説明

注出ポンプ付き容器

【課題】吸引パイプの先端部を充填空間の隅部又はその近傍に配置する際の作業を容易にすると共に、吸引パイプが容器本体の底部に吸い付いて注出不良を生じることを防止する。
【解決手段】本発明は、内容物の充填空間Rを有し底部1dの中央域に内向きの凸壁11を形成した容器本体1と、この容器本体1の口部1aに装着され充填空間Rの内容物を注出する注出ポンプ2とを備える注出ポンプ付き容器である。本発明容器は、注出ポンプ2の吸引口21aに連なり、この注出ポンプ2を装着する際に、その先端部を容器本体1の凸壁11に当接させて湾曲状態を維持する吸引パイプ4を備え、この吸引パイプ4の先端部に、容器本体1の凸壁11に滑動可能に点接触させて吸引パイプ4の先端開孔5d1の閉塞を回避する球状部5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の底部中央域に内向きの凸壁を形成し、この凸壁に沿って充填空間の隅部に誘導した吸引パイプを通して内容物を吸い上げる注出ポンプ付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
注出ポンプ付き容器には、容器本体底部の中央域に内向きの凸壁を形成し、この凸壁に沿って吸引パイプの先端部分を滑動させて充填空間の隅部に残留している内容物を効率的に注出させるものがある(例えば、特許文献1,2)。
【特許文献1】実開平3−29416号公報
【特許文献2】実登3019095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の注出ポンプ付き容器は、吸引パイプがその先端部分を垂直に切断したものである場合、容器本体の底部に凸壁が形成されているものの、吸引パイプが凸壁の頂点域で底部に対して垂直に当接すると、吸引パイプが凸壁の頂点域に吸い付くため、吸引パイプの閉塞に伴い注出不良を生じることが考えられる。
【0004】
これに対し、吸引パイプの先端部分を斜めに切断したものも提案されているが、吸引パイプの湾曲方向によっては、吸引パイプの先端部分が底部や容器本体隅部に対して斜めに当接すると、同様の吸い付きが生じるため、注出不良の問題を解決するに至らない。
【0005】
また、容器本体の底部中央域に内向きの凸壁を形成した注出ポンプ付き容器の場合、吸引パイプの先端部にエッジが形成されていると、底部の凸壁に沿って滑りにくく、引っ掛かり等を生じる等して、充填空間の隅部に配置するに際し煩雑な作業を要する。
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、吸引パイプが容器本体の底部に吸い付いて注出不良を生じることと、吸引パイプの先端部を充填空間の隅部に配置する際の作業が煩雑であることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容物の充填空間を有し底部の中央域に内向きの凸壁を形成した容器本体と、この容器本体の口部に装着され充填空間の内容物を注出する注出ポンプとを備える注出ポンプ付き容器であって、この注出ポンプ付き容器は、注出ポンプの吸引口に連なり、この注出ポンプを装着する際に、その先端部を容器本体の凸壁に当接させて湾曲状態を維持する吸引パイプを備え、この吸引パイプの先端部に、容器本体の凸壁に滑動可能に点接触させて吸引パイプの先端開孔の閉塞を回避する球状部を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、吸引パイプの長さは、少なくとも注出ポンプの吸引口から容器本体の凸壁の頂点よりも長ければよいが、充填空間の際下端に到達し得る長さ以上であることが好ましい。また、本発明において、球状とは、球体形に限らず、半球形を含む意味に解釈する。
【0009】
前記球状部は、吸引パイプの先端部周りに間隔をおいて設けられ、その輪郭形状が円弧状になり、吸引パイプの先端部を球状の先細り形状とする複数のリブからなるものとすることができる。また、前記球状部は、吸引パイプの先端部に設けられ、その輪郭形状が外向きに膨出するドーム状になり、吸引パイプの先端部を球状の先細り形状とする球状壁からなるものとすることもできる。
【0010】
前記球状部は、その先端に、容器本体の凸壁に点接触する小突起を設けることができる。これに対し、容器本体には、その凸壁の頂点域に、前記吸引パイプに点接触する小突起を設けることができる。
【0011】
前記球状部の基部は、吸引パイプと一体に形成することができる。また、前記球状部の基部は、吸引パイプに着脱可能な別部材とすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、注出パイプを装着して吸引パイプの先端部を充填空間の隅部又はその近傍に配置するにあたり、容器本体の凸壁に沿って滑らかに誘導される。従って、充填空間の底部、特に隅部に残留している内容物を注出するための組付け作業が容易となり、容器本体内の残量の減少に効果を発揮する。
【0013】
また、本発明によれば、吸引パイプの先端開孔が球状部の領域に形成されるため、吸引パイプの先端開孔も底部によって閉塞されることがない。従って、内容物を取り入れる先端開孔が底部に閉塞されることによる注出不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第一形態を側面から示す一部断面図であり、図2(a),(b)はそれぞれ、図1の要部拡大図及び吸引パイプ4の平面図である。
【0016】
図1にて、符号1は、ブロー成形されたボトル型の容器本体である。容器本体1は、口部1a、肩部1b、胴部1c及び底部1dからなる。この底部1dの中央域には、内向きの凸壁11が形成され、この凸壁11を取り囲むように底壁12が一体に形成されている。これにより、容器本体1の内側には、底壁12の内面12fを最下端とする内容物の充填空間Rが形成される。尚、凸壁11は、底壁12を介在させることなく、直接容器本体1の隅部に連続するように延長形成することも可能である。
【0017】
符号2は、使用者の手動操作によって充填空間Rの内容物を注出する注出ポンプである。注出ポンプ2は、容器本体1の口部1aから垂下するシリンダポンプ21と、使用者が手動操作によって上下動させることにより、シリンダポンプ21を動作させるノズルヘッド22とを備え、容器本体1の口部1aにリングキャップ3を介して螺合又はアンダーカット嵌合等の手段により着脱可能に装着される。
【0018】
シリンダポンプ21には、その吸引口21aに連なり、注出ポンプ2を装着する際に、その先端部を容器本体1の凸壁11の内面11fに当接させて湾曲状態を維持する吸引パイプ4が設けられている。この吸引パイプ4は、吸引口21aから底壁11に至るまでの長さを有し、可撓性を有する合成樹脂からなる。
【0019】
吸引パイプ4の先端部には、図2に示すように、凸壁11の内面11fに滑動可能に点接触させる球状部5が設けられている。球状部5は、吸引パイプ4の先端部を構成し、吸引パイプ4の内側に形成された通路4aに通じる開孔5dを有する中空の基部5aと、この基部5a周りに間隔をおいて設けられ、その輪郭形状が円弧状になり、吸引パイプ4の先端部を球状の先細り形状とする複数のリブ5b,5cとからなる。
【0020】
リブ5bは、円弧状の輪郭形状を有し、図2(b)に示すように、基部5aの開孔5dを十字形に横切って4つの先端開孔5d1に分割する4つの延長部位5b1を有する。リブ5cは、開孔5dの周りに間隔を開けて縦リブ5bの延長部位5b1と交互に配置され、縦リブ5bと同様の輪郭形状を有する。これにより、リブ5b,5cは、吸引パイプ4の先端部を丸みのある球状の先細り形状とする。
【0021】
次に、図1,2を参照して、本発明に従う注出ポンプ付き容器の組み付け方法を説明する。
【0022】
容器本体1の口部1aに注出ポンプ2を装着する際、吸引パイプ4の先端部は、縦リブ5b,5cを介して凸壁11の頂点域に形成した小突起11aに当接し、二点鎖線で示すように、容器本体1の径方向外側に流れる。小突起11aは、吸引パイプ4の先端部を容器本体1の径方向外側に流して充填空間Rの隅部Reに配置するのに役立つが、必須の構成ではない。
【0023】
小突起11aから流れた吸引パイプ4は、その先端部がリブ5b,5cによって球状の先細り形状となるため、凸壁11の内面11fに点接触した状態で、この内面11fに沿って滑動する。そして、吸引パイプ4の先端部が底壁12の内面12fに到達した後も、吸引パイプ4の長さに応じて、リブ5b,5cにより、底壁12の内面12fに点接触した状態で、この内面12fに沿って充填空間の隅部Reに向かって滑動する。
【0024】
これにより、吸引パイプ4の先端部は、注出ポンプ2を装着する際には、凸壁11の内面11f及び底壁12の内面12fを点接触した状態のまま滑動し、注出ポンプ2の装着が完了した後には、充填空間Rの隅部Re又はその近傍に位置決めされる。しかも、吸引パイプ4の先端開孔5d1は、リブ5b,5cにより凸壁11の内面11fや底壁12の内面12fに直接触れないため、凸壁11や底壁12に吸い付いて塞がることがない。
【0025】
即ち、本発明に従う注出ポンプ付き容器によれば、注出パイプ2を装着して吸引パイプ4の先端部を充填空間Rの隅部Re又はその近傍に配置するにあたり、容器本体1の凸壁11の内面11fに沿って滑らかに誘導される。従って、充填空間Rの底部1d、特に隅部Reに残留している内容物を注出するための組付け作業が容易となり、容器本体1内の残量の減少に効果を発揮する。
【0026】
また、本発明に従う注出ポンプ付き容器によれば、吸引パイプ4の先端開孔5d1が球状部5の領域に形成されるため、吸引パイプ4の先端開孔5d1も底部1dによって閉塞されることがない。従って、内容物を取り入れる先端開孔5d1が底部1dに閉塞されることによる注出不良を防止することができる。
【0027】
特に、本形態のように、インジェクション成形等の成形方法により球状部5を吸引パイプ4と一体に設けた場合、部品点数を削減することにより、注出ポンプ容器を生産するにあたって低コスト化が図れるという効果を奏する。
【0028】
図3は、本発明に係る球状部の他の形態を示すものである。
【0029】
球状部6は、吸引パイプ4に着脱可能に装着される基部6aと、この基部6aの先端に一体に設けられ、その輪郭形状が外向きに膨出するドーム状になり、吸引パイプ4の先端部を球状の先細り形状とする球状壁6bからなる。この球状壁6bには、吸引パイプ4の内側に形成された通路4aに通じて内容物を引き入れる複数の先端開孔6cが形成されている。
【0030】
この場合も、その組み付け時と内容物の注出時において、第一の形態と同様の作用・効果を奏する。特に、本形態のように、球状部6を吸引パイプ4に着脱可能に設けた場合、吸引パイプ4に押出成形或いはインジェクション成形等の成形方法により成形された既存のものを使用できるため、汎用性が高まるという効果を奏する。
【0031】
また図4は、本発明に係る球状部の更に他の形態を示すものである。この球状部は、上述した球状部6の変形例であり、球状壁6bの先端域に、底部1dに点接触する小突起6dを一体に備える。この小突起6dは、凸壁11(小突起11a)の内面11fや底壁12の内面12fに当接したとき、吸引パイプ4の先端部を容器本体1の径方向外側に流して充填空間Rの隅部Re又はその近傍に配置するのに役立つ。
【0032】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したものであるが、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、注出ポンプ2の形態は、特に限定されることがなく、トリガー式の注出ポンプであってもよいし、スプレー或いはエアゾールにも適用可能である。また、充填される内容物についても、正常なポンプ機能を確保できるものであれば限定を付するものではない。更に、本発明に従う注出ポンプ付き容器を例示する各形態の構成要素は、用途等に応じてそれぞれ組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に従う注出ポンプ付き容器を一部断面で示す側面図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、同形態において、容器本体の底部を吸引パイプの球状部と共に示す図1の要部拡大図及び、吸引パイプをその先端側から示す平面図である。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ、吸引パイプの先端部に他の球状部を装着した状態を側面から示す一部断面図、その球状部のみを示す一部断面図及び、球状部をその先端側から示す平面図である。
【図4】(a)〜(c)はそれぞれ、吸引パイプの先端部に更に他の球状部を装着した状態を側面から示す一部断面図、その球状部のみを示す一部断面図及び、球状部をその先端側から示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 容器本体
1d 底部
2 注出ポンプ
3 リングキャップ
4 吸引パイプ
5 球状部
5a 基部
5b 十字形リブ
5c リブ
5d 開孔
5d1 先端開孔
6 球状部
6a 基部
6b 球状壁
6c 先端開孔
11 凸壁
12 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の充填空間を有し底部の中央域に内向きの凸壁を形成した容器本体と、この容器本体の口部に装着され充填空間の内容物を注出する注出ポンプとを備える注出ポンプ付き容器であって、
この注出ポンプ付き容器は、注出ポンプの吸引口に連なり、この注出ポンプを装着する際に、その先端部を容器本体の凸壁に当接させて湾曲状態を維持する吸引パイプを備え、
この吸引パイプの先端部に、容器本体の凸壁に滑動可能に点接触させて吸引パイプの先端開孔の閉塞を回避する球状部を設けたことを特徴とする、注出ポンプ付き容器。
【請求項2】
前記球状部は、吸引パイプの先端部周りに間隔をおいて設けられ、その輪郭形状が円弧状になり、吸引パイプの先端部を球状の先細り形状とする複数のリブからなる、請求項1に記載の注出ポンプ付き容器。
【請求項3】
前記球状部は、吸引パイプの先端部に設けられ、その輪郭形状が外向きに膨出するドーム状になり、吸引パイプの先端部を球状の先細り形状とする球状壁からなる、請求項1に記載の注出ポンプ付き容器。
【請求項4】
前記球状部は、その先端域に、容器本体の凸壁に点接触する小突起を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の注出ポンプ付き容器。
【請求項5】
前記凸壁は、その頂点域に、前記吸引パイプに点接触する小突起を備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の注出ポンプ付き容器。
【請求項6】
前記球状部は、吸引パイプと一体に設けられたものである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の注出ポンプ付き容器。
【請求項7】
前記球状部は、吸引パイプに着脱可能に設けられたものである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の注出ポンプ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−223643(P2007−223643A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46953(P2006−46953)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】