説明

洗浄装置

【課題】洗浄装置において、洗浄作業を効率よく行うことができるとともに、洗浄ムラを抑制することができるようにする。
【解決手段】 洗浄装置1は、洗浄液4を入れる洗浄槽2と、洗浄槽2に入れられた洗浄液4中に被洗浄物20を浸漬させて保持する被洗浄物保持部3と、洗浄液4中に超音波Sを出射する超音波振動子5と、超音波出射領域5aに対向して、超音波Sの出射方向に対して傾斜角をつけて配置された超音波反射板7A、7B、7C、7Dと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物を洗浄液に浸漬させて超音波洗浄を行う洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄液に被洗浄物を浸漬させ、超音波を照射して汚れを除去する洗浄装置が知られている。このような洗浄装置では、洗浄液中の被洗浄物に超音波を均一に当てるため、超音波と被洗浄物との相対位置を変化させる必要がある。ただし、被洗浄物を移動させると洗浄装置の大型化を招く。また、被洗浄物を移動可能に保持する洗浄保持具や被洗浄物の大きさ、形状などによって、超音波の当たり方にむらが発生しやすくなる。
そこで、従来、被洗浄物の位置を変えることなく超音波の当たり方を変えることができる洗浄装置が提案されている。
特許文献1には、被洗浄物を洗浄槽の洗浄用液中に浸漬し、超音波振動子から洗浄用液中に超音波を出射して上記被洗浄物を超音波洗浄する超音波洗浄器において、上記洗浄用液中に浸漬するとともに超音波振動子に対向して設置される反射板と、この反射板を洗浄中移動させる反射板駆動装置を具備したことを特徴とする超音波洗浄器が記載されている。
また、特許文献2には、物品を洗浄液に浸漬し超音波を照射して洗浄する洗浄装置であって、洗浄液を入れる洗浄槽に液面昇降手段を設け、洗浄作業中に洗浄液面を使用する超音波の波長の1/2以上を含む範囲で上下動させて洗浄可能とする洗浄装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−81475号公報
【特許文献2】特開平7−185485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の洗浄装置には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、洗浄用液中で、被洗浄物に対して反射板を上下に振動(揺動)させることで、洗浄液中に発生する超音波の定在波の状態を変化させ、洗浄用液の水深に依存する一定の定在波が発生することによる洗浄ムラを抑制している。
ところが、この技術では、超音波のムラが改善されるのは反射板の移動方向のみであり、超音波の進行方向と平行な方向では超音波が効率的に当たらないため、被洗浄物の形状によっては洗浄ムラが残ってしまうという問題がある。これを改善するには、被洗浄物の配置姿勢を変えるなどしてさらに洗浄する必要があるため、洗浄作業の効率が悪くなってしまうという問題がある。
また、被洗浄物を覆う位置関係に反射板を配置する必要があるため、被洗浄物の出し入れの支障となって被洗浄物の交換に時間がかかり、洗浄作業の効率が悪くなってしまうという問題もある。
特許文献2に記載の技術では、超音波の波長の1/2以上を含む範囲で洗浄槽内の液面を上げ下げすることで、超音波の定在波の節と腹の位置を液面の上下方向に移動させる。これにより、超音波の洗浄能力が落ちる定在波の節位置が上下方向に移動するので、ある程度は洗浄のムラを抑制することができる。
この場合、被洗浄物の出し入れの支障となる反射板を有しないため、被洗浄物を容易に交換することはできるが、反射板に代えて液面の自由端反射を用いただけなので、超音波の進行方向と平行な方向では、被洗浄物の形状によっては、洗浄ムラが残ってしまうことは、特許文献1とまったく同様である。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、洗浄作業を効率よく行うことができるとともに、洗浄ムラを抑制することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の洗浄装置は、洗浄液を入れる洗浄槽と、該洗浄槽に入れられた洗浄液中に被洗浄物を浸漬させて保持する保持部と、前記洗浄液中に超音波を出射する超音波出射部と、前記超音波の出射領域に対向して、前記超音波の出射方向に対して傾斜角をつけて配置された反射部と、を備える構成とする。
【0007】
また、本発明の洗浄装置では、少なくとも前記超音波出射部の前記超音波の出射方向に、前記反射部を移動可能に支持する反射部移動部を備える構成する。
【0008】
また、本発明の洗浄装置では、前記反射部は、板状であって複数枚からなり、これら複数枚の反射部の各々は、前記超音波の出射領域内の複数の部分領域の各々に応じて、該部分領域に対向する部分を有することが可能である。
【0009】
また、本発明の反射部が板状であって複数枚からなる洗浄装置では、前記複数枚の反射部における前記超音波の出射領域に対向する面の各々は、前記超音波出射部から離れるに従って、大きな面積を有する
【0010】
また、本発明の洗浄装置では、前記反射部の傾斜角を変更する角度変更部を備えることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄装置によれば、反射部によって超音波出射部から出射される超音波を出射方向に対して斜め方向に反射して、被洗浄物に対する照射位置を変更することができるため、洗浄作業を効率よく行うことができるとともに、洗浄ムラを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な正面図および平面図である。
【図2】超音波発振面と、反射面、または液面反射面との間の定在波の様子を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の第1変形例、および第2変形例に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の第3変形例に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な平面図、およびそのK−K断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。また、すべての図面は模式図であり、見易さのため、寸法や形状は誇張されている。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置について説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な正面図および平面図である。
【0015】
本実施形態の洗浄装置1は、図1(a)、(b)に示すように、被洗浄物20を洗浄液4に浸漬させて洗浄液4中で超音波洗浄を行うものである。
洗浄装置1の概略構成は、洗浄槽2、被洗浄物保持部3(保持部)、超音波振動子5(超音波出射部)、超音波反射板7A、7B、7C、7D(反射部)、および移動機構8(反射部移動部)を備える。
被洗浄物20としては、超音波洗浄することができる適宜の被洗浄物を採用することができる。被洗浄物20の例としては、例えば、レンズ等を挙げることができる。
被洗浄物20は、単品で洗浄液4に浸漬させてもよいが、複数であってもよい。本実施形態では、複数の被洗浄物20を被洗浄物保持治具21に保持した場合の例で説明する。被洗浄物保持治具21は、例えば、被洗浄物20の各被洗浄面を露出させて保持する枠体などによって構成される。
洗浄液4としては、超音波洗浄に用いることができる適宜の液体、例えば、洗剤の溶液や、溶剤、水などを採用することができる。
【0016】
洗浄槽2は、洗浄液4を入れるもので、本実施形態では、一例として、底面部2aと4つの側面部2bとによって構成された上側に開口を有する直方体容器からなる。
洗浄液4は、洗浄槽2に洗浄槽2の容積より少ない体積だけ入れられており、このため、液面4aが洗浄槽2の開口より低い位置に形成されている。
【0017】
被洗浄物保持部3は、洗浄槽2に入れられた洗浄液4中に被洗浄物20を浸漬させて保持するものである。本実施形態では、洗浄槽2の底面部2aの略中央において、洗浄液4の液面4aより低い高さに配置された平面視矩形状の網状載置面3aと、網状載置面3aの四隅で下側から支持する4つの脚部3bとからなる。
網状載置面3aは、超音波を良好に透過させる多数の貫通孔を有する部材から構成される。例えば、針金やワイヤー等で編まれた網状部材や、多数の貫通孔が設けられた薄板部材などによって構成することができる。
網状載置面3aは平面視で、被洗浄物保持治具21の面積より広い範囲に設けられている。そして、網状載置面3aの上下には、洗浄液4のみが満たされた洗浄液領域が形成されている。このため、被洗浄物保持治具21および被洗浄物20は、網状載置面3aの上方側の任意の位置において、洗浄槽2の開口から出し入れすることが可能である。
【0018】
超音波振動子5は、洗浄槽2に超音波振動を伝達するもので、本実施形態では、底面部2aの下面の略中央に取り付けられている。
また、本実施形態の超音波振動子5は、平面視矩形状の振動面を有しており、このため、超音波振動子5を駆動すると、洗浄槽2の底面部2aの内側の矩形状の超音波出射領域5aから超音波Sが出射されるようになっている。超音波Sの出射方向は、その直進性から、底面部2aから上側(液面4a側)に向かう方向になっている。
超音波振動子5で発生させる超音波Sの周波数νは、被洗浄物20の汚れの程度や種類によって適宜の周波数を採用することができる。好適な周波数の一例としては、ν=40(kHz)を採用することができる。
【0019】
超音波反射板7A、7B、7C、7Dは、洗浄液4中の超音波出射領域5aに対向して超音波Sの出射方向に対して傾斜角をつけて配置された矩形平板状部材である。
超音波反射板7A、7B、7C、7Dの材質は、超音波を効率的に反射することができ、超音波照射に耐久性を有する材質であれば、特に制限されない。例えば、厚さ約1mm程度のステンレス鋼板などを好適に採用することができる。
本実施形態では、これらの超音波反射板7A、7B、7C、7Dを保持するため、被洗浄物保持部3を挟んで対向する位置に、洗浄液4中から洗浄槽2の上方まで鉛直方向に延在された反射板保持部材6がそれぞれ配置されている。
各反射板保持部材6の上端側に形成された移動軸部6bは、洗浄槽2の上方で、不図示の支持部材に固定された移動機構8によって鉛直方向に移動可能に支持されている。
また、各反射板保持部材6の下端側には、それぞれ、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dを固定する反射板固定部6aが設けられている。
【0020】
超音波反射板7A、7Bは、図1(a)の図示左側の反射板固定部6aにおいて、互いに上下方向に間をあけて固定されている。ただし、上下方向の位置関係は、超音波反射板7Bが超音波反射板7Aの下方側(超音波振動子5に近い側)に配置されている。
超音波反射板7Aは、反射板保持部材6と被洗浄物保持部3の図示左側面との間の領域で、被洗浄物保持治具21の上方側から、反射板保持部材6に対して傾斜角θをなし、反射板保持部材6から斜め上方に張り出すように設けられている。
また、超音波反射板7Bは、反射板保持部材6と被洗浄物保持部3の図示左側面との中間の領域で、被洗浄物保持治具21の側方の下端寄りの位置から、反射板保持部材6に対して傾斜角θをなし、反射板保持部材6から斜め上方に張り出すように設けられている。
ここで、超音波反射板7Bは、超音波反射板7Aよりも傾斜角が小さく(θ<θ)、反射板保持部材6からの張り出し範囲は超音波反射板7Aの張り出し範囲よりも狭くなっている。
このため、図1(b)に示すように、反射板保持部材6と被洗浄物保持部3の図示左側面との間の領域では、超音波出射領域5aは、超音波反射板7Bに対向する部分領域Aと、超音波反射板7Bを越えて張り出す超音波反射板7Aに対向する部分領域Aとに分けられることができる。言い換えるならば、超音波反射板7Bは、部分領域Aに応じた対向部分を有し、超音波反射板7Aは、部分領域Aに応じた対向部分を有することができる。なお、部分領域Aは、部分領域Aとは異なる領域である。
【0021】
超音波反射板7A、7Bの傾斜角θ、θは、超音波Sのうち、それぞれ部分領域A、Aから出射される超音波S、Sを適宜の方向に反射して、被洗浄物20に照射できる角度に設定される。
例えば、本実施形態の傾斜角θは、超音波Sを斜め下側に反射して、被洗浄物20に向けて反射できるように、45°よりも大きい角度に設定されている。図1(a)に示す例では、被洗浄物20の上面側に向けて反射できるように傾斜角θは約50°に設定されている。
また、本実施形態の傾斜角θは、超音波Sを略水平方向に反射して、被洗浄物20に向けて反射できるように、傾斜角θよりも小さい角度であって45°に近い角度に設定されている。
【0022】
超音波反射板7C、7Dは、図1(a)の図示右側の反射板固定部6aにおいて、互いに上下方向に間をあけて固定されている。ただし、上下方向の位置関係は、超音波反射板7Dが超音波反射板7Dの下方側(超音波振動子5に近い側)に配置されている。
超音波反射板7Cは、反射板保持部材6と被洗浄物保持部3の右側面との間の領域で、被洗浄物保持治具21の上方側から、反射板保持部材6に対して傾斜角θをなし、反射板保持部材6から斜め上方に張り出すように設けられている。
また、超音波反射板7Dは、反射板保持部材6と被洗浄物保持部3の右側面との中間の領域で、被洗浄物保持治具21の側方の下端寄りの位置から、反射板保持部材6に対して傾斜角θをなし、反射板保持部材6から斜め上方に張り出すように設けられている。
ここで、超音波反射板7Dは、超音波反射板7Cよりも傾斜角が小さく(θ<θ)、反射板保持部材6からの張り出し範囲は超音波反射板7Cの張り出し範囲よりも狭くなっている。
このため、図1(b)に示すように、反射板保持部材6と被洗浄物保持部3の右側面との間の領域では、超音波出射領域5aは、超音波反射板7Dに対向する部分領域Aと、超音波反射板7Dを越えて張り出す超音波反射板7Cに対向する部分領域Aとに分けられることができる。言い換えるならば、超音波反射板7Dは、部分領域Aに応じた対向部分を有し、超音波反射板7Cは、部分領域Aに応じた対向部分を有することができる。なお、部分領域Aは、部分領域Aとは異なる領域である。
【0023】
超音波反射板7C、7Dの傾斜角θ、θは、超音波Sのうち、それぞれ部分領域A、Aから出射される超音波S、Sを適宜の方向に反射して、被洗浄物20に照射できる角度に設定される。
例えば、本実施形態の傾斜角θは、超音波Sを斜め下側に反射して、被洗浄物20に向けて反射できるように、45°よりも大きい角度、例えば、約50°に設定されている。
また、本実施形態の傾斜角θは、超音波Sを略水平方向に反射して、被洗浄物20に向けて反射できるように、傾斜角θよりも小さい角度であって45°に近い角度に設定されている。
【0024】
ここで、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dとの位置関係、および形状は、互いに面対称な関係になっていてもよいが、面対称に限定されるものではない。このため、各超音波反射板の大きさや、位置関係、傾斜角などは、必要に応じて適宜の条件に設定することができる。また、これらの条件は、例えば、超音波Sの反射波のシミュレーションを行うなどして理論的に求めることも可能であるが、実際に洗浄の実験を行って、良好に洗浄できる条件を求めてもよい。
【0025】
移動機構8は、被洗浄物20の洗浄中に、反射板保持部材6の移動軸部6bを、少なくとも超音波Sの出射方向に沿って移動可能に支持するものであり、不図示の支持部材によって洗浄槽2の開口の上方側に支持されている。本実施形態では、超音波Sの出射方向である鉛直方向に移動できるようになっている。
移動機構8の構成としては、例えば、移動軸部6bの移動を鉛直方向に沿ってガイドするガイド部と、移動軸部6bを鉛直方向に移動させる駆動部とを備えている。駆動部として、例えば、ねじ送り機構、リニアモータなどの1軸移動機構を挙げることができる。
このような移動機構8によれば、各反射板保持部材6の反射板固定部6aに固定された超音波反射板7A、7Bと超音波反射板7C、7Dとを、洗浄中にそれぞれ超音波Sの出射方向に沿って移動させることができる。
【0026】
次に、洗浄装置1の動作について説明する。
図2は、超音波発振面と、反射面、または液面反射面との間の定在波の様子を示す模式図である。
【0027】
洗浄装置1によって、被洗浄物20の洗浄を行うには、まず、洗浄液4が満たされた洗浄槽2中に配置された被洗浄物保持部3の網状載置面3a上に、被洗浄物20を載置する。本実施形態では、複数の被洗浄物20を被洗浄物保持治具21に保持させた状態で、網状載置面3a上に載置する。このため、本実施形態では、被洗浄物保持治具21を網状載置面3aに載置することと、被洗浄物20を網状載置面3aに載置することとは同じことである。
以下では、簡単のため、特に断らない限り「被洗浄物保持治具21に保持させた被洗浄物20を」載置したり、移動させたりすることを、単に、「被洗浄物20を」載置したり、移動させたりすると言うことにする。
【0028】
網状載置面3aの上方、および各反射板保持部材6の対向方向と直交する方向の網状載置面3aの側方(図1(b)の上下方向)は、洗浄液4のみが満たされた洗浄液領域となっているため、これらの領域のいずれを通しても、被洗浄物20を容易に配置したり、移動させたりすることができる。
このため、被洗浄物20の載置作業、取り出し作業は、網状載置面3aの上方のみには限定されない。例えば、各反射板保持部材6の対向方向と直交する方向の一方の側方において被洗浄物20を洗浄液4に浸漬し、洗浄液4中を水平方向に移動して網状載置面3a上に載置し、洗浄が終了した被洗浄物20は各反射板保持部材6の対向方向と直交する方向の他方の側方に移動してから、洗浄液4から引き上げる、といった搬送経路によって、載置作業、取り出し作業を行ってもよい。この場合、互いに異なる被洗浄物保持治具21で保持された複数組の被洗浄物20を連続的に洗浄する場合に効率的である。
【0029】
超音波振動子5を駆動すると、網状載置面3aの下方の底面部2aでは、超音波出射領域5aからに鉛直上方に向かって超音波Sが出射される。
超音波出射領域5aの部分領域A(A)から出射される超音波S(S)は、超音波反射板7A(7C)によって、斜め下方に反射されて、被洗浄物20の上面側に照射される。
また、超音波出射領域5aの部分領域A(A)から出射される超音波S(S)は、超音波反射板7B(7D)によって、略水平方向に反射されて、被洗浄物20の側面側に照射される。
【0030】
また、網状載置面3aの下方の超音波出射領域5aの部分領域Aから出射される超音波Sは、網状載置面3aを透過し、網状載置面3a上の被洗浄物20の下面側に直接照射される。また、超音波Sは、一部が、被洗浄物20や被洗浄物保持治具21の間を通り抜けたり、被洗浄物20や被洗浄物保持治具21を透過したりして、液面4aに到達し、液面4aで下方側に反射され、上方側から被洗浄物20に照射される。
被洗浄物20の表面にこれら超音波S、S、S、S、および超音波Sの一部が到達すると、これらの超音波によって被洗浄物20の汚れが洗浄される。
【0031】
本実施形態によれば、被洗浄物20を挟んで対向する方向から、被洗浄物20の上面、側面に、被洗浄物20の下面側から被洗浄物20の下面に、それぞれ超音波Sが照射されるので、被洗浄物20を少なくとも4方向から強い洗浄力を有する超音波Sが照射され、効率的に洗浄を行うことができる。
【0032】
また、本実施形態では、洗浄中に、移動機構8によって、反射板保持部材6を鉛直方向に沿って往復移動(直進揺動)させる。
これにより、超音波反射板7A、7B、7C、7Dと底面部2aとの間の距離が変化し、それぞれで反射された超音波S、S、S、Sが、鉛直方向に沿って周期的に平行移動される。このため、被洗浄物20に対する超音波S、S、S、Sの入射角が一定で、照射位置のみが変化する。これにより被洗浄物20に対する超音波S、S、S、Sの照射ムラが発生しにくくなり、洗浄ムラを低減することができる。
【0033】
一方、超音波Sのうち被洗浄物20に照射されない部分、および上記部分領域A、A、A、A以外の部分領域から出射された他の超音波Sは、直進性が強いという超波の性質により、鉛直方向に沿って略直進して液面4aに到達し下方側に反射される。このため、これらの超音波は被洗浄物20を洗浄にはほとんど寄与しない。
このように、超音波反射板7A、7B、7C、7Dは、超音波S、S、S、Sを被洗浄物20に向けて反射することで、被洗浄物20の洗浄に寄与する超音波の量を増やす作用がある。
このため、被洗浄物20を効率的に洗浄することができる。
【0034】
また、超音波反射板7A、7B、7C、7Dは、それらの傾斜角に応じて、被洗浄物20に対してそれぞれ略一定の入射角となるように超音波Sを反射する。このため、被洗浄物20の形状や配置によっては超音波Sが当たりにくい場合でも、予め被洗浄物20の形状や配置による照射ムラが発生しにくい入射角で超音波Sを照射できるように、超音波反射板7A、7B、7C、7Dの傾斜角を調整することができる。この結果、洗浄ムラを低減することができる。
【0035】
また、洗浄液4内の超音波Sは、液面4aの高さが一定で、超音波反射板7A、7B、7C、7Dの位置が一定であると、洗浄液4の内部に定在波を形成する場合がある。この場合に、洗浄中に、移動機構8によって超音波反射板7A、7B、7C、7Dを移動させることで、定在波の洗浄力の強い部分および弱い部分を反射させることができ、定在波の弱い部分のみが被洗浄物20に照射されるのを防止することで洗浄ムラを低減させることができる。
図2に、固定反射端となる反射面R、R間の定在波、反射面Rと自由反射端となる液面Lとの間の定在波、および反射面Rと固定反射端となる反射面Rとの間の定在波の様子を模式的に示す。反射面R、R(R)の間では、距離が超音波Sの波長をλとしてλ/2の整数倍であると定在波が形成され、反射面R、液面Lの間では、距離がλ/2の整数倍+λ/4であると定在波が形成される。
このような定在波が形成されると、振動の節で超音波Sの洗浄力が低下し、振動の腹で洗浄力が増大する。このため、被洗浄物20の表面にλ/2ピッチの洗浄ムラが発生しやすくなる。
本実施形態では、移動機構8によって、洗浄中に、超音波反射板7A、7B、7C、7Dを超音波Sの出射方向に沿って移動させるため、一時的に定在波が発生する位置関係になるとしても、その状態が時間的に持続することはない上に、定在波の洗浄力の強い部分および弱い部分を反射させることができ、定在波の弱い部分のみが被洗浄物20に照射されるのを防止することで洗浄ムラを低減させることができる。
【0036】
以上に説明したように、洗浄装置1によれば、超音波反射板7A、7B、7C、7Dによって超音波振動子5から出射される超音波Sを出射方向に対して斜め方向に反射して、被洗浄物20に対して入射角や照射位置を変更することができるため、洗浄作業を効率よく行うことができるとともに、洗浄ムラを抑制することができる。
【0037】
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図3(a)は、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な平面図である。
【0038】
本変形例の洗浄装置1Aは、図3(a)に示すように、上記第1の実施形態の洗浄装置1において、超音波反射板7C、7D、およびこれらを保持する反射板保持部材6、移動機構8の平面視の配置位置を、90°回転移動し、被洗浄物保持部3の隣り合う2つの側面に面して、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dと、を配置したものである。
このような位置関係の変更により、超音波反射板7C、7Dが反射する超音波S、Sが出射される超音波出射領域5aの部分領域A、Aも同様に移動される。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0039】
洗浄装置1Aによれば、被洗浄物保持部3の隣り合う2つの側面の側から、被洗浄物20に向けて、超音波S、S、S、Sを照射することができる。
このように、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dとの配置位置は、互いに対向する位置関係に限定されず、被洗浄物20の形状等に応じて洗浄が良好に行える方向に配置すればよい。
また、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dとの配置位置は、本変形例のように、90°をなす位置関係に限定されるものではなく、例えば、120°等の他の角度をなして配置されてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図3(b)は、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な平面図である。
【0041】
本変形例の洗浄装置1Bは、図3(b)に示すように、上記第1の実施形態の洗浄装置1において、各反射板保持部材6が対向する方向と直交する方向の被洗浄物保持部3の側面において、それぞれ、超音波反射板7E、7F(反射部)、およびこれらを保持する反射板保持部材6、移動機構8と、超音波反射板7G、7H(反射部)、およびこれらを保持する反射板保持部材6、移動機構8とを配置したものである。
ここで、超音波反射板7E、7F、7G、7Hは、それぞれ、上記第1の実施形態の超音波反射板7A、7B、7C、7Dにそれぞれ対応した形状や位置関係に設けられている。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0042】
洗浄装置1Bによれば、被洗浄物保持部3の4つの側面の側から、被洗浄物20に向けて、満遍なく超音波を照射することができる。このため、被洗浄物20に照射される超音波Sの量がより増大されて、迅速かつ効率的な洗浄を行うことができる。また、洗浄ムラをさらに低減することができる。
【0043】
次に、本実施形態の第3変形例について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態の第3変形例に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【0044】
本変形例の洗浄装置1Cは、図4に示すように、上記第1の実施形態の洗浄装置1の超音波反射板7A、7B、7C、7Dに代えて、超音波湾曲反射板17A、17B、17C、17D(反射部)を備える。
本変形例の超音波湾曲反射板17A、17B、17C、17Dは、少なくとも、超音波S、S、S、Sがそれぞれ入射する部分の反射面が凹面状に湾曲され、このような湾曲形状が、図4の紙面奥行き方向に延ばされた形状を有している点のみが、超音波反射板7A、7B、7C、7Dと異なる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0045】
洗浄装置1Cによれば、超音波湾曲反射板17A、17B、17C、17Dに、それぞれ入射する超音波S、S、S、Sは、凹面の曲率に応じて収束した状態で、被洗浄物20に照射される。
したがって、被洗浄物20に照射される超音波S、S、S、Sの単位面積当たりの振動エネルギーを増大させることができるので、洗浄力を向上することができる。
また、被洗浄物20の大きさが同じ場合に、超音波湾曲反射板17A、17B、17C、17Dに対応する超音波出射領域5aの部分領域A、A、A、Aの面積を、上記第1の実施形態の洗浄装置1に比べて広くとることができるので、超音波振動子5で発生された超音波Sをより効率的に被洗浄物20に照射することができる。
【0046】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る洗浄装置について説明する。
図5(a)は、本発明の第2の実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な平面図である。図5(b)は、図5(a)におけるK−K断面図である。
【0047】
本実施形態の洗浄装置30は、図5(a)、(b)に示すように、上記第1の実施形態の洗浄装置1の超音波振動子5の配置位置を洗浄槽2の底面部2aの裏面から洗浄槽2の側面部2bの1つの裏面に変更し、このように配置位置が変更された超音波振動子5に対して上記第1の実施形態と同様な位置関係に対向するように超音波反射板7A、7B、7C、7Dの向きを変更し、これらの変更に伴って、上記第1の実施形態の反射板保持部材6、移動機構8に代えて、それぞれ、反射板保持部材16、移動機構18(反射部移動部)を備えるものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0048】
反射板保持部材16は、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dと、を洗浄液4内で保持する部材であり、本実施形態では、超音波振動子5が設けられた側面部2bに隣接する2つの側面部2bの内側に沿って鉛直方向に延在された2つの板状部材からなる。
各反射板保持部材16は、下端側が少なくとも網状載置面3aより低い高さまで洗浄液4内に浸漬され、上端側が洗浄槽2の上方に突出されている。
各反射板保持部材16の下端側には、それぞれ、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dと、が設けられている。
また、各反射板保持部材16の上端部は、移動機構18に連結されている。
【0049】
本実施形態の超音波反射板7A、7B、7C、7Dは、洗浄液4中の超音波Sの超音波出射領域5aに対向して超音波Sの出射方向に対して傾斜角をつけて配置されている。
すなわち、本実施形態の超音波振動子5は、鉛直方向に延在する側面部2bの裏面側に設けられているため、超音波振動子5からの超音波Sは超音波振動子5が設けられた側面部2bに対向する側面部2bに向かって水平方向に出射される。図5(a)に示す例では、超音波振動子5は図示左側の側面部2bに取り付けられ、超音波Sは図示左側から右側に向かう水平方向に出射される。
【0050】
超音波反射板7A、7Bは、反射板保持部材16の下端部において、互いに水平方向に向に間をあけて固定されている。ただし、水平方向の位置関係は、超音波反射板7Bが超音波反射板7Aよりも超音波振動子5に近い位置に配置されている。
超音波反射板7Aは、反射板保持部材16と被洗浄物保持部3の図示の上側面との中間の領域で、反射板保持部材16に対して傾斜角φをなして図示の斜め右下側に張り出すように設けられている。
また、超音波反射板7Bは、反射板保持部材16と被洗浄物保持部3の図示の上側面との中間の領域で、反射板保持部材16に対して傾斜角φをなして図示の斜め右下側に張り出すように設けられている。
ここで、超音波反射板7Bは、超音波反射板7Aよりも張り出し方向の大きさが小さく、反射板保持部材6からの張り出し範囲が超音波反射板7Aの張り出し範囲よりも狭くなっている。
このため、図5(b)に示すように、反射板保持部材16と被洗浄物保持部3の図示の上側面との中間の領域は、超音波反射板7Bに対向する部分領域Aと、超音波反射板7Bを越えて張り出す超音波反射板7Aに対向する部分領域Aとに分けることができる。
【0051】
超音波反射板7A、7Bの傾斜角φ、φは、超音波Sのうち、それぞれ部分領域A、Aから出射される超音波S、Sを適宜の方向に反射して、被洗浄物20に照射できる角度に設定される。
例えば、本実施形態の傾斜角φは、超音波Sを超音波振動子5側に反射して、被洗浄物20に向けて反射できるように、45°よりも大きい角度に設定されている。
また、本実施形態の傾斜角φは、超音波Sを被洗浄物20の側面に向けて反射できるように、傾斜角φよりも小さい角度であって45°に近い角度に設定されている。
【0052】
超音波反射板7C、7Dの位置関係、および形状は、上記第1の実施形態と同様、互いに面対称、あるいは面対称に近い関係になっている。そのため、上記の説明から容易に理解されるので説明を省略する。
【0053】
移動機構18は、被洗浄物20の洗浄中に、反射板保持部材16の上端部を、少なくとも超音波Sの出射方向に沿って移動可能に支持するものであり、不図示の支持部材によって洗浄槽2の外部に支持されている。本実施形態では、超音波Sの出射方向である水平方向に沿って移動できるようになっている。
移動機構18は、反射板保持部材16の上端部を支持するスライダ18aと、スライダ18aを超音波Sの出射方向に沿って移動させる駆動部18bとを備えている。駆動部18bとして、例えば、ねじ送り機構、リニアモータなどの1軸移動機構を挙げることができる。
このような移動機構18によれば、各反射板保持部材16の下端部に固定された超音波反射板7A、7Bと超音波反射板7C、7Dとを、洗浄中にそれぞれ超音波Sの出射方向に沿って移動させることができる。
【0054】
このような洗浄装置30によれば、超音波振動子5が設けられた側面部2bとこれに対向する側面部2bとの間で水平方向に進行する超音波Sを、被洗浄物保持部3の側方で、超音波反射板7A、7B、7C、7Dによって被洗浄物20に向けて反射することができる。そして、超音波Sを被洗浄物20に照射して洗浄を行うことができる。また、洗浄中、移動機構18によって、超音波反射板7A、7B、7C、7Dを超音波Sの出射方向に移動することにより、超音波Sの照射位置を変えて効率的な洗浄を行うことができる。これにより、被洗浄物20の洗浄ムラを抑制することができる。
また、超音波反射板7A、7B、7C、7Dは、被洗浄物保持部3の側方に配置されているため、網状載置面3a上には、被洗浄物20の載置作業や取り出し作業の支障とならず、網状載置面3aの上方側から被洗浄物20の載置作業や取り出し作業を容易に行うことができる。
本実施形態の洗浄装置30は、上記第1の実施形態の洗浄装置1と超音波Sの出射方向が異なる場合にも上記第1の実施形態と同様な効果が得られる場合の例となっている。
【0055】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る洗浄装置について説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す模式的な正面図である。
【0056】
本実施形態の洗浄装置33は、上記第1の実施形態の洗浄装置1の超音波反射板7A、7B、7C、7Dの傾斜角を洗浄中も変化させることができるようにしたものであり、洗浄装置1の反射板保持部材6、移動機構8に代えて、それぞれ反射板保持部材36、移動機構38(反射部移動部)を備え、リンク35およびリンク駆動部37を追加したものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0057】
反射板保持部材36は、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dと、を洗浄液4内で保持する部材であり、本実施形態では、鉛直方向に延在された2つの棒状部材からなる。
各反射板保持部材36の下端側には、上記第1の実施形態と同様の位置関係に、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dとが設けられている。ただし、本実施形態では、各超音波反射板は、反射板保持部材36にそれぞれヒンジ部34を介することにより回動可能に取り付けられている。
また、超音波反射板7A、7B、7C、7Dには、それぞれ上面側に、鉛直方向に延ばして配置されたリンク35がジョイント35aを介して連結されている。ここでジョイント35aは、リンク35の鉛直方向の直線運動をそれぞれに対応する各超音波反射板のヒンジ部34回りの回転運動に変換するもので、例えば、各超音波反射板の上面に沿ってスライド可能に設けられた回転関節や、弾性ヒンジなどを採用することができる。
【0058】
また、各反射板保持部材36の上端部は、各反射板保持部材36を鉛直方向に移動可能に支持する移動機構38に支持されている。移動機構38は、移動方向が鉛直方向に設定された1軸移動機構、例えば、ねじ送り機構、リニアモータなどを採用することができる。移動機構18と同様の1軸移動機構を採用することができる。
さらに、各反射板保持部材36の上端部には、各超音波反射板に連結されたリンク35を鉛直方向に移動可能に支持するリンク駆動部37が固定されている。
【0059】
このような構成の洗浄装置33によれば、各リンク駆動部37によって、リンク35の移動量を変えることで、超音波反射板7A、7B、7C、7Dをそれぞれの基端側のヒンジ部34回りに回動させ、各反射板保持部材36に対する傾斜角θ、θ、θ、θの大きさを変更することができる。
このため、超音波反射板7A、7B、7C、7Dの傾斜角θ、θ、θ、θをそれぞれ独立に変更することができるため、移動機構38の移動位置を固定した状態でも、超音波S、S、S、Sの反射方向、すなわち、被洗浄物20に対する照射位置を変更することができる。
本実施形態では、リンク駆動部37によってリンク35を駆動させ、洗浄中に、移動機構38による鉛直方向の移動に合わせて、各傾斜角の変更を行う。このため、リンク35およびリンク駆動部37は、洗浄中に超音波反射板7A、7B、7C、7Dの傾斜角を変更する角度変更部を構成している。
洗浄装置33では、このような洗浄中における反射板の傾斜角の変更により、上記第1の実施形態の洗浄装置1に比べて、超音波Sの照射範囲をより容易に変更したり、よりきめ細かく変化させたりすることができる。
【0060】
例えば、被洗浄物20の大きさが小さい場合、洗浄装置1のように超音波反射板の平行移動のみでは、超音波Sの照射位置もあまり変化させることができない。本実施形態によれば、各超音波反射板を回転揺動と、移動機構38による鉛直方向の平行移動とを組み合わせることで、被洗浄物20上への入射角を変化させつつ、効率的に被洗浄物20に超音波Sを照射することができる。
このように被洗浄物20の大きさが小さい場合でも、種々の方向から超音波Sを照射することができ、洗浄ムラを低減することができる。
また、例えば、移動機構38による鉛直方向の往復周期よりも短い周期で、各超音波反射板を回転揺動させることで、被洗浄物20上での照射位置を鉛直方向に細かく上下移動させつつ、全体として上側、または下側に移動させることができる。また、被洗浄物20のどの被照射位置でも、超音波Sの入射角が回転揺動される傾斜角の範囲で変化する。
この場合、被洗浄物20に対する超音波Sの当たり方がより細かく変化するため、照射ムラが低減され、回転揺動がされない場合に比べてより洗浄ムラを低減することができる。
また、例えば、移動機構38により鉛直方向の往復移動と、リンク駆動部37による超音波反射板の回転揺動を同期させて、被洗浄物20に対する入射角を変えつつ、照射位置を略一定の範囲に収めることができる。
この場合、超音波Sの照射効率が向上するので、洗浄力を向上することができる。超音波Sが略一定の範囲に照射されても、入射角や超音波Sの行路長が変化するので、洗浄ムラは抑制される。
【0061】
洗浄装置33によれば、各超音波反射板の回転揺動を独立に行うことができるが、各超音波反射板の回転揺動動作を同期して行うようにしてもよい。この場合、リンク35は、超音波反射板7A、7Bと、超音波反射板7C、7Dと、にそれぞれ1つずつ設けられた構成としてもよい。
【0062】
なお、上記の説明では、反射部移動部による各反射部の移動は、定在波の弱い部分のみが被洗浄物に照射されるのを防止するため、連続的な往復移動であるとして説明したが、定在波の発生状況によっては、洗浄ムラの発生よりも、洗浄力の向上効果が上回るため、一定の定在波を積極的に発生させることが好ましい場合がある。
このような場合、反射部の位置を一定の移動幅で、間欠的に移動させてもよい。
例えば、超音波Sの周波数ν=40(kHz)の場合、洗剤などの洗浄液中の超音波Sの波長λは約4mmとなる。この場合、反射部の移動幅をλ/2の整数倍とすると、定在波は略同様の状態に保たれる。このため、例えば、実験等によって、特に洗浄力が良好な反射部の配置位置を見出したら、その位置から、移動幅λ/2で間欠移動させると、略同様な洗浄力を保って、被洗浄物への照射位置や入射角を変えることができる。
【0063】
また、上記の説明では、反射部移動部による各反射部の移動は、連続的な往復移動であるとして説明したが、この往復移動は、必ずしも規則的な周期に従わなくてもよい。例えば、往復移動の周期は、段階的、連続的に変えてもよい。
また、移動位置をランダムに変えてもよい。この場合、被洗浄物に対する超音波Sの照射位置や入射角が、ランダムに変わるため、超音波の当たり方が急峻に変化し、洗浄力を向上できる。
【0064】
また、上記の説明では、各反射部移動部の移動方向は、超音波の出射方向に沿う方向である、鉛直方向または水平方向の場合の例で説明したが、反射部の移動方向は、これらには限定されず、超音波の出射方向に応じて、任意の方向に移動させることができる。
また、各反射部移動部の移動方向は、超音波の出射方向と異なる方向の移動が可能であってもよい。例えば、上記第1の実施形態の洗浄装置1において、各超音波反射板を、水平方向に移動可能に保持し、被洗浄物20と各超音波反射板との間の水平方向の距離を可変できるようにしてもよい。この場合でも、超音波Sの出射位置から被洗浄物20までの距離が変わるため、定在波の発生を抑制したり、発生した定在波の状態を変化させたりすることができる。
【0065】
また、上記の説明では、1つの反射部移動部によって移動される反射部が2枚の場合の例で説明したが、反射部の枚数は2枚には限定されない。例えば、1枚でもよし、3枚以上でもよい。
【0066】
また、上記の第1の実施形態の第3変形例の説明では、超音波湾曲反射板が、一方向に湾曲され、超音波を一方向に収束させる形状であるとして説明したが、互いに直交する2軸方向に湾曲されて、超音波を互いに直交する2方向に収束させる構成としてもよい。
【0067】
また、上記の各実施形態、各変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
例えば、上記第1の実施形態の各変形例は、同様に、上記第2および第3の実施形態にも適用することができる。
また、例えば、第3の実施形態の洗浄装置における角度変更部の構成は、洗浄中に反射部の傾斜角を変えない第1の実施形態の洗浄装置における各反射部の傾斜角の調整機構として採用することができる。この場合、例えば、被洗浄物の形状や大きさに合わせて、反射部の傾斜角を容易に調整することができ、被洗浄物を変えて洗浄を行う場合でも効率的な洗浄作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1、1A、1B、1C、 洗浄装置
2 洗浄槽
3 被洗浄物保持部(保持部)
3a 網状載置面
4 洗浄液
4a 液面
5 超音波振動子(超音波出射部)
5a 超音波出射領域(超音波の出射領域)
6、16、36 反射板保持部材
7A、7B、7C、7D、7E、7F、7G、7H 超音波反射板(反射部)
8、18、38 移動機構(反射部移動部)
17A、17B、17C、17D 超音波湾曲反射板(反射部)
20 被洗浄物
21 被洗浄物保持治具
30、33 洗浄装置
35 リンク(角度変更部)
37 リンク駆動部(角度変更部)
、A、A、A、A 部分領域
S、S、S、S、S、S 超音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を入れる洗浄槽と、
該洗浄槽に入れられた洗浄液中に被洗浄物を浸漬させて保持する保持部と、
前記洗浄液中に超音波を出射する超音波出射部と、
前記超音波の出射領域に対向して、前記超音波の出射方向に対して傾斜角をつけて配置された反射部と、を備えることを特徴とする、洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄装置において、
少なくとも前記超音波出射部の前記超音波の出射方向に、前記反射部を移動可能に支持する反射部移動部を備えることを特徴とする、洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の洗浄装置において、
前記反射部は、板状であって複数枚からなり、
これら複数枚の反射部の各々は、前記超音波の出射領域内の複数の部分領域の各々に応じて、該部分領域に対向する部分を有することを特徴とする、洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の洗浄装置において、
前記複数枚の反射部における前記超音波の出射領域に対向する面の各々は、
前記超音波出射部から離れるに従って、大きな面積を有することを特徴とする、洗浄装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄装置において、
前記反射部の傾斜角を変更する角度変更部を備えることを特徴とする,洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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