説明

洗浄ならびに除菌用組成物およびその使用方法

【課題】 洗浄効果が高く、かつグラム陰性菌、グラム陽性菌双方に除菌効果の有る安全性の高い洗浄ならびに除菌用組成物を提供する。
【解決手段】 pH11以上の強アルカリ電解水と柑橘類の種子から抽出した成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な洗浄ならびに除菌用組成物およびその使用方法に関し、更に詳しくは、家庭内のキッチン、ダイニング、トイレ、バスルーム等やオフィスにおいて洗浄ならびに除菌を行なうのに適した洗浄ならびに除菌用組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭内及びオフィスにおける清掃においては、単に洗浄対象物の表面に付着した汚れを洗浄除去するだけでなく、衛生面から除菌を求める要望が強くなっている。
細菌は家庭内のキッチン用品、例えば、ふきん、まな板、食器洗浄用のスポンジ等にも広く存在するが、ある条件下では病原性細菌が増殖して人の手や、飲料、食物などを媒介として人の口から入ると感染症を引き起こす。かかる細菌感染を防止する手近な方法としては、食事などの前に手を水や石鹸などで良く洗うこと、加熱調理後の食物を食するなどの方法が一般である。
さらに病原性細菌の感染を予防する効果的な方法として、殺菌剤を利用する方法がある。しかしながら、特に効果が強い殺菌剤は、人体への直接使用や口などから直接または間接的に人体に入る可能性の有るものへの使用、さらには洗浄剤、除菌剤などへの配合も安全面から制限を受ける。
【0003】
一般家庭においては、細菌感染防止のため家庭内のあらゆる細菌を殺菌する必要は無く、単純に菌数を減らす除菌だけで事足りるのが一般的であり、また細菌の増殖を防ぐ方法として、細菌の栄養源となる食物残さ等を除去することも有効である。これは、細菌を一時的に減らしたとしても日常生活の中には浮遊菌の状態で細菌が多数存在し、細菌の増殖条件が整うと爆発的に増殖する可能性があるからである。
したがって、腐敗菌などの微生物の増殖を抑制するためには栄養源の除去すなわち洗浄が必要となる。
【0004】
かかる洗浄を目的とした洗浄剤として、先行技術に示すような、水の電気分解により生成する強アルカリ電解水がある。この強アルカリ電解水は、食塩水等の電気分解によって生成するアルカリ性の水溶液で、特にpHの高い強アルカリ電解水は洗浄効果と共に大腸菌等のグラム陰性菌に対して優れた除菌効果を示す。しかし、強アルカリ電解水は、反面、細胞壁を持つ黄色ブドウ球菌等のグラム陽性菌に対する除菌効果は弱く、いまだ除菌の完全を期し得ないという問題があった。
【特許文献1】特許第3145347号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を解消するためになされたもので、その主たる目的は、一液でグラム陰性菌、グラム陽性菌など各種細菌に対して除菌効果と優れた洗浄効果を有し、しかも人体に対する作用が少なく、安全性も高い新規な洗浄ならびに除菌用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の洗浄ならびに除菌用組成物は、pH11以上の強アルカリ電解水と柑橘類の果実の種子から抽出した成分とを有することを特徴としている。
すなわち、強アルカリ電解水は洗浄効果と大腸菌等のグラム陰性菌の除菌効果を有するが、黄色ブドウ球菌等のグラム陽性菌に対しては除菌効果がなく、そこで種々の除菌成分を添加して除菌実験を行なった。その除菌成分として、試みに柑橘類種子抽出物を添加してみた。かかる柑橘類種子抽出物は、除菌成分としては知られているものの、脂肪酸とフラボノイドを主成分とする酸性物質で、アルカリ域では効果が弱いとされ、アルコール及び/または有機酸の混合物として中性〜酸性域で用いられるのが一般であった。
【0007】
ところが、柑橘類種子抽出物を強アルカリ電解水に配合したところ、分離や沈澱も生じず、驚くべきことに強アルカリ域でグラム陰性菌、グラム陽性菌双方に対して除菌効果が発揮されることを知見した。
そこで本発明は、pH11以上の強アルカリ電解水を主成分としこれに柑橘類の種子抽出成分を添加することにより、強アルカリ電解水単独より洗浄力が優れ、かつ大腸菌等のグラム陰性菌および黄色ブドウ球菌等のグラム陽性菌双方の菌に対して除菌効果のある洗浄ならびに除菌用組成物が得られることを見出して、この発明を完成するに至ったのである。
【発明の効果】
【0008】
洗浄効果と大腸菌等のグラム陰性菌の除菌効果を有する強アルカリ電解水と、グラム陰性菌、グラム陽性菌の双方に対して除菌効果を示す柑橘類種子抽出物を組み合わせることにより、大腸菌等のグラム陰性菌および黄色ブドウ球菌等のグラム陽性菌双方の菌に対して除菌効果を得ることができる。 しかも、柑橘類種子抽出物は除菌作用は認められるが洗浄力がないため、除菌に際して洗浄剤等による前洗浄が必要で、作業の手間がかかる問題があったが、強アルカリ電解水に柑橘類種子抽出物を配合することにより、強アルカリ電解水単独より洗浄力が優れたものとなる。
【0009】
したがって、本発明によれば、一液でグラム陰性菌、グラム陽性菌双方に対して除菌効果があり、かつ優れた洗浄効果を有し、作業の手間を省き、効率良く洗浄ならびに除菌を行なうことができる。
また、pH11以上の強アルカリ電解水は水の分解より生成される安全な洗浄剤であり、また、添加される柑橘類の種子から抽出した成分は人体に対して無害であり、かつ強アルカリ電解水に対しても長期安定であることから、本洗浄ならびに除菌用組成物は洗浄ならびに病原性微生物を含む細菌からの感染を予防する除菌目的に使用することができる。
したがって、本発明による洗浄ならびに除菌用組成物は、使用場所を選ばず、トイレまわりなどの各種用具などに対して使用できることはもちろんのこと、テーブル、キッチン周り等においても使用することができる。
また、この発明は、上記の洗浄ならびに除菌用組成物を、洗浄剤もしくは除菌剤の成分として配合しても上記目的を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、前記柑橘類として、脂肪酸とフラボノイドを主成分とした抽出物が得られるもの使用する。その代表例としてはグレープフルーツならびにレモンが挙げられる。
また、前記柑橘類の種子から抽出した成分の強アルカリ電解水に対する添加量は、濃縮エキス換算で重量比で0.005%以上であることが好適である。これにより黄色ブドウ球菌を含むグラム陽性菌などに対する殺菌効果をあげることができる。
【0011】
本発明はまた、前記のようなpH11以上の強アルカリ電解水と柑橘類の種子から抽出した成分の組成物を洗浄剤もしくは除菌剤に配合して使用する使用方法を含んでいる。
これによれば、一液で各種の対象物の洗浄と除菌を能率よく効果的に実施できる。
【0012】
以下本発明を詳細に説明すると、本発明に係る洗浄ならびに除菌用組成物は、pH11以上の強アルカリ電解水と、柑橘類の種子から抽出した成分とからなっている。
この発明に使用することができるpH11以上の強アルカリ電解水は、食塩、炭酸カリウム等の電解質を添加した水の電気分解によって生成した陰極水で、電気分解時における電解槽は2槽式を用いてもさらに3槽以上の多槽式を用いても良い。
【0013】
本発明で使用するグレープフルーツの種子抽出物は脂肪酸とフラボノイドを主成分とした天然の抽出物であり、効果が大きい。このうち、天然系食品添加物として認められるグレードのものが特に好ましい。
【0014】
この発明に係る上記洗浄ならびに除菌用組成物は、洗浄剤もしくは除菌剤などとして種々の形態で使用することができ、その使用対象物によって異なる形態で使用することができる。
この発明に係る洗浄および除菌用組成物における上記pH11以上の強アルカリ電解水に対する上記グレープフルーツ種子抽出物量は、上記洗浄および除菌用組成物の使用対象物、形態などによって異なるが、一般的に、濃縮エキスとして、好ましくは0.005〜0.5%、更に好ましくは0.01〜0.1%である。
【0015】
下限を0.005%としたのは、これ以下ではグラム陽性菌に対する殺菌作用が十分に得られないことを実験の結果確認したからである。
上限を0.5%としたのは、これ以上添加してもグラム陽性菌に対する除菌効果の向上は確認されず、かえって価格が高価になる不利があること、また、グレープフルーツ種子抽出物は酸性であるため、0.5%以上添加すると強アルカリ電解水のpH値が下がり、アルカリによる洗浄効果が低減することなどが挙げられる。
この発明に係る洗浄及び除菌用組成物には、その使用目的などによって、種々の添加剤を更に含んでいてもよく、例えば、洗浄力を向上させる場合には、界面活性剤を適宜添加することができる。また、除菌や洗浄の効果のある他の天然成分を添加することもできる。
【0016】
本発明の洗浄及び除菌用組成物は容器に充填されて使用される。 容器はねじキャップ式のもの、噴霧器付きのものなどを使用でき、後者には、トリガーからの噴霧量を規定したものを含む。
【0017】
本発明に係る洗浄ならびに除菌用組成物は、上記したごとく、洗浄作用、グラム陰性菌に対して除菌作用を示すpH11以上の強アルカリ電解水と柑橘類の果実の種子抽出成分、代表的には、食品添加物名簿に記載され、主に食品の日持向上剤として使用されるグレープフルーツ種子抽出物からなっており、一液で優れた洗浄力と各種細菌に対して除菌作用を有していることが極めて大きな特長である。
つまり、この発明に係る洗浄および除菌用組成物は、強アルカリ電解水が有する効果的な洗浄作用およびグラム陰性菌に対する除菌効果と、柑橘類の果実の種子成分が有する効果的なグラム陽性菌に対する除菌効果の相乗効果を有するものであり、本来柑橘類果実の種子抽出成分が有効ではないアルカリ域で特に除菌効果が発揮される点に特長がある。
この発明の洗浄および除菌用組成物は、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌ばかりではなく、その他のグラム陽性、グラム陰性を含む各種細菌などにも有効である。この発明を実施例により更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
下記成分を所定量秤量し、それぞれを混合して洗浄ならびに除菌用組成物を得た。
成 分:
三槽式の電解槽を用い、食塩水の電気分解により生成した強アルカリ電解水pH12.5にグレープフルーツ種子抽出物を濃縮エキス換算で、0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%添加して洗浄ならびに除菌用組成物を得た。
【0019】
1.除菌試験
上記組成からなる洗浄ならびに除菌用組成物について、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対する除菌作用を試験した。
使用した菌は、大腸菌としてEscherichia coli O−157ATCC 35150、黄色ブドウ球菌としてStaphylococcus aureus ATCC 25923を使用した。
各菌をBHIブロスに接種し、35℃で24時間培養して菌液とした。
上記洗浄ならびに除菌用組成物9mlに菌液1mlを加えて25℃を保持し、1分、5分放置した。
同様にコントロールとして滅菌水9mlに菌液1mlを加え、25℃で5分放置した。
細菌数を測定するため、各試験液を滅菌リン酸緩衝生理食塩水で希釈し、シャーレーに1ml添加後、標準寒天培地を20ml加え、混釈培養した。
35℃で48時間培養後、菌数を測定した。
その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
2.洗浄試験
上記組成からなる洗浄ならびに除菌用組成物について、人工汚垢を用いた洗浄力試験を行った。
人工汚垢は牛脂と大豆油を体積比1:1で混合した油脂20g、モノオレイン 0.25g及びオイルレッド0.1gを同時にクロロホルム60ccに溶解し、その後加熱酸化させたものを使用した。
人工汚垢をスライドガラスに塗布し、80℃で約30分乾燥させて試験板とした。
上記洗浄ならびに除菌用組成物をビーカーに入れ、試験板を浸漬し、超音波洗浄器を用いて15秒間及び30秒間洗浄した。
洗浄前後の試験板の人工汚垢重量を測定し、洗浄時間30秒のpH12.5の強アルカリ電解水の洗浄力を100%として相対評価により洗浄力を求めた。
その結果を表1に示す。
【0022】
比較例として表2に示す成分割合で調整した比較例1〜4について実施例と同様の試験を行った結果を表2に示す。比較例1は強アルカリ電解水pH12.5のみのもの、比較例2はグレープフルーツ種子抽出物濃縮エキス換算で0.05%のみのもの、比較例3はpH10.9の強アルカリ電解水にグレープフルーツ種子抽出物の濃縮エキス換算で0.05%添加したもの、比較例4は滅菌水である。
【0023】
【表2】

【0024】
これら実施例と比較例から明らかなように、強アルカリ電解水のpHはpH11以上なければ洗浄力、除菌力ともに不充分である。
pH12.5の強アルカリ電解水は洗浄力、大腸菌に対する除菌力はあるが、黄色ブドウ球菌に対する除菌力が不足している。
またpH11以下のアルカリ電解水にグレープフルーツ種子抽出物を添加すると、アルカリ電解水が酸性分で中和されるため、除菌力は向上するが洗浄力が低下することがわかる。
pH11以上の強アルカリ電解水にグレープフルーツ種子抽出物を添加すると添加量に応じて黄色ブドウ球菌の除菌力が向上し、しかも同時に洗浄力も向上することがわかる。
さらにpH11以上の強アルカリ電解水にグレープフルーツ種子抽出物を濃縮エキス換算で0.005%以上添加すると、洗浄力が強アルカリ電解水単独と比較して6%〜22%上昇し、大腸菌、黄色ブドウ球菌とも5分以内で1×10以上の菌を除菌することが可能となる。
したがって、本発明で規定する範囲内で柑橘類種子抽出物質を添加することで、一液での洗浄、除菌効果が発揮されることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH11以上の強アルカリ電解水と柑橘類の種子から抽出した成分とを有することを特徴とする洗浄ならびに除菌用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載した洗浄ならびに除菌用組成物において、前記柑橘類が、ミカン科ミカン属であることを特徴とする洗浄ならびに除菌用組成物。
【請求項3】
請求項2に記載した洗浄ならびに除菌用組成物において、前記抽出成分がグレープフルーツ種子抽出物であることを特徴とする洗浄ならびに除菌用組成物。
【請求項4】
請求項2に記載した洗浄ならびに除菌用組成物において、前記抽出成分がレモン種子抽出物であることを特徴とする洗浄ならびに除菌用組成物
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の洗浄ならびに除菌用組成物において、柑橘類の種子から抽出した成分が濃縮エキス換算で0.005%以上0.5%未満であることを特徴とする洗浄ならびに除菌用組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の洗浄ならびに除菌用組成物を、洗浄剤もしくは除菌剤に配合して使用することを特徴とする洗浄ならびに除菌用組成物の使用方法。

【公開番号】特開2007−31608(P2007−31608A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218663(P2005−218663)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(591069891)株式会社ケミコート (11)
【出願人】(000003665)株式会社ツムラ (43)
【Fターム(参考)】