説明

波形補正装置及び方法

【課題】カップリングコンデンサを介してA/D変換器へ入力するための入力波形により生じる歪みを抑え、A/D変換器の歪測定の性能試験における測定待ち時間を抑えること。
【解決手段】本発明の第1の態様にかかる波形補正装置は、カップリングコンデンサを介してA/D変換器へ入力するための入力波形を補正する波形補正装置であって、入力波形の特徴に応じて所定の補正時間の長さ分の第1補正波形を生成し、入力波形の直前に当該第1補正波形を追加する補正波形追加部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形補正装置及び方法に関し、特に、A/D(Analog/Digital)変換器の歪測定の性能試験を行うための波形補正装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ分野等に使用される高精度のA/D変換器の試験には、A/D変換器の機能要件を測定する機能試験(function test)ばかりでなく、所定の条件のもとで機能要件を満たすかを測定する性能試験がある。ここで、性能試験とは、例えば、SIN波形をA/D変換器に入力して、A/D変換器の出力SIN波形の歪を測定する試験である。また、ここでいうSIN波形の歪を測定する試験とは、A/D変換器の音質に関係するカタログ性能である、THD+N(Total Harmonic Distortion Plus Noise)等の性能である。
【0003】
また、オーディオ分野においては、ソースとなる音源が、FM(Frequency Modulation)/AM(Amplitude Modulation)ラジオチューナー、レコードプレイヤー、カセットテーププレイヤー、ミニディスク(MD(Mini Disc))プレイヤー、コンパクトディスク(CD(Compact Disc))プレイヤー、DVD(Digital Versatile Disc)プレイヤー、レーザーディスク(LD(Laser Disc))プレイヤー、MP3(MPEG Audio Layer-3)プレイヤー、アナログ、ワンセグ及びフルセグテレビ等のテレビチューナー並びにカーナビゲーションの案内音声等多岐に渡る。これらの多岐に渡るソースとなる音源を扱うオーディオシステムでの使用が想定される為、高精度のA/D変換器は、チャンネル数が一般的に多く、試験測定項目が増大し、テスト時間が増大している。そのため、A/D変換器テスト時間短縮の要求が高まってきた。
【0004】
特許文献1には、A/D変換器の機能試験において、デジタルコードに対応したアナログ電圧を自動的に生成する手段を設けて機能試験の時間短縮を図るための技術が開示されている。図13は、特許文献1におけるA/D変換器試験装置の構成を示すブロック図である。
【0005】
図13に示すA/D変換器試験装置は、被測定デバイスであるA/D変換器1と、試験を制御する制御手段4と、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12と、デジタルコード測定手段3とを備える。制御手段4は、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12、A/D変換器1及びデジタルコード測定手段3へそれぞれ、コード、変換開始クロック及び測定タイミングクロックを出力する。デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12は、制御手段4からのコードに応じて動作する。デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12は、A/D変換器1が出力すべきデジタルコードに対応したアナログ電圧Aを発生させる。ここで、アナログ電圧Aは、オーバースケールのアナログ電圧を含むものである。また、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12は、アナログ電圧Aを自動的、かつ、連続的に出力する。A/D変換器1は、制御手段4からの変換開始クロックに応じて動作し、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12から入力されるアナログ電圧Aに基づき、アナログ情報からデジタルコードB0、B1、・・・、Bnへ変換し、デジタルコード測定手段3へ出力する。デジタルコード測定手段3は、制御手段4からの測定タイミングクロックに応じて動作し、A/D変換器1から出力されるデジタルコードB0、B1、・・・、Bnを測定タイミングクロックに同期させて測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−199113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、オーディオ分野等に用いられる高精度のA/D変換器は、内部の電圧を維持して安定した変換性能を維持する為、また、不要な低域のノイズをカットする為に、入力端子にカップリングコンデンサを追加し、入力端子内部の抵抗とあわせてハイパスフィルタを構成して使用される。そのため、A/D変換器の歪み測定の性能試験においては、カップリングコンデンサを搭載したA/D変換器専用のテストボードを作成し、当該テストボードを介してA/D変換器試験装置に装着される。
【0008】
図14は、特許文献1において歪み測定の性能試験を行う場合の構成の例を示す。図14に示すA/D変換器試験装置200は、図13に示した制御手段4と、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12と、デジタルコード測定手段3とを備える。また、図14に示すテストボード201は、図13に示したA/D変換器1と、カップリングコンデンサ101とを備える。そして、A/D変換器1の内部には、上述したように通常、抵抗102及び電源103が存在する。そのため、カップリングコンデンサ101及び抵抗102により、ハイパスフィルタを構成することができる。これにより、A/D変換器1の歪み測定の性能試験を行うことができる。
【0009】
また、歪み測定の性能試験において、A/D変換器試験装置200は、測定項目ごとに異なる波形を発生させるコンピュータプログラムである歪測定プログラムを動作させることにより、カップリングコンデンサ101を介してA/D変換器1へ入力する。例えば、入力する波形がSIN波形である場合、SIN波形の周波数、始点及び終点の電位等が測定項目毎に異なるものとなる。そして、性能試験の測定項目は、数百以上と多数であるため、通常は、試験時間の短縮のため、各測定項目を連続して実行する。そのため、連続して入力されるSIN波により、測定項目間において、カップリングコンデンサ101に急激な電圧変動が起こる。よって、SIN波を入力した歪み測定の性能試験を行う場合、SIN波形の歪み安定化の為の測定待ち時間が長くなるという問題がある。
【0010】
以下では、代表的な3つ特徴を有する入力波形の例を挙げ、これらを図14に示すA/D変換器試験装置200に入力した場合に上述した課題が発生することを説明する。図15乃至図17は、上述した課題が発生する代表的な3種類の入力波形及び当該入力波形についてのカップリングコンデンサ101からの出力波形の例を示す図である。尚、入力波形の例は、これに限定されない。
【0011】
入力波形の特徴の第1の例として、図15は、SIN波の終点の波形の例により課題の発生を説明する図である。入力波形700は、カップリングコンデンサ101へ入力されるSIN波形の一部である。出力波形701は、カップリングコンデンサ101からA/D変換器1へ出力されるSIN波形の一部である。ここでは、歪測定プログラムのうち800項目のテスト終了時刻を時刻T800ENDとし、その次の801項目目のテスト開始時刻を時刻T801STARTとし、SIN波の中点の電圧を電圧V0とする。
【0012】
また、前述のとおり、カップリングコンデンサ101と、A/D変換器1の入力端子内部の抵抗102と合わせてハイパスフィルタを構成している。そして、カップリングコンデンサ101の入力電圧をVin(t)とし、出力電圧をVout(t)とし、容量値をC1とし、抵抗102の抵抗値をR1とする。この場合、ハイパスフィルタの伝達関数は、下記の(1)式で表すことができる。そして、例えば、カップリングコンデンサ101の容量値を2.2μF、抵抗102の抵抗値を50KΩとすると、(1)式により、ハイパスフィルタのステップ応答特性時間は約500msと求まる。そのため、最低500msは測定待ち時間が必要であることがわかる。
Vout(t)/Vin(t)=1/(t+(1/C1xR1))・・・(1)式
【0013】
図14では、A/D変換器試験装置200からA/D変換器1の出力であるデジタルコードB0、B1、・・・、Bnまでの間には、テストボード201の遅延、A/D変換器1の内部遅延等が発生する。そして、入力波形700の各測定項目の終点の電位は、中点の電圧V0で終わるとは限らない。それは、A/D変換器試験装置200からのSIN波の出力は、A/D変換器1へ取り込まれた時点で終了してしまうからである。
【0014】
例えば、図15では、入力波形700の時刻T800ENDにおける電位は、中点の電位V0ではないことを示す。時刻T800ENDにおける電位は、カップリングコンデンサ101の出力、つまり、A/D変換器1の入力端子に保持された電位である。よって、カップリングコンデンサ101に時刻T800ENDにおける電位による電荷が溜まってしまう。
【0015】
そのため、時刻T801STARTで新たに入力されたSIN波の始点の電位との間に電位差がある場合、カップリングコンデンサ101の出力で急激な電圧変動が起こる。そして、出力波形701の歪み箇所aaのようにSIN波形が歪み、そのSIN波形の歪みが落ち着くまでの測定待ち時間が長くなる。つまり、測定項目の終点のSIN波の電位がどの値になるか保証できない。
【0016】
尚、経験則として、正常な測定が開始されるまでの待ち時間は、上記のステップ応答時間約500msの3〜4倍である。
【0017】
入力波形の特徴の第2の例として、図16は、SIN波の始点の波形の例により課題の発生を説明する図である。入力波形710は、カップリングコンデンサ101へ入力されるSIN波形の一部である。出力波形711は、カップリングコンデンサ101からA/D変換器1へ出力されるSIN波形の一部である。ここでは、歪測定プログラムのうち810項目のテスト開始時刻を時刻T810STARTとし、SIN波の中点の電圧を電圧V0とする。
【0018】
歪み測定の性能試験には、測定待ち時間が発生することが経験的にわかるため、測定者は、予め任意のSIN波形を挿入することが多い。そのため、測定項目におけるSIN波の開始時点の電圧がどの値になるか保証できない。例えば、図16では、入力波形710の時刻T810STARTにおける電位は、中点の電圧V0ではないことを示す。つまり、時刻T810STARTにおいて、A/D変換器1に入力するSIN波の始点が中点(0度又は180度)でない場合がある。
【0019】
SIN波の始点が中点(0度又は180度)以外で始まる場合、カップリングコンデンサ101の出力と、カップリングコンデンサ101の入力との間に電位差が生じる。つまり、A/D変換器1の入力端子の電位と、SIN波の入力波形の始点の電位との間に電位差がある為、カップリングコンデンサ101の出力で急激な電圧変動が起こる。例えば、出力波形711の点線枠bbのようにカップリングコンデンサ101の出力でのSIN波形が歪む。言い換えると、直前の測定項目における終点の電位と次の測定項目の始点の電位との電位差が生じ、SIN波形の歪みが発生する。そのため、そのSIN波形の歪みが落ち着くまで正常な測定が出来ず、測定待ち時間が長くなる。
【0020】
入力波形の特徴の第3の例として、図17は、SIN波の高周波の始点と終点の例により課題の発生を説明する図である。入力波形720は、カップリングコンデンサ101へ入力されるSIN波形の一部である。出力波形721は、カップリングコンデンサ101からA/D変換器1へ出力されるSIN波形の一部である。ここでは、歪測定プログラムのうち820項目目のテスト開始時刻を時刻T820STARTとし、テスト終了時刻を時刻T820ENDとし、SIN波の中点の電圧を電圧V0とする。
【0021】
図17に示すように、入力波形720のSIN波が所定の周波数より高周波である場合、出力波形721で示すように、時刻T820STARTの直後と、時刻T820ENDの周辺とにおいて、カップリングコンデンサ101の双方向で急激な電圧変動が起こる。例えば、点線枠cc及び点線枠ddのようにSIN波形の歪みが生じる。そのため、そのSIN波形歪が落ち着くまで正常な測定が出来ず、測定待ち時間が長くなる。
【0022】
このように、カップリングコンデンサ101からA/D変換器1への入力波形において、様々な入力波形の特徴により歪みが発生する。それに伴い、SIN波形の歪み安定化の為の測定待ち時間が長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様にかかる波形補正装置は、カップリングコンデンサを介してA/D変換器へ入力するための入力波形を補正する波形補正装置であって、前記入力波形の特徴に応じて所定の補正時間の長さ分の第1補正波形を生成し、前記入力波形の直前に当該第1補正波形を追加する補正波形追加部を備える。
【0024】
本発明の第2の態様にかかる波形補正方法は、カップリングコンデンサを介してA/D変換器へ入力するための第1波形及びを当該第1波形の直後に入力する第2波形を補正する当該A/D変換器の試験装置における波形補正方法であって、前記第1波形及び前記第2波形の特徴に応じて所定の補正時間の長さ分の第1補正波形を生成し、前記第2波形の直前に当該第1補正波形を追加することを含む。
【0025】
本発明の第1及び第2の態様のそれぞれによれば、入力波形の特徴により異なる補正波形を生成し、入力波形に追加することにより、前後の入力波形の電位差や入力波形の周波数により生じる入力波形の歪みを抑えることができる。そのため、SIN波形の歪み安定化の為の測定待ち時間を、特許文献1に比べて短くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、カップリングコンデンサを介してA/D変換器へ入力するための入力波形により生じる歪みを抑え、A/D変換器の歪測定の性能試験における測定待ち時間を抑えることができる波形補正装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるA/D変換器試験装置及びテストボードの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる中点判定器の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるデジタルコード期待値比較器の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかるステップ応答時間測定器の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる補正波形追加部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる波形補正処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1にかかる中点判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1にかかる始点及び終点コードのフォーマットの例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1にかかる始点及び終点確認結果のフォーマットの例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1にかかるステップ応答時間測定器測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態1にかかる補正波形追加処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態1にかかる補正波形の例を示す図である。
【図13】関連技術におけるA/D変換器試験装置の構成を示すブロック図である。
【図14】関連技術において歪み測定の性能試験を行う場合のA/D変換器試験装置の構成を示すブロック図である。
【図15】SIN波の終点の波形の例により課題の発生を説明する図である。
【図16】SIN波の始点の波形の例により課題の発生を説明する図である。
【図17】SIN波の高周波の始点と終点の例により課題の発生を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0029】
<発明の実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1にかかるA/D変換器試験装置202及びテストボード201の構成を示すブロック図である。A/D変換器試験装置202は、テストボード201に装着されたA/D変換器1の歪み測定の性能試験を行う装置である。例えば、上述した図13に示したA/D変換器試験装置を改良したものであってもよい。
【0030】
テストボード201は、カップリングコンデンサ101と、A/D変換器1とを備える。A/D変換器1は、測定対象のデバイスであり、抵抗102と電源103等を含む。また、カップリングコンデンサ101は、A/D変換器1の歪み測定を行うためのものである。つまり、テストボード201は、カップリングコンデンサ101とA/D変換器1内の抵抗102とによりハイパスフィルタを構成するものである。
【0031】
そして、A/D変換器試験装置202は、テストボード201へ入力波形を入力し、出力波形を受け付けることにより、歪み測定の性能試験を行うものである。具体的には、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12からカップリングコンデンサ101へ入力波形を入力し、A/D変換器1により処理された出力波形をデジタルコード測定手段3により受け付けて測定を行う。そして、A/D変換器試験装置202は、カップリングコンデンサ101を介してA/D変換器1へ入力するための入力波形を事前に補正する波形補正装置の機能を含むものである。
【0032】
A/D変換器試験装置202は、制御手段4と、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12と、中点判定器110と、ステップ応答時間測定器111と、補正波形追加部112と、デジタルコード測定手段3とを備える。
【0033】
デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12は、テーブルROM(Read Only Memory)13と、D/A変換器15とを備える。テーブルROM13は、アドレス信号と、デジタルコードC0、C1、・・・、Cmとを対応付けたテーブルを格納する記憶装置である。そして、テーブルROM13は、制御手段4からコードバス114を介して入力される後述する制御コードに含まれるアドレス信号が入力されると、当該アドレス信号に対応付けられたデジタルコードC0、C1、・・・、Cmを出力する。D/A変換器15は、テーブルROM13から出力されるデジタルコードC0、C1、・・・、Cmを入力し、アナログ電圧Aへ変換し、正弦波形すなわちSIN波形としてカップリングコンデンサ101へ出力する変換装置である。また、テーブルROM13及びD/A変換器15は、クロックバス113を介して供給される動作クロックに基づき動作する。尚、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12の上述した内部構造は、一例であり、例えば、特許文献1に開示されたものその他を用いても構わない。
【0034】
デジタルコード測定手段3は、制御手段4からクロックバス113を介した動作クロックに応じて動作し、A/D変換器1から出力されるデジタルコードB0、B1、・・・、Bnを動作クロックに同期させて測定する。
【0035】
制御手段4は、複数の測定項目ごとに異なる波形を発生させるコンピュータプログラムである歪測定プログラムを動作させて、歪み測定の性能試験を制御する。制御手段4は、クロックバス113により、デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段12、中点判定器110、ステップ応答時間測定器111、補正波形追加部112、テストボード201及びデジタルコード測定手段3と接続されている。また、制御手段4は、クロックバス113を介して動作クロックを供給する。尚、A/D変換器試験装置202は、図示しない構成として、一時的に各種初期値や歪測定プログラム等を格納するメモリを備えるものとする。
【0036】
また、制御手段4は、コードバス114により、テーブルROM13、中点判定器110、ステップ応答時間測定器111及び補正波形追加部112と接続されている。制御手段4は、コードバス114を介して、制御コードを出力する。例えば、制御コードの上位7ビットをテーブルROM13と、中点判定器110と、ステップ応答時間測定器111と、補正波形追加部112との動作を制御するコードとしてもよい。その場合、制御コードの上位8ビット以下のjビットをアドレス信号とするとよい。つまり、制御コードとしては、"j+7"ビット以上であればよい。
【0037】
また、制御手段4は、バス117により、ステップ応答時間測定器111及び補正波形追加部112と接続されている。制御手段4は、バス117を介して、パタン情報を入出力する。例えば、パタン情報としては、上位4ビットをステップ応答時間測定器111と、補正波形追加部112の動作を制御するコードとし、上位5ビット以下のpビットをA/D変換器1の動作を制御するためのモード設定パタンや補正波形に関するデジタルパタンとしてもよい。つまり、パタン情報としては、"p+4"ビット以上であればよい。
【0038】
中点判定器110は、クロックバス113を入力端子ZCKに接続し、コードバス114を双方向バス端子ZIOに接続し、テーブルROM13から出力されるデジタルコードC0、C1、・・・、Cmを入力端子ZDI0、ZDI1、・・・、ZDImに接続する。そして、中点判定器110は、デジタルコードC0、C1、・・・、Cmから測定項目毎にSIN波の始点及び終点が中点であるか否かを判定する。そして、中点判定器110は、判定結果D4を、出力端子ZOからバス115を介して補正波形追加部112に出力する。
【0039】
中点判定器110は、入力波形の始点の電位が中点であるか否かを判定する。さらに、中点判定器110は、入力波形の終点の電位が中点であるか否かを判定する。つまり、中点判定器110は、入力波形の始点及び終点の電位が当該入力波形における振幅の中点の電位であるか否かを判定する。
【0040】
ステップ応答時間測定器111は、クロックバス113を入力端子ZCKに接続し、コードバス114を双方向バス端子STIOに接続し、バス117を双方向バス端子STDIOに接続し、A/D変換器1から出力されるデジタルコードB0、B1、・・・、Bnを入力端子STDI0、STDI1・・・STDInに接続する。そして、測定したステップ応答試験信号を、出力端子STOからバス116を介して補正波形追加部112へ出力する。ステップ応答時間測定器111は、入力波形の振幅に応じてステップ応答試験信号を生成し、A/D変換器1がステップ応答試験信号を処理した結果に基づいてA/D変換器1のステップ応答時間を測定する。尚、ステップ応答時間測定器111は、バス117を介して入力されるパタン情報からモード設定パタンを抽出し、モード設定パタンを用いてステップ応答時間を測定する。
【0041】
補正波形追加部112は、クロックバス113を入力端子HCKに接続し、コードバス114を双方向バス端子HIOに接続し、バス115を入力端子HZIに接続し、バス116を入力端子HSTIに接続し、バス117を双方向バス端子STDIOに接続する。
【0042】
補正波形追加部112は、入力波形の特徴に応じて所定の補正時間の長さ分の第1補正波形を生成し、入力波形の直前に第1補正波形を追加する。また、補正波形追加部112は、中点判定器110により入力波形の始点の電位が中点でないと判定された場合に、中点を始点の電位とし、入力波形の始点の電位を終点の電位とした波形を第1補正波形として生成する。さらに、補正波形追加部112は、中点判定器110により入力波形の終点の電位が中点でないと判定された場合に、入力波形の終点の電位を始点の電位とし、中点を終点の電位とした波形であり、補正時間の長さに応じた第2補正波形を生成し、入力波形の直後に第2補正波形を追加することが望ましい。
【0043】
そして、補正波形追加部112は、ステップ応答時間測定器111により測定されたステップ応答時間D8を用いて補正時間を算出する。また、補正波形追加部112は、中点判定器110により判定された判定結果D4を用いて補正波形を生成し、入力波形に補正波形を追加する。
【0044】
また、補正波形追加部112は、所定の波形を雛形として定義した雛形波形を格納する雛形波形記憶手段(不図示)をさらに備えるとよい。この場合、補正波形追加部112は、雛形波形記憶手段から取得される雛形波形に基づき、中点を始点の電位とし、入力波形の始点の電位を終点の電位とした第1部分波形を含めて第1補正波形として生成する。併せて、補正波形追加部112は、雛形波形記憶手段から取得される雛形波形に基づき、入力波形の終点の電位を始点の電位とし、中点を終点の電位とした第2部分波形を含めて第2補正波形として生成することが望ましい。
【0045】
または、第1の測定項目に対応する第1波形と、第1の測定項目の直後に実行される第2の測定項目に対応する第2波形とについて、補正波形追加部112は、雛形波形記憶手段から取得される雛形波形に基づき、中点を始点の電位とし、第2波形の始点の電位を終点の電位とした第1部分波形を含めて第1補正波形として生成する。併せて、補正波形追加部112は、雛形波形記憶手段から取得される雛形波形に基づき、第1波形の終点の電位を始点の電位とし、中点を終点の電位とした第2部分波形を含めて第2補正波形として生成することが望ましい。
【0046】
また、補正波形追加部112は、コードバス114を介して入力した測定項目毎のSIN波のアドレス信号と、双方向バス端子HDIOを介して入力したパタン情報に含まれるデジタルパタンとに基づき、SIN波に補正波形を追加する。そして、補正波形追加部112は、補正波形を追加したSIN波を双方向バス端子HIO及びコードバス114を介して制御手段4に出力する。また、補正波形追加部112は、入力したデジタルパタンに、補正波形に対応した長さのデジタルパタンを追加する。そして、補正波形追加部112は、追加後のデジタルパタンを双方向バス端子HDIO及びバス117を介して、制御手段4に出力する。
【0047】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる中点判定器110の構成を示すブロック図である。中点判定器110は、SIN波中点デジタルコードメモリ300と、デジタルコード期待値比較器301と、中点確認回路302とを有し、入力端子ZCKと、入力端子ZDI0、ZDI1、・・・、ZDImと、双方向バス端子ZIOと、出力端子ZOとを備える。SIN波中点デジタルコードメモリ300と、デジタルコード期待値比較器301と、中点確認回路302とは、入力端子ZCKを介して入力される動作クロックSIG1に同期して動作する。
【0048】
SIN波中点デジタルコードメモリ300は、予め中点の電位を示すデジタルコードである中点コードを格納する記憶装置である。例えば、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリであると良い。
【0049】
デジタルコード期待値比較器301は、デジタルコードC0、C1、・・・、Cmを入力端子ZDI0、ZDI1、・・・、ZDImを介して入力し、SIN波中点デジタルコードメモリ300から中点コードを入力する。そして、デジタルコード期待値比較器301は、デジタルコードC0、C1、・・・、Cmと中点コードとを比較した結果を、出力端子DFOから中点確認回路302へ出力する。
【0050】
中点確認回路302は、双方向バス端子ZIOを介して、測定項目毎のSIN波の始点及び終点のアドレス信号SIG2を入力する。そして、中点確認回路302は、入力したアドレス信号SIG2と、対応するデジタルコード期待値比較器301の出力とに基づき、判定結果D4を作成し、出力端子ZOを介して補正波形追加部112に出力する。また、中点確認回路302は、入力したアドレス信号SIG2を、双方向バス端子ZIOを介してコードバス114に出力する。
【0051】
図3は、本発明の実施の形態1にかかるデジタルコード期待値比較器301の構成を示すブロック図である。デジタルコード期待値比較器301は、期待値メモリ354と、比較回路357と上限電圧生成回路356と、下限電圧生成回路355と、コンパレータ3510、3511、・・・、351mと、コンパレータ3520、3521、・・・、352mと、判定回路3530、3531、・・・、353mを有し、入力端子DFI0、DFI1、・・・、DFIm、DFREF及びDFCKと、出力端子DFOとを備える。期待値メモリ354と比較回路357とは、入力端子DFCKを介して入力される動作クロックSIG1に同期して動作する。
【0052】
入力端子DFI0、DFI1、・・・、DFImは、コンパレータ3510、3511、・・・、351mと、コンパレータ3520、352、1・・・、352mとにそれぞれ接続する。さらに、コンパレータ3510、3511、・・・、351mには、上限電圧生成回路356の出力であるHレベルのスレッショルドの電圧である電圧VOHを接続する。また、コンパレータ3520、3521、・・・、352mには、下限電圧生成回路355の出力であるLレベルのスレッショルドの電圧である電圧VOLを接続する。そして、コンパレータ3510及び3520の出力を判定回路3530に接続する。同様に、コンパレータ3511及び3521、・・・、351m及び352mの出力をそれぞれ、判定回路3531、・・・、353mに接続する。判定回路3530、3531、・・・、353mの出力は、比較回路357に接続する。比較回路357の出力は、出力端子DFOに接続する。比較回路357には、他に期待値メモリ354の出力と入力端子DFCKを接続する。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態1にかかるステップ応答時間測定器111の構成を示すブロック図である。ステップ応答時間測定器111は、ステップ応答生成回路311と、デジタルコード期待値比較器312と、カウンタ313と、パタンメモリ314とを有し、入力端子STCKと、入力端子STDI0、STDI1・・・STDInと、双方向バス端子STPIOと、双方向バス端子STIOと、出力端子STOとを備える。ステップ応答生成回路311と、デジタルコード期待値比較器312と、カウンタ313と、パタンメモリ314とは、入力端子DFCKを介して入力される動作クロックSIG1に同期して動作する。
【0054】
ステップ応答生成回路311は、入力端子STCKと双方向バス端子STIOとを接続し、その出力をデジタルコード期待値比較器312の入力端子DFREFに接続する。パタンメモリ314は、双方向バス端子STPIOと入力端子STCKとを接続する。デジタルコード期待値比較器312は、入力端子STDI0、STDI1、・・・、STDInを入力端子DFI0、DFI1、・・・、DFImに接続する。また、デジタルコード期待値比較器312は、ステップ応答生成回路311の出力を入力端子DFREFに接続し、出力端子DFOをカウンタ313に接続する。尚、デジタルコード期待値比較器312は、デジタルコード期待値比較器301と同等の構成である。カウンタ313は、デジタルコード期待値比較器312の出力端子DFOと、入力端子STCKとを接続し、その出力を出力端子STOと接続する。カウンタ313は、ステップ応答時間D8を出力とする。
【0055】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる補正波形追加部112の構成を示すブロック図である。補正波形追加部112は、補正波形生成回路321と、連結回路322と、パタン追加回路323とを有し、入力端子HCKと、入力端子HZIと、入力端子HSTIと、双方向バス端子HIOと、双方向バス端子HDIOとを備える。補正波形生成回路321と、連結回路322と、パタン追加回路323とは、入力端子DFCKを介して入力される動作クロックSIG1に同期して動作する。
【0056】
補正波形生成回路321は、入力端子HZIと、入力端子HCKと、入力端子HSTIと、双方向バス端子HIOと、を接続し、その出力を連結回路322に接続する。そして、補正波形生成回路321は、入力端子HZIを介して判定結果D4を入力し、入力端子HSTIを介してステップ応答時間D8を入力し、双方向バス端子HIOを介して入力波形のアドレス信号SIG2を入力する。そして、補正波形生成回路321は、判定結果D4、ステップ応答時間D8及びアドレス信号SIG2を用いて補正波形を生成する。その後、補正波形生成回路321は、生成した補正波形を連結回路322へ出力する。
【0057】
連結回路322は、入力端子HCKと、補正波形生成回路321の出力と、双方向バス端子HIOとを接続する。連結回路322は、補正波形生成回路321から出力された補正波形を必要に応じてアドレス信号SIG2を用いて入力波形と連結する。
【0058】
パタン追加回路323は、入力端子HZIと、入力端子HCKと、入力端子HSTIと、双方向バス端子HDIOとを接続する。パタン追加回路323は、入力端子HZIを介して判定結果D4を入力し、入力端子HSTIを介してステップ応答時間D8を入力し、双方向バス端子HPIOを介してデジタルパタンを入力する。そして、パタン追加回路323は、補正波形に対応した長さのデジタルパタンを追加する。そして、パタン追加回路323は、追加後のデジタルパタンを、双方向バス端子HPIOを介して出力する。
【0059】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる波形補正処理の流れを示すフローチャートである。まず、前提として、各回路の動作条件を説明する。
【0060】
中点判定器110は、コードバス114を介して制御コードを入力する。このとき、制御手段4により制御コードの上位2ビットが"00"又は"11"に設定されていた場合、中点判定器110は、初期状態となり動作しない。
【0061】
デジタルコード期待値比較器301は、入力端子DFI0、DFI1、・・・、DFImから入力されたデジタコードを、入力端子DFREFより期待値メモリ354を介して入力した期待値と比較回路357で比較する。このとき、比較結果が全ビット一致する場合、比較回路357は、その旨を出力端子DFOより出力する。これにより、デジタルコードの期待値の比較結果を中点確認回路302へ出力することができる。
【0062】
ステップ応答時間測定器111は、バス117を介してパタン情報を入力し、コードバス114を介して制御コードを入力する。このとき、制御手段4によりパタン情報の上位2ビットが"00"又は"11"に設定され、制御コードの上位3及び4ビット目が"00"又は"11"に設定されていた場合、ステップ応答時間測定器111は、初期状態となり動作しない。
【0063】
補正波形追加部112は、バス117を介してパタン情報を入力し、コードバス114を介して制御コードを入力する。このとき、制御手段4によりパタン情報の上位3及び4ビット目が"00"又は"11"に設定され、制御コードの上位5及び6ビット目が"00"又は"11"に設定されていた場合、ステップ応答時間測定器111は、初期状態となり動作しない。
【0064】
図6において、まず、制御手段4は、各種初期値D1及び歪測定プログラムD2の登録を受け付ける(S11)。例えば、A/D変換器1の歪み測定の性能試験を行う測定者(以降はオペレータと称す)が、各種初期値D1及び歪測定プログラムD2を制御手段4へ入力する。そして、制御手段4は、メモリ(不図示)へ各種初期値D1及び歪測定プログラムD2を格納する。
【0065】
次に、中点判定器110は、歪測定プログラムD2に従い、中点判定処理を行い、判定結果D4を出力する(S12)。尚、ステップS12の詳細は、図7を用いて後述する。
【0066】
ここで、オペレータは、A/D変換器1を図1に示すような状態でテストボード201に装着する(S13)。続いて、ステップ応答時間測定器111は、各種初期値D1を用いてステップ応答時間測定処理を行い、ステップ応答時間D8を出力する(S14)。尚、ステップS14の詳細は、図10を用いて後述する。
【0067】
そして、補正波形追加部112は、ステップ応答時間D8を用いて補正波形追加処理を行い、補正波形追加後の歪測定プログラムD11を出力する。尚、制御手段4は、補正波形追加後の歪測定プログラムD11を上述したメモリへ格納する。
【0068】
その後、制御手段4は、補正波形追加後の歪測定プログラムD11を用いてA/D変換器1の歪み測定の性能試験を実行する。
【0069】
図7は、本発明の実施の形態1にかかる中点判定処理の流れを示すフローチャートである。まず、中点判定器110は、始点及び終点コードを抽出する(S121)。具体的には、まず、制御手段4は、歪測定プログラムD2を動作させて、制御コードの上位2ビットを"01"に設定し、上位3〜7ビットまでを"0"に設定し、8ビット以降にアドレス信号SIG2を設定して、コードバス114へ出力する。次に、中点判定器110は、コードバス114及び双方向バス端子ZIOを介して入力される制御コードの上位8ビット以降から、測定項目毎のSIN波の始点及び終点コードD3を抽出する。
【0070】
続いて、制御手段4は、歪測定プログラムD2により、制御コードの上位2ビットを"10"に設定し、上位3〜6ビットまでを"0"に設定し、上位から7ビット目を"1"に設定し、コードバス114へ出力する。中点判定器110は、当該制御コードを入力すると、入力した測定項目毎のSIN波の始点及び終点コードD3をアドレス信号SIG2として、双方向バス端子ZIO及びコードバス114を介して、テーブルROM13へ出力する。このとき、制御手段4は、SIN波の始点及び終点のアドレス信号SIG2を受信しない。
【0071】
図8は、本発明の実施の形態1にかかる始点及び終点コードのフォーマットの例を示す図である。図8では、フィールド1が測定項目番号、フィールド2がSIN波始点コード(アドレス信号)、フィールド3がSIN波終点コード(アドレス信号)である。尚、始点及び終点コードのフォーマット例はこれに限定されない。
【0072】
次に、中点判定器110は、始点及び終点が中点であるか否かを判定する(S122)。具体的には、デジタルコード期待値比較器301は、入力端子ZDI0、ZDI1、・・・、ZDImを介して入力端子DFI0、DFI1、・・・、DFImからデジタルコードC0、C1、・・・、Cmを入力し、SIN波中点デジタルコードメモリ300から入力端子DFREFより中点コードを入力する。そして、デジタルコード期待値比較器301は、デジタルコードC0、C1、・・・、Cmと中点コードとを比較し、比較結果を中点確認回路302へ出力する。
【0073】
中点確認回路302は、ステップS121において順次出力した測定項目毎のSIN波の始点及び終点コードD3と、対応するデジタルコード期待値比較器301の出力とを結合させて、出力端子ZOを介して始点及び終点確認結果としての判定結果D4を出力する。これにより、中点判定処理を終了する。
【0074】
図9は、本発明の実施の形態1にかかる始点及び終点確認結果である判定結果D4のフォーマットの例を示す図である。図9では、図8のフィールドに加え、フィールド4をSIN波の始点のコードの確認結果、フィールド5をSIN波終点のコードの確認結果とする。ここでは、確認結果として始点又は終点コードが中点コードと一致すれば、"0"、中点コードでなければ"1"としている。尚、中点判定器110では、始点又は終点コードと中点コードとを完全一致しなくとも、所定の範囲内であれば中点コードと一致すると、判定しても構わない。例えば、複数の中点コードをSIN波中点デジタルコードメモリ300に登録し、複数の中点コードのいずれかと一致するかを判定してもよい。
【0075】
図10は、本発明の実施の形態1にかかるステップ応答時間測定器測定処理の流れを示すフローチャートである。まず、ステップ応答時間測定器111は、振幅情報D6及びモード設定パタンD5を抽出する(S141)。具体的には、まず、制御手段4は、歪測定プログラムD2により、パタン情報の上位2ビットを"01"に設定し、上位5ビット以降モード設定パタンD5を設定して、バス117へ出力する。次に、パタンメモリ314は、バス117及び双方向バス端子STPIOを介して入力されるパタン情報から、モード設定パタンD5を抽出し、格納する。
【0076】
モード設定パタンD5は、一例として、A/D変換器1のリセットから測定モード設定までのデジタルパタンで構成したものである。尚、モード設定パタンD5は、ステップS11において、オペレータにより歪測定プログラム登録と共にモード設定パタンD5のファイル名が指定されるようにしてもよい。
【0077】
続いて、制御手段4は、歪測定プログラムD2により、制御コードの上位3及び4ビットを"01"に設定し、8ビット以降にアドレス信号SIG2を設定して、コードバス114へ出力する。次に、ステップ応答生成回路311は、コードバス114及び双方向バス端子STIOを介して、測定項目毎のSIN波のアドレス信号SIG2を入力する。尚、アドレス信号SIG2を入力する際に、制御手段4は、歪測定プログラムD2により、転送済みのアドレス信号と同一のアドレス信号SIG2を転送しない処理にしてもよい。これにより、転送対象のデータ量を削減することができる。
【0078】
そして、ステップ応答生成回路311は、入力された測定項目毎のSIN波のコードの全てについて、SIN波の最大値のコードと最小値のコードを検索する。そして、ステップ応答生成回路311は、最大値のコードから最小値のコードを減算することにより、最大振幅を算出する。ステップ応答生成回路311は、算出した最大振幅を振幅情報D6とする。尚、最大値のコードと、最小値のコードとを特定する方法については、実現システムにより任意の方法を用いて構わない。本例では、テーブルROM13内のデジタルコードの配置がアドレス信号に対して昇順に配置されていると仮定し、アドレス信号の最大値、最小値を検索することにより求めるものとする。
【0079】
次に、ステップ応答時間測定器111は、ステップ応答試験信号を作成する(S142)。すなわち、ステップ応答生成回路311は、振幅情報D6を用いて、2種類のステップ応答試験信号D7を生成する。具体的には、ステップ応答生成回路311は、ステップ応答試験信号D7として、最大値のコードから最小値のコードへの立ち上がり試験信号と、最小値のコードから最大値のコードへの立ち下がり試験信号とを生成する。
【0080】
続いて、ステップ応答時間測定器111は、ステップ応答時間Xを測定する(S143)。具体的には、まず、制御手段4は、歪測定プログラムD2により、パタン情報の上位3及び4ビットを"10"に設定して、バス117へ出力する。次に、パタンメモリ314は、モード設定パタンD5を双方向バス端子STPIO及びバス117を介して制御手段4へ出力する。これにより、A/D変換器試験装置202は、A/D変換器1の測定モードの設定を行う。
【0081】
続いて、制御手段4は、歪測定プログラムD2により、制御コードの上位3及び4ビットを"10"に設定し、上位から7ビット目を"1"に設定し、コードバス114へ出力する。ステップ応答生成回路311は、双方向バス端子STIO及びコードバス114を介して、ステップ応答試験信号D7をテーブルROM13へ出力する。
【0082】
これにより、テーブルROM13は、ステップ応答試験信号D7に対応付けられたデジタルコードC0、C1、・・・、CmをD/A変換器15へ出力する。そして、D/A変換器15は、ステップ応答試験信号D7に対応するアナログ電圧Aを変換して、カップリングコンデンサ101へ出力する。そのため、A/D変換器1において変換処理が行われる。すなわち、A/D変換器1からステップ応答試験信号D7の処理結果がデジタルコードB0、B1、・・・、Bnとして出力される。
【0083】
また、このとき、制御手段4は、歪測定プログラムD2により、制御コードにステップ応答試験における期待値を設定し、コードバス114へ出力する。ステップ応答生成回路311は、入力したステップ応答生成回路311は、入力端子DFREFを介して期待値をデジタルコード期待値比較器312へ出力する。デジタルコード期待値比較器312の期待値メモリ354は、当該期待値を格納する。尚、ステップ応答試験における期待値は、ステップS11において、オペレータにより歪測定プログラム登録と共に設定されるようにしてもよい。
【0084】
次に、デジタルコード期待値比較器312は、A/D変換器1からのステップ応答試験信号D7の処理結果であるデジタルコードB0、B1、・・・、Bnを入力端子STDI0、STDI1、・・・、STDInを介して入力する。そして、デジタルコード期待値比較器312の比較回路357は、デジタルコードB0、B1、・・・、Bnと、期待値メモリ354から入力される期待値とを比較する。カウンタ313は、測定開始から期待値になるまでの時間を、動作クロックSIG1のカウント数で測定する。そして、カウンタ313は、測定した2つの立ち上がり試験信号及び立ち下がり試験信号に対するステップ応答時間の内、最長の値を選択する。その後、カウンタ313は、選択した値をステップ応答時間D8として出力端子STOを介して、補正波形追加部112に出力する。これにより、ステップ応答時間測定処理を終了する。
【0085】
図11は、本発明の実施の形態1にかかる補正波形追加処理の流れを示すフローチャートである。まず、補正波形追加部112は、補正時間Zを算出する(S151)。具体的には、まず、補正波形生成回路321は、入力端子HSTIを介してステップ応答時間D8を、以下の(2)式に代入して、補正時間Zを算出する。ここで、(2)式における係数Yは、A/D変換器試験装置202の機差と、A/D変換器1の個体差を補完するものである。例えば、係数Yは、1より少し大きな値であるとよい。尚、係数Yは、ステップS11において、オペレータにより歪測定プログラム登録と共に設定されるようにしてもよい。
補正時間Z = ステップ応答時間X × 係数Y ・・・(2)式
【0086】
次に、補正波形追加部112は、SIN波が高周波であるか否かを判定する(S152)。具体的には、補正波形生成回路321は、双方向バス端子HIOを介して入力した測定項目毎のSIN波のアドレス信号SIG2が高周波かであるか否かを判定する。例えば、補正波形生成回路321は、測定項目毎のSIN波の周期の逆数を計算することにより当該SIN波の周波数を算出する。そして、補正波形生成回路321は、当該算出した周波数と、各種初期値D1に含まれる所定の周波数とを比較し、所定の周波数より大きければ、高周波と判定する。尚、所定の周波数は、ステップS11において、オペレータにより歪測定プログラム登録と共に各種初期値D1として登録されるようにしてもよい。尚、中点判定器110において、予め入力波形であるSIN波の周波数が所定数以上であるか否かを判定し、その結果を判定結果D4に含めても構わない。その場合、ステップS152における判定処理は、補正波形生成回路321は、判定結果D4に基づき判定するとよい。
【0087】
ステップS152において高周波と判定された場合、補正波形生成回路321は、スイープ波等を追加する(S153)。具体的には、補正波形生成回路321は、前述した雛形波形記憶手段(不図示)に、予めスイープ波の波形を雛形波形D10として定義したスイープ雛形波形を格納済みであるものとする。そして、補正波形生成回路321は、入力波形の周波数が所定数以上であると判定された場合に、雛形波形記憶手段から取得されるスイープ雛形波形に基づき、当該入力波形の前後に追加するための第1部分波形及び第2部分波形を補正時間Zの長さに応じて生成する。
【0088】
特に、補正波形生成回路321は、補正時間Zの一部である部分時間の長さ分のスイープ波形を第1部分波形として生成する。また、補正波形生成回路321は、入力波形の周波数及び振幅に基づき、補正時間Zから当該部分時間を除いた残存時間の長さ分の第3部分波形を生成する。そして、連結回路322は、当該第1部分波形の直後に当該第3部分波形を連結して第1補正波形として生成する。また、補正波形生成回路321は、当該部分時間の長さ分のスイープ波形を第2部分波形として生成する。
【0089】
図12は、本発明の実施の形態1にかかる補正波形の例を示す図である。補正後波形600は、入力波形がステップ153により補正された波形である。ここでは、補正時間Zは、時刻T0乃至時刻T3である。そして、ここでは、スイープ波のコードとSIN波のコードの時間的割合、すなわち、上述した部分時間Z1aと残存時間Z2の割合を4:3とする。尚、当該割合は任意に変更して構わない。尚、当該割合は、ステップS11において、オペレータにより歪測定プログラム登録と共に設定されるようにしてもよい。また、少なくとも部分時間Z1aが存在すればよく、場合によっては、残存時間Z2は0であっても構わない。但し、部分時間Z1aと残存時間Z2とを所定の割合とすることで、歪みを抑えることができる。
【0090】
そのため、例えば、補正波形生成回路321は、補正時間Zの4/7の部分時間Z1aに相当する時刻T0から時刻T2について、雛形波形D10を用いて、電圧V0を始点とし、入力波形の始点を終点としたスイープ波を生成する。また、補正波形生成回路321は、補正時間Zの3/7の残存時間Z2に相当する時刻T2から時刻T3について、入力波形の始点を、始点及び終点としたSIN波を発生させる。これにより、始点における高周波数に起因するSIN波形の歪みを抑えることができる。さらに、直前の測定項目の入力波形の終点との電位差を少なくし、かつ、直後の測定項目の入力波形の始点との電位差を抑えることができる。そのため、測定待ち時間を補正時間Z内に抑えることができる。
【0091】
そして、補正波形生成回路321は、補正時間Zの4/7の部分時間Z1bに相当する時刻T4から時刻T6について、雛形波形D10を用いて、入力波形の終点を始点とし、電圧V0を終点としたスイープ波を生成する。これにより、終点における高周波数に起因するSIN波形の歪みを抑えることができる。特に、終点の補正波形は、電圧V0を終点とすれば十分であるため、補正波形を最小限としつつ、直後の入力波形との電位差を抑えることができる。そのため、測定待ち時間を補正時間Z内に抑えることができる。
【0092】
尚、スイープ波のコードの生成方法としては、例えば、時刻T0から時刻T2まで、1周期毎に振幅を段階的に最大振幅まで大きくするようSIN波を発生させて、近似的なスイープ波とすることができる。ここで、SIN波を発生させているのは、より測定時の波形を安定させるためである。
【0093】
次に、連結回路322は、時刻T0から時刻T2までを4の長さのスイープ波のコード、時刻T2から時刻T3までを3の長さのSIN波のコード、時刻T3から時刻T4までの補正前のSIN波のコード、時刻T4から時刻T6までの3の割合のスイープ波のコードの順序で連結する。そして、連結回路322は、連結したコードを双方向バス端子HIO及びコードバス114を介して、制御手段4へ出力する。これにより、連結したコードつまり、補正後の波形が補正波形追加後の歪測定プログラムD11として登録される。
【0094】
また、パタン追加回路323は、予め測定項目毎のデジタルパタンを保持しておき、測定項目毎のデジタルパタンに、時刻T0から時刻T3及び時刻T4から時刻T6までと同時間のパタンループ記述を追加する。そして、パタン追加回路323は、予め保持されたデジタルパタンに対して追加されたデジタルパタンの伸張を行い、双方向バス端子HDIO、バス117を介して、制御手段4へ出力する。尚、パタンループ記述は、各測定器メーカによりフォーマットが異なるが、短いものは時刻T0から時刻T3及び時刻T4から時刻T6の場所にそれぞれ1行の場合もあり、容易に追加可能である。
【0095】
図11に戻り、ステップS152において高周波でないと判定された場合、補正波形追加部112は、SIN波の始点及び終点が共に中点であるか否かを判定する(S154)。具体的には、まず、補正波形生成回路321は、入力端子HZIを介して判定結果D4を入力する。そして、測定項目毎のSIN波のコードのうち、ステップS152で高周波でないと判定されたコードについて、補正波形生成回路321は、判定結果D4のSIN波の始点及び終点のコードの確認結果を参照し、判定する。例えば、図9の場合、フィールド4及びフィールド5のいずれかもが"0"であれば、SIN波の始点及び終点が中点であると判定する。
【0096】
ステップS154において中点でないと判定された場合、補正波形生成回路321は、SIN波又はランプ波等を追加する(S155)。具体的には、補正波形生成回路321は、前述した雛形波形記憶手段(不図示)に、予めSIN波又はランプ波の波形を雛形波形D10として定義した雛形波形を格納済みであるものとする。ここでは、説明のため、雛形波形D10がSIN波形であるものとする。尚、雛形波形D10をSIN波形又はランプ波形のいずれとするかは、ステップS11において、オペレータにより歪測定プログラム登録と共に設定されるようにしてもよい。
【0097】
このとき、補正波形生成回路321は、雛形波形D10に基づき、中点を始点の電位とし、入力波形の始点の電位を終点の電位としたSIN波形を含めて第1補正波形として生成する。併せて、補正波形追加部112は、雛形波形D10に基づき、入力波形の終点の電位を始点の電位とし、中点を終点の電位としたSIN波形を含めて第2補正波形として生成することが望ましい。
【0098】
特に、補正波形生成回路321は、補正時間Zの一部である部分時間の長さ分のSIN波形を第1部分波形として生成する。また、補正波形生成回路321は、入力波形の周波数及び振幅に基づき、補正時間Zから当該部分時間を除いた残存時間の長さ分の第3部分波形を生成する。そして、連結回路322は、当該第1部分波形の直後に当該第3部分波形を連結して第1補正波形として生成する。また、補正波形生成回路321は、当該部分時間の長さ分のSIN波形を第2部分波形として生成する。
【0099】
ここで、図12の補正後波形601は、雛形波形D10がSIN波形である場合を示す。尚、補正後波形602は、雛形波形D10がランプ波形である場合を示す。具体的には、雛形波形D10として、位相90度から0度までのSIN波の雛形波形と、位相270度から360度までのSIN波の雛形波形であるものとする。例えば、補正波形生成回路321は、判定結果D4内のアドレス信号を参照し、SIN波始点コードが、中点より高い側から始まっている場合、位相0度から90度までのSIN波形の雛形波形を選択する。そして、補正波形生成回路321は、選択した雛形波形を、部分時間Z3aに相当する時刻T0から時刻T1について、SIN波のコードとして割り当てる。また、補正波形生成回路321は、残存時間に相当する時刻T1から時刻T3について、合計して補正時間ZになるようにSIN波を発生させる。
【0100】
これにより、直前の測定項目の入力波形の終点との電位差を少なくし、かつ、直後の測定項目の入力波形の始点との電位差を抑えるため、測定待ち時間を補正時間Z内に抑えることができる。さらに、スイープ波に比べて処理が簡潔に行うことができ、処理パフォーマンスを上げることができる。
【0101】
同様に、補正波形生成回路321は、位相270度から360度までのSIN波の雛形波形を選択する。そして、補正波形生成回路321は、選択した雛形波形を、部分時間Z3aと同時間の部分時間Z3bに相当する時刻T4から時刻T5について、SIN波のコードとして割り当てる。終点の補正波形は、電圧V0を終点とすれば十分であるため、補正波形を最小限としつつ、直後の入力波形との電位差を抑えるため、測定待ち時間を補正時間Z内に抑えることができる。
【0102】
次に、連結回路322は、時刻T0から時刻T1までをSIN波のコード、時刻T1から時刻T3までをSIN波のコード、時刻T3から時刻T4までの補正前のSIN波のコード、時刻T4から時刻T5までをSIN波のコードの順序で連結する。そして、連結回路322は、連結したコードを双方向バス端子HIO及びコードバス114を介して、制御手段4へ出力する。これにより、連結したコードつまり、補正後の波形が補正波形追加後の歪測定プログラムD11として登録される。
【0103】
また、パタン追加回路323は、ステップS153と同様に処理を行うため、説明を省略する。
【0104】
図11に戻り、ステップS154においてSIN波の始点及び終点が共に中点であると判定された場合、補正波形追加部112は、補正時間Zの長さのSIN波を追加する(S156)。具体的には、補正波形生成回路321は、補正時間Zに相当する時刻T0から時刻T3について、SIN波を発生させる。
【0105】
すなわち、補正波形生成回路321は、入力波形の直前に入力される波形の終点の電位と当該入力波形の始点の電位とが共に所定値であると判定された場合に、当該入力波形の周波数及び振幅に基づき、補正時間Zの長さ分の波形を第1補正波形として生成する。
【0106】
図12の補正後波形603は、SIN波の始点及び終点が共に中点である場合を示す。例えば、補正波形生成回路321は、時刻T0から時刻T3までの補正時間Zの長さのSIN波のコードを発生させ、連結回路322に転送する。連結回路322は、測定項目毎に発生された、時刻T0から時刻T3までの補正時間Zの長さのSIN波のコードからなる補正波形のコードと、時刻T3から時刻T4までの補正前の測定項目毎のSIN波のコードとを連結する。そして、連結回路322は、双方向バス端子ZIO及びコードバス114を介して、制御手段4へ出力する。また、パタン追加回路323は、ステップS153と同様に処理を行うため、説明を省略する。これにより、補正波形追加処理を終了する。
【0107】
その後、A/D変換器試験装置202は、補正波形追加後の歪測定プログラムD11により、A/D変換器1の歪み測定の性能試験を行う。
【0108】
このように、本発明の実施の形態1は、A/D変換器試験装置202とA/D変換器1の入力端子の間にカップリングコンデンサ101を接続する回路構成を対象とする。そして、A/D変換器試験装置202は、入力波形として例えばSIN波を入力して、A/D変換器1の歪測定試験を行う。A/D変換器試験装置202は、波形補正装置として動作するものである。当該波形補正装置は、入力するSIN波形を確認する中点判定器110と、A/D変換器試験装置202のステップ応答時間を測定するステップ応答時間測定器111と、入力するSIN波形歪の安定化のための補正波形のコードつまりアドレス信号を追加する補正波形追加部112とを有する。
【0109】
上述した図12の補正波形の例では、まず、SIN波が高周波である場合は、補正後波形600で示すように、時刻T0から時刻T2までのスイープ波と、時刻T2から時刻T3までSIN波と、時刻T4から時刻T6までのスイープ波とからなる補正波形を追加できる。また、SIN波の始点又は終点のいずれかが中点でない場合は、補正後波形601及び602で示す、時刻T0から時刻T1までと、時刻T4から時刻T5までのSIN波又はランプ波からなる補正波形を追加できる。また、高周波でなく、かつ、SIN波の始点及び終点が共に中点である場合は、時刻T0から時刻T3までの補正波形を追加できる。
【0110】
これにより、各測定項目の性能試験開始時のカップリングコンデンサ101の入出力での電圧変動要因をSIN波のみとする。そのため、A/D変換器1の入力端子のカップリングコンデンサ101の入出力間の急激な電圧変動を原因とするSIN波形の歪みを抑止する。よって、A/D変換器1の歪み測定の性能試験の時間の大部分を占める試験開始時のSIN波形の歪みの安定化の為の測定待ち時間を削減する。それ故、A/D変換器1の歪み測定の性能試験の時間を大幅に短縮できる。
【0111】
尚、経験則として、正常な測定が開始されるまでの待ち時間は、上記のステップ応答時間約500msの3〜4倍である。本発明の実施の形態1では、当該待ち時間が削減されるため、例えば、測定待ち時間を1/3〜1/4削減できる。
【0112】
測定待ち時間の削減の例を以下に示す。以下の例では、1つの測定項目の測定時間で1.5sの測定時間が0.5sになり、1.0s短縮できたことを示す。また、1つの歪測定プログラム内での測定回数が多くなるほど、削減効果は上がる。仮に、補正時間を1.0sとし、歪測定プログラム内の測定項目数を43とすると、以下の(3)式、(4)式及び(5)式の結果となる。
従来の試験時間 = 1.5(s)×43
= 64.5(s) ・・・(3)式
本発明による試験時間 = 1.0(s)+(0.5(s)×43)
= 22.5(s) ・・・(4)式
削減効果 = 64.5(s)−22.5(s)
= 42.0(s) ・・・(5)式
【0113】
尚、本発明の実施の形態1は、カップリングコンデンサ101を介してA/D変換器1へ入力するための第1波形及びを当該第1波形の直後に入力する第2波形を補正する当該A/D変換器1の試験装置における波形補正方法ということができる。当該波形補正方法は、第1波形及び第2波形の特徴に応じて所定の補正時間の長さ分の第1補正波形を生成し、第2波形の直前に当該第1補正波形を追加することを含むものである。
【0114】
また、当該波形補正方法は、第1波形の終点及び第2波形の始点の電位が所定値であるか否かを判定し、第1波形の終点の電位又は第2波形の始点の電位のいずれかが所定値でないと判定された場合に、所定値を始点の電位とし、第1波形の始点の電位を終点の電位とした波形であり、所定の補正時間の長さに応じた第1補正波形を生成し、第2波形の直前に当該第1補正波形を追加することが望ましい。
【0115】
さらに、当該波形補正方法は、第1波形の終点の電位が所定値でないと判定された場合に、第1波形の終点の電位を始点の電位とし、所定値を終点の電位とした波形であり、補正時間の長さに応じた第2補正波形を生成し、第1波形の直後に当該第2補正波形を追加するとよい。
【0116】
<その他の発明の実施の形態>
尚、本発明の実施の形態1では、中点判定器110を用いたが、入力波形の始点及び終点の判定対象を必ずしも中点とする必要はない。例えば、中点判定器110の代わりに、任意の電位である所定値に基づき、入力波形の始点の電位を判定する判定部を用いても構わない。その場合、判定部は、少なくとも入力波形の始点の電位が所定値であるか否かを判定し、補正波形追加部112は、中点の代わりに所定値として補正波形を生成し、追加することとなる。これは、中点以外の点で、歪みを少なくする電位が予めわかっている場合に適用可能である。
【0117】
さらに、当該判定部は、入力波形の終点の電位が所定値であるか否かを判定することが望ましい。例えば、上述した判定部は、所定値に基づき、入力波形の終点の電位を判定し、補正波形追加部112は、中点の代わりに所定値として補正波形を生成し、追加することとなる。これにより、前後の測定項目におけるSIN波同士において、電位差を小さくすることができ、カップリングコンデンサ101における急激な電圧変動を抑えることができる。
【0118】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0119】
1 A/D変換器
3 デジタルコード測定手段
4 制御手段
12 デジタルコード対応アナログ電圧連続発生手段
13 テーブルROM
15 D/A変換器
101 カップリングコンデンサ
102 抵抗
103 電源
110 中点判定器
111 ステップ応答時間測定器
112 補正波形追加部
113 クロックバス
114 コードバス
115 バス
116 バス
117 バス
200 A/D変換器試験装置
201 テストボード
202 A/D変換器試験装置
300 SIN波中点デジタルコードメモリ
301 デジタルコード期待値比較器
302 中点確認回路
311 ステップ応答生成回路
312 デジタルコード期待値比較器
313 カウンタ
314 パタンメモリ
321 補正波形生成回路
322 連結回路
323 パタン追加回路
3510、3511、・・・、351m コンパレータ
3520、3521、・・・、352m コンパレータ
3530、3531、・・・、353m 判定回路
354 期待値メモリ
355 下限電圧生成回路
356 上限電圧生成回路
357 比較回路
600 補正後波形
601 補正後波形
602 補正後波形
603 補正後波形
700 入力波形
701 出力波形
710 入力波形
711 出力波形
720 入力波形
721 出力波形
A アナログ電圧
B0、B1、・・・、Bn デジタルコード
C0、C1、・・・、Cm デジタルコード
D1 各種初期値
D2 歪測定プログラム
D3 始点及び終点コード
D4 判定結果
D5 モード設定パタン
D6 振幅情報
D7 ステップ応答試験信号
D8 ステップ応答時間
D9 補正時間
D10 雛形波形
D11 補正波形追加後の歪測定プログラム
DFCK 入力端子
DFI0、DFI1、・・・、DFIm 入力端子
DFREF 入力端子
DFO 出力端子
HCK 入力端子
HIO 双方向バス端子
HPIO 双方向バス端子
HSTI 入力端子
HZI 入力端子
SIG1 動作クロック
SIG2 アドレス信号
SIG3 デジタルパタン
STCK 入力端子
STDI0、STDI1、・・・、STDIn 入力端子
STIO 双方向バス端子
STPIO 双方向バス端子
STO 出力端子
ZCK 入力端子
ZDI0、ZDI1、・・・、ZDIm 入力端子
ZIO 双方向バス端子
ZO 出力端子
VOH 電圧
VOL 電圧
T0 時刻
T1 時刻
T2 時刻
T3 時刻
T4 時刻
T5 時刻
T6 時刻
T800END 時刻
T801START 時刻
T810START 時刻
T820START 時刻
T820END 時刻
V0 電圧
Z 補正時間
Z1a 部分時間
Z1b 部分時間
Z2 残存時間
Z3a 部分時間
Z3b 部分時間
aa 歪み箇所
bb 歪み箇所
cc 歪み箇所
dd 歪み箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップリングコンデンサを介してA/D変換器へ入力するための入力波形を補正する波形補正装置であって、
前記入力波形の特徴に応じて所定の補正時間の長さ分の第1補正波形を生成し、前記入力波形の直前に当該第1補正波形を追加する補正波形追加部を備える波形補正装置。
【請求項2】
前記入力波形の始点の電位が所定値であるか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記補正波形追加部は、前記入力波形の始点の電位が所定値でないと判定された場合に、前記所定値を始点の電位とし、前記入力波形の始点の電位を終点の電位とした波形を前記第1補正波形として生成することを特徴とする請求項1に記載の波形補正装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記入力波形の終点の電位が所定値であるか否かをさらに判定し、
前記補正波形追加部は、前記入力波形の終点の電位が所定値でないと判定された場合に、前記入力波形の終点の電位を始点の電位とし、前記所定値を終点の電位とした波形であり、前記補正時間の長さに応じた第2補正波形を生成し、前記入力波形の直後に当該第2補正波形を追加することを特徴とする請求項2に記載の波形補正装置。
【請求項4】
前記入力波形の振幅に応じてステップ応答試験信号を生成し、前記A/D変換器が当該ステップ応答試験信号を処理した結果に基づいて前記A/D変換器のステップ応答時間を測定するステップ応答時間測定手段をさらに備え、
前記補正波形追加部は、前記ステップ応答時間を用いて前記補正時間を算出することを特徴とする請求項3に記載の波形補正装置。
【請求項5】
所定の波形を雛形として定義した雛形波形を格納する雛形波形記憶手段をさらに備え、
前記補正波形追加部は、
前記雛形波形記憶手段から取得される雛形波形に基づき、前記所定値を始点の電位とし、前記入力波形の始点の電位を終点の電位とした第1部分波形を含めて前記第1補正波形として生成し、
前記雛形波形記憶手段から取得される雛形波形に基づき、前記入力波形の終点の電位を始点の電位とし、前記所定値を終点の電位とした第2部分波形を含めて前記第2補正波形として生成する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の波形補正装置。
【請求項6】
前記補正波形追加部は、
前記補正時間の一部である部分時間の長さ分の波形を前記第1部分波形として生成し、前記入力波形の周波数及び振幅に基づき、前記補正時間から当該部分時間を除いた残存時間の長さ分の第3部分波形を生成し、当該第1部分波形の直後に当該第3部分波形を連結して前記第1補正波形として生成し、
前記部分時間の長さ分の波形を前記第2部分波形として生成する
ことを特徴とする請求項5に記載の波形補正装置。
【請求項7】
前記雛形波形記憶手段は、スイープ波の波形を雛形として定義したスイープ雛形波形をさらに格納し、
前記判定部は、前記入力波形の周波数が所定数以上であるか否かを判定し、
前記補正波形追加部は、前記入力波形の周波数が所定数以上であると判定された場合に、前記雛形波形記憶手段から取得されるスイープ雛形波形に基づき、前記第1部分波形及び前記第2部分波形を生成することを特徴とする請求項5又は6に記載の波形補正装置。
【請求項8】
前記補正波形追加部は、前記入力波形の直前に入力される波形の終点の電位と当該入力波形の始点の電位とが共に所定値であると判定された場合に、当該入力波形の周波数及び振幅に基づき、前記補正時間の長さ分の波形を前記第1補正波形として生成することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の波形補正装置。
【請求項9】
前記所定値は、前記入力波形における振幅の中点の電位であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の波形補正装置。
【請求項10】
前記入力波形は、正弦波形であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の波形補正装置。
【請求項11】
カップリングコンデンサを介してA/D変換器へ入力するための第1波形及びを当該第1波形の直後に入力する第2波形を補正する当該A/D変換器の試験装置における波形補正方法であって、
前記第1波形及び前記第2波形の特徴に応じて所定の補正時間の長さ分の第1補正波形を生成し、
前記第2波形の直前に当該第1補正波形を追加する
ことを含む波形補正方法。
【請求項12】
前記第1波形の終点及び前記第2波形の始点の電位が所定値であるか否かを判定し、
前記第1波形の終点の電位又は前記第2波形の始点の電位のいずれかが所定値でないと判定された場合に、前記所定値を始点の電位とし、前記第1波形の始点の電位を終点の電位とした波形を前記第1補正波形として生成すること特徴とする請求項11に記載の波形補正方法。
【請求項13】
前記第1波形の終点の電位が所定値でないと判定された場合に、前記第1波形の終点の電位を始点の電位とし、前記所定値を終点の電位とした波形であり、前記補正時間の長さに応じた第2補正波形を生成し、
前記第1波形の直後に当該第2補正波形を追加することを特徴とする請求項12に記載の波形補正方法。
【請求項14】
前記第1波形及び前記第2波形の振幅に応じてステップ応答試験信号を生成し、
前記A/D変換器が当該ステップ応答試験信号を処理した結果に基づいて前記A/D変換器のステップ応答時間を測定し、
前記ステップ応答時間を用いて前記補正時間を算出することを特徴とする請求項13に記載の波形補正方法。
【請求項15】
前記試験装置は、所定の波形を雛形として定義した雛形波形を格納する雛形波形記憶手段をさらに備え、
前記雛形波形記憶手段から取得される雛形波形に基づき、前記所定値を始点の電位とし、前記第2波形の始点の電位を終点の電位とした第1部分波形を含めて前記第1補正波形として生成し、
前記雛形波形記憶手段から取得される雛形波形に基づき、前記第1波形の終点の電位を始点の電位とし、前記所定値を終点の電位とした第2部分波形を含めて前記第2補正波形として生成する
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の波形補正方法。
【請求項16】
前記補正時間の一部である部分時間の長さ分の波形を前記第1部分波形として生成し、前記第2波形の周波数及び振幅に基づき、前記補正時間から当該部分時間を除いた残存時間の長さ分の第3部分波形を生成し、当該第1部分波形の直後に当該第3部分波形を連結して前記第1補正波形として生成し、
前記部分時間の長さ分の波形を前記第2部分波形として生成する
ことを特徴とする請求項15に記載の波形補正方法。
【請求項17】
前記雛形波形記憶手段は、スイープ波の波形を雛形として定義したスイープ雛形波形をさらに格納し、
前記第1波形及び前記第2波形の周波数が所定数以上であるか否かを判定し、
前記第1波形及び前記第2波形の周波数が所定数以上であると判定された場合に、前記雛形波形記憶手段から取得されるスイープ雛形波形に基づき、前記第1部分波形及び前記第2部分波形を生成することを特徴とする請求項15又は16に記載の波形補正方法。
【請求項18】
前記第1波形の終点の電位と前記第2波形の始点の電位とが共に所定値であると判定された場合に、当該第2波形の周波数及び振幅に基づき、前記補正時間の長さ分の波形を前記第1補正波形として生成することを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の波形補正方法。
【請求項19】
前記所定値は、前記第1波形及び前記第2波形における振幅の中点の電位であることを特徴とする請求項11乃至18のいずれか1項に記載の波形補正方法。
【請求項20】
前記第1波形及び前記第2波形は、正弦波形であることを特徴とする請求項11乃至19のいずれか1項に記載の波形補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−127998(P2011−127998A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286468(P2009−286468)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】