説明

泡密度判定方法および泡密度判定装置

【課題】飲料用容器内の泡の密度をチンダル効果を利用して判定する方法および装置。
【解決手段】光源によって、集光光束を泡の中に放射する。光束は泡において屈折し、拡散した光線が泡の表面に見えるようになる。このような光のスポットの輪郭を測定することによって、泡の密度を断定することができる。それを目的として、既存の測定手段に結合されている既存の充填レベル測定手段に、1つまたは複数のレーザーを組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による泡密度判定方法およびその方法のための請求項5の前提部分による装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料充填システムにおいては、特に二酸化炭素を含んでいる飲料を飲料用容器(例えば瓶・ボトル)に充填するとき、泡の層がしばしば形成される。泡は、飲料の種類によって異なるが、多かれ少なかれ形成される。特にビールの充填時には、しばしば多量の泡が形成される。泡が安定するまで、すなわち、泡に蓄えられている液体量(liquid quantity)が解放されるまでには、通常ではいくらか時間がかかる。飲料用容器内の液体量をチェックするため、充填レベルが測定される。しかしながら、泡が形成されることにより、充填直後に充填レベルを正確に判定することは、不可能ではないにしても困難であり、なぜなら、充填レベルを判定するためには実際には泡が安定するまで待たなければならないためである。泡に蓄えられている液体を、泡の寸法のみに基づいて判定する方法では、形成されている泡の密度が変化するため誤差が生じ、したがって、蓄えられる液体量は、飲料の種類に依存するのみならず、容器ごとに変わる。
【0003】
さらには、酸素感応性の飲料(oxygen-sensitive beverage)(例えばビール)を充填する場合、栓(closer)の手前の充填口に滅菌水の微細な噴射を注入すること(いわゆるHDE法)が一般的である。この工程中に発生する泡が、充填レベルより上に残っている酸素に置き換わる。正しく機能していることを確認またはチェックするためには、工程中に形成される泡の密度に関する情報を認識することも望ましい。
【0004】
一般的な方法(例えば、高周波(HF)、IR偏向、IR吸収)では、泡中の液体量を判定することはできない。これらの方法は、異なる泡の構造を検出できないという欠点を有する。
【0005】
泡を測定する方法は知られているが、これらの方法では、泡の分解速度を判定することができるにすぎない。そのうちの一つの方法においては、泡の中に光線を放射し、反対側において泡から出る光を測定装置によって検出する。この工程時、光線および測定装置を泡の層の周囲に回転させる。しかしながら、この方法では、泡の密度を正確に判定することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、例えば、泡が安定した後の結果としての充填レベルを計算する、あるいは一般的に泡の形成を監視できるようにする目的で、泡に蓄えられている液体量を検出することのできる方法および装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための方法は、請求項1の特徴を備えている。液体を充填した直後に形成される泡、または以降の打栓(closing)の前に意図的に発生させる泡の中に、光線を放射する。この工程において、光線は泡を通り抜けて拡散する。泡の密度を判定するには、泡の中に光線によって生じる光のスポットの輪郭を判定し、この輪郭によって泡の密度を断定することができる。
【0008】
この場合、本方法は、泡によって光線の拡散が生じる効果を利用する。この工程においては、泡の密度の高さが異なると、光線の拡散(すなわち発散)が異なる。多くの液体量を蓄えている高密度の泡では、光線が強く拡散する。逆に、泡に蓄えられている液体が少ない(泡の密度が低いことを意味する)場合には、拡散が弱い。
【0009】
この場合、観察される光の拡散は、チンダル効果とも称される。この効果は、液体中または気体中に粒子が浮遊しており、粒子の大きさが光の波長と同程度(約100〜1000nm)である場合に起こる。光は、粒子(この場合には1つまたは複数の泡の壁)において屈折し、光のこの拡散によって、光線は媒体から側方に拡散する。拡散によって、側面からも光線が見える。
【0010】
容器の外側から光のスポットの輪郭を判定し、格納されているデータと比較することが有利である。発泡性飲料は、通常では透明なガラス瓶またはプラスチックボトルに充填される。したがって、市販されているわずか数mwの能力範囲内の、特に集束レーザー(focusing laser)によって発生させることができる光線を、容器の外側から泡に導くことができる。したがって、光のスポットの輪郭を検出する測定装置も、ボトルの外側に配置される。
【0011】
泡の密度の判定精度をさらに高めるため、何本かの光線、特に光束(light bundle)によって泡の密度を判定することができる。泡の密度は泡の範囲全体にわたって一定ではないことが知られており、したがって、単一測定の場合には誤差が生じうる。光線は、形成される光のスポットが重なり合わずに輪郭を明確に識別できるように泡に照射する。これに代えて、パルス幅の異なるレーザー(differently pulsed lasers)を採用することもでき、これによって、たとえ重なり合う光のスポットも識別することができ、それらに基づいて密度を判定することができる。
【0012】
さらには、光線によって発生する光のスポットを、少なくとも1つの測定装置によって判定する。この測定装置は、飲料用ボトル内の泡の高さを判定する目的にも使用されるものであり、したがって、この測定装置は泡全体の高さをすでに検出しているものである。1台の測定装置によって、光線の方向に応じて、いくつかの光のスポットを検出し、光線の各領域の密度を判定することが可能である。しかしながら、何台かの測定装置を使用してすべての光のスポットが検出されるように、何本かの光線を方向付けることもできる。
【0013】
本工程において泡の中の検出される液体量によって、容器内の予測される充填レベル、あるいは一般的に泡の質または密度を、検出することができる。
【0014】
上述した目的を達成するための装置は、請求項5の特徴を備えている。したがって、測定装置が、光線によって泡に生じる光のスポットの輪郭を検出できるように具体化されている。この目的のため、本装置は、充填される容器の領域に配置されている光源および測定装置を備えている。輪郭によって泡の密度を断定することができ、これにより、泡の密度を単純な手段によって判定することができる。
【0015】
本発明の有利なさらなる発展形態によると、測定装置、特にカメラは、側面から光のスポットを測定するため、入力される光線の側方に配置されている。屈折によって光線の拡散が生じ、これにより、光線がその軸線の側方から泡の中に見えるようになる。光線は泡の密度に応じて拡散するため、光のスポットは、泡における外形、サイズ、および明るさが変化する。カメラによって、光線の輪郭または拡散した光線の外形を容易に検出することができる。輪郭とは、この場合、光線に沿って、光線の中心から光線の方向に直角な両側の方に、明るさと絶対的な明るさの値とが減少することを意味する。簡単な評価においては、例えば、拡散した光線の外形の幅に対する長さの比である。
【0016】
さらなる有利な実施形態によると、光線は、好ましくはパルスレーザーまたは類似する集束光源によって発生させる。レーザーは、くっきりした集束光線を放射し、このような光線では、さらなる光学的集束化を行わずに光のスポットの輪郭を良好に測定することができる。
【0017】
レーザーは、カメラの周波数に合わせてトリガーすることができ、これは有利である。したがって、泡の個々の写真を撮影するのみならず、フィルムのように断続的または連続的な写真を撮影することも可能である。
【0018】
本発明のさらなる有利な実施形態によると、いくつかの光源と測定装置とが、容器の側方に配置されている。たとえ1回の泡の形成においても泡の密度が変化するため、泡の複数の異なる領域を測定できるようにいくつかの光源を配置することは、測定の精度において有用である。この場合、光源は、泡の高さに沿って縦方向に並んで配置されていることが有利である。これに代えて、一平面上に光源を配置することもでき、したがって、2つ以上の側面からそれぞれ1つの光束によって泡に照射する。一方で、カメラは、通常では泡の大きな領域が検出されるように設計されており、したがって、縦方向に並んで、もしくは横方向に並んで、またはその両方であるように配置されているいくつかの光源と、それらによって生成される光のスポットとを、1台のカメラによって検出することが可能である。この場合、光のスポットの輪郭を正確に判定するため、1枚の写真に記録されたいくつかの光のスポットを分離する。
【0019】
測定装置は、光線の軸線の側方に、もしくは軸線に平行に、またはその両方として配置されている。光のスポットは、光線の軸線の側方に泡から現れるため、測定装置は、光線の軸線の側方に配置されている。この場合、測定装置が光線に対して垂直に配置されているかは重要ではない。必要なことは、光のスポット、または光のスポットの輪郭が測定装置によってつねに検出されるようにすることのみである。
【0020】
本装置は、泡によって蓄えられている液体量を、測定装置によって測定される光のスポットの輪郭の格納データを比較することによって計算するコンピュータ、を備えていることが有利である。
【0021】
好ましいさらなる発展形態によると、コンピュータはメモリを備えており、このメモリには、容器および液体に関するデータ、特に、容器、好ましくはボトルネックの寸法および材料厚さと、液体の品質とを格納することができる。これらのデータおよび情報は、容器に充填する前に収集して格納しておく。外部的な(すなわち容器の外側からの)測定であることにより、容器の曲率および材料厚さが光のスポットの測定に影響するため、対応するデータが事前に格納されていれば、結果を判定するうえで容器の曲率および材料厚さを考慮することができる。同様に、泡の測定高さと、容器の既知の体積とによって、この領域の泡層の体積を判定することができる。コンピュータは、光のスポットの輪郭を判定するための画像処理プログラムを備えている。カメラによって提供されるデータが画像処理プログラムによって処理され、したがって、光のスポットの(例えば面積単位での)正確なサイズを判定することができる。泡の高さの計算についても同様であり、画像処理プログラムと充填量とによって判定することができる。したがって、画像処理プログラムによって、泡の密度について断定することができる。光のスポットが重なり合っている場合、またはその後に写真が撮影される場合にも、画像処理プログラムによって分析することができる。
【0022】
さらには、充填レベルを制御するための既存のカメラ装置に本装置を組み込むことが可能であり、これは有利である。したがって、充填レベルの制御用として充填システムにすでに組み込まれている既存のカメラシステムを、時間および労力をほとんどかけずに改造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光源が側方に配置された状態の、飲料用容器の上部領域の側面図
【図2】光源および測定装置が側方に配置された状態の、飲料用容器の平面図
【図3】本発明を説明するための概略的な図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0025】
図1には、飲料用容器の上部領域を示してある。この容器は、円錐状に傾斜したボトルネック11を有する飲料用ボトル10である。ボトルネック11は、厚くなっている開口領域12において終わっている。飲料用ボトル10は、飲料業界、特にビール業界においてしばしば採用されている、ネック部の細い市販のボトルである。
【0026】
図示した実施形態においては、ボトルネック11の領域に、レーザー13の形におけるいくつかの光源が側方に配置されている。2つのレーザー13それぞれは、一平面内に存在している。全体では、縦方向に並んで配置されている3つの平面内に6つのレーザー13が配置されている。したがって、ボトルネック11は、少なくとも開口領域12の下の領域においてレーザー13によって囲まれており、これらのレーザー13は、飲料用ボトル12の軸線に沿って配置されている。
【0027】
一平面内に配置されているレーザー13は、円周方向に互いに隔てられた状態に位置している。すなわち、レーザー13からそれぞれ放出される光束14は、軸線方向には重ならない。光束の軸線は、図示した実施形態においては、対応する平面内において互いに約120゜隔てられた状態に位置している。一平面内に配置されている2つのレーザー13の配置状況は、図2に示してある。
【0028】
図2は、2つのレーザー13が側方に配置された状態の、飲料用ボトル10の平面図を示している。さらに、カメラの形における測定装置15が、2つのレーザー13の平面内に、飲料用ボトル10の側方に配置されている。通常、測定装置15は、ボトルネック11の領域全体がカバーされるように飲料用ボトル10に対して配置されている。すなわち、縦方向に並んで配置されている、レーザー13の複数の平面が、1つの測定装置15によって検出される。したがって、縦方向および横方向に並置されているいくつかのレーザーが、1つの測定装置15に割り当てられている。しかしながら、これに代えて、各レーザー13に、または複数のレーザー13を有する一平面に、1つの測定装置15を割り当てることができる。
【0029】
図2には、飲料用ボトル10および飲料に関するデータを格納することのできるメモリを備えているコンピュータ16をさらに示してある。計算のため、例えば、ボトル10、特にボトルネックの寸法と、ボトル10の壁厚とに関するデータが格納されている。さらには、飲料自体に関するデータを格納することもでき、飲料の特性を用いることにより、高さ全体にわたってより正確な内挿または外挿を行って垂直方向の密度プロファイルを作成することができる。格納するデータは、経験値、試験値、または以前の測定値に基づくことができる。さらには、コンピュータは画像処理プログラムを備えている。画像処理プログラムによって、光のスポット17a,17bの輪郭を判定することができる。
【0030】
以下では、本発明による方法について、図3を参照しながらさらに詳しく説明する。充填時にボトルネック11の領域に形成される泡層は液体量を含んでおり、泡が安定した後、この液体量によって飲料用ボトル10内のレベルが上昇する。充填の直後にすでに泡に蓄えられている液体量を推測できるように、光のスポット17aまたは17bを発生させる、側方に配置されているレーザー13によって、数μsec〜数msecの光線を泡に照射する。光のスポット17aまたは17bは、それぞれ側面から識別することができ、その密度に応じて異なる輪郭を有する。この光のスポットの輪郭を、光線の方向の側方に配置されているカメラ15によって検出し、測定結果から、例えば以前に集められたデータとの比較によって、液体量を判定する。
【0031】
測定装置15は、通常では、光のスポットを検出することに加えて、泡層の高さも判定することができるように設計されている。このため、泡の密度を判定する目的で、飲料用ボトル10の縦方向に沿って配置されるいくつかのレーザーを含めることがさらに可能となる。したがって、測定装置15を使用することにより、より多くの数の光のスポットを泡に投影することが可能である。垂直方向の泡密度プロファイルおよび泡の高さから、既知である内径との積分によって、泡に蓄えられている液体量を計算することができる。
【0032】
通常では、1回の測定手順において泡の密度および蓄えられている液体量を判定すれば十分である。1回の測定手順は、カメラの1枚の写真に対応する。レーザーの周波数がカメラの記録タイミングに対応するように、1つまたは複数のレーザーをトリガーする。これに代えて、光のスポットの何枚かの写真を撮影して、例えば、泡が安定するまでの時系列を判定することができる。
【0033】
本発明のさらなる用途においては、酸素の影響を受ける飲料の充填において、本発明によるシステムを制御システムとして、HDE法と組み合わせて使用し、残留酸素を充填口から押し出すための十分な泡が発生したかを観察する。
【0034】
本装置は、既存の充填レベル制御手段に容易に組み込むことができる。充填レベルの制御は、通常ではカメラシステムによってすでに行われているため、1つまたは複数のレーザーと適切な画像処理プログラムとによって既存のシステムを補うのみでよく、したがって、本発明は容易に実現することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を容器(10)に充填する直後またはその後に前記容器に栓をする前に形成される泡の密度を判定する方法であって、
光線(14)を前記泡の中に照射し、
前記光線(14)によって泡に発生する光のスポット(17a,17b)の輪郭を判定する、方法。
【請求項2】
前記光のスポットの前記輪郭を前記容器(10)の外側から判定し、格納されているデータと比較する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記泡の密度を、いくつかの光線(14)、特に光束によって判定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光線(14)によって形成される光のスポットの前記輪郭を、少なくとも1つの測定装置(15)によって判定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
液体を容器(10)に充填した直後またはその後に前記容器に栓をする前に形成される泡の密度を判定する装置であって、
光源(13)と測定装置(15)とが前記容器(10)の領域において側方に配置され、
前記光源が、前記泡の中に光線(14)を放射し、
前記測定装置(15)が、前記光線によって前記泡に形成される光のスポット(17a,17b)の輪郭を検出できるように設計されている、装置。
【請求項6】
カメラである前記測定装置(15)が、側面から前記光のスポット(17a,17b)を測定するために前記光線入力(14)の側方に配置されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記光線(14)をレーザー(13)または類似する集光光源によって発生させる、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
いくつかの光源(13)と測定装置(15)とが前記容器の側方に配置されている、請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記泡に蓄えられている液体量を、前記測定装置(15)によって測定される前記光のスポット(17a,17b)の前記輪郭の、格納されているデータを比較することによって計算するコンピュータ(16)を備える、請求項5〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記コンピュータが、
前記容器(10)および前記液体に関するデータ、特に、前記容器(10)好ましくはボトルネック(11)の寸法および材料厚さ、ならびに前記液体の品質を格納するメモリを備える、請求項5〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
既存のカメラ型充填レベル制御装置に組み込まれる、請求項5〜10のいずれか1項に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−281814(P2010−281814A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−119378(P2010−119378)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(506040652)クロネス アクティェンゲゼルシャフト (55)
【Fターム(参考)】