説明

洗浄消毒装置及び洗浄消毒装置の制御方法

【課題】製造コストの上昇を抑えつつ、2種類の給水異常の判別と、水道設備の開栓忘れによる給水異常の警告の迅速化を実現する。
【解決手段】洗浄槽には、洗浄に必要な適正水量に対応する第1水位と、第1水位よりも低い第2水位の2つの水位を検知可能な水位センサが設けられている。給水が開始されると、給紙開始からの経過時間Tの計測を開始する。洗浄消毒装置は、第2所定時間以内に第2水位に到達しない場合に、水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定し、蛇口や元栓を開放すべき旨の第2警告を行う。さらに、第1所定時間以内に第1水位に到達しない場合に、水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定し、水フイルタの交換時期が到来したことを知らせる第1警告を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡などの医療器具を洗浄消毒する洗浄消毒装置及び洗浄消毒装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みの内視鏡を洗浄及び消毒する洗浄消毒装置が知られている(特許文献1及び2参照)。洗浄消毒装置は、使用済みの内視鏡を洗浄槽に収容し、洗浄工程、消毒工程、すすぎ工程等からなる洗浄消毒処理を自動的に行う。洗浄槽には、洗浄液、消毒液、水などの液体が貯留される。貯留された液体によって、内視鏡に対して洗浄、消毒、すすぎの各工程が行われる。
【0003】
洗浄工程やすすぎ工程において、洗浄槽への給水は給水経路を通じて行われる。給水経路は配管によって構成され、水道設備を構成する蛇口とホースで接続される給水口を上流端とし、洗浄槽に設けられる給水ノズルを下流端とする経路である。給水経路上には、水を濾過する水フイルタと給水経路を開閉する給水弁が配置されている。給水弁は電動で開閉される電磁弁であり、洗浄消毒装置は、給水弁の開閉を制御することで給水を行う。
【0004】
特許文献1に記載されているように、洗浄消毒装置の洗浄槽には、洗浄槽に給水される水の水位を検知する水位センサが設けられている。水位センサは、洗浄に必要な適正水量に対応する適正水位を検知する。洗浄消毒装置は、給水開始後、水位センサからの検知信号に基づいて適正水位に達したと判定し、給水弁を閉じて給水を停止する。
【0005】
当然ながら、水道設備の蛇口や元栓を開け忘れている場合には、給水弁を開けても洗浄槽に水は供給されない。特許文献1に記載の洗浄消毒装置では、給水開始からの経過時間を計測することにより、洗浄槽の水の水位が所定時間以内に適正水位に到達するか否かを監視して、適正水位に到達しない場合に、給水異常と判定し、警告している。
【0006】
一方、特許文献2に記載の洗浄消毒装置は、水フイルタの下流側の水圧を測定する圧力センサを設けて、測定される水圧がほぼ「0」のときに水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定し、警告している。さらに、水フイルタの交換直後に測定した水圧を初期値として、初期値と、水フイルタの目詰まりによって徐々に減少する水圧との圧力差を調べることにより、水フイルタの目詰まりによる給水異常を判定し、警告している。このように、特許文献2に記載の洗浄消毒装置では、圧力センサを用いることで、水道設備の開栓忘れによる給水異常と水フイルタの目詰まりによる給水異常の2種類の給水異常を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−140930号公報
【特許文献2】特開平11−128158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療器具の洗浄消毒装置に用いられる水フイルタは、浄化能力が高い高価なフイルタが用いられる。特許文献2に記載のように、2種類の給水異常を判別する技術を用いれば、水道設備の開栓忘れであるにも関わらず、水フイルタの目詰まりであると誤って判定することがないため、交換時期が到来していない水フイルタの不要な交換が防止される。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、圧力センサが必要になるため、洗浄消毒装置の製造コストの上昇を招くという問題があった。既存の洗浄消毒装置を改造する場合には、上昇するコストには、圧力センサの部品コストに加えて、圧力センサを配置するための給水経路を構成する配管レイアウトの見直しなどの設計変更に伴うコストの上昇分も含まれる。こうしたコストは無視できない額になるため、製造コストの上昇を抑えて、2種類の給水異常を判別する方策が求められている。
【0010】
特許文献1に記載されているように、洗浄消毒装置に標準装備されている、適正水位を検知する水位センサを用いて、給水異常を検知する方法では、圧力センサを追加する必要がないので製造コストの上昇はないが、2種類の給水異常を判別できないという問題がある。
【0011】
また、特許文献1の方法では、適正水位を検知する水位センサを用いて給水異常を判定するため、給水が正常に行われた場合に洗浄槽の水位が適正水位に到達するまでの給水時間が、判定に必要な時間となるため、給水異常の警告が出るまでに時間が掛かるという問題がある。
【0012】
本出願人の調査によれば、医療現場は繁忙を極めているため、内視鏡を洗浄消毒装置にセットして開始指示を入力した直後に洗浄消毒装置から離れてしまう操作者が多いことが判明している。警告が出た時点において操作者がその場にいないと警告に気付かないため、洗浄消毒装置は洗浄消毒処理を中止した状態で操作者の操作を待機する待機状態となる。待機状態のまま放置されると、操作者が給水異常に気付いて再開されるまでの間、洗浄消毒処理が停滞する。
【0013】
水フイルタの目詰まりによる給水異常が発生した場合には、水フイルタの交換作業が必要となる。そのため、その給水異常を早期に発見できたとしても、復旧までには手間と時間が掛かるので、洗浄消毒処理の停滞は避けがたい。一方、水道設備の開栓忘れによる給水異常の場合は、蛇口や元栓を開放するだけで復旧できるので、手間も時間も掛からない。また、開栓忘れは、原因が人為ミスであるため、比較的発生頻度も高い。そのため、開栓忘れによる給水異常を早期に発見できれば、洗浄消毒処理の停滞を大幅に減らすことができる。したがって、2種類の給水異常のうち、水道設備の開栓忘れによる給水異常については、洗浄消毒装置から操作者が離れる前にできるだけ早く警告を出すことが求められている。
【0014】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、製造コストの上昇を抑えつつ、2種類の給水異常の判別と、水道設備の開栓忘れによる給水異常の警告の迅速化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の洗浄消毒装置は、医療器具が収容される洗浄槽と、水道設備からの水を洗浄槽に給水する給水経路を開閉する給水弁と、前記給水経路上に交換可能に配置され、給水される水を濾過する水フイルタと、洗浄槽内の水の水位を検知する水位センサであり、前記水位が、医療器具の洗浄に必要な第1水位に到達したときに第1検知信号を出力し、第1水位よりも低い第2水位に到達したときに第2検知信号を出力する水位センサと、前記給水弁が開かれる給水開始時点からの経過時間を計測するタイマと、前記経過時間と前記第1検知信号に基づいて、前記水位が、第1所定時間以内に前記第1水位に到達したか否かを調べて、前記第1所定時間以内に前記第1水位に到達しない場合に、水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定する第1判定処理と、前記経過時間に基づいて前記第1所定時間よりも短い第2所定時間以内に前記第2検知信号の出力が有るか否かを調べて、前記第2検知信号が無い場合に水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定する第2判定処理とを実行する判定手段と、前記第1判定処理において水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定された場合に、その旨を警告する第1警告処理と、前記第2判定処理において水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定された場合に、その旨を警告する第2警告処理とを実行する警告手段とを備えていることを特徴とする。
【0016】
前記判定手段は、前記水位が前記第1所定時間以内に前記第1水位に到達した場合において、前記第1水位に到達したときの前記経過時間である到達時間が、前記第1所定時間よりも短い第3所定時間以上か否かを調べて、水フイルタの交換時期が近づいたか否かを判定する第3判定処理を実行し、前記警告手段は、水フイルタの交換時期が近づいたと判定された場合に、その旨を警告する第3警告処理を実行することが好ましい。
【0017】
前記第2水位は、水道設備の開栓忘れがなく正常に洗浄槽に給水された場合において、前記水位が前記第2所定時間以内に到達可能な高さに設定されていることが好ましい。前記第2所定時間は約10秒〜約30秒である。
【0018】
前記警告手段は、さらに、前記給水開始から前記第2判定処理が終了するまでの間、待機すべきことを促す第4警告処理を実行することが好ましい。
【0019】
前記水位センサは、前記第1水位及び第2水位の2つの水位を検知可能な1ユニットのセンサであることが好ましい。
【0020】
前記水位センサは、さらに、前記第1水位よりも高い、オーバフロー検知用の第3水位を検知可能なことが好ましい。
【0021】
本発明の洗浄消毒装置の制御方法は、水道設備からの水を濾過する水フイルタが交換可能に配置された給水経路を通じて、給水経路上に配置された給水弁を開けて、医療器具が収容される洗浄槽への給水を開始する給水開始ステップと、給水開始からの経過時間を計測する計測ステップと、前記洗浄槽内の水の水位を検知する水位センサであり、医療器具の洗浄に必要な第1水位を検知したときに第1検知信号を出力し、第1水位よりも低い第2水位を検知したときに第2検知信号を出力する水位センサを用い、給水開始から第1所定時間以内に前記洗浄槽内の水位が前記第1水位に到達したか否かを調べて、第1水位に到達しない場合に、水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定する第1判定ステップと、前記水位センサを用い、前記経過時間に基づいて前記第1所定時間よりも短い第2所定時間以内に前記第2検知信号の出力が有るか否かを調べて、前記第2検知信号が無い場合に水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定する第2判定ステップと、前記第1判定処理において水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定された場合に、その旨の第1警告をする第1警告ステップと、前記第2判定処理において水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定された場合に、その旨の第2警告をする第2警告ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、洗浄に必要な適正水量に対応する第1水位と、第1水位よりも低い第2水位の2つの水位を検知可能な水位センサを用い、給水開始から第1所定時間以内に第1水位に達したか否かを判定する第1判定処理と、給水開始から第1所定時間よりも短い第2所定時間以内に第2水位に達したか否かを判定する第2判定処理とを行うから、製造コストの上昇を抑えつつ、2種類の給水異常の判別が可能になり、かつ、水道設備の開栓忘れに起因する給水異常の警告を迅速に出すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の洗浄消毒装置の外観図である。
【図2】トップカバーを開けた状態の洗浄消毒装置の外観図である。
【図3】配管系統を示す説明図である。
【図4】洗浄消毒処理手順を示すフローチャートである。
【図5】洗浄工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】すすぎ工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】消毒後のすすぎ工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】電気構成の概略を示すブロック図である。
【図9】水位センサの説明図である。
【図10】給水開始からの経過時間に応じた水位変化を示すグラフである。
【図11】警告メッセージの説明図である。
【図12】給水処理手順を示すフローチャートである。
【図13】第4警告メッセージの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び図2に示すように、内視鏡洗浄消毒装置(以下、洗浄消毒装置と呼ぶ)10は、箱状の装置本体11を備えている。装置本体11の上部には、使用後の内視鏡12を収容し、洗浄液や消毒液が供給される洗浄槽13が設けられている。洗浄槽13は、上部が開放された水槽であり、例えばステンレス等の耐熱性、耐蝕性等に優れた金属材料で形成されている。装置本体11には、洗浄槽13の開口部13aを覆う蓋として機能するトップカバー16が設けられている。
【0025】
装置本体11は、シャーシ(図示せず)を有しており、シャーシには、洗浄槽13やトップカバー16の他、洗浄消毒処理を行うための洗浄消毒機構(図3参照)が設けられている。洗浄消毒機構は、洗浄液や消毒液を洗浄槽13に供給するための配管、ポンプ、電磁弁、さらに、洗剤や消毒液を貯留するタンクなどからなる。シャーシの外周は、前面パネル17、側面パネル18、上部パネル19からなる外装部材によって覆われている。
【0026】
洗浄槽13の内周形状は、上方から見ると、前方部分が略円形で、後方部分が略方形をしている。前方部分の底面には、内視鏡12が載置される略円形のネット21が配置されている。ネット21は、内視鏡12と底面との間に液体が流れ込む隙間を作り、洗浄槽13に供給される液体が、内視鏡12の外表面に接触する面積を増加させる。
【0027】
ネット21の中央には、内視鏡12から取り外された、送気・送水ボタンや吸引ボタンなどの小物部品を収容する小物洗浄かご22が配置されている。小物洗浄かご22の近傍には、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61(図3参照)、温度センサ57(図3参照)が配置されている。天井洗浄ノズル23は、上方に位置するトップカバー16の内面(天井)に向けて洗浄液や水を噴射して、天井を洗浄する。小物洗浄ノズル61は、小物洗浄かご22に収容された小物部品に向けて洗浄液や水を噴射して小物部品を洗浄する。温度センサ57は、洗浄槽13内に貯えられた液体の温度を測定する。
【0028】
内視鏡12は、被検体内に挿入される長尺の挿入部12a及びユニバーサルコード12bが巻き回された状態で、小物洗浄かご22の周囲を取り囲むようにして、ネット21上に載置される。ユニバーサルコード12bは、内視鏡12から受信する撮像信号を処理するプロセッサや、内視鏡12に内挿されたライトガイドに照明光を入力する光源装置に接続されるコードである。ユニバーサルコード12bの一端には、プロセッサに接続するコネクタや、光源装置に接続するためのコネクタが設けられている。プロセッサに接続するコネクタには、電気的な導通を得るための接点部が設けられているため、洗浄の際には、防水キャップが取り付けられる。
【0029】
挿入部12aには、送気・送水を行うための送気・送水チャンネル、鉗子などの処置具を挿通するための鉗子チャンネル、観察の障害となる体液や汚物等を吸引する吸引チャンネルが配設されている。送気・送水用のチャンネルは、一端が挿入部12aの先端の噴射ノズルに接続されており、他端は、挿入部に連設された操作部を経由してユニバーサルコード12b内へ延びている。鉗子チャンネルは、一端が挿入部12aの先端の鉗子出口に接続しており、他端が操作部12cの鉗子入口に接続している。吸引チャンネルは、挿入部の先端の鉗子出口から鉗子入口に向けて分岐する分岐点までが鉗子チャンネルと共用されており、分岐点から操作部12cを経由してユニバーサルコード12b内へ延びている。
【0030】
洗浄槽13の後方部分には、底面に、廃液口26が設けられており、側面には、水位センサ27が設けられている。廃液口26は、洗浄槽13から、使用済みの洗浄液や消毒液、及びすすぎに使用した水を排出する。水位センサ27は、貯えられた液体の液面の位置(水位)を検知する。
【0031】
洗浄槽13の後方部分には、洗浄槽13の底面よりも一段高いテラス部13b、13cが設けられている。各テラス部13b、13cは、後方部分の2つの角にそれぞれ設けられており、上方から見ると、略三角形状をしている。一方のテラス部13bには、気密試験ポート28が設けられている。気密試験ポート28は、内視鏡12の挿入部12a及びユニバーサルコード12bの外皮と内蔵物の隙間に圧縮空気を送り込み、外皮に液体が進入する小さな孔や亀裂が生じていないかを試験するためのポートである。気密試験ポート28は、図示しないチューブを介して、ユニバーサルコード12bのコネクタに設けられた気密試験用の口金と接続される。
【0032】
また、テラス部13bには、内視鏡12の洗浄、消毒に用いる液体を洗浄槽13内に供給する供給ポートが設けられている。供給ポートには、洗浄槽13内に向けて屈曲された給水ノズル29a、消毒液供給ノズル29b、洗剤供給ノズル29cが設けられている。これらのノズル29a〜29cは、洗浄槽13内に貯えられる液体の液面よりも高い位置に配置されている。
【0033】
給水ノズル29aは、洗浄槽13内に水を供給し、洗剤供給ノズル29cは、洗剤タンク内に貯えられている洗剤を洗浄槽13内に供給する。使用後の内視鏡12に付着している体液や汚物は、水と洗剤とが混合された洗浄液により洗い流される。消毒液供給ノズル29bは、消毒液タンク内に貯えられている消毒液を洗浄槽13内に供給する。洗浄液で洗い流されなかった病原菌やウイルスは、消毒液により除去され、または病原性が消失される。
【0034】
テラス部13bの側面には、洗浄槽13内に貯留された液体を循環させて、洗浄槽13内の液体に水流を生じさせるための循環口31が設けられている。循環口31は、洗浄槽13内の液体を、洗浄槽13の下方に配置された循環用の配管に吸引する。給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23、小物洗浄ノズル61は、循環用のノズルとしても使用され、循環口31から循環用の配管に吸引された液体は、各ノズル29a、23、61から洗浄槽13に再供給される。
【0035】
テラス部13cには、内視鏡12の送気・送水チャンネル、吸引チャンネル及び鉗子チャンネル内の洗浄、消毒に用いられるチャンネル洗浄ポート32が設けられている。チャンネル洗浄ポート32は、送気・送水チャンネル用、吸引チャンネル及び鉗子チャンネル用の複数のポートが設けられている。各ポートは、接続チューブ62(図3)を介して、送気・送水チャンネル及び吸引チャンネルのそれぞれに連通する、送気・送水ボタン及び吸引ボタンが装着される装着口と、鉗子チャンネルに連通する鉗子入口とに接続される。装着口と鉗子入口は内視鏡12の操作部12cに設けられている。チャンネル洗浄ポート32は、水、洗浄液、消毒液、アルコール、及び圧縮空気等の流体を、送気・送水チャンネル、鉗子チャンネル及び吸引チャンネル内に供給する。
【0036】
装置本体11の前面パネル17は、側端部がヒンジを介してシャーシに取り付けられており、開閉自在となっている。前面パネル17内には、図示しない収納トレイが設けられている。収納トレイには、洗剤タンク83(図3参照)及びアルコールタンク86(図3参照)が収納されている。洗剤タンク83には、内視鏡12の洗浄に使用される洗剤が貯えられている。アルコールタンク86には、内視鏡12の洗浄、消毒後に、鉗子チャンネル等の各チャンネル内に流されるアルコールが貯えられている。前面パネル17には、各タンク内の液体の残量視認用の透明窓33が取り付けられている。
【0037】
また、収納トレイには、消毒液(例えば、過酢酸、グルタールアルデヒド(GA)、オルトフタルアルデヒド(OPA)など)の濃縮液を貯えた供給ボトルが交換可能に収納される。供給ボトルは、シャーシに備え付けられた消毒液タンク84(図3参照)に接続され、濃縮液を消毒液タンク84内に供給する。濃縮液は、消毒液タンク内において水で適正な濃度に希釈されて使用される。
【0038】
符号34は、洗浄履歴情報が印字されたプリントを排出する排紙口であり、排紙口34の奥には、プリンタ105(図8参照)が配置されている。洗浄履歴情報は、例えば、洗浄を実施した日時、洗浄担当者名、洗浄した内視鏡12のIDなどの情報である。洗浄履歴情報が印字されたプリントは、内視鏡12の洗浄消毒結果の確認、管理等に用いられる。
【0039】
上部パネル19の前端部には、操作パネル36が設けられている。操作パネル36には、各種の操作指示を入力するための操作ボタン37、各種表示を行うディスプレイ38、及び読み取り部39が設けられている。操作ボタン37は、例えば、洗浄、消毒の開始を指示するスタートボタン、緊急停止を指示するためのストップボタン、ディスプレイ38に表示される操作画面を操作するための操作キーからなる。
【0040】
ディスプレイ38は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)であり、洗浄プログラムを選択する選択画面や各種設定を行うための設定画面を含む操作画面を表示する他、洗浄・消毒処理の進捗状況や残り時間、トラブル発生時の警告メッセージ等を表示する。洗浄プログラムは、例えば、洗浄、消毒、すすぎの各工程を、どのような順序でそれぞれどの程度の時間実行するかといった洗浄処理の内容を規定する。洗浄プログラムは、洗浄、すすぎ、消毒、すすぎ、乾燥という順序で各工程を実行する標準的な洗浄プログラムの他、各工程を単独で実行する洗浄プログラムや、標準的な洗浄プログラムにおいて、洗浄時間や消毒時間が異なる複数の洗浄プログラムが用意されている。
【0041】
読み取り部39は、その内部にタグリーダ104(図8参照)が配置されている。タグリーダ104は、内視鏡12に設けられたRFIDタグや、洗浄担当者のネームプレートに設けられたRFIDタグと非接触で通信してRFIDタグ内の情報(内視鏡12のIDや洗浄担当者名など)を読み取る。
【0042】
上部パネル19は、洗浄槽13の開口部13aを露出する開口19aが形成された枠形状をしている。洗浄槽13の開口部13aの上端には、洗浄槽13の垂直に立ち上がる側面と直交し、水平方向に延設された周縁部13dが形成されている。周縁部13dと上部パネル19は、両者の境界から気体や液体が漏れる隙間が生じないように接合されている。上部パネル19の開口19aの内縁には、液体が重力の作用によって洗浄槽13に向かって流れるように、洗浄槽13の開口部13aに向かって傾斜した斜面19bが形成されている。
【0043】
トップカバー16は、例えば、プラスチックで形成された略矩形状の板状体で形成されたカバー本体41と、カバー本体41の洗浄槽13と対面する下面側の外周部に取り付けられたパッキン42とからなる。トップカバー16は、カバー本体41の後方から突出した取り付け部43(図1参照)において装置本体11に取り付けられており、取り付け部43を支点として、洗浄槽13の開口部13aを覆って閉じる閉じ位置と開口部13aを開放して露出させる開き位置との間で回動する。
【0044】
トップカバー16は、モータによって電動で開閉される。開閉の操作指示は、フットペダル44の踏み込み操作によって入力される。フットペダル44は、前面パネル17の下方に配置されている。トップカバー16が閉じているときにフットペダル44を踏み込むとトップカバー16が開き、開いているときに踏み込むと閉じる。
【0045】
トップカバー16の上面は、清掃がしやすいように、細かな凹凸の無い緩やかな曲面で構成されている。トップカバー16の下面である天井は、天井洗浄ノズル23から噴射された液体が、天井洗浄ノズル23と対向する部分から周縁部までの天井の全面に行き渡るように、断面が、天井洗浄ノズル23との対向部分を頂点として、上方に向かって凸型の緩やかな円弧状に形成されている。また、トップカバー16の天井には、前方部分にネット46が設けられている。ネット46は、トップカバー16が閉じたときに、洗浄槽13の底面に配置されたネット21と対向する位置に配置されている。ネット46は、洗浄槽13に収容された内視鏡12を上方から押さえつけて、内視鏡12を液面下に沈める。
【0046】
カバー本体41は、洗浄槽13内の様子を外部から視認できるように、例えば、透明又は半透明のプラスチック材料で形成される。パッキン42は、ゴムなどの弾性材料で形成されており、洗浄槽13の開口部13aを気密及び水密に密閉する。パッキン42は、洗浄槽13の周縁部13d及び上部パネル19の開口19aの内側面と圧接して、洗浄槽13に供給された液体が外部に飛散すること、さらに、消毒液の臭気が外部に漏れることを防止する。
【0047】
トップカバー16の後方部分には、洗浄槽13の内部と外部を連通する通気路48(図1参照)が設けられている。洗浄槽13の開口部13aは、パッキン42によって密閉される。このため、トップカバー16が閉じられている状態において、洗浄槽13の液体が廃液口26や循環口31から排出されるときには、通気路48を通じて、外部から洗浄槽13内に外気が取り入れられる。
【0048】
また、トップカバー16が閉じ位置から開き位置への回動を開始する回動初期においては、パッキン42によって開口部13aが密閉されているので、その状態でトップカバー16が開き方向に回動すると、洗浄槽13内が負圧になる。パッキン42による開口部13aの密閉が解除されるまでの間、通気路48を通じて外部から洗浄槽13に外気が取り入れられる。これにより、洗浄槽13の内外の気圧差が解消されて、トップカバー16が開き方向に回動することができる。
【0049】
トップカバー16の上面には、消臭フイルタ49が交換可能に装着されるフイルタ装着部51が形成されている。フイルタ装着部51には、通気路48を構成するスリット51aが形成されている。消臭フイルタ49は、上方からスリット51aを覆うようにフイルタ装着部51に装着され、通気路48内に配置される。消臭フイルタ49は、通気路48を通じて洗浄槽13内から外部に排出される気体の臭気を消臭する。
【0050】
フイルタ装着部51には、消臭フイルタ49を覆うフイルタカバー52が開閉自在に設けられている。フイルタカバー52には、スリット52aが形成されており、スリット52aは、スリット51aとともに通気路48を構成する。スリット51aは、断面がクランク状に屈曲して形成されており、洗浄槽13内の液体がスリット51aを通じて消臭フイルタ49に飛散することを防止している。
【0051】
図3に示すように、洗浄槽13の下面には、ラバーヒータ56が取り付けられている。ラバーヒータ56は、洗浄槽13を介して、洗浄槽13内に貯えられた液体を加熱する。液体の温度は、温度センサ(TE)57によって測定されて、測定された温度に基づいてラバーヒータ56が制御される。洗浄液や消毒液は、温度によって洗浄効果や消毒効果が変動するため、ラバーヒータ56によって適正な温度に調節される。
【0052】
また、洗浄槽13の下面には、振動板59を介して超音波振動子58が取り付けられている。振動板59は、円板形状をしており、超音波振動子58は、振動板59の周方向に沿って複数個配列されている。超音波振動子58は、洗浄槽13を振動させることで、洗浄槽13内に貯留された液体を振動させて、内視鏡12を超音波洗浄する。超音波振動子58によって液体が振動すると、液体に微細な泡が発生し、その泡の破裂に伴うエネルギーによって物体の表面から汚れが浮き上る。
【0053】
接続チューブ62は、チャンネル洗浄ポート32と、内視鏡12の各チャンネルを接続するためのものである。接続チューブ62の一端には、内視鏡12に接続チューブ62を装着するためのアタッチメント(図示せず)が設けられている。
【0054】
洗浄消毒装置10の配管系統は、大きく分けて、水道設備の蛇口71からの水を洗浄槽13に供給する給水経路と、洗剤、消毒液、アルコール、圧縮空気を洗浄槽13にそれぞれ供給するための供給ポンプ(SP)72、73、74、75が配置される供給経路と、循環口31から洗浄槽13内の液体を吸引して洗浄槽13に再供給するための循環ポンプ(CP)76、77が配置される循環経路と、廃液口26から洗浄槽13内の液体を排出する排出経路からなる。
【0055】
給水経路は、蛇口71とホースで接続される給水口78から給水ノズル29aに至る経路であり、給水経路には、バルブ(V)79、水フイルタ81、バルブ82が給水方向に沿って順に配置されている。バルブ79は、給水口78と水フイルタ81の間の経路を開閉して水の供給と停止を切り替える給水弁として機能する電磁弁である。
【0056】
水フイルタ81は、水道水に含まれる異物や細菌を捕捉して水道水を濾過する浄水フイルタである。医療器具である内視鏡12の洗浄消毒装置10では、高い浄水能力が求められるため、水フイルタ81には、酵素などの細菌作用を持つ物質が含有されたグレードの高い浄水フイルタが用いられる。バルブ82は、バルブ82から給水ノズル29aに通じる経路を、蛇口71に通じる給水経路と循環ポンプ76に通じる循環経路のいずれかと選択的に接続するための三方電磁弁である。
【0057】
供給ポンプ72は、洗剤を貯留する洗剤タンク83と洗剤供給ノズル29cとを接続する供給経路上に配置されており、洗剤タンク83から洗剤を吸い上げて洗剤供給ノズル29cに供給する。供給ポンプ73は、消毒液を貯留する消毒液タンク84と消毒液供給ノズル29bとを接続する供給経路上に配置されており、消毒液タンク84から消毒液を吸い上げて消毒液供給ノズル29bに供給する。
【0058】
供給ポンプ74は、アルコールを貯留するアルコールタンク86を供給する供給経路上に配置されており、アルコールタンク86からアルコールを吸い上げる。アルコールの供給経路は、供給ポンプ74の下流側において、チャンネル洗浄ポート32へ通じる経路と小物洗浄ノズル61へ通じる経路の2つの経路に分岐しており、供給ポンプ74が吸い上げたアルコールは、それぞれの経路を経て、チャンネル洗浄ポート32と小物洗浄ノズル61に供給される。
【0059】
エアポンプ75は、大気を圧縮して、圧縮空気をチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に供給する供給経路上に配置されている。エアポンプ75の下流側には、大気中に雑菌を補足して大気を浄化するエアフイルタ87が配置されている。エアフイルタ87の下流側には、バルブ88が配置されている。
【0060】
バルブ88は、バルブ88からチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61へ通じる経路を、エアポンプ75に通じる大気を供給する経路と、循環ポンプ77に通じる経路のいずれかと選択的に接続するための三方電磁弁である。チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61のそれぞれとバルブ82を接続する経路上には、チャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61のそれぞれに通じる経路を開閉するバルブ89、91が配置されている。
【0061】
循環口31に一端が接続される循環経路は、循環ポンプ76へ通じる経路と、循環ポンプ77へ通じる2つの経路に分岐している。循環ポンプ76の下流側の経路は、さらに、バルブ82に通じる経路とバルブ92に通じる経路に分岐している。バルブ92は、循環ポンプ76と天井洗浄ノズル23とを接続する経路を開閉する電磁弁である。循環ポンプ76によって吸引された液体は、バルブ82及びバルブ92を経て給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23に供給される。循環ポンプ77の下流側の経路は、バルブ88に接続している。循環ポンプ77によって吸引された液体は、バルブ88からバルブ89及びバルブ91を経て、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に供給される。
【0062】
廃液口26に一端が接続される排出経路は、切り替えバルブ93に接続されている。切り替えバルブ93の下流側は、排出ポンプ(DP)94へ通じる経路と、消毒液タンク84へ通じる経路の2つの経路に分岐している。排出ポンプ94は、廃液口26から排出される液体を吸引して、装置外の下水へ廃液として排出する。切り替えバルブ93は、廃液口26から切り替えバルブ93の下流側への液体の排出を停止する閉じ状態と、廃液口26から排出ポンプ94へ通じる経路を開く状態と、廃液口26から消毒液タンク84へ通じる経路を開く状態の3つの状態を選択的に切り替える電磁弁である。
【0063】
洗浄槽13に供給された洗浄液や水は、1回使用された後、排出ポンプ94によって吸引されて装置外へ排出される。一方、消毒液は、複数回使用することが可能であるため、消毒能力が消失するまでの間、使用後の消毒液は、廃液口26から切り替えバルブ93を経由して消毒液タンク84に戻される。切り替えバルブ93は、消毒液を消毒液タンク84に戻すために設けられている。消毒液は激臭を放つため、洗浄液や水と同様に下水に排出することができない。消毒液タンク84には、図示しない排出口が設けられており、所定回数使用された消毒液は、消毒液タンク84の排出口から回収される。
【0064】
図4〜7のフローチャートを参照しながら洗浄消毒処理の手順を説明する。図4のフローチャートに示すように、標準的な洗浄プログラムが選択された場合には、洗浄消毒装置10は、洗浄消毒開始指示が入力されると(S(ステップ)10)、洗浄工程(S20)、すすぎ工程(S30)、消毒工程(S40)、すすぎ工程(S50)、乾燥工程(S60)を順次実行する。
【0065】
図5のフローチャートに示すように、洗浄工程(S20)は、超音波洗浄と、洗浄液による洗浄(以下、本洗浄という)のサブ工程に分けられる。洗浄工程(S20)では、まず、バルブ82が、バルブ79と給水ノズル29aを接続する状態に切り替えられた状態で、バルブ79が開かれて給水が実行される(S21)。水位センサ27が洗浄槽13に適量の水が満たされたことを検知すると、バルブ79が閉じられることにより給水が停止する。そして、超音波振動子58が所定時間作動して超音波洗浄が行われる(S22)。超音波洗浄が終了すると、本洗浄が開始される。
【0066】
本洗浄では、まず、供給ポンプ72が作動して洗剤タンク83から洗剤供給ノズル29cを通じて洗浄槽13に洗剤が供給される(S23)。洗浄槽13内で水と洗剤が混合されて洗浄液が生成される。洗浄液は、ラバーヒータ56によって加熱されて適正な温度に調節される。給水と洗剤供給が終了すると、洗浄液の循環が行われる(S24)。洗浄液の循環では、まず、切り替えバルブ93が閉じられて、バルブ82によって循環ポンプ76と給水ノズル29aへ通じる経路が開かれるとともに、バルブ92によって循環ポンプ76から天井洗浄ノズル23に通じる経路が開かれる。さらに、バルブ89、91によってチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61に通じる経路が開かれる。
【0067】
この状態で、循環ポンプ76、77が作動して、循環口31から吸引された洗浄液が、給水ノズル29a、天井洗浄ノズル23、チャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61を通じて洗浄槽13に再供給される。こうした循環により洗浄槽13内に水流が発生する。この水流によって内視鏡12の汚れが洗い流される。
【0068】
チャンネル洗浄ポート32から供給される洗浄液は、内視鏡12の各チャンネルを通って内部の汚れを洗い流し、挿入部の先端のノズル、鉗子出口等から洗浄槽13に放出される。小物洗浄ノズル61は小物洗浄かご22内の小物部品に向けて洗浄液を噴射して小物部品の汚れを洗い流す。天井洗浄ノズル23は天井に向けて洗浄液を噴射して、天井の汚れを洗い流す。洗浄液の循環が終了すると、排出ポンプ94によって使用済みの洗浄液が排出される(S25)。
【0069】
洗浄工程が終了すると、内視鏡12の外表面や各チャンネルに付着した洗浄液を洗い流すすすぎ工程(S30)が行われる。図6のフローチャートに示すように、すすぎ工程は、給水(S31)、循環(S32)、排水(S33)のサブ工程からなる。バルブ79が開かれると給水口78から給水が行われ、洗浄槽13に水が貯留される。給水終了後、洗浄工程と同様に、循環ポンプ76、77が作動して水の循環が所定時間行われる。
【0070】
図4において、消毒工程(S40)では、供給ポンプ73が作動して消毒液タンク84から消毒液供給ノズル29bを通じて洗浄槽13に消毒液が供給される。消毒液は、ラバーヒータ56によって加熱されて適正な温度に調節される。そして、洗浄工程の循環と同様に、循環ポンプ76、77が作動して消毒液の循環が所定時間行われる。循環が終了すると、切り替えバルブ93によって消毒液タンク84に通じる経路が選択されて、消毒液が廃液口26から消毒液タンク84に戻される。
【0071】
消毒工程が終了すると、内視鏡12の外表面や各チャンネルに付着した消毒液を洗い流すすすぎ工程(S50)が行われる。図7のフローチャートに示すように、すすぎ工程(S50)は、すすぎ工程(S30)と同様の処理が行われるが、消毒液を十分に洗い流すためにすすぎ工程(S30)が規定回数(N回)連続して繰り返される。
【0072】
洗浄消毒装置10は、すすぎ工程(S50)を実行する際に、すすぎ工程(S30)の回数をカウントするカウンタを「0」にリセットする(S51)。そして、S52において、カウンタをインクリメントして、カウント値を「1」にする。この後、すすぎ工程(S30)を実行する(S53)。S53が終了すると、カウンタ値と規定回数Nを比較し(S54)、カウンタ値が規定回数Nに達していない場合には(S54でN)、S51に戻り、すすぎ工程(S30)を繰り返す。こうした処理が、カウンタ値が規定回数Nに到達するまで繰り返される。カウンタ値が規定回数Nに達した場合はすすぎ工程(S50)を終了する。
【0073】
図4において、乾燥工程(S60)では、バルブ89、92を開いてチャンネル洗浄ポート32、小物洗浄ノズル61へ通じる経路が開かれる。供給ポンプ74が作動して、アルコールタンク86からアルコールが吸引されて、吸引されたアルコールがチャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61を通じて、内視鏡12の各チャンネル及び小物部品に吹き付けられる。
【0074】
この後、バルブ88によってエアポンプ75からバルブ89、91へ通じる経路が選択されて、エアポンプ75が作動する。エアポンプ75が作動すると、チャンネル洗浄ポート32及び小物洗浄ノズル61から、各チャンネル及び小物部品に圧縮空気が吹き付けられて、アルコールとともに各チャンネル内及び小物部品の外表面に付着した水滴がアルコールとともに吹き飛ばされる。また、アルコールは揮発性が高いため、アルコールの気化熱によって表面に付着した水分を蒸発させる。こうして内視鏡12の各チャンネル及び小物部品が乾燥される。
【0075】
図8に示すように、洗浄消毒装置10は、複数の電気部品を備えており、これらは装置全体を統括的に制御するCPU101に接続されている。ROM102は、装置全体の制御に用いられる制御プログラムの他、上述の洗浄プログラムの内容が記述されたデータなど、予め設定された各種制御情報を格納している。
【0076】
RAM103は、ROM102からロードした制御プログラムなどの実行領域である。EEPROM104は、装置番号、各種設定情報、各種制御情報等の他、洗浄履歴情報を記憶している。装置番号は、個々の洗浄消毒装置10に付された識別情報である。装置番号は、製造時に付与された製造番号やシリアルナンバー、洗浄消毒装置10を使用する病院内で複数台の装置を識別するために付与された識別番号である。設定情報には、後述する給水異常を検知するための時間などが含まれる。
【0077】
制御情報には、例えば、消毒液の耐用回数が含まれている。上述の通り、消毒液は、複数回使用することが可能であり、耐用回数とは、消毒液が消毒効果を維持した状態で内視鏡12の消毒を行うことができる使用回数であり、消毒液のおおよその寿命を表している。耐用回数は、使用する消毒液によって異なる場合があるので、EEPROM104に記憶することにより、変更可能としている。耐用回数は、操作パネル36から直接入力してもよいし、消毒液名に基づいて自動的に設定してもよい。
【0078】
洗浄履歴情報は、上述した通り、洗浄を実施した日時、洗浄担当者名、洗浄した内視鏡12のIDなどの情報であり、この他、消毒液の使用回数や消毒液温度、個々の内視鏡12の識別情報であるスコープIDが含まれる。プリンタ105は、記録紙に洗浄履歴情報を印字して、印字したプリントを排紙口34から排出する。スピーカ113は、音声等による警告を出力する。ネットワークIF106は、LANなどのネットワークに接続して通信制御を行うためのインターフェースであり、例えば、管理用PC等に接続するために用いられる。管理用PCは、例えば、複数の洗浄消毒装置10の洗浄履歴情報や稼働状況などを、LANを経由して収集し、それらの情報を集約的に管理するものである。
【0079】
また、CPU101には、水位センサ27、温度センサ57が接続されており、各センサ27、57は、水位検知信号や温度情報をCPU101に出力する。タイマ107は、時計回路などからの計時信号に基づいて、任意の時点からの経過時間Tを計測する。カウンタ108は、処理の繰り返し回数などのカウントに用いられる。さらに、CPU101には、供給ポンプ72〜74、循環ポンプ76、77、バルブ79、81、82、88、89、91、92、93、ラバーヒータ56、超音波振動子58からなる洗浄消毒処理機構を駆動するためのポンプ駆動部109、バルブ駆動部110、ヒータ駆動部111、超音波振動子駆動部112が接続されている。
【0080】
図9に示すように、水位センサ27は、洗浄や消毒に必要な適正な液量に応じた適正水位である水位LM(第1水位)と、水位LMよりも低い水位LL(第2水位)と、第1水位よりも高い水位LH(第3水位)の3つの水位を検知し、検知した水位に応じた検知信号を出力するレベルセンサである。
【0081】
水位センサ27としては、例えば、液体が接触すると電流が流れる電極を有する電極式のレベルセンサが使用される。電極式のセンサとしては、長さが異なる複数本の電極を有し、各電極によって、高さが異なる複数の液面の位置(水位)を検知可能なセンサであり、複数本の電極を1ユニットに収容した多点検知型のものが知られている。検知可能な水位が異なる複数ユニットのレベルセンサを設ける場合と比べて、設置スペースを省スペース化できるため、水位センサ27としては、多点検知型のセンサを使用することが好ましい。もちろん、設置スペースに余裕があれば、複数ユニットのレベルセンサを設けてもよい。
【0082】
また、レベルセンサとしては、電極式の他に、液面に応じてフロートが上下動するフロートスイッチ式のものも知られており、これを水位センサ27に使用してもよい。フロートスイッチ式のレベルセンサで、多点検知型のものがあればそれを用いてもよい。
【0083】
水位LHは、洗浄槽13に貯えられる水などの液体が適正水位を超えて洗浄槽13から溢れ出るのを防止するためのオーバフロー検知用の水位である。水位LHが検知された場合には、バルブ79を閉じて給水を停止し、排出ポンプ94を作動させて廃液口24から排出するといった処理が行われる。水位LLは、水道設備の開栓忘れによる給水異常を検知するための水位である。
【0084】
CPU101は、水位センサ27が水位LMと水位LLの2つの水位を検知したときに出力する第1及び第2の検知信号と、タイマ107によって計測される給水開始からの経過時間Tに基づいて、水道設備の開栓忘れによる給水異常と水フイルタ81の目詰まりによる給水異常の2種類の給水異常を判定し、警告を行う。
【0085】
図10のグラフにおいて、横軸は、バルブ79が開かれる給水開始時点からの経過時間Tを表し、縦軸は、洗浄槽13内に貯えられる水の水位Lを表している。第1所定時間T1は、空の状態の洗浄槽13に給水する場合において、給水開始時点から、水位Lが適正な水位LMに到達するまでの時間として許容される限界値であり、水フイルタ81の目詰まりによる給水異常を検知するための閾値である。第1所定時間T1は、例えば、約180秒(3分)に設定されている。
【0086】
洗浄消毒装置10が設置される施設毎の水道設備による変動や、洗浄槽13の大きさによって変動はあるものの、正常に給水が行われた場合の標準的な給水時間は約50秒程度である。グラフG1は、正常に給水が行われ給水開始から約50秒程度で水位LMに到達する場合の例であり、水位Lが水位LMに到達するまでの経過時間Tが第1所定時間T1以内の場合の例である。
【0087】
グラフG2は、水位Lが水位LMに到達するまでの経過時間Tが第1所定時間T1を超える場合の例である。水フイルタ81の目詰まりが進むと、単位時間当たりの給水量(グラフの傾きに相当)が減少して、グラフG1の状態からグラフG2のように傾きが小さくなり、経過時間Tが第1所定時間T1を超える。
【0088】
経過時間Tが第1所定時間T1を超えた場合には、水フイルタ81の目詰まりによる給水異常と判定される。この場合には、図11(A)に示すように、水フイルタ81の目詰まりが進み、水フイルタ81の交換時期が到来したこと、水フイルタ81を交換すべきことなどを表す警告メッセージ116が、操作パネル36のディスプレイ38(図1参照)に表示される。また、給水異常が発生した場合には、洗浄消毒装置10は、処理を中止して操作指示を待つ待機状態に移行する。
【0089】
第2所定時間T2は、空の状態の洗浄槽13に給水する場合において、給水開始時点から、水位Lが水位LLに到達するまでの時間として許容される限界値であり、水道設備の開栓忘れによる給水異常を検知するための閾値である。
【0090】
水道設備の開栓忘れの場合には、蛇口71や元栓が閉まっていて、蛇口71から給水口78に水が供給されないので、時間が経過しても洗浄槽13の水位Lは水位LLに到達しない。このため、水道設備の開栓忘れによる給水異常が発生した場合は、その旨をできるだけ早く通知する必要性が高い。
【0091】
また、開栓忘れによる給水異常は、復旧にフイルタ交換作業が必要になる目詰まりによる給水異常と異なり、蛇口71や元栓を開放するという簡単な作業で復旧が可能である。異常を検知した洗浄消毒装置10は、復旧されるまでの間処理を中止するので、その時間が長いほど、洗浄消毒処理が停滞する時間も長い。そのため、洗浄消毒装置10に内視鏡12をセットして開始指示を入力した操作者が、洗浄消毒装置10の側から離れる前に、操作者に対して開栓忘れによる給水異常の発生を伝えることができれば、洗浄消毒処理の停滞が少ない。
【0092】
洗浄消毒装置10では、できるだけ早いタイミングで開栓忘れによる給水異常の警告を出すように、第2所定時間T2は、第1所定時間T1よりも、短い時間に設定されている。具体的には、第1所定時間T1が約180秒であるのに対して、第2所定時間T2は、約10秒である。水位LLは、水道設備の開栓忘れがなく正常に水が供給される場合には、空の洗浄槽13への給水開始から第2所定時間T2以内に、水位Lが到達可能な高さに設定されている。
【0093】
経過時間Tが第2所定時間T2を超えても、水位Lが水位LLに到達しない場合、換言すれば、第2所定時間T2以内に、水位センサ27が水位LLを検知したときに出力する第2検知信号が無い場合には、洗浄槽13に水が供給されていない可能性が高いので、水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定される。この場合には、図11(B)に示すように、開栓忘れのため給水が開始されないこと、蛇口71や元栓を開放すべきことを表す警告メッセージ117がディスプレイ38に表示される。
【0094】
第3所定時間T3は、水フイルタ81の交換時期が到来する前に、交換時期が近づいたことを予告するタイミングを判定するための閾値であり、第1所定時間T1よりも短い時間に設定されている。グラフG3は、第1所定時間T1以内に水位Lが水位LMに到達したが、水位LMに到達したときの経過時間Tである到達時間TRが、第3所定時間T3以上になった場合の例である。
【0095】
グラフG3のように、到達時間TRが第3所定時間T3以上である場合は、言い換えると、到達時間TRと第1所定時間T1との時間差が所定値(T1とT3の差)以下に減少したことを意味する。この場合には、図11(C)に示すように、水フイルタ81の交換時期が近づいていることを予告する警告メッセージ118がディスプレイ38に表示される。
【0096】
上述のとおり、目詰まりによる給水異常と判定されると処理が中止されてしまうので、復旧させるためには直ちに水フイルタ81の交換作業をせざるを得ない。しかし、例えば、予備の水フイルタ81が無い場合には、水フイルタ81を手配するのに時間が掛かり、交換作業が滞ってしまう場合もある。交換作業が滞ると、その間、洗浄消毒装置10を使用できない。また、洗浄消毒装置10の稼働率が高い日中の繁忙時間帯に水フイルタ81の交換時期が到来すると、洗浄消毒や内視鏡検査の作業計画への影響が大きい。
【0097】
警告メッセージ118のような予告メッセージを出すことによって、予備の水フイルタ81を予め手配したり、交換作業の実施タイミングを、日中を避けて稼働率の低い夜間に割り当てるといった交換作業の準備が可能になるので、交換作業を計画的に行うことができる。このため、洗浄消毒作業や内視鏡検査の作業計画への水フイルタ81の交換作業による影響を最小限にすることができる。
【0098】
したがって、第3所定時間T3は、予告の警告メッセージ118を出した後、水フイルタ81の交換時期が到来するまでの間に、予備の水フイルタ81の手配など交換作業の準備を行う作業時間が確保できるように設定されることが好ましい。具体的には、水フイルタ81の目詰まりの進行により、到達時間TRが第3所定時間T3から第1所定時間T1に移行する移行時間と、交換作業の準備に要する作業時間とを見積もって、移行時間が作業時間以上になるように第3所定時間T3が決められる。
【0099】
以下、上記構成による作用について図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。洗浄消毒装置10は、洗浄工程(図5のS21)及びすすぎ工程(図6のS31)において、洗浄槽13への給水を行う。給水工程において、CPU101は、バルブ79を開いて給水を開始すると(S100)、タイマ107をリセットして、給水開始からの経過時間Tの計測を開始する(S101)。バルブ79が開かれると、水道設備の開栓忘れが無い場合には、給水口78及び水フイルタ81を通って給水ノズル29aから洗浄槽13に水が供給される。
【0100】
CPU101は、経過時間Tの監視と(S102)、水位Lが水位LLに到達したときに水位センサ27が出力する第2検知信号の監視(S103)とを行って、第2判定処理を行う。第2判定処理において、CPU101は、第2所定時間T2以内に第2検知信号の出力が有るか否かを調べて、第2検知信号が有る場合、すなわち、第2所定時間T2以内に水位Lが水位LLに到達した場合には(S103でY)、開栓忘れによる給水異常はなく、正常に給水が行われていると判定して、S105に進む。
【0101】
一方、第2所定時間以内に第2検知信号の出力が無い場合、すなわち、第2所定時間T2以内に水位Lが水位LLに到達しない場合には(S102でY)、水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定して、図11(B)の警告メッセージ117をディスプレイ38に表示する第2警告を行う(S104)。CPU101は、第2警告を行った後、それに続く処理を中止する(S111)。
【0102】
第2所定時間T2は、約10秒という、第1所定時間T1(約180秒)と比べて短い時間に設定されているので、内視鏡12を洗浄消毒装置10にセットした操作者が洗浄消毒装置10から離れる前に、水道設備の開栓忘れによる給水異常の有無を操作者に知らせることができる。警告メッセージ117によって、操作者は給水異常を認識し、蛇口71や元栓を開けるといった対処を行った後、給水工程を再開させる。
【0103】
水道設備の開栓忘れが無い場合には、給水ノズル29aからの水の供給により、洗浄槽13内の水位Lは水位LLを超えて、水位LMに向かって上昇する。S105において、CPU101は、経過時間Tが第1所定時間T1を超えたか否かを監視する、さらに、水位センサ27が出力する第1検知信号を監視(S106)して、第1判定処理を行う。
【0104】
第1判定処理において、CPU101は、第1所定時間T1以内に水位Lが水位LMに到達したか否かを調べて、経過時間Tが第1所定時間T1以内である場合には、CPU101は、水フイルタ81の目詰まりが無く、目詰まりによる給水異常はないと判定し(S106でY)、バルブ79を閉じて給水を終了する(S108)。
【0105】
一方、水位Lが水位LMに到達するまでの経過時間Tが第1所定時間T1を超えた場合には(S105でY)、目詰まりによる給水異常と判定する。この場合は、水フイルタ81を交換すべきことを知らせる、図11(A)の警告メッセージ116をディスプレイ38に表示する第1警告を行う(S107)。CPU101は、第1警告の後、バルブ79を閉じて給水を終了し、それに続く処理を中止する(S111)。警告メッセージ116によって、水フイルタ81の交換時期が到来したことを認識した操作者は、水フイルタ81を予備のフイルタと交換する。
【0106】
第1判定処理において、経過時間Tが第1所定時間T1以内の場合(S106でY)には、給水異常が無いので、給水処理は正常に終了される(S108)。この後、CPU101は、水位LMに到達したときの経過時間Tである到達時間TRが第3所定時間T3以上か否かを調べて、水フイルタ81の交換時期が近づいたか否かを判定する第3判定処理を実行する(S109)。第3判定処理において、到達時間TRが第3所定時間T3より短い場合には(S109でN)、交換時期は近づいていないと判定する。
【0107】
一方、第3判定処理において、到達時間TRが第3所定時間T3以上である場合には(S109でY)、水フイルタ81の交換時期が近づいたと判定して、図11(C)の警告メッセージ118をディスプレイ38に表示する第3警告を行う(S110)。
【0108】
第3判定処理は、交換時期が近い旨の予告をするためのものであるので、第3警告の有無に関わらず、処理が中止されることはなく、第3判定処理の後、それに続く処理(洗剤工程の給水処理であれば洗剤供給など)が行われる。
【0109】
警告メッセージ118によって、操作者は水フイルタ81の交換時期が近いことを認識できるので、交換時期が到来する前に交換作業の準備を開始できる。そのため、水フイルタ81の交換作業を計画的に行うことができる。交換時期が到来して交換作業を行う場合でも、事前準備により、交換作業が遅滞なく行われるため、洗浄消毒作業や内視鏡検査の作業計画への影響が少ない。
【0110】
以上説明したように、本発明の洗浄消毒装置10は、水位センサ27による、水位LM(第1水位)と、水位LL(第2水位)の2つの水位の検知信号と、給水開始から、水位Lが各水位LM、LLに到達するまでの経過時間Tとに基づいて、給水異常を判定するから、水フイルタの目詰まりによる給水異常と、水道設備の開栓忘れによる給水異常とを判別することができる。しかも、水位LLは水位LMよりも低い位置に設定されているので、開栓忘れによる給水異常の判定及び警告を、水位LMで行う場合と比べて、迅速に行うことができる。このため、洗浄消毒処理の停滞による作業遅延を軽減することができる。
【0111】
水位センサ27は、洗浄消毒装置10に標準装備されるセンサであるので、水フイルタ81の下流側の水圧を測定する圧力センサを設ける場合と比べて、製造コストの上昇が抑えられる。特に、既存の洗浄消毒装置を改造して製造する場合には、水位LLを検知不能な既存の水位センサを、水位LLの検知が可能な本例のような水位センサ27へ変更する水位センサの交換と制御プログラムの変更だけで対処できるため、コスト抑制の効果は大きい。
【0112】
というのも、既存の洗浄消毒装置に圧力センサを追加する場合の製造コストには、圧力センサの部品コストの上昇分ばかりでなく、圧力センサの追加に伴って、回路基板、接続端子、配線といった部品が追加されるため、その分のコスト上昇も含まれる。さらに、圧力センサを配置するために、給水経路を構成する配管のレイアウトの変更などの設計変更が必要になる可能性が高く、その場合には、設計変更に伴うコストも当然製造コストに含まれる。こうした製造コストの上昇分は無視できない額になるため、本発明の有用性は高い。
【0113】
上記実施形態において、ディスプレイ38で第1〜第3警告を行う例で説明したが、第1〜第3警告は、ディスプレイ38の他、インジケータランプの点灯、スピーカ113からの音声出力など種々の形態でもよく、さらに、各形態を組み合わせて行ってもよい。
【0114】
上記実施形態において、第2所定時間T2を約10秒に設定する例で説明したが、第2所定時間T2を短い時間に設定する目的は、操作者が洗浄消毒装置10から離れる前に水道設備の開栓忘れを通知することにあるので、できるだけ短い方がよい。しかし、第2所定時間T2を短くするには、水位LLをより低い位置に設定しなければならない。水位LLを低くし過ぎると、給水開始前に洗浄槽13に残っている残液等によって水位センサ27が誤検知するおそれもあるので、第2所定時間T2の下限は、水位センサ27の誤検知のおそれの無い範囲で設定されることが好ましい。好ましい範囲としては、約10秒〜約30秒の範囲である。より好ましくは、約10秒〜約15秒の範囲である。
【0115】
第2所定時間T2は、具体的には、洗浄消毒装置10に内視鏡12をセットした操作者が洗浄消毒装置10から離れる平均的な時間を見積もって、その平均的な時間に応じて適宜設定される。平均的な時間が、約30秒を超えるようであれば、第2所定時間T2の上限は、約30秒を超えても構わない。
【0116】
また、給水開始の直後から、開栓忘れによる給水異常の有無の判定結果が出る第2所定時間T2が経過するまでの間、操作者に対して洗浄消毒装置10から離れずに待機すべきことを促す警告をしてもよい。警告メッセージの内容としては、例えば、図13(A)に示す警告メッセージ119のように、開栓忘れの有無(給水が開始されているか否か)を確認中であること、確認が終了するまでの間、洗浄消毒装置10から離れずに待機すべきことが含まれる。
【0117】
さらに、開栓忘れによる給水異常が無い場合には、図13(B)に示す警告メッセージ120のように、確認が終了し、開栓忘れによる給水異常が無いこと(給水が開始されたこと)を知らせる警告メッセージを発してもよい。警告メッセージ120を発することで、操作者に対して開栓忘れによる給水異常が無いことを明確に知らせることができるので、操作者は安心して洗浄消毒装置10から離れることができる。警告メッセージ119と警告メッセージ120は両方出すのが好ましいが、いずれか1つでもよい。
【0118】
警告メッセージ119、120の少なくともいずれかを含む第4警告は、第1〜第3警告と同様にディスプレイ38から出力してもよいし、スピーカ113からの音声出力でももちろん可である。忙しい操作者の中には、ディスプレイ38を確認せずに洗浄消毒装置10から立ち去る操作者も多いと考えられるので、第4警告については、ディスプレイ38に加えて、あるいは、ディスプレイ38に代えて、スピーカ113から出力するのが好ましい。
【0119】
さらに、第4警告と出力タイミングが近く、かつ、開栓忘れによる給水異常に係る内容であるという点で第4警告と類似する第2警告(図11(B)の警告メッセージ117)についても、第4警告と同様にスピーカ113を利用することが好ましい。
【0120】
CPU101は、例えば、操作パネル36のスタートボタンの押下により洗浄消毒の開始指示が入力され、給水が開始された直後、より具体的には、図12のフローチャートにおいて、S100あるいはS101の直後に、警告メッセージ119を発する警告処理ステップを実行する。そして、S104又はS105を実行するまで警告メッセージ119を出力し続ける。S104に進んだ場合は、警告メッセージ119の出力を終了し、その代わりに、図11(B)に示す警告メッセージ117を出力する第2警告を行う。一方、S105に進んだ場合には、警告メッセージ119の出力を終了し、警告メッセージ119の代わりに、警告メッセージ120を出力する。
【0121】
また、洗浄工程から乾燥工程までの一連の工程を自動的に行う洗浄プログラムにおいて、給水は、繰り返し行われる。タイマ107で計測した、給水開始から水位LMに到達するまでの経過時間Tを、給水が行われる毎に、RAM103やEEPROM104などのメモリに保存しておき、保存した過去の経過時間Tを履歴データとして利用してもよい。
【0122】
履歴データは、例えば、計測された最新の経過時間Tが異常値か否かの判定に用いられる。異常値を判定に用いる場合には、履歴データに含まれる過去10回分の経過時間Tの移動平均値を算出し、移動平均値と最新の経過時間Tを比較する。最新の経過時間Tが移動平均値から著しく乖離している場合には、最新の経過時間Tが異常値であることが分かる。履歴データに基づく経過時間Tの異常値判定は、例えば、次のようなケースに利用することができる。
【0123】
大規模な医療施設の多くは、洗浄消毒装置10を複数台保有している。複数台の洗浄消毒装置10が、水道設備の1本の給水管に並列に接続された複数の蛇口71からそれぞれ水の供給を受ける場合には、他の洗浄消毒装置10の給水状況によって水圧が変動し、単位時間当たりに各蛇口71から供給される水の供給量が変動する。例えば、複数台の洗浄消毒装置10が同時に給水を行っている場合には、各洗浄消毒装置10に供給される単位時間当たりの水の供給量が減るので、1台だけが給水を行っている場合と比べて、水位LMに到達するまでの経過時間Tは延びる。
【0124】
このため、1台だけで給水が行われたときには、水フイルタ81の目詰まりによる給水異常と判定されないにも関わらず、他の洗浄消毒装置10の給水が同時に行われているために、経過時間Tが第1所定時間T1を超えてしまい、目詰まりによる給水異常と判定されてしまう場合も考えられる。このように他の洗浄消毒装置10の給水状態という外乱によって給水異常の判定結果は変動する可能性がある。上記履歴データを利用した異常値判定は、給水異常の判定結果が妥当なものかどうかを検証するために用いられる。
【0125】
異常値と判定された場合には、経過時間Tとその経過時間Tが異常値である旨の情報とを関連付けて、EEPROM104などのメモリに保存しておく。保存したデータは、例えば、図11(A)の警告メッセージ116が表示された後、水フイルタ81の交換作業が開始される前に、交換作業を実施する作業者によって確認される。
【0126】
作業者は、例えば、経過時間Tが異常値である場合は、給水異常の原因は外乱によるものであり、水フイルタ81の目詰まりが原因ではく、給水異常の判定結果は妥当性を欠くものと判断する。この場合には、水フイルタ81はまだ使える状態なので、交換が見送られる。医療用の洗浄消毒装置10に用いられる水フイルタ81は、比較的高価な消耗品であるため、不要な交換を防止することでランニングコストが軽減される。
【0127】
また、履歴データには、経過時間Tの推移が記録されるので、この記録から水フイルタ81の目詰まりがどの程度の速度で進行するかを把握することも可能である。経過時間Tの推移は、水フイルタ81の実際の耐用期間がどの程度であるかの目安になり、予備の水フイルタ81を、いつまでにどの程度の数量を用意しておく必要があるかといった準備計画を立てる上での参考にもなる。
【0128】
本発明は、内視鏡を洗浄・消毒する洗浄消毒装置に限らず、洗浄・消毒によって再使用される医療器具を洗浄・消毒する洗浄消毒装置にも適用できる。内視鏡以外の医療器具としては、例えば、鉗子、超音波プローブ、クリップ処置具、スネアなど、内視鏡の鉗子チャンネルを挿通して使用される処置具が考えられる。もちろん、内視鏡とともに使用される処置具以外の医療器具でもよい。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0129】
10 洗浄消毒装置
12 内視鏡
13 洗浄槽
27 水位センサ
29a 給水ノズル
38 ディスプレイ(警告手段)
71 蛇口
78 給水口
79 バルブ(給水弁)
101 CPU(判定手段)
107 タイマ
113 スピーカ(警告手段)
116〜120 警告メッセージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具が収容される洗浄槽と、
水道設備からの水を洗浄槽に給水する給水経路を開閉する給水弁と、
前記給水経路上に交換可能に配置され、給水される水を濾過する水フイルタと、
洗浄槽内の水の水位を検知する水位センサであり、前記水位が、医療器具の洗浄に必要な第1水位に到達したときに第1検知信号を出力し、第1水位よりも低い第2水位に到達したときに第2検知信号を出力する水位センサと、
前記給水弁が開かれる給水開始時点からの経過時間を計測するタイマと、
前記経過時間と前記第1検知信号に基づいて、前記水位が、第1所定時間以内に前記第1水位に到達したか否かを調べて、前記第1所定時間以内に前記第1水位に到達しない場合に、水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定する第1判定処理と、前記経過時間に基づいて前記第1所定時間よりも短い第2所定時間以内に前記第2検知信号の出力が有るか否かを調べて、前記第2検知信号が無い場合に水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定する第2判定処理とを実行する判定手段と、
前記第1判定処理において水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定された場合に、その旨を警告する第1警告処理と、前記第2判定処理において水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定された場合に、その旨を警告する第2警告処理とを実行する警告手段とを備えていることを特徴とする洗浄消毒装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記水位が前記第1所定時間以内に前記第1水位に到達した場合において、前記第1水位に到達したときの前記経過時間である到達時間が、前記第1所定時間よりも短い第3所定時間以上か否かを調べて、水フイルタの交換時期が近づいたか否かを判定する第3判定処理を実行し、
前記警告手段は、水フイルタの交換時期が近づいたと判定された場合に、その旨を警告する第3警告処理を実行することを特徴とする請求項1記載の洗浄消毒装置。
【請求項3】
前記第2水位は、水道設備の開栓忘れがなく正常に洗浄槽に給水された場合において、前記水位が前記第2所定時間以内に到達可能な高さに設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄消毒装置。
【請求項4】
前記第2所定時間は約10秒〜約30秒であることを特徴とする請求項3記載の洗浄消毒装置。
【請求項5】
前記警告手段は、前記給水開始から前記第2判定処理が終了するまでの間、待機すべきことを促す第4警告処理を実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項6】
前記水位センサは、前記第1水位及び第2水位の2つの水位を検知可能な1ユニットのセンサであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項7】
前記水位センサは、さらに、前記第1水位よりも高い、オーバフロー検知用の第3水位を検知可能なことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄消毒装置。
【請求項8】
水道設備からの水を濾過する水フイルタが交換可能に配置された給水経路を通じて、給水経路上に配置された給水弁を開けて、医療器具が収容される洗浄槽への給水を開始する給水開始ステップと、
給水開始からの経過時間を計測する計測ステップと、
洗浄槽内の水の水位を検知する水位センサであり、医療器具の洗浄に必要な第1水位を検知したときに第1検知信号を出力し、第1水位よりも低い第2水位を検知したときに第2検知信号を出力する水位センサを用い、給水開始から第1所定時間以内に前記洗浄槽内の水位が前記第1水位に到達したか否かを調べて、第1水位に到達しない場合に、水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定する第1判定ステップと、
前記水位センサを用い、前記経過時間に基づいて前記第1所定時間よりも短い第2所定時間以内に前記第2検知信号の出力が有るか否かを調べて、前記第2検知信号が無い場合に水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定する第2判定ステップと、
前記第1判定処理において水フイルタの目詰まりによる給水異常と判定された場合に、その旨の第1警告をする第1警告ステップと、
前記第2判定処理において水道設備の開栓忘れによる給水異常と判定された場合に、その旨の第2警告をする第2警告ステップとを含むことを特徴とする洗浄消毒装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−206156(P2011−206156A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75144(P2010−75144)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】