説明

泡沫状皮膚塗布剤

【課題】内圧が0.7MPa未満のエアゾールにおいて、使用時の刺激性が少なく、二酸化炭素を皮膚上に長時間作用させて十分な血行促進効果が得られ、かつ低温時においても良好な泡沫を保つ泡沫状皮膚塗布剤を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(E)を含有し、耐圧容器内の内圧が25℃で0.7MPa未満となるように充填してなる泡沫状皮膚塗布剤。
(A)N−アシルアミノ酸又はその塩 0.1〜20質量%、
(B)(メタ)アクリル酸系高分子、
(C)多糖類系高分子、
(D)二酸化炭素、及び
(E)炭素数が3〜5の炭化水素から選ばれる混合物であり、前記混合物中に35℃における蒸気圧0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素が70〜100質量%含まれる炭化水素混合物 0.1〜3質量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する泡沫状皮膚塗布剤に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(炭酸ガス)が皮膚に作用すると皮膚の血行が促進されることから、種々の二酸化炭素含有化粧料が提案されている。例えば、水に比べて二酸化炭素の溶解度が高いエタノールなどを共存させ、より高い二酸化炭素飽和溶液を供給する方法、二酸化炭素の揮散を抑制するために噴射液体を高粘度に保つ手法や、二酸化炭素を高濃度に保持するために多価アルコールを高濃度に共存させる方法などが知られている(特許文献1〜3)。また、液化石油ガス(LPG)や圧縮ガス等を噴射剤として併用してエアゾールフォームとすることにより、有効成分を簡便かつ効果的に塗布することができる。このようなフォーム剤は、使用方法や目的に応じて多様なフォーム性能(泡質、泡もちや安定性、塗布性等)が要求され、各種検討がなされている。特に、有効成分として二酸化炭素を高濃度に配合する場合、二酸化炭素自体がフォーム形成の機能を有することもあり、内圧や原液組成への影響も考慮する必要がある。
【0003】
一般的に液化石油ガスは引火性が強く、低温時の発泡性に劣るという問題がある。この問題を解決するための技術として、特許文献4には、水及び界面活性剤を含有する水性原液に、液化石油ガスと圧縮ガスとして炭酸ガスを併用することにより、火気に対する安全性が高く、低温時でも発泡性に差がみられないエアゾールフォーム組成物が開示されている。さらに、炭酸ガスを使用した血行促進作用を目的としたエアゾール剤として二酸化炭素にイソペンタン、n−ペンタン等の特定の炭化水素を用いてフォーム剤の泡持続性を改善した発泡性皮膚血行促進剤(特許文献5)が知られている。
【0004】
一般に、エアゾールフォーム組成物においては、上記ガス組成に加えて原液組成もフォーム性能に影響を与えるものである。また、原液に配合されている界面活性剤は、配合量や種類によっては刺激性を生じる場合がある。アニオン性界面活性剤の一種であるN−アシルアミノ酸類は、一般に肌への刺激性の少ない基材として洗浄剤等に配合されている。しかしながら、二酸化炭素を高濃度に配合するフォーム剤では、原液にN−アシルアミノ酸類を配合すると粘度の安定化が難しく、またN−アシルアミノ酸類は結晶が析出しやすいため、フォームとして使用する際、特に低温下で安定した泡質が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−141512号公報
【特許文献2】特開平11−228334号公報
【特許文献3】特開平11−171755号公報
【特許文献4】特開2001−72543号公報
【特許文献5】特開2005−2046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、内圧が0.7MPa未満のエアゾールであって、使用時の刺激性が少なく、二酸化炭素を皮膚上に長時間作用させて十分な血行促進効果が得られ、かつ低温時においても良好な泡沫を保つ泡沫状皮膚塗布剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、原液にアニオン性界面活性剤としてN−アシルアミノ酸又はその塩を配合し、二酸化炭素を高濃度に配合する皮膚塗布剤を得るべく種々検討したところ、原液中N−アシルアミノ酸類に2種類の増粘性高分子を併用し、これに二酸化炭素と35℃における蒸気圧が0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素を70〜100質量%含む混合物0.1〜3質量%を充填することにより、保存中の安定性、特に低温下においても良好な泡沫が形成できるとともに、皮膚上に吐出したとき、二酸化炭素を高濃度に含む泡沫が長時間皮膚上に保持され、さらに良好な血行促進作用を有する泡沫状皮膚塗布剤が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(E)を含有し、耐圧容器内の内圧が25℃で0.7MPa未満となるように充填してなる泡沫状皮膚塗布剤を提供するものである。
(A)N−アシルアミノ酸又はその塩 0.1〜20質量%、
(B)(メタ)アクリル酸系高分子、
(C)多糖類系高分子、
(D)二酸化炭素、及び
(E)炭素数が3〜5の炭化水素から選ばれる混合物であり、前記混合物中に35℃における蒸気圧0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素が70〜100質量%含まれる炭化水素混合物 0.1〜3質量%。
【発明の効果】
【0008】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、容器内圧が0.7MPa未満という低圧でありながら、保存中の安定性、特に低温下においても良好な泡沫が形成できる。また、皮膚上に吐出したとき二酸化炭素を高濃度に含む泡沫が長時間皮膚上に保持され、皮膚上でのマッサージ等を容易に行うことができ、皮膚の優れた血行促進効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、前記成分(A)〜(E)を含有するが、具体的には、前記成分(A)、(B)及び(C)を含有する原液と、成分(D)及び(E)を耐圧容器内に内圧が0.7MPa未満(25℃)となるように封入して得られるものである。
【0010】
本発明の(A)N−アシルアミノ酸又はその塩におけるアミノ酸部分としては、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;グリシン、アラニン、β−アラニン、メチルアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、プロリン、セリン、トレオニン、サルコシン等の中性アミノ酸が挙げられる。このうち、酸性条件下での安定性の点から酸性アミノ酸又はアラニン、β−アラニン、メチルアラニン、サルコシンが好ましく、特にグルタミン酸が好ましい。これらのアミノ酸部分はD体、L体あるいはD体とL体の混合物の何れでも良いが、L体が好ましい。
また、アシル基は、泡質、泡もち、低温安定性の観点から炭素数8〜18の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有するものが好ましく、このようなアシル基としては、例えばカプロイル基、カプリロイル基、カプリノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、ココイル基(ヤシ油脂肪酸アシル基)、パーム油脂肪酸アシル基、パーム核油脂肪酸アシル基、牛脂脂肪酸アシル基、直鎖及び分岐合成脂肪酸アシル基等が挙げられる。このうち泡もち及び安定性の観点から、ラウロイル基、ミリストイル基、ココイル基が好ましい。
【0011】
(A)N−アシルアミノ酸又はその塩は、酸、それらの塩、あるいは一部が塩の状態で用いられてもよい。これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛などの無機塩;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン塩等の有機アミン、あるいはアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸等の有機塩が挙げられる。入手の容易性、取り扱い性等の観点から、アルカリ金属塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩が好ましく、特にナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、アルギニン塩が好ましい。
【0012】
具体例としては、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、N−パルミトイルグルタミン酸、N−ステアロイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸、N−パーム油脂肪酸アシルグルタミン酸、N−ラウロイルアスパラギン酸、N−ココイルアスパラギン酸、N−ミリストイルアスパラギン酸、N−パルミトイルアスパラギン酸、N−ステアロイルアスパラギン酸、N−ココイルアラニン、N−ラウロイルメチルアラニン、N−ミリストイルメチルアラニン、N−ココイルメチルアラニン、N−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン、N−ココイルサルコシン等が挙げられ、さらにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アルギニン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
このうち、起泡性と低温安定性の観点から、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸カリウム、N−ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイルグルタミン酸カリウム、N−ココイルグルタミン酸ナトリウム、N−ココイルグルタミン酸カリウムが好ましい。
【0013】
本発明においてN−アシルアミノ酸又はその塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。成分(A)は、泡質や泡もち、安定性の観点から、容器内組成物全量中に0.1〜20質量%含まれるが、0.1〜15質量%が好ましく、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0014】
本発明で用いる(B)(メタ)アクリル酸系高分子としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムなどの(メタ)アクリル酸系高分子が挙げられる。具体的には、Lubrizol Advanced Materials,Inc.のカーボポールやPEMULEN、ローム・アンド・ハース社のアキュリン、SEPPIC社のSEPIGEL、SIMULGEL、SEPIPLUS及びSEPINOV、日本エヌエスシー株式会社のヨドゾール、NALCO COMPANY製のマーコート、日本純薬株式会社のジュリマーやアロンビス、花王株式会社のソフケアKG等の市販されているものを使用できる。
(メタ)アクリル酸系高分子は、1種又は2種以上を併用することができ、その含有量は容器内組成物全量中に0.01〜5質量%が好ましく、特に0.05〜3質量%が好ましい。
【0015】
本発明の多糖類系高分子としては、具体的には微結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース系高分子;キサンタンガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、プルラン、シクロデキストリン、デキストラン、カードラン、サクシノグルカン等の微生物系高分子;デンプン、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、デンプンリン酸エステル等のデンプン系高分子;グァーガム、カチオン化グァーガム、ヒドロキシプロピル化グァーガム等のグァーガム系高分子;アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系高分子;カラギーナン、寒天、クインスシードガム、マンナン、デキストリン、デキストリン脂肪酸エステル、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、ペクチン、キチン等が挙げられる。これらのうち、泡もちや安定性の観点から、セルロース系高分子や微生物系高分子が好ましい。また、多糖類系高分子は1種又は2種以上を併用することができ、その含有量は容器内組成物全量中に0.01〜5質量%が好ましく、特に0.05〜3質量%が好ましい。
【0016】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、噴射時に良好な泡沫を形成するだけでなく、泡沫中の高濃度な二酸化炭素を皮膚上に保持することで十分な血行促進効果を付与するために、皮膚上での泡がだれずに泡沫で保持する、言い換えると泡が消え難いことが重要である。そのため、N−アシルアミノ酸類にアクリル酸系高分子と多糖類系高分子との二種類の高分子併用することが必要である。本発明の効果に影響しない範囲で(B)及び(C)以外の増粘性高分子を含むこともできるが、上記(B)及び(C)を含む増粘性高分子の合計量は、0.02〜10質量%が好ましく、特に0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0017】
成分(D)の二酸化炭素は、気体として耐圧容器内に充填される、本発明の泡沫状皮膚塗布剤の有効成分であり、また噴射剤としても機能する成分であって、その一部は耐圧容器内の液体中に溶解しており、これを皮膚に適用したとき発泡する。そして、皮膚上において、泡中の気体状の二酸化炭素及び液体部分に溶存している二酸化炭素は、皮膚の血行を促進する作用を有する。従って、容器内において、二酸化炭素は前記液体中に高濃度存在するようにするのが好ましい。前記耐圧容器内における二酸化炭素の液体中への溶存量は、皮膚に塗布した際に十分な効果を付与できる点から、500〜25,000ppm、さらに1,000〜20,000ppm、特に5,000〜18,000ppmとするのが好ましい。
【0018】
成分(E)の炭化水素混合物は、本発明の泡沫状皮膚塗布剤を皮膚に適用するとき、二酸化炭素とともに発泡し、二酸化炭素を高濃度に含有した泡沫を形成する作用を有する。前記炭化水素混合物は、本発明塗布剤が耐圧容器内圧において25℃で0.7MPa未満を維持し、かつ吐出した際に良好な泡質と血行促進効果を両立するために、35℃における蒸気圧が0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素が70〜100質量%であることが重要であり、特に使用時の効果を高める点から、80〜100質量%が好ましく、さらにまた90〜100質量%、特に95〜100質量%であるのが好ましい。当該35℃における蒸気圧が0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素としては、炭素数4のイソブタン(0.46MPa)、ノルマルブタン(0.33MPa);炭素数5のネオペンタン(0.23MPa)、イソペンタン(0.13MPa)などが挙げられる。このうちイソブタン、ノルマルブタンが低温における泡が良好となる点で好ましく、経済性を考慮するとノルマルブタンとイソブタンを併用することが特に好ましい。また、炭素数5の炭化水素としては、イソペンタンが好ましい。
【0019】
さらに、前記耐圧容器内の液体中に二酸化炭素を溶存させるためには、炭化水素混合物の蒸気圧を低くすることが好ましく、炭素数4のイソブタン、ノルマルブタンに加えて、イソペンタンを用いることも好ましい。イソペンタンを併用する場合、その含有量は、耐圧容器内の全組成物中に0.1〜1.8質量%であることが好ましく、さらに0.1〜1.2質量%、特に0.1〜0.9質量%が血行促進効果の点から好ましい。
【0020】
また、35℃における蒸気圧が0.5MPaより大きい飽和炭化水素としては、プロパン(1.25MPa)などが挙げられる。通常の場合、液化石油ガス(LPG)はプロパン及びブタンの混合物であって、目的に応じてこれらの比率を調整した混合ガスとして流通している。本発明においては、耐圧容器内を低圧下にし、かつ二酸化炭素を高濃度に含有し、長時間皮膚上に保持できる泡沫を得るために、35℃における蒸気圧が高い炭化水素の含有量が少ないことが好ましい。プロパンは実質的に配合しないことが好ましいが、工業的な入手性を考慮すると、LPGに含まれるノルマルブタン及び/又はイソブタン:プロパン(質量比)は、70〜100:0〜30であることが好ましく、さらに90〜99.9:0.1〜10、特に97〜99.5:0.5〜3であることが好ましい。
炭素数3〜5の炭化水素混合物の好ましい形態としては、炭素数5の炭化水素をE1、炭素数4の炭化水素をE2、炭素数3の炭化水素をE3とした場合、E1:E2:E3(質量比)が0〜75:15〜100:0〜30の組成、さらに0〜75:20〜99:0.1〜3の組成、特に0〜50:49〜99:0.5〜1の組成の炭化水素混合物が好ましい。また、E2の含有量は、容器内の全組成物中に0.1〜3質量%、さらに0.1〜2質量%、特に0.3〜1.5質量%含有するのが好ましい。
【0021】
本発明において当該成分(E)の含有量は、容器内の全組成物中0.1〜3質量%であるが、良好な泡沫及び血行促進効果の両者を満足させるうえで、0.2〜2.5質量%が好ましく、特に0.5〜2質量%であるのが好ましい。
【0022】
また、耐圧容器内に充填する当該成分(D)と(E)との質量比(D:E)は、良好な泡沫及び血行促進効果の両者を満足させるうえで、35:65〜95:5であることが好ましく、特に血行促進効果の点から特に38:62〜90:10であるのが好ましい。
【0023】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、さらに、泡の安定性、特に低温下におけるN−アシルアミノ酸又はその塩の析出抑制のために、(F)トリメチルグリシンを含むことができる。トリメチルグリシンは、グリシンベタインとも呼ばれる分子内塩化合物であり、市販品としてアミノコート(旭化成ケミカルズ株式会社)、BETAFIN BP(Finnfeeds Finland Ltd.)等がある。(F)トリメチルグリシンの含有量は、耐圧容器内の全組成物中、0.1〜20質量%が好ましく、さらに1〜15質量%、特に1〜10質量%であるのが好ましい。
【0024】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤には、さらに、泡もち、泡の安定性のために、非イオン性界面活性剤を配合することができる。非イオン性界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、アミノ酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン等の変性シリコーン、アルキルポリサッカライドなどが挙げられる。非イオン性界面活性剤の含有量は、容器内の全組成物中0.1〜10質量%、特に0.5〜8質量%が好ましい。
【0025】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、起泡性や洗浄性向上のためN−アシルアミノ酸以外のアニオン性界面活性剤、また起泡力増強のためにアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルコキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤や、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤を併用することができる。これらの界面活性剤は、皮膚上での泡の安定性及び泡感触、及び皮膚への刺激との兼ね合いより、容器内の組成物全量中に0.1〜20質量%、さらに0.5〜16質量%含有するのが好ましい。
【0026】
二酸化炭素は、アルカリ側では二酸化炭素としてではなく炭酸塩となってしまい、血行促進効果を奏さない。従って、原液のpHは、二酸化炭素を高濃度溶存させて、優れた血行促進効果を得る点から、2.5〜7、特に4.5〜6.5が好ましい。これらの範囲にpHを調整する際のpH調整剤として、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、あるいはリン酸又はそれらの塩などが利用できる。
【0027】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤において、耐圧容器に充填する液体の粘度は、前記成分(E)の分散あるいは乳化状態を安定に保つため、及び皮膚上に塗布した泡沫中の二酸化炭素を保持し良好な血行促進効果を満足させるために、100〜500,000mPa・s、さらに200〜200,000mPa・s、特に300〜50,000mPa・sであることが好ましい。特に、耐圧容器内で前記成分(E)が分離して良好な泡沫が得られなくなることを防止するためには、100mPa・s以上とすることが好ましい。一方で、吐出性や泡状態、さらに工業的に安定な製造を考慮すると、前記耐圧容器が単室構造のエアゾール容器である場合は200〜2,000mPa・sであることが好ましく、二重構造のエアゾール容器である場合は1,000〜50,000mPa・sであることが好ましい。
【0028】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤には、さらに、水、アルコール類、油剤、保湿剤、香料、植物エキス類、殺菌・防腐剤、キレート剤等を含有させることができる。
【0029】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、前記成分(A)、(B)、及び(C)を含む原液を耐圧容器に充填し、さらに(E)炭化水素混合物及び(D)二酸化炭素を封入することにより製造される。このとき、必要に応じて、他の噴射ガスを充填することも可能である。
【0030】
耐圧容器としては、内容液を泡状にして吐出できる形態であればよく、例えば、通常のアルミニウム、ブリキなどの金属製の単室構造の缶が使用でき、また、容器材質としてアセタール系樹脂、ポリカーボネート系の樹脂等の合成樹脂容器、ガラスなども圧力限界内であれば利用できる。特に工業的に1回で高圧の二酸化炭素を充填する場合には、アルミニウムの容器肉厚を調整したインパクト缶などが好ましい。また、原液の粘度によっては、耐圧容器内に内袋をもつ二重容器も利用できる。二重容器の場合、本発明の泡沫状皮膚塗布剤は内袋の中に充填され、耐圧容器と内袋との間に別に噴射ガスが充填される。この噴射ガスは、一般的にエアゾールにて用いられるガスであれば使用することができる。
【0031】
耐圧容器内の圧力は、25℃において0.7MPa未満であるが、良好な泡沫を得る点から0.4MPa以上0.7MPa未満、さらに0.45MPa以上0.7MPa未満、特に0.5〜0.65MPaであることが好ましい。
【0032】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は皮膚上に適用し、生じた泡を皮膚上に拡げることにより使用するのが好ましい。ここで皮膚上への適用手段としては、所望の皮膚上に直接吐出して、その場で泡を形成させてもよいが、手に吐出して泡を形成させ、その泡を所望の皮膚上に塗布してもよい。本発明の泡沫状塗布剤により形成された泡は長時間安定であり、皮膚上に拡げる操作、軽いマッサージ等を行っても安定であることから、高濃度の二酸化炭素が皮膚に長時間作用し、優れた血行促進効果を奏する。
【実施例】
【0033】
(測定方法)
(1)泡安定性評価1(25℃)
25℃で1週間保存後に、皮膚上に3cmφとなるように泡を噴射し、2分間保持して評価した。
○:泡を形成し、2分間保つ
△:泡を形成するが、だれてしまう
×:泡を形成しない
【0034】
(2)泡安定性評価2(5℃)
低温(5℃)で6ヶ月保存後に、容器を取り出して25℃に戻してから皮膚上に3cmφとなるように泡を噴射し、2分間保持して評価した。
○:液の分離がなく、泡を形成して2分間保つ
△:N−アシルアミノ酸類の析出が認められ、泡がだれ易い
×:泡を形成しない
【0035】
(3)皮膚血流
前腕部に3cmφとなるように泡を噴射し、2分間保持後に泡を拭き取って、皮膚の状態(皮膚紅潮)を目視で観察した。
◎:はっきりと紅潮を認める
○:紅潮を認める
△:微かに紅潮を認める
×:紅潮を認めない
【0036】
(4)粘度
原液の粘度は、BM型粘度計(東機産業(株))を用いて、測定温度を25℃とし、ロータNo.2、30r/min、1分間の測定条件により測定した。
【0037】
(5)pH
pHメータ((株)堀場製作所製F−52)を用いて、測定温度を25℃として測定した。
【0038】
(6)二酸化炭素濃度
25℃雰囲気下で泡を噴射し、二酸化炭素濃度を測定した。炭酸ガス測定器は、Orion社製、二酸化炭素電極モデル9502BNを用いた。
【0039】
表1記載の処方により、原液(液体成分)を調製し、耐圧容器に充填した後、炭化水素混合物(E)、二酸化炭素(D)の順に充填してエアゾール組成物を得た。得られたエアゾール組成物について、25℃の泡安定性評価1を上記方法で評価した。
【0040】
【表1】

【0041】
*1:ノルマルブタン:イソブタン:プロパン=71:28:1質量%
*2:ノルマルブタン:イソブタン:プロパン=40:16:44質量%
*3:アミソフトCS−11(F)(味の素株式会社)
*4:アミソフトCK−11(F)(味の素株式会社)
*5:PEMULEN TR−1(Lubrizol Advanced Materials, Inc.)
*6:カーボポール981(Lubrizol Advanced Materials, Inc.)
*7:ケルデント(大日本住友製薬株式会社)
*8:メトローズ 60SH−4000(信越化学工業株式会社)
*9:HECダイセル SE850(ダイセル化学工業株式会社)
*10:マイドール10(花王株式会社)
*11:サンソフトM−12J(太陽化学株式会社)
【0042】
表1において、本発明の実施例1〜5は、0.7MPa未満の内圧に、二酸化炭素を高濃度に溶存しており、25℃での泡安定性が良好であった。しかし、成分(B)のアクリル酸系高分子を含まない比較例1は液が分離した。成分(C)の多糖類系高分子を含まない比較例2及び比較例3は泡がだれてしまい、泡の安定性が悪かった。さらに、成分(E)中に含まれる35℃における蒸気圧0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素の割合が70質量%より小さい炭化水素混合物(比較例4)を用い、さらに内圧を0.7MPa未満に調整したところ、泡がだれてしまい、泡の安定性が悪かった。
【0043】
表1の実施例1、4及び5について、泡安定性評価2(5℃)及び皮膚紅潮を評価し、二酸化炭素濃度を測定した(表2)。
その結果、本発明品の実施例1、4及び5のいずれも0.7MPa未満の内圧に二酸化炭素を高濃度に溶存しており、皮膚紅潮も十分であるとともに、25℃での泡安定性は良好であった。一方、5℃の泡安定性評価2の低温長期保存後においては、トリメチルグリシンを含む実施例1が、これを含まない実施例4及び5に比べて泡質および液性の観点で特に優れていた。ただし、実施例4及び5の泡のたれは少なかった。
【0044】
【表2】

【0045】
表3記載の処方により、原液(液体成分)を調製し、耐圧容器に充填した後、炭化水素混合物(E)、二酸化炭素(D)の順に充填してエアゾール組成物を得た。得られたエアゾール組成物を25℃の泡安定性評価1、及び皮膚紅潮を評価した。本発明の実施例6〜10は、0.7MPa未満の内圧に、二酸化炭素を高濃度に溶存しており、25℃での泡安定性が良好であった。また、皮膚紅潮は、二酸化炭素比率の高い実施例7、8及び実施例10が顕著に認められた。
【0046】
【表3】

【0047】
*1:ノルマルブタン:イソブタン:プロパン=71:28:1質量%
*3:アミソフトCS−11(F)(味の素株式会社)
*4:アミソフトMS−11(味の素株式会社)
*5:アミノフォーマーFLDS−L(旭化成ケミカルズ株式会社)
*6:アミライトACS−12(味の素株式会社)
*7:PEMULEN TR−1(Lubrizol Advanced Materials, Inc.)
*8:カーボポール981(Lubrizol Advanced Materials, Inc.)
*9:ケルデント(大日本住友製薬株式会社)
*10:メトローズ60SH−4000(信越化学工業株式会社)
*11:HECダイセルSE850(ダイセル化学工業株式会社)
*12:マイドール10(花王株式会社)
*13:サンソフトM−12J(太陽化学株式会社)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(E)を含有し、耐圧容器内の内圧が25℃で0.7MPa未満となるように充填してなる泡沫状皮膚塗布剤。
(A)N−アシルアミノ酸又はその塩 0.1〜20質量%、
(B)(メタ)アクリル酸系高分子、
(C)多糖類系高分子、
(D)二酸化炭素、及び
(E)炭素数が3〜5の炭化水素から選ばれる混合物であり、前記混合物中に35℃における蒸気圧0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素が70〜100質量%含まれる炭化水素混合物 0.1〜3質量%。
【請求項2】
成分(A)、(B)及び(C)を含有する原液と、成分(D)及び(E)を耐圧容器内の内圧が25℃で0.7MPa未満となるように封入して得られるものである請求項1記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項3】
前記耐圧容器内の液体中に溶存する二酸化炭素の量が500〜25,000ppmである請求項1又は2記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項4】
成分(D)と(E)との質量比(D:E)が35:65〜95:5である請求項1〜3のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項5】
さらに、原液に(F)トリメチルグリシンを含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項6】
原液のpHが2.5〜7である請求項1〜5のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項7】
前記耐圧容器内の液体の粘度が100〜500,000mPa・sである請求項1〜6のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項8】
前記耐圧容器より噴射して形成した泡沫を、皮膚上に拡げることにより使用するためのものである請求項1〜7のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。

【公開番号】特開2010−248098(P2010−248098A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97344(P2009−97344)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】