説明

洗浄装置、基板の製造方法、および太陽電池素子

【課題】 ベースから基板が落下することを低減し、十分な洗浄ができる基板洗浄装置、基板の製造方法、および歩留まりが向上され特性が優れた太陽電池素子を提供することを目的とする。
【解決手段】 ベース2に接着されたブロック1と、第1の液体4と、第2の液体6と、を準備する工程と、ベース2に接着されたブロック1をスライスし、ベース2に接着された基板列とする工程と、基板列を第1の液体により洗浄した後、基板列を第2の液体により洗浄する工程と、基板列をベース2から剥離し複数の基板とする工程と、を有し、基板列を洗浄する工程において、先に基板列を洗浄する第1の液体4の温度を次第に上昇させるとともに、後に基板列を洗浄する第2の液体6の温度を、第1の液体4の最高温度より低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置、基板の製造方法および太陽電池素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体材料、磁性材料、セラミクス等の基板を作製するに際しては、これら材料をブロックの状態でベースに接着し、その後、ワイヤーソーを利用して、ブロックをスライスすることが行われている。このスライスされたブロックをベースから剥離することにより複数の基板が得られる。
【0003】
通常、ワイヤーソーは、砥粒を含む研削液を供給しながらブロックを切断する。このため、スライス後の基板には砥粒を含む多量の研削液が付着し、基板を洗浄する必要がある。このような基板の洗浄は、通常、ベースに接着固定されたブロックを洗浄装置の槽内の液体(洗浄液)に浸漬して行われる。この従来の洗浄装置には、複数種の洗浄液を貯留した槽を備えるものがあり、この複数種の洗浄液中に基板を浸漬することで基板は洗浄処理される。(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平10−22239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板の製造工程において、スライスされたブロックがベースに接着した状態で行われるため、洗浄工程や乾燥工程においてスライスされたブロックがベースから剥離しやすいという問題があった。また、落下を低減するため洗浄条件を変更した場合、十分な洗浄を行うことが困難であった。特に、太陽電池素子に用いられるシリコン基板を製造する場合、近年、シリコン基板は200μm以下の厚みに薄型化されてきており、ベースからシリコン基板が外れやすく作業効率が悪化する。このようなシリコン基板は、太陽電池素子を製造する際の歩留まりが低下し易く、また、このような太陽電池素子は、出力の低下が生じ易い。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ベースから基板が剥離することを低減し、十分な洗浄ができる基板洗浄装置、基板の製造方法、および歩留まりが向上され特性が優れた太陽電池素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗浄装置は、ベースに接着された基板を洗浄するための第1の液体を貯留する第1の槽と、前記第1の液体により前記基板を洗浄した直後に、前記基板をさらに洗浄するための第2の液体を貯留する第2の槽と、を備え、前記第1の液体の温度を次第に上昇させて前記基板を洗浄し、前記第2の液体の温度は前記第1の液体の最高温度より低いことを特徴とする。
【0007】
本発明の基板の洗浄方法は、ベースに接着されたブロックと、第1の液体と、第2の液体と、を準備する工程と、前記ベースに接着された前記ブロックをスライスし、前記ベースに接着された基板列とする工程と、前記基板列を前記第1の液体により洗浄した後、前記基板列を前記第2の液体により洗浄する工程と、前記基板列を前記ベースから剥離し複数の基板とする工程と、を有し、前記基板列を洗浄する工程において、先に前記基板列を洗浄する第1の液体の温度を次第に上昇させるとともに、後に前記基板列を洗浄する第2の液体の温度を、前記第1の液体の最高温度より低くすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の太陽電池素子は、上述のいずれかの製造方法により製造されたシリコンからなる基板と、前記基板に形成された半導体接合領域と電極と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のような構成または工程を有することにより、洗浄中にベースから基板が剥離しにくくなり、基板を十分に洗浄することができる。このため、基板作製工程の歩留まりを向上させることができる。特に、基板がシリコンからなる場合、そのシリコン基板を用いて作製する太陽電池素子の素子工程の歩留まりも向上し、特性に優れた太陽電池素子とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参考にして本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0011】
(洗浄装置)
図1は、本発明の洗浄装置を用いた基板の製造工程において、切断されたブロックの洗浄工程の第1実施形態を示す断面図であり、図2は、被切断対象であるブロックを示す断面図であり、図3(a)は、切断されたブロックを示す斜視図、図3(b)は図3(a)のスライスされたブロックのうちベースと固定された部分を示す拡大図である。
【0012】
本実施形態の洗浄装置は、図1に示すように、切断されたブロック1を洗浄するための第1の液体4を貯留する複数の第1の槽5と、第1の液体4により洗浄されたブロック1を洗浄するための第2の液体6を貯留する複数の第2の槽7とを備える。
【0013】
ブロック1は、所望のサイズになるように半導体材料、磁性材料、セラミクス等からなるインゴットの端部を切断して得られる。ブロック1は、接着剤3によりベース2に固定されている。このようなブロック1は、ワイヤーソー等により切断されることにより、図3(a)に示すように、複数に分割され、ベース2に接着された基板列となる。基板列は、ベース2から剥離されることで、複数の基板1aとなる。特に、ブロック1がシリコンインゴットである場合、引き上げ法や鋳造法等により作製した単結晶シリコンインゴットまたは多結晶シリコンインゴット(半導体インゴット)の端部を切断してシリコンインゴット1とする。そしてシリコンインゴット1を接着剤3によりベース2に固定する。そして、シリコンインゴット1を厚さ250μm以下、より好ましくは200μm以下の厚みに分割することでベース2と接着された基板列となる。シリコンの基板列は、ベース2から剥離されることで、太陽電池素子に用いられるシリコン基板1aとなる。
【0014】
ベース2は、ブロック1を固定する役割を有しており、カーボン材もしくはガラス、樹脂等の材質からなる。ベース2は、ブロック1がスライスされた際に、図3(b)に示すように、一部が切断される。
【0015】
接着剤3は、基板列をベース2から剥離しやすくするために、温度を上げることで接着力が低下するものが用いられる。このような接着剤3は、例えば、熱硬化型二液性のエポキシ系や、アクリル系・リアクレート系またはワックスなどからなる。接着剤3として、例えば、エポキシ系を用いた場合、接着剤3を80℃以上に加熱することで容易にベース2から剥離することができる。
【0016】
本実施形態において第1の液体4は、複数の第1の槽5に貯留されており、ベース2に接着された基板列を洗浄する役割を有する。ベース2に接着された基板列は、複数の第1の槽5の第1の液体4に連続的に浸漬され洗浄される。複数の第1の槽5に貯留された第1の液体4のうち、切断されたブロック1を後に洗浄する第1の液体4bの温度は、切断されたブロック1を先に洗浄する第1の液体4aより高い。このような第1の液体4としては、例えば、灯油、アルカリ液、中性液、水が用いられる。また、ノニオン系,アニオン系,カチオン系界面活性剤の何れを含有するものであってもよい。アルカリ液のpHとしては5〜9、中性液のpHとしては9〜14で用いられる。
【0017】
本実施形態において第2の液体6は、複数の第2の槽7に貯留されている。このような第2の液体6としては、例えば、灯油、アルカリ液、中性液、水が用いられる。また、ノニオン系,アニオン系,カチオン系界面活性剤の何れを含有するものであってもよい。アルカリ液のpHとしては5〜9、中性液のpHとしては9〜14で用いられる。第2の液体6は、第1の液体4により洗浄された基板列を、ベース2に接着されたままの状態でさらに洗浄する役割を有し、第1の液体4とは液種が異なる。第2の槽7に貯留された第2の液体6は、直前に基板列を洗浄した第1の液体4bの温度(第1の液体4の最高温度という)より低い。これにより、スライスされたブロックが、洗浄工程や乾燥工程においてベースから剥離しにくくなる。
【0018】
ここで、第1の液体4、第2の液体6の液種について、先に基板列を洗浄する第1の液体4は、大まかな汚れを除去し、後に基板列を洗浄する第2の液体6は、先に洗浄された基板列をさらに洗浄する。例えば、インゴット1を、遊離砥粒タイプのワイヤーソー装置で使用される油系切断液にてスライスした場合、第1の液体4として灯油を用い、第2の液体6としてアルカリ液を用いる。これにより、灯油により基板列に付着したラッピングオイルやシリコン屑を除去した後、アルカリ液により、さらに基板1aに付着したオイルや汚れを洗浄できる。また、第1の液体4としてアルカリ液を用い、第2の液体6として温水を用いた場合、温水により洗剤や汚れを除去することができる。また、例えば、インゴット1を砥粒固着タイプのワイヤーソー装置で使用される水溶性クーラントにてスライスした場合には、第1の液体4として中性液を用い、第2の液体6として温水を用いる。
【0019】
ここで、第1の液体4および第2の液体6は、それぞれ一の第1の槽5、第2の槽7に貯留されていてもよい。この場合、第1の槽5は、図4に示すように、次第に温度が上昇する一の第1の液体4cを貯留する。また、第2の槽7は、一の第1の槽5内において加熱され最高温度となった第1の液体4cよりも低い温度の一の第2の液体6cを貯留する。この場合、それぞれの液体を一の槽で貯留することから、次の処理工程に洗浄対象を運ぶ手間が減り、製造効率が向上する。また、一の第2の液体6cは、次第に温度が上昇してもよい。
【0020】
(基板の製造方法)
本実施形態の基板の製造方法は、ベース2に接着されたブロック1をスライスし、ベース2に接着された基板列とするスライス工程と、基板列を複数種の液体により洗浄する洗浄工程と、基板列をベース2から剥離し複数の基板1aとする剥離工程と、を有する。
【0021】
≪スライス工程≫
まず、ベース2に接着剤3などにより接着されたブロック1を準備する。次に、ブロック1を、ワイヤーソー装置内に1本又は複数本配置する。ここで、ワイヤーソー装置は、二種類のワイヤーソー装置に大別できる。例えば、砥粒を含む切削液を供給することによってワイヤーのラッピング作用でブロック1を切断する遊離砥粒タイプのワイヤーソー装置、ワイヤー自体に砥粒を固着させてブロック1を切断する砥粒固着タイプのワイヤーソー装置がある。
【0022】
遊離砥粒タイプのワイヤーソー装置にて使用するワイヤーは、例えば鉄または鉄合金を主成分とするピアノ線を用いればよく、切削液は、例えば炭化珪素、アルミナ、ダイヤモンド等の砥粒、鉱物油、界面活性剤及び分散剤からなるラッピングオイルを混合して構成され、供給ノズルより複数本に張られたワイヤーにムラなく均等に切断液が供給される。
【0023】
砥粒固着タイプのワイヤーソー装置にて使用するワイヤーは、例えば鉄又は鉄合金を主成分とするピアノ線にダイヤモンドもしくは炭化珪素で形成された砥粒をニッケルや銅・クロムによるメッキにて固着させるか、もしくはレジン等の樹脂接着剤によって固着させた砥粒固着ワイヤーが用いられ、スライス中の温度抑制、シリコン屑の除去等を目的としてグリコール系からなる水溶性クーラントがワイヤー、ブロック1に対し供給される。
【0024】
上記ワイヤーソー装置を用いてブロック1をスライスすることにより、図3(a)に示すような複数枚の基板1aがベース2に接着された状態で得られる。なお、図3(b)に示されるようにワイヤーソーはベース2の一部までスライスする。このため、基板列は、それぞれがベース2上に接着剤3を介して接着された状態であるとともに、研削液が付着した状態にあり、また、隣接する基板1a間に研削液が侵入した状態にある。
【0025】
≪洗浄工程≫
次に、スライス後の基板列を複数種の液体により連続的に洗浄する。洗浄工程において、複数種の液体のうち、先に基板列を洗浄する第1の液体4の温度を次第に上昇させる。また、後に基板列を洗浄する第2の液体6の温度を、第1の液体4の最高温度より低くする。
【0026】
本実施形態の洗浄工程において、切断されたインゴット1は、ベース2が側面にくるように洗浄治具8にセットされ、第1の液体4に浸漬し洗浄した後、図1に示すように搬送装置9によって第2の槽7上に搬送され、第2の液体6に浸漬され洗浄される。
【0027】
第1の液体4として、例えばアルカリ液や中性液を用い、第2の液体6として、例えば温水を用いる場合、まず、例えば40度以上55℃未満の第1の液体4aを有する第1の槽5に基板列を浸漬し、次に55℃以上70℃以下の第1の液体4bを有する第1の槽5に基板列を浸漬する。このように初めの洗浄においては基板列の汚れが大きいために、大まかな汚れを除去するのに低温での洗浄で問題がなく、清浄度を高めるために次の洗浄において高温で洗浄することで微量の汚れを除去することができる。ここで第1の槽5は先に基板列を洗浄した第1の槽5と同一であっても別であっても構わない。そして、次に40度以上55℃未満の第2の液体6に基板列を浸漬する。このように、第2の液体6の温度を、第1の液体4の最高温度より低くすることで、高温洗浄により接着力が低下した接着剤の接着力を一時的に回復することができる。このように高温洗浄の時間を短縮することによって、基板1aの落下を抑え、基板1aの清浄度を高めることが可能となる。
【0028】
さらに、洗浄中の第2の液体6の温度を上昇させることにより、十分洗浄することができる。また、乾燥工程前の洗浄槽5の温度を高温にしておくことで、乾燥時間を短縮でき、剥離を容易に行うことができる。
【0029】
また、第1の液体4を貯留する第1の槽5を2槽だけでなく、3槽以上にしても構わない。また、次の第1の槽5に行くごとに第1の液体4の温度を高めてもよいし、同じ温度の複数の第1の槽5を続けて配置し、最後の第1の槽5の温度を先の第1の槽5の温度よりも高くなるようにしてもよい。
【0030】
浸漬時間としては、1つの洗浄液に20〜60分間、基板列を浸漬させる。
【0031】
また、洗浄工程において、第1、第2の槽5、7内で切断されたインゴット1を動かしたり、第1、第2の液体4、6に切断されたインゴット1を出し入れしたり、第1、第2の液体4、6をオーバーフローしたりまたは超音波洗浄しても構わない。さらに、第1の槽5への投入前に、基板間のシャワー洗浄を行っても構わない。
【0032】
≪乾燥工程および剥離工程≫
次に、上記工程で洗浄した基板列を乾燥させる。真空乾燥又は電磁波乾燥などを用いても構わないが、加熱乾燥させることによって、基板1aの乾燥とともに接着剤3の温度を上昇させることにより基板1aをベースから剥離することができる。
【0033】
加熱方法としては、図5に示されるように、ベース2を側面にして基板1aを設置台13に設置して、雰囲気を加熱すると同時に、設置台13下より加熱したエアーをエアーノズル12にて半導体基板1aに向けてブローする。なお、設置台13はメッシュ形状になっている。そして加熱温度は、例えば、雰囲気内の温度を100℃〜150℃に加熱し、エアーを80℃〜110℃に加熱する。エアーノズルの圧力としては0.01〜0.5MPa、流量としては100〜200L/minである。乾燥時間としては、20〜60分間行われる。
【0034】
加熱乾燥において基板1aの温度を上昇させても構わない。また、エアーにより順に基板1aをブローする時間を調整することによって、基板1aの温度を上昇させた後、下降させ、また上昇させてもよい。これを繰り返しながら、徐々に基板1aの温度を上昇させることにより、基板1aを十分に乾燥させることができる。また、基板1aをベース2から剥離する際に接着剤3の粘性が低下するため、基板1a側に接着剤3が残らないようにすることができる。(単純に、温度を上昇させると接着剤3の粘性が上がり、基板1aに接着剤3が残る)。
【0035】
最後に、接着剤3が剥離できる温度、例えば100℃以上に加熱することにより、ベース2から基板1aを剥離することができる。なお、剥離方向としてはベース2の平面方向に応力をかけることで容易に剥離することができる。
【0036】
インゴット1がシリコンからなる場合、上記方法によって得られた基板1aは、太陽電池素子として利用される。洗浄済み基板1aは、スライス工程によって生じた基板1a表面のダメージ層をアルカリ水溶液(例えば,NaOH水溶液)によりエッチングし、基板1aに、半導体接合領域と電極を形成することで太陽電池素子として形成される。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正および変更を加えることが出来る。
【0038】
例えば、インゴット1を切断することなく、そのままスライス工程を行っても構わない。
【0039】
また、剥離方法として熱湯やメチレンクロライドなどの有機溶剤に浸して剥離してもよい。
【0040】
(実施例1)
≪スライス工程≫
まず、ガラス板からなるベースにエポキシ系接着剤を塗布し、156mm×156mm×300mmの直方体の多結晶シリコンブロックをベースに設置し接着剤を硬化させた。炭化珪素の砥粒(#1200)、鉱物油、界面活性剤及び分散剤からなるラッピングオイルをワイヤーに供給し、ベースに接着したブロックをスライスして、シリコン基板を作製した。シリコン基板の厚みは180μmとした。
【0041】
≪洗浄工程≫
次に、上記工程で作製したシリコン基板を洗浄した。洗浄は、次に示す複数の工程で行った。
【0042】
まず、灯油からなる洗浄液を有する洗浄槽を2槽設け、ベースを接着したシリコン基板を浸漬し超音波洗浄した。灯油の温度は2槽とも25℃とし、浸漬時間を計25分とした。
【0043】
次に、アルカリ液からなる洗浄液を有する洗浄槽を4槽設け、ベースを接着したシリコン基板を浸漬し超音波洗浄した。アルカリ液の温度は順に、45℃、55℃、55℃、65℃とし、浸漬時間を計30分とした。(第1の液体4による洗浄工程)
最後に、温水からなる洗浄液を有する洗浄槽を3槽設け、ベースを接着したシリコン基板を浸漬し超音波洗浄した。温水の温度は順に、45℃、55℃、65℃とし、浸漬時間を計30分とした。(第2の液体6による洗浄工程)
なお、比較例としてアルカリ液、温水の洗浄槽の温度を全て65℃に設定した。
【0044】
≪乾燥工程および剥離工程≫
最後に、上記工程で洗浄したシリコン基板を加熱乾燥した。加熱装置内の温度を140℃とし、エアーブローの温度を90℃とした。そして、接着剤の温度を測定する代わりにベースの温度を測定して100℃まで加熱し、シリコン基板をベースから剥離した。
【0045】
実施例と比較例においてそれぞれ4本のシリコンブロックを使用し、洗浄工程におけるシリコン基板の落下率と、清浄度を確認した。落下率はスライス工程後に得られたシリコン基板の総数に対する洗浄工程中に落下したシリコン基板の比率である。また、清浄度は各シリコンブロックから10枚シリコン基板を抜き取り、各シリコン基板にセロハンテープを貼り付けて剥がした際に付着した汚れを画像処理にて評価した平均値である。なお、セロハンテープの全てが汚れているものは清浄度0とし、全く汚れていないものは清浄度1とした。
【0046】
その結果を表1に表す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示されるように、比較例では洗浄温度が高いため清浄度は高いものの落下率が高い。実施例においては、比較例に比べ、落下率は低い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の基板洗浄装置を用いた基板の製造工程における基板の洗浄工程の一実施形態を示す図である。
【図2】被切断対象であるブロックを示す断面図である。
【図3】(a)は切断されたブロックを示す斜視図、(b)は(a)の切断されたブロックのうちベースと固定された部分を示す拡大図である。
【図4】基板の洗浄工程の別の実施形態を示す図である。
【図5】乾燥工程を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 :ブロック
1a :基板
2 :ベース
3 :接着剤
4 :第1の液体
6 :第2の液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに接着された基板を洗浄するための第1の液体を貯留する第1の槽と、
前記第1の液体により前記基板を洗浄した直後に、前記基板をさらに洗浄するための第2の液体を貯留する第2の槽と、を備え、
前記第1の液体の温度を次第に上昇させて前記基板を洗浄し、前記第2の液体の温度は前記第1の液体の最高温度より低いことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記第1の液体がアルカリ液または中性液であり、前記第2の液体が水であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記第1の液体が貯留された複数の前記第1の槽を備え、複数の前記第1の槽のうち、後に前記基板を洗浄する前記第1の液体の温度が、先に前記基板を洗浄する前記第1の液体より高いことを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
ベースに接着されたブロックと、第1の液体と、第2の液体と、を準備する工程と、
前記ベースに接着された前記ブロックをスライスし、前記ベースに接着された基板列とする工程と、
前記基板列を前記第1の液体により洗浄した後、前記基板列を前記第2の液体により洗浄する工程と、
前記基板列を前記ベースから剥離し複数の基板とする工程と、を有し、
前記基板列を洗浄する工程において、先に前記基板列を洗浄する第1の液体の温度を次第に上昇させるとともに、後に前記基板列を洗浄する第2の液体の温度を、前記第1の液体の最高温度より低くすることを特徴とする基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板列を複数の前記第1の液体により洗浄し、複数の前記第1の液体のうち、後に前記基板列を洗浄する前記第1の液体の温度を、先に前記基板列を洗浄する前記第1の液体より高くすることを特徴とする請求項4に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記基板列を、次第に温度が上昇する一の前記第1の液体により洗浄することを特徴とする請求項4に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記基板列の洗浄工程において、前記第2の液体の温度を次第に上昇させることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項8】
前記基板列の洗浄工程は、複数の前記第2の液体により行われ、複数の前記第2の液体のうち、後に前記基板列を洗浄する前記第2の液体の温度は、先に前記基板列を洗浄する前記第2の液体より高いことを特徴とする請求項7に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
前記基板列を、次第に温度が上昇する一の前記第2の液体により洗浄することを特徴とする請求項7に記載の基板の製造方法。
【請求項10】
前記基板列の洗浄工程において、前記第1の液体がアルカリ液または中性液であり、前記第1の液体の最高温度が40〜70℃であることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項11】
前記基板列を乾燥させる工程をさらに有することを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の基板の製造方法。
【請求項12】
前記乾燥工程は、乾燥温度の上昇、下降を繰り返すことを特徴とする請求項11に記載の基板の製造方法。
【請求項13】
請求項4〜12のいずれかの製造方法により製造されたシリコンからなる基板と、
前記基板に形成された半導体接合領域と電極と、を有することを特徴とする太陽電池素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−51900(P2010−51900A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219741(P2008−219741)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】