gのヤシ油(CRODAMOL GTC/C)を100ml入りの円錐フラスコ(ホウケイ酸ガラス)内に秤量し、栓をし(ホウケイ酸ガラス製栓)、予熱したオーブン(ファン付きGallenKampf Hot box Oven、サイズ2)の内部に1時間173±5℃で入れた。この手順の後、使用前に油を室温まで冷却させた。
【0146】
滅菌した油に対するI3Aの添加
28mlのガラス製バイアル内に約10mgのI3Aを正確に秤量し、予め0.22μmのMILLEX-GVフィルタを通してろ過した約200mgのベンジルアルコール(正確な重量を記載)に添加した。この混合物を、ベンジルアルコール中にI3Aが溶解してしまうまで約2時間定期的にボルテックスした。この混合物に9.79gの滅菌済み油を添加し、均質の溶液が得られるまで約5分間ボルテックスした。I3A分を補うために約9.80g(9.79gに対して)の滅菌済み油(正確な重量を記載)を使用したという点を除いて、類似の要領でプラシーボを調製した。活性(I3A)及びプラシーボ製剤について表19及び20に正確な重量及び百分率組成が示されている。
【0147】
【表24】

【0148】
【表25】

【0149】
I3A及びプラシーボ製剤についての貯蔵条件
各製剤(プラシーボ又は活性)のアリコートを2ml入りのコハク色のスクリューキャップガラス製バイアル(ホウケイ酸塩ガラス)内に送り出し、密封し、2つの貯蔵条件すなわち2〜8℃及び25±2℃で貯蔵した。製剤を、1カ月以下の貯蔵期間で以下に記述する方法を用いてテストした。
【0150】
ヤシ油中のI3Aの予備的安定性
表21は、43日間にわたり2〜8℃及び25℃で貯蔵されたヤシ油中のI3Aの安定性について要約している。安定性データは、t=0及びt=43日におけるI3Aの新鮮なバッチ由来のイソ型「a」の百分率に匹敵するイソ型「a」の百分率の増加が、2〜8及び25℃での貯蔵中43日後に全く存在しないと思われるということを示している。
【0151】
【表26】

【0152】
結果
アセトニトリル又はアセトニトリル/油中で注射された試料の間には、I3Aイソ型「a」及び「b」のピーク面積及び保持時間に有意な差異は存在しなかった(P>0.05)。
【0153】
利用可能な油のリストのうち、2つ、すなわちヤシ油とゴマ油がI3Aの製剤に適しているとみなされた。ゴマ油の勧奨される滅菌は170℃で2時間であり、一方ヤシ油については170℃で1時間である。これは、製剤を調製するのに費される時間及びエネルギーの量に関して有利である。熱に対するI3Aの不安定性(実験的に実証されたもの、データ示さず)に起因して、油は別々に滅菌しなくてはならず、又、I3Aはベンジルアルコール内に溶解した溶液として無菌で(ろ過した状態で)添加されなくてはならない。ろ材すなわち0.22μmMILLEX-GVフィルタは、I3A/ベンジルアルコール混合物のろ過に適しているものとして同定されたものであるが、フィルタ膜上のI3Aの吸着にはなお調査が必要である。所望の場合、この油の比較的低い粘度(約44mPasの粘度をもつゴマ油に比べ約30mPas)に起因して、この製剤をI3A/ベンジルアルコールでインサイチュで調製し、完全な製剤をろ過により滅菌することも可能である。
【0154】
実施例5
経口製剤
口腔製剤向けに数多くの賦形剤を選択し、17個の非水性製剤を稠度及び溶媒和について目視で評価した。
【0155】
さまざまな重合体が潜在的な粘膜接着性ビヒクルとしてのものであった。I3Aは水性系中で固有の不安定性を示すことから、調査対象の製剤は非水性で、水相にグリセロール及びポリエチレングリコール(PEG)を代用していた。
【0156】
材料
【0157】
【表27】

【0158】
方法
プラシーボ製剤の予備的目視スクリーニング
最初に17のプラシーボ製剤を調製し、稠度及び溶媒和について目視スクリーニングを行った(表22)。簡単に言うと、所要量のPEG400及びカルボポール934をスパチュラで10分間28ml入りのガラス製バイアル内で撹拌し、その他の成分を、グリセロール、ベンジルアルコール及びメチルセルロース又はHEC又はHPCの順序で添加した。その後、約2〜3分間約10,000rpmでSilverson14RT撹拌機で製剤を混合した。目視スクリーニングの前に全ての混合済みプラシーボ製剤を一晩(24時間超)溶媒和させた。
【0159】
【表28】

【0160】
プラシーボ製剤のレオロジースクリーニング(粘膜接着)
粘膜接着の試験に対する1つの手法は、粘膜接着性界面のレオロジー特性決定である。これは、重合体ゲルとそのムチンとの混合物の間のレオロジーパラメータの差異を測定することによって相互浸透の程度を検出できるという仮定に基づいている。粘性の相乗的増加は、生体接着結合強度の指標として提案されてきた。目視スクリーニングから、ブタムチンを用いてさらにレオロジー査定を行なうため、粘性及び溶媒和に基づいて5つのプラシーボ製剤を選択した。選択された製剤を表23中に列挙する。
【0161】
【表29】

【0162】
レオロジー査定用の試料の調製
ブタムチンの調製
簡単に言うと、15gのブタムチン粉末をビーカー内に秤量し、10%w/wのムチンの最終濃度を得るべく脱イオン水を用いて150gまで補給を行なった。これを約2〜3時間2〜8℃で水和させた。水和させたムチンをさらに脱イオン水で希釈して脱イオン水中5%w/wのムチンという最終的濃度を得た。これを一晩、2〜8℃で冷蔵庫内で水和させた。
【0163】
製剤/ムチン混合物の調製
選択された製剤(表23)を、上述の通りに調製した。製剤の各々に対して、10%w/wのムチンを等重量添加し、スパチュラで穏やかに撹拌した。これを一晩2〜8℃で水和させ、選択した製剤を同じく脱イオン水で希釈し(50:50w/w)、2〜8℃で冷蔵庫内で一晩水和させた。
【0164】
動的(振動)レオロジー試験手順
Carrimed CSL2レオメータを用いて、レオロジースクリーニングを実施した。約0.5gのテスト試料をプラットフォームとパラレルプレートジオメトリーの間に置いた。プラットフォームとプレートの間で試料をひとたび圧縮したならば、このジオメトリーに対し直角にスパチュラを用いて入念に余剰の試料をことごとく除去した。各々の試料を合計5回テストし、結果として機械的スペクトルを得た。結果として得られたパラメータG’、G”及びtanδを用いて、製剤の粘膜接着性強度を査定した。なおここでG’は弾性係数、G”は粘性係数であり、tanδはG’対G”の比である。
【0165】
選択された活性及びプラシーボ製剤の最適化及び調製
レオロジー試験の後、安定性のための製剤バッチの調製に関するさらなる最適化のために2つの製剤を選択した(製剤16及び17)。活性(I3Aを含有する)及びプラシーボ製剤(各25g)のバッチを調製するために、最適化された製造方法を使用した。図6は、使用される賦形剤/薬物の目標量と共に、活性及びプラシーボ製剤16の調製を示す。簡単に言うと、所要量のカルボポール934をホウケイ酸塩びんに入ったPEG400に添加し、混合物が完全に溶媒和されるまで約2時間50℃まで加熱した。この混合物を室温まで冷却し、所要量のグリセロールを添加し、混合物を2時間、均質ペーストが形成されるまで水浴中で約60℃まで加熱した。2〜3分間約10,000rpmに設定されたSilverson L4RTミキサーを用いて、冷却された混合物中に所要量のHECを添加し撹拌した。この混合物を次に、室温で一晩(約12時間)完全に溶媒和させた。図6が示しているように、こうして「基本製剤」が生成された。
【0166】
最初にベンジルアルコール内にI3Aを溶解させることにより、活性製剤を調製した。溶媒和された基本製剤に対して所要量のI3A/ベンジルアルコールを添加し、スパチュラで穏やかに撹拌して0.1%w/wのI3Aの最終濃度を得た。同様にしてベンジルアルコールを溶媒和された混合物に添加することでプラシーボ製剤を調製し、穏やかに撹拌した。製剤17も類似の要領で調製した。表24は、活性及びプラシーボ製剤中の賦形剤/I3Aの目標%w/wを示す。
【0167】
約1gのプラシーボ及び活性製剤を2ml入りのスクリューキャップバイアル内に等分し、2〜8℃、25℃及び40℃で安定性状態に置いた(短時間の加速された安定性試験のためには、後者の温度を使用した)。
【0168】
【表30】

【0169】
製剤中のI3Aの分析
活性製剤からのI3Aの抽出
薬物製品の評価を目的として、抽出方法をI3A「b」からイソ型「a」への分解を評価するようにセットアップした(クロマトグラフィピーク純度)。活性製剤からのI3Aの抽出は以下の通りであった(同じ手順をプラシーボ製剤のためにも使用した)。簡単に言うと、約1gの製剤を10ml入りの容量フラスコ中に正確に秤量し、その後1mlのクエン酸緩衝液(pH3)を秤量した。これを、均質になるまで約5分間手で穏やかに振とうし、HPLCグレードのメタノールで所定の体積まで補給した。フラスコを次に約2時間機械式振とう機上で振とうした。フラスコの中身を次に15mlのポリプロピレン管に移し、2200rpmで5分間遠心分離した。上清をHPLCバイアル内に等分し、分析した。
【0170】
予備回収データ(図示せず)は、約80%以上のI3A「b」が活性製剤から回収されたこと、そしてさらに有意なことに製剤中でいずれの賦形剤からの干渉もなかったことを示した。
【0171】
HPLC方法
口腔製剤中のI3Aの分析のための分析方法を以下に示す。
カラム:Symmetry C18−5μm(Waters)(S/no. T636515 07, P/no. WAT054205)
カラム長:150×3.90mm
カラム温度:30℃
ガードカラム:Symmetry C18−5μm(Waters)(P/no.Wat054225)
ガードカラム長:20×3.90mm
移動相:水中0.02%v/vのTFA(A);アセトニトリル中0.02%v/vのTFA(B)。
A:B;50:50(出発組成物)、(GRADIENT、下表参照)
流速:1.0ml/分
UV波長:230nm(PDA)
注入量:10
実行時間:20分間
オートサンプラー温度:8℃
【0172】
試料及びプラシーボを時間ゼロでテストした。約1〜2週間目に、40℃で保管した試料も同様にテストして、幾つかの加速された安定性データを得た。
【0173】
結果
目視スクリーニング
定性的に目視スクリーニングを実施し、粘度及び溶媒和に関して数多くの製剤を予備スクリーニングする比較的効率の良い方法を得た。2人の独立した査定人によりプラシーボ製剤が査定され、粘度が過度に高いか又は過度に低いかに基づいて拒絶された。さらに、完全に溶媒和しなかった製剤も全て拒絶された。この調製方法に従うと、1.5%w/wより高い濃度のカルボポール934が粘度の過度に高い及び/又は完全に溶媒和しない非水性ゲルを生成することはきわめて明白であった。カルボポール934の量を0.5%w/wまで削減し、2.0%w/wの濃度でメチルセルロースを添加することにより、低粘度のゲルが生成された。しかしながら、カルボポール934の濃度を1.0%w/wまで増大させると同時にメチルセルロースの濃度を1.0%w/wまで削減することによってもなお、粘度の低いゲルを得ることができた。目視による観察から、メチルセルロースの添加が、カルボポール934の添加に比べて粘度に大きな影響を及ぼさなかったということが認識されるであろう。しかしながら、メチルセルロースは、粘膜接着特性を有することが示されてきており、従って、1.5%w/wのカルボポール934と組合せて1.0及び1.5%w/wのメチルセルロースを含有するさらなる製剤が調製された。これらの製剤の目視査定は、これらが均質でさらなる評価のための所要の稠度を有することを示した。同様に、HPCはカルボポール934の添加に比べて粘度に影響を与えないことがわかった。しかしながら、HPCも同じく潜在的な粘膜接着剤として関与してきたことから、さらなるレオロジー査定のためには、1.5%/w/wのカルボポール934と共に1.0及び1.5%w/wのHPCを含有する製剤が視覚的に受容可能であることがわかった。製剤4も同様に、粘度及び溶媒和に関して視覚的に受容可能であることがわかっており、これにはHEC(もう1つの潜在的粘膜接着性重合体)が含まれていた。従って5つの製剤(製剤4、14、15、16及び17)を、ブタムチンを用いてその粘膜接着性強度についてレオロジー的に査定した。
【0174】
製剤4、14、15、16及び17のレオロジー査定
弾性係数G’は、弾性変形に対する試料の抵抗(すなわち重合体網目結合性の反射)の尺度であり、G”は粘性変形に対する試料の抵抗の尺度である。
【0175】
5つの試料について平均した5Hzにおける平均G’及びG”を、異なる製剤間の比較を可能にする目的で、結果としてのデータから抽出した。製剤/ムチン混合物とその混合物の個々の構成要素の間のG’及びG”に関する相乗的差異の判定を可能にする式が、式1に記されている。相対的G’値が高くなればなるほど、ムチンと製剤の相互作用は大きくなる。
【0176】
【数1】

【0177】
G”を計算するために同様の式を使用することができる。tanδは、式2を使用して相対的G’及びG”値を用いて計算した。
【0178】
【数2】

【0179】
図7は、テストされた5つの製剤全てについての相対的G’及びG”値を示し、図8は対応するtanδを示す。
【0180】
レオロジー査定に基づいて、粘膜接着性強度の増加順序は、製剤17>製剤16>製剤14>製剤15>製剤4であることがわかった。しかしながら、製剤14及び15は大きな変動(大きな標準偏差で見られるように)を示した。これはムチンとこれらの製剤の均質でない相互作用に起因するものと考えられた。その上、脱イオン水中の製剤について生成されたG’も同様に大きな変動を有することが判明し、かくして、これらの製剤が均質でない水和を示すことを表わしていた。製剤4は、ムチンと混合された時点で最高のG’値を有することがわかったが、相対的G’値は、テストされたその他の製剤全てに比べて著しく低いものであった(P<0.05)。このことは、水中に分散した製剤4についてのG’値が水中に分散した全ての製剤に比べて著しく高いという事実に起因すると考えられた。製剤4は(水中のその他の製剤に比べて)水中で比較的優れた粘弾性ゲルを生成したと思われるが、製剤の効果(ならびにムチンの効果)を無くする相対的G’値が著しく低かったことから、ムチンとの相互作用は比較的わずかであると思われた。相対的G’値に基づくと、製剤16及び17は、ブタムチンとの最大の相互作用を示し、これら2つの製剤を潜在的な粘膜接着性製剤として使用できるということを暗示していた。製剤14及び15はムチンと幾分かの相互作用を示したが、これらの製剤の水和/相互作用は、大きな標準偏差により判断されるように不均質であり得た。製剤4は最低の相対的G’値、ひいては最低の相互作用を示した。対応するtanδ値は粘弾性の相対的尺度であり、低いtanδは比較的高いエンタングルメントを表わし、逆に、高いtanδは比較的低いエンタングルメント(比較的大きい粘性構成要素に起因する)を表わし、かくしてこれらの観察事実を裏づけている。
【0181】
選択された活性及びプラシーボ製剤の最適化及び調製
製剤のための調製時間を約24時間から12時間まで削減するために最適化手順を実施した。製剤16及び17を最適化及び安全性試験のために選択した。
【0182】
I3A製剤のHPLC分析
表25は、時間ゼロにおいて取られた製剤16及び17についてのI3A「b」のピーク純度百分率ならびにイソ型「a」の面積百分率及びその他の未帰属ピーク(UAP)を示している。同じくコンパレータとして示されているのは、0.1%w/wのI3AIPAゲル試料の、時間ゼロにおけるピーク純度百分率である。口腔製剤についての全てのピークを手作業で積分しそれぞれのプラシーボ製剤に比較した。
【0183】
【表31】

【0184】
表26は、2〜8℃及び40℃(加速された安定性)での保管から約2週間後に取られた製剤16及び17についてのI3A「b」のピーク純度百分率ならびにイソ型「a」の面積百分率及びその他の未帰属ピーク(UAP)を示す。同様にコンパレータとして作表されているのは、1週間40℃で保管された0.1%w/wのI3AのIPAゲルのピーク純度百分率である。口腔製剤についての全てのピークを、手作業で積分し、それぞれのプラシーボ製剤と比較した。
【0185】
【表32】

【0186】
いずれの製剤中にも、時間ゼロにおいて、受領時の初期値(99.3%I3A「b」、報告書PB21001/24号)に比べI3Aのピーク純度百分率の見かけの差異は全くみられない。さらに、受領時のイソ型「a」の面積百分率は0.40%であり、これは、時間ゼロにおけるイソ型「a」のピーク面積百分率と類似している(表25)。
【0187】
2〜8℃での口腔製剤の約1〜2週間の保管後のイソ型「a」の百分率に顕著な増加は存在しなかった(表26)が、一方40℃で保管された全ての口腔試料についてイソ型「a」の百分率の増加が観察された。しかしながら、0.1%w/wIPAゲルについて観察されたイソ型「a」の百分率の増大は、40℃で1週間の保管後さらに高いものであった(1.60%)。ピーク純度百分率に基づくと、この予備データは、I3A口腔製剤が少なくとも0.1%のI3AIPAゲルと同じ位、そして場合によってはそれ以上に安定していることを示しているように見える。
【0188】
実施例6
ポロキサマー製剤
4つのポロキサマー製剤を調査した。
【0189】
材料
【0190】
【表33】

【0191】
方法
賦形剤の選択
予備製剤化試験に先立ち、ポロキサマー製剤のために適した複数の賦形剤を同定し、これらを推奨される最大濃度と合わせて以下で列挙する。
【0192】
【表34】

【0193】
レオロジー試験のための製剤の調製
レオロジー挙動を評価するために以上に列挙した賦形剤を用いてさまざまなプラシーボポロキサマー407製剤を調製した。
【0194】
クエン酸緩衝液pH3の調製
0.1Mの濃度で脱イオン水中でクエン酸−水和物(Mwt211g/モル)を調製した。クエン酸三ナトリウム二水和物、0.1M、(Mwt294.1g/モル)も同様に、脱イオン水中で調製した。40%v/vのクエン酸−水和物溶液(0.1M)、10%v/vのクエン酸三ナトリウム二水和物溶液(0.1M)及び50%v/vの脱イオン水を混合することによりクエン酸緩衝溶液pH3を調製し、pH計(3320JENWAY)を用いて最終的pHを測定した。
【0195】
ポロキサマー407「基本」溶液の調製
予備的試験は、さまざまなcmt値で一定の粘度範囲を提供するためには18〜20%w/w間の濃度範囲にあるポロキサマー407溶液が適しているということを示した。Schmolka(1972年)により報告された低温方法を用いて、ポロキサマー溶液を調製した。
【0196】
簡単に言うと、100ml入りのホウケイ酸塩ガラスデュランびんの中に入ったpH3のクエン酸緩衝液又はpH3のプロピレングリコール/クエン酸緩衝液のいずれかに対して、所要量のポロキサマー407(表27)を添加した。適量のプロピレングリコール及びpH3のクエン酸緩衝液(表27)を秤量することによってプロピレングリコール/クエン酸緩衝液pH3を予め調製し、視覚的に均質になるまで1〜2分間振とうした。成分の入ったデュランびんに蓋をし、透明な溶液が生成されるまで、15分毎に頻繁に振とうしながら4時間氷/水浴中に置いた。これらの溶液を、必要となるまで2〜8℃で保管した。
【0197】
滅菌手順
病変内局注治療にはゲルが必要とされることから、滅菌が重要である。滅菌を達成するためには、BP方法を用いて、調製済みゲルをオートクレーブ処理したが、この場合、表27に列挙された各々のゲル約100gを100ml入りのデュランびん内に入れ、121℃で15分間オートクレーブ処理した。この手順の後、ゲルを室温で冷却し、その後必要となるまで2〜8℃で保管した。
【0198】
【表35】

【0199】
【表36】

【0200】
レオロジー評価用のプラシーボポロキサマー製剤の調製
熱滅菌に対するI3Aの不安定性に起因して、I3Aを含む製剤は、適切な溶媒内にI3Aを溶解させその後、オートクレーブ処理された「基本」ポロキサマー溶液に対して無菌添加(すなわち無菌ろ過)することにより調製しなければならない。選択された溶媒はベンジルアルコールであった。しかしながら、レオロジー査定のためには、I3Aの利用可能性に制限があるためベンジルアルコールを含有するプラシーボポロキサマー製剤のみを調製した。
【0201】
ベンジルアルコール/クエン酸緩衝液pH3溶液の調製
ベンジルアルコールに添加されるクエン酸緩衝液の量は、2.5%w/wであり、これはベンジルアルコール中のクエン酸緩衝液pH3の溶解度より低いものであった。簡単に言うと、ベンジルアルコール中2.5%w/wというクエン酸緩衝液の最終百分率を得るため、19.5gのベンジルアルコールに対し約0.5gのクエン酸緩衝液pH3を添加した。次にこの溶液をmilliporeフイルタ(0.22μm、MILLEX-GV、MILLIPORE)を通してろ過して、無菌ろ過の条件を模倣した。
【0202】
ポロキサマー「基本」溶液に対するベンジルアルコール/クエン酸緩衝液pH3の添加
以上で調製した滅菌済みポロキサマー「基本」溶液に対し所要量のろ過済みベンジルアルコール/クエン酸緩衝液pH3を添加することによってプラシーボ製剤(表28)を調製した。簡単に言うと、約9.90g(正確な重量は表28に記載)の各々のポロキサマー「基本」溶液を20ml入りのソーダガラス製バイアル内に秤量し、これを氷/水中で冷却して液体を形成させた(室温でこれらの溶液はゲルを形成する)。冷却したポロキサマー「基本」に対して、約0.10g(正確な重量は表28に記載)のろ過済みベンジルアルコール/クエン酸緩衝液pH3を添加し、視覚的に透明で均質な溶液が得られるまで2分間ボルテックスした。その後必要となるまで製剤を2〜8℃で保管した。
【0203】
レオロジー評価
Carrimed CSLレオメータを用いてレオロジー評価を実施した。約0.4gのテスト試料をプラットフォームとパラレルプレートジオメトリーの間に置いた。プラットフォームとプレートの間で試料をひとたび圧縮したならば、このジオメトリーに対し直角にスパチュラを用いて入念に余剰の試料をことごとく除去した。各々の試料を合計3回テストし、結果としての粘度を温度の関数として記録した。
【0204】
安定性及び放出の試験のための活性製剤及び相対的プラシーボの調製
レオロジー査定から続行して、安定化及び放出試験のため活性(I3A)及びプラシーボポロキサマー製剤を調製した。さらに、放出試験用の対照製剤としてプラシーボ及び活性(0.1%w/wI3A)PEG400製剤も調製した。
【0205】
ベンジルアルコール/クエン酸緩衝液中の原液I3Aの調製
500mg(目標量)のベンジルアルコール/クエン酸緩衝液pH3と共に、約50mg(目標量)のI3Aを7ml入りガラス製の小さなバイアル中に秤量した。この混合物を、I3Aが溶解してしまうまで5分間定期的にボルテックスした。
【0206】
活性及びプラシーボポロキサマー製剤の調製
上述の通りにプラシーボ製剤を調製した(表28)。I3A「b」の添加に起因する重量を追加し、添加されたポロキサマー「基本」溶液の量を同じように削減することにより補償したという点を除いて、プラシーボ製剤と類似の要領で0.1%w/wの目標濃度のI3A「b」を含有する活性(I3A)ポロキサマー製剤を調製した(表29)。簡単に言うと、約110mg(正確な重量を記載)のI3A/ベンジルアルコール/クエン酸緩衝液pH3を、9.89gの冷却した滅菌済みポロキサマー「基本」溶液に添加し、目に見えて透明で均質な溶液が得られるまで約2分間ボルテックスした。正確な重量及び目標重量は表29に示されている。
【0207】
【表37】

【0208】
【表38】

【0209】
PEG400対照製剤の調製
類似の手順に従って、milliporeフイルタ(0.22μmのMILLEX-GV、MILLIPORE)を通して予めろ過された125mgのベンジルアルコールに対して12.5mgのI3Aを添加した。I3Aが完全に溶解してしまうまで、約5分間この溶液をボルテックスした。活性対照製剤を調製するためには、約110mgのこの混合物を、7.912gのPEG400及び1.978gのクエン酸緩衝液pH3の溶液に添加した。約7.92gのPEG400及び1.98gのクエン酸緩衝液そして100mgの滅菌済みベンジルアルコールが使用されたという点を除いて、プラシーボを類似の要領で調製した。プラシーボ及び活性PEG400製剤のそれぞれについて正確な重量及び目標重量は、表6に示されている。
【0210】
活性及びプラシーボポロキサマー製剤についての保管条件
各々のポロキサマー407製剤(プラシーボ又は活性)のアリコートを2ml入りスクリューキャップのコハク色のガラス製バイアル(ホウケイ酸塩ガラス)内に送り出し、密封して、安定性試験のため3つの保管条件すなわち2〜8℃、25±2℃及び40±2℃で保管した。
【0211】
ポロキサマー製剤中のI3Aの安定性試験
薬物製品評価を目的として、I3A「b」からイソ型「a」への分解を評価するべく、抽出方法をセットアップした(クロマトグラフィピーク純度)。活性製剤からのI3Aの抽出は、以下の通りであった(プラシーボ製剤のためにも同じ手順を使用した)。簡単に言うと、約0.5gの製剤を5ml入りの容量フラスコ内に正確に秤量し、HPLCグレードのアセトニトリル/クエン酸緩衝液pH3(90:10v/v)をマークまで補給した。溶液をHPLCバイアル内に等分し、分析した。
【0212】
予備的回収データ(図示せず)は、約80%以上のI3A「b」が活性製剤から回収され、さらに有意なことに製剤中には賦形剤からのいかなる干渉も全く存在しないことを示していた。製剤をt=0で分析し、加速された安定性試験(40℃)をt=5週目で行なった。
【0213】
予備的I3A放出試験
フランツ拡散セルを用いて閉塞条件下で、合成膜を横断しての製剤からのI3A「b」の放出を調査した。
【0214】
レシーバ流体の選択
シンク条件を試み維持するために利用されるレシーバ流体は、20%v/vのエタノール/クエン酸緩衝液(pH3.0)であり、これをフランツセル内に取込み、磁気撹拌機で絶えず撹拌した。約18時間にわたり37℃で20%のv/vエタノール/クエン酸緩衝液(pH3.0)内でI3Aについて予備安定性試験を実施した。18時間後のイソ型「a」内のピーク純度百分率の増加は、0.26%であることがわかった。フランツセル試験目的では、これは受容可能なものとみなされた。20%v/vのエタノール/クエン酸緩衝液(pH3.0)中のI3Aの速度論的溶解度は、25℃で509.7±3μg/mlであるものと判定された。
【0215】
インビトロ放出試験(フランツセル)
0.53cmの平均拡散表面積及び1.85±0.02mlの平均レセプタ体積をもつ個々に較正したフランツ拡散セルを用いて放出試験を実施した。再生されたセルロース膜(MWCO12000〜14000)を調製し、切断し、フランツセル上に取付けた。製剤を塗布する前に30分間、膜をレシーバ相と平衡化させた。0.5gの無限用量の各々の製剤を、容積式Finnpipette(登録商標)を用いて膜表面上に塗布した。1回の試料読取りを調査し(ゲル塗布から26時間後)、かくしてフランツセルのアームからレシーバ流体200μlを入念に抜き出した。この実験全体を通して、フランツセルからの蒸発に起因するレシーバ流体内のあらゆる損失を補って一定の体積を維持した。全ての製剤(1活性製剤あたりn=3のフランツセル及び1プラシーボ製剤あたりn=1のフランツセルについて、閉塞条件下で(上部ドナーウェルの上面は、Parafilm(登録商標)で被覆されている)、実験を実施した。実施例1で記述されている通り、HPLCを介して試料を分析し、80%v/vのクエン酸緩衝液/20%v/vのエタノール中で調製された一連の較正標準を用いて、放出されたI3A「b」の濃度を評価した。
【0216】
結果
ポロキサマー「基本」溶液の滅菌
ポロキサマー「基本」溶液の滅菌の直後に、プロピレン無しのPolox-01及びPolox-02は、相分離を示した。氷/水中でひとたび冷却された時点で、これらの溶液は透明で均質な相となった。ただしプロピレングリコール、Polox-pg-01及びPolox-pg-02を含有する「基本」溶液は滅菌直後にいかなる相分離も示さず、このことはプロピレングリコールの添加がこの現象を阻害することを示唆していた。
【0217】
レオロジー査定
レオロジー試験をポロキサマープラシーボ製剤について実施し、粘度(Pa.s)を4〜40℃の温度範囲にわたり温度(℃)の関数として判定した。変曲の中点を取ることにより、cmt値を判定した。全てのプラシーボ製剤について、或る点、或るcmtでわずかな温度上昇に伴う粘度の劇的な増加が存在するまで、温度の上昇に伴う粘度のわずかな増加が存在した。cmt値は濃度に依存することがわかっており、ポロキサマー407の濃度が低くなればなるほどcmt値は高くなった。その上、ポロキサマープラシーボ製剤に対するプロピレングリコールの添加はさらにcmtを低減させた。しかしながらcmtを超えると、同じ試料についての粘度はそれぞれのプロピレングリコールを含まない製剤と比べて約1.5〜2倍増大した。例えば、37℃でPolox-01−プラシーボの粘度は約1.2Pa.sであることがわかっており、一方それぞれのプロピレングリコールプラシーボ製剤(Polox-pg-01-placebo)は2.4Pa.sであることがわかった。従って、プロピレングリコールの添加は、cmt値よりも高く粘度を増大させるように見えるが、実際のcmt値は減少している。表31は、全ての製剤についての37℃でのcmt値と粘度を要約している。
【0218】
【表39】

【0219】
ポロキサマー製剤内のI3Aの安定性試験
表32は、時間ゼロで取った全ての活性ポロキサマー製剤についての、I3A「b」のピーク純度百分率ならびにイソ型「a」のピーク面積百分率及びその他の未帰属ピーク(UAP)を示す。同様にコンパレータとして示されているのは、時間ゼロにおける0.1%w/wのI3AIPAゲルのピーク純度百分率である。全てのピークを手作業で積分し、それぞれのプラシーボ製剤に比較した。
【0220】
【表40】

【0221】
表33は、40℃(加速された安定性)での保管から5週間後に取られた全ての活性製剤についてのI3A「b」のピーク純度百分率ならびにイソ型「a」の面積百分率及びその他のUAPを示す。同様にコンパレータとして作表されているのは、4週間40℃で保管された0.1%w/wのI3AのIPAゲルのピーク純度百分率である。全てのピークを手作業で積分し、それぞれのプラシーボ製剤と比較した。
【0222】
【表41】

【0223】
いずれのポロキサマー製剤中にも、I3Aのピーク純度百分率の見かけの差異は存在しなかった。しかしながら時間ゼロの時点では、恐らく製剤の製造中にベンジルアルコールに対して加えられた少量のクエン酸緩衝液pH3の添加の結果、I3AIPAゲルに比べこれらの製剤におけるイソ型「a」の百分率は、より低い。
【0224】
イソ型「a」の百分率の増加は、40℃での5週間の保管の後全ての活性ポロキサマー製剤について観察された。しかしながら、0.1%w/wのIPAゲルについて観察されたイソ型「a」の百分率の増大は、40℃で4週間の保管の後、より高いもの(4.7%)であった。ピーク純度百分率に基づくと、これらのデータは、I3Aポロキサマー製剤の安定性が0.1%のI3AIPAゲルに匹敵することを表わしているように思われる。
【0225】
予備的放出試験
図9は、0.1%w/wのポロキサマーゲル及びPEG400製剤からのI3Aの26時間後の放出量(μg/cm)を示す。ポロキサマー製剤のいずれの間でも有意な放出差は全くみられなかった(P>0.05)が、全てのポロキサマー製剤からの放出は、PEG400対照製剤からの放出よりも著しく緩慢であった(P<0.05)。全てのポロキサマー製剤について平均された放出I3A「b」量は約16μg/cmであり、一方対照のPEG400製剤から放出した量は約53μg/cmであった。これは、26時間後の対照に比較して、全てのポロキサマー製剤から放出されたI3A「b」の量が約70%減少したことに相当する。
【0226】
結果
この試験では4つのポロキサマー製剤を調査した。これらのポロキサマーゲルは、(37℃での)粘度の上昇を示し、ここでpolox-01−プラシーボの粘度<polox-pg-01−プラシーボ<polox-02−プラシーボ<polox-pg-02−プラシーボであった。さらに、プロピレングリコールの添加は、cmt値より高く粘度を増加させると思われたが、実際のcmt値は減少している。
【0227】
ポロキサマーゲルの安定性は、加速条件下で0.1%のI3AIPAゲルに匹敵するものと思われる。
【0228】
放出試験は、ポロキサマー製剤のいずれの間に、有意な放出差が無い(P>0.05)ことを示した。しかしながら、全てのポロキサマー製剤からの放出はPEG400対照製剤からの放出に比べて著しく緩慢(P<0.05)であった。さらに、全てのポロキサマー製剤から放出されたI3A「b」の量の約70%の低減が、26時間後に対照と比較して観察された。
【0229】
実施例7
PEG400対照製剤と比較した、油性基剤病巣内製剤からのI3A「b」のインビトロ放出を調査した。
【0230】
材料
【0231】
【表42】

【0232】
方法
放出試験のためのI3A(活性)及びプラシーボ製剤の調製
3つの油製剤をそのそれぞれのプラシーボと共に調製した。ベンジルアルコールの量を1%w/wに保った。2つの製剤の調製は、油の熱滅菌前の酸化防止剤の添加又は油の滅菌後の酸化防止剤の添加のいずれかを伴った。
【0233】
油製剤(PB23001/2中で報告されているもの)「Croda-BA」の調製
ヤシ油の滅菌
100ml入りの円錐フラスコ(ホウケイ酸塩ガラス)の中に約100gのヤシ油(CRODAMOL GTC/C)を秤量し、栓をし(ホウケイ酸塩ガラス製栓)、1時間170±2℃に予熱したオーブン(ファン付きGallenkampf Hot box Oven、サイズ2)の内部に入れた。この手順の後、油を使用前に室温まで冷却した。
【0234】
滅菌済み油に対するI3Aの添加
約15mgのI3Aを20ml入りガラス製バイアル内に正確に秤量し、これを、予め0.22μmのMILLEX-GVフィルタを通してろ過した約150mgのベンジルアルコール(正確な重量を記載)に添加した。I3Aがベンジルアルコール中で溶解してしまうまで約2時間、この混合物を定期的にボルテックスした。この混合物に対し、約14.835gの滅菌済み油を添加し、均質の溶液が得られるまで約5分間ボルテックスした。I3Aを補償するために約14.85gの滅菌済み油(正確な重量を記載)を使用するという点を除いて、類似の要領でプラシーボを調製した。正確な重量及び百分率組成が、活性(I3A)及びプラシーボ製剤について表34及び35に示されている。
【0235】
【表43】

【0236】
【表44】

【0237】
油製剤「Croda-BA/Antiox」の調製
油を長期保護すると酸敗臭が生じる可能性があり、これは薬物製品を劣化させ得る。従って、この効果を低減させるため、製剤中に(熱滅菌の後に)酸化防止剤を内含させることができる。油の熱滅菌の後で酸化防止剤を含有しているプラシーボ及び活性製剤を、以下の方法に従って調製した。
【0238】
酸化防止剤/ベンジルアルコール混合物の調製
2gのベンジルアルコール中に約60mgの酸化防止剤(BHT)を溶解させ、0.22μmのMILLEX-GVフィルタを通してろ過した。
【0239】
滅菌済み油に対するI3Aの添加
20ml入りガラス製バイアルの中に約15mgのI3A(バッチ0319)を正確に秤量し、上述の通りに調製した約154.5mgのBHT/ベンジルアルコールにこれを添加した。I3Aがベンジルアルコール中に溶解してしまうまで約2時間この混合物を定期的にボルテックスした。この混合物に対して、約14.8305gの冷却した滅菌済み油を添加し、均質な溶液が得られるまで約5分間ボルテックスした。I3Aを補償するために、約14.8455gの滅菌済み油(正確な重量を記載)を使用するという点を除いて類似の要領でプラシーボを調製した。正確な重量及び百分率組成が、活性(I3A)及びプラシーボ製剤について表36及び37に示されている。
【0240】
【表45】

【0241】
【表46】

【0242】
油製剤「Croda/Antiox-BA」の調製
油の乾燥熱滅菌も同様に酸敗臭を生じさせる可能性もあり、これが薬物製品を劣化させ得る。従って、熱滅菌に先立って、この効果を低減させるため、製剤中に酸化防止剤を内含させることができる。油の熱滅菌前に酸化防止剤を含有しているプラシーボ及び活性製剤を、以下の方法に従って調製した。
【0243】
酸化防止剤/油混合物の滅菌
100ml入り円錐フラスコ(ホウケイ酸塩ガラス)内で約50gの油の中に約15mgの酸化防止剤(BHT)を溶解させ、栓をし(ホウケイ酸塩ガラス製の栓)、1時間170±2℃で予熱したオーブン(ファン付きGallenkampf Hot box Oven)の内部に入れた。この手順の後、酸化防止剤/油を使用前に室温まで冷却した。
【0244】
滅菌済み油に対するI3Aの添加
20ml入りガラス製バイアルの中に約15mgのI3A(バッチ0319)を正確に秤量し、予め0.22μmのMILLEX-GVフィルタをとしてろ過された約150mgのベンジルアルコールにこれを添加した。I3Aがベンジルアルコール中に溶解してしまうまで約2時間この混合物を定期的にボルテックスした。この混合物に対して、約14.835gの冷却した滅菌済み酸化防止剤を添加し、均質な溶液が得られるまで約5分間ボルテックスした。I3Aを補償するために、約14.8455gの滅菌済み油(正確な重量を記載)を使用するという点を除いて類似の要領でプラシーボを調製した。正確な重量及び百分率組成が、活性(I3A)及びプラシーボ製剤について表38及び39に示されている。
【0245】
【表47】

【0246】
【表48】

【0247】
全ての調製物のアリコートを予備放出試験のために保管し、残りを2ml入りのコハク色ホウケイ酸塩ガラスバイアル内に等分し、蓋をし、安定性試験のために2〜8℃及び25℃で保管した。
【0248】
予備的I3A放出試験
フランツ拡散セルを用いて閉塞条件下で、合成膜を横断しての製剤からのI3A「b」の放出を調査した。
【0249】
レシーバ流体の選択
シンク条件を試み維持するために利用されるレシーバ流体は、20%v/vのエタノール/クエン酸緩衝液(pH3.0)であり、これをフランツセル内に取込み、磁気撹拌機で絶えず撹拌した。約18時間にわたり37℃で20%のv/vエタノール/クエン酸緩衝液(pH3.0)内でI3Aについて予備安定性試験を実施した。18時間後のイソ型「a」内のピーク純度百分率の増加は、0.26%であることがわかった。フランツセル試験目的では、これは受容可能なものとみなされた。20%v/vのエタノール/クエン酸緩衝液(pH3.0)中のI3Aの速度論的溶解度は、25℃で509.7±3μg/mlであるものと判定された。
【0250】
インビトロ放出試験(フランツセル)
0.53cmの平均拡散表面積及び1.85±0.02mlの平均レセプタ体積をもつ個々に較正したフランツ拡散セルを用いて放出試験を実施した。再生されたセルロース膜(MWCO12000〜14000)を調製し、切断し、フランツセル上に取付けた。製剤を塗布する前に30分間、膜をレシーバ相と平衡化させた。0.5gの無限用量の各々の製剤を、容積式Finnpipette(登録商標)を用いて膜表面上に塗布した。1回の試料読取りを調査し(ゲル塗布から26時間後)、かくしてフランツセルのアームから200μlのレシーバ流体を入念に抜き出した。この実験全体を通して、フランツセルからの蒸発に起因するレシーバ流体内のあらゆる損失を補って一定の体積を維持した。全ての製剤(1活性製剤あたりn=3のフランツセル及び1プラシーボ製剤あたりn=1のフランツセル)について、閉塞条件下で(上部ドナーウェルの上面は、Parafilm(登録商標)で被覆されている)、実験を実施した。HPLCを介して試料を分析し、80%v/vのクエン酸緩衝液/20%v/vのエタノール中で調製された一連の較正標準を用いて、放出されたI3A「b」の濃度を評価した。
【0251】
HPLC方法
I3Aの判定のために、実施例1中で前述したHPLC方法を使用した。
【0252】
結果
予備放出試験
図10は、0.1%w/wの油及びPEG400製剤からの、26時間後のI3A「b」の放出量(μg/cm)を示す。油製剤のいずれの間でも有意な放出差は全くみられなかった(P>0.05)。しかしながら、全ての油製剤からのI3A「b」の放出は、PEG400対照製剤からの放出よりも著しく少なかった(P<0.05)。全ての油製剤から放出されたI3A「b」の量は約3.4μg/cmであったが、対照のPEG400製剤から放出した量は、約16倍多いものであった(53μg/cm)。さらに、BHT(酸化防止剤)の添加が、油製剤からのI3A「b」の放出に著しい影響を及ぼさなかったとも思われる。
【0253】
実施例8
IPAゲル製剤の安定性
異なるpHのクエン酸緩衝液を用いて調製されたIPAゲル製剤中のI3A「b」の安定性(T=12カ月)を判定した。pH範囲は2.5〜4.0であった。
【0254】
材料
【0255】
【表49】

【0256】
方法
HPLCの計装と方法
HPLCによりピーク純度百分率について試料溶液を分析した。HPLC方法2についてのクロマトグラフィ条件を以下で詳述する。
【0257】
計装:
Waters Alliance 2695分離モジュールとオートサンプラー(SN:L96SM4656N)
Waters 996 PDA検出器(SN:MX7AM7987M)
Millennium32ソフトウェア、バージョン4.00
【0258】
クロマトグラフィ条件:
カラム:Symmetry C18−5μm(Waters)(SN:T70641T12)
カラム長:150×3.90mm
カラム温度:30℃±2℃
ガードカラム:Symmetry C18−5μm(Waters)(PN:WAT054225)
ガードカラム長:20×3.90mm
移動相:水中0.02%v/vのTFA(A):アセトニトリル中0.02%v/vのTFA(B)、A:B、50:50(出発組成物)
流速:1.0ml/分
オートサンプラー温度:8℃±2℃
UV波長:230mm
注入量:10μl
実行時間:20分
【0259】
【表50】

【0260】
IPAゲル製剤からのI3Abの抽出
以下の通りにIPAゲル製剤の各々からI3Abを抽出した。約0.5gの各活性又はプラシーボゲル製剤をAグレードの5ml入り容量フラスコ内に正確に秤量した。これを各製剤について3回実施した。その後、各々のゲル試料にクエン酸緩衝液(pH=3.0、0.5ml)を添加し、1分間最高速度でボルテックス混合し、その後オービタルシェーカーに移し、30分間400rpmで振とうさせた。HPLCグレードのアセトニトリルを、各々の容量フラスコに所定の体積になるまで添加し、1分間最高速度で再びボルテックス混合した。最終的に、容量フラスコをオービタルシェーカーに移し、60分間400rpmで振とうさせた。その後アリコートを分析のためHPLCバイアルに移した。
【0261】
プラシーボゲルの見かけのpHの測定
組合せpH電極を伴うJenway 3320pH計を用いて、プラシーボゲルの見かけのpHを測定した。簡単に言うと、約0.5gの各々のゲルを25ml入りのガラス製バイアルに移し、少なくとも1時間室温で放置した。組合せpH電極をIPAゲル中に入れ、電極の膜すべてがゲルで確実に覆われるようにした。pH計上の読取り値を最低1分間安定させ、ゲルの見かけのpHを記録した。
【0262】
結果
T=12カ月におけるプラシーボゲルの見かけのpHの測定
2〜8℃での保管の後T=0及びT=12カ月におけるプラシーボIPAゲルの見かけのpHを表40に示す。
【0263】
【表51】

【0264】
表40中のデータは、pH3.00、3.50及び4.00のクエン酸緩衝液で調製されたプラシーボIPAゲルについて、2〜8℃での12カ月の保管後、見かけのpHに有意な変化が全くなかったことを示している。ただし、pH2.50及び2.75のクエン酸緩衝液で調製されたプラシーボIPAゲルについては、2〜8℃での12カ月の保管後にpHのわずかな減少が観察された。これらのゲルについて観察されたpHの減少は、保管中か又は試料分析中のゲルからのIPAの蒸発に起因すると考えることができる。
【0265】
T=12カ月での活性IPAゲル中のI3A異性体のピーク純度百分率
表41は、2〜8℃で12カ月間保管した後の異なる活性(0.1%w/w)IPAゲル製剤のためのI3A異性体のピーク純度百分率を示し、表42は、T=0及びT=12カ月でのI3Aaのピーク純度百分率の比較を示す。
【0266】
【表52】

【0267】
HPLC方法2を用いて分析されたデータ
表41中のデータは、2〜8℃での12カ月の保管後、それぞれのプラシーボゲル製剤の見かけのpHの増加に伴うイソ型のピーク純度百分率の増加が存在することを示している。例えばpH2.75のクエン酸緩衝液で生成されたIPAゲルは、4.92%のイソ型aのピーク純度百分率をもつpH4.00のクエン酸緩衝液で調製されたIPAゲル製剤に比べて1.07%のイソ型aのピーク純度百分率を有する。これらのデータは、より低いpHのクエン酸緩衝液で調製されたIPAゲル製剤中のI3Abの安定性の増加を明らかにしている。
【0268】
【表53】

【0269】
表42中のデータは、2〜8℃での12カ月の保管後、活性IPAゲルの全てにおいてイソ型のピーク純度百分率の増加が存在するということを示している。しかしながら、pH2.50のクエン酸緩衝液で調製したIPAゲル製剤は、例えばイソ型aのピーク純度百分率の最大の増加(4.48%)を示したpH4.00のクエン酸緩衝液で調製されたIPAゲル製剤に比べて、イソ型aのピーク純度百分率のわずかな増加(0.22%)しか示さなかった。ここでも又、これらの結果は、より低いpHのクエン酸緩衝液で調製したIPAゲル製剤におけるI3Abの安定性の増大を明らかにしている。従って、最低pHのクエン酸緩衝液で調製したIPAゲル製剤が、2〜8℃で12カ月の間仕様内(イソ型aが1%未満)にとどまると思われる。
【0270】
かくして、2〜8℃で12カ月の保管の後、I3Abについてより優れた安定性を提供するIPAゲル製剤は、より低いpH(pH=2.5−3.0)のクエン酸緩衝液で調製したものであった。
【0271】
実施例9
変動するpH及び温度のゲルプレミックス溶液中のI3A「b」の安定性
方法
ゲルプレミックス溶液の調製
以下の手順に従ってゲルプレミックス溶液を調製した。
1. 清潔な乾燥デュランびんの中に直接クエン酸緩衝液を秤量する。
2. ステップ1からのDuranボトルの中に直接IPAを秤量する。
3. 清潔な乾燥試料びんの中に正しい量のI3A「b」を秤量する。
4. ステップ3からの試料びん中に正しい量のベンジルアルコールを秤量する。
5. オービタルシェーカー上にステップ4からの試料びんを置き、I3A「b」全てが溶解してしまうまで400rpmで振とうする。
6. ステップ2からのデュランびんに対してステップ5からのI3A「b」/ベンジルアルコール溶液を添加する。
7. 均質溶液が得られるまで混合物を静置する。
【0272】
調製し安定化状態におくべきゲルプレミックス溶液の組成は以下の通りである:
【0273】
【表54】

【0274】
【表55】

【0275】
【表56】

【0276】
【表57】

【0277】
【表58】

【0278】
【表59】

【0279】
【表60】

【0280】
【表61】

【0281】
ゲルプレミックス製剤の安定性試験
以上で調製したゲルプレミックス溶液を2〜8、25及び40℃で安定状態に置き、T=0及び2週間の時点でテストした。各時点で、以下で詳述する手順に従ってI3A「b」含有量についてプレミックス溶液を査定した。
【0282】
1.1.3. ゲルプレミックス製剤の安定性試験
調製したゲルプレミックス溶液を、2〜8、25及び40℃で安定状態に置き、T=0及び2週間の時点でテストした。各時点で、以下で記述する通り、I3A「b」関連物質イソ型「a」及びイソ型「c」のピーク面積との関係においてI3A「b」のHPLCピーク面積百分率を計算することによりI3A「b」含有率についてプレミックス溶液を査定した。
【0283】
HPLCの計装及び方法
I3A「b」について分析すべき全ての試料を、HPLC方法2を用いて分析した。HPLC方法2のための計装及びクロマトグラフィ条件は、以下の通りである:
【0284】
計装:
Waters Alliance 2695分離モジュールとオートサンプラー
Waters 996 PDA検出器
Empowerソフトウェア、バージョン2.00
【0285】
クロマトグラフィ条件:
カラム:Symmetry C18−5μm(Waters)
カラム長:150×3.90mm
カラム温度:30℃±2℃
ガードカラム:Symmetry C18−5μm(Waters)(PN:WAT054225)
ガードカラム長:20×3.90mm
移動相:水中0.02%v/vのTFA(A):アセトニトリル中0.02%v/vのTFA(B)、A:B、50:50(出発組成物)(勾配、下表51参照)
流速:1.0ml/分
オートサンプラー温度:8℃±2℃
UV波長:230mm
注入量:10/40μl
実行時間:20分
【0286】
【表62】

【0287】
2〜8、25及び40℃におけるpH範囲2.75〜4.00のゲルプレミックス溶液中のI3A「b」についての安定性データ(平均、n=3)
【0288】
【表63】

【0289】
結論:
2〜8℃での全てのゲルプレミックス溶液の保管は、I3A「b」について得られたより高いHPLCピーク純度百分率に基づけば、25及び40℃でのゲルプレミックス溶液の保管に比べ、I3A「b」についての最高の安定性を提供する。
【0290】
HPLCピーク純度百分率に基づけば、I3A「b」についての最高の安定性を提供した2つのゲルプレミックス溶液は、1番と5番であった。これらのプレミックス溶液は、試験中に使用された最低のpH(pH=2.75)でクエン酸緩衝液を含有していた。
【0291】
HPLCピーク純度百分率に基づけば、I3A「b」についての最低の安定性を提供した2つのゲルプレミックス溶液は、4番と8番であった。これらのプレミックス溶液は、試験中に使用された最高のpH(pH=4.00)でクエン酸緩衝液を含有している。
【0292】
この試験において安定性指標としてI3A「b」のHPLCピーク純度百分率を使用した場合に、ゲルプレミックス溶液中の温度及びクエン酸緩衝液のpHを低下させることで、I3A「b」についての最高の安定性が得られた。
【0293】
REFERENCES
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【図面の簡単な説明】
【0294】
【図1】フランツセルの概略的表示を示す。
【図2】イソプロパノールゲル(pH6.5)中のイソ型「b」の百分率。
【図3】30%のIPA/クエン酸緩衝液(pH3)中のI3A「b」の百分率。
【図4】2〜8℃、RTP及び40℃での100%ベンジルアルコール中のI3A「b」の百分率。
【図5】2〜8℃、RTP及び40℃での100%のフェノキシエタノール中のI3A「b」の百分率。
【図6】0.1%w/wのI3A製剤16及びそれぞれのプラシーボの調製のためのフローチャートを示す。プラシーボ製剤については、0.25gのベンジルアルコールが基本製剤24.75gに添加された。
【図7】製剤4、14、15、16及び17についての相対的G’及びG”値(n=5±SD)。
【図8】製剤4、14、15、16及び17についての対応するtan d値。
【図9】0.1%w/wのポロキサマーゲル及びPEG400製剤からのI3A「b」の26時間後に放出された平均量(μg/cm)のプロット、(n=3±SE)。
【図10】0.1%w/wの油及びPEG400製剤からのI3A「b」の26時間後に放出された平均量(μg/cm)のプロット(n=3±SE)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療に使用するためのインゲノールアンゲレート製剤であって、前記インゲノールアンゲレートが薬学的に受容可能な非プロトン性溶媒中に溶解しており、前記製剤がさらに、前記溶媒と少なくとも部分的に相容性があり4.5以下の見かけのpHをもつ製剤を提供する薬学的に受容可能な酸性化剤を含む、前記製剤。
【請求項2】
前記酸性化剤が、非プロトン性溶媒中のインゲノールアンゲレート溶液の調製後に添加される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記インゲノールアンゲレートがインゲノール−3−アンゲレートである、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤中に存在する前記インゲノールアンゲレートが少なくとも99%インゲノール−3−アンゲレートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
インゲノール−3−アンゲレートの量が少なくとも99.5%である、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記非プロトン性溶媒が、ポリエチレングリコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンジルアルコール及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記非プロトン性溶媒がベンジルアルコールから実質的になる、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記酸性化剤が酸である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記酸性化剤が有機酸である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
前記酸性化剤が酸緩衝液である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記緩衝液が、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液及びクエン酸−リン酸緩衝液からなる群から選択される、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記緩衝液がクエン酸緩衝液である、請求項10に記載の製剤。
【請求項13】
前記製剤への添加前の緩衝液のpHがpH2.5以上pH4以下である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記緩衝液の前記pHがpH2.7以上pH3.5以下である、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記緩衝液の前記pHがpH2.7以上pH3.0以下である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
pH3〜pH4の間の見かけのpHを有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
3.5の見かけのpHを有する、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
インゲノールアンゲレート、ベンジルアルコール及びpH2.5のクエン酸緩衝液からなる製剤であって、前記緩衝液が前記製剤の1〜10%w/wの間の量で存在する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
酸化防止剤をさらに含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
前記酸化防止剤が、レチノール、アスコルビン酸、リコピン、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
前記溶媒及び酸性化剤が、単相を形成可能である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
パラベン、安息香酸、ベンジルアルコール及びそれらの混合物の中から選択される防腐剤をさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
浸透促進剤をさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
前記浸透促進剤が、イソプロピルアルコール、スルホキシド、アゾン、ピロリドン、アルカノール、グリコール、脂肪酸、水、界面活性剤、テルペン、リン脂質及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
粘膜接着剤をさらに含む、請求項1〜24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
局所投与に適した調製物の形態である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
重量で大部分の酸性緩衝液を含む、請求項26に記載の調製物。
【請求項28】
ゲル化剤をさらに含む、請求項26又は27に記載の調製物。
【請求項29】
ゲル、クリーム、軟こう又は塗布剤の形態である、請求項26〜28のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項30】
前記インゲノールアンゲレートが少なくとも99%インゲノール−3−アンゲレートであり、3ヶ月後、1%以下の「a」イソ型への転移が生ずる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項31】
前記インゲノールアンゲレートが少なくとも99%インゲノール−3−アンゲレートであり、3ヶ月後、0.5%以下の「a」イソ型への転位が生ずる、請求項1〜30のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項32】
皮膚癌の処置における、請求項1〜31のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項33】
皮膚癌の処置又は予防のための薬剤の製造におけるインゲノールアンゲレートの使用であって、前記インゲノールアンゲレートが薬学的に受容可能な非プロトン性溶媒中に溶解しており、前記製剤がさらに、前記溶媒と少なくとも部分的に相容性があり4.5以下の見かけのpHをもつ製剤を提供する薬学的に受容可能な酸性化剤を含む、前記使用。
【請求項34】
前記製剤が、請求項1〜30のいずれか一項に定義される通りである、請求項32又は33に記載の使用。
【請求項35】
前記皮膚癌が扁平上皮癌又は基底細胞癌である、請求項32〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
インゲノールアンゲレート製剤の製造方法であって、薬学的に受容可能な非プロトン性溶媒中にインゲノールアンゲレートを溶解するステップを含み、前記溶媒と少なくとも部分的に相容性がありかつ4.5以下の見かけのpHをもつ製剤を提供する薬学的に受容可能な酸性化剤の添加を含み、前記酸性化剤が、前記インゲノールアンゲレートと共に、その前に、又はその後に添加される、前記方法。
【請求項37】
前記製剤が請求項2〜29のいずれか一項に定義される通りである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記インゲノールアンゲレートが実質的にインゲノール−3−アンゲレートであり、前記インゲノール−3−アンゲレートの1%超が「a」イソ型に転位するのを防ぐよう、前記酸性化剤の添加及び条件が選択される、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記インゲノールアンゲレートが実質的にインゲノール−3−アンゲレートであり、前記インゲノール−3−アンゲレートの0.5%超が「a」イソ型に転位するのを防ぐよう、前記酸性化剤の添加及び条件が選択される、請求項36〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記酸性化剤が製剤に対しpH3〜pH3.5の間の見かけのpHを付与する、請求項36〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記酸性化剤が、前記製剤の1%〜10%w/wの間の量で添加される、請求項36〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記製剤が、任意のさらなる所望の構成要素の添加前は、定義された前記構成要素のみで構成される、請求項36〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
さらなる所望の構成要素が余剰の酸性緩衝液である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
さらなる所望の構成要素がポリエチレングリコールである、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
さらなる所望の構成要素がゲル化剤である、請求項42〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記製剤が、その後凍結と8℃の間の温度で貯蔵される、請求項42〜45のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−519314(P2009−519314A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545103(P2008−545103)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004739
【国際公開番号】WO2007/068963
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508177219)ペプリン リサーチ ピーティーワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】