説明

治療薬を送達するための方法および組成物

本発明は、治療薬を哺乳動物に投与するための、治療薬と、アルコキシ−ポリエチレングリコール、例えば、メトキシ−ポリエチレングリコールとを含む液体医薬組成物を提供する。この組成物は、膜に適用することができ、例えば鼻腔内投与時に鼻粘膜に適用することができる。本発明は、かかる組成物を哺乳動物に投与する方法も提供する。本発明は一般に、治療薬を送達するための組成物、およびそれに関連する方法に関し、さらに詳しくは、治療薬を送達するための1種または複数種のアルコキシ−ポリエチレングリコールを含有する組成物、およびそれに関連する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示内容全体がすべての目的のために本明細書に参照により援用される、2007年1月19日出願のアイスランド特許出願第8593/2007号の利益および優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般に、治療薬を送達するための組成物、およびそれに関連する方法に関し、さらに詳しくは、治療薬を送達するための1種または複数種のアルコキシ−ポリエチレングリコールを含有する組成物、およびそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
注入(例えば、静脈内、筋肉内または皮下注入)による治療薬の投与は通常、迅速かつ強い全身作用を例えば3〜10分以内に達成することが目的である場合、薬剤が胃腸管によって吸収されない場合、または薬剤が胃腸管内で、または初回通過肝代謝により不活化される場合に、最も簡便な投与方法と考えられている。しかしながら、注入による投与には、ある範囲の欠点がある。例えば、滅菌した注射器を使用しなければならず、訓練を受けていない人によって注入を行うことはできない。さらに、この投与形式は、特に同じ部位に繰り返し注入した場合には痛みおよび/または炎症を起こし得る。
【0004】
鼻腔内、口腔粘膜、舌下、直腸および経肺投与などの経粘膜投与は、治療薬を注入する欠点の多くが避けられるため特に関心を引いているが、同時に強力かつ迅速な全身作用をさらに提供する。注入の魅力的な代替法であるためには、経粘膜投与、例えば鼻腔内投与は、著しい痛み、不快感または刺激も、粘膜表面への回復不能な損傷も起こすべきではない。しかしながら、健康を脅かす急性の適応症の場合には、粘膜への比較的高い局所的刺激が許容可能である。
【0005】
経鼻、口腔粘膜または直腸投与時などの経粘膜投与において、治療薬は、粘膜を通って浸透することを可能にする、または粘膜を通して吸収されることを可能にする賦形剤において粘膜に適用されるべきである。粘液に浸透するために、賦形剤は粘液と生体適合性であるべきであり、したがって、ある程度の親水性を有する。しかしながら、賦形剤は好ましくは、臨床的に適切な量の対象治療薬を溶解するための親油性も有するべきである。
【0006】
特に鼻粘膜における粘膜表面下の毛細血管の広範囲の網状構造は、薬物、ワクチンおよび生物学的製剤の迅速かつ効率的な全身吸収を提供するのに適している。さらに、鼻粘膜上皮は実質的に、上皮細胞の単層(多列上皮)を含有し、したがって、口および膣などの扁平上皮層を有する他の粘膜表面よりも薬物投与に適している。
【0007】
治療薬の水溶性が限られている場合、経鼻投与の有用性は、制限され得ると仮定されている(非特許文献1)。結果として、この仮定が正しいのであれば、水にやや可溶性の特定の治療薬の送達は制限される。
【0008】
鼻腔への送達を促進するために、有効量の治療薬を少量で、例えば約1000μL未満、好ましくは300μL未満、さらに好ましくは150μL未満で溶解すべきである。量が多くなると、鼻孔を通って前方に排出されるか、または過剰な液体が飲み込まれた咽頭に向かって後側に排出される。結果として、多くの量が投与されると、治療薬の一部が吸収部位から失われ、かつ不可能ではないとしても、正確な用量の治療薬を再現可能に投与することは難しい。
【0009】
治療薬の経鼻投与のために、様々な送達システムが開発されている。LauおよびSlatteryによって、てんかん重積状態を治療するために鼻腔内投与した後の、ジアゼパムおよびロラゼパムの吸収特性が研究された(非特許文献2)。治療薬を可溶化するために、非イオン性界面活性剤−ポリオキシエチル化ヒマシ油が、ポリエチレングリコール400(PEG400)などの研究されている数種類の溶媒の中で最も刺激が少ない溶媒として選択された。60時間にわたって測定された成人2名におけるジアゼパムの吸収は、それぞれ84%および72%であった。しかしながら、経鼻投与後1.4時間までピーク濃度は認められず、静脈内投与を基準としわずか約27%であり、試験物質が咽頭を通過し、嚥下された後に大部分の吸収が起こったことが示唆されている。ロラゼパムに関しても同様な結果が得られたが、ピークまでの時間が長かった(2.3時間)。てんかん発作の急性期治療に対する鼻腔内投与経路の可能性は制限されていると著者は結論を下した。
【0010】
Wiltonらは、小児45名を麻酔前に鎮静させるためにミダゾラムの投与を試みた(非特許文献3)。しかしながら、使用された量は非現実的であり、効率的な投与に必要な最大量を超えた。この結果、用量の少なくとも一部の排出で咳およびくしゃみが出た。
【0011】
Morimotoらは、治療薬の持続性作用および高いバイオアベイラビリティを達成するために、PEG400中にゲル化剤carbopol(ポリアクリル酸)を含有するニフェジピンのラットにおける経鼻適用のためのゲル製剤を研究した(非特許文献4)。等量のcarbopolとPEG400の混合物が好ましい。経鼻投与によって、経口投与後よりもニフェジピンのバイオアベイラビリティは高くなるが、血漿中ピーク濃度は投与後30分まで認められないことが示された。
【0012】
デンマーク特許出願第2586/87号明細書には、抗炎症性ステロイド、水、プロピレングリコール2〜10%(v/v)、PEG400 10〜25%(v/v)、およびTween20 1〜4%(v/v)を含有する医薬組成物が開示されている。
【0013】
特許文献1には、鼻腔内投与用のインスリンの安定性水溶液が開示されている。その溶液はpH4.7以下を有し、(a)その親水親油バランス値が9〜22の範囲内である1種または複数種の非イオン性表面活性剤、および/または(b)その分子量が200〜7500の範囲内であるポリエチレングリコールなどの安定剤0.1〜20重量%を含有した。例示的な非イオン性表面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレン水素化ヒマシ油が挙げられていた。
【0014】
国際特許公開番号DK−2075/90には、治療薬の経鼻投与、例えば、経粘膜投与のためのn−グリコフロール、ポリエチレングリコールの誘導体を含有する組成物でのベンゾジアゼピンの経鼻投与が開示されている。この出願には、1〜8エチレングリコールの範囲のn−エチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール200(PEG200)を少なくとも30%含有する配合物での、治療薬の経鼻投与、例えばベンゾジアゼピンの経鼻投与が開示されている。
【0015】
特許文献2には、哺乳動物の鼻粘膜を介して治療薬を投与する方法が開示されており、薬剤は賦形剤を含有するn−エチレングリコールに溶解または懸濁され、n−エチレングリコールは、式H(OCHCHOH(pは1〜8の数である)によって表される。
【0016】
それにもかかわらず、粘膜に刺激および/許容できない損傷を生じさせることなく、静脈内投与と同じ速さ、またはほぼ同じ速さで治療薬の治療的血漿中濃度を生成する、粘膜を通して送達可能な組成物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4,153,689号明細書
【特許文献2】米国特許第5,693,608号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Proctor,D.F.(1985)Nasal Physiology in Intranasal Drug Administrations,in Chien,Y.W.(Ed.)TRANSNASAL SYSTEMIC MEDICATIONS,FUNDAMENTALS,DEVELOPMENTAL CONCEPTS AND BIOMEDICAL ASSESSMENTS,ELSEVIER Science Publishers,Amsterdam,pp.101−105
【非特許文献2】Lau,S.W.J.& Slattery,J.T.(1989),Absorption of Diazepam and Lorazepam Following Intranasal Administration,INT.J.PHARM.,54,171−174
【非特許文献3】Wilton et al.(1988)Preanaesthetic Sedation of Preschool Children Using Intranasal Midazolam,ANESTHESIOLOGY,69,972−975
【非特許文献4】Morimoto et al.(1987)Nasal Absorption of Nifedipine from Gel Preparations in Rats,CHEMICAL AND PHARMACEUTICAL BULLETINS,35,No.7,3041−3044
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、配合物中に1種または複数種のアルコキシ−ポリエチレングリコールを含有させることによって、例えば粘膜の表面に得られた組成物を適用した場合に、特定の利点が提供されるという発見に一部基づく。かかる製剤においてアルコキシ−ポリエチレングリコール(可溶性が低い治療薬に特に有用である)が使用された場合、治療薬はさらに可溶化することができるが、粘性かつ刺激性の可能性のある他の賦形剤、例えば、ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコールが全体的に低減される、または排除されるため、得られた配合物は粘性が低く、粘膜への刺激が少ないことが発見されている。結果として、例えば、鼻腔内送達時に点鼻スプレーにより液滴に変換された場合、配合物の粘度が低いと、粘膜に治療薬を送達するのに最適化されたスプレーパターンが得られる。さらに、アルコキシ−ポリエチレングリコールを含有する配合物は、粘膜表面に適用した場合に、例えば経鼻投与後の鼻粘膜に生じる刺激(灼熱感)が少ない。さらに、鼻腔内に投与した場合、本発明の組成物は、他の特定の賦形剤と関連し得る望ましくない後味(例えば、石油のような後味)を最小限に抑える。
【0020】
一態様において、本発明は、治療薬と、式I:
R−O−(CHCHO)−H (I)
(Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルであり;オキシエチレン反復単位の平均数であるnは、約1〜約25の範囲の数である)によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含有する液体医薬組成物を提供する。
【0021】
他の態様において、本発明は、可溶性が低い治療薬、例えば可溶性が低い有機治療薬を可溶化するための液体配合物を提供する。この組成物は、可溶性が低い治療薬と、式I:
R−O−(CHCHO)−H (I)
(式中、Rは(C−C)アルキルであり;
オキシエチレン反復単位の平均数であるnは、約1〜約25の範囲の数である)
によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含有する。
【0022】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載のアルコキシ−ポリエチレングリコール含有組成物を使用して、哺乳動物、例えばヒトに対象の治療薬を送達する方法を提供する。この組成物は、粘膜に、例えば鼻腔内薬物送達時に鼻粘膜に適用した場合に特に有用である。
【0023】
本発明のこれらのかつ他の態様および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲を考察すれば明らかとなるであろう。
【0024】
本発明は、配合物中に1種または複数種のアルコキシ−ポリエチレングリコールを含有させることによって、配合物を例えば粘膜に適用した場合に、他の賦形剤と比較して特定の利点を提供するという発見に一部基づく。例えば、かかる配合物においてアルコキシ−ポリエチレングリコールが使用された場合、治療薬(例えば、可溶性が低い治療薬)は、他の賦形剤、例えばポリエチレングリコール(さらに詳しくはPEG400)を使用した場合よりも、容易にかつ多量で可溶化することができることが発見されている。しかしながら、他の粘性かつ刺激性賦形剤が全体的に低減される、または排除されるため、得られる配合物は粘性が低く、粘膜への刺激が少ない。結果として、例えば、鼻腔内送達時に点鼻スプレーにより液滴に変換された場合、配合物の粘度が低いと、粘膜に治療薬を送達するのに最適化されたスプレーパターンが得られる。さらに、1種または複数種のアルコキシ−ポリエチレングリコールを含有する配合物は、粘膜表面に適用した場合に、例えば経鼻内投与後の鼻粘膜に生じる刺激(灼熱感)が少ない。さらに、鼻腔内に投与した場合、本発明の組成物は、他の賦形剤、例えば、プロピレングリコールを使用した場合よりも、望ましくない後味(例えば、石油のような後味)が少ない。
【0025】
特定の環境下において、アルコキシ基は、粘膜表面上の投与部位への組成物の生体付着性も高め、それによって、投与部位での組成物の持続時間が長くなる。これにより、最終的に吸収される治療薬の量が増加する。
【0026】
I−配合物
一態様において、本発明は、治療薬と、式I:
R−O−(CHCHO)−H (I)
(式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルであり;nは、オキシエチレン反復単位の平均数であり、かつ約1〜約25の範囲の数である)によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含有する液体医薬組成物を提供する。
【0027】
他の態様において、本発明は、可溶性が低い治療薬を可溶化するための液体配合物を提供する。液体医薬組成物は、可溶性が低い治療薬、例えば可溶性が低い有機治療薬と、式I:
R−O−(CHCHO)−H (I)
(式中、Rは、(C−C)アルキルであり;nは、オキシエチレン反復単位の平均数であり、かつ約1〜約25の範囲の数である)によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含有する。この配合物は通常、20℃、25℃、30℃、35℃または40℃で液体状態である。特定の配合物は好ましくは、37℃で液体配合物である。
【0028】
「可溶性が低い治療薬」という用語は、生物活性、およびpH7および20℃で約1mg/mL未満の水溶性を有する化合物を意味する。特定の実施形態において、可溶性が低い治療薬は、分子量1500g/mol未満、好ましくは500g/mol未満を有する有機化合物である。特定の実施形態において、可溶性が低い治療薬は、pH7および20℃で約0.5mg/mL未満、約0.3mg/mL未満または約0.1mg/mL未満の水溶性を有する化合物、例えば有機化合物である。
【0029】
さらに、「アルキル」という用語は、当技術分野では認識されており、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基などの飽和脂肪族基を包含する。「(C−C)アルキル」という用語は、炭素原子1〜6個を有するアルキル基を意味する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピルメチレン、シクロペンチル、シクロブチルメチレン、シクロブチルエチレン、シクロヘキシル、シクロプロピルプロピレン、シクロブチルエチレン、およびシクロペンチルメチレンが挙げられる。例えば、シクロプロピルメチレンという用語は当技術分野では認識されており、次式:
【0030】
【化1】

【0031】
を有する基を意味する。
【0032】
特定の実施形態において、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、組成物の約0.1%(v/v)〜約80%(v/v)、または約0.5%(v/v)〜約70%(v/v)を占める。特定の実施形態において、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、組成物の約5%(v/v)〜約80%(v/v)、または約30%(v/v)〜約75%(v/v)または約40%(v/v)〜約70%(v/v)を占める。特定の親水性薬物に関しては、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、組成物の約0.1%(v/v)〜約80%(v/v)、または約0.5%(v/v)〜約70%(v/v)、または約1%(v/v)〜約60%を占める。特定の親油性薬物に関しては、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、組成物の約1%(v/v)〜約80%(v/v)、または約2%(v/v)〜約65%(v/v)、または約5%(v/v)〜約50%を占める。さらに、治療薬は、組成物の約0.001%(w/v)〜約20%(w/v)または組成物の約0.1%(w/v)〜約10%(w/v)を占める。
【0033】
医薬組成物は、範囲約4.5〜約8.5、または約4.5〜約7.5または約4.5〜約6.5、または約5.5〜約8.5または約6.5〜約8.5、または約5.5〜約7.5のpHを有し得る。
【0034】
上述のように、アルコキシ−ポリエチレングリコールを使用する利点の1つは、他の賦形剤、例えば特定のポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールの代わりに、または他の賦形剤の量を低減するために使用し、その結果、得られる配合物の粘度を低減することができることである。得られる配合物の粘度を低減することによって、治療薬を鼻腔内投与するための、より均一な噴霧特性を有するスプレーを作ることが可能である。温度20℃での得られた医薬組成物は、範囲約1.5cP〜約60cP、または約2cP〜約50cP、または約3cP〜約40cP、または約4cP〜約30cP、または約5cP〜約25cPの粘度を有する。
【0035】
例示的なアルコキシ−ポリエチレングリコール、治療薬、および本発明の組成物を製造するのに有用な他の賦形剤が、以下のセクションに記述されている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
A.アルコキシ−ポリエチレングリコール
本発明の実施において有用なアルコキシ−ポリエチレングリコール賦形剤は、式(I):
R−O−(CHCHO)−H (I)
(式中、オキシエチレン反復単位の平均数としてのnは、約1〜約25の範囲の数である)によって表される。したがって、nは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25の数であることができる。特定の実施形態において、nは、範囲約2〜約15、または約2〜約14、または約2〜約13、または約2〜約12、または約2〜約11、または約2〜約10、または約3〜約15、または約3〜約14、または約3〜約13、または約3〜約12、または約3〜約11、または約3〜約10の数である。
【0037】
特定の実施形態において、Rは(C−C)アルキルである。例えば、上述のように、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロプロピルメチレン、シクロペンチル、シクロブチルメチレン、シクロブチルエチレン、シクロヘキシル、シクロプロピルプロピレン、シクロブチルエチレン、またはシクロペンチルメチレンであることができる。特定の実施形態において、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびシクロプロピルからなる群から選択される。
【0038】
好ましい実施形態において、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、メトキシ−ポリエチレングリコールであり、Rはメチルであり、nは、約1〜約25、または約2〜約12、または約3〜約10の数である。
【0039】
有用なメトキシ−ポリエチレングリコールとしては、例えば、メトキシ−ジエチレングリコール(m2EG)、メトキシ−トリエチレングリコール(m3EG)、メトキシ−テトラエチレングリコール(m4EG)、メトキシ−ペンタエチレングリコール(m5EG)、メトキシ−ヘキサエチレングリコール(m6EG)、メトキシ−ヘプタエチレングリコール(m7EG)、メトキシ−オクタエチレングリコール(m8EG)、メトキシ−ノナエチレングリコール(m9EG)、メトキシ−デカエチレングリコール(m10EG)、メトキシ−ウンデカエチレングリコール(m11EG)、メトキシ−ドデカエチレングリコール(m12EG)、メトキシ−トリデカエチレングリコール(m13EG)およびメトキシ−テトラデカエチレングリコール(m14EG)が挙げられる。エチレングリコールは、単一の化合物の状態で、または2種類以上のメトキシ−n−エチレングリコールの混合物として使用することができる。
【0040】
特定の実施形態において、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、メトキシ−ポリエチレングリコール350(mPEG350)またはメトキシ−ポリエチレングリコール550(mPEG550)またはメトキシ−ポリエチレングリコール750(mPEG750)である。「mPEG350」という用語は、平均分子量約350を有するメトキシポリエチレングリコールを表すと理解され、特定の実施形態において、式Iで示される「n」は7.2である。「mPEG550」という用語は、平均分子量約550を有するメトキシポリエチレングリコールを表すと理解され、特定の実施形態において、式Iで示される「n」は11.8である。「mPEG750」という用語は、平均分子量約750を有するメトキシポリエチレングリコールを表すと理解され、特定の実施形態において、式Iで示される「n」は16.3である。
【0041】
特定の好ましいアルコキシ−ポリエチレングリコールとしては、Dow Chemical Companyから市販されている、Carbowax(商標)mPEG350、Carbowax(商標)mPEG550またはCarbowax(商標)mPEG750が挙げられる。mPEG350およびmPEG550はどちらも、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、グリセロールなどのアルコールおよび様々なオイルとすべての割合で混和性であり、かつ沸点約155℃を有する無色の液体である。アルコキシ−ポリエチレングリコールは他の名称で知られており、例えばメトキシ−ポリエチレングリコールは、モノ−メチルポリエチレングリコールおよびポリ(エチレングリコール)メチルエーテルとしても知られている。
【0042】
本明細書に記載のアルコキシ−ポリエチレングリコールのうちの1種または複数種を使用することによって、得られる医薬組成物を例えば、生体付着性、粘度および噴霧適性に関して最適化することができる。例えば、PEG200と等しい濃度のmPEG350は、治療薬をまだ可溶化することができるが、得られる組成物の粘度は低い。結果として、この代用は、低い分子量のPEG200と比較して、配合物が噴霧される場合に重要である噴霧適性に対して意外な正の効果を有する。
【0043】
B.治療薬
本発明の医薬組成物は、疎水性治療薬、親水性治療薬、およびその組み合わせからなる群から選択される1種または複数種の治療薬(生物活性物質とも呼ばれる)を含み得る。
【0044】
アルコキシ−ポリエチレングリコール賦形剤は意外なことに、多種多様な親水性および疎水性治療薬を可溶化かつ送達することができる。疎水性薬物は、水溶性をほとんど、または全く持たない。本明細書に記載の賦形剤を使用して、pH7および20℃で約1.0mg/mL未満、約0.5mg/mL未満、約0.3mg/mL未満、または約0.1mg/mL未満、または約0.01mg/mL未満の水溶性を有する治療薬を可溶化することができることが理解される。かかる治療薬は、哺乳動物、例えばヒトに投与する場合に治療的価値および他の価値を有するいずれかの薬剤であり、有機分子(例えば、分子量1,500g/mol未満または500g/mol未満を有する小分子薬)、タンパク質、ペプチド、免疫原(例えば、ワクチン、サイトカイン等)、栄養素、および化粧品(美容用薬品)が挙げられる。
【0045】
特定の実施形態において、治療薬は、鎮痛剤、抗炎症剤、抗不整脈剤、抗喘息薬、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固薬、抗うつ剤、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗真菌剤、降圧剤、抗マラリア剤、抗片頭痛薬、抗ムスカリン様作用薬、抗腫瘍薬、免疫抑制薬、抗原虫薬、抗甲状腺薬、抗不安薬、鎮静薬、催眠剤、神経弛緩薬、β遮断薬、強心薬、コルチコステロイド、利尿剤、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、抗ヒスタミン薬、ヒスタミン受容体拮抗薬、脂質調整剤、筋弛緩薬、硝酸塩および他の抗狭心症薬、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、性ホルモン、刺激薬、サイトカイン、ペプチドミメティック、ペプチド、タンパク質、トキソイド、血清、抗体、ワクチン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸およびペプチジル−核酸である。
【0046】
本発明の医薬組成物において使用することができる、疎水性治療薬の非限定的な具体的な例としては、以下の代表的な化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩、異性体、エステル、エーテルおよび他の誘導体、例えば:(1)アロキシプリン、オーラノフィン、アザプロパゾン、ベノリレート、カプサイシン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、レフルノミド、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、テトラヒドロカンナビノール、トラマドールおよびトロメタミンなどの鎮痛薬および抗炎症薬;(2)塩酸アミオダロン、ジソピラミド、酢酸フレカイニドおよび硫酸キニジンなどの抗不整脈剤;(3)ジロートン、ザフィルルカスト、モンテルカスト、およびアルブテロールなどの抗喘息薬;(4)バクロフェン、ベンザチンペニシリン、シノキサシン、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、デメクロサイクリン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、エチオナミド、フラゾリドン、グレパフロキサシン、イミペネム、レボフロキサシン、ロレフロキサシン、塩酸モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ニトロフラントイン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン、スパルフロキサシン、スピラマイシン、スルファベンズアミド、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、テトラサイクリン、トリメトプリムおよびトロバフロキサシンなどの抗菌剤;(5)アバカビル、アンプレナビル、デラビルジン、エファビレンツ、インジナビル、ラミブジン、ネルフィナビル、ネビラピン、リトナビル、サキナビル、およびスタブジンなどの抗ウイルス剤;(6)シロスタゾール、クロピドグレル、ジクマロール、ジピリダモール、ニクマロン、オプレルベキン、フェニンジオン、チクロピジン、およびチロフィバンなどの抗凝固薬;(7)アモキサピン、ブプロピオン、シタロプラム、クロミプラミン、塩酸マプロチリン、塩酸ミアンセリン、塩酸ノルトリプチリン、塩酸パロキセチン、塩酸セルトラリン、塩酸トラゾドン、マレイン酸トリミプラミンおよび塩酸ベンラファキシンなどの抗うつ薬;(8)アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、グリメピリド、ミグリトール、ピオグリタゾン、レパグリニド、ロシグリタゾン、トラザミド、トルブタミドおよびトログリタゾンなどの抗糖尿病薬、;(9)ベクラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、エトトイン、フェルバメート、フォスフェニトインナトリウム、ラモトリジン、メトイン、メトスクシミド、メチルフェノバルビトン、オキスカルバゼピン、パラメタジオン、フェナセミド、フェノバルビトン、フェニトイン、フェンスクシミド、プリミドン、スルチアム、塩酸チアガビン、トピラメート、バルプロ酸およびビガバトリンなどの抗てんかん薬;(10)アホテリシン、塩酸ブテナフィン、硝酸ブトコナゾール、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、ナイスタチン、硝酸スルコナゾール、オキシコナゾール、塩酸テルビナフィン、テルコナゾール、チオコナゾールおよびウンデセン酸などの抗真菌薬;(11)アムロジピン、ベニジピン、ベネゼプリル、カンデサルタン、カプトプリル、ダロジピン、塩酸ジリタゼム、ジアゾキシド、塩酸ドキサゾシン、エナラプリル、エポサルタン、メシル酸ロサルタン、フェロジピン、フェノルドパム、ホセノプリル、酢酸グアナベンズ、イルベサルタン、イスラヂピン、リシノプリル、ミノキシディル、塩酸ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、塩酸フェノキシベンザミン、塩酸プラゾシン、キナプリル、レセルピン、塩酸テラゾシン、テルミサルタンおよびバルサルタンなどの降圧剤;(12)アモジアキン、クロロキン、塩酸クロルプログアニル、塩酸ハロファントリン、塩酸メフロキン、塩酸プログアニル、ピリメタミンおよび硫酸キニーネなどの抗マラリア剤;(13)メシル酸ジヒドロエルゴタミン、酒石酸エルゴタミン、フロバトリプタン、マレイン酸メチセルギド、塩酸ナラトリプタン、マレイン酸ピゾチフェン、安息香酸リザトリプタン、コハク酸スマトリプタンおよびゾルミトリプタンなどの抗偏頭痛薬;(14)アトロピン、塩酸ベンズヘキソール、ビペリデン、塩酸エトプロパジン、ヒヨスチアミン、塩酸オキシフェンサイクリミンおよびトロピクアミドなどの抗ムスカリン様作用薬;(15)アミノグルテチミド、アムサクリン、アザチオプリン、ビカルタミド、ビサントレン、ブスルファン、カンプトセシン、クロラムブシル、シクロスポリン、ダカルバジン、エリプチシン、エストラムスチン、エトポシド、イリノテカン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ミコフェノール酸モフェチル、ニルタミド、パクリタキセル、塩酸プロカルバジン、シロリムス、タクロリムス、クエン酸タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、塩酸トポテカンおよびクエン酸トレミフェンなどの抗腫瘍薬および免疫抑制薬;(16)アトバクオン、ベンズニダゾール、クリオキノール、デコキナート、ジヨードヒドロキシキノリン、フロン酸ジロキサニド、ジニトルミド、フラゾリドン、メトロニダゾール、ニモラゾール、ニトロフラゾン、オルニダゾールおよびチニダゾールなどの抗原虫薬;(17)カルビマゾール、パラカルシトール、およびプロピルチオウラシルなどの抗甲状腺薬;ベンゾナテートなどの鎮咳薬;(18)アルプラゾラム、アミロバルビトン、バルビトン、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロムペリドール、ブロチゾラム、ブトバルビトン、カルブロマール、クロルジアゼポキシド、クロルメチアゾール、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロナゼパム、クロバザム、クロチアゼパム、クロザピン、ジアゼパム、ドロペリドール、エチナメート、フルナニソン、フルニトラゼパム、トリフルプロマジン、デカン酸フルペンチキソール、デカン酸フルフェンチキソール、デカン酸フルフェナジン、フルラゼパム、ガバペンチン、ハロペリドール、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、メプロバメート、メソリダジン、メタカロン、メチルフェニデート、ミダゾラム、モリンドン、ニトラゼパム、オランザピン、オキサゼパム、ペントバルビタール、パーフェナジンピモジド、プロクロルペラジン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、テマゼパム、チオリダジン、トリアゾラム、ゾルピデムおよびゾピクロンなどの抗不安薬、鎮静薬、催眠薬および神経弛緩薬;(19)アセブトロール、アルプレノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ピンドロールおよびプロプラノロールなどのβ遮断薬;(20)アムリノン、ジギトキシン、ジゴキシン、エノキシモン、ラナトシドCおよびメジゴキシンなどの強心薬;(21)ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、酢酸コルチゾン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオコルトロン、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンなどのコルチコステロイド;(22)アセタゾールアミド、アミロリド、ベンドロフルメサイアザイド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、エタクリン酸、フロセミド、メトラゾン、スピロノラクトンおよびトリアムテレンなどの利尿剤;(23)メシル酸ブロモクリプチン、マレイン酸リスリド、プラミペキソール、塩酸ロピニロールおよびトルカポンなどの抗パーキンソン病薬;(24)ビサコジル、シメチジン、シサプリド、塩酸ジフェノキシラート、ドンペリドン、ファモチジン、ランソプラゾール、ロペラミド、メサラジン、ニザチジン、オメプラゾール、塩酸オンダンセトロン、ラベプラゾールナトリウム、塩酸ラニチジンおよびスルファサラジンなどの胃腸薬;(25)アクリバスチン、アステミゾール、クロルフェニラミン、シンナリジン、セチリジン、フマル酸クレマスチン、シクリジン、塩酸シプロヘプタジン、デキスクロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、フェキソフェナジン、塩酸フルナリジン、ロラタジン、塩酸メクリジン、オキサトミドおよびテルフェナジンなどの抗ヒスタミン薬およびヒスタミン受容体拮抗薬;(26)アトルバスタチン、ベザフィブラート、セリバスタチン、シプロフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート、フルバスタチン、ゲムフィブロジル、プラバスタチン、プロブコールおよびシンバスタチンなどの脂質調整剤;(27)ダントロレンナトリウムおよび塩酸チザニジンなどの筋弛緩薬;(28)硝酸アミル、三硝酸グリセリン、イソソルビドジニトラート、イソソルビドモノニトラートおよ四硝酸ペンタエリスリトールなどの硝酸塩および他の抗狭心症薬;(29)カルシトリオール、カロチン、ジヒドロタキステロール、必須脂肪酸、非必須脂肪酸、フィトナジオール、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKなどの栄養剤;(30)コデイン、デキストロプロポキシフェン、ジアモルヒネ、ジヒドロコデイン、フェンタニル、メプタジノール、メタドン、モルヒネ、ヒドロモルホン、ナルブフィンおよびペンタゾシンなどのオピオイド鎮痛薬;(31)クエン酸クロミフェン、酢酸コルチゾン、ダナゾール、デヒドロエピアンドロステロン、エチニルエストラジオール、フィナステライド、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メストラノール、メチルテストステロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル、エストラジオール、共役エストロゲン、プロゲステロン、リメキソロン、スタノゾロール、スチルベストロール、テストステロンおよびチボロンなどの性ホルモン;および(32)アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、デクスフェンフルラミン、フェンフルラミンおよびマジンドールなどの刺激薬;およびベカプレルミン、塩酸ドネペジル、L−トリロキシン、メトキサレン、ベルテポルフィン、フィソスチグミン、ピリドスチグミン、塩酸ラロキシフェン、塩酸シブトラミン、クエン酸シルデナフィル、タクリン、塩酸タムスロシン、およびトルテロジンなどの他の薬;が挙げられる。
【0047】
特定の例示的な疎水性治療薬としては、クエン酸シルデナフィル、アムロジピン、トラマドール、セレコキシブ、ロフェコキシブ、オキサプロジン、ナブメトン、イブプロフェン、テルビナフィン、イトラコナゾール、ジロートン、ザフィルルカスト、シサプリド、フェノフィブラート、チザニジン、ニザチジン、フェキソフェナジン、ロラタジン、ファモチジン、パリカルシトール、アトバコン、ナブメトン、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルプロマジン、クロナゼパム、ジアゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ハロペリドール、ロラゼパム、ロルメタゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プソイドエフェドリン、テマゼパム、トリアゾラム、ゾルピデム、ゾピクロン、テトラヒドロカンナビノール、テストステロン、酢酸メゲストロール、レパグリニド、プロゲステロン、リメキソロン、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、テニポシド、パクリタキセル、プソイドエフェドリン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、フィナステリド、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、および薬学的に許容されるその塩、異性体および誘導体が挙げられる。疎水性治療薬のリストおよびその治療学的分類は単に説明的なものであることを認識されたい。所望の場合には、疎水性治療薬の混合物も使用することができることを理解されたい。
【0048】
医薬組成物において賦形剤としてアルコキシ−ポリエチレングリコールを使用する利点は、例えば、ロラゼパム、ミダゾラム、クロナゼパム、アルプラゾラムなどの高親油性物質およびベンゾジアゼピンに属する他の化合物ならびに水溶性物質、例えば膵臓ホルモンなどのペプチドおよびタンパク質を、ヒト対象に送達するために臨床的に適切な量(例えば、25〜300μL)で可溶化することができることである。比較として、臨床的に適切な量のミダゾラム、ロラゼパム、アルプラゾラム、ジアゼパムおよびクロナゼパムを少なくとも5mLの水に溶解しなければならない。
【0049】
アルコキシ−ポリエチレングリコール賦形剤は疎水性薬剤の送達に特に有用であるが、アルコキシ−ポリエチレングリコールは、様々な親水性治療薬を送達するために使用することもできる。特定の環境下でのアルコキシ−ポリエチレングリコールは、吸収部位での治療薬の持続時間を長くすることができ、それによって、最終的に送達される薬剤の量が増加する。例示的な親水性治療薬としては、親水性薬物(すなわち、従来の非ペプチド性薬物)、サイトカイン、ペプチド、タンパク質、ペプチドミメティック、トキソイド、血清、抗体、ワクチン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、および遺伝物質などの親水性高分子が挙げられる。親水性治療薬は、単独で、あるいは他の薬剤、例えば上述の疎水性治療薬または第2の異なる親水性治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0050】
限定されることなく、本発明の組成物および方法を用いて送達することができる例示的な親水性治療薬としては、以下の化合物ならびに薬学的に許容されるその塩、異性体、エステル、エーテルおよび他の誘導体、例えば:アカルボース;アシクロビル;アセチルシステイン;塩化アセチルコリン;アラトロフロキサシン;アレンドロネート;アルグルセラーゼ;;塩酸アマンタジン;アムベノニウム;アミホスチン;アミノカプロン酸;抗血友病因子(ヒト);抗血友病因子(ブタ);抗血友病因子(組換え);アプロチニン;アスパラギナーゼ;アテノロール;アトラクリウムベシレート;アジスロマイシン;アズトレオナム;BCGワクチン;バシトラシン;ベカプレルミン;ベラドンナ;塩酸ベプリジル;硫酸ブレオマイシン;カルシトニンヒト;サーモンカルシトニン;カルボプラチン;カペシタビン;硫酸カプレオマイシン;セファマンドールナファート;セファゾリンナトリウム;塩酸セフェピム;セフィキシム;セフォニシドナトリウム;セフォペラゾン;セフォテタン二ナトリウム;セフォタキシム;セフォキシチンナトリウム;セフチゾキシム;セフトリアキソン;セフロキシムアキセチル;セファレキシン;セファピリンナトリウム;コレラワクチン;絨毛性ゴナドトロピン;シドフォビル;シスプラチン;クラドリビン;臭化クリジニウム;クリンダマイシンおよびクリンダマイシン誘導体;シプロフロキサシン;クロンドロネート;コリスチンメタナトリウム;硫酸コリスチン;コルチコトロピン;コシントロピン;クロモリンナトリウム;シタラビン;ダルテパリンナトリウム;ダナパロイド;デフェロキサミン;デニロイキンディフチトクス;デスモプレシン;ジアトリゾ酸メグルミンおよびジアトリゾ酸ナトリウム;ジサイクロミン;ジダノシン;塩酸ドーパミン;ドルナーゼα;塩化ドキサクリウム;ドキソルビシン;エチドロン酸二ナトリウム;エラナプリラト(elanaprilat);エンケファリン;エノキサシン;エノキサパリンナトリウム;エフェドリン;エピネフリン;エポエチンアルファ;塩酸エスモロール;第IX因子;ファムシクロビル;フルダラビン;フルオキセチン;ホスカネットナトリウム;ガンシクロビル;顆粒球コロニー刺激因;顆粒球−マクロファージ刺激因子;成長ホルモン(ヒトまたはウシ);ゲンタマイシン;グルカゴン;グリコピロレート;ゴナドトロピン放出ホルモンおよびその合成類似体;GnRH;ゴナドレリン;グレパフロキサシン;ヘモフィルスB抱合体ワクチン;不活化A型肝炎ウイルスワクチン;不活化B型肝炎ウイルスワクチン;ヘパリンナトリウム;硫酸インジナビル;インフルエンザウイルスワクチン;インターロイキン2;インターロイキン3;インスリン(ヒト);インスリン(ブタ);インスリンNPH;インスリンアスパルト;インスリングラルギン;インスリンデテミル;インターフェロン−α;インターフェロン−β;臭化イプラトロピウム;イソフォスファミド(isofosfamide);日本脳炎ウイルスワクチン;ロイコボリンカルシウム;酢酸リュープロレリン;レボフロキサシン;リンコマイシンおよびリンコマイシン誘導体;ロブカビル;ロメフロキサシン;ロラカルベフ;マンニトール;麻疹ウイルスワクチン;髄膜炎菌ワクチン;メノトロピン;メフェンゾレートブロミド(mephenzolate bromide);メサラミン;メタンアミン;メトトレキセート;メトスコポラミン;塩酸メトホルミン;メトロプロロール(metroprolol);メズロシリンナトリウム;塩化ミバクリウム;おたふく風邪ウイルスワクチン;ネドクロミルナトリウム;臭化ネオスチグミン;ネオスチグミンメチル硫酸塩;ニューロンチン;ノルフロキサシン;酢酸オクトレオチド;オルパドロネート;オキシトシン;パミドロン酸二ナトリウム;臭化パンクロニウム;パロキセチン;ペフロキサシン;イセチオン酸ペンタミジン;ペントスタチン;ペントキシフィリン;ペリシクロビル(periciclovir);ペンタガストリン;フェントラミンメシレート;フェニルアラニン;サリチル酸フィゾスチグミン;ペストワクチン;ピペラシリンナトリウム;血小板由来成長因子(ヒト);多価肺炎球菌ワクチン;ポリオウイルスワクチン(生または不活化);硫酸ポリミキシンB;塩化プラリドキシム;プラムリンチド;プレガバリン;プロパフェノン;臭化プロパンテリン;臭化ピリドスチグミン;狂犬病ワクチン;リセドロネート;リババリン;塩酸リマンタジン;ロタウイルスワクチン;キシナホ酸サルメテロール;シンカリド;天然痘ワクチン;ソタロール;ソマトスタチン;スパルフロキサシン;スペクチノマイシン;スタブジン;ストレプトキナーゼ;ストレプトゾシン;塩化スキサメトニウム;塩酸タクリン;硫酸テルブタリン;チオペタ;チカルシリン;チルドロネート;チモロール;組織型プラスミノゲン活性化因子;TNFR:Fc;TNK−tPA;トランドラプリル;グルコン酸トリメトレキサート;トロスペクチノマイシン(trospectinomycin);トロバフロキサシン;塩化ツボクラリン;腫瘍壊死因子;生腸チフスワクチン;尿素;ウロキナーゼ;バンコマイシン;バラシクロビル;生水痘ウイルスワクチン;バソプレシンおよびバソプレシン誘導体;臭化ベクロニウム;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ワルファリンナトリウム;黄熱ワクチン;ザルシタビン;ザナミビル;ゾランドトロネート(zolandtronate);およびジドブジンが挙げられる。
【0051】
この配合物において投与することができる他の治療薬は、副腎ホルモン、コルチコステロイドおよびその誘導体、例えばACTHおよびその類似体、テトラコサクトリン、アルサクチド、コルチゾン、ヒドロコルチゾンアルコール、酢酸ヒドロコルチゾン、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンテルブテート、9−α−フルオロプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、リン酸デキサメタゾン、フルリソリド(flurisolide)、トキシコロールピバレート(toxicorol pivalate);塩酸ベンズフェタミン、塩酸クロルフェンテルミンなどの食欲抑制薬;塩酸テトラサイクリン、チロトリシン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、ロイコマイシン、ペニシリンおよびその誘導体などの抗生物質;抗アレルギー剤;モノクローナルまたはポリクローナル抗体などの抗体;抗コリン作動性薬;塩酸アミトリプチリン、塩酸イミプラミンなどの抗うつ薬;神経遮断薬などの制吐薬、例えばメトピマジン、ドンペリドンなどの腸の運動性に対する調節作用を有する制吐薬;抗ヒスタミン剤およびヒスタミン剤、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロロフェニラミン、ヒスタミン、マレイン酸プロフェンピリダミン、マレイン酸クロルプロフェンピリダミン、クロモグリク酸二ナトリウム、メクリジン;塩酸クロニジンなどの降圧剤;キモトリプシン、ブロメラインセラチオペプチダーゼなどの抗炎症剤(酵素);アセトアミノフェン、アスピリン、アミノピリン、フェニルブタゾン、コルヒチン、プロベネシドなどの抗炎症剤(非ステロイド);フルチカゾン、プレドニソロン、トライアムシナロンアセトニドなどの抗炎症剤(ステロイド性);アクチノマイシンCなどの抗腫瘍薬;塩酸クロルヘキシジン、ヘキシルレソルシノール、塩化デクアリニウム、エタクリジンなどの防腐剤;クロモグリク酸ナトリウム、塩酸イソプロテレノールなどの鎮咳去痰薬;インターフェロン(一般的な風邪の治療用のα−2インターフェロンなど)、安息香酸フェニル−p−グアニジノ、エンビロキシム等の抗ウイルスおよび抗癌剤;塩酸プロプラノロールなどのβ−遮断薬;第VII因子、第VIII因子などの血液凝固因子;ビタミンDなどの骨代謝制御剤;塩酸クレンブテロール、メシル酸ビトルテロールなどの管支拡張薬;ジギタリスなどの強心薬;心臓調節ホルモン、薬物および誘導体、例えばブラジキニン拮抗薬、心房性ナトリウム利尿ペプチドおよびその誘導体、例えばヒドララジン、アンギオテンシンII拮抗薬、ニトログリセリン、プロプラノロール、クロフィリウムトシレート;サルファチアゾール、ニトロフラゾンなどの化学療法薬;リドカイン、コカインなどの中枢神経刺激薬;ラシコルトン(lacicortone)、ヒドロコルチゾン、フルオシノロンアセトニドなどのコルチコステロイド;塩化リゾチーム、デキストラナーゼなどの酵素;セクレチン、サブスタンスPなどの消化管ホルモン;視床下部ホルモンおよびその誘導体、例えばLHRHおよび類似体(ナファレリン、ブセレリン、ゾラデックスなど)、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン);昇圧薬;ベンゾカインなどの局所麻酔薬;ジヒドロエルゴタミン、エルゴメトリン、エルゴタミン、ピゾチジンなどの片頭痛治療物質;膵臓ホルモンおよびその誘導体、例えばインスリン(六量体/二量体/単量体型);ニコチン、メタコリンなどの副交感神経作用薬;スコポラミン、アトピン(attopine)、イプラトロピウムなどの副交感神経遮断薬;アポモルヒネなどのパーキンソン病物質;脳下垂体ホルモンおよびその誘導体、例えば成長ホルモン(例えば、ヒト)、バソプレシンおよびその類似体(DDAVP、リプレッシン);プロスタグランジン、例えばPGAおよびその誘導体、PGEおよびその誘導体、PGEおよびその誘導体、PGFおよびその誘導体、ジノプロストトロメタモール;プロテアーゼ阻害剤、例えばシトレート、またはα−アンチトリプシン;性ホルモン、例えばエチニルエストラジオール、レボノルゲストレル、FSH、LH、LTH、エストラジオール−17−β、ノルエチンドロン;フェニレフリン、キシロメタゾリン、トラマゾリン、ドーパミン、ドブタミンなどの交感神経作用薬;グラニセトロンおよびラメルテオンなどの睡眠補助薬;ブロチゾラム、カマゼパム、クロラゼプ酸、クロキサゾラム、デロラゼパム、エスタゾラム、ロフラゼプ酸エチル、フルジアゼパム、フルタゾラム、ハラゼパム、ハロキサゾラム、ケタゾラム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルジアゼパム、オキサゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、テマゼパム、テトラゼパム、トフィソパムなどの精神安定薬;AIDSワクチン、パラインフルエンザウイルス、ポリオ、13型ライノウイルス、RSウイルスなどのワクチン;塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸トラマゾリンなどの血管収縮薬;塩酸パパベリン、サブスタンスP、血管作動性腸管ペプチド(VIP)などの血管拡張薬が挙げられる。
【0052】
アルコキシ−ポリエチレングリコールを含有する特定の例示的な配合物は、ペプチド薬物、例えばオキシトシン、バソプレッシン(デスモプレシン)、インスリン、カルシトニン、エルカトニン、シアノコバラミンB12、およびグルカゴン様タンパク質−1(GLP−1)、および有機小分子、例えばジノプロストン、ミソプロストール、アポモルヒネ、フェンタニル、メトクロプラミド、ブトルファノール、およびミダゾラムからなる群から選択される1種または複数種の治療薬も含有する。
【0053】
C.他の賦形剤
アルコキシ−ポリエチレングリコールおよび治療薬の他に、本発明の組成物は、吸収促進剤、緩衝剤、吸水性ポリマー、アルコール、脂質、浸透圧調整剤、pH調整剤、保存剤、噴射剤、界面活性剤、酵素阻害剤、親水親油バランス(HLB)を調節するための賦形剤および安定剤などの当業者に公知の他の多くの賦形剤を含み得ることを理解されたい。
【0054】
例示的な界面活性剤としては、例えばノノキシノール、オクトキシノール、tween、span、ラウリル硫酸ナトリウム、およびモノパルミチン酸ソルビタンが挙げられる。例示的な吸収促進剤としては、例えば、胆汁酸塩およびその誘導体、フシジン酸およびその誘導体、オレイン酸、レシチン、リゾレシチン、ドデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、モノドデカン酸スクロース、n−ドデシル−β−D−マルトピラノシド、ペクチン、キトサン、α−、β−およびγ−シクロデキストリンおよびその誘導体、ペグ化カプリル酸−/カプリン酸グリセリドおよびその誘導体、例えばSoftigenおよびLabrasolが挙げられる。例示的な吸水性ポリマーとしては、例えば範囲200〜7500の平均分子量を有するポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはその混合物、またはテトラエチレングリコールおよびペンタエチレングリコールなどの単一のエチレングリコールが挙げられる。例示的なアルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。例示的な脂質としては、例えば植物油、ダイズ油、ラッカセイ油、ヤシ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、モノグリセリド、ジグリセリド、モノ/ジグリセリド、モノ/ジ/トリグリセリドが挙げられる。例示的な浸透圧調整剤としては、例えば、グリセロール、ブドウ糖、マルトース、ショ糖、マンニトール、キシリトール、種々の塩(例えば、塩化ナトリウム)が挙げられる。例示的なpH調整剤としては、例えば緩衝剤、酸(例えば、硝酸、リン酸、または酢酸)が挙げられる。例示的な保存剤としては、例えばパラオキシ安息香酸メチル、フェニルエチルアルコールまたは安息香酸が挙げられる。例示的な噴射剤としては、例えばブタンまたは窒素などの空気置換(air displacement)が挙げられる。配合物のHLBを調節する賦形剤としては、例えば、Tween20、25、40、45、65、85、Span20−80、Brij30−98、アカシアが挙げられる。例示的な酵素阻害剤としては、例えばアプロチニンおよび他のペプチダーゼ阻害剤、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFP)、carbopolが挙げられる。例示的な安定剤としては、例えばシクロデキストリンが挙げられる。
【0055】
本明細書に記載のアルコキシ−ポリエチレングリコール、例えば、メトキシ−ポリエチレングリコールは、特定の環境下にて可溶性が低い治療薬を可溶化することができるが、治療薬の溶解性を高める更なる化合物を含有させることが役立つ場合があることを理解されたい。かかる可溶化剤の例としては、例えば、アルコールおよびポリオール、例えばエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびその異性体、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、transcutol、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペグ化−モノ/ジ−カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、シクロデキストリン(例えば、α−、β−、またはγ−シクロデキストリン)およびシクロデキストリン誘導体;平均分子量約200〜約6000を有するポリエチレングリコールのエーテルまたはテトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(商品名TetraglycolでBASF社から市販されているグリコフロール);界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、リノール酸、モノオレイン、レシチン、リゾレシチン、デオキシコレート、タウロデオキシコレート、グリコケノデオキシコレート、ポリオキシエチレンX−ラウリルエーテル(Xは9〜20である)、タウロ−24,25−ジヒドロフシジン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、p−t−オクチルフェノキシポリオキシエチレン、N−ラウリル−β−D−マルトピラノシド、l−ドデシルアザシクロヘプタン−2−アゾン;2−ピロリドン、2−ピペリドン、カプロラクタム、N−アルキルピロリドン、N−ヒドロキシアルキルピロリドン、N−アルキルピペリドン、N−アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、およびポリビニルピロリドンなどのアミド;プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、酢酸プロピレングリコール、二酢酸プロピレングリコール、カプロラクトンおよびその異性体、バレロラクトンおよびその異性体、β−ブチロラクトンおよびその異性体などのエステル;および当技術分野で公知の他の可溶化剤、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(Arlasolve DMI(ICI))、N−メチルピロリドン(Pharmasolve(ISP))、モノオクタノイン、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名TranscutolでGattefosse社から市販)が挙げられる。
【0056】
その他の好ましい可溶化剤としては、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、ポリエチレングリコール200−1000、PEG300、PEG400、Transcutol、およびジメチルイソソルビド、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、グリコフロールおよびプロピレングリコールが挙げられる。一般的に、存在する場合、可溶化剤は、約0.1%(w/v)〜約50%(w/v)、約1%(w/v)〜約40%(w/v)または約2%(w/v)〜約25%(w/v)の量で存在する。さらに、液体医薬組成物は、液体組成物に対して、水を例えば約2%(v/v)〜約99%(v/v)、約10%(v/v)〜約95%(v/v)、または約20%(v/v)〜約90%(v/v)含有し得る。
【0057】
上述のように、組成物は保存剤を含有し得る。さらに、またはその代わりに、組成物を滅菌することができる。滅菌は、濾過滅菌、高圧滅菌、電離線の照射、例えば、ガンマ放射線、紫外線照射、および化学滅菌によって達成することができる。一実施形態において、滅菌組成物は、少なくとも約10の滅菌保証レベルを有する。得られる液体組成物は、20℃で30日間またはさらに好ましくは6ヶ月間保管した後に、治療薬の5%、4%、3%、2%または1重量%未満しか分解しないほど、室温で安定性であることが好ましい。
【0058】
さらに、配合物は、甘味料または着香剤も含み得る。例示的な甘味料または着香剤としては、例えば、アカシアシロップ剤、アセスルファームカリウム、アネトール、アニス油、芳香族エリキシル剤、アスパルテーム、ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドエリキシル剤、シクロデキストリン、カラウェー、カラウェー油、ショウズク油、ショウズクの種子、ショウズク酒精剤、ショウズクチンキ、サクランボジュース、サクランボシロップ剤、シナモン、シナモン油、シナモン水、クエン酸、クエン酸シロップ剤、チョウジ油、ココア、ココアシロップ剤、コエンドロ油、ブドウ糖、エリオジクチオ、エリオジクチオ流エキス、エリオジクチオシロップ剤、芳香族化合物、酢酸エチル、エチルバニリン、ウイキュウ油、ショウガ、ショウガ流エキス、ショウガオレオレジン、グルコース、糖、マルトデキストリン、グリセリン、カンゾウ、カンゾウエリキシル剤、カンゾウエキス、カンゾウ純粋エキス、カンゾウ流エキス、カンゾウシロップ剤、ハチミツ、イソアルコリック−エリキシル、ラベンダー油、レモン油、レモンチンキ、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、サリチル酸メチル、メントール、ナツメグ油、橙皮油、エリキシル剤、橙皮、油、橙花油、橙花水、オレンジ油、オレンジピール、苦味薬、オレンジピール甘味剤、チンキ、オレンジ酒精剤、オレンジシロップ剤、ペパーミント、ペパーミント油、ペパーミント酒精剤、ペパーミント水、フェニルエチルアルコール、キイチゴ果汁、キイチゴシロップ剤、ローズマリー油、バラ油、バラ水、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、サルサパリラシロップ剤、サルサパリラ化合物、ソルビトール液剤、スペアミント、スペアミント油、ショ糖、スクラロース、シロップ剤、タイム油、トルーバルサム、トルーバルサムシロップ剤、ウインターグリーン油、バニラ、バニラチンキ、バニリン、セイヨウミザクラシロップ剤、キシリトール、またはその組み合わせが挙げられる。
【0059】
さらに、配合物は任意に、矯味剤を含有し得る。例示的な矯味剤としては、例えばシクロデキストリン、シクロデキストリンエマルジョン、シクロデキストリン粒子、シクロデキストリン複合物、またはその組み合わせが挙げられる。
【0060】
賦形剤および添加剤の上記のリストは決して完全ではなく、医薬製剤で使用され、かつ局所的および非経口的配合物において現在認められている、化学物質のGRAS(一般に安全と認められたもの)リストから他の賦形剤および添加剤を当業者が選択することができることを理解されたい。
【0061】
本発明の例示的な液体組成物は、例えば、活性成分(例えば、ミダゾラム)、メトキシ−ポリエチレングリコール(例えば、mPEG350)40%(v/v)〜70%(v/v)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)0%(v/v)〜20%(v/v)、プロピレングリコール0%(v/v)〜10%(v/v)、およびエタノール0%(v/v)〜5%(v/v)を含有する。本発明の他の例示的な液体組成物は、mPEG350 50%(v/v)〜70%(v/v)、プロピレングリコール1%(v/v)〜4%(v/v)、およびエタノール1%(v/v)〜4%(v/v)に溶解された活性成分を含有する。
【0062】
本発明の組成物を製造するために組み合わされる治療薬、アルコキシ−ポリエチレングリコールおよび他の賦形剤それぞれの選択および量は、組成物の最終用途、意図される治療および投与形式に応じて異なるであろうことを理解されたい。液体組成物が最終的に患者に投与される場合、所定の賦形剤の量は、別段の指定がない限り、当業者によって容易に決定される、生物学的に許容可能な量に制限されることが好ましい。さらに、本発明の液体組成物は、当業者に公知の技術を用いて配合することができることを理解されたい。配合物の詳細な考察および薬学的に許容される担体、安定剤等の選択は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed.),Mack Publishing Company,Eaton,PAに記述されている。
【0063】
治療薬およびアルコキシ−ポリエチレングリコールが本発明の液体組成物において組み合わされるが、互いに共有結合しない。特定の実施形態において、本発明の液体組成物は、キトサンを含有しないか、または実質的に含有しない。特定の実施形態において、本発明の組成物は、粉末状で製造することができる。
【0064】
II 投与様式および薬物動態学
本発明の組成物は、哺乳動物、例えばヒトの粘膜または皮膚に1種または複数種の治療薬を送達するのに特に有用である。本発明の医薬製剤が投与される粘膜は、治療薬が適用される哺乳動物のいずれかの粘膜、例えば鼻(例えば、鼻粘膜を介して)、膣、眼(例えば、眼粘膜を介して)、耳(例えば、鼓膜を介して)、口(例えば、口腔粘膜を介して)、肺(例えば、肺粘膜を介して)、または直腸(例えば、直腸粘膜を介して)であることができる。鼻、口(口腔粘膜、舌、舌下または硬口蓋)または膣の粘膜に治療薬を送達するのに特に有用である。
【0065】
本発明の組成物は、治療薬の鼻腔内送達において特に有用であることを理解されたい。組成物を鼻粘膜に適用する場合、適用される医薬組成物の量は一般に、範囲1〜1000μL、好ましくは700μL以下、さらに好ましくは50〜150μL/鼻孔、最も好ましくは約100μL/鼻孔である。
【0066】
鼻腔内に投与した場合、組成物は、鼻粘膜と接触する噴霧粒のプルーム(plume)を生成するスプレー装置によって送達されることを理解されたい。例えば、Pfeiffer of America,Princeton,NJ;Valois of America,Inc.,Greenwich,CT;またはBecton Dickinson,Franklin Lakes,NJから入手可能な市販のスプレー装置を用いて送達することができることが企図される。さらに、これらの装置は、患者または世話をする人により容易に操作することができ、使用後、装置にほとんどまたは全く配合物が残らない。
【0067】
かかる装置は、単回投与または複数回投与量の所望の配合物で充填することができる。医薬組成物を収容する容器およびその密閉手段は滅菌可能である。医薬組成物と接触している装置の部品は少なくとも、滅菌することができる構造で構成かつ組み立てられるべきである。単回用量または複数回用量を有する例示的な送達デバイスは、例えば米国特許第4,946,069号明細書;米国特許第5,307,953号明細書;米国特許第6,948,492号明細書;および米国特許第6,446,839号明細書に記載されている。個々の装置を包装し、滅菌し、輸送することができる;その代わりとして、輸送および保存包装全体を一度に滅菌することができ、残りの用量単位の無菌に影響を及ぼすことなく、投薬のために装置を個々に取り出すことができる。
【0068】
鼻腔内の粘膜上皮は、吸入された粉塵、アレルゲンおよび微生物に対して重要な防御機構を提供する多くの毛状の繊毛で覆われている。粘液線毛クリアランスが咽頭に向かう異質粒子および過剰な粘液を除去するために、鼻腔に投与された非吸収物質の通常の半減期は約15分である。この理由から、吸収は迅速に、好ましくは0.5〜20分以内に起こることが好ましい。しかしながら、本発明では、本発明の生体付着性のために、好ましい吸収は、0.5〜300分以内(例えば、ワクチンおよび生物学的製剤)、好ましくは0.5〜60分(例えば、大分子)、さらに好ましくは0.5〜20分、例えば投与後2、3、4、5、10、15または20分以内に起こる。例えば、対象に鼻腔内投与する場合、治療薬は、治療薬を投与して30、25、20、15、10、8、5、3または2分以内に対象の血液においてピーク濃度(Tmax)を有するように、組成物を配合することができる。
【0069】
ヒトへの投与に加えて、本発明の組成物を用いて、動物、例えばペット、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、およびモルモット;家畜、例えば、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウシ、およびニワトリに治療薬を送達することができる。
【0070】
明細書全体を通して、組成物が特定の成分を有する、含有する、または含むと記載されている場合、組成物は、記載の成分から本質的になる、または記載の成分からなることも企図される。同様に、プロセスが特定のプロセス段階を有する、含有する、または含むと記載されている場合、プロセスは、記載のプロセス段階から本質的になる、または記載の成分からなることも企図される。別段の指定がない限り、本発明が実施可能なままである限り、段階の順序または作業実施の順序は重要ではない。さらに、別段の指定がない限り、2つ以上の段階または作業を同時に行うことができる。
【実施例】
【0071】
本発明は、例示的なものとしてみなされ、かつ添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない、以下の実施例を参照してさらに詳細に説明される。
【0072】
実施例1−例示的なロラゼパム含有配合物
この実施例において、超音波を使用して、ロラゼパム10mgをmPEG350 2mLに溶解し、ロラゼパム5mg/mLを含有する溶液が得られる。適用中、次いで適用後1分間、仰臥位で保たれた雄のニュージーランドホワイトウサギの各鼻腔内に得られた組成物50μLを投与する。エッペンドルフ型ピペットを各適用に使用する。投与後、次いで、0、2、5、10、15、30および60分の時点で耳辺縁静脈から血液試料を採取し、ロラゼパム濃度を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定する。次いで、鼻腔内投与によるロラゼパム送達の薬物動態学を静脈内投与によるロラゼパム送達の薬物動態学と比較する。鼻腔内投与されたロラゼパムの薬物動態学は、静脈内投与されたロラゼパムの薬物動態学に匹敵するであろうことが考えられる。
【0073】
実施例2−例示的なミダゾラム含有配合物
この実施例において、超音波を使用して、ミダゾラム10mgをmPEG350 2mLに溶解し、ミダゾラム5mg/mLを含有する溶液が得られる。適用中、次いで適用後1分間、仰臥位で保たれた雄のニュージーランドホワイトウサギの各鼻腔内に得られた組成物50μLを投与する。次いで、投与後、0、2、5、10、15、30および60分の時点で耳介辺縁静脈から血液試料を採取し、ミダゾラム濃度をHPLCによって決定する。次いで、鼻腔内投与によるミダゾラム送達の薬物動態学を静脈内投与によるミダゾラム送達の薬物動態学と比較する。鼻腔内投与されたミダゾラムの薬物動態学は、静脈内投与されたミダゾラムの薬物動態学に匹敵するであろうことが考えられる。
【0074】
実施例3−例示的なミダゾラム配合物の薬物動態学
この実施例では、ポリエチレングリコールおよびプロピレンを含有する対照配合物に匹敵する薬物動態学的特性を示すメトキシ−ポリエチレングリコールを含有する様々な配合物が記述されている。対照配合物に匹敵する薬物動態学的特性を有することに加えて、メトキシ−ポリエチレングリコール配合物は、対照配合物よりも低い粘度を有した。
【0075】
表1に、第1試験配合物の組成を示し、表2に第2試験配合物の組成を示し、表3に対照配合物の組成を示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
試験配合物および対照配合物はそれぞれ、ミダゾラム50mg/mLを含有した。製造後、交差試験法において各配合物に対して、イヌ(イヌ3匹/セット)の右鼻孔に0.1mL中のミダゾラム5mgを鼻腔内送達した。投与前に、かつ投与後0.03、0.08、0.16、0.25、0.5、0.75、1、2、および4時間でイヌから血液を採取し、血中のミダゾラム濃度をHPLCによって測定した。薬物動態学的特性を表4にまとめる。
【0080】
【表4】

【0081】
この結果から、イヌに鼻腔内投与した場合、試験配合物は、対照配合物に匹敵する薬物動態学を生じたことが実証されている。しかしながら、試験配合物は、対照配合物よりも低い粘度を有した。より低い粘度は、より良いスプレーパターン特性と相関する。
【0082】
実施例4−例示的な更なるメトキシ−ポリエチレングリコール含有配合物
この実施例では、特定の鼻腔内配合物にメトキシ−ポリエチレングリコールを組み込む特典が記述されている。表5には、メトキシ−ポリエチレングリコールおよびPEG400を含有する配合物を示し、表6には、PEG400を含有せずメトキシ−ポリエチレングリコールを含有する配合物を示し、表7は、PEG400を含有せずメトキシ−ポリエチレングリコールを含有する配合物(エタノールが減らされている)を示し、表8は、PEG400を含有するがメトキシ−ポリエチレングリコールを含有しない対照配合物が示されている。
【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
【表7】

【0086】
【表8】

【0087】
プロピレングリコール、PEG400、mPEG350、およびエタノールを混合することによって、表5の配合物を製造した。次いで、混合物にミダゾラムを添加し、混合に続いてミダゾラムが溶解した後に、水を配合物に添加した。表6および7における配合物を以下のとおり製造した。ミダゾラムを容器内で計量し、エタノールを添加して活性成分を湿らせた。混合した後、mPEG350の約65%を添加し、得られた混合物を2分間混合した。その後、更なる有機相を添加した。mPEG350の残りの35%を水と混合し、次いで、透明な溶液が生成されるまで、希釈されたmPEG350をミダゾラム溶液に混合しながら少しずつ添加した。得られた配合物の粘度およびスプレーパターンを試験した。
【0088】
粘度計(Brookfield DV−II PRO)を使用して、得られた配合物の粘度を25℃で試験した。メトキシ−ポリエチレングリコールを含有しない対照配合物(表8)の粘度は約42cPであることが判明したのに対して、表5の試験配合物の粘度は約30cPであることが判明し、表6の試験配合物の粘度は約23cPであることが判明した。対照配合物に対する試験配合物の還元粘度によって、より再現可能なスプレーパターンを形成することが可能となった。
【0089】
Proveris spray view装置を使用して、表5および6の2つの試験配合物によって形成されたスプレーパターンを試験した。得られたスプレーパターンのパラメーターは、配合物の粘度が減少するにしたがって、再現性が高くなることが判明した。
【0090】
さらに、Pfeiffer社から市販の噴霧装置を使用して、表7および8に示す配合物に相当するプラシーボ配合物(ミダゾラムなし)100μLを3人の健康な試験対象に鼻腔内投与した。メトキシ−ポリエチレングリコールを含有する、表7に相当するプラシーボ配合物は、表8に相当するプラシーボ配合物と比較して顕著な味が少なかった。
【0091】
これらの総合的な結果から、mPEG350は、例えばミダゾラムを経鼻投与するのに適した賦形剤であることが実証されている。
【0092】
実施例5−メトキシ−ポリエチレングリコール含有配合物の噴霧適性
この実施例から、メトキシ−ポリエチレングリコールをベースとする配合物は、ポリエチレングリコールに対して優れた噴霧流を生成することが実証されている。Sigma−Aldrich Chemie GmbH(St.Louis,MO,USA)からの100%メトキシ−ポリエチレングリコール350(MPEG350)およびCroda Chemicals Europe Ltd.(Goole,UK)からの100%ポリエチレングリコール300(PEG300)を含有する溶液をPfeiffer 20mLボトル(Pfeiffer34473)に入れ、Valois社またはPfeiffer社からの特定のポンプに取り付けた(表8参照)。各スプレー装置を吸取り紙のシートの下25cmに置き、得られたスプレーで湿らせた紙の端から端までの直径として、噴霧適性を測定した。その結果を表9にまとめる。
【0093】
【表9】

【0094】
この結果から、PEG300と比較してmPEG350の噴霧適性に明らかな違いがあることが示されている。PEG300を使用した場合、必要な噴霧角度が達成されないのに対して、mPEG350を使用して、臨床的に適切な噴霧角度を達成することができる。
【0095】
参照による援用
本明細書に参照される特許文献および学術文献のそれぞれの開示内容全体が、すべての目的のために参照により援用される。
【0096】
等価物
本発明は、その趣旨および必須の特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。したがって、上記の実施形態は、本明細書に記載の本発明に対する限定ではなく、あらゆる点で説明的なものであるとみなされるべきである。このように、本発明の範囲は、上記の明細書ではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価の意味および範囲内にあるすべての変更が、本発明に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬と、式I:
R−O−(CHCHO)−H (I)
(式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルであり;
nは、約1〜約25の範囲の数である)
によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含む液体医薬組成物。
【請求項2】
前記治療薬が、1500g/mol未満の分子量を有する有機化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
可溶性が低い治療薬と、式I:
R−O−(CHCHO)−H (I)
(式中、Rは、(C−C)アルキルであり;
nは、約1〜約25の範囲の数である)
によって表されるアルコキシ−ポリエチレングリコールと、を含む液体医薬組成物。
【請求項4】
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、前記組成物の約0.5%(v/v)〜約70%(v/v)を占める、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、前記組成物の約1%(v/v)〜約60%(v/v)を占める、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、前記組成物の約5%(v/v)〜約50%(v/v)を占める、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記治療薬が、前記組成物の約0.001%(w/v)〜約20%(w/v)を占める、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記治療薬が、前記組成物の約0.1%(w/v)〜約10%(w/v)を占める、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
水をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記水が、組成物の約10%(v/v)〜約95%(v/v)を占める、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
緩衝剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
保存剤をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
温度20℃の前記組成物が、範囲約1.5cP〜約60cPの粘度を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
温度20℃の前記組成物が、範囲約5cP〜約25cPの粘度を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、範囲約4.5〜約8.5のpHを有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物が、範囲約5.5〜約7.5のpHを有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物が無菌である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物が、少なくとも約10の滅菌保証レベルを有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記治療薬の1重量%未満が、20℃で30日間保存後に分解する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記治療薬の1重量%未満が、20℃で6ヶ月間保存後に分解する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記組成物が、対象に鼻腔内投与されると、前記治療薬が治療薬の投与後30分以内に対象の血液中でピーク濃度(Tmax)を有するように配合されている、請求項1〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記組成物が、対象に鼻腔内投与されると、前記治療薬が治療薬の投与後10分以内に対象の血液中でピーク濃度(tmax)を有するように配合されている、請求項1〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
Rはメチルである、請求項1〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
nが3〜15である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、mPEG350、mPEG550、またはその組み合わせである、請求項1〜24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記アルコキシ−ポリエチレングリコールが、メトキシ−トリエチレングリコール(m3EG)、メトキシ−テトラエチレングリコール(m4EG)、メトキシ−ペンタエチレングリコール(m5EG)、メトキシ−ヘキサエチレングリコール(m6EG)、メトキシ−ヘプタエチレングリコール(m7EG)、メトキシ−オクタエチレングリコール(m8EG)、メトキシ−ノナエチレングリコール(m9EG)、メトキシ−デカエチレングリコール(m10EG)、メトキシ−ウンデカエチレングリコール(m11EG)、メトキシ−ドデカエチレングリコール(m12EG)、メトキシ−トリデカエチレングリコール(m13EG)、またはメトキシ−テトラデカエチレングリコール(m14EG)である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記治療薬が、500g/mol未満の分子量を有する、請求項1〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記治療薬が、pH7および20℃で約0.3mg/mL未満の水溶性を有する、請求項1〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記治療薬が、pH7および20℃で約0.1mg/mL未満の水溶性を有する、請求項1〜28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記治療薬がベンゾジアゼピンである、請求項1〜29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記治療薬がミダゾラムである、請求項30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
表1、2、5、6、または7の配合物を含む、医薬組成物。
【請求項33】
哺乳動物に治療薬を投与する方法であって、哺乳動物の粘膜表面に、請求項1〜32のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記粘膜表面が、鼻粘膜、舌下粘膜、口腔粘膜、肺粘膜、眼粘膜、または直腸粘膜である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記粘膜表面が鼻粘膜である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記治療薬が、治療薬の投与後30分以内に哺乳動物の血液中でピーク濃度(Tmax)を有する、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記治療薬が、治療薬の投与後10分以内に哺乳動物の血液中でピーク濃度(Tmax)を有する、請求項33〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記医薬組成物が、約1μL〜約1000μLの量で投与される、請求項33〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬組成物が、約50μL〜約300μLの量で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33〜39のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−516696(P2010−516696A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546547(P2009−546547)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/051466
【国際公開番号】WO2008/089426
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509202798)
【出願人】(509202787)ユニバーシティー オブ アイスランド (1)
【出願人】(509202846)
【Fターム(参考)】