説明

泡回収装置及び泡回収システム

【課題】脱硫後の使用済海水面上に浮遊している泡を回収し、泡を除去した使用済海水のみを周辺海域に排水できるようにした泡回収装置及びこの泡回収装置を備えた泡回収システムを提供する。
【解決手段】海水を吸収剤として使用する排煙脱硫装置の脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路1に設置され、使用済海水の水面に浮遊する泡4を分離除去して回収する泡回収装置20である。泡回収装置20は、装置全体が水路1内で浮いた状態に保持される浮体構造であり、該浮体構造には、水面上に浮遊する泡4を海水から分離除去する泡スクープ部23と、泡スクープ部23で分離除去した泡4を回収する貯蔵凹部24とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置の排水処理に係り、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置の排水から泡を除去する泡回収装置及び泡回収システムに関する
【背景技術】
【0002】
従来、石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、ボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「ボイラ排ガス」と呼ぶ)は、ボイラ排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO
)等の硫黄酸化物(SOx)を除去してから大気に放出される。このような脱硫処理を施す排煙脱硫装置の脱硫方式としては、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水法が知られている。
【0003】
このうち、海水法を採用した排煙脱硫装置(以下、「海水脱硫装置」と呼ぶ)は、吸収剤として海水を使用する脱硫方式である。この方式では、たとえば略円筒のような筒形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給することにより、海水を吸収液として湿式ベースの気液接触を生じさせて硫黄酸化物を除去している。
上述した脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水(使用済海水)は、たとえば図2に示すように、水路(Sea Water Treatment System;SWTS)1内を流れて排水される際、水路1の底面に設置したエアレーションノズル2から気泡3を流出させるエアレーションによって脱炭酸(爆気)される。
【0004】
上述した脱炭酸によりpH値の調整がなされる際には、微細なエアレーション気泡3、脱硫塔内において海水中に取り込まれたボイラ排ガス中の成分(煤塵等)、及び海水中に含まれる有機物等の相互作用により、水路1内を流れる使用済海水の水面上には大量の泡4が発生する。この泡4は、容易に消えないだけでなく有害物質も含んでいるので、水路1から海水とともに周囲の海域へそのまま放出されることは景観上及び環境汚染上好ましくない。
【0005】
水面上の泡除去に類似または関連する従来技術としては、水面上に浮遊する油を回収するための油回収装置が知られている。この油回収装置は、水面に浮遊して油回収装置を支持する浮揚手段と、油の吸引手段と、集油口から油を集油して吸引手段へ導く集油手段とを備えている。(たとえば、特許文献1参照)
また、回収槽に浮遊している塗装スラッジ等をスムーズに回収可能な装置として、スラッジ等の回収装置が提案されている。(たとえば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開2004−351279号公報(図1等を参照)
【特許文献2】特開平6−296911号公報(図1等を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した水路1内を流れて周辺海域へ排水される脱硫後の使用済海水は、水面上に浮遊する泡4が景観悪化や環境汚染の原因になる。このため、このような問題を解消するためには、水面上の泡4を海水から適切に分離除去して回収するための装置が必要となる。すなわち、脱硫後の使用済海水面上に浮遊している泡4を適切に分離除去して回収し、泡4のない使用済海水のみを周辺海域に排水できるようにした泡回収装置及びこの泡回収装置を備えた泡回収システムの開発が望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、脱硫後の使用済海水面上に浮遊している泡を回収し、泡を除去した使用済海水のみを周辺海域に排水できるようにした泡回収装置及びこの泡回収装置を備えた泡回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明は、海水を吸収剤として使用する排煙脱硫装置の脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路に設置され、前記使用済海水の水面に浮遊する泡を分離除去して回収する泡回収装置であって、
装置全体が前記水路内で浮いた状態に保持される浮体構造であり、該浮体構造には、水面上に浮遊する泡を海水から分離除去する泡スクープ部と、泡スクープ部で分離除去した泡を回収する貯蔵凹部とが設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
このような泡回収装置によれば、装置全体が水路内で浮いた状態に保持される浮体構造であり、該浮体構造には、水面上に浮遊する泡を海水から分離除去する泡スクープ部と、泡スクープ部で分離除去した泡を回収する貯蔵凹部とが設けられているので、水路内を流れる使用済海水の水位が変動しても、浮力により泡スクープ部は常に水面上の略同一位置に保持される。このため、泡スクープ部を泡と水面との境界位置に保持することで、泡スクープ部は使用済海水から泡を確実に分離させて貯蔵凹部に回収することができる。
【0009】
本発明は、海水を吸収剤として使用する排煙脱硫装置の脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路に設置され、前記使用済海水の水面に浮遊する泡を分離除去して回収する泡回収装置を備えている泡回収システムであって、
装置全体が前記水路内で浮いた状態に保持される浮体構造とされ、該浮体構造に、水面上に浮遊する泡を海水から分離除去する泡スクープ部と、泡スクープ部で分離除去した泡を回収する貯蔵凹部とが設けられている泡回収装置と、回収した泡を脱水乾燥する泡処理装置と、前記貯蔵凹部から回収した泡を吸引して前記泡処理装置まで搬送する吸引搬送装置と、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0010】
このような泡回収システムによれば、装置全体が水路内で浮いた状態に保持される浮体構造とされ、該浮体構造には、水面上に浮遊する泡を海水から分離除去する泡スクープ部と、泡スクープ部で分離除去した泡を回収する貯蔵凹部とが設けられている泡回収装置と、泡回収装置により回収した泡を脱水乾燥するための泡処理装置と、泡回収装置の貯蔵凹部に回収した泡を吸引して泡処理装置まで搬送する吸引搬送装置と、を具備して構成したので、浮力により泡スクープ部を泡と水面との境界位置に保持することで、泡スクープ部が使用済海水から泡を確実に分離させて貯蔵凹部に回収する。貯蔵凹部に回収した泡は、吸引搬送装置により泡処理装置まで搬送された後、脱水乾燥して泡成分と海水成分とに分離される。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によれば、脱硫塔から排水された後に水路を流れて排水される使用済海水の水面上から泡を適切に分離除去して回収し、泡のない使用済海水のみを周辺海域に排水できるようになるので、水面上に浮遊する泡が景観を悪化させる問題や環境汚染の問題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る泡回収装置及び泡回収システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す泡回収システム10は、使用済海水を流して排水する水路(SWTS)1に設置されることにより、使用済海水の水面に浮遊する泡4を分離除去して回収する泡回収装置20を備えている。この泡回収装置20は、装置全体が水路1内で浮力により浮いた状態に保持される浮体構造とされ、図示の構成では、水路1内を流れる使用済海水の流れ方向(図中の矢印F)において、上流側の前部フロート21と下流側の後部フロート22とが一体に連結された構成とされる。なお、上述した使用済海水は、たとえば海水を吸収剤として使用する排煙脱硫装置(海水脱硫装置)の脱硫塔から排出された脱硫後の海水である。
【0013】
泡回収装置20の浮体構造は、水面上に浮遊する泡4を海水から分離除去する泡スクープ部23が前部フロート21に設けられ、泡スクープ部23で分離除去した泡を回収する貯蔵凹部24が前部フロート21と後部フロート22との間に設けられている。
泡回収装置20は、水路1の幅Wと略同じ幅寸法を有する浮体であり、水路1内の所定位置から水流に流されて移動しないようにするため、浮力による上下方向の移動を許容した状態で固定されている。すなわち、浮体構造の泡回収装置20は、水路1内の水位変動に応じた上下方向の移動は可能であるものの、水路1内を流れる使用済海水の流れ方向については移動しないよう所定位置に支持されている。
【0014】
泡スクープ部23は、使用済海水の流れ方向において泡回収装置20の上流側に設けられている。この泡スクープ部23は、浮体構造の略全幅にわたって先端23aの断面形状を鋭角にした部分であり、先端23aの高さ方向位置は、水面と略同じか、水面よりやや低い水中となるように設定されている。
貯蔵凹部24は、水路1の形状に合わせて平面視を矩形状とした泡貯蔵空間である。この凹部空間24は、前部フロート21及び後部フロート22の壁面21a,22aと、前部フロート21及び後部フロート22を連結する一対の側壁24a,24bとにより前後左右の壁面が形成され、さらに、これら前後左右の壁面下部を連結して底面を塞ぐことにより、上面が開口する凹部空間となる。
【0015】
泡回収システム10は、上述した構成の泡回収装置20の貯蔵凹部24に回収した泡4を搬送して処理するため、先端を貯蔵凹部24内に配設した配管11及び配管11の適所に介在させたフレキシブルチューブ12により形成される搬送流路を備えている。搬送流路を形成する配管11の他端側には吸引搬送装置13が連結され、さらに、吸引搬送装置13の吐出側には泡処理装置14が設けられている。
【0016】
上述した吸引搬送装置13には、たとえばエジェクタポンプやバキュームポンプ等のポンプが使用される。
また、泡処理装置14には、回収した泡4を脱水処理して泡成分と海水とに分離させる遠心分離器等が使用される。ここで分離された海水は周辺海域に排水して戻され、泡成分については乾燥処理して固形物とされる。なお、この固形物は、施設内で再利用したり、埋設処理される。
すなわち、泡回収システム10は、水路1上に配置された浮体構造(水上設備)の泡回収装置20に加えて、貯蔵凹部24から回収した泡4を吸引して泡処理装置14まで搬送する吸引搬送装置13と、貯蔵凹部24に回収した泡4を脱水乾燥する泡処理装置14とを具備した陸上設備とにより構成されている。
【0017】
以下、上述した構成の泡回収装置20及び泡回収システム10の作用を泡の回収処理手順とともに説明する。
脱硫塔から排水された脱硫後の使用済海水は、水路1を矢印Fの方向へ流れていく。水路1を流れる使用済海水の水面には泡4が浮遊しており、この泡4が泡回収装置20に到達すると、使用済海水と泡4との境界部分に泡スクープ部23の先端23aが入り込んで分離する。このとき、泡回収装置20が浮体構造であるため、泡スクープ部23と使用済海水面との位置関係は、水面変動に係わらず略一定に維持される。
【0018】
この結果、使用済海水は前部フロート21の下面に沿って導かれるので、泡回収装置20の下方を通過して流れていく。一方、泡4は泡スクープ部23の上面を通過して流れるので、泡スクープ部23の下流側に配置された貯蔵凹部24内に落下して回収される。
貯蔵凹部24に回収された泡4は、吸引搬送装置13を運転することにより吸引され、配管11及びフレキシブルチューブ12を通って泡処理装置14に搬送される。なお、フレキシブルチューブ12は、水面変動に応じて上下する泡回収装置20に配管11が追従できるようにしたものである。
【0019】
こうして泡処理装置14に搬送された泡4は、海水と泡成分とに分離される。分離後の海水は、泡4がない状態で周辺海域に排水される。一方、分離後の泡成分は乾燥処理により固形物となり、施設内で再利用したり、あるいは、適所に埋設処理される。
従って、脱硫塔から排水された後に水路1を流れて排水される使用済海水の水面上から泡4を適切に分離除去して回収し、泡4のない使用済海水のみを周辺海域に排水できるようになるので、水面上に浮遊する泡4が景観を悪化させる問題や環境汚染の問題を解決することができる。
【0020】
ところで、上述した泡回収装置20及び泡回収システム10は、使用済海水を排水する脱硫塔毎に設けてもよいし、複数の脱硫塔から排水された使用済海水を1つの水路1に合流させてまとめた位置に設けてもよい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る泡回収装置及び泡回収システムの一実施形態を示す図であり、(a)は泡回収装置を側面から見た断面に陸上設備の構成を加えた図、(b)は(a)の泡回収装置を示す平面図である。
【図2】従来技術を示す側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 水路(SWTS)
4 泡
10 泡回収システム
13 吸引搬送装置
14 泡処理装置
20 泡回収装置
21 前部フロート
22 後部フロート
23 泡スクープ部
23a 先端
24 貯蔵凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を吸収剤として使用する排煙脱硫装置の脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路に設置され、前記使用済海水の水面に浮遊する泡を分離除去して回収する泡回収装置であって、
装置全体が前記水路内で浮いた状態に保持される浮体構造であり、
該浮体構造には、水面上に浮遊する泡を海水から分離除去する泡スクープ部と、泡スクープ部で分離除去した泡を回収する貯蔵凹部とが設けられていることを特徴とする泡回収装置。
【請求項2】
海水を吸収剤として使用する排煙脱硫装置の脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路に設置され、前記使用済海水の水面に浮遊する泡を分離除去して回収する泡回収装置を備えている泡回収システムであって、
装置全体が前記水路内で浮いた状態に保持される浮体構造とされ、該浮体構造に、水面上に浮遊する泡を海水から分離除去する泡スクープ部と、泡スクープ部で分離除去した泡を回収する貯蔵凹部とが設けられている泡回収装置と、
回収した泡を脱水乾燥する泡処理装置と、
前記貯蔵凹部から回収した泡を吸引して前記泡処理装置まで搬送する吸引搬送装置と、
を具備して構成したことを特徴とする泡回収システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−200620(P2008−200620A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40458(P2007−40458)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】