説明

泡噴出器

【課題】構造の複雑化や煩雑な操作を伴うことなしに泡の形態を適宜変更できる泡噴出器を提供する。
【解決手段】容器口部に装着されるベースと、内容液を圧送するポンプと、ポンプを駆動させるステムと、ステムの先端開口を通して配置された調圧弁と、調圧弁の収納空間からの内容液を通す開口部が形成された中間部材と、中間部材を通って圧送された内容液が噴射されるチップ7と、噴出口Aにメッシュ部材9が設けられたノズル8とを備え、チップ7は、貫通孔Aが形成されていると共に、複数のスピン溝7gが形成されたものであって、中間部材は、隔壁背面7fと接触する端面を形成し、スピン溝7gと一致するように複数のスピン溝6gが形成されていると共に、周壁7aを回転可能に保持するものであって、ノズル8は、中間部材の凸部周りを回転することで、スピン溝の流路面積を可変とするものであって、把持用のカバー8cを一体に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡パターンの切り替えが可能な泡噴出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステムをL字形に折り曲げて支柱部と延長部とで構成した液体噴出器としては、例えば、容器の口部に固定されるベースから起立するアームに揺動可能に保持されるシェルを有して当該シェルがステムを覆うように延在することで把持部を形成すると共に当該ステムに駆動結合することでポンプ動作を生起させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−249187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液体噴出器は、直噴や噴霧を目的にするものにすぎず、泡噴射を目的とするものではない。
【0005】
これに対し、泡噴出器としては、噴射ノズルの出側直近に設けられたメッシュ壁部に噴出に係る液体を衝突させることによってその泡噴射を可能にするものが存在する。
【0006】
ところが、この種の噴出器は通常、生成される泡の形態が一定である。このため、粗い状態、あるいはより細かい状態(クリーミーな泡)への変更を適宜可能とする使い勝手の良好な可変タイプの噴出器の提供が望まれているところ、それに対応するには構造が複雑になる等の不具合を生じることから形態可変タイプの泡噴出器に関しては未だ開発途上にあるのが現状であった。
【0007】
本発明の目的とするところは、構造の複雑化や煩雑な操作を伴うことなしに泡の形態を適宜変更できる泡噴出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の泡噴出器は、容器の口部に装着されるベースと、このベースの内側に配置されて容器の内容液を吸引、加圧及び圧送するポンプと、このポンプを駆動させる支柱部を有してその先端が屈曲した延長部に形成されたステムと、ステムの先端開口を通して内側に配置された内容液の調圧弁と、ステムと共に調圧弁の収納空間を形作り当該収納空間からの内容液を通す開口部が形成された中間部材と、この中間部材に設けた凸部に保持される凹部を有して当該凹部と凸部の間を通って圧送された内容液が貫通孔を通して噴射されるチップと、このチップの貫通孔を外界に通じさせる注出部を有して当該注出部の先端に形成された噴出口にメッシュ部材が設けられたノズルとを備え、
チップは、中間部材の凸部に嵌合する周壁を有し、当該周壁の一端を封止する隔壁に貫通孔が形成されていると共に、
その隔壁の背面に、貫通孔に向かって延在して当該貫通孔に合流する複数のスピン溝が形成されたものであって、
中間部材は、その凸部の先端面がチップの隔壁の背面と接触する端面を形成し、当該端面に、チップの隔壁の背面に形成したスピン溝と一致するように複数の補助スピン溝が形成されていると共に、
凸部の端面周縁より延在する外周面が、チップの周壁を回転可能に保持するものであって、更に、
ノズルは、チップに固定される周壁を有して中間部材の凸部周りを回転することで、スピン溝の流路面積を可変とするものであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、互いに合さるスピン溝は、同一の深さで構成されたもののみとすることができるのは勿論、深さが同一のものを1組として、組毎に深さを替えて構成することもできる。この場合、深さの組み合わせを増やすことで、泡の形態をきめ細かく選択することができる。また、本発明によれば、ノズルと一体に把持用のカバーを設けることができる。
【0010】
本発明に従えば、ステムを介してポンプを駆動させる手段としては、限定を設けないが、例えば、ベースから起立するアームに揺動可能に保持されることでポンプ動作を生起させる操作レバーとすることができる。また、チップ及びノズルは、別体として構成することも、一体に構成することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用者がノズルを把持して周方向に沿って、当該ノズルを噴出口周りに時計回り又は反時計回りに回転させると、チップの凹部背面に形成されたスピン溝が中間部材の凸部端面に形成されたスピン溝と一致し、又は、一致することなく互い違いになる。
【0012】
スピン溝が互いに一致する位置を選択する場合は、流路面積が比較的大きくなるため、チップの貫通孔を通して圧送される内容物の圧力は比較的低い。このため、貫通孔から噴射される内容液は、噴霧角度が小さく、粗い霧を噴射させることになる。従って、かかる位置を選択すれば、粗い霧が大きく拡散することなく、メッシュ部材を通ることになるため、きめ粗い泡を狭範囲に噴射できる。
【0013】
これに対し、スピン溝が互いにずれた位置を選択する場合は、流路面積が小さくなるため、チップの貫通孔を通して圧送される内容物の圧力は比較的高い。このため、貫通孔から噴射される内容液は、噴霧角度が大きく、細かい霧を噴射させることになる。従って、かかる位置を選択すれば、細かい霧が大きく拡散しながら、メッシュ部材を通ることになるため、きめ細かい泡を広範囲に噴射できる。
【0014】
従って、本発明によれば、構造の複雑化や煩雑な操作を伴うことなしに泡の形態を適宜変更できる泡噴出器を提供することができる。
【0015】
加えて、ノズルと一体に把持用のカバーを設ければ、ノズルの回転を容易に行うことができるため、良好な操作性をもって泡の形態を適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一形態である、トリガー式泡噴出器を示す断面図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、第1の泡パターンにおけるノズルを示す要部正面図及び、同パターン時におけるノズル周辺を示す要部断面図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、第2の泡パターンにおけるノズルを示す要部正面図及び、同パターン時におけるノズル周辺を示す要部断面図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、同形態に係る、ノズルを示す正面図及び、同形態に係る、チップに設けた凹部及び中間部材に設けた凸部の分解状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一形態である、トリガー式泡噴出器を詳細に説明する。
【0018】
1は、図示せぬ容器の口部に装着されるベースである。ベース1は、口部を取り囲む周壁1aを有し、その内側に、当該口部にねじ付けるためのねじ部1sが形成されている。また、周壁1aには、環状の肩部1bを介してガイド筒1cが一体に起立する。更に、周壁1aには、アーム部1dが一体に起立する。
【0019】
2は、ベース1の内側に配置されて容器の口部を通って容器の内部に向かって垂下するポンプである。ポンプ2は、ガイド筒1cの内側に固定される本体2a1を有してフランジ2a2を介して周壁1aの内側に抜け止め保持されるシリンダ2aと、このシリンダ2aの内側に摺動可能に配置され、その往復運動により容器内の内溶液を吸引、加圧及び圧送するピストン2bと、このピストン2bをガイドするピストンガイド2cと、このピストンガイド2cの下端に設けたフィン2c1との間でピストン2bを弾性保持するリターンスプリングS1と、シリンダ2aの吸引口A1に配置され、シリンダ2a内に吸引された内容液3の逆流を阻止する逆止弁2eとを備える。
【0020】
3は、ポンプ2を駆動させる支柱部3aを有してその先端が屈曲した延長部3bに形成されたステムである。ステム3は、その支柱部3aがガイド筒1cの内側を通ってピストン2に嵌合保持されることで、ポンプ2を駆動させることができる。
【0021】
4は、ステム3の先端開口を通して内側に配置された調圧弁である。調圧弁4は、延長部3bの内側を進退可能なガイドロッド5に対し、リターンスプリングS2を介して弾支されている。
【0022】
6は、ステム3と共に調圧弁4の収納空間S2を形作り当該収納空間S2からの内容液を通す開口部A2が形成された中間部材である。中間部材6には、凸部6aが一体に設けられている。凸部6aは、図4等に示すように、その外周面6f1が円筒形を形作り、その端面6f2が平坦な面を構成する。端面6f2には、図4等の如く、その外周縁を切り欠くように、複数の補助スピン溝6gが形成されている。また、中間部材6には、凸部6aを取り囲む筒壁6bが一体に設けられている。
【0023】
7は、図2等に示すように、凸部6aの外周面6f1に嵌合する周壁7aを有し、当該周壁7aの一端を隔壁7bで封止されることで、凹部nが形成されるチップである。チップ7は、隔壁7bに貫通孔A3が形成されている。これにより、チップ7は、その凹部nに凸部6aが嵌合することで、凹部nと凸部6aとの間を通って圧送された内容液が貫通孔A3を通して噴射する。
【0024】
また、隔壁7bの背面7f2には、貫通孔A3を含む領域に円形の合流凹部7nが形成されていると共に、この合流凹部7nに向かって複数のスピン溝7g2が貫通孔A3に通じるように形成されている。更に、周壁7aの内周面7f1には、スピン溝7g2に通じる複数の長溝7g1が形成されている。
【0025】
また、チップ7は、隔壁7bの外縁から周壁7aを取り囲むように外筒7cが一体に延在すると共に、外筒7cの内側に全周に亘って設けた突起7dが、筒壁6bの外側に全周に亘って設けた突起6dに嵌合することで、互いに周方向に回転可能に抜け止め保持されている。加えて、中間部材6の凸部6も、その外周面6f1によって、チップ7の周壁7aの内周面7f1を周方向に回転可能に保持する。
【0026】
8は、チップ7にその前方から被せられるノズルである。ノズル8は、チップ7を取り囲む周壁8aを有し、この周壁8aの内側にチップ7を固定保持する。更に、周壁8aは、中間部材6を取り囲むように延在し、この周壁8aの内周面に全周に亘って設けられた環状突起8dが、中間部材6の外周面に全周に亘って設けられた環状突起6pによって、回転可能に抜け止め保持されている。
【0027】
また、ノズル8は、チップ7の貫通孔A3を外界に通じさせる注出部8sを有し、当該注出部8s内に形成された噴出口A4にメッシュ部材9が設けられている。注出部8sの内側に形成された通路rは、メッシュ部材9が設けられた噴出口A4を通して外界に通じる一方、空気取り入れ口8hを通しても外界に通じる。
【0028】
更に、本形態に係る、ノズル8には、周壁8aから広がるシールド状のカバー8cが一体に設けられている。これにより、使用者は、カバー8cを把持することで、ノズル8を中間部材6に対して容易に回転させることができる。
【0029】
10は、ベース1から起立するアーム部1dの先端部分に、軸部P1を基点に揺動可能に保持されるシェル10aを有して当該シェル10aがステム3を覆うように延在することで、把持部10bを形成する操作レバーである。操作レバー10は、シェル10aの内周面がステム3に対して軸部P2を基点に揺動可能に保持されることで、ステム3と駆動結合される。これにより、操作レバー10の牽曳を繰り返すことで、ステム3の上下動をきっかけにポンプ動作を生起させる。
【0030】
本形態によれば、使用者がノズル8のカバー8cを把持して周方向に沿って、当該ノズル8を噴出口周りに時計回り又は反時計回りに回転させると、チップ7の凹部7n背面7f2に形成されたスピン溝7g2が中間部材6の凸部6a端面6f2に形成されたスピン溝6gと一致し、又は、一致することなく互い違いになる。
【0031】
スピン溝6g,7g2が互いに一致する位置を選択する場合は、図3(b)に示すように、スピン溝6g,7g2間の流路面積が比較的大きくなるため、チップ7の貫通孔A3を通して圧送される内容物の圧力は比較的低い。このため、貫通孔A3から充填空間C内に噴射される内容液は、噴霧角度が小さく、粗い霧となる。従って、かかる位置を選択すれば、粗い霧が大きく拡散することなく、メッシュ部材9を通ることになるため、きめ粗い泡を狭範囲に噴射できる。
【0032】
これに対し、スピン溝6g,7g2が互いにずれた位置を選択する場合は、図2(b)に示すように、スピン溝6g,7g2間の流路面積が小さくなるため、チップ7の貫通孔A3を通して圧送される内容物の圧力は比較的高い。このため、貫通孔A3から充填空間C内に噴射される内容液は、噴霧角度が大きく、細かい霧となる。従って、かかる位置を選択すれば、細かい霧が大きく拡散しながら、メッシュ部材9を通ることになるため、きめ細かい泡を広範囲に噴射できる。
【0033】
従って、本形態によれば、構造の複雑化や煩雑な操作を伴うことなしに泡の形態を適宜変更できるトリガー式泡噴出器を提供することができる。
【0034】
加えて、本形態のように、ノズル8に、把持用のカバー8cを設ければ、ノズル8の回転を容易に行うことができるため、良好な操作性をもって泡の形態を適宜変更することができる。
【0035】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したものであるが、用途に応じて様々に設計変更することができる。例えば、本形態では、互いに合さるスピン溝6g,7g2は、同一の深さで構成されたもののみで構成されているが、深さが同一のものを1組として、組毎に深さを替えて構成することもできる。この場合、深さの組み合わせを増やすことで、泡の形態をきめ細かく選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、黴取り剤や洗剤、衣料用糊剤、住居用ワックス、整髪剤、芳香剤等の液体を入れた容器において、容器内の液体を泡状にして噴出させる泡噴出器として適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ベース
2 ポンプ
2a シリンダ
2b ピストン
2c ピストンガイド
3 ステム
3a 支柱部
3b 延長部
4 調圧弁
5 ガイドロッド
6 中間部材
8 ノズル
8c 把持用カバー
8s 注出部
9 メッシュ部材
10 操作レバー
1 リターンスプリング
2 リターンスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着されるベースと、このベースの内側に配置されて容器の内容液を吸引、加圧及び圧送するポンプと、このポンプを駆動させる支柱部を有してその先端が屈曲した延長部に形成されたステムと、ステムの先端開口を通して内側に配置された内容液の調圧弁と、ステムと共に調圧弁の収納空間を形作り当該収納空間からの内容液を通す開口部が形成された中間部材と、この中間部材に設けた凸部に保持される凹部を有して当該凹部と凸部の間を通って圧送された内容液が貫通孔を通して噴射されるチップと、このチップの貫通孔を外界に通じさせる注出部を有して当該注出部に形成された噴出口内にメッシュ部材が設けられたノズルとを備え、
チップは、中間部材の凸部に嵌合する周壁を有し、当該周壁の一端を封止する隔壁に貫通孔が形成されていると共に、
その隔壁の背面に、貫通孔に向かって延在して当該貫通孔に合流する複数のスピン溝が形成されたものであって、
中間部材は、その凸部の先端面がチップの隔壁の背面と接触する端面を形成し、当該端面に、チップの隔壁の背面に形成したスピン溝と一致するように複数の補助スピン溝が形成されていると共に、
凸部の端面周縁より延在する外周面が、チップの周壁を回転可能に保持するものであって、更に、
ノズルは、チップに固定される周壁を有して中間部材の凸部周りを回転することで、スピン溝の流路面積を可変とするものであることを特徴とする泡噴出器。
【請求項2】
請求項1において、ノズルと一体に把持用のカバーを設けたことを特徴とする泡噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251221(P2011−251221A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125385(P2010−125385)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】