説明

洗浄水噴射装置

【課題】高い洗浄力を有しながら節水効果も有する気液混合体を噴射させる洗浄水噴射装置を提供する。
【解決手段】圧縮空気9を流動させるための第1の中空部3を備えた第1の筒体2と、この第1の筒体2を,第2の中空部5を備えて収容する第2の筒体4と、第1の筒体2の外側面2aと第2の筒体4の内側面4aとの間に形成される水密な空隙6と、第2の筒体4の側面を貫通して形成され空隙6に洗浄水10を供給する洗浄水供給口4bと、第1の筒体2の側面を貫通して形成され空隙6に供給された洗浄水10を第1の中空部3内に導入して圧縮空気9と混合させて気液混合体11を生成させる複数の洗浄水導入口2bと、第1の筒体2の端部に形成される導出口2dとを有し、複数の洗浄水導入口2bは,第1の筒体2の内側面において互いに対向して配置されることがなく、かつ、第1の筒体2の中心軸の周囲に回転対称に配置される洗浄水噴射装置1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に食器洗浄等に用いられる圧縮空気と水からなる気液混合体を形成するための洗浄水噴射装置に関し、特に、従来の水道栓からの吐水に圧縮空気を付加するだけで、高い洗浄力を有しつつ節水効果も有する気液混合体を噴射させることができる洗浄水噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道の蛇口から流出する水を節約するために節水コマが用いられており、この節水コマとしては例えば、オリフィスを使用した物がある。
また、別の節水の手段としては、少ない水量の水に空気を混入させて泡状に広げ、見た目の水量を多く見せつつ、洗浄等を効率よく行うための泡沫形成器が用いられる場合もある。
【0003】
より具体的には、特許文献1には「節水アダプタ」という名称で、水道の蛇口等に取り付けられて、この蛇口からの水を節約するために使用する節水アダプタに関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明では、水量が少ないとオリフィスを通過した流水の速度が上昇せず、泡沫網で十分に空気を混入することが出来ない。このため、吐出口から少量の水が糸状に流出するだけとなり、洗浄力を向上させることが難しかった。
【0004】
また、特許文献2には「泡沫拡散ノズル」という名称で、水道の蛇口等に取り付けられ、この蛇口から流出する水を節約するために用いられる泡沫拡散ノズルに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明では、オリフィス部材を2段に重ねて配置し、両オリフィス部材の間に円錐状の空気調整室を設けることで、少ない水量でも泡沫水を形成できるようになっているが、水量を5.0L/min未満にした場合は、泡沫水を形成することが出来ず、洗浄効果が失われる恐れがあった。
【0005】
上述のような特許文献1,2に開示される発明では、洗浄水を節水しようとすると、洗浄力の低下という課題が必ず生じてくる。このような課題に対処する目的で開発された他の先行技術としては以下に示すようなものが知られている。
【0006】
特許文献3には「二流体ノズル」という名称で、例えば、焼却炉より発生する高温ガスに気水混合ミストを噴霧して冷却を行う際に用い,微細な粒子を噴霧できる二流体ノズルに関する発明が開示されている。
特許文献3に開示される発明は、圧縮空気の供給路の外周に液体の供給路を設け、それらの供給路の吐出口付近に圧縮空気と液体を混合する混合室を設け、そこで液体と圧縮空気を衝突させることで噴霧状態を作り出している。特許文献3に開示される噴霧手段では、気水比を100以上にすることで水滴粒子を微細化することができるので、特に精密機械部品の洗浄や高温の設備を冷却するのに適した微細な水滴を発生させることができる。
【0007】
また、特許文献4には「2流体特殊洗浄ノズル」という名称で、建物の壁面や床面、自動車や機械類、飲食品容器等の洗浄に適した気液混合洗浄装置用の2流体特殊洗浄ノズルに関する発明が開示されている。
特許文献4に開示される発明は、文献中に記載される符号をそのまま用いて説明すると、洗浄水を高圧ポンプにて加圧され高圧水として受ける高圧水導入路11と、高圧水導入路11の内寸Dwに対して先細テーパー状の絞り部と、所定最小径の高圧水出口径dの通路でなる高圧水噴出口13と、その先端広角部14とからなる高圧水ノズル1と、高圧水ノズル1の下流に形成された気体室21と、その下流に連通して気体室21の内寸Daに対して先細に縮径し境部は曲面となるように形成された拡大ノズル22と、気体室21に開口した空気圧縮機より送られる所定高圧の圧縮空気を導入する気体導入口23とからなる噴霧ノズル2とにより構成されるものである。
特許文献4に開示される発明によれば、完全に液滴化した気泡交じりの超音速混合気体流を形成することができ、この混合気体流を被洗浄面にぶつけると、気泡破裂の際の衝撃波キャビティー現象と超音速混合気体流が生じて、強力な洗浄効果を発揮させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−152499号公報
【特許文献2】特開2004−132138号公報
【特許文献3】特開平7−124502号公報
【特許文献4】特開2006−187752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば,食器洗浄等に関する分野においては、油等の汚れ成分を削ぎ落とすために水滴粒子に大きな運動エネルギーを与えてやる必要がある。これに対して、引用文献3に開示される二流体ノズルから放出される水滴粒子の運動エネルギーを増大させるには、気水比を低くして、通常よりも大きな水滴粒子を形成させるとともに、噴射される気液混合体の流速を速く保つ必要がある。
しかしながら、引用文献3に開示される二流体ノズルにおいて、空気の供給量を減少させて気水比を低くすると、水滴粒子径を大きくすることはできるものの、空気量の減少により、気液混合体の流速が低下することが予測され、汚れ成分を削ぎ落とすのに必要な運動エネルギーを水滴粒子に付与できない恐れがあった。
【0010】
その一方で、特許文献4に開示される発明のように、水滴粒子の微細化に特化せず、幅広い用途に適応させたものも存在する。しかしながら、特許文献4に開示される発明では、気液混合体の洗浄力を高めるために水圧を高める手段を設ける必要があるため、一般の水道栓に送給される水をそのまま使用することはできなかった。
また、圧縮空気の流速を高めることにより水滴を被洗浄物に衝突させた際に発生する気泡破裂の衝撃波キャビティ現象を利用する技術であることから、大きな騒音が発生することが予想される。しかしながら、特許文献4に開示される発明では、発生するであろう大きな騒音を抑制するための機構を何ら備えていない。このため、特許文献4に開示される発明を利用する場合、その利用者と周囲の人にとって大きな負担になる恐れがあった。
【0011】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、水道栓に供給される水道水を加圧処理等を行うことなくそのまま利用することができ、かつ、高い節水効果を有しながら、高い洗浄効果を発揮させることができ、しかも、構造がシンプルで製造コストが廉価な洗浄水噴射装置を提供することにある。
また、上記効果に加えて、騒音の発生の少ない洗浄水噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明である洗浄水噴射装置は、圧縮空気を流動させるための第1の中空部を備えた第1の筒体と、この第1の筒体を,第2の中空部を備えて収容する第2の筒体と、第1の筒体の外側面と,第2の筒体の内側面との間に形成される水密な空隙と、第2の筒体の側面を貫通して形成され,空隙に洗浄水を供給する洗浄水供給口と、第1の筒体の側面を貫通して形成され,空隙に供給された洗浄水を第1の中空部内に導入して圧縮空気と混合させて気液混合体を生成させる,複数の洗浄水導入口と、第1の筒体の端部に形成される気液混合体を導出する導出口と、を有し、複数の洗浄水導入口は,第1の筒体の内側面において互いに対向して配置されることがなく、かつ、第1の筒体の中心軸の周囲に回転対称に配置されることを特徴とするものである。
上記構成の発明において、第1の筒体は、その第1の中空部内において圧縮空気と洗浄水を混合して気液混合体を形成させるという作用を有する。また、第2の筒体は、第2の中空部内に第1の筒体を収容するとともに,第1の筒体との間に水密な空隙を形成するという作用を有する。そして、第1の筒体の外側面と、第2の筒体の内側面との間に形成される水密な空隙は、第1の筒体の周方向に満遍なく洗浄水を供給して、第1の筒体の周方向からの均一な洗浄水の導入を可能にするという作用を有する。
また、第2の筒体に形成される洗浄水供給口は,空隙に洗浄水を供給するという作用を有し、第1の筒体に形成される洗浄水導入口は,空隙に供給された洗浄水を第1の筒体の中空部内に導入するという作用を有する。
さらに、導出口は、第1の筒体内において形成された気液混合体を第1の筒体の外部に導出するという作用を有する。
そして、洗浄水導入口を、第1の筒体の内側面において互いに対向しないように配置することで、特定の洗浄水導入口から吐出される洗浄水が、他の洗浄水導入口からの洗浄水の吐出の妨げになるのを防ぐという作用を有する。
加えて、洗浄水導入口を、第1の筒体の中心軸の周囲に回転対称に配置することで、第1の中空部内を流動する圧縮空気の周方向から均一に洗浄水を供給するという作用を有する。
【0013】
請求項2記載の発明である洗浄水噴射装置は、請求項1に記載の洗浄水噴射装置であって、第1の筒体は、第2の筒体に着脱可能に挿設されることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、第2の筒体に対して第1の筒体を着脱可能に装着させるという作用を有する。
【0014】
請求項3記載の発明である洗浄水噴射装置は、請求項1又は請求項2に記載の洗浄水噴射装置であって、第2の筒体は、圧縮空気と洗浄水が混合されてなる気液混合体が導出される側の端部に,第1の筒体の導出口と連通する噴射ノズルを備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明と同じ作用に加えて、噴射ノズルは、第1の筒体の導出口から導出される気液混合体の拡散状態を制御するという作用を有する。
【0015】
請求項4記載の発明である洗浄水噴射装置は、請求項3記載の洗浄水噴射装置であって、噴射ノズルは、第2の筒体から着脱可能であることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項3記載の発明と同じ作用に加えて、第2の筒体に対して噴射ノズルを着脱可能に装着するという作用を有する。
【0016】
請求項5記載の発明である洗浄水噴射装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の洗浄水噴射装置であって、第1の筒体における圧縮空気の導入口から,第2の筒体における気液混合体の導出口までの流動路の直径は一定であり,かつ,この流動路の直径は3〜5mmの範囲内であり、洗浄水導出口の直径は,1〜1.5mmの範囲内であり、複数の洗浄水導出口から第1の中空部内に供給される洗浄水の総量は,1.0〜2.0L/minの範囲内であり、第1の筒体の第1の中空部内に供給される圧縮空気の量は,15〜40L/minの範囲内であることを特徴とするものである。なお、説明するまでもないが、Lはリットル、minは分を意味している。
上記構成の発明は、請求項1乃至請求項4記載の発明と同じ作用に加え、第1の筒体における圧縮空気の導入口から,第2の筒体における気液混合体の導出口までの流動路の直径を一定にすることで、圧縮空気の導入口から気液混合体の導出口までの間に、流路の狭小部や屈曲部がない状態を実現するという作用を有する。これにより、請求項5記載の洗浄水噴射装置内を圧縮空気が流動する際の、運動エネルギーの損失を最小限度に抑えるという作用を有する。
また、請求項5記載の発明においては、流導路の直径を3〜5mmの範囲内とし、さらに、洗浄水導出口の直径を1〜1.5mmの範囲内、複数の洗浄水導出口から第1の中空部内に供給される洗浄水の総量を1.0〜2.0L/minの範囲内、第1の筒体の第1の中空部内に供給される圧縮空気の量を15〜40L/minの範囲内とすることで、請求項5記載の発明において気液混合体を生成させて噴射する際の、騒音の発生を抑制するという作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、洗浄水導入口から第1の筒体の第1の中空部内に少しずつ導入される洗浄水を、第1の中空部内を勢い良く流動する圧縮空気により細かく千切って水滴粒子を形成させるとともに、この水滴粒子は圧縮空気との衝突によって粉砕されて、ミスト状の水滴粒子よりも大きな容積及び重量をもつ水滴粒子となる。参考までに説明を加えると、引用文献3に開示される発明において形成される水滴粒子の最大粒子径は500μmであるのに対して、本願請求項1記載の発明によれば、1000μmの粒子径を有する水滴粒子を形成することができる。さらに、この水滴粒子を圧縮空気の流動によって付勢して(運動エネルギーを付与して)気液混合体として導出口から勢い良く噴射させることができる。つまり、請求項1記載の発明によれば、ある程度重量のある水滴粒子を包含してなる気液混合体を形成して勢いよく噴射させることができる。
従って、上述のような気液混合体を被洗浄対象面に吹付けることで、油汚れ等が付着した被洗浄対象から汚れ成分を効率よく剥ぎ取って洗浄対象面を洗浄することができる。
また、請求項1記載の発明の場合、洗浄水導入口から供給される水滴粒子を第1の中空部を流動する圧縮空気により十分に付勢することができるため、請求項1記載の発明において洗浄水の水圧を高める必要がない。このため、洗浄水導入口から導入する洗浄水の水圧を高めるための設備や装置を設ける必要がない。従って、請求項1記載の発明によれば、水道栓から供給される水をそのまま洗浄水として使用することができる。
さらに、請求項1記載の発明では、洗浄水が洗浄水導入口から圧縮空気に対して第1の筒体の内側面の周方向から満遍なく供給されるため、圧縮空気が第1の筒体の第1の中空部を通過した時点で、圧縮空気内への洗浄水の供給、及び、圧縮空気中における洗浄水粒子の均一な分散が完了した状態となる。
このことはすなわち、請求項1記載の洗浄水噴射装置の導出口から導出された気液混合体を直ちに洗浄に利用できることを意味している。つまり、圧縮空気と洗浄水の水滴粒子を均一に混合するために長い流動路を設ける必要がない。このため、請求項1記載の発明の構造をシンプルかつコンパクトにできるので、高性能な洗浄水噴射装置を廉価に提供することができる。
また、請求項1記載の発明においては、搬送流体が圧縮空気であり、被搬送流体が液体であるため、気液比における気体の相対量を大きくすることができる。これにより、高い洗浄効果を発揮させつつ、節水効率も高くすることができる。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同じ効果に加えて、第2の筒体から第1の筒体を取外すことができるので、請求項2記載の発明のメンテナンスを行う際に、各部品の洗浄を容易に行うことができる。この結果、請求項2記載の発明に不具合が生じるおそれを低減できるので,耐久性を向上することができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明と同じ効果に加えて、噴射ノズルを介して気液混合体を噴射させることができるので、必要に応じて気液混合体を拡散させて噴出させたり、収束させてして噴射させることができる。この結果、本発明に係る洗浄水噴射装置の汎用性を高めることができる。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明と同じ効果に加えて、第1の筒体と,第2の筒体の基本的な構造から成る洗浄水噴射装置に、所望のタイプの噴射ノズルを装着することで、導出口から噴射される気液混合体を拡散させた状態で噴射させたり、収束させた状態で噴射させたり、あるいは、上記以外の任意の状態で噴射させたりすることができる。この結果、1台の洗浄水噴射装置を多様な目的で使用することができるので、請求項4記載の洗浄水噴射装置の汎用性を高めることができる。
また、請求項4記載の発明では、第2の筒体から噴射ノズルを取外すことができるので、請求項4記載の発明のメンテナンスを行う際に、噴射ノズルの洗浄を容易に行うことができる。この結果、請求項4記載の発明に不具合が生じるおそれを低減できるので,その耐久性を向上することができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4に記載されるそれぞれの発明と同じ効果に加えて、流動路の孔径を一定にするとともに、流動路の孔径、洗浄水導入口の孔径、圧縮空気及び洗浄水の送給量を所望の値に規定することで、圧縮空気の運動エネルギーの損失を最小限度にとどめつつ、ミスト状態の水滴粒子よりもより容積及び重量の大きい水滴粒子を形成して,食器洗浄に適した気液混合体を形成して勢い良く噴射させることができる。
また、その際に、気液混合体による洗浄時の騒音の発生を抑制することができる。
この結果、請求項5記載の発明によれば、食器洗浄に適し、かつ、使用時の騒音を軽減した洗浄水噴射装置を提供することができる。これにより、業務用のみならず家庭用の食器洗浄器の普及を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置を構成する各部品の配置を示す概念図である。
【図2】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置を構成する各部品の断面図である。
【図3】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の概念図である。
【図4】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の断面図である。
【図5】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の使用状態を示す断面図である。
【図6】(a)本実施の形態に係る洗浄水噴射装置から気液混合体が噴射される様子をストロボ撮影した画像である。(b)本実施の形態に係る洗浄水噴射装置から気液混合体が噴射される様子をストロボなしで撮影した画像である。
【図7】図2に示す第1の筒体のA−A線矢視断面図である。
【図8】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の使用時の騒音に関する試験結果を示すグラフである。
【図9】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の洗浄試験に用いた皿の外観を示す概念図である。
【図10】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の洗浄試験結果を示すグラフである。
【図11】本実施の形態に係る洗浄水噴射装置における噴射ノズルの流動路の断面形状を変えた場合の気液混合体の噴射様態を撮影した画像並べて示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態に係る洗浄水噴射装置について図1乃至図11を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
本発明の実施の形態に係る洗浄水噴射装置1について図1乃至図7を参照しながら詳細に説明する。
図1は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置を構成する各部品の配置を示す概念図である。また、図2は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置を構成する各部品の断面図である。さらに、図3は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の概念図であり、図4は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の断面図である。なお、図1,2に示す各部品を組み合わせてなる洗浄水噴射装置の外観を示したものが図3であり、その中心軸断面を示したものが図4である。
図1乃至図4に示すように、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1はおおまかに、圧縮空気を流動させるための第1の中空部3を有する第1の筒体2と、この第1の筒体2の外側面2aとの間に水密な空隙6を形成しながら第1の筒体2を収容保持する第2の筒体4とにより構成されている。
また、第1の筒体2の側面には、第1の筒体2と第2の筒体4により形成される空隙6に供給される洗浄水(図示せず)を、第1の筒体2の第1の中空部3内に導入するための複数の洗浄水導入口2bが、第1の筒体2の側面の肉厚部を貫通して形成されている。
さらに、第1の筒体2の外側面2aと,第2の筒体4の内側面4aとの間に形成される水密な空隙6に洗浄水(図示せず)を供給するために、第2の筒体4の側面に,その肉厚部を貫通して洗浄水供給口4bが形成されている。
【0025】
従って、上述のような本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、第1の筒体2の圧縮空気導入口2eから第1の中空部3内に圧縮空気(図示せず)が送給された際に、空隙6に供給された洗浄水(図示せず)が洗浄水導入口2bを通じて第1の中空部3内に供給されて、第1の中空部3内において圧縮空気と洗浄水とが混合されて気液混合体が形成される仕組みになっている。
また、この気液混合体は、第1の筒体2の気液混合体導出口2d,及び,第2の筒体4の気液混合体導出口4cを介して外部に勢い良く噴射される。
なお、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、第1の筒体2の側面に6個,又は,9個の洗浄水導入口2bを形成する場合を例に挙げて説明しているが、洗浄水導入口2bの数は上述の数に限定される必要は特になく、第1の筒体2の側面に少なくとも3箇所形成されていればよい。第1の筒体2に形成する洗浄水導入口2bの数、及び、その配置については、後段において詳細に説明する。
【0026】
なお、第1の筒体2と第2の筒体4により形成される空隙6の水密性を確保するのに必要であれば、第2の筒体4の第2の中空部5内に,第1の筒体2を収容する際に、第1の筒体2と第2の筒体4の接触部分にシール材7を介設してもよい。
また、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1の使用目的に応じて任意で第2の筒体4の気液混合体導出口4cに噴射ノズル8を着脱可能に、又は、一体に設けてもよい。この噴射ノズル8を設けることで、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1において形成された気液混合体は、最終的に噴射口8aから噴射されることになり、その際に、気液混合体の噴射様態を所望の様態にすることができる。
より具体的には、噴射ノズル8を備えることで、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1の噴射口8aから気液混合体を、例えば、拡散するように噴射させたり、収束するように噴射させることができる。
さらに、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、図1,2に示すように、第1の筒体2の圧縮空気導入口2eへの圧縮空気送給配管(図示せず)の接続を容易にするために、圧縮空気導入口2eに圧縮空気導入部2fを設けてもよい。
また、第1の筒体2の側面に形成される洗浄水供給口4bの周囲にも、洗浄水供給口4bへの洗浄水供給配管(図示せず)の接続を容易にするために洗浄水導入部4dを設けてもよい。
【0027】
なお、第2の筒体4への第1の筒体2の装着は、例えば、図2,4に示すように、第1の筒体2と圧縮空気導入部2fの連結部分の外周に,例えば,雄ネジ又は雌ネジからなる装着部2cを形成するとともに、第2の筒体4の気液混合体導出口4cが形成されない側の端部に形成される開口部4eの内側面にも,雌ネジ又は雄ネジからなる装着部2cを形成してネジ固定により行っても良い。この場合、第1の筒体2と第2の筒体4の隙間に形成される空隙6の水密性を容易に確保することができる。
もちろん、上述以外の手段により第1の筒体2と第2の筒体4とを固定してもよく、その際には、装着部2cに嵌合構造を採用することで空隙6の水密性の確保が容易になる。
【0028】
次に、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1による作用,効果について図5乃至図7を参照しながらさらに詳細に説明する。
図5は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の使用状態を示す断面図である。なお、図1乃至図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図5に示すように、洗浄水噴射装置1の圧縮空気導入口2eから,第1の中空部3の内に圧縮空気9が送給され、第2の筒体4の洗浄水供給口4bから空隙6に洗浄水10が供給されると、複数の洗浄水導入口2bから洗浄水10が第1の中空部3内に少しずつ導入される。
この時、洗浄水導入口2bから少しずつ導入される洗浄水10は、まず圧縮空気9により細かく引き千切られて水滴粒子となり、この水滴粒子は、さらに、圧縮空気9流と衝突して粉砕されて、ミスト状の水滴粒子よりも容積や重量が大きい水滴粒子が形成されるとともに、この水滴粒子は圧縮空気9により好適に付勢されて(運動エネルギーが付与されて)、気液混合体導出口2d及び気液混合体導出口4cを経て噴射口8aから勢い良く噴射される。
つまり、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1から、圧縮空気9と水滴粒子との混合体である気液混合体11が噴射されるのである。
【0029】
図6(a)本実施の形態に係る洗浄水噴射装置から気液混合体が噴射される様子をストロボ撮影した画像であり、(b)本実施の形態に係る洗浄水噴射装置から気液混合体が噴射される様子をストロボなしで撮影した画像である。
図6(b)を見ると本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1から噴射される気液混合体11は、ミスト状のようにも見えるが、ストロボ撮影された図6(a)を見ると、水滴粒子の大きさは目視によりその大きさが確認できるほど大きいことが分かる。
従って、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1によれば、ある程度大きな水滴粒子を勢い良く噴射させることができる。
この場合、先の図5に示すように、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1における,圧縮空気導入口2eから気液混合体導出口4cまでの流動路を一直線状に配置しておくことで、第1の中空部3内を流動する圧縮空気9の運動エネルギーの損失を最小限度にすることができる。
さらに、洗浄水噴射装置1における圧縮空気導入口2eから気液混合体導出口4cまでの流動路の孔径を一定にした場合には、流路の狭小部や屈曲部がない状態が実現されるので、第1の中空部3内を流動する圧縮空気9の運動エネルギーの損失を一層抑えることができる。
【0030】
そして、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、第1の筒体2の内側面に、洗浄水導入口2bを互いに対向しないように配置することで、第1の筒体2の第1の中空部3内に複数の洗浄水導入口2bを形成した場合に、特定の洗浄水導入口2bから導出される洗浄水10が、他の洗浄水導入口2bからの洗浄水10の導出を妨げるのを防止できる。
【0031】
ここで、第1の筒体2の軸方向垂直断面における洗浄水導入口2bの配置について図7を参照しながら説明を加える。
図7は図2に示す第1の筒体のA−A線矢視断面図である。なお、図1乃至図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図7に示すように、第1の筒体2の第1の中空部3内(内側面)に形成される複数の微小孔である洗浄水導入口2bを、第1の筒体2の中心軸の周囲に回転対称に配置することにより、第1の中空部3の軸方向垂直断面における周方向から圧縮空気9に対して均一に洗浄水10を供給することができる。
従って、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1においては、洗浄水導入口2bから少しずつ導出される洗浄水10の流れを圧縮空気9により引き千切りつつ,粉砕してある程度重量のある水滴粒子を形成させるという効果と、第1の中空部3の周方向から圧縮空気9に対して均一に洗浄水10が供給されることで圧縮空気9中における水滴粒子の分布を均一化する効果と、が同時に発揮される。
すなわち、圧縮空気9への洗浄水10の供給が完了した時点で、圧縮空気9中における水滴粒子の均一な混合も完了させることができる。
【0032】
なお、第1の中空部3の軸方向垂直断面の周方向に形成される洗浄水導入口2bの数を多くすることで、気液混合体11中における水滴粒子の混合状態の均一性を高くできる一方、洗浄水導入口2bが多数形成されると圧縮空気9への洗浄水10の供給量が増えて節水効率が悪くなる。
このため、第1の筒体2に形成する洗浄水導入口2bの数は、少なくとも3箇所は必要であるが、その数の上限は洗浄水噴射装置1の使用目的に応じて適宜設定してよい。なお、洗浄水導入口2bを第1の中空部3の軸方向断面において同一平面上に形成しないのであれば、第1の筒体2に形成する洗浄水導入口2bの最小値を2箇所とすることも可能である。
本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、第1の筒体2の第1の中空部3内に供給する洗浄水10の量の調整を、洗浄水10の水圧の変更によらず、第1の筒体2に形成される洗浄水導入口2bの数の増減により行うことができる。
この場合、異なる目的のために本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1を使用する場合でも、水道栓から供給される水をそのまま用いることができるので、洗浄水噴射装置1の汎用性を高めることができる。
【0033】
本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1によれば、水滴粒子を圧縮空気9中に均一に含有させるのに必要な混合路(圧縮空気導入口2eから気液混合体導出口2dまでの領域)を短くすることができるので、洗浄水噴射装置1の軸方向の長さを短くすることができる。これにより、コンパクトな洗浄水噴射装置1を提供することができる。
なお、気液混合体11中における洗浄水10の水滴粒子の径を均一化させるには、第1の筒体2の第1の中空部3内(内側面)に形成される複数の洗浄水導入口2bの孔径(直径)を均一(略均一の概念も含む)にしておくことが望ましい。
さらに、第1の筒体2の第1の中空部3(内側面)に形成される洗浄水導入口2bの径の大きさを変更することで、気液混合体11中に包含される水滴粒子の径の大きさを容易に変更できる。
この場合、圧縮空気導入口2eから送給される圧縮空気9の気圧や、第2の筒体4の洗浄水供給口4bに供給される洗浄水10の水圧を変更することなく、水滴粒子の径を変更できるというメリットがある。もちろん、圧縮空気9の気圧や、洗浄水10の水圧の変更も併せて行うことで、気液混合体11中に包含される水滴粒子の径のバリエーションをより広くすることができる。
従って、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1によれば、使用目的に応じた設計変更が容易な洗浄水噴射装置を提供することができる。すなわち、この点においても汎用性の高い洗浄水噴射装置を提供することができる。
また、本実施の形態においては、圧縮空気9の流路(第1の中空部3)に対して、洗浄水10の流路が垂直をなすように洗浄水導入口2bが形成される場合を例に挙げて説明しているが(図2,4,5を参照)、洗浄水導入口2bの流路は、圧縮空気9の流路(第1の中空部3)に対して必ずしも垂直である必要はなく、特に図示しないが、90°よりも小さな角度をなして形成されてもよい。
【0034】
なお、第2の筒体4の気液混合体導出口4cが形成される側の端部に噴射ノズル8を設けた場合には、この噴射ノズル8の中心軸上に形成される流導路の断面形状を適宜変更することで、より具体的には、例えば、噴射口8aに向うにつれ気液混合体11の流動路を広げたり、狭めたりする等により、噴射口8aから噴射される気液混合体の様態を広範囲に拡散させたり、あるいは、収束させたりすることができる。
すなわち、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、第1の筒体2の気液混合体導出口4cが形成される側の端部において噴射ノズル8を着脱可能とすることで、噴射ノズル8の交換作業のみで、気液混合体11の噴射様態の変更を行うことができる。
また、第2の筒体4に対して噴射ノズル8を着脱可能とした場合には、メンテナンス時における噴射ノズル8の洗浄を容易にすることができる。
なお、第1の筒体2の気液混合体導出口4cが配される側の端部への噴射ノズル8の着脱は、図5に示されるように螺設により行っても良いし、図示される以外の,例えば,嵌合構造により着脱可能としてもよい。
【0035】
ここで、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1を特に家庭用の食器洗浄器に用いる場合の好適な仕様について説明する。
本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1を、家庭における食器洗浄装置に使用する際には、使用時の騒音を軽減する必要がある。
そこで、発明者らは、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1における、第1の中空部3から気液混合体導出口4cに至るまでの流動路の直径、洗浄水導入口2bの孔径、圧縮空気9の流量、洗浄水10の流量のそれぞれを様々に変えて、どの要素が騒音の発生に大きな影響を及ぼしているかを調査したところ、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1に生じる騒音レベルに与える影響は、第1の中空部3から気液混合体導出口4cに至るまでの流動路の孔径(直径)、洗浄水10の流量、圧縮空気9の流量、洗浄水導入口2bの孔径の順で高いことが明らかになった。
このような事情に鑑み発明者らは、鋭意研究の結果、家庭用の食器洗浄器の使用に適した本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1の仕様について検討を行い、以下に示すような条件を満たした際に騒音の発生を軽減できることを見出した。
【0036】
より具体的には、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、特に、第1の筒体2の第1の中空部3から第2の筒体4の気液混合体導出口4cに至るまでの流動路の内径を一定(略一定の概念も含む)にするとともに、この流導路の内径を3〜5mmの範囲内とし,第1の筒体2に形成される洗浄水導入口2bの直径を1〜1.5mmの範囲内とし、さらに、第1の筒体2に形成される全ての洗浄水導入口2bから第1の中空部3内に供給される洗浄水10の総量を1.0〜2.0L/minの範囲内(水道栓の水圧と同等)とし,第1の筒体2の第1の中空部3に供給される圧縮空気9の総量を15〜40L/minの範囲内とすることで、静穏性を有しながら、高い洗浄効果を発揮させることができ、しかも、十分な節水効果も発揮させることができた。
上述のような洗浄水噴射装置1によれば、水道栓から供給される水の水圧を一切変更することなくそのまま洗浄水として利用できる。また、静穏性を有し、節水効果も有するので、利便性が高く一般家庭に普及させ易い洗浄水噴射装置1を提供することができる。
【0037】
また、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1を用いる際には、第1の筒体2の圧縮空気導入口2eへの圧縮空気9の送給を、例えば、コンプレッサー(図示せず)により行っても良く、また、第2の筒体4の洗浄水供給口4bへの洗浄水10の送給は、上述のように水道栓から直接行ってもよい。
この場合、コンプレッサーから洗浄水噴射装置1の圧縮空気導入口2eに至るまでの流路に圧縮空気9の流量を調整可能な空気量調整弁(図示せず)を設けておくとよい。また、水道栓から第2の筒体4の洗浄水導入口2bに至るまでの流路にも洗浄水10の流量を調整可能な洗浄水用流量調整弁(図示せず)を設けておくとよい。
なお、上述の空気量調整弁や洗浄水用流量調整弁における圧縮空気9や洗浄水10の流量の調整は手動で行っても良いが、操作性を考慮して自動制御としてもよい。より具体的には、気量調整弁や洗浄水用流量調整弁として、電気信号により流量の調整が可能な電磁弁を用いてもよい。
【0038】
ここで、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1の性能を確認する目的で行った試験及びその結果について図8乃至図11を参照しながら説明する。
(試験1)
本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1において,圧縮空気導入口2eに送給する圧縮空気9の流量と、第2の筒体4の洗浄水供給口4bから導入する洗浄水10の流量が騒音の発生に与える影響を調べる目的で以下に示すような試験1を実施した。
(試験方法)
本試験では、先の図3に示すような本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1における第1の中空部3から気液混合体導出口4cに至るまでの流動路の内径を4mmとし、第1の中空部3内に孔径1mmの洗浄水導入口2bを、上述の図7に示すような配置にて2組、計6箇所に形成したものを使用した。
そして、上述のような装置において、第2の筒体4の洗浄水供給口4bから供給する洗浄水10の水量を1.0L/min、2.0L/minに設定し、それぞれの場合について、圧縮空気導入口2eから導入する圧縮空気9の流量を20〜60L/minの範囲内で変化させた際の騒音を測定してその結果を図8に示した。
【0039】
(試験結果)
図8は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の使用時の騒音に関する試験結果を示すグラフである。
図8に示すように、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、洗浄水供給口4bへの洗浄水10の供給量にかかわらず、第1の筒体2の圧縮空気導入口2eへの圧縮空気9の送給量が40L/minを超えた場合に、騒音が大きくなる傾向が認められた。
また、洗浄水供給口4bへの洗浄水10の供給量が多い場合の方が、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1から生じる騒音は大きかった。
なお、ここでは詳細な試験結果等は示さないが、第1の筒体2の圧縮空気導入口2eに送給される圧縮空気9の流量が15L/minの場合でも、食器の十分な洗浄効果が発揮されることが確認されたため、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1を家庭用の食器洗浄器に適用する際の圧縮空気9の流量を15〜40L/minとしている。
【0040】
(試験2)
次に、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1において,圧縮空気導入口2eに送給する圧縮空気9の流量と、第2の筒体4の洗浄水供給口4bから導入する洗浄水10の流量を変化させた場合の、洗浄効果の違いを調べる目的で以下に示すような試験2を行った。なお、試験2では、先の試験1で用いた洗浄水噴射装置1と同じ仕様の洗浄水噴射装置1を用いた。
図9は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の洗浄試験(試験2)に用いた皿の外観を示す概念図である。
(試験方法)
図9に示すようなポリエチレン製の試験用皿12の中央部に直径50mm、深さ0.5mmの凹部13を形成し、この凹部13に擬似汚れ成分として粘性体である歯磨き粉(ライオン社製「ホワイト アンド ホワイト」(登録商標)を使用)を一定量(1グラム)塗布したものに、噴射ノズル8の噴射口8aから30cm離れた位置から気液混合体11を噴射して、試験用皿12から擬似汚れ成分が取り除かれるまでの時間を測定した。
また、試験2では上述のような試験を、圧縮空気導入口2eに送給する圧縮空気9の流量、及び、洗浄水供給口4bに送給する洗浄水10の流量を変えて実施した。なお、試験2に供試した洗浄水噴射装置1の噴射ノズル8の流動路径は4mmとした。
【0041】
(試験結果)
図10は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置の洗浄試験結果を示すグラフである。
図10に示すように、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、洗浄水供給口4bに送給する洗浄水10の流量を増やすことで、擬似汚れ成分の洗浄に要する時間を短くすることができた。
また、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、洗浄水供給口4bに送給する洗浄水10の流量に関わらず、圧縮空気導入口2eに送給される圧縮空気9の流量が大きい場合の方が、擬似汚れ成分の洗浄に要する時間が短かった。
【0042】
上述のような試験1,2の結果を総合すると、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1では、圧縮空気9や洗浄水10の送給量を大きくすることで、被洗浄対象の洗浄時間を短かくできることが明らかになった。その一方で、圧縮空気9や洗浄水10の送給量が増加すると騒音が大きくなる傾向が認められるため、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1を、家庭用の食器洗浄器への適用を考慮した場合は、大まかに以下の表1に示すような2種類のタイプとすることができる。
もちろん、騒音が問題にならない場所に設置したり、あるいは、騒音防止のための構造を別途備えるなど工夫することで、以下に示すような条件の範囲を超えた仕様でも支障なく使用することができる。
【0043】
【表1】

【0044】
(試験3)
最後に、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1に任意で装着される噴射ノズル8の作用,効果を検証するために行った試験3について説明する。
(試験方法)
試験3では、先の試験1において供試した洗浄水噴射装置1と同じ仕様の洗浄水噴射装置1を用い、その噴射ノズル8の中心軸上に形成される気液混合体11流導路の断面形状を様々に変えた噴射ノズル8を複数種類準備し、それぞれの噴射ノズル8を用いた場合に、洗浄水噴射装置1の噴射口8aから噴射される気液混合体11の様態がどのようになるかを観察した。
【0045】
(試験結果)
図11は本実施の形態に係る洗浄水噴射装置における噴射ノズルの流動路の断面形状を変えた場合の気液混合体の噴射様態を撮影した画像並べて示した表である。
図11に示すように、噴射ノズル8の中心軸上に形成される流導路を、噴射口8aに向ってやや拡径した場合(実験No.125B)は、流導路の内径を一定にした場合(実験No.125)に比べて、気液混合体11が拡散しながら噴射された。
他方、図11に示すように、噴射ノズル8の中心軸上に形成される流導路の噴射口8a近傍を,噴射口8aに向って大きく拡径させた場合(実験No.125C)は、流導路の内径を一定にした場合(実験No.125)に比べて、気液混合体11は収束した状態で噴射された。
【0046】
前者の場合(実験No.125B)は、噴射ノズル8から噴射される気液混合体11の流速が比較的速い場合に、広い範囲を効率よく洗浄するのに適している。また、後者の場合(実験No.125C)は、気液混合体11を被洗浄対象の局所に収束させながら噴射させることができるので、噴射ノズル8から噴射される気液混合体11の流速が比較的遅い場合に適している。
従って、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1によれば、噴射ノズル8を着脱可能に設けることで、流導路の断面形状の異なる噴射ノズル8を容易に交換することができる。
この結果、一台の洗浄水噴射装置1において、気液混合体11の噴射様態を様々に変更することができるので、本実施の形態に係る洗浄水噴射装置1の汎用性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は水道栓からの吐水に圧縮空気を付加するだけで、高い洗浄力を有する気液混合体を形成して噴射させることができ、節水効果も有する洗浄水噴射装置であり、家電製品や製造業、清掃業に関する分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…洗浄水噴射装置 2…第1の筒体 2a…外側面 2b…洗浄水導入口 2c…装着部 2d…気液混合体導出口 2e…圧縮空気導入口 2f…圧縮空気導入部 3…第1の中空部 4…第2の筒体 4a…内側面 4b…洗浄水供給口 4c…気液混合体導出口 4d…洗浄水導入部 4e…開口部 5…第2の中空部 6…空隙 7…シール材 8…噴射ノズル 8a…噴射口 9…圧縮空気 10…洗浄水 11…気液混合体 12…試験用皿 13…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を流動させるための第1の中空部を備えた第1の筒体と、
この第1の筒体を,第2の中空部を備えて収容する第2の筒体と、
前記第1の筒体の外側面と,前記第2の筒体の内側面との間に形成される水密な空隙と、
前記第2の筒体の側面を貫通して形成され,前記空隙に洗浄水を供給する洗浄水供給口と、
前記第1の筒体の側面を貫通して形成され,前記空隙に供給された前記洗浄水を前記第1の中空部内に導入して前記圧縮空気と混合させて気液混合体を生成させる,複数の洗浄水導入口と、
前記第1の筒体の端部に形成される前記気液混合体を導出する導出口と、を有し、
複数の前記洗浄水導入口は,前記第1の筒体の内側面において互いに対向して配置されることがなく、かつ、前記第1の筒体の中心軸の周囲に回転対称に配置されることを特徴とする洗浄水噴射装置。
【請求項2】
前記第1の筒体は、前記第2の筒体に着脱可能に挿設されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水噴射装置。
【請求項3】
前記第2の筒体は、前記圧縮空気と前記洗浄水が混合されてなる気液混合体が導出される側の端部に,前記第1の筒体の前記導出口と連通する噴射ノズルを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗浄水噴射装置。
【請求項4】
前記噴射ノズルは、前記第2の筒体から着脱可能であることを特徴とする請求項3記載の洗浄水噴射装置。
【請求項5】
前記第1の筒体における前記圧縮空気の導入口から,前記第2の筒体における前記気液混合体の導出口までの流動路の直径は一定であり,かつ,前記流動路の直径は3〜5mmの範囲内であり、
前記洗浄水導出口の直径は,1〜1.5mmの範囲内であり、
複数の前記洗浄水導出口から前記第1の中空部内に供給される前記洗浄水の総量は,1.0〜2.0L/minの範囲内であり、
前記第1の筒体の前記第1の中空部内に供給される前記圧縮空気の量は,15〜40L/minの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の洗浄水噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−86084(P2013−86084A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232362(P2011−232362)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(509164164)地方独立行政法人山口県産業技術センター (22)
【出願人】(502292282)株式会社中央サービス (7)
【Fターム(参考)】