説明

洗浄装置

【課題】短時間で簡単に高度な殺菌性及び洗浄力に優れた洗浄を行うことのできる洗浄装置を提供することを目的としている。
【解決手段】洗浄装置100は、陽イオン交換膜21の一方の面に陽極電極22が設けられ、他方の面に陰極電極23が設けられてなる触媒電極2と、触媒電極2の表面を被覆する被覆部1と、被覆部1に接続されて、被覆部1内の触媒電極2に原料水を供給する供給管3とを備える。被覆部1のうち、陽極電極22及び陰極電極23に臨む面に、被覆部1を貫通する貫通穴11,11,…、12,12,…がそれぞれ形成されており、陽極電極22と陰極電極23との間に直流電圧を印加することによってオゾン水が生成され、陽極電極22側の貫通穴11,11,…を通過してオゾン水が流出し、陰極電極23側の貫通穴12,12,…を通過して水素水が流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水及び水素水で洗浄することのできる洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン水の殺菌効果や皮膚への活性化現象が定着し、オゾン水による汚れた手指の殺菌や手指美容が普及し始めた。例えば、病院の集中治療室で治療にあたる医師や看護師の手指の殺菌や、食品工場や半導体工場作業者の手指の殺菌などにもオゾン水が多く使用され始めている。このようなオゾン水の製法として、陽イオン交換膜の一方の面に陽極電極を圧接させ、他方の面に陰極電極を圧接してなる触媒電極の電解面に原料水を直接接触させて、水の電気分解によりオゾン水を生成させる直接電解法を利用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−134678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、最近明らかになったことは、オゾン水は微生物には極めて優れた殺菌効果があるが、通常手指に付着している汚染物質はオゾンと反応し易い有機物が多く、汚染した皮膚にいきなりオゾン水をかけても、汚染物質が先にオゾンと反応してオゾン水の濃度を低下又は減殺することが多く認められる。その対策として現在とられている対策としては、まず手指を洗浄剤で予備洗浄した上で、オゾン水殺菌を行うことが一般的となっている。そこで、予備洗浄及びオゾン水の洗浄を短時間でかつ簡便に、また、効果的にオゾン水による洗浄殺菌を行うことが要求されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、短時間で簡単に高度な殺菌性及び洗浄力に優れた洗浄を行うことのできる洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者等は、最近、半導体や液晶ガラスの高度清浄に水素の還元力が見直され、水中に水素が懸濁している水素水が多く使用され始め、オゾン発生電極の陰極より発生している水素が大気放出して捨てられている現状に着目し、この陰極から発生する水素を手指の予備洗浄に利用する課題に取り組んだのである。
従来の流水手指洗浄の方法から脱却し、平面電極に散水機能を付加し、まず水素を発生する陰極に少量の水を供給し、発生した水素を混合した水によって汚染した手指を予備洗浄したところ、短時間で皮膚表面の汚染物が離脱し、続けて陽極面より発生するオゾン水による洗浄殺菌を行ったところ、流水法よりも短時間で手指の高度殺菌が達成できた。これは陽極において、単に生成したオゾン水のみならず、多量に発生している発生期の酸素のラジカルな酸化力との重畳作用に起因するものと推察される。
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、
陽イオン交換膜21の一方の面に陽極電極22が設けられ、他方の面に陰極電極23が設けられてなる触媒電極2と、
前記触媒電極の表面を被覆する被覆部1と、
前記被覆部に接続されて、前記被覆部内の触媒電極に原料水を供給する供給管3とを備え、
前記被覆部のうち、前記陽極電極及び前記陰極電極に臨む面に、前記被覆部を貫通する貫通穴11,11,…、12,12,…がそれぞれ形成されており、
前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電圧を印加することによってオゾン水が生成され、前記陽極電極側の貫通穴を通過してオゾン水が流出し、前記陰極電極側の貫通穴を通過して水素水が流出することを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、被覆部のうち、陽極電極及び陰極電極に臨む面に、被覆部を貫通する貫通穴がそれぞれ形成されており、陽極電極と陰極電極との間に直流電圧を印加することによってオゾン水が生成され、陽極電極側の貫通穴を通過してオゾン水が流出し、陰極電極側の貫通穴を通過して水素水が流出するので、陰極電極側を手などに向けることにより水素水で予備洗浄することができ、予備洗浄後に陽極電極側を手などに向けることによりオゾン水で洗浄することができる。また、これら水素水及びオゾン水による洗浄を交互に繰り返し行うこともできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水素水で予備洗浄後、オゾン水で洗浄することができ、短時間で簡単に高度な殺菌性及び洗浄力に優れた洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、洗浄装置100の側断面図、図2は、洗浄装置100の使用状態を示した外観斜視図である。
図1及び図2に示すように、洗浄装置100は、触媒電極2と、触媒電極2に原料水(例えば、水)を供給する供給管3と、触媒電極2の表面を被覆して供給管3に接続される被覆部1とから構成したもので、触媒電極2に直流電圧を印加することによって陽極電極22からオゾン気泡が発生し、そのオゾン気泡が原料水に溶解することによりオゾン水が生成され、陰極電極23から水素が発生し、水素が原料水に溶解することにより水素水が生成され、これらオゾン水及び水素水により手指や皮膚等を洗浄する装置である。
【0009】
触媒電極2は、陽イオン交換膜21の一方の面に陽極電極22を密着させ、他方の面に陰極電極23を密着させてなるもので、それぞれ平板状に形成され、これらを密着させた後、絶縁性の接合部材(図示しない)により接合されることによって触媒電極2とされている。
陽極電極22と陰極電極23との間には、電源装置(図示しない)のプラス端子241及びマイナス端子242が導線を介してそれぞれ電気的に接続されて、電源装置の駆動により所定の電圧が印加されるようになっている。印加する直流電圧は、例えば9〜15ボルト(V)が好ましい。
【0010】
陽イオン交換膜21としては、従来公知のものを使用することができ、発生するオゾンに耐久性の強いフッ素系陽イオン交換膜を使用することができ、例えば厚さ100〜250ミクロンが好ましい。
【0011】
陽極電極22は、陽イオン交換膜21を全面的に覆い隠すように密着されるものではなく、多数の通孔を設けて、陽イオン交換膜21に接触部と非接触部とを有して重ねられている。すなわち、陽極電極22は網状、グレーチング状又はパンチングメタル状とすることが好ましい。なお、図1では陽極電極22が網状の場合を示している。具体的に、グレーチング状とは線材を溶接した格子状で、パンチングメタル状とは金属板に多数の通孔を形成した多孔板状である。また、グレーチング状の陽極電極を複数枚重ねても良い。
【0012】
陽極電極22としては、オゾン発生触媒機能を有した金属を使用し、この金属としては二酸化鉛が最も広く知られている。しかし、この二酸化鉛は加工が難しく、微小な通孔が不規則に存在するポーラス体を使用しているが、二酸化鉛のポーラス体は脆弱で耐久性に劣り、さらにはオゾン水中に鉛が溶出する可能性もあることから、純粋なオゾン水を得るため、白金又は白金被覆金属の電極を使用することが好ましく、特に、本発明ではチタンに白金を被覆した金属を使用することが好ましい。
そして、陽極電極22は平面状の金属をグレーチング状に加工することが望ましい。また、被覆処理としては、例えばメッキや熱着等により行うことができる。
【0013】
このようにグレーチング状の陽極電極22とすることによって、陽極電極22を構成する部材の交点部位が尖って外面に突出し、水流と接触して渦流を生じ、陽極電極22で発生したオゾンの微泡を巻き込んで溶解を早めることができる。
【0014】
一方、陰極電極23は、銀又は薄い銀製金網、グレーチング等の表面に塩化銀被覆を施したものを使用することが好ましく、また、銀製金網の表面にさらにチタン製のグレーチング状の電極を重ねても良い。特に、陰極電極23は陽極電極22よりも目の粗さが粗くなるように形成されていることが好ましい。
【0015】
また、触媒電極2の表面には、触媒電極2を被覆する被覆部1が設けられている。被覆部1は、触媒電極2を被覆できるように内部に空洞1aを有する長尺な部材であって、一端部が閉塞され他端部が開口した部材である。被覆部1は、耐オゾン性材料として、例えばオーステナイト系ステンレス、テフロン(登録商標)、硬質塩化ビニル等から構成されている。被覆部1の表面のうち、陽極電極22を向く面には、内部に貫通して陽極電極22で生成されるオゾン水が流出する多数の細い貫通穴11,11,…が形成されている。また、被覆部1の表面のうち、陰極電極23を向く面には、内部に貫通して陰極電極23で生成される水素水が流出する多数の細い貫通穴12,12,…が形成されている。
このような被覆部1の開口端部1bには、被覆部1内に原料水を供給する供給管3が接続されている。供給管3は、例えば水道栓や原料水が貯留されたタンクに接続された低吐出圧の小型ポンプ等に接続されている。
【0016】
また、被覆部1と供給管3との接続部分には、手で握る把持部4(図2のみ図示)が外挿されている。把持部4としては、例えば、水道器具等に見られる金属や樹脂から構成されているものが挙げられる。
【0017】
また、被覆部1内には、被覆部1内で生成されたオゾン水のオゾン濃度を検出する濃度検出センサ(図示しない)を設けても良い。濃度検出センサとしては、検出電極と電位測定の基準となる比較電極、これら検出電極及び比較電極の一方の端部に結線して電位を測定する電位差計等から構成されており、検出電極及び比較電極の先端部(他方の端部)を被覆部1内のオゾン水に接触させ、検出電極のオゾン濃度変化による検出電極と比較電極との電位差を検出して濃度を測定する。
検出電極としては、例えば白金や金等からなる電極を使用し、比較電極としては銀/塩化銀を使用することが好ましい。
このようにして検出されたオゾン濃度に基づいて、電源装置が予め設定されたオゾン濃度と一致するように陽極電極22及び陰極電極23間に印加する電圧を制御することによって、所定の濃度のオゾン水で洗浄することができる。
【0018】
次に、上述の構成からなる洗浄装置100による洗浄方法について説明する。
供給管3から原料水を被覆部1内に供給することによって、水流が陽極電極22面及び陰極電極23面に連続接触し、同時に電源装置を駆動させて陽極電極22と陰極電極23との間に所定の直流電圧を印加する。この通電によって、被覆部1内の原料水が電気分解されて、陽極電極22側にはオゾン気泡が発生し、陰極電極23側には水素気泡が発生する。
【0019】
ここで、陽極電極22側ではわずかな陽極電極22の凹凸によって流れの方向が複雑に変わり渦流となる。そのため、陽極電極22側では、発生したオゾン気泡をいち早く水中に取り込んで溶解させることによってオゾン水を生成し、陽極電極22と陽イオン交換膜21との間(正確には陽極電極22と陰極電極23との間)に電流が多く流れる状態を確保することになる。そして、陽極電極22に臨む被覆部1の貫通穴11,11,…からオゾン水が流出する。
【0020】
一方、陰極電極23側においては、水素気泡が激しく発生し、水素気泡が原料水に溶解して水素水を生成し、陰極電極23に臨む被覆部1の貫通穴12,12,…から水素水が流出する。
したがって、まず、予備洗浄する場合には被覆部1の陰極電極23側の面を洗浄箇所に向けて水素水で洗浄を行い、その後、陰極電極23側の面から陽極電極22側の面に反転させて、陽極電極22側の面を洗浄箇所に向けてオゾン水で洗浄を行う。
【0021】
なお、濃度検出センサを設けた場合、通電中に、同時に被覆部1内の溶液の濃度が測定され、電源装置が、被覆部1内のオゾン濃度が予め設定されたオゾン濃度となるように出力を行うことによって、陽極電極22及び陰極電極23間の電圧が制御される。このようにして設定濃度のオゾン水が生成される。
【0022】
以上、本発明の実施の形態によれば、被覆部1のうち、陽極電極22及び陰極電極23に臨む面に、被覆部1を貫通する貫通穴11,11,…、12,12,…がそれぞれ形成され、陽極電極22と陰極電極23との間に直流電圧を印加することによってオゾン水が生成され、陽極電極22側の貫通穴11,11,…を通過してオゾン水が流出し、陰極電極23側の貫通穴12,12,…を通過して水素水が流出するので、まず、陰極電極23側を手などに向けることにより水素水で予備洗浄し、予備洗浄後に陽極電極22側を手などに向けることによりオゾン水で洗浄することができる。このように水素水及びオゾン水の洗浄が短時間で簡単に行え、皮膚表面の汚染物が離脱し、洗浄力に優れた高度な殺菌性を達成することができる。
【0023】
次に、本発明の洗浄装置100による効果について、実施例を挙げて説明する。
[実施例]
幅20mm、長さ150mmの平板側電極において、中央にデュポン製ナフイオン膜を配置し、その一方の面に厚み0.1〜0.2mmの白金マイクログレーチングと、その白金マイクログレーチングの外側にチタン製グレーチングを重ねて陽極電極とし、他方の面に塩化銀を被覆した銀網と、その銀網の外側にチタン製グレーチングを重ねて陰極電極とした。
一般の触媒電極とは異なり、陽極電極と陰極電極との両方に通水し、触媒電極の外側を被覆部で多い、毎分2リットルの給水を行ってオゾン水と水素水がともに毎分約1リットル噴出するようになし、両電極間に12Vの直流電圧を加えたところ、約12Aの電流が流れ、陽極電極から約4ppmのオゾン水が噴出し、陰極電極から多数の水素の微細な泡を含んだ水素水が噴出した。
そして、まず、陰極電極側を下方に向けて手指を擦り付けるように水素水で約10秒片手を洗い、次いで陽極電極側を下方に向けて水素水で洗った片手をオゾン水で約15秒洗い、温風で乾燥した。このようにして水素水とオゾン水とで洗浄した手の表面をスタンプ方で微生物検査を行ったところ、洗剤で予備洗浄し4ppmのオゾン水で20秒殺菌した場合とほとんど同等の高い殺菌効果を得た。
これは、液晶面やグラスを水素水で洗浄した場合と同様に、手指や皮膚の表面に付着して汚染した埃や微生物が、陰極電極で発生したばかりの還元力の高い水素微泡によりイオン結合を解かれて離脱する現象に起因するものと考えられ、さらに還元性の水素水でぬれている皮膚に殺菌性の高いオゾン水を噴射する結果、微生物の離脱と殺菌が同時に起こった結果、高度の殺菌現象が観察されたものと類推される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】洗浄装置100の側断面図である。
【図2】洗浄装置100の使用状態を示した外観斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 被覆部
2 触媒電極
3 供給管
11,12 貫通穴
21 陽イオン交換膜
22 陽極電極
23 陰極電極
100 洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換膜の一方の面に陽極電極が設けられ、他方の面に陰極電極が設けられてなる触媒電極と、
前記触媒電極の表面を被覆する被覆部と、
前記被覆部に接続されて、前記被覆部内の触媒電極に原料水を供給する供給管とを備え、
前記被覆部のうち、前記陽極電極及び前記陰極電極に臨む面に、前記被覆部を貫通する貫通穴がそれぞれ形成されており、
前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電圧を印加することによってオゾン水が生成され、前記陽極電極側の貫通穴を通過してオゾン水が流出し、前記陰極電極側の貫通穴を通過して水素水が流出することを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−86960(P2008−86960A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273114(P2006−273114)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000226150)日科ミクロン株式会社 (29)
【Fターム(参考)】