説明

洗浄システム

【課題】 洗浄液を循環させつつ電解、洗浄を繰り返すシステムにおけるランニングコストを低減する。
【解決手段】被洗浄材100を洗浄する洗浄部10を介在させて加熱された洗浄液を循環させる洗浄液ライン1、2と、被電解液を通液しつつ電解する電解反応装置30を介在させて電解液を循環させる電解液ライン7、7a、7b、1、6とを有し、前記洗浄液ラインと該電解液ラインとは、上記洗浄部の下流側で分流し、かつその上流側であって前記洗浄部の上流側または下流側で前記電解液の電解反応装置下流側が合流する混合共通ライン1を備える。洗浄効果を損なうことなく、加熱を必要とする洗浄液量および電解を必要とする洗浄液量をそれぞれ少なくしてランニングコストを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱した洗浄液を循環しつつ被洗浄材を洗浄するとともに、前記洗浄液の一部を循環しつつ電解をして電解液の酸化力によってさらに洗浄効果を高める洗浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程では、シリコンウエハなどの半導体基板に付着したレジストや汚染物などを洗浄剥離する洗浄処理工程があり、該洗浄技術では、従来は、レジスト残渣、微粒子、金属および自然酸化膜などを剥離洗浄するプロセスであり、濃硫酸と過酸化水素の混合溶液(SPM)あるいは、濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液(SOM)が多用されている。高濃度の硫酸に過酸化水素やオゾンを加えると硫酸が酸化されて過硫酸が生成される。過硫酸は自己分解する際に強い酸化力を発するため洗浄能力が高く、上記ウエハなどの洗浄に役立つことが知られている。また、過硫酸を生成する方法として、上記方法の他に、硫酸イオンを含む水溶液を電解槽で電解して過硫酸溶解水を得て洗浄に供する方法も知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、上記したSPMでは、過酸化水素水により発生する過硫酸が自己分解し酸化力が低下すると過硫酸による酸化力を回復させるため過酸化水素水の補給を繰り返すことが必要である。そして硫酸濃度がある濃度を下回ると新しい高濃度硫酸と交換する。しかし、上記方法では、過酸化水素水中の水で硫酸溶液が希釈されるため、液組成を一定に維持することが難しく、さらには所定時間もしくは処理バッチ数毎に液を廃棄して、更新することが必要である。このため洗浄効果が一定しない他、多量の薬品を保管しなければならないという問題がある。一方、SOMでは液が希釈されることがなく、一般的にSPMより液更新サイクルを長くできるものの、洗浄効果においてはSPMより劣る。
【0004】
また、SPMでは、1回洗浄槽を満たした高濃度硫酸と数回の過酸化水素水添加により発生できる過硫酸量は少なく、限度がある。また、SOM法ではオゾン吹き込み量に対する過硫酸の発生効率が非常に低い。したがって、これらの方法では、生成する過硫酸の濃度に限界があり、洗浄効果にも限界があるという問題もある。
【0005】
これに対し、本願発明者等は、過硫酸の生成を単に電解によって得るのではなく、これを循環しつつ、洗浄と電解反応とを繰り返し行うことで過硫酸イオンをリサイクルして硫酸使用量を大幅に低減した洗浄システムを提案している。該装置を図4に基づいて説明すると、半導体基板100を洗浄する洗浄装置として枚葉式洗浄装置10を備えており、該装置では、洗浄液が半導体基板100に噴霧されて洗浄される。該枚葉式洗浄装置10の排液側は、戻り管15を介して溶液貯留槽20に接続されており、該溶液貯留槽20には、送液管25が接続されている。送液管25には、送液ポンプ26と、送液される洗浄液を冷却する冷却器27とが介設されており、送液管25の先端側は、電解反応装置30に接続されている。電解反応装置30では、洗浄液が通液されつつ電解されるように構成されており、電解された洗浄液が送液管35を通して前記枚葉式洗浄装置10に供給されるように構成されており、枚葉式洗浄装置10の直前では、前記送液管35を通して供給される洗浄液を加熱する加熱装置36が設けられている。
【0006】
上記洗浄システムの動作を説明すると、上記溶液貯留槽20に硫酸を収容し、これを送液ポンプ26によって順次、電解反応装置30に送液する。この際には、冷却器27によって電解反応に適した温度(例えば40℃)に冷却される。電解反応装置30では、溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成され過硫酸溶液が得られる。この過硫酸溶液は、送液管35を通して枚葉式洗浄装置10へと送られ、その際に加熱装置36によって洗浄に適した温度(例えば130℃)に加熱された後、半導体基板100に噴霧されて洗浄処理が行われる。排液は、戻り管15を通して溶液貯留槽20へと順次送られ、さらには、上記したように送液管25で電解反応装置30へと送られて電解、洗浄が繰り返される。
【特許文献1】特開2001−192874号公報
【特許文献2】特表2003−511555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記洗浄システムでは、上記のように洗浄液による洗浄、電解を繰り返すことで硫酸をリサイクルしつつ半導体基板を効果的に洗浄することができる。しかし、洗浄装置において効果的な洗浄を行うためには、洗浄液を高温に加熱して洗浄に供することが必要である。一方、電解反応装置では、被電解液が高温であると、効率的な電解反応を行うことが困難になるため洗浄装置で用いられた洗浄液を冷却することが必要になる。電解に供された電解液は温度が低下しているため、洗浄に際しては再度高温に加熱することが必要になる。すなわち、洗浄液を循環して洗浄、電解を交互に繰り返す際には、洗浄液をその度に加熱、冷却する必要がある。このため、特に高温に加熱するためのエネルギが多大になり、システム全体のランニングコストを上昇させる一因となっている。
【0008】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、洗浄液の加熱に要するエネルギを減少させて稼働コストを低下させることができる洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の洗浄システムのうち、請求項1記載の発明は、被洗浄材を洗浄する洗浄部を介在させて加熱された洗浄液を循環させる洗浄液ラインと、被電解液を通液しつつ電解する電解反応装置を介在させて電解液を循環させる電解液ラインとを有し、前記洗浄液ラインと該電解液ラインとは、上記洗浄部の下流側で分流し、かつその上流側であって前記洗浄部の上流側または下流側で前記電解液の電解反応装置下流側が合流する混合共通ラインを備えることを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明によれば、加熱された洗浄液は、洗浄液ラインを循環し、電解液は電解液ラインを循環し、洗浄部の上流側または下流側で電解がなされた電解液と洗浄液が一時的に混合されてその後、分流されるので、加熱、冷却の対象となる液量が小さくなり、したがって加熱、冷却のためのエネルギ量が減少して稼働エネルギが小さくなる。なお、洗浄液温度を低下させないという観点からは、洗浄部の下流側で電解液との混合を行うのが望ましい。
【0011】
なお、洗浄液ラインでは、洗浄部を基準にして洗浄液の流れに基づいて上流側、下流側が表現されており、便宜上、洗浄液ラインでは洗浄部を越えて混合共通ラインの分流端に至るまでを洗浄部の下流側とし、該分離端から洗浄部に至るまでを洗浄部の上流側としている。
また、電解液ラインでは、電解反応装置を基準にして洗浄液の流れに基づいて上流側、下流側が表現されており、便宜上、電解反応装置を越えて混合共通ラインの分流端に至るまでを電解反応装置の下流側とし、該分離端から電解反応装置に至るまでを電解反応装置の上流側としている。
【0012】
請求項2記載の洗浄システムの発明は、請求項1記載の発明において、前記電解液ラインは、電解反応装置下流側が分岐して、前記洗浄部の上流側と下流側とで前記洗浄液ラインに合流することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、洗浄部の上流および下流側で電解液と洗浄液との混合がなされる。その流量比を調整することで、洗浄部における洗浄液温度の影響度や稼働エネルギに対する影響度を調整することができる。また、電解液を洗浄部の上流側に混合することで、電解液の酸化性を得て洗浄部での洗浄効果を高めることができる。この際に、電解液を加熱して洗浄部に供給されるようにしてもよい。この場合にも、電解液の一部を対象にして加熱をすればよいので、加熱に要するエネルギは比較的小さい。また、洗浄液を加熱する加熱装置の上流側で電解液を混合するようにしてもよい。なお、洗浄液温度に対する悪影響を考慮すれば、洗浄部の下流側で多くの流量を混合するのが望ましい。また、電解液の混合は常時行わず、間欠的に行うようにしてもよい。
【0014】
請求項3記載の洗浄システムの発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記洗浄液は、硫酸濃度が8M以上18M未満の濃硫酸であることを特徴とする。
【0015】
洗浄液に硫酸を使用する場合、被電解液として電解反応装置に送液される際に、その硫酸濃度は電解反応装置における過硫酸イオンの生成効率に大きく影響する。具体的には硫酸濃度が低いほど過硫酸発生効率は大きくなる。一方で、硫酸濃度を低くすると、洗浄部に送液される際に、洗浄部でのレジスト等の有機化合物の溶解度が低くなり、被洗浄材から剥離しにくくなる。これらの観点から、システムに用いられる溶液の硫酸濃度は、例えば9M〜18M未満の範囲が望ましい。同様の理由で、下限は12M、上限は17Mであるのが一層望ましい。
【0016】
請求項4記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記洗浄液ラインと、前記電解液ラインとにおける流量比が2:1〜1:1であることを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、洗浄液ラインと電解液ラインを流れる洗浄液の流量を調整することで、洗浄効果と電解液の生成効果の調整およびエネルギ効率の低減効果を調整することができる。洗浄液の上記流量比が2を超えると、加熱に要するエネルギの低減効果が小さくなる。一方、洗浄液の上記流量比が1未満になると洗浄作用が十分に得られるなくなる。したがって、上記流量比が望ましい。
【0018】
請求項5記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記洗浄部の上流側に洗浄液を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、洗浄部の上流側で加熱手段によって洗浄液を加熱して洗浄効果を高めることができる。したがって、加熱手段は洗浄部にできるだけ近い側にあるのが望ましい。
なお、加熱手段としてはヒータや熱水、蒸気などとの熱交換を利用した加熱器などが例示されるが本発明としては特定のものに限定されない。
【0020】
請求項6記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記洗浄液ラインにおける洗浄液としての硫酸の加熱温度が100℃以上200度未満であることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、好適な加熱温度によって洗浄部での洗浄効果が良好になる。該温度範囲を下回ると、剥離洗浄効果が低下する。一方、200℃を超えると、洗浄液の蒸発が生じて安定した洗浄が困難になるので、洗浄液の適温を上記範囲に定めた。
【0022】
請求項7記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記電解反応装置に用いる電極のうち、少なくとも陽極がダイヤモンド電極であることを特徴とする。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、酸化性の高い過硫酸イオンなどの生成においても高い耐久性を示し効果的に電解反応を行うことができる。ダイヤモンド電極は、少なくとも陽極に用いるのが望ましいが、陰極やバイポーラ電極に用いることも可能である。
【0024】
ダイヤモンド電極は、シリコンウエハ等の半導体材料や金属材料を基板とし、この基板表面に導電性ダイヤモンド薄膜を合成させた後に、基板を溶解等によって取り除いたものや、基板を用いない条件で板状に析出合成した、セルフスタンド型導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。また、Nb,W,Tiなどの金属基板上に積層したものも利用できるが、電流密度を大きくした場合には、ダイヤモンド膜が基板から剥離するという問題が生じる場合があるためセルフスタンド型がより好ましい。
なお、導電性ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド薄膜の合成の際にボロン、窒素などの所定量をドープして導電性を付与したものであり、通常はボロンドープしたものが一般的である。これらのドープ量は、少なすぎると技術的意義が発生せず、多すぎてもドープ効果が飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、50〜20,000ppmの範囲のものが適している。本発明において、導電性ダイヤモンド電極は、通常は板状のものを使用するが、網目構造物を板状にしたものも使用できる。すなわち、本発明としては、電極の形状や数は特に限定されるものではない。 この導電性ダイヤモンド電極を用いて行う電解処理は、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を10〜100,000A/mとし、硫酸イオンを含む溶液をダイヤモンド電極面と平行方向に、通液線速度を1〜10,000m/hrで接触処理させることが望ましい。
【0025】
請求項8記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記洗浄部が被洗浄材を浸漬する洗浄槽からなることを特徴とする。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、一または複数の被洗浄材を洗浄槽中の洗浄液に浸漬をして洗浄を行うことができる。
【0027】
請求項9記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、前記洗浄部が被洗浄材に洗浄液を噴霧して洗浄を行う枚葉式洗浄装置であることを特徴とする。
【0028】
請求項9記載の発明によれば、枚葉式洗浄装置内で一または複数の被洗浄材に洗浄液を噴霧して洗浄を行うことができる。
【0029】
請求項10記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の発明において、前記混合共通ラインの液を80〜130℃に維持する温度調整手段を備えることを特徴とする。
【0030】
電解液が過硫酸溶液である場合、特に溶液貯留槽を80〜130℃に維持することが望ましい。130℃を超えると過硫酸イオンの自己分解が早期に進んで酸化力を長い時間に亘って得ることができず、一方、80℃未満では自己分解が十分に進まず十分な酸化力が得られない。
【0031】
請求項11記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、前記混合共通ラインの分流端に溶液貯留槽が備えられていることを特徴とする。
【0032】
請求項11記載の発明によれば、混合共通ラインが分流して洗浄液ラインと電解液ラインに流れる液流量を溶液貯留槽によって容易に調整し、かつ円滑に分流させることができる。また、電解液に含まれる酸化力の強いイオンを洗浄液中の汚染物などに、より接触効率よく作用させて、汚染物などをさらに分解して洗浄液を清浄にして洗浄度を高く維持することが可能になる。
【0033】
請求項12記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜11のいずれかに記載の発明において、前記電解反応装置の上流側に被電解液を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする。
【0034】
請求項12記載の発明によれば、洗浄液を適温に冷却して電解反応に適した被電解液として電解反応装置に供給することができる。該適温としては、例えば10〜90℃を示すことができる。冷却手段としては空冷、水冷などの冷却器を例示することができるが、本発明としては、特定のものに限定されない。上記温度範囲を超えると、電解効率が低下し、電極の損耗も大きくなる。一方、上記温度を下回ると、洗浄液に混合した際に洗浄液全体の温度が低下して、これを加熱するための熱エネルギが莫大になる。なお、同様の理由により、下限を40℃、上限を80℃とするのが一層望ましい。
【0035】
請求項13記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の発明において、前記被洗浄材が半導体基板であることを特徴とする。
【0036】
請求項13記載の発明によれば、半導体基板上のレジストなどの汚染物を効果的に剥離除去することができる。特に洗浄液として硫酸を使用し、これを電解することによって過硫酸イオンの酸化力を利用することで、汚染物を効果的に洗浄・剥離することができる。従来、半導体基板の処理プロセスなどでは、洗浄処理に先立って、通常、前処理工程としてドライエッチングやアッシングプロセスを利用して有機物であるレジストを予め酸化して灰化する工程が組み込まれている。この工程は、装置コストや処理コストを高価にするという問題を有している。本発明のシステムでは、上記のように優れた洗浄効果が得られることから、上記したドライエッチングやアッシングプロセスなどの前処理工程を組み込むことなく洗浄処理を行った場合にも、十分にレジストなどの除去効果が得られる。すなわち、本発明は、これらの前処理工程を省略したプロセスを確立することも可能にする。
【0037】
なお、本発明の洗浄システムでは、種々の被洗浄材を対象にして洗浄処理を行うことができるが、上記のようにシリコンウエハ、液晶用ガラス基板、フォトマスク基板などの電子材料基板を対象にして洗浄処理をする用途に好適である。さらに具体的には、半導体基板上に付着したレジスト残渣などの有機化合物の剥離プロセスに利用することができる。また、半導体基板上に付着した微粒子、金属などの異物除去プロセスに利用することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上、説明したように、本発明の洗浄システムによれば、被洗浄材を洗浄する洗浄部を介在させて加熱された洗浄液を循環させる洗浄液ラインと、被電解液を通液しつつ電解する電解反応装置を介在させて電解液を循環させる電解液ラインとを有し、前記洗浄液ラインと該電解液ラインとは、上記洗浄部の下流側で分流し、かつその上流側であって前記洗浄部の上流側または下流側で前記電解液の電解反応装置下流側が合流する混合共通ラインを備えるので、洗浄効果を損なうことなく、加熱を必要とする洗浄液量および電解を必要とする洗浄液量をそれぞれ少なくしてランニングコストを低減する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。なお、従来装置と同様の構成については同一の符号を付している。
この実施形態では、洗浄部としての枚葉式洗浄装置10と、洗浄液を貯留して溶解物を分解させる溶液貯留槽20と、電解反応装置30とを備えている。
枚葉式洗浄装置10の下流側と溶液貯留槽20とは、洗浄液返流管1で連結されており、溶液貯留槽20と洗浄装置10の上流側とは洗浄液送液管2で連結されている。洗浄液送液管2には、送液ポンプ3と、加熱装置4とが介設されている。
【0040】
一方、溶液貯留槽20と電解反応装置30の上流側とは、被電解液送液管6で接続されており、被電解液送液管6には、送液ポンプ8、冷却器9が介設されている。電解反応装置30の下流側は、電解液送液管7が接続され、該電解液送液管7が送液分岐管7aと送液分岐管7bとに分岐し、送液分岐管7aが前記洗浄液返流管1に接続され、送液分岐管7bは、前記洗浄液送液管2に合流している。
上記洗浄液返流管1、洗浄液送液管2によって洗浄液ラインが構成されており、また、被電解液送液管6、電解液送液管7、7a、7b、洗浄液返流管1によって電解液ラインが構成されており、電解液送液管7bと洗浄液送液管2との合流地点から溶液貯留槽20に至る経路(洗浄液送液管2の一部と洗浄液返流管1)が本発明の混合共通ラインとして機能している。
【0041】
また、枚葉式洗浄装置10では、液体スプレーノズル11を備えており、該液体スプレーノズル11の先端側噴出部が枚葉式洗浄装置10内に位置している。該液体スプレーノズル11には、前記洗浄液送液管2が接続されている。
また、枚葉式洗浄装置10内には、液体スプレーノズル11の噴出方向に、基板載置台12が配置されている。基板載置台12には、半導体基板100が載置される。該基板載置台12または液体スプレーノズル11は、半導体基板100の表面上に液滴がむらなく当たるように相対的に移動可能とするのが望ましい。
【0042】
溶液貯留槽20では、貯留した溶液の温度を調整(加熱または冷却)するための温度調整器21を備えている。温度調整器21の構成は本発明としては特に限定されず、例えばヒータ、冷却器などを組み合わせて構成することができる。
【0043】
電解反応装置30では、電解反応槽31、32が並列に接続されている。上記電解反応槽31には、陽極31aおよび陰極31bが配置され、さらに陽極31aと、陰極31bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極31c…31cが配置されている。電解反応槽31では、上記電極間を溶液が通液するように構成されており、その出口が前記電解液送液管7に接続されている。
【0044】
一方、電解反応槽32は、電解反応槽31と同様の構成を有しており、陽極32aおよび陰極32bが配置され、さらに陽極32aと、陰極32bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極32c…32cが配置されている。上記陽極32aおよび陰極32bに、前記直流電源33が接続されている。上記電極間も同様に通液が可能になっており、その出口側に電解液送液管7が接続されている。
【0045】
なお、上記陽極31aおよび陰極31b、陽極32aおよび陰極32bには、直流電源33が直列に接続されており、これにより電解反応槽31、32での直流電解が可能になっている。電解反応槽31、32を直列にして直流電源33に接続することで、電解反応槽31、32における通電量を同じにすることができる。
また、電解反応槽31、32は、被電解液送液管6、電解液送液管7に並列に接続されていることにより、一方で発生した電解ガスを他方の電解ガスに流入することを回避できる。
【0046】
この実施形態では、上記電極31a、31b、31c、32a、32b、32cはダイヤモンド電極によって構成されている。該ダイヤモンド電極は、基板状にダイヤモンド薄膜を形成するとともに、該ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、好適には50〜20,000ppmの範囲でボロンをドープすることにより製造したものである。上記電解反応槽31、32、直流電源33によって、電解反応装置が構成されている。
【0047】
次に、上記構成よりなる硫酸リサイクル型枚葉式洗浄システムの作用について説明する。
上記溶液貯留槽20内に、硫酸を収容し、これに超純水を混合して硫酸濃度が8〜18M未満の硫酸溶液とする。これをそれぞれ送液ポンプ3、8によって洗浄液送液管2、被電解液送液管6を通して、枚葉式洗浄装置10および電解反応装置30へと送液する。この際に硫酸溶液は加熱装置4によって130〜200℃未満に加熱されて枚葉式洗浄装置10に供給される。例えば、洗浄装置10に対し8L/minの流量で送液し、電解反応装置30に対し6L/minの流量で送液する。
【0048】
枚葉式洗浄装置10では、液体スプレーノズル11において高温の硫酸液滴が一定時間噴出される。基板載置台12上には半導体基板100が載置されており、基板載置台12によって基板100が回転し、かつ液体スプレーノズル11が半導体基板100の表面に液滴がむらなく当たるように相対的に移動し、前記硫酸液滴によって基板100の表面の清浄がなされ、レジストなどが剥離、除去がなされる。噴出された硫酸溶液は、基板100を洗浄した後、飛散・落下して、レジスト溶解物などとともに洗浄液返流管1に排液される。洗浄液返流管1では、上記硫酸溶液が溶液貯留槽20へと移動する。溶液貯留槽20では、温度調整器21によって洗浄液が100〜130℃に維持される。
【0049】
一方、被電解液送液管6に送液される溶液は、冷却器9で電解反応に好適な10〜90℃の温度に冷却されて電解反応装置30に供給される。
電解反応槽31では、陽極31aおよび陰極31bに直流電源33によって通電すると、バイポーラ電極31c…31c、バイポーラ電極32c…32cが分極し、所定の間隔で陽極、陰極が出現する。電解反応槽31、32に送液される溶液は、これら電極間に通液される。この際に通液線速度が1〜10,000m/hrとなるように送液ポンプ8の出力を設定するのが望ましい。なお、上記通電では、ダイヤモンド電極表面での電流密度が10〜100,000A/mとなるように通電制御するのが望ましい。
【0050】
電解反応槽31、32で溶液に対し通電されると、溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成され高濃度の過硫酸イオン含有溶液が得られる。このようにして高い濃度とされた過硫酸イオン含有溶液は、電解液送液管7を通して送液され、送液分岐管7a、7bに分岐し、主となる電解液は例えば4L/minの流量で送液分岐管7aを通して洗浄液返流管1へと送られて、洗浄を終えた洗浄液と混合される。また、一部の電解液は、例えば2L/minの流量で電解液送液管7から送液分岐管7bへと送られて洗浄装置10の直前で洗浄液送液管2に合流して洗浄に供される。この電解液は、電解液の一部であるため、既に加熱されている洗浄液の温度を下げるが、その分を余分に加熱しておくことで洗浄度に対する悪影響を排除することができる。その一方で、酸化力の強い過硫酸イオンを含むため、枚葉式洗浄装置10における洗浄の際にレジストなどの剥離洗浄、さらにその分解に寄与する。
【0051】
溶液貯留槽20では、電解液の混合によって、過硫酸イオンの自己分解による酸化力によって溶液中に移行している汚染物を酸化分解して清浄化する。この際に、溶液の温度は、80〜130℃に維持されており、過硫酸イオンの分解が適度に進んで分解が効果的になされる。この温度が130℃よりも高いと過硫酸イオンの自己分解が早期に進行して汚染物の分解を効果的に行うことが難しくなる。また、80℃未満では、過硫酸イオンの自己分解が十分に進行せず、同様に汚染物の分解が効果的になされない。
溶液貯留槽20で自己分解によって過硫酸イオン濃度が低下した溶液は、前記被電解液送液管6を通して再度電解反応装置30に送液され、上記と同様に電解反応がなされて過硫酸イオンが再生されて電解液送液管7を通して溶液貯留槽20に戻される。このように過硫酸イオンを再生しつつ過硫酸イオン含有溶液を繰り返し使用して効果的に溶解物の分解を行うことができる。
【0052】
また、溶液貯留槽20から枚葉式洗浄装置10に送液されて洗浄に用いられる溶液は、溶液全体の一部であるため、これを加熱装置4で加熱する際の加熱エネルギも溶液全体を加熱する場合に比べて大幅に少なくすることができる。例えば、洗浄液ラインを流れる洗浄液の流量を電解液ラインを流れる流量に対し、2:1とすれば、加熱エネルギは、全量を加熱する場合に比べて略1/3にすることができる。また、1:1の流量比とすれば、略1/4にすることができる。
【0053】
上記実施形態では、洗浄部として枚葉式洗浄装置10を用いたものについて説明した。ただし、本発明としては、洗浄部として被洗浄材を浸漬する洗浄槽によって構成することもできる。図2は、洗浄槽40によって洗浄装置を構成したシステムを示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
洗浄槽40では、収容した洗浄液をさらに加熱するためのヒータ41を備えるものであってもよく、硫酸の濃度調整のために、超純水供給ラインを備えることも可能である。この実施形態においても、洗浄部に対する加熱エネルギを少なくしてランニングコストの低減を図ることができる。
【0054】
また、上記各実施形態では、混合共通路の分流端に溶液貯留槽を設けたが、本発明としては溶液貯留槽を設けることなく各溶液を分流させるものであってもよい。
図3は、図2の形態を変更して溶液貯留槽20を省略したものである。なお、洗浄槽40から分流端に至る洗浄液返流管1aの構成を変更をして、その流域長を確保するように蛇行部1bなどを設けることができる。さらに洗浄液返流管1aを流れる洗浄液の温度を前記実施形態と同様に温度調整器22によって80〜130℃に維持するように構成するのが望ましい。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
図1に示す洗浄システムを用いて以下の条件で洗浄処理を行った。
a)枚葉式洗浄装置への洗浄液温度:170℃
b)溶液貯留槽内洗浄液温度 :100℃
c)洗浄液ライン流量 :8L/min
d)電解液ライン噴射流量 :2L/min
e)電解液ライン貯留槽流量 :4L/min
【0056】
[比較例1]
同じ装置を使用して以下の条件で洗浄処理した。ただし、洗浄液が循環するラインを一つにしているため、従来の運転条件を再現している。
a)枚葉式洗浄機への洗浄液温度:170℃
b)溶液貯留槽内洗浄液温度 :100℃
c)洗浄液ライン流量 :0L/min
d)電解液ライン噴射流量 :10L/min
e)電解液ライン貯留槽流量 :0L/min
【0057】
2つの例における各データを表1に示した。また、いずれの例とも、洗浄後ウエハ洗浄度は次工程に進めることのできるレベルに達していた。しかし、比較例1のシステムでは、加熱に要するエネルギが多く、ランニングコストに劣るものであった。
【0058】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態における洗浄システムを示す全体図である。
【図2】同じく、他の実施形態における洗浄システムを示す全体図である。
【図3】同じく、さらに他の実施形態における洗浄システムを示す全体図である。
【図4】本発明前の洗浄システムを示す全体図である。
【符号の説明】
【0060】
1 洗浄液返流管
2 洗浄液送液管
3 送液ポンプ
4 加熱装置
6 被電解液送液管
7 電解液送液管
7a 送液分岐管
7b 送液分岐管
8 送液ポンプ
9 冷却器
10 洗浄装置
20 溶液貯留槽
21 温度調整器
22 温度調整器
30 電解反応装置
31 電解反応槽
32 電解槽
33 直流電源
40 洗浄槽
100 半導体基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄材を洗浄する洗浄部を介在させて加熱された洗浄液を循環させる洗浄液ラインと、被電解液を通液しつつ電解する電解反応装置を介在させて電解液を循環させる電解液ラインとを有し、前記洗浄液ラインと該電解液ラインとは、上記洗浄部の下流側で分流し、かつその上流側であって前記洗浄部の上流側または下流側で前記電解液の電解反応装置下流側が合流する混合共通ラインを備えることを特徴とする洗浄システム。
【請求項2】
前記電解液ラインは、電解反応装置下流側が分岐して、前記洗浄部の上流側と下流側とで前記洗浄液ラインに合流することを特徴とする請求項1記載の洗浄システム。
【請求項3】
前記洗浄液は、硫酸濃度が8M以上18M未満の濃硫酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄システム。
【請求項4】
前記洗浄液ラインと、前記電解液ラインとにおける流量比が2:1〜1:1であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項5】
前記洗浄部の上流側に洗浄液を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項6】
前記洗浄液ラインにおける洗浄液としての硫酸の加熱温度が100℃以上200℃未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項7】
前記電解反応装置に用いる電極のうち、少なくとも陽極がダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項8】
前記洗浄部が被洗浄材を浸漬する洗浄槽からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項9】
前記洗浄部が被洗浄材に洗浄液を噴霧して洗浄を行う枚葉式洗浄装置であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項10】
前記混合共通ラインの液を80〜130℃に維持する温度調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項11】
前記混合共通ラインの分流端に溶液貯留槽が備えられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項12】
前記電解反応装置の上流側に被電解液を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項13】
前記被洗浄材が半導体基板であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−266495(P2007−266495A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92114(P2006−92114)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】