説明

注入可能な多糖類−細胞組成物

【課題】注入可能な多糖類−細胞組成物を提供すること。
【解決手段】ゆっくりと重合する多糖類ヒドロゲルは、多数の単離された細胞を注入によって導入する手段として有用であることが示された。このゲルは、移植片化を促進し、新細胞の成長のための3次元の鋳型を提供する。得られる組織は、天然に生じる組織と組成的にも構造的にも同じである。この方法は、3次元組織障害に対する再構築のための細胞移植の注文成型、および一般的な組織移植を含む種々の再構築手法に用いられ得る。実施例は、筋肉および軟骨組織の構築を示し、それは、逆流および失禁のような障害を修復するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、一般に、内科的医療の分野における多糖類ヒドロゲル−細胞組成物を用いる領域に関する。より特定すれば、膀胱尿管逆流現象、失禁、および他の欠陥を矯正する方法に関する。
【0002】
(頭蓋骨顔面輪郭奇形)
外傷性、先天性、または整形のためのものを問わず、頭蓋骨顔面輪郭奇形を矯正するには、現時点では、侵襲的な外科的方法を必要とする。さらに、増強を必要とする奇形の場合は、しばしば無生物材料人工装具の使用が必要であり、これには感染および突出という問題がある。付加的な自原性(autogenous)の軟骨または骨を頭蓋骨顔面の骨格に加える、侵襲性の最も小さい方法であれば、外科的外傷も最低限に抑えられ、また無生物材料人工装具を用いる必要もない。注入による移植を行い、単離された細胞を大量に植え付けることができれば、広域な外科手術を行わずに、頭蓋骨顔面の骨−軟骨骨格を自原性組織で増強し得る。
【0003】
残念ながら、分離した細胞を皮下注射により注入するか、または腹膜のような体の領域内に分離した組織を移植する企ては未だ成功していない。細胞は、恐らくは食作用および細胞死によって比較的速く除去される。
【0004】
Vacantiらの米国特許第5,041,138号に記載されているように、細胞をポリマーマトリックス上に移植し、また移植して軟骨構造を形成し得る。しかし、これには、所望の解剖学的構造を形成するために、移植前に、マトリックスを外科的に移植し、またマトリックスを成形する必要がある。
【0005】
(膀胱尿管逆流現象)
膀胱尿管逆流現象は、胚の発生および生育中に尿管芽(ureteral bud)が膀胱に入るため尿管芽が異常発達する状態である。膀胱の筋肉組織を通る尿管の経路が短くなるため、尿管抵抗が減少し、尿が膀胱溜めから尿管および腎臓まで逆流する結果となる。この状態では、逆行尿道移送により膀胱内に時折存在し得るバクテリアが腎臓に達し、再発性腎盂腎炎を引き起こし得る。さらに、尿の腎杯(calyces)および腎錐体(renal pyramids)中への一定の逆圧により、腎臓実質(renal parenchyma)に機械的な損傷が生じる結果となる。AtalaおよびCasale、Infections in Urology(泌尿器科学における感染)、39−43(1990年3/4月号)によって検討されたように、未治療のままでおくと、尿の膀胱尿道逆流現象は腎臓実質の損失、および、場合によっては、腎不全を引き起こし得る。1960年には、腎不全患者の70%が膀胱尿道逆流現象が主要な病因であると記載された。新しい診断および治療法の登場により、膀胱尿道逆流現象の患者は、現在では、腎不全患者集団の1%以下である。
【0006】
過去において、膀胱尿道逆流現象は、通常は、子供が腎盂腎炎を繰り返し発症した後、排尿時膀胱造影により診断された。AtalaおよびCasaleによって報告されているように、出生前および出生後の音波検査器(sonography)が頻繁に使用されるようになったため、水腎症(hydronephrosis)がより検出可能になり、さらに、放射線医学による精密検査および初期の検出が促進されている。膀胱尿道逆流現象は重症度により等級に分けられている。グレード1の逆流は、尿が膀胱から尿管までのみ逆流するのが認められる場合である;グレード2の逆流では、尿は尿管および腎杯拡張
まで逆流する。グレード4および5の逆流はさらに重く、各々、尿管のねじれ、そしてさらに腎杯の鈍化(blunting)および拡張を示す。
【0007】
膀胱尿道逆流現象の治療は過去10年間でかなり確立されている。最初は、逆流の患者のすべてが外科手術を必要とすると信じられていた。やがて、抗生物質による内科的医療のみで十分であるとする別の処理方法が提案された。現在では、逆流の治療は、逆流の重症度、関連する先天性異常、および子供の社会的な状況(内科的治療への両親の応諾)を含む多くの要因に依ることが十分に確立されている。内科的医療は、通常は、グレード1および2の逆流の患者に対して推奨される。この場合は、通常は、成長にともない膀胱/尿管形状が変化するに従って自ずと解決される。グレード3の逆流は、一般には、これが持続しない場合、または抗生物質による抑制状態にある一方で現状打破の感染が起こらない場合は、内科的医療で管理される。外科的処理は、通常グレード4およびグレード5逆流について必要である。
【0008】
内科的医療とは、患者が毎日の抑制性抗生物質を用いて治療されることを意味する。このような患者には、一般に、3カ月に一度のカテーテルによる尿培養、6カ月に一度の超音波検査と血清分析、年に一度の蛍光透視鏡または核による排尿時膀胱尿道造影、および2年に一度のDMSA腎臓スキャンよりなる綿密な追跡調査が必要である。外科的治療は、下腹部を切開し、膀胱に入り、尿管を移動させて新しい尿管の粘膜下組織トンネルを形成する開腹手術よりなる;これにより、尿管の筋肉の支えが延長され、それらの抵抗が増大する。このような患者には、4〜5時間の手術中の全身の気管内麻酔、手術中および術後の苦痛コントロールのための硬膜外カテーテル、排尿用膀胱カテーテル、嚢胞周囲(perivesical)排出、および5〜6日の入院が必要である。術後に抗生物質治療および膀胱鎮痙薬が必要である。
【0009】
逆流矯正のための開腹(open)外科手術は熟練外科医の手によって優れた結果をもたらすが、これは、下腹部切開の苦痛および固定、膀胱痙攣、血尿、および、特定の子供では、術後の頻尿を含むよく知られた病的状態を引き起こす。Matouschek, E.:Die Behandlung des vesikorenalen Refluxes durch transueterale Einspritzung von polytetrafluoroethylenepast、Urologe、20:263(1981)に報告されているように、開腹外科手術を避けるために、1984年、Matouschekの臨床経験によって、尿管下へのTeflonTM(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)ペーストの内視鏡注入への興味が広まった。この方法によれば、膀胱鏡(cystoscope)を膀胱内に挿入し、膀胱鏡を通して針を挿入して、粘膜下空間の逆流する尿管の下に直接の観察の下に置き、開いた尿管口の形状が半月状のスリットに変化するまでペーストを注入する。内視鏡により注入されたTeflonTM(登録商標)ペーストは、尿管抵抗を増大させるバルク材料として作用することによって逆流を矯正する。しかし、この治療の導入後まもなく、TeflonTM(登録商標)ペーストの使用に関する論争が起きた。Maliziaら、「ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン)の尿道周囲注入後の移動および肉芽腫症」、JAMA、251:3277(1984)は、動物での研究で、肉芽腫の形成、および脳、肺、リンパ節への粒子の移動を示した。ポリテトラフルオロエチレンの移動および肉芽腫の形成はまた、Claesら、「尿失禁のための尿道周囲へのポリテトラフルオロエチレン注入後の肺をおかす移動」、J.Urol.、142:821(1989)によって、ヒトにおいても報告されている。ヒトへの使用に対するTeflonTM(登録商標)の安全性が問題にされ、従ってペーストはFDAによって禁止された。
【0010】
しかし、内視鏡による膀胱尿管逆流現象の治療には明瞭な利点がいくつかある。Atalaら、「自発離脱可能なバルーンシステムによる膀胱尿管逆流現象の内視鏡治療」、J
.Urol.、148:724(1992)によって報告されているように、この方法は簡単であり、15分以内で完了することができる。罹病率が低く85%以上の成功率を有し、また、外来患者に行うことができる。これを研究しているものにとっての目標は、ヒトへの使用に対して安全な他の移植材料を見つけることである。
【0011】
ウシの皮膚コラーゲン調製物が内視鏡により逆流を治療するために使用されている。しかし、Leonardら、「膀胱尿管逆流現象の矯正のためのグルタルアルデヒド架橋ウシ皮膚コラーゲンの内視鏡注入」、J.Urol.、145:115(1991)によって記載されているように、1年後の追跡調査で患者の58.5%しか治癒していなかった。コラーゲン移植体積は時間と共に減少し、その結果、3年以内に90%以上という高い割合で逆流が再発する。この物質による失敗率が高いため、不注意な患者が治療後腎臓の損傷を起こす危険性が高い。
【0012】
Buckleyら、「注入可能なシリコーン微粒子による膀胱尿管逆流現象の内視鏡矯正」、J.Urol.、149:259A(1993)によって報告されているように、ヨーロッパでのある研究では、ヒドロゲル内に懸濁されたシリコーンの織り込み(texture)微粒子よりなるペーストが、逆流を矯正するために尿管下に注入されており、91%の初期成功率を有している。しかし、Henlyら、「尿道周囲への注入で用いるための粒子シリコーン:局所組織効果の研究および移動の探求」、J.Urol.、147:376A (1992)によって報告されているように、動物モデルにおいて離れた位置への粒子の移動が観察されている。シリコーン粒子の約30%が100μm以下の直径を有する。これは、シリコーン粒子の30%がマクロファージ系により離れた器官へ移動する可能性を有することを示唆する。この技術の製造業者はFDAの認可を得るために努力したが成功せず、その結果倒産した。
【0013】
腹腔鏡による逆流の矯正は、動物モデル(Atalaら、「膀胱尿管逆流現象の腹腔鏡による矯正」、J.Urol.、150:748(1993)」およびヒト(Atala、「膀胱尿管逆流現象の腹腔鏡による治療」、Dial.Ped.Urol.、14:212(1993)」の両方で試みられ、技術的には実行可能である。しかし、腹腔鏡に熟練した少なくとも2人の外科医が必要であり、手術時間は開口手術より長い。手術は腹膜外から腹膜内アプローチへと切り替えられる。また、手術時間が長いのと、使い捨ての腹腔鏡装置の費用が高いため、コストがより高い。
【0014】
TeflonTM(登録商標)の論争以来10年以上が過ぎたにも関わらず、この領域の研究はほとんど進展していない。逆流の内視鏡治療に対する理想的な物質は、注入可能で、非抗原性、非移動性、容量的に安定し、ヒトへの使用に対して安全である(Atalaら、1992)ことである。
【0015】
(尿失禁)
尿失禁は、全てのGU疾患の中で、最も一般的で、そして最も治りにくい。尿失禁、または尿を保持しそして知らないうちに尿を排泄し得ないことは、2セットの筋肉の相互作用に依存する。1つは、排尿筋で、それは膀胱の外側の筋肉のコーティングを形成している縦方向の繊維の複合体である。排尿筋は、副交感神経によって活性化される。第2の筋肉は、平滑/横紋筋である膀胱括約筋である。排尿作用には、括約筋を随意に弛緩させるのと同時に膀胱の排尿筋を収縮させることが必要である。人間が加齢するに従って、括約筋を随意に制御する能力は、総体的な筋肉の状態が年齢と共に低下するのと同じように失われる。このことはまた、下半身麻痺(paraplegia)のような急激な事象が副交感神経系を「切断」し、括約筋の制御を失わせるような場合にも起こり得る。別の患者においては、尿失禁は異なるレベルの重篤度を示し、そしてレベルに応じて分類される。
【0016】
最も一般的な失禁は、特に年輩の人間においては、切迫失禁(urge incontinence)である。このタイプの失禁は、著しく短い徴候とそれに続く迅速な排尿である。このタイプの失禁は、活動過多の排尿筋によって引き起こされ、そして通常は「トイレットトレーニング」または投薬によって処置される。他方、反射失禁は、徴候を示さず、そして通常、脊髄損傷のような副交感神経系の障害の結果である。
【0017】
ストレス失禁は、年輩の女性には最も一般的であるが、どの年代の女性にも見られ得る。それはまた妊娠女性にも一般的に見られる。このタイプの失禁は、失禁の総数の半分以上である。これは、男性にも見られるが、あまり多くない。ストレス失禁は、くしゃみをしたり、笑ったり、あるいは肉体的に運動したりといったストレス条件の下で尿が漏れることを特徴とする。ストレス失禁の重篤度には5つの認識されるカテゴリーがあり、タイプ0、1、2a、2b、および3といわれる。タイプ3は、最も深刻で、そして内因性括約筋不全(intrinsic Sphincter Deficiency)、すなわちISDの診断を必要とする(Contemporary Urology、1993年3月)。よく行われる多くの処置は、体重の減量、運動、投薬、および極端な場合は外科的介入を含む。最も一般的な2つの外科的手法は、漏れを防ぐために膀胱の首を持ち上げるか、または患者自身の身体の組織またはPTFEのような補てつ用物質由来の内層を構築して尿道に圧力を与えるかのどちらかを包含する。別の方法は、人工膀胱のような補てつ装置を膣内バルーンまたは陰茎鉗子のような外部装置に用いることである。タイプ3のストレス失禁の処置に関しては、括約筋の周辺の領域を「増強、(beef up)」し、筋肉状態を改善するために、TeflonTM(登録商標)またはコラーゲンペーストを括約筋の周辺に注入するという方法が、最近の動向としてある。しかし、上記の処置方法はいずれも、1年以上の期間にわたって非常に効果的であるというものではない。
【0018】
過剰(overflow)失禁は、膀胱における解剖学的障害または不活発な排尿筋によって引き起こされる。それは頻繁な尿の漏れにつながる膨張した膀胱を特徴とする。このタイプの失禁は、短期的にはカテーテル法によって、そして長期的には薬剤療法によって処置される。遺尿症または夜尿症は、小児における問題であり、種々のアラーム装置およびセンサーを有するパッドにより制御される。遺尿症は、それが4、5歳を超えて続かない限り、深刻な問題とは考えられない。最終的には、運動機能または精神機能のいずれかに慢性的な障害を有する患者に起こる真に機能的な失禁が残る。このような患者は、通常、ダイアパー(diaper)、失禁用パッドまたは連続的なカテーテル法により処置される(BBI、1985 Report 7062)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、細胞性の組織および軟骨性の構造を形成するための細胞注入の方法および組成物を提供することが本発明の目的である。
【0020】
本発明のさらなる目的は、後に分解され除去されて組織学的にも化学的にも天然に産生された組織または軟骨と同じ組織または軟骨を残すような、非細胞性物質を含む細胞性組織および軟骨構造を形成する組成物を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、膀胱尿管逆流、失禁、および他の障害を処置する方法および物質であって、前記障害を自然に、永久に治療することになる方法および物質を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、膀胱尿管逆流、失禁、および他の障害を処置する方法および物質であって、迅速、簡便、安全、そして比較的非侵襲性である方法および物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
1.一つの局面において、本願発明は、組織を動物に移植する方法であって、生物分解性、生体適合性のヒドロゲル溶液と、分離した細胞とを混合する工程、およびこの混合液を動物に移植する工程、を包含する方法を提供する。
【0024】
2.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲル溶液が、動物への移植の前に硬化される、上記項1に記載の方法を提供する。
【0025】
3.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、細胞懸濁液として前記動物に注入され、次いでそれが硬化される、上記項1に記載の方法を提供する。
【0026】
4.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、ポリサッカリド、タンパク質、ポリホスファジン(polyphosphazine)、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(polyethylene oxide−polypropylene glycol block copolymer)、ポリ(アクリル酸)(poly(acryllc acid))、ポリ(メタクリル酸)(poly(methacrylic acid))、アクリル酸(acrylic acid)およびメタクリル酸(methacrylic acid)のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)(poly(vinyl acetate))、およびスルホン化されたポリマー(sulfonated polymer)からなる群から選択される、上記項1に記載の方法を提供する。
【0027】
5.好ましい実施形態において、前記ポリマー溶液が、フィブリン、コラーゲン、ヒアルロン酸、および他の天然に存在するポリマーからなる群から選択される、上記項4に記載の方法を提供する。
【0028】
6.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、イオン、pH変化、および温度変化からなる群から選択される因子に曝すことにより硬化される、上記項4に記載の方法を提供する。
【0029】
7.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、銅(copper)、カルシウム(calcium)、アルミニウム(aluminum)、マグネシウム(magnesium)、ストロンチウム(strontium)、バリウム(barium)、スズ(tin)、ならびに二官能性、三官能性、および四官能性有機カチオンからなる群から選択されるカチオン;ならびに低分子量のジカルボン酸(dicarboxylic acid)、硫酸イオン(sulfate ion)、および炭酸イオン(carbonate ion)からなる群から選択されるアニオンからなる群から選択されるイオンと相互作用することにより硬化される、上記項6に記載の方法を提供する。
【0030】
8.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、ポリイオンを用いた架橋により、さらに安定化されている、上記項4に記載の方法を提供する。
【0031】
9.好ましい実施形態において、前記細胞が、軟骨を形成する軟骨細胞および他の細胞、骨を形成する骨芽細胞および他の細胞、筋肉細胞、線維芽細胞および器官細胞からなる群から選択される、上記項1に記載の方法を提供する。
【0032】
10.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、移植の前に成型されて、特定の形を形成する、上記項1に記載の方法を提供する。
【0033】
11.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、前記細胞との混合および前記動物への移植の後に成型されて特定の形を形成する、上記項1に記載の方法を提供する。
【0034】
12.好ましい実施形態において、前記欠損が膀胱尿管逆流である、上記項1に記載の方法を提供する。
【0035】
13.好ましい実施形態において、前記患者が失禁を患っている、上記項1に記載の方法を提供する。
【0036】
14.好ましい実施形態において、前記欠損が胸部にある、上記項1に記載の方法を提供する。
【0037】
15.好ましい実施形態において、前記欠損が上部胃腸管にある、上記項1に記載の方法を提供する。
【0038】
16.一つの局面において、本願発明は、動物内に新しい組織を形成するための組成物であって、分離した細胞と混合されたヒドロゲル溶液を含む、組成物を提供する。
【0039】
17.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲル溶液が、動物への移植の前に硬化される、上記項16に記載の組成物を提供する。
【0040】
18.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲル溶液が、細胞懸濁液として前記動物に注入され、次いでそれが硬化される、上記項16に記載の組成物を提供する。
【0041】
19.好ましい実施形態において、前記ポリマーが、ポリサッカリド、タンパク質、ポリホスファジン、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、およびスルホン化されたポリマーからなる群から選択される、上記項16に記載の組成物を提供する。
【0042】
20.好ましい実施形態において、前記ポリマーが、フィブリン、コラーゲン、ヒアルロン酸、および他の天然に存在するポリマーからなる群から選択される、上記項19に記載の懸濁物を提供する。
【0043】
21.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、注入の後にこのポリマーが架橋するのに効果的な量のイオン、pH変化および温度変化からなる群から選択される因子と組み合わされる、上記項18に記載の組成物を提供する。
【0044】
22.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、スズ、ならびに二官能性、三官能性、および四官能性有機カチオンからなる群から選択されるカチオン;ならびに低分子量のジカルボン酸、硫酸イオン、および炭酸イオンからなる群から選択されるアニオンとからなる群から選択されるイオンと共に投与される、上記項21に記載の組成物を提供する。
【0045】
23.好ましい実施形態において、前記ヒドロゲルが、ポリイオンを用いた架橋により、さらに安定化されている、上記項22に記載の組成物を提供する。
【0046】
24.好ましい実施形態において、前記細胞が、軟骨を形成する軟骨細胞および他の細胞、骨を形成する骨芽細胞および他の細胞、筋肉細胞、線維芽細胞および器官細胞からなる群から選択される、上記項16に記載の組成物を提供する。
【0047】
(本発明の要旨)
ゆっくりと重合し、生体適合性であり生物分解性であるヒドロゲルが、多数の単離細胞を患者に導入して、器官等価物または軟骨のような組織を生成する手段として有用であることが示された。このゲルは、移植片化を促進し、そして新細胞の生育のために3次元の鋳型(template)を提供する。得られた組織は、天然に生じた組織と組成的にも組織学的にも同じである。一つの実施態様においては、細胞はヒドロゲル溶液に懸濁され、そして患者の部位に直接注入される。ここで、ヒドロゲルは硬化してマトリックスを形成し、マトリックス内部に細胞が分散されている。第2の実施態様において、細胞をヒドロゲル溶液に懸濁し、それを型に流し込むかまたは注入して所望の解剖学的形状を有するようにし、次いで、硬化してマトリックスを形成し、このマトリックスは、内部に細胞が分散されており患者に移植される。最終的には、そのヒドロゲルは分解され、生じた組織のみが残される。
【0048】
この方法は、3次元の組織欠損を再構築するための細胞移植片の注文成型、および一般的な組織移植を含む種々の再構築手法に用いられ得る。
【0049】
膀胱尿管逆流、失禁および他の障害の処置方法が記載される。ここで、膀胱筋細胞は、液体ポリマー性物質と混合され、細胞懸濁液を形成し、それは障害を治す組織を得るのに効果的な量で障害のある領域に注入され、例えば、それにより尿の通過に必要な制御を提供する。実施例に記載されるように、ヒトの膀胱筋試料または軟骨細胞を入手し、そしてプロセスし、その細胞をアルギネート(alginate)と混合する。それをカルシウム(calcium salt)と接触させた場合に制御された速度で凝固するように設計し、次いでその細胞を、それらが増殖し障害を治す所望の部位に注入する。実施例は、マウスおよびブタにおける効果を示す。
【0050】
(発明の詳細な説明)
生体適合性ポリマーの足場(scaffold)を使用する組織工学(tissue engineering)の技術は、頭蓋顎顔面(craniomexillofacial)外科で、現在使用されている補てつ材料の代替物を作製する手段、ならびに同時に、疾病の、欠損、または損傷した組織を置換する器官等価物(organ equivalent)の形成の手段として有望である。しかし、これらの足場を作製するために使用されるポリマー、例えば、ポリ酢酸(polyactic acid)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、およびポリ無水物(polyanhydride)のようなポリマーは、成型が困難であり、かつ疎水性であるので、その結果、細胞付着性に劣る。さらに、これらのポリマーの操作はすべて、このポリマー性材料の移植に先立って行われなければならない。
【0051】
アルギン酸カルシウム(calcium alginate)およびある種の他のポリマーは、イオン性のヒドロゲルを形成し得、これは展性があり、かつ細胞をカプセル化するために使用し得る。本明細書に記載される好ましい実施態様においては、このヒドロゲルはアルギン酸(alginic acid)、海草から単離された炭水化物ポリマー、のアニオン性塩をカルシウムカチオン(calucium cation)で架橋することによって製造され、この強度はカルシウムイオン濃度またはアルギネート(alginate)濃度のいずれかを増加させることによって増大する。アルギネート溶液を移植する細胞と混合し、アルギネート懸濁液を形成する。次いで、1つの実施態様においては、この懸濁液を硬化させる前に、患者に直接、懸濁液を注入する。次いで、この懸濁液は、短時間で硬化する。第2の実施態様においては、懸濁液は型に注入または注ぎ入れられ、ここで硬化して、細胞がその中に分散した、所望の解剖学的形態を形成する。
【0052】
(細胞の供給源)
細胞は、直接ドナーから、ドナーからの細胞の細胞培養から、あるいは確立された細胞培養株から得られ得る。好ましい実施態様においては、同種の、そして好ましくは免疫学的プロファイルが同じ細胞を、バイオプシーによって、患者から、または近親から得、次いでこれを、標準的条件(例えば下記の実施例1のような)を用いて、培養物がコンフルエントになるまで培養し、そして必要に応じて使用する。免疫学的に異なる個体からのヒト筋肉細胞のような免疫反応を誘発しやすい細胞を用いる場合、受容者は必要に応じて、例えば、ステロイドおよびサイクロスポリン(cyclosporine)のような他の免疫抑制剤を計画的に使用して、免疫抑制され得る。しかし、最も好ましい実施態様において、細胞はオートロガス(autologous)である。
【0053】
好ましい実施態様においては、細胞は、直接ドナーから得られ、洗浄され、そしてポリマー性材料と組み合されて直接移植される。細胞は、組織培養の分野の当業者に公知の手法を用いて培養される。
【0054】
バイオプシーによって得られた細胞は、集められ、そして、混入した細胞除去の必要性に応じて継代しながら、増殖される。軟骨細胞および筋肉細胞の単離を実施例で示す。
【0055】
細胞の付着性および生存率は、走査電子顕微鏡、組織学、およびラジオアイソトープによる定量評価によって、評価され得る。移植細胞の機能は、上記手法および機能性アッセイの組合せを用いて決定し得る。例えば、肝細胞の場合、インビボの肝臓の機能の研究は、カニューレを受容者の通常の胆管に入れることによって行われ得る。次いで、胆汁は、増加して集められ得る。胆汁色素は、高速液体クロマトグラフィーによって、誘導体化されていないテトラピロール(tetrapyrrol)を調べることによって、あるいはジアゾ化されたアゾジピロール類のエチルアントラニレート(azodipyrroles ethylanthranilate)とP−グルクロニダーゼ(p−glucuronidase)による処理ありまたはなしでの反応によってアゾジピロール類に転換された後に薄層クロマトグラフィーによって分析され得る。二結合(diconjugated)および単結合(monoconjugated)ビリルビン(bilirubin)はまた、結合した(conjugated)胆汁色素のアルカリメタノール分解の後の薄層クロマトグラフィーによっても測定し得る。一般に、機能している移植した肝細胞の数が増加するにつれて、結合したビリルビンのレベルが増大する。単純な肝機能テストは、血液試料、例えばアルブミン産生、によっても行われ得る。移植の後の細胞の機能の程度を測定するための必要に応じて、同様の器官の機能の研究が当業者に公知の手法を用いて行われ得る。例えば、適切なインスリンの分泌によってグルコースの調節を達成して糖尿病を治療するために、膵臓のランゲルハンス島細胞(islet cell)を、肝細胞の移植に特に用いられた方法と同様の方法で、導入し得る。他の内分泌組織もまた移植し得る。ポリマーの足場上の細胞の量を定量するために、標識したグルコースを用いた研究、ならびにタンパク質アッセイを用いた研究を行い得る。次いで、これらの細胞の量の研究を細胞の機能の研究と関連づけて適切な細胞の量を決定する。軟骨細胞の場合、機能は、周囲の付着した組織に適切な構造支持を提供することとして定義される。
【0056】
これらの手法は、遺伝的に改変された細胞を包含する複数の細胞型を、新しい組織または組織等価物を作製する目的のための、多数の細胞の効率的な移動および移植(transplant engraftment)の促進のための三次元の足場内に提供するために、使用され得る。これはまた、新しい組織または組織等価物が増殖する間、宿主の免疫系を排除することによる、細胞移植片の免疫防御(immunoprotection)のためにも使用され得る。
【0057】
本明細書で記載されるように移植され得る細胞の例としては、軟骨細胞および軟骨を形
成する他の細胞、骨芽細胞および骨を形成する他の細胞、筋肉細胞、繊維芽細胞、および器官細胞が包含される。本明細書では、「器官細胞」は、肝細胞、ランゲルハンス島細胞、腸由来の細胞、腎臓由来の細胞、および他の、主として物質を合成および分泌しまたは代謝するために作用する細胞を包含する。
【0058】
(ヒドロゲルへの生物学的に活性な物質の添加)
細胞の移植とグラフト化(transplantation and engraftment)を促進するために、ポリマー性マトリックスは液性因子と組み合わされ得る。例えば、ポリマー性マトリックスは、血管新生促進因子、抗生物質、消炎鎮痛剤、成長因子、分化を誘導する化合物、および細胞培養の分野の当業者に公知の他の因子と組み合わされ得る。
【0059】
例えば、液性因子は、移植片(implant)または移植物(transplantation)を形成する前に、徐放性形態で、細胞−アルギネート懸濁液と混合し得る。あるいは、単離された細胞懸濁液と組み合わされる前に、ヒドロゲルは改変されて体液性因子またはシグナル認識配列に結合され得る。
【0060】
(ポリマー溶液)
本明細書中で記載する好ましい実施態様において、展性のある、アルギン酸カルシウム(calcium alginate)およびイオン性ヒドロゲルを形成し得るある種の他のポリマーが、細胞をカプセル化するために用いられる。このヒドロゲルはアルギン酸(alginic acid)、海草から単離された炭水化物ポリマー、のアニオン性塩をカルシウムカチオン(calcium cation)で架橋することによって製造され、この強度はカルシウムイオン濃度またはアルギネート(alginate)濃度のいずれかを増加させることによって増大する。アルギネート溶液(alginate solution)を移植する細胞と混合し、アルギネート懸濁液(alginate suspension)を形成する。次いで、この懸濁液を硬化させる前に、患者に直接、懸濁液を注入する。次いで、この懸濁液は、インビボの生理学的濃度のカルシウムの存在に依存して、短時間で硬化する。
【0061】
体内への移植のための細胞と混合されるポリマー性材料はヒドロゲルを形成すべきである。ヒドロゲルは、有機ポリマー(天然または合成)が、共有結合、イオン結合、または水素結合によって架橋したときに、水分子を取り込んでゲルを形成する三次元の開放格子構造を形成する物質として定義される。ヒドロゲルを形成するために使用され得る材料の例としては、アルギネート(alginate)のような多糖類、ポリホスファジン(polyphosphazine)、およびポリアクリレート(polyacrylate)(これらはイオン的に架橋する)、あるいはPluronicsTMまたはTetronicsTM、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコール(polyethylene oxide−polypropylene glycol)ブロックコポリマーのような、ブロックコポリマー(これらは温度またはpHによって架橋する)が包含される。他の材料には、フィブリン(fibrin)のようなタンパク質、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、およびコラーゲンのようなポリマーが包含される。
【0062】
一般に、これらのポリマーは、水、緩衝塩溶液、または水性アルコール溶液のような水性溶液に、少なくとも一部可溶であり、荷電した側基(side group)、またはこれらの1価のイオン性塩を有している。カチオンと反応し得る酸性の側基を有するポリマーの例は、ポリ(ホスファゼン)類(poly(phosphazenes))、ポリ(アクリル酸)類(poly(acrylic acids))、ポリ(メタクリル酸)類(poly(methacrylic acids))、アクリル酸とメタクリル酸の
コポリマー、ポリ(酢酸ビニル)(poly(vinyl acetate))、およびスルホン化ポリスチレン(sulfonated polystyrene)のようなスルホン化ポリマーである。アクリル酸またはメタクリル酸とビニルエーテルモノマーまたはポリマーとの反応によって形成される、酸性側基を有するコポリマーもまた使用し得る。酸性基の例は、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン化(好ましくはフッ素化)アルコール基、フェノール性OH基、および酸性OH基である。
【0063】
アニオンと反応し得る塩基性基を有するポリマーの例は、ポリ(ビニルアミン)(poly(vinyl amines))類、ポリ(ビニルピリジン)(poly(vinyl pyridine))、ポリ(ビニルイミダゾール)(poly(vinyl imidazole))、およびいくつかのイミノ置換ポリホスファゼン類(imino substituted polyphosphazenes)である。これらのポリマーのアンモニウム塩または四級塩も、骨格の窒素またはペンダントイミノ基から形成され得る。塩基性側基の例は、アミノ基およびイミノ基である。
【0064】
アルギネート(alginate)は、水中、室温で、2価カチオンによってイオン的に架橋し得、ヒドロゲルマトリックスを形成し得る。これらの穏和な条件のために、アルギネートは、ハイブリドーマ細胞のカプセル化のために最も普通に使用されている(例えば、Limの米国特許第4,452,883号)。Limのプロセスにおいては、カプセル化される生物学的物質を含む水性溶液が、水溶性ポリマーの溶液中に懸濁され、この懸濁液が小滴を形成し、この小滴が、多価カチオンと接触することによって個々のマイクロカプセルを構成し、次いでこのマイクロカプセルの表面がポリアミノ酸によって架橋して、カプセル化された物質の周囲に半透膜が形成される。
【0065】
ポリホスファゼンは、単結合および二重結合で交互に隔てられた窒素(nitrogen)およびリン(phosphorous)から構成される骨格を有するポリマーである。各リン原子は、2つの側鎖(「R」)と共有結合している。ポリホスファゼンの繰り返し単位は一般構造(1)を有し:
【0066】
【化1】

ここで、nは整数である。
【0067】
架橋に適したポリホスファゼンは、酸性で、2価または2価のカチオンによって塩架橋(salt bridge)を形成し得る側鎖を主として有する。好ましい酸性側基の例は、カルボン酸基およびスルホン酸基である。加水分解に安定なポリホスファゼンは、カルボン酸側基を有するモノマーから形成され、Ca2+またはAl3+のような2価または3価のカチオンによって架橋される。加水分解によって分解するポリマーは、イミダゾール(imidazole)側基、アミノ酸エステル(amino acid ester)側基、またはグリセロール(glycerol)側基を有するモノマーを取り入れることによって合成され得る。例えば、ポリアニオン性のポリ[ビス(カルボキシラトフェノキシ)]ホスファゼン(poly[bis(carboxylatophenoxy)]phosphazene)(PCPP)が合成され得、これは、室温またはそれ以下で、水性媒体に溶解した多価カチオンによって架橋し、ヒドロゲルマトリックスを形成する。
【0068】
生腐食性(bioerodible)ポリホスファゼンは、少なくとも2種の異なるタイプの側鎖、すなわち多価カチオンと塩架橋を形成し得る酸性側基、およびインビボ条件下で加水分解される側基(例えば、イミダゾール基、アミノ酸エステル、グリセロール、およびグルコシル(glucosyl))を有する。生腐食性または生分解性という用語は、本明細書中では、温度が約25℃と38℃との間のpH6〜8の生理学的溶液に一旦さらされると、所望の用途(通常、インビボ治療)において許容可能な期間内(約5年未満、そして最も好ましくは約1年未満)に、溶解または分解され得るポリマーを意味する。側鎖の加水分解によりポリマーの腐食が起こる。加水分解される側鎖の例は、非置換および置換のイミジゾール(imidizole)ならびにアミノ酸エステルであり、ここでこれらの基は、アミノ結合を通じてリン原子に結合している(両方のR基がこの様式で結合しているポリホスファゼンポリマーは、ポリアミノホスファゼン(polyaminophosphazene)として知られる)。ポリイミダゾールホスファゼン(polyimidazolephosphazene)については、ポリホスファゼン骨格上の「R」基のうちのいくつかがイミダゾール環であり、環の窒素原子を通して骨格のリンに結合している。他の「R」基は加水分解に関与しない有機残基(例えば、メチルフェノキシ(methyl phenoxy)基、またはAllcockら、Macromolecule 10:824−830(1977)の科学論文に示された他の基)であり得る。
【0069】
種々のタイプのポリホスファゼンの合成および分析のための方法は、
【0070】
【化2】

に記載され、これらの手法は、本明細書中に参考として特に援用される。
【0071】
他の上記ポリマーの合成法は、当業者に公知である。例えば、Concise Encyclopedia of Polymer ScienceおよびPolymeric
Amines and Ammonium Salts、E.Goethals編(Pergamen Press,Elmsford,NY 1980)を参照。ポリ(アクリル酸)のような多くのポリマーが市販されている。
【0072】
荷電した側基を有する水溶性ポリマーは、このポリマーと、反対に荷電した多価イオン(ポリマーが酸性側基を有する場合は多価カチオンであり、ポリマーが塩基性側基を有する場合は多価アニオンである)を含む水性溶液との反応によって架橋する。酸性側基を有するポリマーを架橋してヒドロゲルを形成するために好ましいカチオンは、銅(copper)、カルシウム(calcium)、アルミニウム(aluminum)、マグネシウム(magnesium)、ストロンチウム(strontium)、バリウム(barium)、およびスズ(tin)のような2価または3価のカチオンであるが、
【0073】
【化3】

うな2、3または4官能性の有機カチオンもまた使用し得る。これらのカチオンの塩の水性溶液をポリマーに添加し、軟質で、高度に膨潤したヒドロゲルおよび膜を形成する。カ
チオンの濃度が高い程、または価数が高いほど、ポリマーの架橋度は高くなる。0.005Mという低濃度からポリマーを架橋させることが示されている。高濃度は、塩の溶解度によって規定される。
【0074】
ポリマーを架橋してヒドロゲルを形成するために好ましいアニオンは、低分子量ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸(terepthalic acid)、硫酸イオン(sulfate ion)、および炭酸イオン(carbonate ion)のような、2価および3価のアニオンである。カチオンについて記載したように、これらのアニオンの水性溶液をポリマーに添加し、軟質で、高度に膨潤したヒドロゲルおよび膜を形成する。
【0075】
ポリマーヒドロゲルを複雑(complex)にし、そしてそのことによってポリマーヒドロゲルを、半透性の表面膜に安定化させるために、種々のポリカチオンが使用され得る。使用され得る材料の例は、アミン基またはイミン基のような塩基性の反応基を有するポリマーであって、好ましい分子量が3,000と100,000との間である、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)およびポリリシン(polylysine)のようなポリマーである。これらは市販されている。1つのポリカチオンはポリ(L−リシン)(poly(L−lysine))である。合成ポリアミンの例は、ポリエチレンイミン(polyethyleneimine)、ポリ(ビニルアミン)(poly(vinylamine))、およびポリ(アリルアミン)(poly(allyl
amine))である。これらはまた、多糖類、キトサン(chitosan)のような天然ポリカチオンである。
【0076】
ポリマーヒドロゲル上の塩基性表面基との反応によって半透膜を形成するために用いられ得るポリアニオンとしては、アクリル酸、メタクリル酸、および他のアクリル酸誘導体のポリマーおよびコポリマー、スルホン化ポリスチレンのような、ペンダントSOH基を有するポリマー、およびカルボン酸基を有するポリスチレンが包含される。
【0077】
(細胞懸濁液)
好ましくはこのポリマーを、水溶液、好ましくは0.1Mリン酸カリウム溶液に、生理学的なpHで、ポリマーのヒドロゲルを形成する濃度まで、例えば、アルギネート(alginate)については、0.5から2重量%の間、好ましくは1%の濃度で溶解する。単離細胞を、このポリマー溶液に1百万と5千万細胞/mlとの間、最も好ましくは1千万と2千万細胞/mlとの間の濃度に懸濁する。
【0078】
(移植の方法)
本明細書中に記載した技法は、異なる多くの細胞タイプを導入し、異なる組織構造を達成するために使用し得る。好ましい実施態様においては、細胞を、ヒドロゲル溶液と混合し、そしてヒドロゲルの硬化の前に細胞を移植することが望まれる部位に直接注入する。しかし、このマトリックスはまた、特定の適用形態に適するように成型され、そして身体の1またはそれ以上の異なる領域に移植され得る。この適用は、特に、特定の構造的設計が望まれる場合、あるいは細胞が移植されるべきの領域が特定の構造または支持を有しないような場所で細胞の成長および増殖を促進させる場合に適切である。
【0079】
細胞が移植されるべき部位、または複数部位は、個々の要求に基づいて決定され、必要な細胞数も同様である。器官機能を有する細胞、例えば肝細胞または膵島細胞について、この混合物は、腸間膜、皮下組織、腹膜、腹腔内空間、および筋内空間に注入され得る。軟骨の形成については、細胞は、軟骨形成が望まれる部位に注入される。また、外部での鋳型を利用して注入される溶液を成型し得る。加えて、重合の速度を制御することにより、粘土を成型するように細胞−ヒドロゲルを注入された移植組織を成型し得る。
【0080】
あるいは、この混合物は鋳型に注入され得、ヒドロゲルは硬化し得、次いでこの材料は移植され得る。
【0081】
この懸濁液は、注射筒および注射針により、充填剤が望まれる特定の領域、すなわち、先天性または後天性疾病に起因するあるいは外傷、火傷などの二次的な筋萎縮領域を観察される軟部組織奇形部に、直接注入され得る。神経障害の二次的な筋萎縮を有する患者の上部胴体(torso)へのこの懸濁液の注入は、このことの1例であろう。
【0082】
この懸濁液は、また、硬部組織欠損、例えば骨または軟骨欠損、先天性または後天性疾病状態、あるいは外傷、火傷などの二次的な硬部組織欠損に対して、充填剤として注入され得る。骨奇形部が外傷の二次的に存在する頭蓋周辺領域へのこの懸濁液の注入は、このことの1例であろう。これらの例における注入は、局所または全身麻酔下で、注射針および注射筒を用いて、必要とされる領域に直接なされ得る。
【0083】
この懸濁液は、また、ダイレクトパルペイション(directpalpation)により、例えば注射針を精管内部に留置することにより経皮的に注入され得、そして注入された充填物で精管を閉塞し、したがって患者を不妊にし得る。懸濁液はまた、蛍光透視型または音波ホログラフィー型のコンピュータ断層撮影、磁気共鳴画像あるいは放射線医学的案内(guidance)を用いて、カテーテルまたは注射針により注入され得る。このことは、特定の器官または身体の他の組織領域、充填剤が必要とされる任意の場所への血管性接近または経皮的接近による、この物質の配置または注入を可能にする。
【0084】
さらに、この物質は、腹腔鏡、胸腔鏡により任意の腹腔内または腹腔外または胸部の器官に注入される。例えば、この懸濁液は、胃食道の逆流の治療のための胃食道移行部に注入され得る。これは、胸腔鏡を用いてこの物質を、胃食道領域の食道部分に注入するか、または腹腔鏡によりこの物質を、胃食道領域の胃部分に注入することにより、あるいは組み合わせたアプローチにより行われる。
【0085】
膀胱尿管逆流は、子供において、その人口の約1%が冒される最も一般的な先天性欠損の1つである。全ての患者が外科的治療を必要としないにもかかわらず、外科的治療は、なおも、子供において行われる最も一般的な処置の1つである。
【0086】
マサチューセッツ州ボストンのChildren’s Hospitalでは、毎年600を超える尿管再移植が行われる。このことを言い換えると、本明細書中に記載された内視鏡治療が切開手術の代わりに使用されると、この施設だけで1年に3600日の入院患者の入院日数(hospital day)がおおよそ節約されることになる。
【0087】
逆流の内視鏡治療のための使用に加えて、注入可能なオートロガスの筋肉細胞の系はまた、他の医学的状態、例えば尿失禁および直腸性失禁、発声障害、形成術による復元(plastic reconstruction)、ならびに注入可能な恒久性の生体適合材料が必要とされる任意の状態の治療にも適用可能である。
【0088】
本明細書中に記載されるように、筋肉細胞または軟骨細胞のための運搬媒体としての注入可能な生物分解性ポリマーは、逆流および失禁の治療に有用である。好ましい実施態様において、生検材料を、膀胱尿管逆流患者から麻酔下に得て、単離細胞をアルギネートと混合し、そしてこの細胞−アルギネート溶液を、図1aに示すように、内視鏡下で尿管下(sub−ureteral)領域に注入して逆流を治療する。アルギネート−細胞溶液の凝固までの時間は、カルシウム濃度および細胞をアルギネートに添加する温度を変化させることにより操作し得る。オートロガス細胞の使用は、免疫反応を排除する。アルギネ
ートの凝固は、それが分解されるまで、その移動を妨げる。懸濁液は、例えば膀胱尿管逆流または尿失禁の治療のために、膀胱鏡を用いて問題の領域に直視的に接近が可能である膀胱鏡の注射針により注入され得る。逆流および失禁の治療に対する細胞−ポリマー懸濁液の使用に加えて、この懸濁液はまた、復元手術に適用し得、生体適合性の恒久性の注入可能材料が必要である人体の任意の部位にも同様に適用され得る。この懸濁液は、内視鏡下に注入され得る。例えば、発声障害治療のための声帯への注入に対しては喉頭鏡により、あるいは患者を不妊にする方法としての輸卵管への注入に対しては子宮鏡により注入され得、あるいは直腸周囲の括約筋領域へのこの物質の注入に対しては直腸鏡により注入され、それにより括約筋の抵抗が増大し、そして患者が排便を制御できるようになる。
【0089】
この技法は、他の目的にも使用し得る。例えば、注文成型される細胞移植組織を、三次元的組織欠損の復元に使用し得る。例えばヒトの耳の鋳型を作り得、そして軟骨細胞−ヒドロゲルの複製(replica)を形成および移植して失った耳を復元し得る。細胞は、また、注入により運搬され得る三次元構造の形態で移植され得る。
【実施例】
【0090】
本発明は、以下の制限のない実施例に言及することでさらに理解される。
【0091】
(実施例1:カルシウム−アルギネート−軟骨細胞混合物の調製、および軟骨構造を形成するためのマウスへの注入)
アルギン酸カルシウム(calcium alginate)混合物を、硫酸カルシウム(貧溶解性のカルシウム塩)を0.1Mリン酸カリウム緩衝液液(pH 7.4)に溶解された1%アルギン酸ナトリウムと合わせることによって得た。この混合物を4℃で30分間〜45分間、液体状態で保持した。子牛の前肢の関節表面から単離された軟骨細胞を、混合物に添加して、1×10/mlの最終細胞密度(ヒト児童の関節軟骨の約10%の細胞密度を表す)を生成させた。
【0092】
アルギン酸カルシウム−軟骨細胞混合物を、ヌードマウス背中のパンヌス疥癬トンネル(pannus cuniculus)下に100μlのアリコートの22ゲージ針により注入した。
【0093】
ヌードマウスを術後24時間後に調べ、そして全ての注入部位が触診に対して混合物の明らかな拡散がなくしっかりしていた。12週間のインビボインキュベーションの後、検体を採取した。全体検査では、アルギン酸カルシウム−軟骨細胞検体は、真珠状乳白色を示し、そして触診に対してしっかりしていた。検体は、0.11±0.01gの重さであった(開始重量0.10g)。検体からは、周囲組織が容易に解剖して取り除かれ、そして炎症反応は最小であった。組織学的に、検体をヘマトキシリン(hematoxylin)およびエオシン(eosin)で染色し、そして塩基親和性の下漬剤ガラス物質(basophilic ground glass substance)内に裂孔が示された。
【0094】
軟骨細胞のないアルギン酸カルシウムの対照検体は、注入12週間後は練り粉状の堅さを有し、そして軟骨形成の組織学的な証拠はなかった。
【0095】
この研究は、注入可能なアルギン酸カルシウムマトリックスが、移植および軟骨細胞の植え付けが成功するための三次元的足場(scaffold)を提供し得ることを示す。この方法で移植された軟骨細胞は、インビボインキュベーションの12週間後、最初に注入された軟骨と同様の体積の軟骨を形成する。
【0096】
(実施例2:軟骨形成に対する細胞密度の影響)
子牛の前肢の関節表面から単離された軟骨細胞の数を変えて、1.5%アルギン酸ナトリウム溶液と混合し、0.0、0.5、1.0、および5.0×10軟骨細胞/mlの最終細胞密度(ヒト児童の関節軟骨の約0.0、0.5、1.0、および5.0%の細胞密度)を生成させた。軟骨細胞−アルギネート溶液のアリコートを直径9mmの円形の型(mold)に移し、そして型の底の半透膜を通じて塩化カルシウム(calcium chloride)溶液の拡散によって、室温で重合させた。ゲルは、高さ2mmおよび直径9mmの寸法のディスクを形成した。
【0097】
アルギン酸ナトリウム濃度および塩化カルシウム溶液のモル濃度を変化させた、固定細胞密度5×10細胞/mlのディスクをまた形成した。
【0098】
全てのディスクをヌードマウスの背中の皮下ポケットに置いた。サンプルを8および12週間で採取し、そして軟骨形成の全体的および組織学的な証拠について調べた。
【0099】
8および12週間後の検体の検査によって、最低限度の細胞密度、5×10軟骨細胞/mlが移植後12週間のみで観察された軟骨形成に必要であることを示した。
【0100】
全体的な検査では、検体は、円板状の形状であり、そして0.13±0.01g(開始重量0.125g)の重さであった。検体からは、周囲組織が容易に解剖して取り除かれ、そして炎症反応は最小であった。組織学的に、検体を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、そして塩基親和性の下漬剤ガラス物質内に裂孔が示された。
【0101】
軟骨形成は、ゲル重合に用いられる塩化カルシウム濃度に依存しない。0.5%から4.0%に変化させたアルギネート濃度を用いた検体で軟骨を観察した;しかし、試験された最低のアルギネート濃度(0.5%)では、顕微鏡検査でしか軟骨が見られなかった。
【0102】
軟骨は、皮下ポケットにおいて支持マトリックスとしてアルギン酸カルシウムを用い、12週で所定のディスク形状に生長し得る。軟骨形成は、高カルシウム濃度での重合または高アルギネート濃度の存在のいずれによっても阻害されないが、最低限度の細胞密度、5×10細胞/mlを必要とする。
【0103】
所定の形状で、アルギン酸カルシウム−軟骨細胞ゲルを作成する能力は、この技術を注文デザインに対して用い、そして頭蓋骨顔面の再構築のための軟骨足場を生長させ得ることを示す。このような足場は、現在使用されている人工装具装置の多くを置換し得る可能性を有する。
【0104】
(実施例3:移植可能な予備成型された細胞−ポリマー混合物の調製)
単離された軟骨細胞懸濁液の250μlのアリコートを、750μlの2%(w/v)アルギン酸ナトリウム溶液(0.1M KHPO、0.135M NaCl、pH 7.4)と混合した。125μlのアリコートを、孔径0.45μmの半透膜を有する直径9mmの細胞培養注入物中に置いた。細胞−アルギネート混合物を、30mM CaClの浴に接触させ、そして37℃で90分間重合させた。90分後、細胞−アルギネートゲル構築物を型から取り出し、そしてそれは直径9mmおよび高さ2mmを有していた。ディスクを24ウェル組織培養プレートのウェルに入れ、そして5%COの存在下、HammのF−12培養培地(Gibco、Grand Island、N.Y.)および10%子ウシ胎児血清(Gibco、Grand Island、N.Y.)を含む0.5mlの溶液で、L−グルタミン(L−glutamine)(292μg/ml)、ペニシリン(penicillin)(100U/ml)、ストレプトマイシン(streptomycin)(100μg/ml)およびアスコルビン酸(ascorbic acid)(5μg/ml)と共に、48時間、37℃でインキュベートした。
【0105】
この方法を用いて、ウシ軟骨細胞−アルギネートディスクを調製し、次いで、標準の無菌技術を用いて無胸腺マウスの背面皮下ポケットに移植した。1ヶ月、2ヶ月、および3ヶ月後に、無胸腺マウスを屠殺し、そしてゲル/軟骨細胞構築物を取り出し、重量を測定しそして適切な固定液に入れた。細胞−ポリマー複合体を組織学的分析によって調べた。
【0106】
軟骨形成を、5×10細胞/mlの開始軟骨細胞密度で3ヶ月のインビボインキュベーションの後に組織学的に観察した。
【0107】
上記のプロトコルを、所定のCaCl濃度範囲およびアルギン酸ナトリウム濃度範囲を用いることによって改変した。軟骨形成を15mM、20mM、30mM、および100mM CaCl浴および0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、および4.0%のアルギン酸ナトリウム溶液を用いて観察した。
【0108】
細胞−アルギネート構築物を作成する型を変えることによって、移植物の形状を注文に応じて作り得る。さらに、型に入れる前に、カルシウムイオンを、直接、細胞−アルギネート溶液と混合され得るように型は半透性である必要はない。重要な特徴は、構築物が移植前に、所定の形状に形作られ得ることである。
【0109】
(実施例4:注入可能な骨芽細胞ヒドロゲル混合物の調製)
上述の方法論を用いて、ウシ骨芽細胞を軟骨細胞に代用し、そしてヒドロゲルマトリックスを用いて動物に注入した。
【0110】
12週間のインビボインキュベーションの後、組織学的に初期の骨形成の存在を示した。
【0111】
(実施例5:移植される細胞の周囲に免疫防御マトリックスを形成するためのヒドロゲルの使用)
上記のように細胞−アルギネート構築物を作製することによって、ヒドロゲルマトリックスを用いてカプセル化された細胞を宿主の免疫系から立体化学的に(sterically)単離し得、そのようにして、同種異系細胞の移植片で、免疫抑制なしで、新しい組織または器官を形成することが可能となる。
【0112】
アルギネート懸濁液中のウシ軟骨細胞を、正常な免疫能力のマウスに移植した。6週間後のインビボインキュベーションの組織学は、軟骨形成の存在を示す。この検体の全体検査は、軟骨の特徴を示さなかった。アルギネートを用いない、同様の軟骨細胞の異種移植片では軟骨が形成されないことが文献に述べられている。
【0113】
以下の実施例は、ヒト膀胱筋細胞−アルギネート懸濁液が、注入可能で、非移動性であり、そしてその体積を保持するようであること、ならびにオートロガス筋肉細胞が膀胱尿道逆流の内視鏡的治療において有用であることを示す。
【0114】
(実施例6:インビトロで増殖させたヒト膀胱筋細胞の単離および特徴付け)
(細胞培養:)
ヒト組織由来。 ヒト膀胱組織検体を、ボストンのChildren’s Hospitalにおける外科的除去から得、そして1時間以内に処理した。検体は1cmから4cmの範囲で大きさが異なっていた。検体を、10mMのHEPESおよびI00KIUのアポタンパク質を含むハンクスの平衡塩溶液に移した。
【0115】
平滑筋細胞。 直径約0.5mmまで刻んだ排尿筋の小片から筋肉細胞を得、そしてこ
れらを、10%ウシ胎児血清を補充した10mLのDMEMを入れた100mmの組織培養皿中で、体外移植片として用いた。同様の大きさの約30個の体外移植片を、各皿に加えた。培地を1週間に2回変えた。体外移植片を培養中に置いてから72時間後に、成長(outgrowth)をルーチンで観察した。培養物が80%コンフルエントになった時点で、細胞をトリプシン処理し、そして継代した。細長い、横紋のある細胞が高度に濃縮された細胞集団を、この方法を用いてルーチンで得た。細胞株をa−アクチン抗体によって染色し、それらの筋肉表現型を確認した。
【0116】
結果。 紡錘状の、横紋のある細胞集団が、膀胱のバイオプシー検体から、その筋肉層を切開し、次にこの筋肉片を10%ウシ血清を補充したDMEM中で体外移植片培養することによって得られ得た。a−アクチンを特異的に認識するモノクローナル抗体による免疫染色によって、この筋肉の表現型を確認した。これらのデータは、小さなバイオプシー検体から、高度に増殖した平滑筋の集団が得られ得ることを示す。この筋肉細胞はまた、無血清の規定培地中で一時的に培養され得、これによりこの細胞はいかなる不純物も含まないようになる。
【0117】
(実施例7:マウスへの細胞懸濁液の注入)
22ゲージの針を用いて、20匹のヌードマウスに、筋肉細胞およびアルギネート溶液を500μl注入した。各マウスは、対照用および1ccのアルギネート当たり1000万個のヒト膀胱細胞溶液用(32注入部位)からなる2つの注入部位を有した。アルギネート単独または膀胱筋細胞単独の注入を対照とした。移植後2、4、6、および8週目に動物を屠殺した。注入領域の組織学的試験は、筋肉/アルギネート注入部位における筋肉形成の証拠を示した。抗desmin抗体を用いる免疫組織学的分析は、その細胞が筋肉分化のプログラムを維持していたことを示した。時間を経た注入部位の検査は、アルギネートが漸進的に筋肉によって置き換わることを示した。筋肉−アルギネート複合体の大きさは、均一で安定しているようであった。2つの対照グループ(アルギネート単独および筋肉細胞単独)においては、筋肉細胞は明らかではなかった。離れた器官の組織学的分析は、膀胱筋細胞またはアルギネートの移動、または肉芽腫の形成の証拠を示さなかった。
【0118】
(実施例8:アルギネートゲルで移植された膀胱筋細胞を用いたブタにおける膀胱尿管逆流の矯正)
(材料および方法)
(膀胱尿管逆流の動物モデル)
ブタとヒトとの間の膀胱および腎臓の類似性により、ブタをこの研究に用いた。Hanford mini−pigを、その小さいサイズという簡便さの故に用いた。開腹(open)膀胱技法を用いて両側面の膀胱尿管逆流を4匹のミニブタに作製した。この技法は、Vacantiらによる「軟骨細胞が接種された合成ポリマーは、新しい軟骨形成の鋳型を提供する」、Plastic and Recon.Surg.88:753(1991)に記載されたように、全ての膀胱内部の尿管の覆いをはがすことからなる。
【0119】
この手法の3ヶ月後、両側面の逆流の存在は、ヨウ素化された造影剤を用いる従来の膀胱X線造影により、および音波処理されたアルブミンを用いる超音波検査により、Vacantiら、「軟骨細胞を接種した合成ポリマーを用いるヒト耳の成形における新しい軟骨の組織加工された成長」Mat.Res.Soc.Proc.252:367(1992)に記載されたようにして評価した。排泄尿路造影を行って、障害の任意の証拠を検出した。
【0120】
(細胞の採取)
膀胱筋肉切片を各動物から得た。筋肉細胞を採取し、インビトロで別々にプレート化した。増殖の後、その細胞を個々に定量し、そして1cc当たり20×10細胞に濃縮し
た。
【0121】
(オートロガス膀胱筋細胞−アルギン酸カルシウム懸濁液)
2%w/vアルギン酸ナトリウム(0.1M KPO、0.135M NaCl、pH7.4、Protan、Portsmouth、NH)を作製し、エチレンオキサイド(ethylene oxide)中で滅菌した。20×10細胞/mlの膀胱筋細胞懸濁液の1.5mlのアリコートを、最終アルギネート濃度が1%になるように同容量のアルギン酸ナトリウムに添加した。膀胱筋細胞−アルギン酸ナトリウムの懸濁液を32℃に保持した。注入直前に硫酸カルシウム(0.2g/ml)を膀胱筋細胞−アルギン酸ナトリウム懸濁液に添加した。この混合物をボルテックスして混合し、そして注入まで氷中に保持した。ゲル化プロセスは、硫酸カルシウムの添加により開始し、その懸濁液は約40分間の間液体状態にある。
【0122】
(実験研究)
ミニブタに筋肉内注射により25ml/kgケタミン(ketamine)、および1ml/kgアシルプロマジン(acylpromazine)で麻酔した。別の麻酔は25mg/kgケタミンおよび10mg/kgキシラジン(xylazine)の筋肉内投与により得た。動物を仰向けにおいた。15.5 French膀胱鏡を膀胱に挿入し、21ゲージ針を右側の逆流尿管の尿管下領域に挿入した。約2〜3mlのオートロガス膀胱筋細胞−アルギネート懸濁液(40〜60×10膀胱筋細胞)を、尿管開口部を持ち上げながら内視鏡により視て、針を通じて注入した。左側の尿管開口部は処置しないままにし、対照とした。一連の膀胱造影、膀胱鏡、および排泄尿路造影研究を、屠殺まで8週間間隔で行った。ミニブタを、処置後の8週目(1)、16週目(1)および26週目(2)に屠殺した。膀胱注入部位を切除し、肉眼でおよび顕微鏡で検査した。検体をヘマトキシリン(hematoxylin)およびエオシン(eosin)、およびpH1.0および2.5のアルシアンブルーで染色した。膀胱尿管、局所リンパ節、腎臓、肝臓、および脾臓の組織学的分析を行った。
【0123】
(結果)
4匹のミニブタが両側面の逆流を受けた。4匹全てが、処理の3ヶ月後で障害の証拠がなく両側面の逆流を有することが見出された。膀胱筋細胞は、それぞれの各ミニブタに由来し、インビトロで増殖された。次いでこの動物を、注入可能なオートロガス膀胱筋細胞−アルギネートゲル溶液を用いて逆流の内視鏡的修復を右側のみに行った。
【0124】
膀胱鏡およびX線造影検査は、処置の2、4、および6ヶ月後に行った。膀胱鏡検査は滑らかな膀胱壁を示した。膀胱造影は、処置された側に逆流の証拠を示さず、そして全ての動物において矯正されなかった対照尿管における持続する逆流の証拠を示した。全ての動物は、排泄尿路造影において、水腎症の証拠を示さずに修復された尿管における逆流の成功した治癒を受けた。
【0125】
屠殺時における膀胱注入部位の全体検査は、尿管下領域における膀胱筋細胞−アルギネート複合体の存在を示した。注入部位周辺の組織の顕微鏡分析は炎症を示さなかった。膀胱、尿管、リンパ節、腎臓、肝臓、および脾臓の組織切片は、アルギネート移動および肉芽腫形成の証拠を示さなかった。
【0126】
(実験データの要約)
オートロガス膀胱筋細胞は、容易に採集され、インビトロで増殖され、そして膀胱鏡的に注入され得る。この細胞は生存し、そして非免疫原性の筋肉核(muscle nidus)を形成する。この系は、いかなる障害の証拠も示さずに、逆流を矯正し得る。
【0127】
以下の実施例は、軟骨細胞−ポリマー懸濁液が、注入可能であり、非移動性であり、そしてその容量を保持するように見えること、そして膀胱尿管逆流の内視鏡的治療に有用であることを示す。実施例1で示したように、アルギネート−ウシ軟骨細胞異種移植片は、無胸腺マウスに移植した後、90日間もの長期に渡って、生存軟骨細胞を含むことが見い出された。形成された新規軟骨は、注入された鋳型のおおよその形状および寸法を保持する。遊離の軟骨細胞またはアルギネートを単独で注入すると、軟骨形成が起こらないので、細胞−ポリマー構築物が必須である。
【0128】
(実施例9:アルギネートゲル中の軟骨細胞のマウスへの移植材料および方法)
ヒアリン軟骨を仔ウシの肩の関節表面から得、そして軟骨細胞を採取した。軟骨細胞懸濁液を20、30、および40×10細胞/ccまで濃縮し、そして乾燥アルギネート粉末と混合し、ゲルを形成した。12匹の無胸腺マウスに、軟骨細胞/アルギネート溶液を皮下注射した。各マウスは、対照、10、15、および20×10軟骨細胞からなる4つの注入部位を有した(48注入部位)。マウスを、注入後2、4、6、および12週で屠殺した。
【0129】
注入部位の組織学的検査は、36の実験注入部位のうち34で軟骨の形成の証拠を示した。増殖期の注入部位の全体検査は、ポリマーゲルが、累進的に軟骨により置換されることを示した。形成された軟骨の最終的なサイズは、注射した最初の軟骨細胞の濃度に関連し、そして各カテゴリー内で均一および安定であるようであった。12匹の対照中では、軟骨形成の証拠がなかった。離れた器官の組織学的分析は、軟骨またはアルギネートゲル移動または肉芽腫形成の証拠を示さなかった。
【0130】
(材料および方法)
動物−若い成熟無胸腺nu/nuマウスを細胞受容体として用いた。動物は、個々に飼育され、所望のとおり食糧および水に接近でき、そして12時間の照明および暗闇の間隔で維持した。麻酔を麻酔吸入器投与によりメトキシフルラン(methoxyflurane)で行った。
【0131】
ポリマー−乾燥アルギネート圧搾粉末(Dentsply International; Milford, DE)を送達ビヒクルとして用いた。アルギネートは、グルロン酸(gluronic acid)およびマンヌロン酸(mannuronic acid)のコポリマーであり、制御された速度でカルシウム塩類および水と混合されたときのゲルを意味する。リン酸カルシウムおよび硫酸カルシウムは、純粋なポリマー粉末で含有され、ゲル化動力学を制御する。粉末をエチレンオキシド(ethylene oxide)中で滅菌し、そして注入までアルミ泊中にシールした。
【0132】
細胞採取−ヒアリン軟骨を屠殺後6時間以内に仔ウシの肩の関節表面から得た。肩をプロビジン−ヨウ素(providine−iodine)の10%溶液中で洗浄し、そして軟骨細胞を、Klagsbrun,「大スケールの軟骨細胞の調製」Methods in Enzymology, 58:560(1979)に記載の技術を用いて滅菌条件下で採取した。単離した細胞を血球計を用いて定量し、そして軟骨細胞懸濁液を20、30、および40×10細胞/ccまで濃縮した。
【0133】
細胞送達−軟骨細胞懸濁液を乾燥アルギネート粉末と混合し、ゲルを形成した。21ゲージの針を用いて、12匹のヌードマウスに600マイクロリットルの軟骨細胞/アルギネート溶液を注入した。各マウスは、対照、10、15、および20×10軟骨細胞からなる4つの注入部位を有した(48の注入部位)。アルギネートゲル単独の注入を、6匹のマウスで対照として供した。他の対照として、6匹のマウスを、同じ領域内に10、15、および20×10の軟骨細胞単独を含み、アルギネートを含まない600マイク
ロリットルの細胞懸濁液を皮下注入した。
【0134】
移植片回収−マウスを、注入後2、4、6、および12週で屠殺した。移植片は、周辺の組織から容易に移植片を分離する組織平面に従って切り出され、重量を測定し、10%の中性緩衝化ホルマリンで固定され、そしてパラフィンで包埋された。組織切片はまた、局所リンパ節、腎臓、膀胱、尿管、肺、脾臓、および肝臓から得た。組織切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。全体および組織学検査を行った。
【0135】
(結果)
図1aは、用いた一般方法の概略図である。注入部位の組織学的検査は、36の軟骨細胞/アルギネート移植片のうち34で軟骨形成の証拠を示した。軽い炎症応答は、4週間までに解消しているようであった。これは、急性期のおよび慢性の異物身体反応を示す炎症応答からなった。線維芽細胞浸潤は、注入後2週間まで見られた。増殖期の注入部位の全体検査は、ポリマーゲルが、累進的に軟骨により置換されることを示した。全体検査は、正常に見える、ゴム状から硬質の軟骨構造を示した。形成された軟骨の最終サイズは、注入された最初の容量および軟骨細胞の濃度に関連するようであり、そして各カテゴリー内で均一であるようであった。回復した軟骨構造の重量は、持続的に安定であるようであった。6つのポリマーゲル対照注入では(軟骨細胞を含まない)、軟骨形成の目に見える証拠はなかった。第二の対照グループでは(軟骨細胞懸濁液単独)、軟骨形成は、どこの部分でも明らかでなかった。注入周辺部位および離れた器官の組織学的分析は、軟骨の証拠またはアルギネートゲル移動を示さなかった。
【0136】
(実施例10:アルギネートゲルで移植された軟骨細胞を用いるブタでの膀胱尿管逆流の矯正)
(材料および方法)
膀胱尿管逆流の動物モデル。 ブタとヒトとの膀胱および腎臓の間の類似性により、ブタをこの研究に用いた。Hanfordミニブタをそのより小さなサイズの便利さにより用いた。両側面の膀胱尿管逆流が、開腹膀胱技術を用いて4匹のミニブタで作られた。その技術は、Vacantiら、「軟骨細胞を接種した合成ポリマーは、新たな軟骨形成の鋳型を提供する」Plastic and Recon. Surg. 88:753(1991)に記載のように、膀胱内尿管の全体の覆いを取ることからなる。
【0137】
処置後3カ月で、両側面の逆流の存在が、Vacantiら、「軟骨細胞を接種した合成ポリマーを用いて、ヒトの耳の形成における新たな軟骨の加工された組織成長」Mat.Res.Soc.Proc.252:367(1992)に記載のように、ヨウ素造影剤を用いる従来の膀胱X線造影法および超音波処理アルブミンを用いる超音波検査により評価された。排泄尿路造影法を行い、障害の任意の証拠を検出した。
【0138】
細胞の採取。 ヒアリン軟骨を各ミニブタからの耳表面から得た。耳をプロビジン−ヨウ素の10%溶液で洗浄し、そして軟骨細胞を、Atalaら、「自己脱離可能なバルーンシステムを用いる膀胱尿管逆流の内視鏡による処置」J. Urol.,148:724(1992)に記載の技術を用いて滅菌条件下で採取した。
【0139】
単離した細胞を、10%ウシ胎児血清(Gibco)、5マイクログラム/mlアスコルビン酸(ascorbic acid)、292マイクログラム/mlグルタミン(glutamine)、100マイクログラム/mlストレプトマイシン、40ナノグラム/mlビタミンD3および100単位/mlペニシリンを含むHamms F−12培地(Gibco, Grand Island, NY)の溶液中インビトロで増殖させた。細胞を5%COの存在下で37℃でインキュベートした。最初の採取後5〜8週間で、軟骨細胞をトリプシン処理し、そして血球計を用いて定量した。各ミニブタ由来の軟骨
細胞懸濁液を最小必須培地−199(Gibco)中に40×10細胞/mlまで濃縮した。
【0140】
オートロガス軟骨細胞アルギン酸カルシウム懸濁液。 2w/v%のアルギン酸ナトリウム(0.1M KPO,0.135M NaCl,pH7.4,Protan,Portsmouth,NH)を作成し、そしてエチレンオキシド中で滅菌した。40×10細胞/ml軟骨細胞懸濁液の1.5mlのアリコートを等量のアルギン酸ナトリウム溶液に、最終アルギネート濃度が1%となるように添加した。軟骨細胞−アルギン酸ナトリウム懸濁液を32℃で維持した。注入の直前に、硫酸カルシウム(0.2g/ml)を軟骨細胞−アルギン酸ナトリウム懸濁液に添加した。混合物をボルテックスにより混合し、そして注入まで氷中で保存した。ゲル化プロセスは、硫酸カルシウムの添加とともに開始し、懸濁液は、約40分間液体の状態である。
【0141】
実験研究。 ミニブタは、25ml/kgケタミンおよび1ml/kgアシルプロマジンの筋肉内注射で麻酔した。別の麻酔を25ml/kgケタミンおよび10mg/kgのキシラジンの筋肉内投与で得た。動物を仰向けの状態で置く。膀胱に導入された15.5
French膀胱鏡を用い、22ゲージの針を右の逆流尿管の尿管下領域に挿入した。内視鏡で見て尿管口を持ち上げながら約2〜3mlのオートロガス軟骨−アルギネート懸濁液(40〜60×10軟骨細胞)を針を通じて注入した。左の尿管口は未処理のままにし、そして対照として供した。一連の膀胱造影、膀胱鏡検査、および排泄尿路造影研究を屠殺まで8週間間隔で行った。ミニブタを処置後8週(1)、16週(1)、および26(2)週で屠殺した。膀胱の注入部位を切除し、そして肉眼および顕微鏡で検査した。検体をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、そしてpH1.0および2.5でアルシアンブルーで染色した。膀胱、尿管、局部リンパ節、腎臓、肝臓、および脾臓の組織学的分析を行った。
【0142】
(結果)
4匹のミニブタは、両側面の逆流の生成を経験した。4匹全ては、処理後3カ月で障害の証拠なしに両側面の逆流を有することが見出された。軟骨細胞を各ミニブタの左耳表面から採取し、そしてインビトロで5〜8週間増殖させ、動物1匹につき50〜150×10生存細胞の最終濃度とした。次いで、動物は、右側だけを注射可能なオートロガス軟骨細胞−アルギネートゲル溶液を用い、内視鏡を用いて逆流の修復を受けた。
【0143】
膀胱鏡検査およびX線造影検査を処置後2、4、および6カ月で行った。膀胱鏡検査は、滑らかな膀胱壁を示した。膀胱造影は、全ての動物において、処置した側で逆流がなく、そして未矯正の対照尿管で持続的な逆流の証拠を示した。全ての動物は、排泄尿路造影で水腎症の証拠なしに、修復された尿管の成功した治癒を有した。
【0144】
屠殺時の膀胱注入部位の全体検査は、尿管下領域で良好に規定されたゴム状から硬質の軟骨構造を示した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色を用いたこれらの検体の組織学的検査は、軟骨形成の証拠を示した。ポリマーゲルは、時間の経過とともに軟骨により累進的に置換された。アルデヒドフシンアルシアンブルー(aldehyde fuschinalcian blue)染色は、コンドロイチン硫酸塩の存在を示唆した。注入部位の周辺組織の顕微鏡分析は炎症を示さなかった。膀胱、尿管、リンパ節、腎臓、肝臓および脾臓由来の組織切片は、軟骨細胞またはアルギネート移動、もしくは肉芽腫形成の証拠を示さなかった。
【0145】
(実験データの要約)
軟骨細胞は、容易に成長し得そして培養液で増殖し得る。新規軟骨形成は、合成生分解性ポリマー上で培養された軟骨細胞を用いてインビトロおよびインビボで達成され得る。
これらの実験では、軟骨マトリックスは、生分解される多糖類ポリマーとしてアルギネートを置換した。6匹のミニブタは、両側面の逆流作成を経験した。6匹全てが処理後3カ月で障害の証拠なく両側面の逆流を有することを見出された。軟骨細胞を各ミニブタの左耳表面から採取し、そして動物1匹につき50〜150×10生存細胞の最終濃度まで増殖させた。次いで動物は、右側だけ注入可能なオートロガス軟骨細胞−アルギネートゲル溶液を用い、内視鏡を用いて逆流の修復を受けた。
【0146】
膀胱鏡検査およびX線造影を処置後2、4、および6カ月で行った。膀胱鏡検査は、滑らかな膀胱壁を示した。膀胱造影は、全ての動物において、処置した側で逆流がなく、そして未矯正の対照尿管で持続的な逆流の証拠を示した。全ての動物は、排泄尿路造影で水腎症の証拠なく、修復した尿管で成功した治癒を有した。採取した耳は、軟骨細胞修復の1カ月以内に軟骨の再成長の証拠を有した。
【0147】
屠殺時の膀胱注入部位の全体検査は、尿管下領域で良好に規定されたゴム状から硬質の軟骨構造を示した。ヘマトキシリンおよびエオシンを用いたこれらの検体の組織学的検査は、正常な軟骨形成の証拠を示した。ポリマーゲルは、時間の経過とともに軟骨により累進的に置換された。アルデヒドフシンアルシアンブルー染色は、コンドロイチン硫酸塩の存在を示唆した。注入部位の周辺組織の顕微鏡分析は炎症を示さなかった。膀胱、尿管、リンパ節、腎臓、肺、肝臓および脾臓由来の組織切片は、軟骨細胞またはアルギネート移動、もしくは肉芽腫形成の証拠を示さなかった。
【0148】
本発明の組成物および方法の修飾および改変は、先の詳細な記載から当業者に明らかであり得る。このような修飾および改変は、以下の請求の範囲内にあることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1a】図1aは、は、ポリマー−軟骨細胞懸濁液を、膀胱尿管逆流の対照として尿管の開口部のある領域に注入するか、または失禁を管理するために尿管周囲の領域に注入するスキームを示す;フォトミクログラフにより、アルギネート(alginate)ポリマー懸濁液、その懸濁物の注入に続いて形成される新しい軟骨、およびポリマーの非存在下で注入される軟骨細胞対照を示す。
【図1b】図1bは、は、ポリマー−軟骨細胞懸濁液を、膀胱尿管逆流の対照として尿管の開口部のある領域に注入するか、または失禁を管理するために尿管周囲の領域に注入するスキームを示す;フォトミクログラフにより、アルギネート(alginate)ポリマー懸濁液、その懸濁物の注入に続いて形成される新しい軟骨、およびポリマーの非存在下で注入される軟骨細胞対照を示す。
【図1c】図1cは、は、ポリマー−軟骨細胞懸濁液を、膀胱尿管逆流の対照として尿管の開口部のある領域に注入するか、または失禁を管理するために尿管周囲の領域に注入するスキームを示す;フォトミクログラフにより、アルギネート(alginate)ポリマー懸濁液、その懸濁物の注入に続いて形成される新しい軟骨、およびポリマーの非存在下で注入される軟骨細胞対照を示す。
【図1d】図1dは、は、ポリマー−軟骨細胞懸濁液を、膀胱尿管逆流の対照として尿管の開口部のある領域に注入するか、または失禁を管理するために尿管周囲の領域に注入するスキームを示す;フォトミクログラフにより、アルギネート(alginate)ポリマー懸濁液、その懸濁物の注入に続いて形成される新しい軟骨、およびポリマーの非存在下で注入される軟骨細胞対照を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性、生体適合性の天然または合成の有機ポリマーを含む注入可能な組成物であって、該ポリマーは、アルギネート、ポリホスファジン、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ならびにスルホン化されたポリマーからなる群から選択され、そして該ポリマーは、共有結合、イオン結合、または水素結合を介して架橋されて、3次元開放格子(three−dimensionalopen−lattice)構造を形成し得、該構造は、ゲルを形成するための水分子および動物に組織を移植するための分離した細胞を捕捉し、ここで、該細胞ポリマー剤は、該ポリマー溶液が架橋されて、ゲル中に分散された細胞を有する3次元開放格子ヒドロゲルが形成される条件下で該動物に注入され、該細胞は、軟骨細胞およびその他の軟骨を形成する細胞、骨芽細胞およびその他の骨を形成する細胞、筋肉細胞、線維芽細胞、ならびに器官細胞からなる群から選択され、
ここで、架橋が、前記動物への移植の前に開始される、組成物。
【請求項2】
前記ポリマー溶液が、細胞懸濁液として前記動物に注入され、次いで架橋されてヒドロゲルを形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロゲルが、銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、スズ、ならびに二官能性、三官能性、および四官能性有機カチオンからなる群から選択されるカチオン;ならびに低分子量のジカルボン酸、硫酸イオン、および炭酸イオンからなる群から選択されるアニオンからなる群から選択されるイオンと相互作用することにより架橋される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロゲルが、ポリイオンとの架橋により、さらに安定化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロゲルが、前記動物への注入の後に成型されて特定の形を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
動物において新たな組織を形成するためのデバイスであって、該デバイスは、生体適合性の生分解性の天然または合成の有機ポリマーから形成される溶液と、ゲル中に分散された細胞を有する3次元開放格子ヒドロゲルを形成するためのポリマー−細胞溶液を動物に注入するための手段とを組み合わせて含み、該有機ポリマーは、アルギネート、ポリホスファジン、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、およびスルホン化されたポリマーからなる群から選択され、そして該有機ポリマーは、共有結合、イオン結合または水素結合を介して架橋されて、該3次元開放格子構造を形成し得、該構造は水分子と、動物へ移植して組織を形成するために適切な該水分子と混合された分離された細胞とを捕捉してゲルを形成し、ここで、該細胞は、軟骨細胞およびその他の軟骨を形成する細胞、骨芽細胞およびその他の骨を形成する細胞、筋肉細胞、線維芽細胞、ならびに器官細胞からなる群から選択され、
ここで、架橋が、前記動物への移植の前に開始される、デバイス。
【請求項7】
前記ポリマー溶液が、注入の後に該ポリマーを架橋するのに効果的な量のイオン、pH変化および温度変化からなる群から選択される因子と組み合わされる、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ポリマーが、銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、スズ、ならびに二官能性、三官能性、および四官能性有機カチオンからなる群から選択されるカチオン;ならびに低分子量のジカルボン酸、硫酸イオン、および炭酸イオンからなる群から選択されるアニオンからなる群から選択されるイオンと組み合わされる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
細胞を動物中に導入するために硬化されたヒドロゲル構築物であって、該構築物が、以下:
生分解性の生体適合性の天然または合成の有機ポリマーの3次元開放格子構造の全体にわたって分配された分離した細胞であって、該構造が捕捉された水分子を含み、ここで、該細胞が、軟骨細胞およびその他の軟骨を形成する細胞、骨芽細胞およびその他の骨を形成する細胞、筋肉細胞、線維芽細胞、ならびに器官細胞からなる群から選択される、細胞、を含み、
ここで、該ヒドロゲルが、所望の解剖学的形状を有する、
構築物。
【請求項10】
前記ポリマーが、アルギネート、ポリホスファジン、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ならびにスルホン化されたポリマーからなる群より選択される、請求項9に記載のヒドロゲル構築物。
【請求項11】
前記ヒドロゲルが、イオン、pH変化、および温度変化からなる群より選択される因子に曝すことによって硬化される、請求項9に記載のヒドロゲル構築物。
【請求項12】
前記ヒドロゲルが、銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、スズ、ならびに二官能性、三官能性、および四官能性有機カチオンからなる群から選択されるカチオン;ならびに低分子量のジカルボン酸、硫酸イオン、および炭酸イオンからなる群から選択されるアニオンからなる群から選択されるイオンと相互作用することにより硬化される、請求項11に記載のヒドロゲル構築物。
【請求項13】
膀胱尿管逆流、失禁、または胃食道逆流の処置のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
硬部組織欠損の処置のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
軟部組織欠損の処置のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
男性不妊症を誘発するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記細胞が、軟骨細胞である、膀胱尿管逆流の処置のための、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
膀胱尿管逆流、失禁、または胃食道逆流の処置のための、請求項6〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
硬部組織欠損の処置のための、請求項6〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
軟部組織欠損の処置のための、請求項6〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
男性不妊症を誘発するための、請求項6〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記細胞が、軟骨細胞である、膀胱尿管逆流の処置のための、請求項6に記載のデバイス。
【請求項23】
膀胱尿管逆流、失禁、または胃食道逆流の処置のための、請求項9〜12のいずれか1項に記載のヒドロゲル構築物。
【請求項24】
硬部組織欠損の処置のための、請求項9〜12のいずれか1項に記載のヒドロゲル構築物。
【請求項25】
軟部組織欠損の処置のための、請求項9〜12のいずれか1項に記載のヒドロゲル構築物。
【請求項26】
男性不妊症を誘発するための、請求項9〜12のいずれか1項に記載のヒドロゲル構築物。
【請求項27】
前記細胞が、軟骨細胞である、膀胱尿管逆流の処置のための、請求項9に記載のヒドロゲル構築物。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【公開番号】特開2008−43782(P2008−43782A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252752(P2007−252752)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【分割の表示】特願2003−431538(P2003−431538)の分割
【原出願日】平成6年4月29日(1994.4.29)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【出願人】(591044027)チルドレンズ メディカル センター コーポレイション (12)
【氏名又は名称原語表記】CHILDREN’S MEDICAL CENTER CORPORATION
【Fターム(参考)】