説明

洗浄集塵設備

【課題】高炉ガス等の洗浄集塵設備(リング・スリット・ウォッシャー、以下、RSWと記載)として、ミスト分離性能に優れ、かつ省スペース化が図れて低コストの洗浄集塵設備を提供する。
【解決手段】予備洗浄室11がミストセパレータ(MS)内蔵式RSW10の頂部側に設けられ、ベンチュリースクラバー17がMS内蔵式RSW10の底部側に設けられ、ミストセパレータ13がガス導入管となるRSE入口管14を包囲するように、予備洗浄室11とベンチュリースクラバー17との間に設置され、ミストセパレータ13内には、RSE入口管14の一部を包囲するように、内側中空部18aの頂部側が出口ダクト19に向けられている略円筒形状の内筒部18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所において高炉や転炉等の炉体からの排ガス(高炉ガスや転炉ガス)を洗浄集塵するための洗浄集塵設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所においては、高炉ガスや転炉ガスを回収し、燃料ガスとして有効活用している。例えば、高炉ガスを用いて炉頂圧発電を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように高炉ガスや転炉ガス(以下、高炉ガス等)を燃料ガスとして有効活用する際には、回収した高炉ガス等を所定の含塵濃度レベルになるように洗浄集塵する必要がある。
【0004】
そのための洗浄集塵設備は、湿式の洗浄集塵設備と乾式の洗浄集塵設備に大別されるが、さらに、湿式の洗浄集塵設備としては、リング・スリット・ウォッシャーとベンチュリー・スクラバーがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
その内、リング・スリット・ウォッシャー(Ring Slit Washer;以下、RSWと記す)は、高炉ガス等にノズルから水を噴射して予備洗浄する予備洗浄室と、予備洗浄された高炉ガス等を通過させ、ガス流路の断面積を調整してガス流速を変更自在にするリング・スリット・エレメント(Ring Slit Element;以下、RSEと記す)と称するベンチュリー・スクラバーと、RSEを通過した高炉ガス等から水分(ミスト)を分離するミストセパレータとを備えている洗浄集塵設備である。
【0006】
そして、RSWには、ミストセパレータ(Mist Separator)がRSW本体に内蔵されたミストセパレータ内蔵式のもの(以下、MS内蔵式RSWと記す)と、ミストセパレータがRSW本体から独立しているミストセパレータ独立式のもの(以下、MS独立式RSWと記す)がある。
【0007】
図6は、従来のMS内蔵式RSW50を示すものであり、この設備は、予備洗浄室51とRSE区画52の中間スペースに、ミスト分離区画53を設けたものである。この従来のMS内蔵式RSW50では、まず、高炉ガス等は予備洗浄室51に供給されて、ノズルからの水で予備洗浄される。次に、予備洗浄されて水分(ミスト)を含有したガスは、RSE入口管54を経由してRSE区画52に送られた後、RSE55を出て反転し、旋回羽根57を通って旋回しながら上昇する。そして、ミスト(水分)は旋回力によりガスと分離してRSE入口管54等の壁に付着して落下し、旋回羽根57の外周にある排水溝から系外に排水され、このようにして水分を除去されたガスは出口ダクト59から流出する。
【0008】
一方、図7は、MS独立式RSW60を示すものであり、この設備は、予備洗浄室61とRSE区画62を有するRSW本体60’から独立して、ミストセパレータ63を備えており、RSW本体60’とミストセパレータ63が連絡ダクト66によって連結している。このMS独立式RSW60では、RSW本体60’(予備洗浄室61とRSE区画62)から流出したミスト含有ガスが連絡ダクト66を経由してミストセパレータ63内に直線的に流下し、旋回羽根67を通って旋回しながら下降する。そして、ミスト(水分)は旋回力によりガスと分離してミストセパレータ63の内壁に付着し、排水受68から系外へ排出され、水分を除去されたガスは出口ダクト69から流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−213952号公報
【特許文献2】特開2003−010622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、図6に示した従来のミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備50では、ミスト含有ガスは旋回羽根57を通って旋回し、内壁にミストを衝突させてミストと分離しながら上昇するが、ミスト含有ガスの旋回力は案内羽根57の傾斜角度に支配され、垂直方向の立ち上がった流れになり易いので、ミストを衝突させる旋回力が弱かった。また、当該ミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備50では、ミスト含有ガスから分離されて内壁を伝わって落下してくるミストがガスの上昇に伴って離合集散を繰り返しているため、ガスとミストの分離性能、すなわち除塵性能が劣っていた。
【0011】
一方、図7に示したミストセパレータ独立式洗浄集塵設備60では、RSW本体60’とは別にミストセパレータ63の設置スペースが必要となるが、設置スペースの制約から採用出来ないことがある。また、ミストセパレータ独立式洗浄集塵設備60と比べてコスト高となる。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高炉ガス等の洗浄集塵設備(リング・スリット・ウォッシャー)として、ミスト分離性能に優れ、かつ省スペース化が図れて低コストの洗浄集塵設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、炉体から排出されるガスに含まれる塵埃を除去する洗浄集塵設備であって、前記ガスの予備洗浄をする予備洗浄室と、前記予備洗浄室で予備洗浄されたガスを導入するガス導入管を介して前記予備洗浄室と接続され、導入された前記ガスの流速を可変するベンチュリースクラバーと、前記予備洗浄室と前記ベンチュリースクラバーの間に設置され、前記ベンチュリースクラバーを通過したガスからミストを分離するミストセパレータと、前記ベンチュリースクラバーを通過したガスを、前記ミストセパレータの頂部側に導く接続ダクトと、前記ミストセパレータで前記ミストを分離したガスを前記ミストセパレータの外部に排出する出口ダクトと、前記ガス導入管の一部を包囲するように前記ミストセパレータ内に設けられ、内側中空部の頂部側が前記出口ダクトに向けられている略円筒形状の内筒部と、を備え、前記ミストセパレータは、前記接続ダクトから流入された前記ガスを前記内筒部の外周面に沿って旋回させながら流下させ、流下させた前記ガスが前記内筒部の下端部に到達したら前記ガスを前記内筒部の前記内側中空部を経由するように反転上昇させて、前記出口ダクトから流出させることを特徴とする洗浄集塵設備に関係する。
【0014】
本発明の一態様によれば、上述したように、ミストセパレータ内に内筒部を設けることによって、ミスト含有ガスと水分除去ガスとの干渉を抑止させ、ミスト分離性能を高めることができる。
【0015】
このとき、本発明の一態様では、前記予備洗浄室が前記洗浄集塵設備の頂部側に設けられ、前記ベンチュリースクラバーが前記洗浄集塵設備の底部側に設けられ、前記ミストセパレータが前記ガス導入管を包囲するように、前記予備洗浄室と前記ベンチュリースクラバーの間に設置されることとしてもよい。
【0016】
このようにすれば、ミストセパレータを内蔵させることによって、ミストセパレータ独立式洗浄集塵設備に比べて、省スペース化が図れるようになる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記ミストセパレータは、略円筒形状であり、前記内筒部は、前記接続ダクトの前記ミストセパレータへの導入部の口径以上の長さを有し、前記導入部は、前記ベンチュリースクラバーを通過したガスを前記ミストセパレータの内周面と前記内筒部の外周面との間の間隙部に流入させることとしてもよい。
【0018】
このようにすれば、ミストセパレータの内周面の近傍でのガス周速度を速めて旋回力を強くできるので、ミストがミストセパレータの内周面に衝突して付着し易くなるため、ミスト分離性能を高めることができる。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記導入部は、前記ミストセパレータの前記内周面の接線方向から前記ベンチュリースクラバーを通過したガスを流入させることとしてもよい。
【0020】
このようにすれば、ミストセパレータの上部に搬送したガスがミストセパレータの内周面と内筒部の外周面との間の間隙部に旋回しながら流入するようになり、ミスト分離を効率よく出来るようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、高炉ガス等の洗浄集塵設備(リング・スリット・ウォッシャー)として、ミスト分離性能に優れ、かつ省スペース化を図ることによって低コストの洗浄集塵設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備を示す全体図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備の要部の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備の要部の変形例の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備の要部の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備の要部の平面図である。
【図6】従来のミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備を示す図である。
【図7】ミストセパレータ独立式洗浄集塵設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、本発明の洗浄集塵設備の一実施形態に係るミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備(MS内蔵式RSW)を示す全体図であり、図2は、その要部の平面図であり、図3は、その変形例であり、図4は、当該要部の断面図であり、図5は、ミストセパレータに設けられた内筒部から出口ダクトへの開口部の平面図である。
【0025】
図1に示すように、この実施形態に係るMS内蔵式RSW10は、流入したガス(高炉ガス等)にノズルから水を噴射して予備洗浄する予備洗浄室11と、予備洗浄されたガスを通過させ、ガス流路の断面積を調整してガス流速を変更自在にするベンチュリースクラバー17と、ベンチュリースクラバー17を通過したガスからミストを分離するミストセパレータとして機能する略円筒形状のミスト分離区画(MS区画)13を備える。本実施形態では、予備洗浄室11がMS内蔵式RSW10の頂部側に設けられ、ベンチュリースクラバー17がMS内蔵式RSW10の底部側に設けられ、ミスト分離区画13がガス導入管となるRSE入口管14を包囲するように、予備洗浄室11とベンチュリースクラバー17との間に設置されている。
【0026】
本実施形態では、ベンチュリースクラバー17は、図1に示すように、RSE入口管14と、リング・スプリット・エレメント(RSE)15と、およびリング・スリット・エレメント区画(RSE区画)12とを含む構成である。RSE入口管14は、予備洗浄室11で予備洗浄されたガスをRSE区画12に導入するガス導入管として機能する。RSE15は、RSE入口管14の出力側の断面積を調整してガス流速を可変する機能を有する。RSE区画12は、MS内蔵式RSW10の底部側に設けられ、RSE15でガス流速が変更されたガスの出力側に有する仕切空間(チャンバー)となる。
【0027】
そして、本実施形態では、ミスト分離区画13が予備洗浄室11とRSE区画12の中間スペースに設置されていることを特徴とする。すなわち、図1に示すように、RSE区画12は、予備洗浄室11で予備洗浄されたガスを導入するガス導入管となるRSE入口管14を介して予備洗浄室11と接続され、ミスト分離区画13は、当該RSE入口管14を包囲するようにして、予備洗浄室11とRSE区画12との間に設けられる。
【0028】
その上で、本実施形態に係るMS内蔵式RSW10は、図1に示すように、接続ダクト16と、排水受20と、出口ダクト19と、および内筒部18と、を備えることを特徴とする。
【0029】
接続ダクト16は、ベンチュリースクラバー17のRSE区画12を通過したガスをミスト分離区画13の外壁部となるRSW鉄皮22の外側を経由させてから、ミスト分離区画13の上部側(頂部側)に導く。なお、接続ダクト16は、RSE区画12を通過したガスをミスト分離区画13の上部側に導く構成となっていれば、RSW鉄皮22の外側を経由させる構成に限定されない。排水受20は、ミスト分離区画13の底部側に設けられ、ミスト分離区画13でガスから分離されたミスト(水分)を受け止めて排水する。出口ダクト19は、ミスト分離区画13でミストを分離したガスをミスト分離区画13の外部に排出する。内筒部18は、予備洗浄室11からRSE区画12にガスを搬送する複数本(本実施形態では、3本)のRSE入口管14の一部を包囲するようにミスト分離区画13内に設けられる略円筒形状の部材であり、その内側中空部18aの頂部側が出口ダクト19に向けられている。なお、本実施形態では、RSE入口管14は、3本設けられているが、RSE入口管14の本数は、3本に限定されず、2本以上の複数本でも、1本でもよい。
【0030】
また、本実施形態では、接続ダクト16のミスト分離区画13への導入部となる流出口16aは、図2に示すように、ミスト分離区画13の上部(頂部側)のRSW鉄皮22に対して接線方向に設置させており、ミスト分離区画13の内周面の接線方向からベンチュリースクラバー17を通過したガスを流入させるようになっている。接続ダクト16の流出口16aをこのように設けることによって、ミスト分離区画13の上部に搬送したガスは、ミスト分離区画13の内周面と内筒部18の外周面との間の間隙部13aに旋回しながら、ミスト分離区画13の内部に流入するようになる。
【0031】
なお、接続ダクト16の流出口16aの設置方向は、RSW鉄皮22に対して接線方向からガスを流入させる方向に限定されない。すなわち、接続ダクト16の流出口16aは、ミスト分離区画13の内周面と内筒部18の外周面との間の間隙部13aに旋回しながら、ミスト分離区画13の内部にガスを流入するように設置されていれば良い。例えば、図3に示すように、接続ダクト16の流出口16aを内筒部18の正面側に向けるように設置しても、流出口16aの一端に、RSW鉄皮22(ミスト分離区画13の内周面)と内筒部18の外周面との間の間隙部13aにガスの流入を遮断する壁部13bを設けることによって、流出口16aから流入させたガスを間隙部13aで旋回させながら、ミスト分離区画13の内部にガスを送り込むことができる。
【0032】
また、内筒部18は、図4に示すように、上端が接続ダクト16の流出口16aの上端に一致しており、下端が排水受20までの所定の高さ位置になっている。このため、接続ダクト16の流出口16aから流入したガスは、内筒部18の外周面やRSW鉄皮22の内壁に衝突するように誘導される。ちなみに、内筒18の上端および下端はそれぞれ開放させている。
【0033】
また、本実施形態では、図4に示すように、内筒部18の長手方向の長さLは、接続ダクト16のミスト分離区画13への導入部となる流出口16aの口径W以上の長さを有している。このため、ベンチュリースクラバー17のRSE区画12を通過したガスは、流出口16aからミスト分離区画13のRSW鉄皮22の内壁と内筒部18との間の間隙部13aに流入されて、RSE入口管14を迂回して間隙部13a内を内筒部18の外周面(RSW鉄皮22の内壁)に沿って旋回させられるようになる。これによって、RSE入口管14により、ガスの旋回が阻害されなくなるので、ミスト分離区画13の内周面の近傍でのガス周速度を速めて旋回力を強くすることができる。このため、ベンチュリースクラバー17を通過したガスに含まれるミストがミスト分離区画13の内周面に衝突して付着し易くなるため、ミスト分離性能を高めることができる。
【0034】
また、本実施形態では、内筒部18の上端の外周と接続ダクト16の流出口16aの上端との間には、ミスト分離区画13を外部から仕切る仕切板21が設けられている。具体的には、仕切板21は、内筒部18の上端の外周とミスト分離区画13の上端の内周との間を塞ぐように設けられている。そして、仕切板21は、内筒部18の内側のうちRSE入口管14を除いた部分が、図5の斜線部に示すように、内筒部18の内側中空部18aから出口ダクト19への開口部18bとなる。
【0035】
このような構成とすることにより、接続ダクト16の流出口16aからミスト分離区画13に流入したガスが上方に流れないようになり、接続ダクト16から流入させたガスを内筒部18の外周面に沿って旋回させながら流下させることが出来るようになる。そして、内筒部18の外周面に沿って旋回させながら流下させたガスは、内筒部18の下端部に到達したら、内側中空部18aを経由するように反転上昇し、出口ダクト19から流出するようになる。
【0036】
また、排水受20は、図4に示すように、接続ダクト16の流入口16bの上端より上方に設置されている。これにより、RSE区画12を通過したガスが接続ダクト16を経由せずに直接ミスト分離区画13に流れないようになっている。
【0037】
なお、図6に示した従来のMS内蔵式RSW50では設置していた案内羽根57については、ここでは圧力損失低減と構造の簡素化を図るために廃止している。
【0038】
そして、上記のように構成された本実施形態に係るMS内蔵式RSW10においては、まず、高炉ガス等は予備洗浄室11に供給されて、ノズルからの水で予備洗浄される。次に、予備洗浄されて水分(ミスト)を含有したガス(ミスト含有ガス)は、RSE入口管14を経由してRSE区画12に送られた後、図4に示すように、RSE15を出て反転し(矢印A1)、接続ダクト16を経由して(矢印A2)、ミスト分離区画13の上部に導かれ(矢印A3)、旋回しながらミスト分離区画13の内部に流入する(矢印A4)。そして、ミスト分離区画13の内部に流入したミスト含有ガスは、RSW鉄皮22の内壁と内筒部18の外周面との間の間隙部13aを旋回しながら下降し、ミストは旋回力によりガスと分離してミスト分離区画13のRSW鉄皮22の内壁に付着し、排水受17から系外へ排出される。一方、水分を除去されたガス(水分除去ガス)は、内筒部18の下端部で反転上昇し(矢印A5)、内筒部18の内側中空部18aとRSE入口管14の間を通って(矢印A6)、出口ダクト19から流出する。
【0039】
このようにして、この実施形態に係るMS内蔵式RSW10においては、ミスト含有ガスは、接続ダクト16を経由してミスト分離区画13の上部に導かれ、旋回しながらミスト分離区画13の内部に流入するようになっているので、ミスト含有ガスから分離されて落下してくる落下するミストによって流れが阻害されることはない。
【0040】
また、内筒部18を設けたことにより、接続ダクト16を経由して流入させたミスト含有ガスと水分除去ガスとの干渉が抑止されるとともに、ミスト含有ガスが内筒部18の外周面に沿って間隙部13aを旋回しながら下降するようになる。このため、ミスト含有ガスの滞留時間を十分に確保した上で、RSW鉄皮22近傍でのガス周速度を速めて旋回力を強くできるので、ミストがRSW鉄皮22の内壁に衝突して付着し易くなり、ミスト含有ガスのミスト分離を促進できるようになる。
【0041】
さらに、本実施形態のように内筒部18を設けることにより、旋回しながら下降するミスト含有ガスの流れを内筒部18の下端で急激に反転上昇させることで、当該ガスの速度方向の変化および速度変化を急変させられる。このように、ミスト含有ガスの流れの速度および方向の急変させることによって、ミストに加速度を生じさせて、ミスト含有ガスの流れから剥離し易くなるため、ミスト分離性能を高めることができる。
【0042】
また、内筒部18は、その外周面に接続ダクト16の流出口16aから流入したガスが衝突するように、RSE入口管14の一部を包囲するようにミスト分離区画13の上部(頂部側)に設けられているので、流出口16aから流入したガスは、RSE入口管14を迂回して間隙部13a内を内筒部18の外周面に沿って旋回するようになる。このため、RSE入口管14が複数本設けられている場合に、接続ダクト16を経て流入させたミスト含有ガスの旋回がこれらのRSE入口管14によって阻害されるのを防止できるので、ミスト含有ガスの旋回力を低減させることなく、ミスト含有ガスのミスト分離区画13内での滞留時間を確保できるようになる。
【0043】
しかも、本実施形態のMS内蔵式RSW10は、ミスト分離区画13がRSE入口管14を包囲するように、予備洗浄室11とベンチュリースクラバー17の間に設置させて内蔵している一体型の構成とする。このため、図7に示したMS独立式RSW60に比べて、設置スペースが少なくて済むとともに、製作重量の低減や基礎工事費用の削減もでき、設置スペース及び設備コストの点で有利である。
【0044】
このようにして、本実施形態に係るMS内蔵式RSW10は、高炉ガス等の洗浄集塵設備として、ミスト分離性能に優れ、かつ省スペース化が図れる低コストの洗浄集塵設備となっている。
【実施例1】
【0045】
本発明の実施例1として、図6に示した従来のMS内蔵式RSW50と、図7に示したMS独立式RSW60と、図1に示した本発明の一実施形態に係るMS内蔵式RSW10について、気流解析ソフトを用いてシミュレーションして、それぞれのミスト分離性能(ミスト捕集率)を定量的に比較・評価した。
【0046】
その際に、ガス流量500000Nm/h、ガス入口圧力240kPa、ガス入口温度51℃、ミスト粒径55μ、ミスト量25t/hの条件でシミュレーションを行った。
【0047】
その解析の結果は、ミスト捕集率は、従来のMS内蔵式RSW50では25%、MS独立式RSW60では46%であったのに対して、本発明の一実施形態に係るMS内蔵式RSW10では63%であり、従来のMS内蔵式RSW50の約2.5倍の優れたミスト捕集率を得た。これによって、本発明の洗浄集塵設備の有効性を確認することができた。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
10 ミストセパレータ内蔵式洗浄集塵設備(洗浄集塵設備)
11 予備洗浄室
12 リング・スプリット・エレメント区画(RSE区画)
13 ミスト分離区画(ミストセパレータ)
14 RSE入口管(ガス導入管)
15 リング・スプリット・エレメント(RSE)
16 接続ダクト
16a 流出口(導入部)
16b 流入口
17 ベンチュリースクラバー
18 内筒部
18a 内側中空部
19 出口ダクト
20 排水受
21 仕切板
22 RSW鉄皮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体から排出されるガスに含まれる塵埃を除去する洗浄集塵設備であって、
前記ガスの予備洗浄をする予備洗浄室と、
前記予備洗浄室で予備洗浄されたガスを導入するガス導入管を介して前記予備洗浄室と接続され、導入された前記ガスの流速を可変するベンチュリースクラバーと、
前記予備洗浄室と前記ベンチュリースクラバーの間に設置され、前記ベンチュリースクラバーを通過したガスからミストを分離するミストセパレータと、
前記ベンチュリースクラバーを通過したガスを、前記ミストセパレータの頂部側に導く接続ダクトと、
前記ミストセパレータで前記ミストを分離したガスを前記ミストセパレータの外部に排出する出口ダクトと、
前記ガス導入管の一部を包囲するように前記ミストセパレータ内に設けられ、内側中空部の頂部側が前記出口ダクトに向けられている略円筒形状の内筒部と、を備え、
前記ミストセパレータは、前記接続ダクトから流入された前記ガスを前記内筒部の外周面に沿って旋回させながら流下させ、流下させた前記ガスが前記内筒部の下端部に到達したら前記ガスを前記内筒部の前記内側中空部を経由するように反転上昇させて、前記出口ダクトから流出させることを特徴とする洗浄集塵設備。
【請求項2】
前記予備洗浄室が前記洗浄集塵設備の頂部側に設けられ、前記ベンチュリースクラバーが前記洗浄集塵設備の底部側に設けられ、前記ミストセパレータが前記ガス導入管を包囲するように、前記予備洗浄室と前記ベンチュリースクラバーの間に設置されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄集塵設備。
【請求項3】
前記ミストセパレータは、略円筒形状であり、
前記内筒部は、前記接続ダクトの前記ミストセパレータへの導入部の口径以上の長さを有し、前記導入部は、前記ベンチュリースクラバーを通過したガスを前記ミストセパレータの内周面と前記内筒部の外周面との間の間隙部に流入させることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄集塵設備。
【請求項4】
前記導入部は、前記ミストセパレータの前記内周面の接線方向から前記ベンチュリースクラバーを通過したガスを流入させることを特徴とする請求項3に記載の洗浄集塵設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−78871(P2011−78871A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231373(P2009−231373)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(501120122)スチールプランテック株式会社 (49)
【Fターム(参考)】