説明

洗浄用の泡及びその生成方法及び洗髪方法

【課題】シャンプー等として用いる洗浄用の泡及びその生成方法及び洗髪方法に関し、きめが細かくクリーミーな洗浄用の泡を提供する。
【解決手段】洗浄剤組成物Bに空気を混合してなる洗浄用の泡であって、泡粘度を40mPa-s以上100mPa-s以下かつ生成30秒後の泡において含有される気泡が10μm以上100μm以下とする。また、洗浄剤組成物に含まれる界面活性剤の含有量を0.4質量%以上12質量%以下とする。また洗浄用の泡を生成するにはモータにより回転するスクリューを有した泡生成装置を用い、スクリューの回転により洗浄剤組成物Bと空気とを混合して洗浄用の泡を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用の泡及びその生成方法及び洗髪方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、頭髪や肌など身体に用いるシャンプー・ハンドソープ・ボディソープ等の洗浄剤を使用する際は、液状のままで使用するのではなく、洗浄剤の原液を手に取り手のひらもしくは頭髪上で泡状に起泡させるか、起泡機構付き容器或いは起泡装置を用いて泡状に起泡させ、その泡状の洗浄剤(泡状洗浄剤)で髪や手及び肌の洗浄を行うことにより適正な洗浄力が発揮される。
【0003】
液状の洗浄剤を使用する場合は、洗浄処理を開始する前に洗浄剤を泡立てる必要があり、この処理が面倒であるという問題点がある。また、泡立て方が個人で一様でないため所定の洗浄効果を期待できないという問題点もある。しかしながら、予め起泡機構付き容器等で起泡された泡状洗浄剤を容器等から取り出す構成とすることにより、使用者は直ちに泡状洗浄剤を使用することができ、使用性の向上及び洗浄性の均一化を図ることができる。
【0004】
従来、原液の洗浄剤から泡状洗浄剤を生成する方法としては、ポンプフォーマーによる泡生成方法、エアゾールによる泡生成方法、及び電動による泡生成方法等が知られている。ポンプフォーマーによる泡生成方法は、内部にメッシュ部材等の泡発生部を設けたディスペンサーを用いて液状の洗浄剤を泡状洗浄剤とする方法である(特許文献1,2)。
【0005】
また、エアゾール容器による泡生成方法は、噴射剤となる液化ガスが洗浄液と同時にノズルから吐出される際、液化ガスが急激に膨張することにより洗浄液が発泡し、これにより泡状洗浄剤が生成される方法である(特許文献3)。また、電動による泡生成方法は、洗浄液が充填されたタンク内に洗浄液内にポンプから空気が供給されるよう構成された発泡石(多孔質材)を配設し、この発泡石から噴射される気泡により洗浄剤に微細な空気を混合することにより泡状洗浄剤が生成する方法である(特許文献4)。また、公衆トイレなどで実用化されているポンプフォーマーによる泡生成方法と電動による泡生成方法を組み合わせた手法もある(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−265877号公報
【特許文献2】特開2005−262202号公報
【特許文献3】特開2009−120525号公報
【特許文献4】特開2003−033292号公報
【特許文献5】実開平05−007334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ポンプフォーマーによる泡生成方法では、生成される泡状洗浄剤のきめが粗く、所望するクリーミーな泡を生成することができないという問題点があった。このようなキメが粗い泡においては含有される空気(気泡)が大きく、洗浄中に容易に破泡してしまうことから、泡の持続性が悪く、洗浄に関する満足感にも問題があった。また、ポンプフォーマーによる泡生成方法では、ディスペンサーに設けられたメッシュ部材が洗浄剤原液の残留・乾燥によって経時的に目詰まりしてしまい、洗浄剤の適用種類に制限があるとともに、使用法によっては使用寿命が短いという問題点もあった。尚、メッシュ部材を交換することも考えられるが、通常メッシュ部材はディスペンサーの奥所に配置されているため、これを交換する作業は面倒で現実的ではない。
【0008】
また、エアゾール容器による泡生成方法では、噴射剤として液化ガスが必要となり、一般にこの液化ガスは可燃性であるために安全性に問題がある。
【0009】
更に、従来の電動による泡生成方法では、発泡石から噴射される気泡により生成される泡状洗浄剤がタンクを満たすまで外部に吐出されないため、泡状洗浄剤を取り出し可能になるまで長い時間を要するという問題点があった。また、発泡石を用いて生成される泡状洗浄剤は、きめが粗く、所望するクリーミーな泡を生成することができないという問題点もあった。
【0010】
ポンプフォーマーによる泡生成方法と電動による泡生成方法を組み合わせた手法ではメッシュ部材のつまりの軽減が期待されるものの泡状洗浄剤のきめが粗く、所望するクリーミーな泡を得られないという欠点は引き続き解決しない。また機器が大掛かりのものになるという問題点があった。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、きめが細かくクリーミーな洗浄用の泡を提供することを第1の目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、従来にない少ない界面活性剤の配合量の洗浄剤組成物を用いて、きめが細かくクリーミーな洗浄用の泡を効率よく安全に生成しうる洗浄用の泡の生成方法を提供することにある。
【0013】
更に、本発明の他の目的は、洗髪処理を行う者の負担軽減を図りうる洗髪方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は、第1の観点からは、
洗浄剤組成物に空気を混合して生成された洗浄用の泡であって、
界面活性剤の含有量が0.4質量%以上12質量%以下であり、
泡生成直後の泡粘度が40mPa-s以上100mPa-s以下かつ生成30秒後の泡において含有される気泡の平均粒子径が5μm以上100μm以下であることを特徴とする洗浄用の泡により解決することができる。
【0015】
また上記の課題は、第2の観点からは、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の洗浄用の泡の生成方法であって、
モータにより回転するスクリューを有した泡生成装置を用い、前記スクリューの回転により前記洗浄剤組成物と前記空気とを混合して前記洗浄用の泡を生成することを特徴とする洗浄用の泡の生成方法により解決することができる。
【0016】
また上記の課題は、第3の観点からは、
洗髪を行う洗髪台に請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗浄用の泡を生成しうる泡生成装置を設置し、該泡生成装置で生成された前記洗浄用の泡を用いて前記洗髪を行うことを特徴とする洗髪方法により解決することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記発明によれば、きめの細かいクリーミーで泡持続性に優れた洗浄用の泡を実現することができる。また、界面活性剤の低減を図ることができ、業務用に使用しても使用者の手あれ防止を図ることかできる。更に、界面活性剤が低減されることにより、洗浄用の泡のコスト低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である洗浄用の泡を生成する泡生成装置の外観図である。
【図2】図2は、泡生成装置の内部構造を示す図である。
【図3】図3は、泡生成装置を美容サロンに設置した態様の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態である洗浄用の泡の泡粘度を従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡の泡粘度と比較して示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態である洗浄用の泡の生成に用いる洗浄剤組成物の組成を示す図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態である泡生成方法及び泡生成装置で生成された洗浄用の泡に含有される気泡を従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡と比較して示す図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態である泡生成方法及び泡生成装置で生成された洗浄用の泡に含有される気泡と、従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡に含有される気泡の大きさを比較した図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態である洗浄用の泡を用いた洗髪方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である洗浄用の泡Aを生成するのに用いる泡生成装置1を示している。洗浄用の泡Aの特性を説明する前に、本発明の一実施形態である洗浄用の泡Aを生成する生成方法、及びこの生成方法を実施する際に用いる泡生成装置1について説明する。
【0021】
図1は泡生成装置1の外観図であり、図2は泡生成装置1の構成を示す断面図である。本実施形態では、洗浄剤組成物原液Bとしてシャンプーを用いる泡生成装置1を例に挙げて説明するが、洗浄剤組成物原液Bはシャンプーに限定されるものではなく、ハンドソープ,ボディソープ等の泡状として用いて好適な各種洗浄剤組成物原液に対して適用が可能なものである。
【0022】
図1に示すように、泡生成装置1は本体部2の正面側に手挿入部3が形成されている。この手挿入部3の内部には操作部4が設けられており、泡生成装置1の使用者は手を手挿入部3に挿入し操作部4を操作することにより、後述するように泡吐出口16から洗浄用の泡Aが突出する構成とされている。また、本体部2の天板には蓋体6が設けられており、この蓋体6は洗浄剤組成物原液Bを本体部2内の原液タンク5に装填する際に開蓋される。
【0023】
次に、図2を用いて泡生成装置1の内部構成について説明する。泡生成装置1の内部には、原液タンク5、モータ7、起泡室8、スクリュー9、及び開閉バルブ10等を有している。尚、図1を用いて説明したように操作部4は手挿入部3内に配設されるが、図2では図示の便宜上、操作部4を本体部2の上部に位置するよう図示している。
【0024】
操作部4は、前記のように泡生成装置1の使用者により操作される。この操作部4には2本のシャフト12,17が設けられている。このシャフト12は、後述する開閉バルブ10の一部を構成するもので、本体部2に上下方向(Z1,Z2方向)に移動可能に取り付けられている。
【0025】
原液タンク5は、内部に液状の洗浄剤の原液(洗浄剤組成物原液B)が充填されている。原液タンク5内の洗浄剤組成物原液Bの量が少なくなった時は、本体部2に設けられた蓋体6を開蓋し、ここから原液タンク5に洗浄剤組成物原液Bを充填する。このように、泡生成装置1は洗浄剤組成物原液Bの補給ができるため、従来のエアゾール容器のように1回の使用で廃棄するものに比べ、環境対策の向上及びコスト低減を図ることができる。
【0026】
モータ7は、スイッチ15のON/OFF操作により駆動及び駆動停止が行われる構成とされている。スイッチ15は操作部4に配設されたシャフト17と接続されており、操作部4の押圧操作(Z1方向への操作)によりON/OFF動作を行う。
【0027】
モータ7の回転軸は、起泡室8の内部に突出している。このモータ7の回転軸は、起泡室8の壁部を貫通してその内部に突出するが、貫通部分はシールがされて液密な構成とされている。また、モータ7の回転軸で、起泡室8内に突出した部分には、スクリュー9が配設されている。よってスクリュー9は、モータ7により回転する。
【0028】
起泡室8は、原液タンク5と連通している。この原液タンク5と起泡室8との連通部18には、開閉バルブ10が設けられている。開閉バルブ10の弁体13は、原液タンク5と起泡室8との連通部18を開閉弁可能な構成とされている。そして、弁体13が開弁することにより、原液タンク5から洗浄剤組成物原液Bが起泡室8内に流入し、また弁体13が閉弁することにより原液タンク5から起泡室8内への洗浄剤組成物原液Bの進入が停止される。
【0029】
この弁体13は、前記したシャフト12の下端部に配設されている。また、シャフト12にはコイルスプリング11が配設されており、このコイルスプリング11は弁体13が連通部18を閉弁する方向(Z2方向)に常にシャフト12を付勢している。
【0030】
更に、起泡室8の矢印X2方向端部の上部には、エア吸入口14が設けられている。スクリュー9が回転した際、このエア吸入口14から起泡室8内には空気が流入する。
【0031】
上記構成とされた泡生成装置1において操作部4が押圧操作されると、スイッチ15がシャフト17を介してONとされ、これによりモータ7が起動する。また、モータ7が起動することにより、起泡室8内においてスクリュー9が回転を開始する。
【0032】
また、操作部4が押圧操作されることにより、シャフト12はコイルスプリング11のばね力に抗してZ1方向に移動し、弁体13は開弁される。これにより、原液タンク5内の洗浄剤組成物原液Bは、連通部18を介して起泡室8内に流入する。
【0033】
スクリュー9は、起泡室8内に流入した洗浄剤原液B及び空気を混合・攪拌することにより洗浄用の泡Aを生成し、これを矢印X1方向に送り出す機能を奏する。起泡室8の矢印X1方向端部には、手挿入部3内に開口する泡吐出口16が形成されている。起泡室8内でスクリュー9により生成された洗浄用の泡Aは、この泡吐出口16から吐出される。
【0034】
一方、使用者が操作部4の押圧操作を解除すると、コイルスプリング11の弾性復元力によりシャフト12は上動(Z2方向移動)して連通部18を弁体13により閉弁する。これにより、洗浄剤組成物原液Bの原液タンク5から起泡室8への流入は停止される。また、シャフト12の上動に伴い操作部4も上動し、よってシャフト17も上動する。これにより、スイッチ15はOFFとなりモータ7は停止する。また、スイッチ15の停止によりスクリュー9の回転も停止し、洗浄用の泡Aの吐出も停止される。
【0035】
尚、図1に示したように実際の泡生成装置1においては、手挿入部3内に操作部4が設けられている。このため、使用者は手挿入部3内に手を挿入して操作部4を操作することにより、泡吐出口16から吐出される洗浄用の泡Aを掌に受けることができる。
【0036】
上記した洗浄用の泡Aの生成方法及び泡生成装置1によれば、モータ7により回転するスクリュー9の回転により洗浄剤組成物原液Bと空気とを混合するため、きめの細かいクリーミーな洗浄用の泡Aを生成することができる(これについては後述する)。
【0037】
また、従来のポンプフォーマーを用いた泡生成方法のように、メッシュ部材を用いないため目詰まりが発生することはなく、使用寿命の長寿命化を図ることができる。また、ポンプフォーマーの場合、押しボタンを強く押す必要があり使用性が悪かったが、泡生成装置1では単に手を手挿入部3に挿入して操作部4を操作するだけで洗浄用の泡Aが掌に吐出されるため、使用性の向上を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る泡生成方法では、エアゾール容器で必要とされる可燃性の液化ガス(噴射剤)を使用しないため、安全性の向上を図ることができる。また、洗浄剤組成物原液Bは原液タンク5に対して補給ができるため、エアゾール容器のように1本使用毎に廃棄するようなこともなく、更には、液化ガスの揮散もなく、環境にやさしい泡生成方法を実現できる。
【0039】
更に、本実施形態に係る泡生成方法及び泡生成装置1では、モータ7が起動してスクリュー9が回転することにより、洗浄用の泡Aは直ちに生成され始める。よって、洗浄用の泡Aを取り出し可能になるまでの時間は短く、これによっても使用性の向上を図ることができる。
【0040】
次に、上記のように生成される洗浄用の泡Aの特性について説明する。
【0041】
図4は、上記した泡生成方法及び泡生成装置1で生成された洗浄用の泡Aの泡粘度を、従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡の泡粘度と比較して示す図である。この泡粘度測定は、音叉型振動式粘度計(SV-10,A&D社製)を用いて実施した。
【0042】
同図中、参考例1として示すのは従来のポンプフォーマーを用いて生成された洗浄用の泡の泡粘度を示している。また、同図中参考例2として示すのは従来の発泡石を用いた電動による泡生成方法により生成された洗浄用の泡の泡粘度を示している。更に、図中実施例として示すのは、図1及び図2を用いて説明した泡生成方法及び泡生成装置1により生成された洗浄用の泡Aの泡粘度を示している。尚、図中n=として記載されている数字は測定回数を示し、図示されている特性線はその平均値を取ったものである。
【0043】
また、同図では縦軸に泡粘度(mPa-s)を示し、横軸は洗浄用の泡が生成された後の経過時間(sec)を示している。ここで、泡のきめの細かさ及びクリーミーさと泡粘度とは相関しており、泡粘度の値が高いほど泡のきめは細かくクリーミーとなる。尚、経過時間は、洗浄用の泡の生成された時を10秒とし、その40秒までの間を5秒間隔で測定した。
【0044】
使用する洗浄剤組成物原液は、参考例1,2及び実施例でそれぞれ同一のものを使用した。具体的には、図5に実施例1として示した組成の洗浄剤組成物原液を用いた。この実施例1に係る洗浄剤組成物原液は界面活性剤(アニオン活性剤及び両性活性剤)を含み、その界面活性剤の含有量は0.4質量%以上12質量%以下とされている。よって、一般にシャンプー等として使用されている洗浄剤組成物原液に比べて界面活性剤の含有量は少なく設定されている。また、この実施例1に係る洗浄剤組成物原液の粘度(液粘度)は、30℃において5mPa-s 以上1500mPa-s以下である。
【0045】
図4において、実施例として示される本実施形態に係る泡生成方法により生成された洗浄用の泡Aの泡粘度に注目すると、泡生成直後の泡粘度が43mPa-s以上55mPa-s以下となっている。これは、泡粘度の値が20mPa-s以上35mPa-s以下である実施例1、及び泡粘度の値が16mPa-s以上21mPa-s以下である実施例2に比べて高い値となっている。よって、本実施形態に係る泡生成方法により生成された洗浄用の泡Aは、従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡に比べてきめが細かくクリーミーであることが証明された。また、洗浄剤組成物原液に含まれる界面活性剤の含有量が少ないにも拘わらず、きめが細かくクリーミーな洗浄用の泡が生成され、経時でも持続しうることも実証された。
【0046】
次に、経時的な泡粘度の変化に注目する。
【0047】
本実施形態に係る泡生成方法により生成された洗浄用の泡Aは、泡生成直後(10sec)の泡粘度と泡生成後40秒後(40sec)の泡粘度との差(経時変化)は、7mPa-s以上23mPa-s以下となっている。これに対して参考例1では泡粘度の経時変化は4mPa-s以上19mPa-s以下であり、参考例2では泡粘度の経時変化は4mPa-s以上9mPa-s以下である。
【0048】
このように本実施形態に係る洗浄用の泡Aは、参考例1,2に比べて泡粘度の経時的な減少率は高い。しかしながら、30秒経過後においても、本実施形態に係る洗浄用の泡Aの泡粘度は参考例1の最高値(31mPa-s)及び参考例2の最高値(17mPa-s)よりも高い値となっている。よって、本実施形態に係る洗浄用の泡Aは、参考例1,2に比べ、泡の持続性いわゆる泡持ちがよいことが実証された。このことはきめが細かくクリーミーな泡を生成することにより泡の持続性を向上させていることを示している。
【0049】
上記した図4に示す洗浄用の泡Aの泡粘度を測定する実験においては、図5に実施例1で示す組成を有する洗浄剤組成物原液を用いた。本発明者は、この実施例1に係る洗浄剤組成物原液Bに代えて実施例2で示す組成を有する洗浄剤組成物原液を用いて上記と同様の泡粘度の測定を実施した。実施例2に係る洗浄剤組成物原液は、従来から一般に用いられているシャンプーに類似した組成である。
【0050】
但し、この従来から一般に用いられているシャンプーは、原液の粘度(液粘度)は、30℃において1500mPa-s以上でありかつ界面活性剤の含有量は12質量%以上であるためそのまま用いると、本発明である洗浄剤組成物に空気を混合してなる洗浄用の泡で、泡生成直後の泡粘度が40mPa-s以上100mPa-s以下かつ生成直後の泡において含有される気泡の平均粒子径が10μm以上100μm以下の洗浄に適した泡にはなりえない。そこで、界面活性剤の含有量及び原液の粘度(液粘度)を本発明に適するように調整したものを洗浄剤原液(以下、調整原液という)として用いた。
【0051】
その結果、図4に実施例で示した特性と略同等の泡粘度特性を有する洗浄用の泡を生成することができた。これは、本実施形態に係る泡生成方法及び泡生成装置1を用いることにより、洗浄剤組成物原液Bとして調整原液を用いることが可能であることを示している。この実施例2の調整原液を用いる場合は、実施例1の洗浄剤組成物原液を用いる場合に比べて界面活性剤の含有量は増加するが、一般に市販されているシャンプーに類似した使用感を実現するとともに、洗浄剤組成物原液の実施例1に比べてコスト低減を図ることができる。
また、図6は、上記した泡生成方法及び泡生成装置1で生成された洗浄用の泡Aに含有される気泡及び、従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡に含有される気泡をデジタルマイクロスコープで観察したものである。観察には50倍の拡大条件に設定したデジタルマイクロスコープ(VHX-200, キーエンス社)を用い、各泡生成方法により生成された洗浄用の泡で吐出30秒後、60秒後に観察したものである。気泡画像の取得には、スライドガラス上に乗せた生成直後の泡をカバーガラスで挟むことによって行った。また、図7は図6で得られた画像から泡に含有される気泡の平均径を算出し、上記した泡生成方法及び泡生成装置1で生成された洗浄用の泡Aと従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡において含有される気泡の大きさを比較した。
【0052】
図6(A−1),(A−2)に比較例1として示すのは従来のポンプフォーマーを用いて生成された洗浄用の泡の泡に含有される気泡の画像である。また、図6(B−1),(B−2)に比較例2として示すのは従来の発泡石を用いた電動による泡生成方法により生成された洗浄用の泡に含有される気泡の画像である。また、図6(A−1),(A−2)に実施例として示すのは、図1及び図2を用いて説明した泡生成方法及び泡生成装置1により生成された洗浄用の泡Aに含有される気泡の画像である。更に、各図において(A−1),(B−1),(C−1)で示すのは吐出後30秒後の状態を示す画像であり、(A−2),(B−2),(C−2)で示すのは吐出後60秒後の状態を示す画像である。
【0053】
使用する洗浄剤組成物原液は、比較例1,2及び実施例でそれぞれ同一のものを使用した。具体的には、図6に実施例1として示した組成の洗浄剤組成物原液を用いた。この実施例1に係る洗浄剤組成物原液は界面活性剤(アニオン活性剤及び両性活性剤)を含み、その界面活性剤の含有量は0.4質量%以上12質量%以下とされている。よって、一般にシャンプー等として使用されている洗浄剤組成物原液に比べて界面活性剤の含有量は少なく設定されている。また、この実施例1に係る洗浄剤組成物原液の粘度(液粘度)は、30℃において5mPa-s 以上1500mPa-s以下である。
【0054】
また図7では、取得された各水準の画像3枚で確認される気泡から算出した気泡径の平均値を示しており、n=として記載されている数字は計測した気泡数を示す。同図では縦軸に気泡径(μm)を示しており、実施例1、参考例1及び2の泡生成直後より30秒後と60秒後の泡に含有される気泡径の平均値を示している。
【0055】
図6及び7において、実施例として示される本実施形態に係る泡生成方法により生成された洗浄用の泡Aに含有される気泡径は、各比較例と比較して非常に細かいことがわかる。また、平均気泡径の値が80μmであり、これは、平均気泡径の値が200μmである比較例1、比較例2に比べて明らかに低い値となっている。よって、本実施形態に係る泡生成方法により生成された洗浄用の泡Aは、従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡に比べてきめが細かくクリーミーであることが証明された。また、洗浄剤組成物原液に含まれる界面活性剤の含有量が少ないにも拘わらず、含有される気泡が細かいことによるきめが細かくクリーミーな洗浄用の泡が生成されることを実証された。
【0056】
次に、経時的な泡粘度の変化に注目する。
【0057】
本実施形態に係る泡生成方法により生成された洗浄用の泡A(実施例)は、泡生成後60秒後においても泡に含有される気泡径の平均値が130μmであり、比較例1の平均気泡径の240μm、比較例2の290μmに比べ、明らかに低い値を示している。このことは従来の泡生成方法により生成された洗浄用の泡に比べてきめが細かくクリーミーな泡が持続することが証明された。
【0058】
次に、上記した泡粘度特性を有する洗浄用の泡Aを用いた洗髪方法について説明する。
【0059】
図3は、美容サロン20の洗髪台21(以下、シャンプー台という)の近傍を示している。上記した泡生成直後の泡粘度が40mPa-s以上かつ生成直後の泡において含有される気泡径の平均値が1mm以下を有する洗浄用の泡Aを生成できる泡生成装置1は、美容サロン20の棚22に設置される。この棚22は、化粧品容器23や洗髪時に使用するタオル等が置かれるところである。泡生成装置1は、このように被洗髪者に対して洗髪を行うサロンスタッフの手が届きやすい位置である棚22に設置されている。
【0060】
図8は、サロンスタッフが被洗髪者に対して実施する洗髪処理の処理工程を示す図である。洗髪処理が開始されると、サロンスタッフは被洗髪者をシャンプー台21に案内する(ステップ10)。そして、洗髪者の頭をシャンプー台21に位置させた後、サロンスタッフは手を泡生成装置1の手挿入部3に挿入して操作部4を操作する。
【0061】
前記のように、泡生成装置1は操作部4を操作することにより直ちに泡吐出口16からきめの細かいクリーミーな洗浄用の泡Aが掌に吐出されるよう構成されている。よって、サロンスタッフは、ポンプフォーマーやエアゾール容器のような面倒なボタン押圧操作を行うことなく、容易に良好な特性を有する洗浄用の泡Aを手に取ることができる(ステップ12)。
【0062】
続いて、泡生成装置1で生成された洗浄用の泡Aを被洗髪者の髪に塗布して洗髪処理を開始する(ステップ14)。本実施形態に係る洗髪方法では、泡生成装置1から泡状態の洗浄用の泡Aが吐出されるため、従来の液状のシャンプーを用いた場合に必要となる泡立て処理が不要となる。よって、サロンスタッフの洗髪処理の作業軽減を図ることができる。
【0063】
特に髪の長い女性に対する通常サロンスタッフの洗髪処理作業としては、頭皮付近で泡立てた泡を毛先へと移行させて頭皮以外の洗浄を達成させている。今回の発明においては、泡立てる処理の不要に加えて、ステップ12で手に取った泡をそのまま毛先へと塗布可能であり、毛先のスムーズな洗浄へと移行できる。この結果、サロンスタッフの作業性は向上できる。
【0064】
更に、洗浄用の泡Aは上記のように泡持ちがよいため、洗髪中は洗浄用の泡Aの泡が維持される。これにより、被洗髪者にとっては洗髪を行っている間はきめの細かいクリーミーな泡の感触が長く持続することになり、被洗髪者に良好な印象を与えることができる。
【0065】
洗浄用の泡Aによる洗髪処理が終了すると、サロンスタッフは洗浄用の泡Aをすすぎ落とし(ステップ16)、これにより洗髪処理が終了する。
【0066】
前記のように、洗浄用の泡Aを生成する基になる洗浄剤組成物原液Bは、界面活性剤が一般のシャンプーに比べて少ない組成となっている上、本実施形態の洗髪方法を用いることにより、洗髪時に洗髪を行う者の泡立て作業が不要となるために、界面活性剤や水への接触時間を短縮できることから、皮膚に刺激が生じたり、また手荒れが発生したりすることを抑制することができる。
【0067】
本発明者は、上記の洗髪方法を美容サロンで実際に2週間にわたり実施してもらい、この洗髪方法を実施したサロンスタッフ11名に使用感のアンケートを行った。その結果、本実施形態に係る洗髪方法を用いることにより、従来の一般的な洗髪方法に比べ、皮膚に刺激が生じたり手荒れが発生したりすることはないという結果を得た。
【0068】
また、洗浄用の泡Aの使用量は、従来の液状のシャンプーに比べて使用量を低減できることも判明した。更に、洗浄用の泡Aは、髪への広がりが良好で、また髪の絡まりを防止できるという利点があることも判明した。このように、本実施形態に係る洗髪方法を用いることにより、従来の洗髪方法では得られない種々の利点を得ることが可能となる。
【0069】
以下に、本発明の洗浄用の泡を生成するための洗浄剤組成物のその他の例を挙げる。尚、これらの処方例はすべて、常法により調製することができ、泡生成装置1で起泡すると、一般に使用されている洗浄剤組成物の界面活性剤よりも少ない含有量にも拘わらず、きめの細かいクリーミーで泡持続性に優れた洗浄用の泡の生成を実現することができる。
[処方例3:ヘアシャンプー用組成物]
ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン塩 5.0 質量%
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 2.5
プロピレングリコール 2.0
カチオン化セルロース 0.3
安息香酸ナトリウム 0.5
クエン酸 0.05
フェノキシエタノール 0.1
色素 適量
香料 適量
精製水 残余
[処方例4:ヘアシャンプー用組成物]
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 1.5 質量%
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 0.8
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 3.5
カチオン化グアガム 0.3
ソルビット液 2.0
L−アルギニン 0.08
ヒドロキシエチル尿素 0.2
海藻エキス 適量
色剤 適量
香料 適量
精製水 残余
[処方例5:ヘアシャンプー用組成物]
ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム 6.0 質量%
2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチル
イミダゾリニウムベタイン 2.0
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 1.0
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液 2.0
グリセリン 2.0
カチオン化ローカストビーンガム 0.3
色剤 適量
香料 適量
精製水 残余
[処方例6:ヘアシャンプー用組成物]
ラウリン酸タウリンナトリウム 2.0 質量%
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム 3.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 1.0
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 2.0
プロピルトリモニウムクロリドアクリルアミド/
ジメチルアクリルアミドコポリマー,精製水混合物 0.2
ソルビット液 3.0
コハク酸 0.04
ツバキオイル 0.3
色剤 適量
香料 適量
精製水 残余
[処方例7:ボディーシャンプー用組成物]
グリセリン 10.0 質量%
ジプロピレングリコール 5.0
ラウリン酸トリエタノールアミン 6.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 2.0
カミモラエキス 適量
エデト酸三ナトリウム 適量
防腐剤 適量
色剤 適量
香料 適量
精製水 残余
[処方例8:洗顔フォーム用組成物]
グリセリン 25.0 質量%
ポリエチレングリコール1500 3.0
ソルビット液 3.0
ステアリン酸 0.05
ラウリン酸 2.0
ミリスチン酸 3.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアマイド 0.3
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 2.0
水酸化カリウム 1.8
メリッサエキス 0.1
エデト酸三ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残余
[処方例9:洗顔フォーム用組成物]
グリセリン 10.0 質量%
ジプリピレングリコール 5.0
1,3-ブチレングルコール 5.0
ポリエチレングリコール1500 3.0
ソルビット液 20.0
ラウリン酸 2.5
ミリスチン酸 0.5
N-メチルタウリンナトリウム 2.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 1.0
イザヨイバラエキス 0.2
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
エデト酸三ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残余
[処方例10:ハンドソープ用組成物]
プロピレングリコール 6.0 質量%
ラウリン酸 3.0
ミリスチン酸 1.0
ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム 1.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアマイド 0.5
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 2.0
トリエタノールアミン 2.5
塩化ナトリウム 0.05
エデト酸三ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残余
[処方例11:ハンドソープ用組成物]
プロピレングリコール 10.0 質量%
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1.0
テトラデセンスルホン酸ナトリウム液 6.0
リンゴ酸 0.1
ユーカリ油 0.05
安息香酸ナトリウム 0.1
塩化ベンザルコニウム液 0.1
エデト酸三ナトリウム 適量
精製水 残余
【符号の説明】
【0070】
1 泡生成装置
2 本体部
3 手挿入部
4 操作部
5 原液タンク
7 モータ
8 起泡室
9 スクリュー
10 開閉バルブ
14 エア吸入口
15 スイッチ
16 泡吐出口
20 美容サロン
21 シャンプー台
23 化粧品容器
A 洗浄用の泡
B 洗浄剤原液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤組成物に空気を混合して生成された洗浄用の泡であって、
界面活性剤の含有量が0.4質量%以上12質量%以下であり、
泡生成直後の泡粘度が40mPa-s以上100mPa-s以下かつ生成30秒後の泡において含有される気泡の平均粒子径が10μm以上100μm以下であることを特徴とする洗浄用の泡。
【請求項2】
前記洗浄剤組成物の粘度が、30℃において5mPa-s 以上1500mPa-s以下であることを特徴とする請求項1記載の洗浄用の泡。
【請求項3】
前記洗浄剤組成物に前記空気を混合した泡生成直後(10秒後)の前記粘度と泡生成後40秒後の前記粘度との差が、7mPa-s以上23mPa-s以下であり、かつ生成60秒後の泡において含有される気泡の平均粒子径が150μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄用の泡。
【請求項4】
前記洗浄剤組成物がシャンプーである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗浄用の泡。
【請求項5】
前記洗浄剤組成物がボディソープである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗浄用の泡。
【請求項6】
前記洗浄剤組成物が洗顔料である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗浄用の泡。
【請求項7】
前記洗浄剤組成物がハンドソープである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗浄用の泡。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の洗浄用の泡の生成方法であって、
モータにより回転するスクリューを有した泡生成装置を用い、前記スクリューの回転により前記洗浄剤組成物と前記空気とを混合して前記洗浄用の泡を生成することを特徴とする洗浄用の泡の生成方法。
【請求項9】
前記泡生成装置は、前記モータの起動及び停止を行うスイッチを有し、
使用者が該スイッチを操作することにより、前記モータが起動して前記洗浄用の泡を吐出し、
前記使用者が該スイッチの操作を解除することにより、前記モータが停止して前記洗浄用の泡の吐出を停止させることを特徴とする請求項8記載の洗浄用の泡の生成方法。
【請求項10】
洗髪を行う洗髪台に請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗浄用の泡を生成しうる泡生成装置を設置し、該泡生成装置で生成された前記洗浄用の泡を用いて洗髪を行うことを特徴とする洗髪方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−121896(P2011−121896A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280414(P2009−280414)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】