説明

注射針組立体および薬剤注射装置

【課題】針管を皮膚に穿刺する際に必要な押圧力及び穿刺する速度を確保することができ、確実に針管の針先を皮膚上層部に位置させることができるようにする。
【解決手段】注射針組立体2は、生体に穿刺可能な針先8を有する針管5と、針管5を保持するハブ6と、調整部12と、安定部13と、穿刺速度確保部材7と、を備えている。調整部12は、針管5の周囲に設けられ、針管5の針先8が突出する針突出面12aを有している。また、安定部13は、ハブ6から延在し、針管5の周囲を覆うように配置されて針管5を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面13aを有する。そして、穿刺速度確保部材は、針管5の軸方向に沿って移動可能に調整部12又は安定部13に設けられ、針管5を生体に穿刺する際に針管5の針先8よりも先に皮膚に接触し、針管5を生体に穿刺する際の速度及び押圧力を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針先を皮膚の表面より穿刺し、皮膚上層部に薬剤を注入するために用いる注射針組立体および薬剤注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鳥インフルエンザのヒトへの感染が報告されており、ヒトからヒトへの感染の大流行(パンデミック)による多くの被害が懸念されている。そこで、鳥インフルエンザに有効である可能性が高いプレパンデミックワクチンの備蓄が世界中で行われている。また、プレパンデミックワクチンを多くのヒトに投与するために、ワクチンの製造量を拡大させる検討がなされている。
【0003】
皮膚は、表皮と、真皮と、皮下組織の3部分から構成される。表皮は、皮膚表面から50〜200μm程度の層であり、真皮は、表皮から続く1.5〜3.5mm程度の層である。インフルエンザワクチンは、一般的に皮下投与もしくは筋肉内投与であるため、皮膚の下層部もしくはそれよりも深部に投与されている。
【0004】
一方、免疫担当細胞が多く存在する皮膚上層部を標的部位として、インフルエンザワクチンを投与することにより、投与量を少なくしても、皮下投与や筋肉投与と同等の免疫獲得能が得られることが報告されている(非特許文献1)。したがって、プレパンデミックワクチンを皮膚上層部に投与することによって、投与量を減らすことができるので、プレパンデミックワクチンをより多くのヒトに投与できることになる。なお、皮膚上層部とは、皮膚のうちの表皮と真皮を指す。
【0005】
皮膚上層部への薬剤の投与方法としては、単針、多針、パッチ、ガス等を用いた種々の方法が報告されているが、投与の安定性、信頼性、製造コストを考慮すると、皮膚上層部への投与方法としては、単針を用いた方法が最も適しているとされている。この単針を用いて皮膚上層部にワクチンを投与する方法として、古くからマントー法が知られている。マントー法は、一般的に26〜27Gのサイズで短ベベルの針先を有する針を皮膚に対して10〜15°程度の斜め方向から2〜5mm程度挿入して、100μl程度の薬剤を投与する方法である。
【0006】
ところが、マントー法による薬剤の投与は、手技が難しいため、その成功率は注射を行う医者の技量に委ねられる。特に小児は投与時に動く可能性があるため、マントー法によってインフルエンザワクチンを投与することは難しい。したがって、簡便に皮膚上層部にワクチンを投与することのできるデバイスの開発が求められている。
【0007】
特許文献1には、皮膚接触面を有するリミッタを注射器のハブに接続した注射装置が記載されている。この特許文献1に記載された注射装置のリミッタは、針管の周囲を覆う筒状に形成されており、注射針が突出する皮膚接触面を有している。このリミッタは、皮膚接触面から突出する注射針の長さ(突出長)を0.5〜3.0mmに規定し、注射針から注入された薬剤を皮膚内に投与するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−137343号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R.T.Kenney et al. New England Journal of Medicine, 351, 2295-2301(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された注射装置のように針管の突出する長さが比較的短い注射装置では、注射器を皮膚に対してゆっくり押し付けたり、弱い力で押し付けたりすると、針管の針先が皮膚に穿刺されない、あるいは穿刺され難かった。また、使用者は、どの程度の押し圧で針管が生体を穿刺しているのかを認識することが難しい、という問題があった。その結果、針管を穿刺する押圧力にバラツキが発生するだけでなく、針管の針先が所望の位置まで達せず、薬剤を確実に皮膚上層部に投与することが困難であった。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、針管を皮膚に穿刺する際に必要な押圧力及び穿刺する速度を確保することができ、確実に針管の針先を皮膚上層部に位置させることができる注射針組立体及び薬剤注射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の注射針組立体は、生体に穿刺可能な針先を有する針管と、針管を保持するハブと、針管の周囲に設けられ、針管の針先が突出する針突出面を有する調整部と、を備えている。また、ハブから延在し、針管の周囲を覆うように配置されて針管を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面を有する安定部と、を備えている。そして、針管の軸方向に沿って移動可能に調整部又は安定部に設けられ、針管を生体に穿刺する際に針管の針先よりも先に皮膚に接触し、針管を生体に穿刺する際の速度及び押圧力を確保する穿刺速度確保部材と、を備えた。
【0013】
また、本発明の薬剤注射装置は、生体に穿刺可能な針先を有する針管と、針管を保持するハブと、針管の周囲に設けられ、針管の針先が突出する針突出面を有する調整部と、ハブに接続されるシリンジと、を備えている。また、ハブから延在し、針管の周囲を覆うように配置されて針管を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面を有する安定部と、を備えている。そして、針管の軸方向に沿って移動可能に調整部又は安定部に設けられ、針管を生体に穿刺する際に針管の針先よりも先に皮膚に接触し、針管を生体に穿刺する際の速度及び押圧力を確保する穿刺速度確保部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の注射針組立体及び薬剤注射装置によれば、穿刺速度確保部材によって、針管を生体に穿刺する際の速度及び押圧力を一時的に確保することができ、勢いをつけて針管の針先を生体に穿刺することができる。その結果、調整部から突出する長さが短い針管でも、確実に針管の針先を皮膚上層部の所望の位置に穿刺することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の薬剤注射装置の第1の実施の形態例を示す断面図である。
【図2】本発明の薬剤注射装置の第1の実施の形態例における穿刺したときの状態を示す断面図である。
【図3】本発明の薬剤注射装置の第2の実施の形態例を示す断面図である。
【図4】本発明の薬剤注射装置の第2の実施の形態例における穿刺後の状態を示す断面図である。
【図5】本発明の薬剤注射装置の第3の実施の形態例を示す断面図である。
【図6】本発明の薬剤注射装置の第3の実施の形態例における穿刺後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の注射針組立体及び薬剤注射装置の実施形態例について、図1〜図6を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態例
1−1.注射針組立体及び薬剤注射装置の構成例
1−2.薬剤注射装置の使用方法
2.第2の実施の形態例
3.第3の実施の形態例
【0017】
<1.第1の実施の形態例>
1−1.注射針組立体及び薬剤注射装置の構成例
まず、図1〜図2を参照して本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる注射針組立体及び薬剤注射装置について説明する。
図1は本例の薬剤注射装置を示す断面図、図2は穿刺したときの状態を示す断面図である。
【0018】
図1に示すように、薬剤注射装置1は、注射針組立体2と、この注射針組立体2が着脱可能に接続されるシリンジ3から構成されている。シリンジ3は、薬剤注射装置を使用するときに薬剤を充填させるものでもよく、予め薬剤が充填されたプレフィルドシリンジであってもよい。また、シリンジ3に充填される薬剤としては、ワクチンを挙げることができるが、サイトカインなどの高分子物質を用いたものや、ホルモンであってもよい。
【0019】
注射針組立体2は、針孔を有する中空の針管5と、針管5を保持するハブ6と、穿刺速度確保部材7とを備えている。
【0020】
[針管]
針管5は、ISOの医療用針管の基準(ISO9626:1991/Amd.1:2001(E))で26〜33Gのサイズ(外径0.2〜0.45mm)のものを使用し、好ましくは30〜33Gのものを使用する。針管5の先端部には、針先8を鋭角にするための刃面5aが形成されている。この刃面5aの針管5が延びる方向の長さ(以下、「ベベル長B」という)は、後述する皮膚上層部の最薄の厚さである1.4mm(成人)以下であればよく、また、33Gの針管に短ベベルを形成したときのベベル長である約0.5mm以上であればよい。すなわち、ベベル長Bは、0.5〜1.4mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0021】
さらに、ベベル長Bは、皮膚上層部の最薄の厚さが0.9mm(小児)以下、すなわち、ベベル長Bが0.5〜0.9mmの範囲であればなおよい。なお、短ベベルとは、注射用針に一般的に用いられる、針の長手方向に対して18〜25°をなす刃面を指す。
【0022】
針管5の材料としては、例えば、ステンレス鋼を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金その他の金属を用いることができる。また、針管5は、ストレート針や、少なくとも一部がテーパー構造となっているテーパー針を適用することができる。
【0023】
[ハブ]
次に、ハブ6について説明する。ハブ6は、略円柱状のハブ本体10と、固定部11と、調整部12と、安定部13を備えている。ハブ本体10の軸方向の一端部には、調整部12及び安定部13が設けられており、他端部には、固定部11が設けられている。このハブ6の材質としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂(プラスチック)を挙げることができる。
【0024】
固定部11には、シリンジ3の嵌入部3aが嵌合される筒孔11aが設けられている。この筒孔11aは、シリンジ3の嵌入部3aに対応した大きさに設定されており、調整部12及び安定部13側に至るにつれて連続して径が小さくなっている。なお、この固定部11の内周面に、シリンジ3の嵌入部3aを螺合させるためのねじ溝を設けてもよい。
【0025】
調整部12は、ハブ本体10の一方の端面10aの中央部に設けられており、ハブ本体10の軸方向に突出する凸部として構成されている。この調整部12の軸心は、ハブ本体10の軸心に一致している。そして、針管5は、調整部12及びハブ本体10を貫通しており、針管5の軸心と調整部12の軸心が一致している。調整部12の端面は、針管5の針先8側が突出する針突出面12aになっている。
【0026】
針突出面12aは、針管5の軸方向に直交する平面として形成されている。この針突出面12aは、針管5を皮膚上層部に穿刺するときに、皮膚の表面に接触して針管5を穿刺する深さを規定する。つまり、針管5が皮膚上層部に穿刺される深さは、針突出面12aから突出する針管5の長さ(以下、「突出長L」という。)によって決定される。
【0027】
皮膚上層部の厚みは、皮膚の表面から真皮層までの深さに相当し、概ね、0.5〜3.0mmの範囲内にある。そのため、針管5の突出長Lは、0.5〜3.0mmの範囲に設定することができる。
【0028】
ところで、ワクチンは、一般的に上腕部に投与されるが、皮膚上層部への投与を考えた場合は皮膚が厚い肩周辺部、特に三角筋部がふさわしいと考えられる。そこで、小児19人と大人31人について、三角筋の皮膚上層部の厚みを測定した。この測定は、超音波測定装置(NP60R−UBM 小動物用高解像度用エコー、ネッパジーン(株))を用いて、超音波反射率の高い皮膚上層部を造影することで行った。なお、測定値が対数正規分布となっていたため、幾何平均によってMEAN±2SDの範囲を求めた。
【0029】
その結果、小児の三角筋における皮膚上層部の厚みは、0.9〜1.6mmであった。また、成人の三角筋における皮膚上層部の厚みは、遠位部で1.4〜2.6mm、中央部で1.4〜2.5mm、近位部で1.5〜2.5mmであった。以上のことから、三角筋における皮膚上層部の厚みは、小児の場合で0.9mm以上、成人の場合で1.4mm以上であることが確認された。したがって、三角筋の皮膚上層部における注射において、針管5の突出長Lは、0.9〜1.4mmの範囲に設定することが好ましい。
【0030】
突出長Lをこのように設定することで、針先8の刃面5aを皮膚上層部に確実に位置させることが可能となる。その結果、刃面5aに開口する針孔(薬液排出口)は、刃面5a内のいかなる位置にあっても、皮膚上層部に位置することが可能である。なお、薬液排出口が皮膚上層部に位置しても、針先8が皮膚上層部に深く刺されば、針先8の端部の側面と切開された皮膚との間から薬液が皮下に流れてしまうため、刃面5aが確実に皮膚上層部にあることが重要である。
【0031】
なお、26Gよりも太い針管では、ベベル長Bを1.0mm以下にすることは難しい。したがって、針管5の突出長Lを好ましい範囲(0.9〜1.4mm)に設定するには、26Gよりも細い針管を使用することが好ましい。
【0032】
針突出面12aは、周縁から針管5の周面までの距離Sが1.4mm以下となるように形成し、好ましくは0.3〜1.4mmの範囲で形成する。この針突出面12aの周縁から針管5の周面までの距離Sは、皮膚上層部へ薬剤を投与することで形成される水疱に圧力が加わることを考慮して設定している。つまり、針突出面12aは、皮膚上層部に形成される水疱よりも十分に小さく、水疱の形成を妨げない大きさに設定している。その結果、針突出面12aが針管5の周囲の皮膚を押圧して、投与された薬剤が漏れるということを防止することができる。
【0033】
次に、安定部13について説明する。
安定部13は、ハブ本体10の端面10aに設けられている。この安定部13は、端面10aの周縁部に連続する筒状に形成されている。この安定部13の筒孔には、針管5及び調整部12が配置されている。つまり、安定部13は、針管5が貫通する調整部12の周囲を覆う筒状に形成されている。そして、安定部13の端面13aは、調整部12の針突出面12aと略同一平面上に位置している。
【0034】
また、針管5の針先8を生体に穿刺すると、針突出面12aが皮膚の表面に接触すると共に安定部13の端面13aに接触する。このとき、安定部13の端面13aが皮膚に接触することで薬剤注射装置1が安定し、針管5を皮膚に対して略垂直な姿勢に保つことができる。
【0035】
なお、安定部13の端面13aは、針突出面12aと同一平面上に位置させたり、また、針突出面12aよりも針管5の針先8側に位置させたりしても、針管5を皮膚に対して略垂直な姿勢に保つことができる。なお、安定部13を皮膚に押し付けた際の皮膚の盛り上がりを考慮すると、安定部13の端面13aと針突出面12aにおける軸方向の距離は、1.3mm以下に設定することが好ましい。
【0036】
また、安定部13の内径dは、皮膚に形成される水疱の直径と同等であるか、それよりも大きい値に設定されている。具体的には、安定部13の内壁面から針突出面12aの周縁までの距離Tが4mm〜15mmの範囲となるように設定されている。これにより、安定部13の内壁面から水疱に圧力が印加されことによって水疱形成が阻害されることを防止することができる。
【0037】
安定部13の内壁面から針突出面12aの周縁までの距離Tは、4mm以上であれば、特に上限はない。しかしながら、距離Tを大きくすると、安定部13の外径が大きくなるため、小児のように細い腕に針管5を穿刺する場合に、安定部13の端面13a全体を皮膚に接触させることが難しくなる。そのため、距離Tは、小児の腕の細さを考慮して15mmを最大と規定することが好ましい。
【0038】
また、針突出面12aの周縁から針管5の周面までの距離Sが0.3mm以上であれば、調整部12が皮膚に進入することはない。したがって、安定部13の内壁面から針突出面12aの周縁までの距離T(4mm以上)及び針突出面12aの直径(約0.3mm)を考慮すると、安定部13の内径dは9mm以上に設定することができる。
【0039】
なお、安定部13の形状は、円筒状に限定されるものではなく、例えば、中心に筒孔を有する四角柱や六角柱等の角筒状に形成してもよい。
【0040】
更に、この安定部13には、押圧目安部であるガイド部19が設けられている。ガイド部19は、安定部13の外周面の周方向に沿って連続して設けられており、安定部13の半径外方向に突出するリング状のフランジとして形成されている。このガイド部19は、皮膚と接触する接触面19aを有している。接触面19aは、安定部13の端面13aと略平行をなす平面である。
【0041】
ガイド部19の接触面19aが皮膚に接触するまで安定部13を押し付けることにより、安定部13及び針管5が皮膚を押圧する力を常に所定値以上に確保することができる。これにより、針管5の針突出面12aから突出している部分(突出長Lに相当)が確実に皮膚内に穿刺される。
【0042】
そして、ガイド部19の接触面19aから安定部13の端面13aまでの距離は、針管5、安定部13及び針管5が適正な押圧力で皮膚に穿刺することができるようにその長さが設定されている(図2参照)。以下、この長さを「ガイド部高さy」という。
【0043】
なお、針管5及び安定部13の適正な押圧力は、例えば、0.5〜20Nである。その結果、使用者に対して針管5及び安定部13による皮膚への押圧力をガイド部19で案内することができると共に針管5の針先8及び刃面5aを皮膚上層部に確実に位置させることができ、使用者に安心感を与えることができるという効果が得られる。
【0044】
具体的には、安定部13の内径dは、11〜14mmの範囲に設定されるのが好ましく、ガイド部高さyは、ガイド部19の突出端面から後述する穿刺速度確保部材7のリング本体15の外周面までの長さx(図2参照、以下、ガイド部長さxと呼ぶ。)に基づいて、適宜設定される。例えば、安定部13の内径dが12mmの場合、ガイド部高さyは、例えば、ガイド部長さxが3mmのとき、2.3〜6.6mmの範囲に設定されている。また、リング本体15の厚さと安定部13の厚さを合わせた値は、概ね2mm以下であることが好ましい。
【0045】
また、安定部13における端面13a側の外周面には、被係合部13bが設けられている。被係合部13bは、安定部13の外周面の周方向に沿って連続して形成されている。そして、被係合部13bは、安定部13の外周面から断面略半円状に突出する凸部である。この被係合部13bには、後述する穿刺速度確保部材7が係合される。また、安定部13には、その軸方向に沿って穿刺速度確保部材7が摺動可能に取り付けられている。
【0046】
[穿刺速度確保部材]
次に、穿刺速度確保部材7について説明する。穿刺速度確保部材7は、リング状に形成されたリング本体15と、リング本体15に設けられた係合部16を有している。リング本体15は、安定部13の直径(外径)よりも大きい内径を有している。このリング本体15は、安定部13の外周面に、その軸方向に摺動可能に取り付けられている。
【0047】
係合部16は、リング本体15における軸方向の一端部の内周面に設けられている。この係合部16は、リング本体15の内周面から半径内方向に向けて突出している。係合部16の突出した先端には、被係合部13bと係合する断面略半円状に凹んだ溝部16aが形成されている。この溝部16aは、リング本体15の内周面の周方向に沿って連続して形成されている。
【0048】
この係合部16と被係合部13bは、所定の力以上の押圧力が入力されると、その係合が解除される。本例では、係合部16と被係合部13bの解除される押圧力を、例えば3〜20Nの範囲に設定している。
【0049】
なお、本例では、溝部16aをリング本体15の内周面の周方向に沿って連続して形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、溝部16aは、リング本体15の内周面に断続的に形成してもよい。この場合、安定部13の被係合部13bは、係合部16の溝部16aと対応して、安定部13の外周面に断続して形成される。
【0050】
更に、被係合部13bの断面形状は、略半円状に限定されるものではなく、例えば、略三角形や略四角形に形成してもよい。すなわち、被係合部13bの断面形状は、所定の押圧力によって係合部16との係合が外れるような形状であればその目的を達成できるものである。そして、係合部16の溝部16aは、被係合部13bの断面形状に対応した形状に形成される。
【0051】
また、リング本体15における係合部16が設けられた端部の反対側の端部には、リング本体15の半径内方向に向けて突出する内フランジ部17が設けられている。そして、図2に示すように、この内フランジ部17には、係合部16との係合が解除された安定部13の被係合部13bが当接する。
【0052】
更に、リング本体15における内フランジ部17が形成された側の端面は、針管5を生体に穿刺する際に最初に生体と接触する当接面18となっている。すなわち、針管5を生体に穿刺する前の状態では、リング本体15は、針管5の針先8及び調整部12の一部を覆う第1の位置に配置されている。すなわち、当接面18が、針管5の針先8及び安定部13の端面13aよりも皮膚側に突出している。
【0053】
そして、後で詳述するように、ハブ6又はシリンジ3を把持して、リング本体15の当接面18を皮膚に当接し、ハブ6を皮膚側に押し出すと、係合部16と被係合部13bとの係合が外れる。そして、リング本体15は、安定部13の外周面に沿ってハブ6の軸方向に摺動する。そのため、リング本体15は、針管5の針先8を露出させる共に当接面18が安定部13の端面13aと略同一平面上に位置する第2の位置まで移動する(図2参照)。
【0054】
なお、安定部13の形状は、円筒形に限定されるものではなく、例えば、中心に筒孔を有する四角柱や六角柱等の角筒状に形成してもよい。また、穿刺速度確保部材7のリング本体15の形状は、安定部13の形状に対応して設定される。
【0055】
更に、本例では、リング本体15を安定部13の外周面側に配置して例を説明したが、これに限定されるものではなく、リング本体15を安定部13の内周面側に配置してもよい。リング本体15を安定部13の内周面側に配置する場合、被係合部13bは、安定部13の内周面に設けられ、係合部16は、リング本体15の外周面に設けられる。
【0056】
また、リング本体15を安定部13の内周面側に配置する場合、リング本体15の内径は、皮膚に形成される水疱の直径と同等であるか、それよりも大きい値に設定することが好ましい。具体的には、リング本体15の内壁面から調整部12の外周面までの最短距離が4mm〜15mmの範囲となるように設定されている。そして、ガイド部長さxは、ガイド部19の突出端面から安定部13の外周面までの距離に設定される。
【0057】
更に、ガイド部19を安定部13に設けた例を説明したが、ガイド部19は、穿刺速度確保部材7を構成するリング本体15の外周面に設けてもよい。
【0058】
1−2.薬剤注射装置の使用方法
次に、本例の薬剤注射装置1の使用方法について、図1〜図2を参照して説明する。
【0059】
まず、穿刺速度確保部材7におけるリング本体15の当接面18を皮膚に対向させる。これにより、針管の針先8が、穿刺する皮膚に対向される。なお、図1に示すように、リング本体15は、第1の位置に配置されており、当接面18が針管5の針先8よりもハブ6から皮膚側に突出している。すなわち、針管5の針先8及び安定部13の側面は、リング本体15によって覆われている。
【0060】
次に、注射針組立体2を皮膚に対してほぼ垂直に移動させ、リング本体15の当接面18を皮膚に押し付ける。このとき、係合部16と被係合部13bが係合しているため、リング本体15は、係合部16と被係合部13bとの係合が外れるまで、第1の位置に配置される。
【0061】
そして、図2に示すように、係合部16と被係合部13bとの係合力よりも大きな力で注射針組立体2を皮膚に押し付けると、係合部16と被係合部13bとの係合が外れる。係合部16と被係合部13bとの係合が解除されることで、ハブ6は、係合部16からの抵抗力を失う。これにより、リング本体15が安定部13の外周面に沿って軸方向に急激に摺動し、リング本体15の開口から針管5の針先8が勢いよく押し出される。
【0062】
このように、穿刺速度確保部材7の係合部16と安定部13の被係合部13bとの係合及びその係合の解除によって、一時的に押圧力及び穿刺するための速度を上げることができる。その結果、針管5の針先8を確実に皮膚に穿刺することができると共に皮膚上層部まで穿刺することが可能である。
【0063】
また、係合部16と被係合部13bとの係合が解除される際に、クリック感が生じるため、使用者に針管5を生体に穿刺するための押圧力及び速度が上昇したことを伝えることができる。これにより、使用者は、適正な押圧力で注射針組立体2を押圧出来たことを認識できるため、使用者に安心感を与えることができるという効果を得られる。
【0064】
更に、調整部12の針突出面12aが皮膚に接触して皮膚を平らに変形させることができ、針管5を突出長Lだけ皮膚に穿刺することができる。
【0065】
次に、ガイド部19の接触面19aが皮膚に接触するまで安定部13を押し付ける。ここで、ガイド部高さyは、針管5及び安定部13が適正な押圧力で皮膚に穿刺することができるようにその長さが設定されている。そのため、ハブ6によって皮膚を押圧する力が所定の値になる。これによって、薬剤を注射する際、針先8が皮膚上層部に留まり、薬剤の漏れを起こさず、かつ、皮下まで薬剤が届かないようにすることができる。
【0066】
このように、穿刺速度確保部材7によるクリック感と、ガイド部19がハブ6の押圧力を案内する目印となることで、それぞれ、針管5を生体に穿刺する際及び薬剤を注入する際に必要な押圧力を使用者に知らせることができる。これにより、使用者に対して安心感を与えることが可能である。
【0067】
また、安定部13及びリング本体15が皮膚と当接することで、針管5を安定させて、針管5を皮膚に対して真っ直ぐに穿刺及び維持することができる。よって、針管5に生じるブレを防止することができ、薬剤の安定した投与を行うことができる。
【0068】
また、例えば0.5mm程度のごく短い突出長の針では、針先8を皮膚に当接させても皮膚に刺さらない場合がある。しかし、穿刺速度が速いので針先8による皮膚の切開が容易に起こる。更に、安定部13及びリング本体15が皮膚に押し付けられて垂直方向に皮膚が押し下げられると、安定部13の内側の皮膚が引っ張られて皮膚に張力が加わった状態となる。そのため、針管5の針先8に対して皮膚が逃げ難くなるので、安定部13は、皮膚に針先8がより刺さり易くなるという効果も有している。
【0069】
更に、突出長Lが0.5〜3.0mmの範囲に設定されているため、針管5の針先8及び刃面5aは、確実に皮膚上層部内に位置する。その後、ハブ6に接続されたシリンジ3により皮膚上層部内に薬剤を注入する。
【0070】
注射針組立体2の調整部12は、針管5の周囲に密着して固定されており、針管5の調整部12を貫通する部分と調整部12との間には間隙が生じないようになっている。そのため、調整部12の針突出面12aを皮膚に当接させると、針管5の周囲の皮膚を平らに変形させることができる。その結果、針管5を突出長Lだけ皮膚に穿刺させることができ、針管5の針先8を皮膚上層部内に確実に位置させることができる。
【0071】
また、調整部12の針突出面12aと安定部13の内径dを適正な大きさに設定したため、注入した薬剤が体外へ漏れないようにすることができ、薬剤を皮膚上層部内に確実に投与することができる。
【0072】
<2.第2の実施の形態例>
次に、図3及び図4を参照して本発明の薬剤注射装置の第2の実施の形態例について説明する。
図3及び図4は、第2の実施の形態にかかる薬剤注射装置を示す断面図である。
【0073】
この第2の実施の形態例にかかる薬剤注射装置21が第1の実施の形態例に係る薬剤注射装置1と異なるところは、穿刺速度確保部材を調整部に設けた点である。ここでは、穿刺速度確保部材及び調整部について説明し、薬剤注射装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0074】
図3に示すように、調整部22は、ハブ本体10の一方の端面10aの中央部に設けられており、ハブ本体10の軸方向に突出する略円柱状の凸部として構成されている。この調整部22におけるハブ本体10と反対側の端部には、被係合部22bが設けられている。被係合部22bは、調整部22の外周面の周方向に沿って連続し、且つ半径外方向に突出している。この被係合部22bの断面形状は、略半円状に形成されている。そして、調整部22には、穿刺速度確保部材24が軸方向に摺動可能に取り付けられている。
【0075】
穿刺速度確保部材24は、リング状に形成されたリング本体25と、リング本体25に設けられた係合部26を有している。リング本体25は、調整部22の直径よりも大きな内径を有している。このリング本体25は、調整部22の外周面に、その軸方向に摺動可能に取り付けられている。
【0076】
係合部26は、リング本体25における軸方向の一端部の内周面に設けられている。この係合部26は、リング本体25の内周面から半径内方向に向けて突出している。係合部26の突出の先端には、被係合部22bと係合する断面略半円状に凹んだ溝部26aが形成されている。この溝部26aは、リング本体15の内周面の周方向に沿って連続して形成されている。この係合部26と被係合部22bは、所定の力以上の押圧力が入力されると、その係合が解除される
【0077】
また、リング本体25における係合部26が設けられた端部の反対側の端部には、リング本体25の半径内方向に向けて突出する内フランジ部27が設けられている。そして、図4に示すように、この内フランジ部27には、係合部26との係合が解除された調整部22の被係合部22bが当接する。
【0078】
更に、リング本体25における内フランジ部27が形成された側の端面は、針管5を生体に穿刺する際に生体と接触する当接面28となっている。更に、針管5を生体に穿刺する前の状態では、リング本体25は、針管5の針先8及び調整部22の一部を覆う第1の位置に配置されている。すなわち、当接面28が、針管5の針先8及び安定部13の端面13aよりも皮膚側に突出している。
【0079】
また、図4に示すように、係合部26と被係合部22bとの係合が外れてリング本体25が第2の位置に移動すると、当接面28は、安定部13の端面13aと調整部22の針突出面22aと略同一平面上に位置する。
【0080】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる薬剤注射装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する薬剤注射装置21によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる薬剤注射装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0081】
なお、水泡形成が阻害されることを防止するために、安定部13の内壁面から穿刺速度確保部材24のリング本体25の外周面までの最短距離Tが4mm〜15mmの範囲となるように設定されている(図4参照)。これにより、安定部13の端面13a及びリング本体25の当接面28から水疱に圧力が印加されことによって水疱形成が阻害されることを防止することができる。
【0082】
また、図4に示すように、安定部13の端面13aと調整部22の針突出面22aが同一平面上に位置している状態で、リング本体25の周縁から針管5の周面までの距離Sは、皮膚上層部へ薬剤を投与することで形成される水疱に圧力が加わらないように考慮されている。つまり、針突出面22a及びリング本体25の当接面28は、皮膚上層部に形成される水疱よりも十分に小さく、水疱の形成を妨げない大きさに設定している。その結果、針突出面22a及び当接面28が針管5の周囲の皮膚を押圧して、投与された薬剤が漏れるということを防止することができる。
【0083】
<3.第3の実施の形態例>
次に、図5及び図6を参照して本発明の薬剤注射装置の第3の実施の形態例について説明する。
図5及び図6は、第3の実施の形態にかかる薬剤注射装置を示す断面図である。
【0084】
この第3の実施の形態例にかかる薬剤注射装置31は、第2の実施の形態例にかかる薬剤注射装置21における穿刺速度確保部材及び調整部の構成を変更したものである。そのため、ここでは、穿刺速度確保部材及び調整部について説明し、薬剤注射装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0085】
図5に示すように、調整部32には、針突出面32aと、被係合部32bと、被嵌合部32cとを有している。針突出面32aは、調整部32におけるハブ本体10と反対側の端面であり、針管5の針先8が突出している。
【0086】
被係合部32bは、調整部32におけるハブ本体10と反対側の端部に設けられている。被係合部32bは、調整部32の外周面から断面略三角形状に突出する凸部である。また、被嵌合部32cは、調整部32におけるハブ本体10側の端部に設けられている。被嵌合部32cは、調整部32の外周面及びハブ本体10の端面10aから突出し、断面が略三角形状に形成されている。更に、調整部32における被係合部32bと被嵌合部32cとの間は、その直径が他の箇所よりも小さく設定されている。そして、この調整部32には、穿刺速度確保部材34が軸方向に摺動可能に取り付けられている。
【0087】
穿刺速度確保部材34は、リング状に形成されたリング本体35と、リング本体35に設けられた係合部36を有している。リング本体35の内径は、調整部32における針突出面32aの直径とほぼ同じ、あるいは若干大きく設定されている。このリング本体35の軸方向の一端部の内周面には、係合部36が設けられている。
【0088】
係合部36は、リング本体35の内周面から半径内方向に向けて突出している。この係合部36の断面形状は、略三角形状に形成されている。そして、リング本体35が第1の位置に配置されている際に、係合部36は、調整部32の被係合部32bと係合している。また、図6に示すように、リング本体35が第2の位置に移動すると、係合部36は、調整部32の被嵌合部32cに嵌合する。これにより、リング本体35が第2の位置から第1の位置に戻ることを規制できる。
【0089】
更に、調整部32における被係合部32bと被嵌合部32cの間の部位の直径を他の箇所を小さく形成している。そのため、係合部36と被係合部32bとの係合が外れてリング本体35が調整部32を摺動する際に、リング本体35と調整部32との摩擦抵抗を小さくすることができる。その結果、係合部36と被係合部32bとの係合を解除する際に確保された押圧力及び穿刺速度がリング本体35と調整部32との摩擦抵抗によって減少することを防止でき、安定部13及び針管5に適正な押圧力と穿刺速度を付与することが可能となる。
【0090】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる薬剤注射装置1及び第2の実施の形態例にかかる薬剤注射装置21と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する薬剤注射装置31によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる薬剤注射装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0091】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、穿刺速度確保部材をガイド部の半径方向の外側を覆うように摺動させてもよい。なお、上述した実施の形態例では、押圧目安部をフランジ状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば安定部の外周面を略垂直に切り欠いて段部を設けることで押圧目安部を形成してもよい。
【0092】
また、穿刺速度確保部材のリング本体が第2の位置から第1の位置に戻ることを規制するために、ハブ及びリング本体にリング本体を第2の位置で固定する係止部を設けてもよい。更に、上述した実施の形態例では、係合部側を溝部とし、被係合部側をこの溝部に嵌り込む凸部としたが、これに限定されるものではなく、係合側を凸部に形成し、被係合部側を溝部又は凹部に形成してもよい。そして、係合部及び被係合部をリング本体及びハブに複数設けてもよい。
【0093】
更に、リング本体が挿通する挿通孔をハブ本体に設けてもよい。挿通孔を設ける箇所としては、リング本体が安定部の外周面を摺動する場合、押圧目安部であるフランジ状のガイド部に形成することが好ましい。また、リング本体が安定部の内周面又は調整部の外周面を摺動する場合では、挿通孔をハブ本体の端面に設ける。これにより、リング本体の軸方向の長さを十分に確保することができる。
【符号の説明】
【0094】
1,21,31…薬剤注射装置、 2…注射針組立体、 3…シリンジ、 3a…嵌入部、 5…針管、 5a…刃面、 6…ハブ、 7…穿刺速度確保部材、 8…針先、 10…ハブ本体、 11…固定部、 12,22…調整部、 12a,22a,32a…針突出面、 13…安定部、 13a…端面、 13b,22b,32b…被係合部、 15,25,35…リング本体、 16,26,36…係合部、 16a,26a…溝部 17…内フランジ部、 18…当接面、 19…ガイド部(押圧目安部)、 19a…接触面、 32c…被嵌合部、 36…嵌合部、 B…ベベル長、 L…突出長、 S,S…針突出面又はリング本体の周縁から針管の周面までの距離、 T,T…安定部の内壁面又はリング本体の周縁から調整部の外周面までの距離、 x…ガイド部長さ、 y…ガイド部高さ、 d…内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に穿刺可能な針先を有する針管と、
前記針管を保持するハブと、
前記針管の周囲に設けられ、前記針管の針先が突出する針突出面を有する調整部と、
前記ハブから延在し、前記針管の周囲を覆うように配置されて前記針管を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面を有する安定部と、
前記針管の軸方向に沿って移動可能に前記調整部又は前記安定部に設けられ、前記針管を生体に穿刺する際に前記針管の針先よりも先に皮膚に接触し、前記針管を生体に穿刺する際の速度及び押圧力を確保する穿刺速度確保部材と、
を備えたことを特徴とする注射針組立体。
【請求項2】
前記穿刺速度確保部材は、リング状に形成され、前記調整部の外周面、前記安定部の内周面または前記安定部の外周面のうち少なくとも一箇所に設けた被係合部と係合する係合部を有し、
前記係合部と前記被係合部は、所定の押圧力よりも大きな力が入力されると、その係合が解除される
ことを特徴とする請求項1に記載の注射針組立体。
【請求項3】
前記穿刺速度確保部材は、前記針管を生体に穿刺する前の状態では生体と接触する当接面が前記針管の針先を覆う第1の位置に配置され、前記針管を生体に穿刺する際には前記針管の針先を露出させると共に前記当接面が前記安定部の前記端面と略同一平面上に位置する第2の位置まで移動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の注射針組立体。
【請求項4】
前記穿刺速度確保部材又は前記安定部の外周面には、前記外周面と略垂直をなす段差面を有する押圧目安部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の注射針組立体。
【請求項5】
前記押圧目安部は、前記穿刺速度確保部材又は前記安定部の外周面から半径方向の外側に向けて略垂直に突出するフランジである
ことを特徴とする請求項4に記載の注射針組立体。
【請求項6】
生体に穿刺可能な針先を有する針管と、
前記針管を保持するハブと、
前記針管の周囲に設けられ、前記針管の針先が突出する針突出面を有する調整部と、
前記ハブに接続されるシリンジと、
前記ハブから延在し、前記針管の周囲を覆うように配置されて前記針管を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面を有する安定部と、
前記針管の軸方向に沿って移動可能に前記調整部又は前記安定部に設けられ、前記針管を生体に穿刺する際に前記針管の針先よりも先に皮膚に接触し、前記針管を生体に穿刺する際の速度及び押圧力を確保する穿刺速度確保部材と、
を備えたことを特徴とする薬剤注射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−206273(P2011−206273A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77107(P2010−77107)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】