説明

洗浄治具

【課題】外装体と洗浄治具本体の間に水晶素板が入り込み、水晶素板が破損してしまうことを防止すると共に、洗浄治具自体の反りや破損を防止することができる洗浄治具を提供することを課題とする。
【解決手段】薄板を洗浄する際に用いられる洗浄治具であって、第1の基部と第1の枠部により設けられる前記薄板が挿入可能な第1の凹部を有し、第1の凹部底面に第1の貫通孔が設けられている第1の外装体と、第2の基部と第2の枠部により設けられる第2の凹部を有し、第2の凹部底面に第2の貫通孔が設けられている第2の外装体とを備え、第1の枠部が第2の凹部内に嵌め込めるようになっていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄く形成された板状体を洗浄する際に用いる洗浄治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄く形成された板状体、つまり薄板には、例えば水晶素板がある。この水晶素板は、従来より、通信機器や電子機器等に搭載される圧電デバイスに用いられている。
【0003】
図6は、従来の洗浄治具に水晶素板が納められた状態を示した断面図である。
この水晶素板300は、洗浄されてから用いられる。水晶素板300は小さく割れやすいため、前記水晶素板300の洗浄には、洗浄治具200が用いられる。
具体的には、図6に示すように、この洗浄治具200は、板状であって、その内部に水晶素板300をセットするための複数の貫通孔202が設けられている洗浄治具本体201と、前記洗浄治具本体201の一方の主面に配置される板状の第1の外装体203と、前記洗浄治具本体201の他方の主面に配置される板状の第2の外装体204とによって構成されている。
洗浄治具本体201には、複数の第1の貫通孔202が設けられており、前記第1の貫通孔202には水晶素板300が収容されている。
第1の外装体203と第2の外装体204には、第2の貫通孔205、206が洗浄治具本体201に対応する位置に複数設けられている。
第2の貫通孔205、206は、前記第1の貫通孔202よりも開口径が小さくなるように設けられている。
前記第1の外装体203と前記第2の外装体204は、前記洗浄治具本体201を挟み込むようにして配置され、マグネット等により簡易に接合されている。
この従来の洗浄治具200を用いた水晶素板300の洗浄は、洗浄治具本体201の貫通孔202内に水晶素板300を収容し、前記洗浄治具200を洗浄槽に浸けて、前記洗浄治具200に向かって水流を噴射することによって、前記水晶素板300に付着している研磨粉やごみ等の付着物を落とすシャワー洗浄を行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−28453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水流を噴射することにより、前記水晶素板300が前記第1の貫通孔202内で激しく動き、第1の外装体203と第2の外装体204と前記洗浄治具本体201間に前記水晶素板300が入り込むおそれがある。それにより、前記水晶素板300に不要な力が加わってしまい前記水晶素板300が破損してしまうといった課題があった。
また、水流を噴射することにより、前記水晶素板300が前記第1の貫通孔202内で激しく動き、前記水晶素板300の角部が第1の外装体203と第2の外装体204に当たることにより、水晶素板300が破損してしまうといった課題もあった。
【0006】
また、高周波化による水晶素板300の薄型化のため、それに対応して洗浄治具200を構成する第1の外装体203と第2の外装体204と洗浄治具本体201も薄型化する必要がある。
洗浄治具200を構成する第1の外装体203と第2の外装体204や洗浄治具本体201も薄型化することにより、第1の外装体203と第2の外装体204と洗浄治具本体201に反りや破損が生じやすくなるといった課題もあった。
【0007】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、外装体と洗浄治具本体の間に薄板が入り込み、薄板が破損してしまうことを防止すると共に、洗浄治具自体の反りや破損を防止することができる洗浄治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄治具は、薄板を洗浄する際に用いられる洗浄治具であって、第1の基部と第1の枠部により設けられる薄板が挿入可能な第1の凹部を有し、第1の凹部底面に第1の貫通孔が設けられている第1の外装体と、第2の基部と第2の枠部により設けられる第2の凹部を有し、第2の凹部底面に第2の貫通孔が設けられている第2の外装体とを備え、第1の枠部が第2の凹部内に嵌め込めるようになっていることを特徴とするものである。
【0009】
また、第1外装体及び第2の外装体に窪み部を設け、窪み部に磁石を収容することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
このような洗浄治具によれば、洗浄治具本体をなくすことで、洗浄治具本体と外装体との間に薄板が入り込むことがなくなるので、薄板が破損することを防止することができる。
また、第1の枠部が第2の凹部内に嵌め込むことにより、薄板が第1の凹部底面と第2の凹部底面により挟まれるため、薄板が収納される空間が小さくなり水流があたっても、薄板が激しく動くことがなくなるので、薄板の破損を防ぎ、洗浄での歩留まりを向上させることが可能となる。
【0011】
また、洗浄治具本体を有しない構造であり、第1の外装体の第1の枠部と第2の外装体の枠部がはまるので、治具の厚みを確保しつつ、第1の外装体及び第2の外装体の反りや破損を防止することができる。
【0012】
また、第1の外装体及び第2の外装体に凹部を設け、凹部に磁石を収容することにより、洗浄治具本体と第1の外装体及び第2の外装体とを簡易に接合固定することができ、第1の外装体と第2の外装体がはずれることがないので、洗浄での歩留まりを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、薄板を水晶素板として説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る洗浄治具を示す分解斜視図である。図2は、図1のAの部分拡大図である。図3は、図2のB−B断面図である。図4は、本発明の実施形態に係る洗浄治具の第2の外装体を第2の枠部側から見た外観斜視図である。図5は、図4のCの部分拡大図である。
【0014】
図1〜図5に示す洗浄治具100は、水晶素板20を収容し、その洗浄治具100を洗浄槽に浸けて、洗浄治具100に向かって水流を噴射することによって、水晶素板20の表面に水流を当てて、前記水晶素板20に付着している付着物を落とすことにより洗浄する際に用いるものである。以下、水晶素板20、洗浄治具100の順に説明する。
【0015】
(水晶素板)
水晶素板20は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
水晶素板20の厚みは、例えば、20μm〜50μmとなっている。
このように洗浄された水晶素板20の表裏両主面には励振用電極(不図示)が被着形成され水晶振動素子となる。
前記水晶振動素子は、外部からの電圧が励振用電極を介して水晶素板20に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
励振用電極は、前記水晶素板20の表裏両主面に金属膜を積層するようにして被着・形成したものであり、水晶素板20の上面には第1の金属膜であるクロム(Cr)、チタン(Ti)が形成され、第1の金属膜の上面に第2の金属膜である金(Au)が積層するように形成されている。
【0016】
(洗浄治具)
図1〜図5に示すように、洗浄治具100は、第1の外装体30と第2の外装体40とから構成されている。
図1〜図3に示すように、第1の外装体30は、SUS304等のステンレス鋼によって構成された一枚板の金属板により構成されている。
第1の外装体30は、第1の基部30aと第1の枠部30bにより構成されている。
前記枠部30bは、一枚板の金属板をエッチング加工することによって複数設けられ、第1の枠部30bで囲まれた部分が第1の凹部となる。つまり、第1の凹部31は、第1の基部30aと第1の枠部30bにより形成される。
前記第1の凹部31は、その内部に前記水晶素板20が挿入可能であり、第1の凹部31底面となる第1の枠部30b内の第1の基部30aに第1の貫通孔32が設けられている。
第1の貫通孔32は、金属板を打ち抜き加工等をすることにより設けられている。
また、第1の凹部31は、後述する第2の外装体40の第2の凹部41よりも開口面積は小さくなっている。つまり、第1の枠部30bの外周サイズは、後述する第2の枠部40bに設けられた第2の凹部41の開口部サイズよりも小さくなっている。
また、第1の外装体30の厚みは、第1の基部30aと第1の枠部30bの厚みを足して、70〜140μmになっている。
【0017】
図1〜図5に示すように、第2の外装体40は、第1の外装体30と同様にSUS304等のステンレス鋼によって構成された一枚板の金属板により構成されている。
第2の外装体40は、第2の基部40aと第2の枠部40bにより構成されている。
前記枠部40bは、一枚板の金属板をエッチング加工することによって設けられ、第2の枠部40bで囲まれた部分が第2の凹部41となる。つまり、第2の凹部41は、第2の基部40aと第2の枠部40bにより形成される。
第2の基部40aと第2の枠部40bにより第2の凹部41が複数形成されており、第2の凹部41底面となる第2の枠部40b内の第2の基部40aに第2の貫通孔42が設けられている。
また、第2の凹部41の開口部サイズは、前記第1の外装体30の第1の枠部30bの外周サイズよりも開口面積は大きくなっており、この第2の凹部41内に第1の外装体30の第1の枠部30bが嵌め込むことができるようになっている。
このように第2の凹部41に第1の枠部30を嵌め込むことによって、前記第1の凹部31の底面と前記第2の凹部41の底面が水晶素板20と向かい合うようになっている。
この水晶素板20と対向する前記第1の凹部31の底面の中央と前記第2の凹部41の底面の中央には、第1の外装体30と第2の外装体40の一方の主面から他方に主面に貫通された第1の貫通孔31、第2の貫通孔42が設けられている。尚、第1の凹部31及び第2の凹部42の開口サイズは、内部に収容する水晶素板20の主面サイズより小さくなっている。
また、第2の外装体40の厚みは、第2の基部40aと第2の枠部40bの厚みを足して、70〜140μmになっている。
また、第1の外装体30、第2の外装体40との間隔は、収容される水晶素板20の厚み程度となっている。
【0018】
このように構成される洗浄治具100は、水晶素板20が、前記第1の凹部31の水晶素板20に対向する底面と前記第2の凹部41の水晶素板20に対向する底面にはさまれて第1の外装体30から脱落しないようになっている。
よって、水晶素板20が前記第1の凹部31の底面と前記第2の凹部41の底面とにより挟まれたことになるため、従来の洗浄治具に比べ、洗浄治具100全体の剛性を保持したまま水晶素板20の収納スペースを小さくできるので、収納した水晶素板20に水流があたっても動きにくくなる。
【0019】
さらに、第2の外装体40の他方の主面の4隅には他方の主面側に開口した窪み部50が形成されており、前記窪み部50よりも形状が小さい磁石60が、前記窪み部50のそれぞれに収容されている。
前記磁石60を第2の外装体40に設けることで、第1の外装体30と第2の外装体40は確実に磁石60の磁力により接合固定することができる。よって、ねじなどで第1の外装体30と第2の外装体40とを接合固定するよりも簡易に接合固定することができる。
【0020】
洗浄治具100は、第1の外装体30の第1の凹部31内に水晶素板20を収容し、第2の外装体40の第2の凹部41に第1の外装体30の第1の枠部30bを嵌め込むようにして、第1の外装体30と第2の外装体40を重ね合わせ、接合固定状態で使用される。
前記水晶素板20が収容された洗浄治具100の第1の貫通孔32及び第2の貫通孔42の開口に向けて水流を噴射させる。
第1の外装体30に設けられた第1の貫通孔32と第2の外装体40に設けられた第2の貫通孔42を通して、水流が水晶素板20にあたることによって、前記水晶素板20に付着している付着物が落とされ、水晶素板20の洗浄を行なっている。
【0021】
このような水流を直接水晶素板20に当てる洗浄方法を用いても、前記第1の枠部30bが前記第2の凹部41内に嵌め込むことにより、水晶素板20が第1の凹部31底面と第2の凹部41の底面により挟まれるため、水晶素板20が動ける空間が小さくなり、水晶素板20が激しく動くことがなくなるので、水晶素板20が第1の外装体30の第1の凹部31底面や第2の外装体40の第2の凹部41底面にぶつかることで水晶素板20が破損することがなくなるので、洗浄での歩留まりを向上させることが可能となる。
また、洗浄治具本体をなくすことで、洗浄治具本体と外装体との間に水晶素板20が入り込むことがなくなるので、水晶素板20が破損することを防止することができる。
洗浄治具本体をなくすことで、第1の外装体30と第2の外装体40の厚みを確保することができるので、第1の外装体30及び第2の外装体40の反りや破損を防止することができる。
【0022】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記実施形態においては、第2の外装体40の他方の主面の4隅には凹部50が設けられており、前記窪み部50よりも形状が小さい磁石60を、前記窪み部50に収容し、第2の外装体40は、第1の外装体30に確実に接合固定することができることが記載されていたが、第1の外装体30にも窪み部を設け、磁石60を収容することにより、第2の外装体40のみに磁石60を備えた場合に比べ、より強固に接合固定することが可能となる。
【0023】
また、前記実施形態においては、第1の貫通孔31、第2の貫通孔42は、平面形状は四角形で記載されていたが、円形でも構わない。また、水晶素板20も平面形状は四角形で記載されていたが、円形の板であっても構わない。
【0024】
また、前記実施形態においては、薄板を水晶素板20として説明したが、セラミック、ガラス、サファイア等の硬脆材のものであっても構わない。
【0025】
また、圧電デバイスは、容器体の一方の主面に形成されている凹部空間内に、水晶素板20に励振電極が設けられた水晶振動素子が搭載され、前記容器体の封止用導体パターンと蓋体が接合され、気密封止されている水晶振動子がある。
また、容器体に水晶振動素子と集積回路素子が搭載され、前記容器体の封止用導体パターンと蓋体が接合され、気密封止されている水晶発振器がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄治具を示す分解斜視図である。
【図2】図1のAの部分拡大図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る洗浄治具の第2の外装体を第2の枠部側から見た外観斜視図である。
【図5】図4のCの部分拡大図である。
【図6】従来の洗浄治具に水晶素板を収容した状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0027】
20・・・水晶素板
30・・・第1の外装体
30a・・・第1の基部
30b・・・第1の枠部
31・・・第1の凹部
32・・・第1の貫通孔
40・・・第2の外装体
40a・・・第2の基部
40b・・・第2の枠部
41・・・第2の凹部
42・・・第2の貫通孔
50・・・窪み部
60・・・磁石
100・・・洗浄治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板を洗浄する際に用いられる洗浄治具であって、
第1の基部と第1の枠部により設けられる前記薄板が挿入可能な第1の凹部を有し、第1の凹部底面に第1の貫通孔が設けられている第1の外装体と、
第2の基部と第2の枠部により設けられる第2の凹部を有し、第2の凹部底面に第2の貫通孔が設けられている第2の外装体とを備え、
前記第1の枠部が前記第2の凹部内に嵌め込めるようになっていることを特徴とする洗浄治具。
【請求項2】
前記第1外装体及び第2の外装体に窪み部を設け、前記窪み部に磁石を収容することを特徴とする請求項1記載の洗浄治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−240977(P2009−240977A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92461(P2008−92461)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】