説明

注意欠陥多動性障害の治療用の組合せ

本発明は、アトモキセチン、及び5HT1A受容体アゴニストの組合せ、かかる組合せを含むキット、かかる組合せを含む医薬組成物、及びかかる組合せを使用してADHD、関連する障害、及び他の中枢神経系疾患又は障害を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトモキセチン、そのプロドラッグ、医薬として許容されるその塩、又は医薬として許容される当該プロドラッグの塩と、5HT1A受容体アゴニストとの組合せを含む医薬組成物、かかる組合せを含むキット、並びに注意欠陥他動性障害(ADHD)又は関連する疾患、又は他の中枢神経系疾患又は障害を患うヒトを含む患者を治療するためにかかる組合せを使用する方法に関する。本発明は、アトモキセチン、そのプロドラッグ、医薬として許容されるその塩、又は医薬として許容される当該プロドラッグの塩と5HT1A受容体アゴニストとの相加的及び相乗的組合せにも関し、当該相加的及び相乗的組合せは、ADHD又は関連障害、又は他の中枢神経系の疾患又は障害を患うヒトを含む患者の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
注意欠陥他動性障害(ADHD)は、学齢期の子供において3〜5%の推定発症率を有し、そして活動過剰、衝動性、及び/又は注意散漫といった中核症状により特徴付けられる。ADHDの注意力についての症候は、メチルフェニデート(リタリン)などの精神運動興奮薬でうまく治療されうる。クロニジン、つまりα2-アドレナリン受容体アゴニスト、は、攻撃性及び反抗的な症候を治療する。メチルフェニデート及びクロニジンの両方に潜在的な副作用が存在し、それにより低い副作用及び乱用傾向で同様の又はより優れた効果を有する他の薬剤を同定することが重要になる。
【0003】
ADHDは、児童期の最も一般的な精神病のうちの一つであり、そして同様に大人においても一般的であり、しばしば過小評価されている精神病であるようである(T. Spencerら、J Clin Psychiatry, 1998, 59(Suppl. 7), 759-768)。児童期に始まったこの障害は、その後症候(例えば注意散漫及び/又は衝動性)を一生発現し続けることもある(JB. Schweitzerら、Med Clin North Am, May 2001, 85:3, 757-777)。ADHDは、就学前から成人に成長するにつれて、その徴候を変化させうる(DP. Cantwell, J Am Acad Child Adolesc Psychiatry, Aug. 1996, 35(8), 978-987; J. Eliaら、N Eng J Med, Mar. 1999, 340(10), 780-788; EE. Nolanら、J Am Acad Child Adolesc Psychaitry, Feb. 2001, 40(2), 241-249)。
【0004】
ADHDの診断は、臨床評価に基づく (M. Dulcan, et al. M,J Am Acad Child Adolesc Psychaitry, Oct. 1997, 36(10 Suppl), 85S-121S; National Institutes of Health, 1998)。「ADHDの本質的特徴は、成長の比較水準にある人において典型的に観測されるよりもより頻繁でかつ重篤な注意散漫及び/又は多動性衝動性の持続するパターンである。」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-IV), American Psychiatric Association, Washington, D.C., 1994)。ADHDと診断されるためには、患者は7歳になる前に障害を引き起こすADHDの症候を示さなければならず、そして症候が少なくとも2つの環境(例えば、学校(又は仕事)及び家)において6ヶ月を超えて継続しなければならない。(DSM−IVを参照のこと)。
【0005】
幾つかのNRI化合物が知られている。NRIであるアトモキセチンは、現在市販されており(Strattera(登録商標)、Eli Lilly)、そして子供及び大人の両方においてADHDを臨床治療するために広く使用され始めている。アトモキセチンは、ADHDの非興奮性の治療を示す。治療されたADHD患者数は、アトモキセチンの導入及び教育的指導の増加の結果として増加することが予期される。従って、現在利用できる治療より優れた効果を提供するADHD治療への継続した必要性が存在する。
【0006】
本発明は、これらの欠点を低減するか又は克服する組成物に関する。より具体的に、本発明は、アトモキセチン及び5HT1A受容体アゴニストの新規の医薬の組合せを提供する。但し、5HT1A受容体アゴニストは、ADHD及び症候の治療用のブスピロンではない。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、アトモキセチンを5HT1A受容体アゴニスト(但し5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)と共に使用する医薬組成物、治療方法、及びキットに関する。
【0008】
本発明によると、これらの医薬の組合せは、ADHD、関連障害、又は他の中枢神経系疾患又は障害の治療に相乗的又は相加的効果を提供しうる。
【0009】
こうして、一の態様によると、本発明は、アトモキセチンと5HT1A受容体アゴニスト(但し、5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)との組合せを提供する。本発明のさらなる特徴は、ADHDを治療するために必要とされるアトモキセチンの量を低減する方法であって、患者を治療有効量の本発明に記載される薬剤の組合せで患者を治療することを含む方法である。
【0010】
本発明の医薬組成物において使用されうる5HT1A受容体アゴニストの例は、非限定的に(a)スネピトロン、及び米国特許代5,122,525号において開示される他のビス-アザ二環化合物及び医薬として許容されるその塩、(b)ジェピロン;(c)イプサピロン;(d)S15535;(e)アダタンセリン(adatanserin);(f)タンドスピロン;(g)イプサピロン;及び (h)フレシノキサンを含む。
【0011】
本発明は、ノルエピネフリン機能障害、単発性(single episode)又は反復性大うつ病性障害、気分変調性障害、抑うつ神経症及び神経症性うつ病、メランコリー型うつ病、例えば摂食障害、重量減少、不眠、早朝覚醒、又は精神運動遅延;非定型うつ病(又は反応性うつ病)、例えば、 食欲増進、過眠症、精神運動性激越、又は興奮性、季節性情動障害、及び小児うつ病;双極性障害又は躁鬱病、例えば、双極性I型障害、双極性II型障害 、及び気分循環性障害;行動障害;注意欠陥多動性障害(ADHD);破壊的行動障害;精神遅滞に付随する行動障害、自閉性障害、及び行動障害;不安障害、例えば広場恐怖などを伴うか又は伴わないパニック障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖症、特定恐怖症、例えば特定動物恐怖症、社会的不安、社会的恐怖症(社会的不安障害を含む)、強迫性障害、及び関連スペクトル障害、ストレス障害、例えば心的外傷後ストレス症候群、急性ストレス障害及び慢性ストレス障害、並びに全般化不安障害;境界性人格障害;統合失調症 及び他の精神病性障害、例えば、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、二人組精神病性障害、妄想又は幻覚を伴う精神病性障害、不安の精神病エピソード、精神病に付随する不安症、精神病性気分障害、例えば重篤な大うつ病性障害;清新病性障害に付随する気分障害、例えば双極性障害に付随する急性躁病及びうつ病;統合失調症に付随する気分障害;譫妄、痴呆、及び健忘症、及び他の認知性又は神経変性疾患、例えばパーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病、老年痴呆、アルツハイマー型痴呆、記憶障害、管理機能の欠損、脳血管性痴呆、及び他の痴呆、例えば、HIV病、頭部外傷、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病による痴呆、又は複数の病因による痴呆;運動障害、例えば無動症、運動障害、例えば家族性発作性ジスキネジア、痙縮、トゥレット症候群、スコット症候群、PALSYS及び無動-硬直症候群;錐体外路性運動障害、例えば投薬誘導性運動障害、例えば、神経遮断薬誘導性パーキンソン症、悪性症候群、神経遮断薬-誘導性急性筋緊張異常、神経遮断薬-誘導性急性静坐不能、神経遮断薬- 誘導性遅発性ジスキネジア、及び投薬-誘導性姿勢振戦;中毒性障害及び退薬症候群、化学的依存性及び中毒 (例えば、アルコール、ヘロイン、コカイン、ベンゾジアゼピン、向精神物質、ニコチン、又はフェノバルビトールへの依存症又は中毒)及び行動性中毒、例えばギャンブル中毒;視覚障害、例えば緑内障及び虚血性網膜症習慣性障害(例えば、アルコール、ニコチン、及び他の向精神性物質への習慣性障害)及び退薬症候群、適応障害(例えば、憂鬱感、不安、不安と憂鬱感の混ざったもの、行動妨害、及び行動及び気分の混合性障害);加齢性学習及び精神障害(例えば、アルツハイマー病);拒食症;感情鈍麻;注意欠陥障害(ADD)及び注意欠陥多動性障害(ADHD)、及びその認められているサブタイプを含む全身性医学状態のため生じる注意欠陥(又は他の認知)障害;神経性過食症;慢性疲労症候群;疼痛;慢性痛;気分循環性障害;うつ病(例えば、青年うつ病及び小うつ病);線維筋痛症及び他の身体表現性障害(及び他の身体表現性障害 (例えば、身体化障害;転換性障害;疼痛障害;心気症;身体醜形性障害;未分化身体表現性障害;及び身体表現性NOS);失調症(すなわち;ストレス性失調症;真のストレス性失調症;及び混合型失調症);尿障害;早漏;吸入障害;中毒障害(アルコール中毒);躁病;片頭痛;肥満(すなわち;肥満又は過体重患者の体重の低減);反抗的行為障害;末梢神経障害;糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹後神経痛;月経前不快気分障害(すなわち;月経前緊張症及び遅い黄体期不快気分障害);睡眠障害 (例えば、ナルコレプシー、不眠、及び遺尿症);特異的発達障害;選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI) "使い切り(poop out)" 症候群 (すなわち;ここで、患者は普通の応答の開始期間の後に、SSRI治療に対して十分な反応性を維持することができない);及びヒトを含む哺乳動物におけるTIC障害 (例えば;トゥレット病) からなる群から選ばれる障害又は症状を治療する方法であって、かかる治療を必要とする哺乳動物に、ある量のアトモキセチン又は医薬として許容されるその塩と、かかる障害又は症状を治療するのに有効である5HT1A受容体アゴニスト(但し、5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)を投与する方法に関する。
【0012】
本発明は、ノルエピネフリン機能障害、単発性(single episode)又は反復性大うつ病性障害、気分変調性障害]、抑うつ神経症及び神経症性うつ病、メランコリー型うつ病、例えば摂食障害、重量減少、不眠、早朝覚醒、又は精神運動遅延;非定型うつ病(又は反応性うつ病)、例えば、 食欲増進、過眠症、精神運動性激越、又は興奮性、季節性情動障害、及び小児うつ病;双極性障害又は躁鬱病、例えば、双極性I型障害、双極性II型障害 、及び気分循環性障害;行動障害;注意欠陥多動性障害(ADHD);破壊的行動障害;精神遅滞に付随する行動障害、自閉性障害、及び行動障害;不安障害、例えば広場恐怖などを伴うか又は伴わないパニック障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖症、特定恐怖症、例えば特定動物恐怖症、社会的不安、社会的恐怖症(社会的不安障害を含む)、強迫性障害、及び関連スペクトル障害、ストレス障害、例えば心的外傷後ストレス症候群、急性ストレス障害及び慢性ストレス障害、並びに全般化不安障害;境界性人格障害;統合失調症 及び他の精神病性障害、例えば、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、二人組精神病性障害、妄想又は幻覚を伴う精神病性障害、不安の精神病エピソード、精神病に付随する不安症、精神病性気分障害、例えば重篤な大うつ病性障害;清新病性障害に付随する気分障害、例えば双極性障害に付随する急性躁病及びうつ病;統合失調症に付随する気分障害;譫妄、痴呆、及び健忘症、及び他の認知性又は神経変性疾患、例えばパーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病、老年痴呆、アルツハイマー型痴呆、記憶障害、管理機能の欠損、脳血管性痴呆、及び他の痴呆、例えば、HIV病、頭部外傷、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病による痴呆、又は複数の病因による痴呆;運動障害、例えば無動症、運動障害、例えば家族性発作性ジスキネジア、痙縮、トゥレット症候群、スコット症候群、PALSYS及び無動-硬直症候群;錐体外路性運動障害、例えば投薬誘導性運動障害、例えば、神経遮断薬誘導性パーキンソン症、悪性症候群、神経遮断薬-誘導性急性筋緊張異常、神経遮断薬-誘導性急性静坐不能、神経遮断薬- 誘導性遅発性ジスキネジア、及び投薬-誘導性姿勢振戦;中毒性障害及び退薬症候群、化学的依存性及び中毒 (例えば、アルコール、ヘロイン、コカイン、ベンゾジアゼピン、向精神物質、ニコチン、又はフェノバルビトールへの依存症又は中毒)及び行動性中毒、例えばギャンブル中毒;視覚障害、例えば緑内障及び虚血性網膜症習慣性障害(例えば、アルコール、ニコチン、及び他の向精神性物質への習慣性障害)及び退薬症候群、適応障害(例えば、憂鬱感、不安、不安と憂鬱感の混ざったもの、行動妨害、及び行動及び気分の混合性障害);加齢性学習及び精神障害(例えば、アルツハイマー病);拒食症;感情鈍麻;注意欠陥障害(ADD)及び注意欠陥多動性障害(ADHD)、及びその認められているサブタイプを含む全身性医学状態のため生じる注意欠陥(又は他の認知)障害;神経性過食症;慢性疲労症候群;疼痛;慢性痛;気分循環性障害;うつ病(例えば、青年うつ病及び小うつ病);線維筋痛症及び他の身体表現性障害(及び他の身体表現性障害 (例えば、身体化障害;転換性障害;疼痛障害;心気症;身体醜形性障害;未分化身体表現性障害;及び身体表現性NOS);失調症(すなわち;ストレス性失調症;真のストレス性失調症;及び混合型失調症);尿障害;早漏;吸入障害;中毒障害(アルコール中毒);躁病;片頭痛;肥満(すなわち;肥満又は過体重患者の体重の低減);反抗的行為障害;末梢神経障害;糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹後神経痛;月経前不快気分障害(すなわち;月経前緊張症及び遅い黄体期不快気分障害);睡眠障害 (例えば、ナルコレプシー、不眠、及び遺尿症);特異的発達障害;選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI) "使い切り(poop out)" 症候群 (すなわち;ここで、患者は普通の応答の開始期間の後に、SSRI治療に対して十分な反応性を維持することができない);及びヒトを含む哺乳動物におけるTIC障害 (例えば;トゥレット病)から選ばれる障害又は症状を、かかる治療を必要とするヒトを含む哺乳動物において治療するための医薬組成物であって、ある量のアトモキセチン又は医薬として許容されるその塩と、かかる障害又は症状を治療するのに有効である5HT1A受容体アゴニスト(但し、5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)を含む医薬組成物に関する。
【0013】
かかる薬剤の組合せを用いることが、使用されるアトモキセチンの効力を高め、その結果使用するアトモキセチンの量を低減することができ、その結果薬剤に関連する毒性及び副作用をよりよく管理することを可能にする。
【0014】
本発明は、ADHDを治療する従来方法を越える利点を提供する。本発明の治療方法は、使用されるアトモキセチンの効果を高め、その結果、使用されるアトモキセチンの量を低減させ、その結果薬剤に関連する毒性及び副作用の改良された管理を許容する。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な記載及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、ヒトを含む哺乳動物においてADHDの治療用の医薬組成物であって、(a)ある量のアトモキセチン、そのプロドラッグ、医薬として許容されるその塩、又は医薬として許容される当該プロドラッグの塩、及び(b)ある量の5HT1A受容体アゴニスト(但し、5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)、及び医薬として許容される担体を含み、ここで(a)及び(b)の量は、共にADHD又は他の中枢神経系疾患又は障害を治療するのに有効である。
【0016】
本発明はさらに、ヒトを含む哺乳動物においてADHD又は他の中枢神経系疾患若しくは障害を治療するための方法であって、当該方法が(a)ある量のアトモキセチン:及び(b)ある量の5HT1A受容体アゴニスト(但し、ブスピロンを除く)を当該哺乳動物に投与することを含み、ここで(a)及び(b)の量は、ともに当該ADHD又は他の中枢神経系疾患又は障害の治療に有効である量である。
【0017】
本発明は、ヒトを含む哺乳動物において治療効果を達成するためのキットであって、ある量のアトモキセチン、そのプロドラッグ、又は医薬として許容されるアトモキセチン若しくはそのプロドラッグの塩、及び医薬として許容されるビヒクル、担体、又は希釈剤を第一ユニット投与形態中に含み、そしてある量の5HT1A受容体アゴニスト(但し当該5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)、及び医薬として許容されるビヒクル、担体、又は希釈剤を第二ユニット投与形態中に含み、そして容器を含む、キットにも関する。
【0018】
医薬中に使用するために、医薬として許容される塩は、本発明に記載される化合物の調製に有用であろう。本発明の化合物の適切な医薬として許容される塩は、本発明に記載される化合物の溶液を、医薬として許容される酸、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、又はリン酸などの溶液と混合することにより形成されうる酸添加塩を含む。さらに、当該化合物が酸性成分を有する場合、適切な医薬として許容されるその塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム又はマグネシウム塩;及び適切な有機リガンドで形成される塩、例えば四級アンモニウム塩を含んでもよい。
【0019】
「医薬として許容される塩」という表現は、医薬として許容される酸添加塩及び医薬として許容されるカチオン性の塩の両方を含む。「医薬として許容されるカチオン性の塩」という表現は、非限定的にアルカリ金属(例えばナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム及びマグネシウム)塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩、及び有機アミン、例えば、ベンザチン(N,N'-ジベンジルエチレンジアミン)、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、ベネタミン(N-ベンジルフェネチルアミン)、ジエチルアミン、ピペラジン、トロメタミン(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、及びプロカインなどとの塩を規定することが意図される。「医薬として許容される酸添加塩」という表現は、非限定的に、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩 (メシレート)、及びp-トルエンスルホン酸塩(トシレート)などの塩を規定することが意図される。
【0020】
5HT1A受容体アゴニスト又はアトモキセチンの医薬として許容されるカチオン性の塩は、5HT1A受容体アゴニストの遊離酸形態を、適切な塩基(通常1当量)を共溶媒中で反応させることにより容易に調製されうる。典型的な塩基は、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウム エトキシド、水素化ナトリウム、カリウム・メトキシド、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ベンザチン、コリン、ジエタノールアミン、ピペラジン、及びトロメタミンである。当該塩は乾燥するまで濃縮することにより又は非溶媒を添加することにより単離される。多くの場合、塩は、好ましくは、酸溶液をカチオン(例えば、ナトリウム又はカリウムエチルヘキサノエート、オレイン酸マグネシウム)について異なる塩の溶液と混合し、所望のカチオン性の塩が沈殿する溶媒(例えば酢酸エチル)を使用することにより調製されるか、又はそうでなければ濃縮するか及び/又は非溶媒を添加することにより単離されうる。
【0021】
5HT1A受容体アゴニスト又は遊離アミン基を含むアトモキセチンの医薬として許容される酸添加塩は、5HT1A受容体アゴニストの遊離塩基形態を適切な酸と反応することにより容易に調製されうる。当該塩が一塩基酸(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩)、二塩基酸の水素形態(例えば、硫酸水素塩、コハク酸塩)、又は三塩基酸の二水素形態(例えばリン酸に水素塩、クエン酸塩)である場合、少なくとも1モル当量及び通常モル過剰量の酸が使用される。しかしながら、硫酸塩、ヘミコハク酸塩(hemisuccinate)、リン酸水素塩、又はリン酸塩などの塩が所望される場合、適切かつ正確な化学当量の酸が一般的に使用されよう。遊離塩基及び酸は、通常所望される塩を沈殿させる共溶媒中で混合されるか、又はそうでなければ濃縮及び/又は非溶媒の添加により単離されうる。
【0022】
本明細書の目的のために、ADHDは、DSM-IV基準に従って定義される。
【0023】
発現「プロドラッグ」は、投与の後に、化学的又は生理的プロセスを介して薬剤を放出する薬剤前駆体である化合物を指す(例えば、プロドラッグは、生理pHに晒されるか又は酵素作用を受けると、所望の薬剤形態に変換される)。
【0024】
本発明は、アトモキセチン及び5HT1A受容体アゴニストのプロドラッグを使用することを本発明の範囲内に含める。一般的に、かかるプロドラッグは、in vivoにおいて容易に変換できる化合物の機能的誘導体であろう。適切なプロドラッグ誘導体の選別及び調製についての慣用方法は、例えば、Design of Prodrugs, H. Bundgaard著, Elsevier, 1985に記載され、そして当業者に周知の方法を用いて達成されうる。全てのかかるプロドラッグは、本発明の組合せ、医薬組成物、方法、及びキットの範囲内に含まれる。
【0025】
当該技術分野において通常の技術を有する化学者は、本発明の範囲内にある特定の化合物が、両性イオン形態、つまり当該特定の化合物がアミン部分及びカルボン酸部分を含み、これらは溶液のpHに依存して遊離アミン及び遊離カルボン酸、或いは当該アミンがプロトン化されてアンモニウムイオンを形成し、そして当該カルボン酸が脱プロトン化してカルボン酸イオンを形成する両性イオンとして存在しうる形態、で存在しうるということを認めるであろう。かかる両性イオンの使用は本発明に含まれる。
【0026】
当該技術分野において通常の技術を有する化学者は、本発明により考慮される医薬組成物の化合物の幾つかは、異なる立体異性体で存在しうることを認めるであろう。特定の立体異性体は、より好ましい効力又は安全性プロフィールで精神障害を治療する能力を示しうる。本発明は、各医薬組成物の活性成分の全てのとりうる立体異性体及び幾何異性体の使用を含み、そしてラセミ性化合物のみでなく、光学異性体も同様に含む。互変異性体、つまり互いに即座に平衡化する2個の異性体、が可能である場合、本発明は、全ての互変異性形態を使用することを含むように意図される。
【0027】
本発明の組合せは、ADHD又は他の中枢神経系疾患又は障害の治療のために、標準様式で経口、非経口、経粘膜(例えば舌下又は経頬側投与)、局所、経皮、経直腸、吸入(例えば鼻腔吸入又は深肺吸入)投与されうる。非経口投与は、非塩低的に静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、髄腔内、及び関節内投与を含むか、或いは高圧技術、例えばPowderject(登録商標)を介した投与を含む。
【0028】
頬側投与では、当該組成物は慣用様式で剤形された錠剤又はロゼンジの形態でありうる。例えば、経口投与のための錠剤及びカプセルは、慣用の賦形剤、例えば結合剤(例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプン粘液、又はポリビニルピロリドン)、増量剤(例えば、ラクトース、糖、微結晶セルロース、トウモロコシ・デンプン、リン酸カルシウム、又はソルビトール)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレン・グリコール、又はシリカ)、崩壊剤(例えば、ポテトデンプン又はグリコール酸ナトリウムデンプン)、又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などを含みうる。錠剤は、当業者に周知の方法に従って被膜されうる。
【0029】
かかる製剤は、直腸投与用の坐薬として剤形されることもあり、例えば、慣用の坐薬基剤、例えばカカオバター又は他のグリセリドを含む。吸入用の組成物は、溶液、懸濁液、又は乳濁液であって、慣用の高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン又はトリクロロフルオロメタンを用いて、乾燥粉末として又はエアロゾル形態で投与されうる形態で提供されうる。典型的な局所及び経皮製剤は、慣用の水性又は非水性ビヒクル、例えば点眼液、クリーム、軟膏、ローション、及びペーストを含み、又は薬用プラスター、パッチ、又はメンブランの形態である。
【0030】
さらに、本発明の組成物は、注射又は連続注入による非経口投与用に剤形されうる。注射用製剤は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳濁液の形態であることがあり、そして懸濁、安定化、及び/又は分散剤などの剤形試薬を含みうる。或いは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル (例えば滅菌、パイロジェンフリー水)で構成するための粉末形態でありうる。
【0031】
本発明に記載される組成物は、デポー製剤として剤形されうる。かかる持続性製剤は、埋込み(例えば、皮下又は筋肉内)により又は筋肉内注射により投与されうる。従って、本発明の化合物は、適切なポリマー性又は疎水性物質(例えば許容される油中の乳濁液)、イオン交換レジンと剤形されるか、又は難溶性誘導体(例えば難溶性塩)として剤形されうる。
【0032】
アトモキセチン、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグ又は医薬として許容される当該プロドラッグの塩の可溶化形態であって、即放性(又は即放性よりさらに高いレベル)であるものは、デポー製剤に組み込まれうる。例えば、医薬キットは、アトモキセチン、アトモキセチン塩、又はそのプロドラッグ、又はアトモキセチン・プロドラッグ(それらは可溶性又は不溶性でありうる)、及び増粘剤から構成される構成液体ビヒクルを含む。但し、アトモキセチン化合物が不溶性である場合、水性液体はさらに可溶化剤を含む。
【0033】
経口投与のため、医薬組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、粉末などの形態をとりうる。様々な賦形剤、例えばクエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及びリン酸カルシウムなどを含む錠剤は、様々な崩壊剤、例えばデンプン、好ましくはポテト又はタピオカデンプン、並びにあるシリカ複合体と共に使用され、そしてポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン、及びアカシアなどの結合剤と共に使用される。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルクなどの潤滑剤は、錠剤化目的にかなり有用であることが多い。似たタイプの固体組成物は、またソフト及びハードゼラチンカプセル中の増量剤として使用され;この関係での好ましい物質はまた、ラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレン・グリコールを含む。
【0034】
或いは、本発明の化合物は、例えば、経口液体製剤、例えば水性又は油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、又はエリクシル中に取り込まれうる。さらに、これらの化合物を含む製剤は、使用前に水又は他の適切なビヒクルで構成する乾燥生成物として存在しうる。かかる液体製剤は、慣用される添加剤、例えば懸濁剤、例えばソルビトールシロップ、合成及び天然ガム、例えばトラガカント、アカシア、アルギン酸、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン、グルコース/液糖、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウム・ゲル、乳化剤、例えばレシチン、ソルビタン・モノオレエート、又はアカシア;非水性ビヒクル(当該ビヒクルは、食用油を含む)、例えばアーモンド 油、ヤシ油、油エステル、プロピレン・グリコール、及びエチルアルコール;並びに防腐剤、例えばメチル又はプロピルp-ヒドロキシ安息香酸及びソルビン酸を含みうる。 本発明の組成物が経口又は注射による投与のために取り込まれうる液体形態は、水溶液、適切に香り付けされたシロップ、水性又は油性懸濁液、及び食用油、例えば綿実油、又はピーナッツ油との香り付けされた乳濁液、並びにエリクシル及び同様の医薬ビヒクルを含む。
【0035】
水性懸濁液及び/又はエリクシルが経口投与に所望される場合、本発明の化合物は、様々な甘味剤、香味剤、着色剤、乳濁剤、及び/又は懸濁剤、並びに希釈剤、例えば水、エタノール、プロピレン・グリコール、グリセリン、及びそれらの様々な同様の組合せと混合されうる。水性懸濁液用の適切な分散剤又は懸濁剤は、合成及び天然ガム、例えばトラガカント、アカシア、アルギン酸、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチンを含む。
【0036】
本発明の組合せは、制御放出製剤、例えば遅放性又は即放性製剤などで投与されうる。本発明の組合せのかかる制御放出製剤は、当業者に周知の方法を用いて調製されうる。投与方法は、患者の状態及び要求を評価した後に、主治医又は他の当業者により決定されよう。
【0037】
「制御放出」という用語は、慣用される内服用錠剤又はカプセルなどの即放性製剤からの放出よりもゆっくりした割合で放出されるように改変された投与形態からの活性物質の放出を意味する。
【0038】
「即放性」は、標準の溶解試験により測定した際に約15分〜20分以内に、医薬組成物中の1以上の活性成分が、少なくとも約80〜100%(w/v)、好ましくは約90%(w/v)〜約95%(w/v)の溶解を示す医薬組成物を意味する。適切な標準溶解試験は、当該技術分野に知られている。
【0039】
本発明の医薬組成物は、即放性及び制御放出特徴の組合せからなることもある。かかる組成物は、ナノ粒子からマイクロ粒子のサイズの範囲である活性成分の組合せの形態をとりうるか、又は異なる放出割合を有する複数のペレットの形態でありうる。本発明の錠剤又はカプセル組成物は、持続放出又は制御放出形態において非定型抗精神病薬を含み、そして即放形態において第二の治療薬を含むことができる。或いは、非定型抗精神病薬は、即放形態であり、そして第二治療薬が持続放出又は制御放出形態であってもよい。
【0040】
本発明の組合せは、非経口形態で投与されうる。非経口投与では、ゴマ油又はピーナッツ油中の溶液、又は水性ポリプレン・グリコール中の溶液が使用されうるし、並びに対応する水溶性の塩の滅菌水溶液が使用されうる。かかる水溶液は、必要があれば適切に緩衝化され、そして液体希釈液がまず十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされた。これらの水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内注射の目的に特に適している。これに関して、使用される滅菌水性溶媒はすべて当業者に周知の標準技術により容易に得ることができる。
【0041】
ある量の活性成分を有する様々な医薬組成物を製造する方法は、当業者に知られているか、又は本開示において明らかであろう。例えば、ペレットを製造する方法が、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th Edition (1995)において開示される。持続性放出ペレットは、即放性ペレットを被膜するか又はマトリックスシステムを介することにより製造される。被膜は、例えば被膜用の皿(coating pan)の中で行われうるか、又は液体ベッドコーター・ドライヤー(fluid bed coater-driers)中に行われうる。押出し及びそれに続く球形化は、長い間知られている医薬ペレットの製造方法である(J. W. Conineら、Drug & Cosmetic Ind. 106: 38-41; (1970))。しかしながら、ペレット化などの他の方法が利用されてもよい。粒子は、高速ミキサー造粒器又はロータリー液体ベッド凝集形成機において凝集し、球状顆粒又はペレットを形成しうる。これらの方法は、K. W. Olson and A. M. Mehta, Int. J. Pharm. Tech & Prod. Mfr., 6: 18-24; (1985)に記載される。ペレットは、例えばC. Vervaet, L. Baert & J. P. Remon, Int.J.Pharm., 116: 131-146; (1995)に記載されるように湿塊又は溶融物を押出し、続いて球形化することにより製造されうる。使用される賦形剤は、典型的に微結晶セルソースなどのプラスチックの性質を有する賦形剤であるが、マンニトールでもよい。少量のポリマー性結合剤が一般的に加えられる。ドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤は、押出しを容易にするために含めてもよい。
【0042】
本発明に記載される医薬組成物は、0.1%〜95%、好ましくは1%〜70%の本発明の治療薬を含みうる。いずれにしても、投与される組成物又は製剤は、治療を受ける対象の症状又は障害を治療するために有効な量で本発明の治療薬を含むであろう。
【0043】
本発明の組成物の2の異なる活性成分は、同時に又は任意の順番で連続して投与されうるか、又は例えば上記されるようにアトモキセチン及び5HT1A受容体アゴニストを含む1の医薬組成物として投与されうる。
【0044】
本発明は、本明細書に記載される疾患/症状を、別々に投与されうる活性成分の組合せで治療することに関する態様を有するので、本発明は、キット形式において分離した医薬組成物を合わせることにも関する。 当該キットは、2個の別々の医薬組成物:アトモキセチンと、5HT1A受容体アゴニスト、そのプロドラッグ、又は当該5HT1Aアゴニスト若しくはプロドラッグの医薬として許容される塩とを含む。当該キットは、分離された組成物を含めるための容器、例えば別々のボトル又は別々のホイルパケットを含む。典型的に、当該キットは、別々の構成要素を投与するための指示書を含む。当該キット形態は、分離された成分が特に異なる投与形態(例えば経口と非経口)で投与される場合、組合せの個々の成分の滴定が処方する医師により望まれる場合に特に利点がある。
【0045】
かかるキットの一例は、いわゆるブリスター・パックである。ブリスターパックは、パッケージング工業において周知であり、そして医薬単位投与形態(錠剤、カプセルなど)のパッケージングに広く使用されている。ブリスターパックは、一般的に、透明プラスチック物質のホイルでカバーされる比較的硬い物質のシートからなる。パッケージングプロセスの間、凹部はプラスチックホイル中に形成される。凹部はパッケージされる錠剤又はカプセルの大きさ及び形状を有する。次に、錠剤又はカプセルが凹部に入れられ、そして比較的硬い物質のシートを、凹部が形成される方向とは反対方向のホイル面でプラスチックホイルに対して封をされる。結果として、錠剤又はカプセルは、プラスチックホイルとシートとの間の凹部に密閉される。好ましくは、当該シートの強度は、手で凹部に圧力をかけ、それにより開口部が凹部の位置でシート中に形成されることにより錠剤又はカプセルがブリスターパックから取り出される強度である。錠剤又はカプセルはこの開口部を通して取り出すことができる。
【0046】
例えば錠剤又はカプセルの隣に数字の形で、キット上に記憶補助を提供することが望ましいこともある。それにより、当該数字はそのように指定された錠剤又はカプセルを摂取する治療計画の日にちに対応する。かかる記憶補助の別の例は、カードにプリントされたカレンダー、例えば、以下の「第一週:月曜日、火曜日、、、、など、、、第二週:月曜日、火曜日、、、、」などである。他の様々な記憶補助が、当業者に容易に明らかであろう。「一日用量」は、一つの錠剤又はカプセル、又は所定の日に摂取される数個のピル又はカプセルであってもよい。また、アトモキセチンの一日用量が1の錠剤又はカプセルからなる一方、5HT1A受容体アゴニストの一日用量が、数個の錠剤又はカプセルからなることもあるし、又はその逆の場合もある。記憶補助は、このことを反映するべきである。
【0047】
本発明の別の具体的実施態様では、その意図された使用の順番で一回づつ一日用量を分注するように設計されたディスペンサーが提供される。好ましくは、ディスペンサーは、治療計画の遵守をさらに促進するために、記憶補助を備える。かかる記憶補助の例は、機械的計数器であり、当該計数器は分注された一日用量の回数を指し示す。かかる記憶補助の別の例は、液晶表示部を備えるか、或いは、例えば最後に一日用量が摂取された日付を読み上げるか及び/又は次に用量が摂取される時を知らせる音による合図を備える電池式のマイクロチップメモリーである。
【0048】
5HT1A受容体アゴニストを第二成分の化合物として使用することが好ましい一方、、必要があれば又は所望されるならば、2以上のこれらの薬剤の組合せが第二の成分として使用されうるということが理解されよう。
【0049】
総量が、一日あたり約0.0001〜約1000mg/kg、より好ましくは一日あたり約0.01〜約100mg/kg、そして最も好ましくは一日あたり約0.1〜約60mg/kgの範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明において有用である医薬組成物は、医薬として許容される担体を伴って1又は両方の活性化合物を含むであろう。好ましくは、これらの組成物は、経口、非経口、経鼻腔、舌下、又は直腸投与又は吸入若しくは吸送による投与用の錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、滅菌非経口溶液又は懸濁液、計量されたエアロゾル又は液体スプレー、ドロップ、アンプル、自己注射装置又は坐薬などの単位投与形態である。錠剤などの固体組成物を調製するために、第一活性成分を、医薬担体、例えば慣用される錠剤化成分、例えばコーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、又はガム、及び他の医薬希釈剤、例えば水と混合して、本発明の化合物又は医薬として許容されるその塩の均一な混合物を含む固体製剤前組成物を形成する。
【0051】
これらの製剤前組成物が「均一」であると記載する場合、当該組成物が錠剤、ピル、及びカプセルなどの等しく有効な単位用量中に容易に分配されるように、当該組成物をとおして等しく分散されるということを意味する。この固体製剤前組成物は、次に0.1〜約2000mgの本発明の各活性成分を含む上記タイプの単位投与形態中に分配される。典型的な単位投与形態は、1〜300mg、例えば1、2、5、10、25、50、又は100mgの活性成分を含む。新規組成物の錠剤又はピルは、被膜されうるか、又はそうでなければ調合されて持続性作用の利点を与える投与形態を提供する。例えば、錠剤又はピルは、内側成分及び外側成分を含みうる。後者は、前者を覆う形態である。2個の成分が、胃内での崩壊に対して抵抗性を示す腸溶層により分離することができ、そして内側成分が無傷のまま十二指腸へと通過し、又は内側成分の放出が遅延されることが許容される。様々な物質がかかる腸溶層又は被膜について使用されうる。かかる物質は、多くのポリマー酸及びポリマー酸とシェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの物質との混合物を含む。
【0052】
単一の又は別々の医薬組成物として組み合わせて投与される場合、アトモキセチン及び5HT1A受容体アゴニストが、所望される効果の発現に一致する比で存在する。具体的に、アトモキセチン対5HT1A受容体アゴニストの重量比は、0.001:1〜1000:1であり、そして特に0.01:1〜100:1であろう。
【0053】
医薬組成物は、一日あたり6回以下、好ましくは1〜4回、特に一日あたり2回、及び最も具体的には一日一回の投薬計画に基づき投与されうる。
【0054】
本明細書に使用されるとき「哺乳動物」という用語は、経済学的に重要な動物、例えばウシ、及びブタなどの動物、特に肉を生産する動物、並びにペット動物(例えばネコ及びイヌ)、スポーツ動物(例えばウマ)、動物園動物、及び人を含み、人が最も好ましい。
【実施例】
【0055】
医薬として許容される担体中にアトモキセチンと5HT1A受容体アゴニスト(ブスピロン)を混合することにより、医薬組成物を製造する。当該組成物は、一日あたり約0.1mg〜約1000mgのアトモキセチン及び治療有効量の5HT1A受容体アゴニストをデリバリーするためにそれぞれある量のアトモキセチン及びブスピロンを含む。当該組成物は、ADHD及び/又は認識機能障害の治療のために、一日一回、一日二回、一日三回、又は一日四回患者に投与される。
【0056】
本発明が本明細書に記載される特定の実施態様及び実施例に限られず、添付の特許請求の範囲により定義される新たな概念の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び改変がなされうるということを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物においてADHD又は関連する症状を治療するための医薬組成物であって、以下の:
(a)ある量のアトモキセチンである第一治療薬、及び
(b)ある量の5HT1A受容体アゴニスト(当該5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)である第二治療薬
を含み、ここで(a)及び(b)の量がともに、ADHD又は関連する症状を治療するのに有効である、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記第二治療薬が、(a)スネピトロン、 (b)ジェピロン、(c)イプサピロン、(d)S15535、(e)アダタンセリン、(f)タンドスピロン、(g)イプサピロン、及び(h)フレシノキサン、並びにそれらのプロドラッグ、医薬として許容されるそれらの塩、又は医薬として許容される当該プロドラッグの塩から選ばれる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
治療を必要とする対象においてADHD又は関連する症状を治療する方法であって、当該対象に、以下の:
a) ある量のアトモキセチンである第一治療薬、及び
b) ある量の5HT1A受容体アゴニスト(当該5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)である第二治療薬
を投与することを含み、ここで(a)及び(b)の量がともに、ADHD又は関連する症状を治療するのに有効である、前記方法。
【請求項4】
前記第一治療薬がアトモキセチン又は医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグ若しくは当該プロドラッグの医薬として許容される塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(a)及び(b)が、医薬として許容されるビヒクル、担体、又は希釈剤をさらに含む単一の医薬組成物中で、経口、経粘膜、経皮、経鼻腔、経肺、経頬側、非経口、経直腸、及び舌下投与からなる群から選ばれる方法により対象に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記患者への非経口投与が、静脈内、筋肉内、皮下、及び皮内投与からなる群から選ばれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療を必要とする対象において、中枢神経系疾患又は障害を治療する方法であって、当該対象に以下の:
a) ある量のアトモキセチンである第一治療薬
b) ある量の5HT1A受容体アゴニスト(当該5HT1A受容体アゴニストはブスピロンではない)である第二治療薬
を投与することを含み、ここで(a)及び(b)の量はともに、中枢神経系疾患又は障害を治療するのに有効な量である、前記方法。
【請求項8】
前記第一治療薬がアトモキセチン、医薬として許容されるアトモキセチンの塩、アトモキセチンのプロドラッグ、又は医薬として許容される当該プロドラッグの塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
(a)及び(b)が、医薬として許容されるビヒクル、担体、又は希釈剤をさらに含む単一の医薬組成物で、経口、経粘膜、経皮、経鼻腔、経肺、経頬側、非経口、経直腸、及び舌下投与からなる群から選ばれる方法により投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記対象への非経口投与が、静脈内、筋肉内、皮下、及び皮内投与から選ばれる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記中枢神経系疾患又は障害、精神病性障害又は症状が、ノルエピネフリン機能障害、単発性又は反復性大うつ病性障害、気分変調性障害、抑うつ神経症及び神経症性うつ病;摂食障害、重量減少、不眠、早朝覚醒、又は精神運動遅延を含むメランコリー型うつ病;食欲増進、過眠症、精神運動性激越、又は興奮性、季節性情動障害、及び小児うつ病を含む非定型うつ病(又は反応性うつ病);双極性障害又は躁鬱病、例えば、双極性I型障害、双極性II型障害、及び気分循環性障害;行動障害;破壊的行動障害;精神遅滞に付随する行動障害、自閉性障害、及び行動障害;不安障害、例えば広場恐怖などを伴うか又は伴わないパニック障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖症、特定恐怖症、例えば特定動物恐怖症、社会的不安、社会的恐怖症(社会的不安障害を含む)、強迫性障害、及び関連スペクトル障害;心的外傷後ストレス症候群、急性ストレス障害及び慢性ストレス障害、及び全般化不安障害を含むストレス障害;境界性人格障害;統合失調症及び他の精神病性障害、例えば、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、二人組精神病性障害、妄想又は幻覚を伴う精神病性障害、不安の精神病エピソード、精神病に付随する不安症、重篤な大うつ病性障害などの精神病性気分障害;双極性障害に付随する急性躁病及びうつ病などの精神病性障害に付随する気分障害;統合失調症に付随する気分障害;譫妄、痴呆、及び健忘症、及び他の認知性又は神経変性疾患、例えばパーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病、老年痴呆、アルツハイマー型痴呆、記憶障害、管理機能の欠損、脳血管性痴呆、及び他の痴呆、例えば、HIV病、頭部外傷、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病による痴呆、又は複数の病因による痴呆;運動障害、例えば無動症、家族性発作性ジスキネジアを含む運動障害、痙縮、トゥレット症候群、スコット症候群、PALSYS及び無動-硬直症候群;投薬誘導性運動障害、例えば、神経遮断薬誘導性パーキンソン症、悪性症候群、神経遮断薬-誘導性急性筋緊張異常、神経遮断薬-誘導性急性静坐不能、神経遮断薬- 誘導性遅発性ジスキネジア、及び投薬-誘導性姿勢振戦などの錐体外路性運動障害;中毒性障害及び退薬症候群、アルコール、ヘロイン、コカイン、ベンゾジアゼピン、向精神物質、ニコチン、又はフェノバルビトールへの依存症又は中毒を含む化学的依存性及び中毒及びギャンブル中毒などの行動性中毒;アルコール、ニコチン、及び他の向精神性物質への習慣性障害を含む緑内障及び虚血性網膜症習慣性障害などの視覚障害、及び退薬症候群;憂鬱感、不安、不安と憂鬱感の混ざったもの、行動妨害、及び行動及び気分の混合性障害を含む適応障害;アルツハイマー病を含む加齢性学習及び精神障害;拒食症;感情鈍麻;注意欠陥障害(ADD)及び注意欠陥多動性障害(ADHD)、及びその認められているサブタイプを含む全身性医学状態のため生じる注意欠陥障害又は他の認知障害;神経性過食症;慢性疲労症候群;疼痛;慢性痛;気分循環性障害;青年うつ病及び小うつ病を含むうつ病;身体表現性障害を含む線維筋痛症及び他の身体表現性障害;転換性障害;疼痛障害;心気症;身体醜形性障害;未分化身体表現性障害;及び身体表現性NOS;ストレス性失調症を含む失調症;真のストレス性失調症;及び混合型失調症;尿障害;早漏;吸入障害;アルコール中毒を含む中毒障害;躁病;片頭痛;肥満又は過体重患者の体重の低減を含む肥満;反抗的行為障害;末梢神経障害;糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹後神経痛;月経前緊張症及び遅い黄体期不快気分障害を含む月経前不快気分障害;ナルコレプシー、不眠、及び遺尿症などの睡眠障害;特異的発達障害;選択的セロトニン再取り込み阻害(SSRI)、使い切り症候群;及びトゥレット病を含むTIC障害からなる群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第二治療薬が、(a)スネピトロン、(b)ジェピロン、(c)イプサピロン、(d)S15535、(e)アダタンセリン、(f)タンドスピロン、(g)イプサピロン、及び (h)フレシノキサン、それらのプロドラッグ、それらの医薬として許容される塩、又は当該プロドラッグの医薬として許容される塩から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
ADHD、関連する障害、又は中枢神経系疾患又は障害を有する対象を治療するためのキットであって、当該キットが以下の:
a) アトモキセチン、そのプロドラッグ、医薬として許容されるアトモキセチンの塩、又は医薬として許容される当該プロドラッグの塩の単位用量を含むパッケージ;及び
b) 5HT1A受容体アゴニスト(当該5HT1A受容体アゴニストがブスピロンではない)の単位用量を含むパッケージ、
を含む、前記キット。
【請求項14】
前記アトモキセチン、アトモキセチン塩、アトモキセチン・プロドラッグ、又はアトモキセチン・プロドラッグの塩が、1を越える単位用量で提供され、そして前記5HT1A受容体アゴニストが、1を超える単位用量で提供される、請求項13に記載のキット。

【公表番号】特表2008−500325(P2008−500325A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514169(P2007−514169)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001450
【国際公開番号】WO2005/115396
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】