説明

洗浄乾燥方法及び洗浄乾燥装置

【課題】めっきや化成処理などの被洗浄物品1となる表面処理部品に付着した薬液を除去する物品のすすぎ洗浄において、大量の洗浄液を使用せず、簡易な機構で洗浄と乾燥を同じ工程で行える洗浄乾燥方法及び洗浄乾燥装置を得る。
【解決手段】被洗浄物品1をなす表面処理部品に付着した汚れまたは薬液を除去する表面処理部品の洗浄において、洗浄液を大気圧下では沸点以上の状態となる加圧過加熱液の状態として、被洗浄物品1に噴射する。被洗浄物品1の表面に保液層8sが形成される隙間G1を介して保液部材7を配置している。噴射された洗浄液の蒸気が凝縮した凝縮液8を被洗浄物品1と保液部材7との間の隙間G1に保持しながら、噴射を継続する。隙間G1内の保液層8sでの凝縮熱により、洗浄液の噴射終了後に、凝縮液8を被洗浄物品1の表面において乾燥させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物品の洗浄乾燥方法及び洗浄乾燥装置に関し、特に、めっきや化成処理などの表面処理を施した表面処理部品の洗浄乾燥方法及び該方法の実施に使用する洗浄乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、めっきや化成処理などの表面処理において、薬液を数段の水で浸漬やシャワーにより洗浄するすすぎ処理(水洗)が行われる。表面処理における水洗では、付着した薬液を希釈除去するため、大量の水洗水を使用し、その排水処理が必要となる。このため、水洗水量を抑制するために、水洗槽を増やすことや、特許文献1にあるよう、減圧蒸留装置を設置して、無排水化する方法などが開発されている。
【0003】
また、非公知の先願となる特許文献2、及び特許文献3では、加圧過加熱洗浄液を被洗浄物品へ噴射することで、短時間で洗浄乾燥が行える小型洗浄乾燥装置および方法を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭62−48756号公報
【特許文献2】特願2009−162797号
【特許文献3】特願2010−094897号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術によると、減圧蒸留装置を設置して無排水化するために、設備のコストアップや設備が大型化してしまうという問題がある。一方、上記先願の技術では、加圧過加熱洗浄液を被洗浄物品へ噴射することで、短時間で洗浄乾燥が行える小型洗浄乾燥方法を開発したが、エレクトロニクス部品や機械加工部品に付着した油脂や異物などの汚れを除去する物理的洗浄に対しては有効であるものの、表面処理部品における水洗に要求されるレベルの洗浄品質を得ることはできない。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、被洗浄物品のすすぎ洗浄において、大量の洗浄液を使用せず、簡易な機構で洗浄と乾燥を同じ工程で行える洗浄乾燥方法及び洗浄乾燥装置を得ることを目的とする。
【0007】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、被洗浄物品に隙間を介して保液部材を配置する配置工程、配置工程において配置された被洗浄物品に洗浄液を大気圧下では沸点以上となる加圧過加熱状態として噴射しながら洗浄液の凝縮液を隙間に保液させる噴射処理を継続することにより被洗浄物品に付着した汚れまたは薬液を除去する洗浄工程、及び洗浄工程を経た被洗浄物品を凝縮液の凝縮熱により乾燥させる乾燥工程を備えることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、被洗浄物品に洗浄液を大気圧下では沸点以上となる加圧過加熱状態として噴射しながら洗浄液の凝縮液を隙間に保持させる噴射処理を継続することにより被洗浄物品に付着した汚れまたは薬液を除去するから、被洗浄物品と保液部材の間の隙間に保液された凝縮液内に金属イオンや汚れが解け出す化学的な洗浄時間が長くなり洗浄力が向上する。かつ、隙間の中で噴射された洗浄液の蒸気の凝縮が連続して行なわれるから、凝縮熱で被洗浄物品を加熱することが出来る。そのため噴射終了後にすばやく被洗浄物品を乾燥させることが出来る。また、洗浄力の向上により、大量の洗浄液を使用することがなくなる。また、洗浄と乾燥を同じ工程で行える被洗浄物品の洗浄乾燥方法を得ることが出来る。
【0010】
請求項2に記載の発明では、隙間の長手方向に沿って洗浄液が直接隙間内に浸入する方向に洗浄液を噴射することを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、隙間の長手方向に沿って洗浄液が直接隙間内に浸入する方向に洗浄液を噴射するから、隙間内を通過する洗浄液の速度を高めることが出来、洗浄液を汚れまたは薬液に高速で衝突させることが出来るから、物理的な洗浄効果を高めることが出来る。
【0012】
請求項3に記載の発明では、隙間の大きさは、隙間に表面張力で洗浄液が保液される大きさであることを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、表面張力で洗浄液が隙間内に保液されるから、乾燥するまで充分な量の洗浄液が被洗浄物品の表面に保液され、化学的な洗浄時間が長くなり洗浄力が向上する。
【0014】
請求項4に記載の発明では、被洗浄物品を保液部材で挟み込んで被洗浄物品の両側に隙間を形成していることを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、被洗浄物品を保液部材で挟み込んで被洗浄物品の両側に隙間を形成しているから、被洗浄物品の両側において洗浄効果を高めることが出来る。
【0016】
請求項5に記載の発明では、被洗浄物品に洗浄液を大気圧下では沸点以上となる加圧過加熱状態で噴射する噴射手段、噴射手段で噴射された洗浄液の凝縮液を保持させるように被洗浄物品との間に隙間を形成する保持部材、及び噴射手段による噴射を経た被洗浄物品を空気中に保持して、凝縮液の凝縮熱により乾燥させる乾燥手段を備えることを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、被洗浄物品に隣接して保液部材を配置することで、噴射した洗浄液の凝縮液を被洗浄物品の表面と保液部材との間の隙間に保持させることが出来るから、この隙間に、洗浄液を大気圧下では沸点以上の状態となる加圧過加熱液の状態として噴射することで、隙間内で連続して凝縮が発生する。これにより、被洗浄物品に対して、洗浄液の衝突による物理的な洗浄作用及び洗浄液が隙間に保液されることによる化学的な洗浄作用を行なわせることが出来、高レベルの洗浄品質を得ることが出来る洗浄乾燥装置を提供できる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、保液部材は、表面に洗浄液を保持するための凹凸面または多孔質面が形成された部材からなることを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、保液部材が、表面に凹凸面または多孔質面が形成された部材からなるから、表面張力で洗浄液を隙間内に保液し易くすることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、保液部材は、隙間を形成する側の面にペルチェ素子で冷却される冷却面を有し、該冷却面と反対側の面に放熱面を有していることを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、隙間を形成する側の面がペルチェ素子で冷却さる冷却面を成し、該冷却面と反対側の面が放熱面として形成されているから、洗浄液の蒸気が凝縮し易い洗浄乾燥装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に使用する表面処理部品の洗浄乾燥装置の全体構成図である。
【図2】上記実施形態における保液部材部分の正面図である。
【図3】上記実施形態における保液部材部分の右側面図である。
【図4】上記実施形態における保液部材部分の平面図である。
【図5】上記実施形態において凝縮液の層が形成された状態を示す保液部材の右側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に関する保液部材を成す保液ブロックの正面図である。
【図7】上記第2実施形態における保液部材部分の右側面図である。
【図8】上記第2実施形態における保液部材部分の平面図である。
【図9】本発明の第3実施形態における保液部材の正面図である。
【図10】本発明の第4実施形態を示す、ペルチェ素子を設けた保液部材部分の右側面図である。
【図11】上記第4実施形態におけるペルチェ素子の作動原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0024】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合わせばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1乃至図5を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に使用する表面処理部品の洗浄乾燥装置の全体構成図である。また、図2は保液部材を成す保液ブロックの正面図、図3は、図2の保液部材と被洗浄部品となる表面処理部品との右側面図、図4は、図2の保液部材部分の平面図である。
【0026】
図1において、電気部品の導電性ターミナルをなすプレート状金属片からなる被洗浄部品1をなす表面処理物品を、ハンガー式の搬送コンベア80で把持して、連続的に矢印A1、A2に沿って図1中左から右に搬送する。搬送コンベア80は、搬送手段を構成すると共に、噴射ノズル5による噴射を経た被洗浄物品1を空気中に保持して、凝縮液の凝縮熱により乾燥させる乾燥手段をも構成する。
【0027】
このように、表面処理などの薬液が付着した被洗浄部品1は、模式的に示された搬送コンベア80で、洗浄乾燥工程の位置へ順次送られる。洗浄乾燥工程の位置には、洗浄液を貯液する貯液槽2が備えられている。貯液槽2内には、洗浄液をなす水あるいは含水アルコールが貯液されている。
【0028】
貯液槽2から加圧手段としての圧送ポンプ3により、配管6を通し、洗浄液は噴射手段としての噴射ノズル5へ圧送される。
【0029】
圧送途中に加熱手段としての熱交換器4が設けられ、洗浄液の大気圧沸点(飽和温度)以上の過加熱液、望ましくはその圧力における沸点近くの過加熱液の状態まで加熱している。その加圧過加熱液を、噴射ノズル5から大気圧下にある被洗浄部品1に噴射できるように構成されている。
【0030】
洗浄乾燥工程を行なう位置には、被洗浄部品1に隣接した位置に保液部材7を成す凝縮液保液ブロックが設置されている。この保液部材7は、厚さ10mmの2枚の金属板からなる。図2〜図4に、保液部材7の構成例を示す。図2は保液部材7の正面図である。図2において、保液部材7の向こう側に、破線で示す被洗浄部品1が配置されている。そして、保液部材7は、被洗浄物品1の少なくとも3方向を完全に覆っている。
【0031】
図3は、右側面から見た一対の保液部材7a、7bと、被洗浄部品1を示している。図4は、平面図であり、一対の保液部材7a、7bと、被洗浄部品1が図示されている。図3のように、プレート状の被洗浄部品1が一対の保液部材7a、7bにより、隙間G1を介して挟まれている。そして隙間G1の大きさは、隙間G1に表面張力で洗浄液が保液される大きさである。これにより、乾燥するまで充分な量の洗浄液が被洗浄物品1の表面に保液され、化学的な洗浄時間が長くなり洗浄力が向上する。
【0032】
水あるいは含水アルコールを、図1の圧送ポンプ3により加圧後、加熱手段としての熱交換器4で過熱し、大気圧沸点(飽和温度)以上の過加熱液、望ましくは加圧時の沸点近くの加圧過加熱液の状態とする。
【0033】
この加圧過加熱液は、配管6を介して噴射ノズル5に導かれる。そして、噴射ノズル5から加圧過加熱液を大気圧下にある被洗浄部品に向けて噴射させる。R1は噴射の領域を示している。この噴射の領域R1は、保持部材7の外周壁までを覆っている。9は廃液弁である。
【0034】
図3の隙間G1の長手方向(図3上下方向)に沿って洗浄液が直接隙間G1内に浸入する方向に洗浄液を噴射する。これによれば、隙間G1内を通過する洗浄液の速度を高めることが出来、洗浄液を汚れまたは薬液に高速で衝突させることが出来るから、物理的な洗浄効果を高めることが出来る。
【0035】
噴射ノズル5から噴射された洗浄液は、瞬時に気化膨張し、膨張蒸気は被洗浄部品1と保液部材7の隙間G1を通過するとともに、この隙間G1に、図5のように凝縮液8(個々の左右の凝縮液を8a、8bで示す)の保液層8sが形成される。なお、図5は第1実施形態において凝縮液8の層である保液層8sが形成された状態を示す保液部材7部分の右側面図である。
【0036】
保液部材7は、熱伝導性の良い金属で製作されている。図3に示すように、少なくとも被洗浄部品1の汚れを除去する側面において被洗浄部品1と保持部材7とが隙間G1を介して対面している。隙間G1は、表面張力で凝縮液8(図5)が隙間G1に保持できる程度の間隔とし、1mm程度に設定されている。
【0037】
また、図1の噴射ノズル5による噴射を設定された時間継続することにより被洗浄物品1に付着した汚れまたは薬液を除去する洗浄制御手段となる制御装置50からの電気信号で噴射ノズル5の噴射タイミング及び噴射時間が制御されている。
【0038】
(第1実施形態における洗浄工程)
次に、洗浄工程について説明する。表面処理が終わり薬液が付着した被洗浄部品1を、ハンガー式の搬送コンベア80で把持して、連続的に図1の矢印A1,A2に沿って左から右に搬送コンベア80で搬送する。被洗浄部品1は、洗浄乾燥工程の位置へ順次送られる。洗浄乾燥工程の位置には、洗浄液を貯液する貯液槽2と噴射ノズル5とが備えられている。
【0039】
圧送ポンプ3を回転させ、配管6を通し、貯液槽2内の洗浄液は、噴射ノズル5へ圧送される。圧送途中に加熱手段としての熱交換器4により、洗浄液の大気圧沸点(飽和温度)以上の過加熱液、望ましくはその圧力における沸点近くの過加熱液の状態まで加熱している。
【0040】
一例として加圧圧力は0.3MPa、加熱温度は130℃である。その加圧過加熱液を、噴射ノズル5から大気圧下にある被洗浄部品1に領域R1のように所定の広がり角で噴射する。噴射された加圧過加熱液は、瞬時にあるいは被洗浄部品1の表面に到達して気化膨張する。その膨張によるエネルギーで、被洗浄部品1の表面に付着した薬液を瞬時に払拭除去する。
【0041】
気化膨張した加圧過加熱液のうち、被洗浄部品1の表面の飽和蒸気により、被洗浄物品1の表面には、図5のように凝縮液8a、8bが形成される。つまり、図3及び図5の左側の保液部材7aと被洗浄部品1の隙間G1には左側の凝縮液8aが保液され、右側の保液部材7bと被洗浄部品1の隙間G1には右側の凝縮液8bが保液層8sを夫々形成して保持される。加圧過加熱液の連続した噴射にともない、凝縮液8a、8bの水量は増大する。
【0042】
凝縮液8の水量が増大すると、被洗浄部品1の表面より凝縮液8a、8bは重力方向へ流れ落ちるが、この際に、保液部材7を成す左右の保液部材7a、7bは、凝縮液8a、8bを被洗浄部品1の表面に、表面張力によって、一定量保持させる。その結果、保液部材7の表面と被洗浄部品1の表面との間に保液層8sが連続的に維持される。
【0043】
加圧過加熱液の連続した噴射にともない、保液層8s中にあらたに凝縮液8a、8bが追加され、清浄な凝縮液8a、8bが保液層8sへ供給される状態となる。この結果、空中に浮かんだ保液タンクとも言える保液層8sに対して局所的に被洗浄部品1の表面に付着している薬液をすすぐ作用を発現させることが出来る。このすすぎ処理において、イオン化した物質が水に溶ける等の化学的洗浄作用が発揮される。
【0044】
さらに、加圧過加熱液を噴射し続け、噴射時間が設定された時間(1分程度)となると、凝縮潜熱により、被洗浄部品1の表面温度、及び保液層8s内の凝縮液8a、8bの温度が上昇する。この温度上昇によって、噴射終了後の被洗浄部品1の表面には、凝縮液8a、8bの形成がなくなり、最終的に被洗浄部品1の表面は乾燥した状態となって、搬送コンベア80で次の工程に送られる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。第1実施形態において、保液部材7の表面は平坦であったが、この第2実施形態は保液部材7の表面に凹凸面を形成したものである。
【0046】
図6は、第2実施形態に関する保液部材7を成す保液ブロックの正面図、図7は、図6の保液部材7部分の右側面図、図8は、図6の保液部材7部分の平面図である。図7において、保液部材7は熱伝導性の良い金属で製作されており、少なくとも被洗浄部品1の汚れを除去する側面において被洗浄部品1と隙間G1を介して対面している。
【0047】
隙間G1は、表面張力で凝縮液(図5の凝縮液8相当)が隙間G1間に保持される程度の間隔とし、1mm程度である。また、凸部相互間の間隔G2(図7)も1mm程度としている。このような凹凸面はパンチ加工で複数の孔を打ち抜いた多孔板(パンチングプレート)7pを保液部材7の表面に接合することで形成することが出来る。また、鍛造で保液部材7の表面に形成することも出来る。
【0048】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図9は本発明の第3実施形態を示す保液部材7を成す保液ブロックの正面図である。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。第2実施形態ではパンチングプレートを使用したが、この第3実施形態は、図9の破線で示すように、チェッカープレートまたは金網からなる凹凸形成部材10を保液部材7の表面に接合して凹凸面または多孔質面を形成したものである。このように、凹凸形成部材10を保液部材7の表面に接合することで、凝縮液(8)の保液力(保持力)を高めることが出来る。
【0049】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。上述した実施形態と異なる特徴部分を説明する。図10は本発明の第4実施形態を示す、ペルチェ素子を設けた保液部材7の右側面図である。上記各実施形態では、保液部材7として単なる金属板のみを使用したが、この第4実施形態では、図10に示すように、ペルチェ素子11a、11b(2種類の金属の接合部に電流を流すと、片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した半導体素子)を利用して積極的に保液部材7を冷却し、凝縮液8の保液を促せたものである。
【0050】
一対の保液部材7a、7bの中間にペルチェ素子11a、11bが配設されている。図11は、第4実施形態におけるペルチェ素子11a、11bの一方11aの作動原理を示す説明図である。
【0051】
ペルチェ素子11aは、夫々P型半導体P12とN型半導体N12が多数交互に配設され、P型半導体P12の吸熱側(図10の凝縮液8aに近い側)から発熱側に直流電流が流れ、N型半導体N12の発熱側から吸熱側に電流が流れて熱が移動し、凝縮液8aが形成される側の保液部材7の表面を冷却している。図11の13、14は金属プレートからなる電極である。
【0052】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の各実施形態において、保液部材の表面または保液部材に接合した部材の凹凸面もしくは多孔質面の表面に撥水性のコーティング膜を形成しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 被洗浄部品
2 貯液槽
3 圧送ポンプ
4 熱交換器
5 噴射ノズル(噴射手段)
6 配管
7、7a、7b 保液部材
7p 多孔質面を形成する多孔板
8、8a、8b 凝縮液
8s 保液層
10 凹凸面を形成する凹凸形成部材
11a、11b ペルチェ素子
13、14 金属プレートからなる電極
50 制御装置(洗浄制御手段)
80 搬送コンベア(乾燥手段)
N12 N型半導体
G1 隙間
G2 凸部相互間の間隔
P12 P型半導体
R1 噴射の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物品に隙間を介して保液部材を配置する配置工程、
配置工程において配置された被洗浄物品に洗浄液を大気圧下では沸点以上となる加圧過加熱状態として噴射しながら前記洗浄液の凝縮液を前記隙間に保液させる噴射処理を継続することにより前記被洗浄物品に付着した汚れまたは薬液を除去する洗浄工程、及び
洗浄工程を経た前記被洗浄物品を前記凝縮液の凝縮熱により乾燥させる乾燥工程を備えることを特徴とする洗浄乾燥方法。
【請求項2】
前記隙間の長手方向に沿って前記洗浄液が直接隙間内に浸入する方向に前記洗浄液を噴射することを特徴とする請求項1に記載の洗浄乾燥方法。
【請求項3】
前記隙間の大きさは、隙間に表面張力で前記洗浄液が保液される大きさであることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄乾燥方法。
【請求項4】
前記被洗浄物品を前記保液部材で挟み込んで前記被洗浄物品の両側に前記隙間を形成していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の洗浄乾燥方法。
【請求項5】
被洗浄物品に洗浄液を大気圧下では沸点以上となる加圧過加熱状態で噴射する噴射手段、
前記噴射手段で噴射された前記洗浄液の凝縮液を保持させるように前記被洗浄物品との間に隙間を形成する保持部材、及び
前記噴射手段による噴射を経た前記被洗浄物品を空気中に保持して、前記凝縮液の凝縮熱により乾燥させる乾燥手段を備えることを特徴とする洗浄乾燥装置。
【請求項6】
前記保液部材は、表面に洗浄液を保持するための凹凸面または多孔質面が形成された部材からなることを特徴とする請求項5に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項7】
前記保液部材は、前記隙間を形成する側の面にペルチェ素子で冷却される冷却面を有し、該冷却面と反対側の面に放熱面を有していることを特徴とする請求項5または6に記載の洗浄乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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