説明

注入のためのトリアムシノロンアセトアニドおよび酢酸アネコルタブの処方物

トリアムシノロンアセトニドまたは酢酸アネコルタブの注入可能組成物が開示される。本組成物は、眼科疾患を処置するために、眼の後区に注入するのに特に適切である。本発明は、眼への注入に特に適切である、改善されたトリアムシノロンアセトニド懸濁液組成物および酢酸アネコルタブ懸濁液組成物を提供する。この改善された懸濁液組成物は、優れた沈降特性を有し、穏やかな振盪で容易に再懸濁され、保存剤も界面活性剤も含まれておらず、そして30ゲージ針を通して滑らかかつ容易に注入され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、眼の疾患または状態を処置するために使用される注入用処方物に関する。より詳細には、本発明は、眼に注入するために設計されたステロイドトリアムシノロンまたはコルチゾン(cortisene)酢酸アネコルタブの処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
トリアムシノロンアセトニドを含有する注入用組成物は、長年利用可能である。Kenalog(登録商標)−10 Injection(トリアムシノロンアセトニド注入可能懸濁液、USP)およびKenalog(登録商標)−40 Injection(トリアムシノロンアセトニド注入可能懸濁液、USP)を含む市販製品は、Bristol−Myers Squibb Co.によって市販されている。これらの製品は、それぞれ10mg/mlまたは40mg/mlのトリアムシノロンアセトニドを含有する。パッケージの挿入物に従って、Kenalog(登録商標)−40 Injectionは、特定の筋肉内使用および関節内使用について承認されている。経口治療が実現可能でないか、または医師の判断によって一時的に所望されない場合、Kenalog(登録商標)−40 Injectionが、内分泌性障害、リウマチ性障害、膠原病、皮膚病、アレルギー性状態、眼科疾患、胃腸疾患、呼吸疾患、血液学的障害、新形成障害、および浮腫性状態についての特定の場合における筋肉内使用について示されている。承認された眼の特異適応は、眼に関連する重篤な慢性的なアレルギープロセスおよび炎症プロセス(例えば、眼部帯状疱疹;虹彩炎;虹彩毛様体炎;脈絡網膜炎;びまん性後部ブドウ膜炎および脈絡膜炎;視神経炎;交感性眼炎;ならびに前眼部炎症)である。Kenalog(登録商標)−40 Injectionは、関節内投与または嚢内投与について示され、そして(患者が急性エピソードまたは増悪を乗り切るために)、変形性関節症;慢性関節リウマチ;急性滑液包炎および亜急性滑液包炎;急性通風関節炎;外上顆炎;急性非特異的腱滑膜炎;ならびに外傷後変形性関節症のうちの滑膜炎において、短期間投与のためのアジュバント治療として腱鞘への注入について示される。
【0003】
最近、Kenalog(登録商標)−40 Injectionを使用して糖尿病性黄斑浮腫を処置することは、より一般的になってきている。この使用において、製品は、糖尿病性黄斑浮腫で苦しむ患者のガラス体に注入される。いくつかの場合において、この製品は、Bristol−Myers Squib Co.によって供給されるKenalog(登録商標)−40 Injection処方物中に存在する保存剤を除去する試みにおいて医師によって加工される。なぜならば、上記保存剤は、眼の後区中のガラス体および組織に炎症を起こさせ得るからである。さらに、市販の製品は、沈降を避けるためにその製品が振盪された後即座に使用されなければならず、パッケージの挿入物には、以下のように書いてある:「振盪された製品のバイアルから抜き取った後、シリンジ中で沈降するのを防ぐために、遅れることなく注入する」。
【0004】
酢酸アネコルタブは、眼の新脈管形成関連障害を処置するために有用であることが公知の化合物である。特許文献1は、眼の新生血管形成を処置または防ぐのに有用な、酢酸アネコルタブを含む特定の化合物を開示する。滅菌眼内注入のための処方物を含む種々の処方物が、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】米国特許第6,011,023号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要とされているのは、眼への注入に適切で急速には沈降せず、自己密封する刺創についての可能性を提供する小さな針(例えば、27ゲージまたは30ゲージ)を通じて容易に注入され得る、改善されたトリアムシノロンアセトニド懸濁液組成物または酢酸アネコルタブ懸濁液組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、眼への注入に特に適切である、改善されたトリアムシノロンアセトニド懸濁液組成物および酢酸アネコルタブ懸濁液組成物を提供する。この改善された懸濁液組成物は、優れた沈降特性を有し、穏やかな振盪で容易に再懸濁され、保存剤も界面活性剤も含まれておらず、そして30ゲージ針を通して滑らかかつ容易に注入され得る。
【0007】
他の要因のうち、本発明は、現在入手可能なKenalog(登録商標)−40 Injectionトリアムシノロンアセトニド組成物に対して、改善された沈降特性を有するトリアムシノロンアセトニドまたは酢酸アネコルタブの懸濁液組成物が、いかなる界面活性剤成分を含むことも必要とせずに得られ得るという知見に基づく。本発明はまた、界面活性剤成分を欠くこのようなトリアムシノロンアセトニド懸濁液組成物または酢酸アネコルタブ懸濁液組成物がまた、現在入手可能なKenalog−40 Injectionトリアムシノロンアセトニド組成物よりも、30ga.のカニューレを通してより容易に注入され得るという知見に基づく。
【0008】
(発明の詳細な説明)
他に示さない限り、すべての成分量は、%(w/v)単位で表される。
【0009】
本発明の懸濁液組成物は、本質的にトリアムシノロンアセトニドまたは酢酸アネコルタブ、ポリビニルピロリドン、張度調整剤、緩衝剤、および注入用水からなる。
【0010】
トリアムシノロンアセトニドは、公知の方法によって作製され得るステロイドであり、微粉形態でさえ市販されている。このトリアムシノロンアセトニドは、およそ2μm以下の標準偏差を有して平均体積直径が4μm以下、好ましくは3μm以下であるような大きさにされることが重要である。ボールミリングのような分粒技術が公知であり、これらの粒子サイズと分布要件とを達成するために使用され得る。本発明の懸濁液組成物は、0.1%〜25%のトリアムシノロンアセトニドを含有し、そして眼の後区への注入が予定される場合、本発明の懸濁液組成物は、好ましくは、その組成物が、4%、8%、16%、または25%のトリアムシノロンアセトニドを含有するように処方される。最も好ましいのは、4%または8%のトリアムシノロンアセトニドを含有する懸濁液組成物である。
【0011】
酢酸アネコルタブは、公知の血管新生を抑制するコルチゾン(angiostatic cortisene)化合物である。トリアムシノロンアセトニドの場合においてと同様に、この酢酸アネコルタブは、およそ2μm以下の標準偏差を有して平均体積直径が4μm以下、好ましくは3μm以下であるような大きさにされることが重要である。ボールミリングのような分粒技術が公知であり、これらの粒子サイズと分布要件とを達成するために使用され得る。本発明の懸濁液組成物は、一般的に1%〜16%の酢酸アネコルタブを含有する。上記懸濁液が準Tenon領域(sub−Tenon’s region)に注入されるように設計される場合、酢酸アネコルタブの濃度は、好ましくは3%〜6%であり、最も好ましくは3%である。上記懸濁液がガラス体に注入されるように設計される場合、酢酸アネコルタブの濃度は、その注入が4mgから50mgの酢酸アネコルタブを送達するような濃度が好ましい。
【0012】
トリアムシノロンアセトニドまたは酢酸アネコルタブに加えて、本発明の懸濁液組成物は、この懸濁液組成物の物理的安定性を高め、任意の分粒プロセスの間その薬物を分散させて濡らすのに十分な量のポリビニルピロリドンを含む。ポリビニルピロリドンは、種々の供給源から、種々の等級および多くの分子量で市販されている。例えば、ポリビニルピロリドンは、International Specialty Products(Wayne,New Jersey)から以下の少なくとも4つの等級で入手可能である:Plasdone(登録商標)C−15(重量平均MW=8K)、C−30(内毒素を含まない、重量平均MW=58,000,K−29/32(重量平均MW=58K)およびK−90(重量平均MW=1300K)。本発明の組成物中に含まれるポリビニルピロリドン成分は、約5000〜1,600,000の重量平均分子量を有する。約55,000〜60,000の重量平均分子量を有するポリビニルピロリドンが最も好ましい。本発明の懸濁液組成物において使用されるべきポリビニルピロリドンの量は、トリアムシノロンアセトニドまたは酢酸アネコルタブの濃度で変動するが、一般的には0.5%〜8%であり得る。4%トリアムシノロンアセトニドを含有する組成物について、ポリビニルピロリドンの適切な量は、0.5%〜1.5%であり、好ましくは1.0%である。8%トリアムシノロンアセトニドを含有する組成物について、適切な量のポリビニルピロリドンは、1.5%〜3%であり、好ましくは2%である。16%トリアムシノロンアセトニドまたは25%トリアムシノロンアセトニドを含有する組成物について、適切な量のポリビニルピロリドンは、3%〜8%であり、好ましくは、4%〜6%である。1%〜3%の酢酸アネコルタブを含有する組成物について、ポリビニルピロリドンの適切な濃度は、0.5%〜1.5%であり、好ましくは1.0%である。
【0013】
本発明の組成物は、50cps.以下の粘度を有し、好ましくは15cps.以下であり、そして最も好ましくは10cps.以下である。この組成物は、非常にゆっくりと沈降し、容易に再懸濁する。この比較的低い粘度は、上記製品が製造、移動、および充填操作の間、容易に加工され、そして27ゲージまたは30ゲージの針を通して容易に押し出されることを確実にする。
【0014】
トリアムシノロンアセトニド成分または酢酸アネコルタブ成分、およびポリビニルピロリドン成分に加えて、本発明の組成物は、張度調整剤(例えば、塩化ナトリウムまたはマンニトール)を含有する。好ましくは、上記張度調整剤は、塩化ナトリウムである。この張度調整剤は、眼が受容可能なオスモル濃度(一般的には、約150〜450mOsm)を有する最終組成物を生じるのに十分な量で存在する。好ましくは、その最終組成物は、250〜350mOsmのオスモル濃度を有し、最も好ましくは、本発明の懸濁液組成物は、270〜320mOsmのオスモル濃度を有する。
【0015】
必要な場合、本発明の懸濁液組成物はまた、この組成物のpHをpH6〜8に調整するためのpH調整剤も含有する。上記懸濁液組成物は、この組成物のpHをpH6〜8の範囲内(好ましくは、pH7.0〜7.6)に維持するための緩衝剤を含有する。適切な緩衝剤としては、リン酸緩衝剤(例えば、リン酸一ナトリウム(二水和物)およびリン酸水素二ナトリウム(十二水和物))が挙げられる。
【0016】
本発明の懸濁液組成物は、好ましくは単位用量容器(例えば、ガラスまたはプラスチックのバイアル)にパッケージングされる。この懸濁液組成物はまた、前もって充填されたシリンジまたはカートリッジにパッケージングされ得る。この懸濁液組成物は、好ましくはガラスバイアルにパッケージングされる。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「眼の後区への」注入としては、ガラス体への注入、強膜へのまたは強膜の下への注入、ならびにガラス体の外側への注入およびテノン嚢(Tenon’s capsule)の下への注入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
1つの実施形態において、本発明は、黄斑浮腫(糖尿病性黄斑浮腫が挙げられるが、これに限定されない)または網膜静脈閉塞症(中心網膜静脈閉塞症および分枝網膜静脈閉塞症が挙げられる)を処置する方法に関し、この方法は、保存剤も界面活性剤も含まず、そして本質的にトリアムシノロンアセトニド、ポリビニルピロリドン、イオン張度調整剤、緩衝剤および注射用水からなる懸濁液組成物を、眼の後区に注入する工程を包含する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、手術後の炎症を処置する方法に関し、この方法は、保存剤も界面活性剤も含まず、そして本質的にトリアムシノロンアセトニド、ポリビニルピロリドン、イオン張度調整剤、緩衝剤および注射用水からなる懸濁液組成物を、眼の前区に注入する工程を包含する。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、眼の後区において眼科疾患または眼科状態(黄斑変性が挙げられるが、これに限定されない)を処置する方法に関し、この方法は、保存剤も界面活性剤も含まず、そして本質的に酢酸アネコルタブ、ポリビニルピロリドン、イオン張度調整剤、緩衝剤、および注射用水からなる懸濁液組成物を、眼の後区に注入する工程を包含する。
【0021】
本発明の特定の実施形態は、以下の実施例において説明される。
【実施例】
【0022】
(実施例1〜3:注入可能なトリアムシノロンアセトニド処方物)
【0023】
【表1】

本実施例の化合物のための代表的な混合手順を以下に提供する。
【0024】
(混合手順)
混合の前に、処方の際に使用するすべてのガラス器具および機器を加熱滅菌する。ポリビニルピロリドンを注入用水に溶解し、次いで、必要量のトリアムシノロンアセトニドおよびボールミリングビーズ(例えば、ジルコニウムビーズ)を添加する。ポリマー溶液/薬物/ビーズの混合物を蒸気滅菌し、ボールミルを使用して60RPMで少なくとも18時間製粉する。別個の容器において、塩化ナトリウム、リン酸一ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムを注入用水に溶解する。この塩溶液を0.2ミクロンの濾過膜を通してフィルター滅菌する。無菌的にブフナー漏斗中で薬物とビーズとを分離し、まず上記塩溶液でジルコニウムビーズをリンスし、次いで注入用水でリンスする。無菌的にpHをチェック/調整し、そして最終重量に調整する。滅菌条件下でこの懸濁液を適切なパッケージング中に充填する。
【0025】
(比較例1:Kenalog(登録商標)−40トリアムシノロンアセトニド(Bristol−Myers Squibb/Apothecon))
【0026】
【表2】

(実施例4:沈降研究)
実施例1〜3および比較例1の組成物を評価して、その組成物の沈降特性を決定した。その組成物を調製した後、各々をメスシリンダーに移し、室温で保管した。以下の表3で示す時点において、視覚的な観察を行い、沈降体積比率(%)を記録した。沈降体積比率(%)は、以下のように計算した:
(沈降体積/総体積)×100
【0027】
【表3】

表3の結果は、室温で静止した後の20分と40分との間で、比較例1の組成物の物理的安定性(沈降)が劇的に変化したことを示す。対照的に、本発明の懸濁液組成物(実施例1〜3)は、そのような劇的な沈降は示さず、実施例1および2の懸濁液組成物は、60分の試験期間を通じて100%の均質性を保持する。
【0028】
(実施例5:押し出し力の評価)
実施例1〜3および比較例1の組成物を評価して、その組成物の「シリンジ通過性(syringeability)」(所定のサイズの針を通じてそれらが押し出され得る相対的な容易さ)を定量した。実施例1〜3および比較例1の組成物をInstron機械(モデル 4501;ロードセルモデル 2525−807、容量 22.48lbs.(実施例1の化合物を除いたすべてのサンプルについて使用);ロードセルモデル 2518−805、容量 1124lbs.(実施例1のサンプルについて使用))を使用して試験し、2つの針サイズ(27ga.および30ga.)を使用してシリンジからそれらを押し出すのに必要とされる力の量(ポンドフィート)を決定した。圧出の速度は、2つの速さ(計算値)のうちのいずれかで一定で維持した:高速(Instronヘッド 8.8mL/分または20in./分)または低速(Instronヘッド 0.85mL/分または1.93in./分)。BSS(登録商標)(平衡塩類溶液)洗浄(irrigating)溶液をコントロールとして使用した。各組成物およびコントロール溶液の10個のサンプルからの平均的な結果を表4に示す。
【0029】
【表4】

より抵抗性が高いので、より高いロードセル(モデル 2518−805)とルアーロックシリンジとを使用しなければならなかった。この結果は、本実験において使用するすべてのシリンジの内径が同じであるので、比較可能である。
結果の広範な変動物:2.4〜17.5 lb.ft.
いくつかのシリンジが詰まった。
サンプルのうちの1つは、針を吹き飛ばした。
【0030】
(実施例6:他の物理的特性)
粘度、平均粒径、および再懸濁性(resuspendability)を実施例1〜3および比較例1の組成物について決定した。Brookfield粘度計(30RPMのCP−42)を使用して粘度を決定した。再分散性(resdispersibility)を手で振盪したサンプルの目視検査によって決定した。この結果を表5に示す。
【0031】
【表5】

(実施例7および8:注入可能な酢酸アネコルタブ処方物)
【0032】
【表6】

本実施例の化合物のための代表的な混合手順を以下に提供する。
【0033】
(混合手順)
混合の前に、処方の際に使用するすべてのガラス器具および機器を加熱滅菌する。ポリビニルピロリドンを注入用水に溶解し、次いで、必要量の酢酸アネコルタブおよびボールミリングビーズ(例えば、ジルコニウムビーズ)を添加する。ポリマー溶液/薬物/ビーズの混合物を蒸気滅菌し、ボールミルを使用して60RPMで少なくとも18時間製粉する。別個の容器において、塩化ナトリウム、リン酸一ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムを注入用水に溶解する。この塩溶液を0.2ミクロンの濾過膜を通してフィルター滅菌する。無菌的にブフナー漏斗中で薬物とビーズとを分離し、まず上記塩溶液でジルコニウムビーズをリンスし、次いで注入用水でリンスする。無菌的にpHをチェック/調整し、そして最終重量に調整する。滅菌条件下でこの懸濁液を適切なパッケージング中に充填する。
【0034】
(実施例9:沈降研究)
実施例7および8の組成物を評価して、その組成物の沈降特性を決定した。その組成物を調製した後、各々をメスシリンダーに移し、室温で保管した。以下の表7で示す時点において、視覚的な観察を行い、沈降体積比率(%)を記録した。沈降体積比率(%)は、以下のように計算した:(沈降体積/総体積)×100。
【0035】
【表7】

上の表3の結果は、室温で静止した後の20分と40分との間で、比較例1の組成物の物理的安定性(沈降)が劇的に変化したことを示す。対照的に、本発明の懸濁液組成物(実施例7および8)についての表7の結果は、そのような劇的な沈降は示さず、実施例7および8の懸濁液組成物は、240分の試験期間を通じて100%の均質性を保持した。
【0036】
(実施例10:押し出し力の評価)
実施例7および8の組成物を評価して、その組成物の「シリンジ通過」(所定のサイズの針を通じてそれらが押し出され得る相対的な容易さ)を定量した。この組成物をInstron機械(モデル 4501;ロードセルモデル 2525−807、容量 22.48lbs.(すべてのサンプルについて使用))を使用して試験し、2つの針サイズ(27ga.および30ga.)を使用してシリンジからそれらを押し出すのに必要とされる力の量(ポンドフット)を決定した。圧出の速度は、2つの速度(計算値)のうちのいずれかで一定で維持した:高速(Instronヘッド 8.8mL/分または20in./分)または低速(Instronヘッド 0.85mL/分または1.93in./分)。このサンプルを18ga.針を通して引き上げることによってツベルクリンシリンジにロードした。このシリンジをおよそ1ccレベルまで充填し後、この18ga.針を除いて、30ga.または27ga.のいずれかの針を取り付けた。次いでこのシリンジをInstron機械中に配置し、押し出し力を測定した。各針サイズおよび各速度におけるサンプルについて、10個の定量を行って平均値を決定した(注記する以外)。このデータを以下の表8に提示する。
【0037】
【表8】

4つの高い外れ値は、4s.d.ルールに従って切り捨てた。
【0038】
本発明は、特定の好ましい実施形態に対する参照によって記載されているが、しかし、本発明は、その特別な特性または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態またはその改変体において具体化され得ることが理解されるべきである。従って、上記に記載の実施形態は、すべての局面において説明であり限定ではないと考えられ、本発明の範囲は、前述の説明によってよりも添付された特許請求の範囲によって示されると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼への注入のために特に適切な懸濁液組成物であって、該懸濁液組成物は、保存剤または界面活性剤を含まず、そしてpH6〜8および50cps.以下の粘度を有し、ここで該懸濁液組成物は、本質的に以下からなる、懸濁液組成物:
a)トリアムシノロンアセトニドまたは酢酸アネコルタブ;
b)該懸濁液組成物の物理的安定性を高めるために十分な量のポリビニルピロリドン;
c)該懸濁液組成物が150〜450mOsmの重量オスモル濃度を有するようにするのに十分な量の張度調整剤;
d)緩衝剤
e)注入用水;ならびに
f)該pHを6〜8に調整するための任意のpH調整剤。
【請求項2】
前記懸濁液組成物が、トリアムシノロンアセトニドを含む、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項3】
前記トリアムシノロンアセトニドの濃度が、0.1%(w/v)〜25%(w/v)である、請求項2に記載の懸濁液組成物。
【請求項4】
前記トリアムシノロンアセトニドの濃度が、4%(w/v)である、請求項3に記載の懸濁液組成物。
【請求項5】
前記トリアムシノロンアセトニドの濃度が、8%(w/v)である、請求項3に記載の懸濁液組成物。
【請求項6】
前記トリアムシノロンアセトニドの濃度が、16%(w/v)である、請求項3に記載の懸濁液組成物。
【請求項7】
前記トリアムシノロンアセトニドが、2μm以下の標準偏差を有する4μm以下の平均体積直径を有する、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項8】
前記懸濁液組成物が、酢酸アネコルタブを含む、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項9】
前記酢酸アネコルタブの濃度が、1%(w/v)〜16%(w/v)である、請求項8に記載の懸濁液組成物。
【請求項10】
前記酢酸アネコルタブの濃度が、3%(w/v)〜6%(w/v)である、請求項9に記載の懸濁液組成物。
【請求項11】
前記酢酸アネコルタブが、2μm以下の標準偏差を有する4μm以下の平均体積直径を有する、請求項8に記載の懸濁液組成物。
【請求項12】
前記ポリビニルピロリドンが、55,000〜60,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項13】
前記張度調整剤が、塩化ナトリウムである、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項14】
前記ポリビニルピロリドンの量が、0.5%(w/v)〜8%(w/v)である、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項15】
前記緩衝剤が、リン酸一ナトリウム二水和物およびリン酸水素二ナトリウム十二水和物を含む、請求項1に記載の懸濁液組成物。
【請求項16】
眼における黄斑浮腫または網膜静脈閉塞症を処置する方法であって、該方法は、請求項2に記載の懸濁液組成物を該眼の後区に注入する工程を包含する、方法。
【請求項17】
眼における手術後の炎症を処置する方法であって、該方法は、請求項2に記載の懸濁液組成物を該眼の前区に注入する工程を包含する、方法。
【請求項18】
眼の後区における眼科疾患または眼科状態を処置する方法であって、該方法は、請求項8に記載の懸濁液組成物を該眼の後区に注入する工程を包含する、方法。
【請求項19】
眼の後区への注入のために特に適切なトリアムシノロンアセトニド懸濁液組成物であって、該懸濁液組成物は、保存剤または界面活性剤を含まず、そして10cps.以下の粘度を有し、ここで該懸濁液組成物は、本質的に以下からなる、懸濁液組成物:
a)2%(w/v)〜16%(w/v)トリアムシノロンアセトアニド;
b)0.5%(w/v)〜4%(w/v)ポリビニルピロリドン;
c)該懸濁液組成物が250〜350mOsmの重量オスモル濃度を有するようにするのに十分な量のイオン張度調整剤;
d)リン酸一ナトリウム二水和物およびリン酸水素二ナトリウム十二水和物を含有する、緩衝剤;
e)該懸濁液組成物のpHを7.0〜7.6に調整するための量のNaOHまたはHCl;ならびに
f)注入用水。
【請求項20】
眼の後区への注入のために特に適切な酢酸アネコルタブ懸濁液組成物であって、該懸濁液組成物は、保存剤または界面活性剤を含まず、そして10cps.以下の粘度を有し、ここで該懸濁液組成物は、本質的に以下からなる、懸濁液組成物:
1%(w/v)〜3%(w/v)酢酸アネコルタブ;
0.5%(w/v)〜1.5%(w/v)ポリビニルピロリドン;
該懸濁液組成物が250〜350mOsmの重量オスモル濃度を有するようにするのに十分な量のイオン張度調整剤;
リン酸一ナトリウム二水和物およびリン酸水素二ナトリウム十二水和物を含有する、緩衝剤;
懸濁液組成物のpHを7.0〜7.6に調整するための量のNaOHまたはHCl;ならびに
注入用水。

【公表番号】特表2007−506678(P2007−506678A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526921(P2006−526921)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/028598
【国際公開番号】WO2005/032510
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】