説明

洗浄機能を備える液滴吐出装置及び液滴吐出装置の洗浄方法

【課題】
大きなスペースを必要とせず、自身に大きな負担をかけることなく、さらには短時間か
つ容易に液滴吐出ノズルを洗浄することができる液滴吐出装置及びその洗浄方法を提供す
ること。
【解決手段】
吐出液の蒸発を防ぐために吐出ヘッドに装着するキャップに、超音波振動子を取り付け
る。吐出ノズル内及びキャップ内を液体で満たした状態で、吐出ノズルにキャップを覆設
し、超音波振動子から超音波を発振して、吐出ノズル及びノズルプレートを洗浄する。液
滴を吐出させる圧電素子から超音波を発振して、好ましくは超音波振動子からの超音波と
共振させて、洗浄効果を高めることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄機能を備える液滴吐出装置及び液滴吐出装置の洗浄方法に関する。特に
、本発明は、インクジェット装置に使用される吐出ノズルのノズル孔内部及びノズルプレ
ートを洗浄する機能を備える液滴吐出装置及びその洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置は、通常、液滴吐出ヘッドに設けられた複数の液滴吐出ノズルを通じて、
圧電素子の変動によりインク等の所望の液体を対象物に吐出する。液滴吐出装置から吐出
される液体は、通常、顔料等の所望成分を溶媒に溶解又は分散させたものである。このた
め、液滴吐出ノズルを不使用のまま長時間露出させておくと、吐出液の溶媒が蒸発し、ノ
ズル孔内及びノズルプレート上において、顔料等の成分が増粘化あるいは固化してしまう
。また、液滴吐出装置を作動させていたとしても、すべての吐出ノズルから常時吐出液が
吐出されているわけではない。このため、長時間吐出液が流通していない、又は流通頻度
の少ないノズル孔内及びノズルプレート上においては、吐出液の固化又は増粘化が起きて
しまう。このようにして生じた吐出液の固化物は、ノズル詰まり及び液滴の飛行曲がりを
引き起こす。
【0003】
このため、液滴吐出装置は、通常、吐出ノズル口からの溶媒の蒸発防止、すなわち吐出
液の固化及び増粘化の防止、吐出ノズルへの塵埃の付着防止、ノズルプレートに付着した
吐出液の除去等を目的として、液滴吐出ノズル(液滴吐出ヘッド面)を覆うキャップを備
えている(例えば、特許文献1参照)。このキャップは、通常、液滴吐出装置の運転停止
時において、自動的に吐出ノズルに装着され、溶媒の蒸発及び塵埃の付着を防止する。ま
た、キャップ内に吸収体を配置し、キャップ装着時にノズルプレートに付着した吐出液を
吸い取り除去することもできる。
【0004】
しかしながら、液滴吐出装置の作動時又は長期間の不使用時においては、溶媒の蒸発を
抑えることはできず、吐出液の固化物の生成を完全に防止することは困難である。液滴吐
出ノズル孔内又はノズルプレート上に生成した吐出液の固化物を除去する方法としては、
例えば、固化物をその主溶媒に浸漬して溶解させる方法がある。別の方法としては、特許
文献1のように、キャップに吸引装置を接続し、吐出ノズルに付着した吐出液の固化物又
は増粘化物を吸引除去する方法、又は吐出液又はその主溶媒を吐出ノズルを通じて吸引し
て、固化物又は増粘化物を溶解又は剥離させる方法がある。
【0005】
また、吐出ノズルを洗浄する装置として、超音波を使用する装置が知られている。例え
ば、特許文献2に記載の洗浄装置においては、超音波振動子の振動板上に供給した水滴に
、インクジェットノズルのノズル口を接触させ、超音波振動子により振動板を加振してノ
ズル孔の洗浄を行っている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−287374号公報
【特許文献2】特開平7−329310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液滴吐出装置の吐出ノズルは微細であり、通常複数個設置されているので、吐出ノズル
に付着した吐出液の固化物の除去を手動で一つ一つ行うことは困難であり、また効率も悪
い。したがって、吐出ノズルに付着した固化物の除去は、先に述べた方法のように吐出液
自体やその主溶媒を使用して固化物を除去することが好ましい。
【0008】
しかしながら、固化物を吐出液又は主溶媒に浸漬して溶解させる方法では、すべての固
化物を溶解させるためには多くの時間を要し、効率が悪い。また、溶解性の悪い固化物は
浸漬しただけでは完全に除去することはできない。
【0009】
また、吐出液又は主溶媒を吐出口から吸引する方法では、吐出液又は溶媒を大量に消費
するので、コスト面において問題がある。また、溶解性の悪い固化物は、吸引したとして
も簡単には溶解又は剥離できない。
【0010】
超音波は、固化物の洗浄に有用であるが、特許文献2に記載の洗浄装置のように、超音
波洗浄装置を液滴吐出装置に新たに設けることは、液滴吐出装置を大掛かりにするので、
好ましくない。また、特許文献2に記載の洗浄装置においては、超音波洗浄に使用する水
が非常に少量なので、超音波の反射等によって装置自身にかかる負荷が大きく、装置が破
損するおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、大きなスペースを必要とせず、自身に大きな負担をかけることなく、
さらには短時間かつ容易に液滴吐出ノズルを洗浄することができる液滴吐出装置及びその
洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、液滴吐出装置に通常具備されている構成要素のキャップを液体槽かつ超音波
発信源として活用することにより、超音波洗浄機能を備える液滴吐出装置の省スペース化
及び液滴吐出ノズル洗浄の効率化を達成した。
【0013】
本発明の第1の視点の基本形態によれば、液滴を吐出する吐出ノズルと、吐出ノズルの
吐出口に覆設するキャップと、を有し、キャップは超音波振動子を備える液滴吐出装置を
提供する。
【0014】
第1視点の基本形態の好ましい形態によれば、本発明の液滴吐出装置は、吐出ノズルを
複数備える吐出ヘッドを有し、キャップは、吐出ノズルの複数のノズル口を覆設可能な大
きさであり、吐出ヘッドに当接する部分は可撓性を有する。
【0015】
上記各形態の好ましい形態によれば、本発明の液滴吐出装置は、吐出ノズルより液滴を
吐出させる手段とし、超音波を発振可能な圧電素子を備える。
【0016】
上記各形態の好ましい形態によれば、本発明の液滴吐出装置は、キャップ内の凹部に液
体を充填するキャップ液供給装置及び液体を凹部から吸引する吸引装置を備える。
【0017】
上記各形態の好ましい形態によれば、液体は、吐出ノズルに付着した付着物を溶解可能
な液体である。
【0018】
上記各形態の好ましい形態によれば、キャップは、液体を加熱する加熱装置を備える。
【0019】
本発明の第2の視点の基本形態によれば、液滴を吐出する吐出ノズルの吐出口に覆設す
るキャップの凹部に液体が充填され、かつキャップが吐出ノズルに覆設された状態となる
ように洗浄準備する洗浄準備工程と、キャップに配設した超音波振動子から超音波を発振
して、吐出ノズルを洗浄する発振・洗浄工程と、を含む液滴吐出装置の洗浄方法を提供す
る。
【0020】
上記基本形態の好ましい形態によれば、本発明の液滴吐出装置の洗浄方法は、発振・洗
浄工程の間に、圧電素子を振動させる工程をさらに含む。
【0021】
上記形態の好ましい形態によれば、本発明の液滴吐出装置の洗浄方法は、超音波振動子
から発振された超音波と圧電素子から発振された超音波とを共振させる工程をさらに含む

【0022】
上記各形態の好ましい形態によれば、洗浄準備工程は、凹部に液体を充填する充填工程
と、充填工程後に、キャップを吐出ノズルに覆設する覆設工程と、を含む。別の好ましい
形態によれば、洗浄準備工程は、キャップを吐出ノズルに覆設する覆設工程と、覆設工程
後に、凹部に液体を充填する充填工程と、を含む。
【0023】
上記各形態の好ましい形態によれば、洗浄準備工程は、吐出ノズルに液体を供給する液
供給タンクの液面位置を、吐出ノズル孔内の液体表面の位置に対して相対的に高くするこ
とにより、吐出ノズルの少なくとも吐出口まで、吐出ノズル孔内を液体で満たす工程を含
む。別の好ましい形態によれば、洗浄準備工程は、吐出ノズル孔内の液体表面の位置を、
吐出ノズルに液体を供給する吐出液タンクの液面位置に対して相対的に低くすることによ
り、吐出ノズルの少なくとも吐出口まで、吐出ノズル孔内を液体で満たす工程を含む。
【0024】
上記各形態の好ましい形態によれば、本発明の液滴吐出装置の洗浄方法は、発振・洗浄
工程後に、少なくとも吐出ノズル内及びキャップ内の液体を吸引除去する工程をさらに含
む。
【0025】
上記各形態の好ましい形態によれば、本発明の液滴吐出装置の洗浄方法は、液体として
、吐出ノズルに付着した付着物を溶解可能な液体を使用する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の装置及び方法によれば、超音波を用いて洗浄するので、溶媒等による浸漬又は
吸引のみでは容易に溶解又は剥離できない固化物及び付着物であっても容易に除去するこ
とができる。また、液滴を吐出させる圧電素子も共振させることで、小さなエネルギーで
洗浄効果を高めることができる。さらに、液滴吐出ヘッドを覆うキャップを利用して吐出
ノズルを洗浄するので、ノズル孔内部とノズルプレート面とを同時に洗浄することができ
る。また、吸引洗浄のようには吐出液又は溶媒を大量に消費しないので、洗浄費用及び廃
棄物を削減することができる。
【0027】
さらに、本発明の装置によれば、吐出ノズル洗浄専用の装置を別途設けるのではなく、
液滴吐出装置が通常有する構成及び部品を活用するので、大型化させずに吐出ノズルの洗
浄機能を液滴吐出装置に具備させることができる。キャップ内に液体を充填するので、超
音波振動子等にかける負担を少なくすることができ、かつ超音波洗浄を効率良く行うこと
ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の液滴吐出装置において
、キャップを覆設した液滴吐出ヘッド部分の断面模式図である。キャップ4は、液滴吐出
ノズル2における吐出液体の溶媒の蒸発及び塵埃の付着を防止するために、液滴吐出装置
の運転停止時に液滴吐出ヘッド1のカバーとして使用されるものである。吐出ヘッド1は
、複数の吐出ノズル2を有しており、キャップは、1つの吐出ヘッド1、すなわち、吐出
ヘッド1に配置されている複数の吐出ノズル2を覆うことができるものである。キャップ
4の大きさ、数は、吐出ヘッド1の大きさ、吐出ノズル2の数に応じて適宜設定すること
ができる。キャップ4の材質は、超音波を伝播可能であり、かつ液体を保持可能なもので
あればいずれのものでも使用可能であり、例えばステンレス鋼、プラスチック樹脂などを
使用することができる。
【0029】
吐出ヘッド1面と当接するキャップ4のキャップ端部4cには、弾性材料からなるパッ
キン3が配設されている。パッキン3は、通常時においては、キャップ4内外の気体の流
通をなくして溶媒の蒸発を防止し、ノズル洗浄時においては、キャップ4外への液体の漏
出を防止する。パッキン3の材質は、上記機能を発揮することができるものであればいず
れのものでもよいが、ゴム、ウレタン等、弾性を有し、かつキャップに充填する液体に対
し耐性を有しているものが好ましい。また、キャップ4にパッキン3を設ける代わりに、
キャップ周縁部4bを弾性材料から作製してもよい。
【0030】
超音波振動子5は、キャップ4の外面に配置する。好ましくは、超音波振動子5は、キ
ャップ4のキャップ底部4aに配置する。この配置によれば、発振された超音波を吐出ノ
ズル2孔内に直線的に伝播させることができる。超音波振動子5は、超音波洗浄装置等に
使用可能なものであればいずれのものでもよいが、キャップ4に取り付けるため平板状で
あることが好ましい。1つのキャップに取り付ける超音波振動子5の数及び大きさは、吐
出ヘッドの大きさ、吐出ノズルの配置、数等の条件に応じて、適宜決定する。また、キャ
ップに充填する液体の種類、キャップの深さ、固化物(付着物)の種類、固化物の位置等
に応じて、超音波を制御することができるように、好ましくは、超音波振動子の発振周波
数、強度、時間等を制御する超音波振動子の制御装置(不図示)を設ける。
【0031】
本発明の液滴吐出装置には、好ましくは、キャップ4のキャップ凹部4dに液体を供給
するキャップ液供給装置、及び/又はキャップ凹部4d内及び吐出ノズル2内の液体を吸
引する吸引装置を設置する。接続管9、10を介してキャップ液供給装置7及び吸引装置
8をそれぞれキャップ4に接続した模式図を図2に示す。図2に示すキャップ液供給装置
7は、水面差の圧力によってキャップの底部から液体を供給する形態のものである。接続
管9は、キャップ液供給装置7からキャップ4へ液体を導く管であるが、この形態の場合
においては、可撓性を有するものにする。この他の形態としては、キャップの開口から液
体を供給するもの、もしくはポンプ等の送液手段を使用するものでもよく、又は吐出ノズ
ル2に液体を供給する吐出ノズル液供給タンクを利用するものでもよい。吸引装置8は、
吸引ポンプを有し、接続管10を通じて液体を回収する。吸引装置8は、キャップ内及び
吐出ノズル内に十分な負圧をかけられるものが好ましい。
【0032】
また、キャップ4は、洗浄効果を高めるために、キャップ凹部4d内の液体6を加熱す
る加熱装置(不図示)を備えることが好ましい。加熱装置の配置場所は、超音波振動子5
に影響のない箇所であれば、適宜設定できる。加熱装置を設ける代わりに、キャップ液供
給装置7に加熱装置を設けて、適度に加熱した液体6をキャップ凹部4dに供給してもよ
い。
【0033】
次に、液滴吐出装置の洗浄方法について説明する。本発明の洗浄方法においては、まず
キャップ4のキャップ凹部4dに液体6が充填され、かつキャップ4が吐出ノズルに覆設
された状態になるようにする。キャップ4に液体6を充填する充填方法は、上記で説明し
たようなキャップ液供給装置7を用いて、キャップ4の底部4aもしくは周縁部4bから
供給する方法、キャップ4の開口から供給する方法、吐出ノズル液供給タンク(例えば、
吐出液の供給タンク)から吐出ノズル2を通じて供給する方法など種々の方法を選択する
ことができる。キャップ4に充填する液体6は、少なくともキャップ4の端部4c(又は
パッキン3)の最上位まで満たしておく必要がある。好ましくは、液体6は、表面張力を
利用して山盛り状にしておく。これは、キャップ4を吐出ヘッド1に装着した際に、液体
中に気体(気泡)が存在すると超音波によるキャビテーション効果が半減してしまうので
、キャップ4と吐出ヘッド1を合わせた際の気泡の生成を防止するためである。このとき
、液体6はキャップ4からこぼれやすくなっているので、好ましくは、吐出ヘッド1を下
げることによって、吐出ヘッド1にキャップ4を装着するようにする。別の充填方法とし
て、空のキャップ4を吐出ヘッド1に装着した後、液体6をキャップ液供給装置から、又
は吐出ノズル液供給タンクから吐出ノズル2を通じて、キャップ4内に液体6を充填する
こともできる。この場合、キャップ4の周縁部4bもしくは端部4c又はパッキン3に、
キャップ4内の空気を外に逃がす弁等の空気を抜く手段を設ける必要がある。液体6は、
必要に応じ加熱することもできるが、その場合、加熱温度は液体6の沸点よりも低く設定
する。
【0034】
液体6を満たしたキャップ4を吐出ヘッド1に装着する際、又は吐出ヘッド1に装着し
たキャップ4に液体6を供給する際には、吐出ノズル2内も液体6で満たしておくことが
好ましい。図3は、吐出ノズルに覆設したキャップ内が液体で充填された状態における吐
出ノズル孔内の状態を説明するための吐出ノズル部分の断面模式図であり、図4は、接続
管12を介して接続した吐出ノズル2と吐出ノズル2に液体を供給する吐出ノズル液供給
タンク11とを示す図である。ここで、吐出ノズル液供給タンク11は、液滴吐出装置作
動時に、吐出ノズル2に吐出液(例えばインク)を供給する吐出ノズル液供給タンクであ
ってもよく、又は洗浄専用の液体を供給する洗浄液供給タンクであってもよい。液滴吐出
装置の運転停止時、すなわち吐出ノズル内の液体の無加圧時、においては、吐出ノズル2
と通じているノズル液供給タンク11の液面の高さと吐出ノズル2内の液体表面(界面)
(以下、メニスカスという)の高さを相対的に調整し、吐出ノズル2孔内のメニスカスの
高さ(位置)を一定に保つようにしてある。このとき、メニスカスは、図3(a)のよう
に吐出ノズル2孔内の方に半球状の窪みを形成した状態になっている。この状態のまま、
液体6、例えば溶媒、を満たしたキャップ4を押し当てると、メニスカスとノズル口との
間の気体が、図3(b)のように吐出ノズル孔内に閉じ込められるか、又は図3(c)の
ように気泡となって吐出ノズル内部を浮遊することになる。図3(b)の場合では、吐出
ノズル孔内が液体6で満たされていないので、ノズル孔に超音波が伝播されず吐出ノズル
孔内に付着した固化物を除去することができない。一方、図3(c)の場合では、液体中
に気泡が存在するので、超音波がこの気泡で反射されて、キャビテーションが発生しにく
くなり、洗浄効果が半減してしまう。そのため、液体を満たしたキャップ4を装着する前
に、吐出ノズル2孔内を液体6で満たして、メニスカスとノズル口間に存在する気体を排
除しておく必要がある。そこで、図4に示すように、吐出ノズル液供給タンク11の液面
の位置を高くするか、もしくは吐出ノズル2のメニスカスの位置を低くするか、又は両操
作を行うことによって、可撓性を有する接続管12を通じて吐出ノズル2孔内を加圧して
、図3(d)のようにメニスカス(液体表面)を少なくとも吐出ノズル口まで押し下げる
ようにする。図3(d)の状態で、液体6を満たしたキャップ4を装着すれば、図3(e
)のように気泡の発生を防止することができる。
【0035】
キャップ4のキャップ凹部4dに充填する液体6及び吐出ノズル2内の液体6は、吐出
ノズル2の付着物(固化物)に合わせて好適なものを適宜使用することができる。例えば
、液体6として、固化物の元である吐出液自体(例えばインク)、吐出液の主溶媒、固化
物の溶解に好適な溶媒、超音波洗浄用に調整された薬剤等を使用することができる。ここ
で、吐出ノズル2内の液体6とキャップ凹部4dに供給する液体6とは、同一のものでも
よく、又は異なるものにしても良い。吐出ノズル液供給タンク内の液体は、通常時におい
ては、吐出液(例えばインク)になっている。洗浄時において、液供給タンク内の液体を
他の液体(例えば溶媒)と入れ替えたり、又は他の液体を有するタンクに吐出ノズル2を
接続させたりすると、洗浄後に吐出ノズル内等を吐出液で置換する作業が必要になる。そ
こで、例えば、吐出ノズル2内の液体6は吐出液であるが、キャップ4に充填する液体6
は当該吐出液の主溶媒にする、など吐出ノズル2内とキャップ4内の液体を異なるものに
して洗浄を行うことができる。このようにすれば、洗浄後の吐出液による置換作業が省略
できるだけでなく、溶媒を使用するので固化物を溶解しやすくすることができ、また溶媒
より高価な吐出液の消費も最小限に抑えることができる。
【0036】
次に、キャップ4を吐出ヘッド1に装着し、かつキャップ4内を液体6で満たした状態
にしたあと、超音波振動子5から吐出ノズル2へ超音波(20kHz以上)を発振して、
ノズル孔及びノズルプレート上を洗浄する。超音波の周波数及び強度、ならびに照射時間
は、液体6の種類、付着物の種類、量、溶解度、付着場所等により適宜設定する。周波数
を経時的に変化させて洗浄ムラをなくすようにすることもできる。
【0037】
また、本発明においては、超音波振動子5の他に、吐出ノズル2から液滴を吐出させる
ための圧電素子13を振動させることによって、洗浄効果をさらに高めることができる。
図5は、超音波振動子5及び圧電素子13から超音波を発振させた際の吐出ノズル2部分
の断面模式図である。圧電素子13は、振動板14を介して液体6に振動を伝播させる。
圧電素子13から超音波を発生させる場合には、圧電素子13からの超音波とキャップ4
に配設した超音波振動子5からの超音波とが共振するように、各超音波の周波数を調整す
れば、小さなエネルギーでさらに大きな洗浄効果を得ることができる。さらには、共振周
波数を経時的に変化させて、洗浄ムラをなくすこともできる。また、超音波振動子5から
の超音波では洗浄力が弱いところを圧電素子13からの超音波に補足洗浄させるように、
圧電素子13からの超音波の周波数を設定することもできる。さらには、圧電素子13か
らの超音波だけで洗浄することもできる。
【0038】
超音波発振を終了したら、洗浄によって汚染された液体6を吐出ノズル2及びキャップ
4から排出する。液体6の排出は、好ましくは、キャップ4を吐出ヘッド1に装着したま
ま、キャップ4の底部からは吸引によって行う。排出後、吐出ノズル液供給タンクから新
たな液体を供給して、吐出ノズル2内を洗い流してもよい。その後、ワイプするなどして
、ノズルプレート面に付着した液体又は吐出液を除去する。また、キャップ4内に吸収体
を配置して、再度キャップ4を覆設し、ノズルプレートに付着した液体又は吐出液を除去
することもできる。洗浄終了後、キャップ4は、吐出ヘッド1に再装着して、吐出液の溶
媒蒸発の防止手段として使用する。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、本発明が種
々の変更・変形を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の液滴吐出装置の実施形態において、キャップを覆設した吐出ヘッドの断面模式図である。
【図2】本発明の液滴吐出装置において、キャップ液供給装置及び吸引装置を備えた実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の液滴吐出装置の実施形態において、吐出ノズルに覆設したキャップ内が液体で充填された状態における吐出ノズル孔内の状態を説明するための断面模式図である。
【図4】本発明の洗浄方法において、吐出ノズル孔内を液体で満たす方法を説明するための断面模式図である。
【図5】本発明の洗浄方法の一実施形態を示す吐出ノズル部分の断面模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 吐出ヘッド
2 吐出ノズル
3 パッキン
4 キャップ
4a キャップ底部
4b キャップ周縁部
4c キャップ端部
4d キャップ凹部
5 超音波振動子
6 液体
7 キャップ液供給装置
8 吸引装置
9 接続管
10 接続管
11 吐出ノズル液供給タンク
12 接続管
13 圧電素子
14 振動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルの吐出口に覆設するキャップと、を有し

前記キャップは超音波振動子を備える、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記吐出ノズルを複数備える吐出ヘッドを有し、
前記キャップは、前記吐出ノズルの複数のノズル口を覆設可能な大きさであり、前記吐
出ヘッドに当接する部分は可撓性を有する、ことを特徴とする請求項1記載の液滴吐出装
置。
【請求項3】
前記吐出ノズルより液滴を吐出させる手段とし、超音波を発振可能な圧電素子を備える
、ことを特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記キャップ内の凹部に液体を充填する液供給装置及び前記液体を前記凹部から吸引す
る吸引装置を備える、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出装
置。
【請求項5】
前記液体は、前記吐出ノズルに付着した付着物を溶解可能な液体である、ことを特徴と
する請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記キャップは、前記液体を加熱する加熱装置を備える、ことを特徴とする請求項1〜
5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
液滴を吐出する吐出ノズルの吐出口に覆設するキャップの凹部に液体が充填され、かつ
前記キャップが吐出ノズルに覆設された状態となるように洗浄準備する洗浄準備工程と、
前記キャップに配設した超音波振動子から超音波を発振して、前記吐出ノズルを洗浄す
る発振・洗浄工程と、
を含むことを特徴とする液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項8】
前記発振・洗浄工程の間に、圧電素子を振動させる工程をさらに含む、ことを特徴とす
る請求項7記載の液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項9】
前記超音波振動子から発振された超音波と前記圧電素子から発振された超音波とを共振
させる工程をさらに含む、ことを特徴とする請求項8記載の液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項10】
前記洗浄準備工程は、
前記凹部に液体を充填する充填工程と、
前記充填工程後に、前記キャップを吐出ノズルに覆設する覆設工程と、
を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項11】
前記洗浄準備工程は、
前記キャップを吐出ノズルに覆設する覆設工程と、
前記覆設工程後に、前記凹部に液体を充填する充填工程と、
を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄準備工程は、
前記吐出ノズルに液体を供給する液供給タンクの液面位置を、前記吐出ノズル孔内の前
記液体表面の位置に対して相対的に高くすることにより、前記吐出ノズルの少なくとも吐
出口まで、前記吐出ノズル孔内を前記液体で満たす工程を含む、ことを特徴とする請求項
7〜11のいずれか一項に記載の液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項13】
前記洗浄準備工程は、
前記吐出ノズル孔内の液体表面の位置を、前記吐出ノズルに前記液体を供給する吐出液
タンクの液面位置に対して相対的に低くすることにより、前記吐出ノズルの少なくとも吐
出口まで、前記吐出ノズル孔内を前記液体で満たす工程を含む、ことを特徴とする請求項
7〜11のいずれか一項に記載の液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項14】
前記発振・洗浄工程後に、
少なくとも吐出ノズル内及びキャップ内の液体を吸引除去する工程をさらに含む、こと
を特徴とする請求項7〜13のいずれか一項に記載の液滴吐出装置の洗浄方法。
【請求項15】
前記液体として、前記吐出ノズルに付着した付着物を溶解可能な液体を使用する、こと
を特徴とする請求項7〜14のいずれか一項に記載の液滴吐出装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−347000(P2006−347000A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176024(P2005−176024)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】