説明

洗濯乾燥機

【課題】乾燥性能を上げるべく送風量を増加させたときに、通風路内に供給された除湿用冷却水が飛散して下流側に運ばれ、リントフィルタの表面に付着して目詰まりを生じることを防止する。
【解決手段】通風路41内にあってリントフィルタ6aの手前で空気流が上向きからほぼ直角に曲がる水平管部41d1の天面に、微小水滴の飛散を留める抑止リブ53aを突設する。抑止リブ53aは空気流に対向して水平管部41d1の幅方向の中央で膨出したアーチ形状であり、且つ中央では高さ(突出長)が低く両端に向かって高さが高くなる形状である。抑止リブ53aに当たってその表面に付着した水滴は風速がより小さな側方へと移動するため、空気流の勢いで再び飛散することを防止できる。また、空気流に対する抵抗にはなりにくいので、送風量を落とすこともない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類を洗濯した後に乾燥する洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばドラム式洗濯乾燥機では、洗濯物を収容したドラムが回転自在に配設された外槽に通風路の両端が接続され、その通風路と外槽とにより循環風路が形成される。通風路内には、その空気流の流れに沿って除湿部と加熱部とが順に設けられ、外槽内において濡れた洗濯物から蒸発した水蒸気は除湿部で除去され、乾いた空気が加熱部で加熱されて再び外槽内に供給される。一般的に、除湿部では湿った空気を除湿するために冷却水が使用される。
【0003】
例えば特許文献1、2に記載のドラム式洗濯乾燥機では、湿った空気が通る通風路中に冷却水を放出し、この冷却水と空気との直接的な熱交換により除湿を行うようにしている。したがって、循環空気の送風量又は冷却水の供給量を調節することにより、除湿部での熱交換量、つまりは乾燥能力を調整することが可能である。
【0004】
ところが、乾燥能力を高めるために送風量を増加させようとすると、通風路中に放出された冷却水の細かい水滴が空気流に巻き上げられて下流側に運ばれ易くなる。上記特許文献1に記載の構成では、加熱部の手前に糸屑や埃などを捕集するためのリントフィルタが設置されているが、飛散した水がリントフィルタの表面に付着すると目詰まりを生じ、ここでの流路抵抗が増大して送風量が下がってしまうという問題がある。また、リントフィルタがない場合であっても加熱部としてPTCヒータ(半導体ヒータ)を用いている場合、PTCヒータに水滴が付着すると特性劣化や故障などの原因となり易い。こうしたことから、従来、冷却水の水滴が空気流の下流側に運ばれない程度に送風量を抑える必要があり、その制約のために熱交換能力、つまりは乾燥能力を高めることが困難であった。
【0005】
また、従来、通風路の内部にあって冷却水が掛からない位置に配設した温度センサにより外槽内で洗濯物との熱交換を行った後の空気(排気)の温度を検出するとともに、通風路の内底部に配設した温度センサにより除湿に利用された後の冷却水の温度を検出し、その両方の温度センサのモニタ値を利用してドラム内の洗濯物の乾燥度合を判断している。
【0006】
しかしながら、通風路の内部に排気温度測定用の温度センサを設けることで、時々刻々と変化する空気の温度を捉え易い反面、通風路の内部での局所的な変動、例えば空気流の速度の変動や一時的な冷却水水滴の付着などの影響に敏感に反応し過ぎる傾向にある。そのために、実際のドラム内の洗濯物の乾燥度合を的確に検知できない場合があり、それ故に適切でない乾燥運転制御を実行して乾燥不足や過剰乾燥となることがあった。
【0007】
また、従来、特許文献3などに記載のように、洗濯運転の最後のすすぎの際に使用された水や乾燥運転の際に使用された冷却水等を回収して貯留しておく貯水タンクを外槽の下方空間に配置し、この貯留水を再び除湿用の冷却水として使用する洗濯乾燥機が知られている。このような洗濯乾燥機では、水道水の使用量を減らして節水性を高めることができる。しかしながら、一旦除湿に利用した水を回収して除湿に繰り返し使用する場合には次のような問題がある。
【0008】
即ち、除湿部において除湿に利用された冷却水は熱交換によって温度が上昇し貯水タンクへと戻る。貯水タンク内に保持されている貯留水の水量は多く(通常30L程度)、熱容量は大きいものの、乾燥運転の時間は1.5〜2時間程度とかなり長いため、その間に貯水タンク内の水の温度は徐々に上昇する。そのため、除湿部に供給される冷却水の温度も乾燥運転の進行とともに上昇してゆくことになり、除湿部での除湿能力が落ちてしまう。それにより、乾燥性能が低下し、乾燥運転が長引く一因となる。
【0009】
【特許文献1】特開2006−81574号公報
【特許文献2】特開2003−290588号公報
【特許文献3】特許第2650339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、第1の目的とするところは、通風路の内部でその下流側への除湿用冷却水の飛散を抑制することにより、従来よりも送風量を増加させて乾燥性能を高めることができる洗濯乾燥機を提供することにある。
【0011】
また本発明の第2の目的は、温度センサの取付位置を工夫することにより、洗濯物の乾燥度合の判断の正確性を高めて適切な乾燥運転制御を実行することができる洗濯乾燥機を提供することにある。
【0012】
また本発明の第3の目的は、一回使用した除湿用冷却水を回収して繰り返し使用可能とした節水型の構成において、乾燥性能を高めることができる洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第1の目的を達成するために成された第1発明は、洗濯物が収容される内槽を内包する外槽と、該外槽に両端が接続された通風路と、前記外槽及び前記通風路より成る循環風路に循環的な空気流を生起させる送風手段と、前記通風路の内部にあって該通風路中に供給された冷却水との熱交換により空気中の水蒸気を凝縮液化させる除湿手段と、前記通風路の内部で前記除湿手段よりも空気流の下流側に位置し、除湿された後の空気を加熱する加熱手段と、を具備する洗濯乾燥機において、
前記除湿手段と前記加熱手段との間で前記通風路の一部は、空気流が上方に向かった後に横方向に屈曲される形状に形成され、
その屈曲された後の空気流が流れる管路の天面に、上流側から飛散して来る水を阻止するための水阻止部が突設されていることを特徴としている。
【0014】
第1発明に係る洗濯乾燥機において、乾燥運転時に送風手段が作動すると通風路中に所定方向に向かう空気流が生起される。除湿手段を通過した空気流は上述のように上方に向かった後に横方向に屈曲された形状に形成された通風路を通って曲がる際に、その曲がりの外側では相対的に風速が大きくなるため、除湿手段で飛散した冷却水の水滴が混じっていた場合に、その水滴も空気流の曲がりの外側に集中する。したがって、曲がった後の管路内にあっては、水滴は天面付近を多く流れ、その天面から下垂するように突設されている水阻止部に接触し易い。これにより、その水阻止部よりも下流側に、つまりは加熱手段、或いは加熱手段の手前にリントフィルタが配設されている場合にはそのリントフィルタに、冷却水の水滴が到達するのを軽減することができる。
【0015】
この第1発明に係る洗濯乾燥機の一実施態様として、前記水阻止部は空気流の上流側に向いて凸形状の面を有する構成とすることが好ましい。例えば凸形状の面は中央が空気流の上流に向いて膨出したアーチ形状の面とすることができる。
【0016】
こうした構成では、凸形状の面に付着した水滴はその面の傾斜に沿って空気流の下流側、つまりは上記管路の幅方向における側面に近い側に移動する。該管路の幅方向で中央側では風量が大きく、側面に近い側では風量は小さいから、風量の小さな側に水が移動することで空気流の勢いで再び水が吹き飛ばされてさらに下流側に飛散してしまうことを回避することができる。
【0017】
また第1発明に係る洗濯乾燥機の一実施態様として、前記水阻止部の突出高さは、前記管路の幅方向の中央側で低くその両側で相対的に高い形状とすることが好ましい。
【0018】
上述のように、管路の幅方向で中央側では風量が大きく、側面に近い側では風量は小さいから、水阻止部の突出高さを中央側で低くすることで流路抵抗が大きくなることを回避することができる。それにより十分な送風量を確保することができる。一方、管路の幅方向の側面に近い側では水阻止部の突出高さが高いので、その表面に十分な量の水を保持することができる。
【0019】
上記第2の目的を達成するために成された第2発明は、外槽と、該外槽内に水平軸又は傾斜軸を中心に回転自在に配設されたドラムと、前記外槽の後方下部の吸込口と該外槽の前方上部の吐出口に両端が接続された通風路と、前記吐出口から前記外槽内に空気を吐き出し該外槽内の空気を前記吸込口から前記通風路に引き込むような循環的な空気流を生起させる送風手段と、前記通風路の内部にあって該通風路中に供給された冷却水との熱交換により空気中の水蒸気を凝縮液化させる除湿手段と、前記通風路の内部で前記除湿手段よりも下流側に位置し、除湿された後の空気を加熱する加熱手段と、を具備するドラム式の洗濯乾燥機において、
前記除湿手段により前記通風路内に供給され除湿に利用された後の水の温度を検出する第1温度検出手段と、
前記外槽の内面と前記ドラムの外面との間の空間で前記外槽内の後方上部に位置する空気の温度を検出する第2温度検出手段と、
乾燥運転の実行時に、第1温度検出手段及び第2温度検出手段の検出温度に基づいてドラム内の洗濯物の乾き具合を判断する運転制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0020】
なお、第2温度検出手段は、外槽内の上記位置の空気の温度を直接的に検出可能なように検出部が外槽内に突設されたものであるほか、外槽内の上記位置の空気の温度を間接的に検出可能なように検出部が外槽の外側壁面に取り付けられ、その壁面温度を外槽内の空気温度とみなすものであってもよい。
【0021】
第2発明に係る洗濯乾燥機において、第2温度検出手段による温度検出対象の空気が存在する外槽内空間は吐出口及び吸込口のいずれからも離れているため、吐出口から吐き出される高温の空気はその空間に到達しにくい。そして、ドラム内で洗濯物に接触して熱交換を行い、その後に自然対流によって上昇して来た空気が主として上記空間に達して滞留するため、第2温度検出手段はドラム内の洗濯物の乾燥度合を正確に反映した空気の温度を検出することができる。また、外槽内の空気の量は通風路内の空気の量に比べて格段に多いので、熱容量も大きい。そのため、通風路内で空気の温度を測定する場合と異なり、局所的や一時的な温度変動の影響を受けにくい。また、通風路内に設けられた除湿手段から離れているため、通風路内に供給された冷却水により外槽内の上記空間の空気が冷やされることもなく、第2温度検出手段が誤って冷却水の温度を検出してしまうことも回避できる。
【0022】
上記第3の目的を達成するために成された第3発明は、洗濯物が収容される内槽が回転自在に配設された外槽と、前記外槽に両端が接続された通風路と、該通風路に空気流を生起するための送風手段と、前記通風路を通して前記外槽内に送る空気を加熱する加熱手段と、前記外槽から前記通風路に戻って来る湿った空気を除湿する除湿手段と、乾燥の除湿に使用された水を回収して中水として貯留する貯留部と、該貯留部に貯留された中水を前記除湿手段に冷却水として供給する除湿用中水供給手段と、を具備する洗濯乾燥機であって、
乾燥運転の際に、前記貯留部に貯留されている中水を前記除湿用中水供給手段により前記除湿手段に供給するとき、その供給を間欠的に行う運転制御手段を備えることを特徴としている。
【0023】
第3発明に係る洗濯乾燥機では、乾燥運転時に間欠的に除湿用冷却水が供給されるため、冷却水の供給が停止されている期間には外槽内に供給される加熱空気の温度が上昇する。それにより、ドラム内の洗濯物と加熱空気との熱交換効率が向上し、洗濯物からの水蒸気の発生を促進させることができる。また、このとき除湿は行われないため循環空気中の水蒸気の濃度は上がるが、その後に冷却水が供給されたときに一気に除湿が進んで水蒸気は除去される。
【0024】
さらにまた、中水を連続的に冷却水として供給し続けると、乾燥運転の開始時から時間が経過するに伴い除湿水の温度はほぼ一様に上昇し続け、除湿手段での熱交換効率が悪くなる。これに対し、この第3発明に係る洗濯乾燥機では、冷却水の供給を停止している間には貯留部に貯留されている中水の温度上昇を避けることができるので、乾燥運転が進んだときにも冷却水の温度上昇を抑制できる。それにより、除湿手段での熱交換効率の低下を抑え、除湿能力を確保することができる。それにより、全体として、冷却水として中水を連続的に供給する場合に比べて乾燥性能を上げることができる。
【0025】
また第3発明に係る洗濯乾燥機の一実施態様として、前記運転制御手段は、乾燥運転の後半期間に前記貯留部に貯留されている水を前記除湿手段に連続的に供給するように制御を切り替える構成とするとよい。
【0026】
洗濯物の乾燥が進んで来ると洗濯物から埃や糸屑などの浮遊物が多量に出るようになるが、除湿手段に連続的に冷却水を供給することで、ここを空気流が通過する際に、混入している埃や糸屑が水に当たって落下し易くなる。これにより、下流側に埃や糸屑などの浮遊物が運ばれるのを抑制でき、例えば下流側に配設されているリントフィルタの目詰まりを軽減することができる。
【0027】
また第3発明に係る洗濯乾燥機では、前記除湿手段で除湿に使用された後の水の温度(除湿水温度)を検出する第1温度検出手段、又は、該第1温度検出手段と前記外槽内で熱交換が行われた後の空気の温度(排気温度)を検出する第2温度検出手段とを備え、
前記運転制御手段は、前記除湿手段への中水の供給を間欠的に行う際に、その供給及び供給の一時停止を一定時間毎に交互に行い、その供給期間中における前記第1温度検出手段による温度上昇量、又は第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度との温度差の増加量に基づいて、洗濯物の乾燥度合を判断して乾燥運転の終了のタイミングを決定する構成とすることができる。
【0028】
また第3発明に係る洗濯乾燥機では、前記除湿手段で除湿に使用された後の水の温度(除湿水温度)を検出する第1温度検出手段、又は、該第1温度検出手段と前記外槽内で熱交換が行われた後の空気の温度(排気温度)を検出する第2温度検出手段とを備え、
前記運転制御手段は、前記除湿手段への中水の供給を間欠的に行う際に、その供給及び供給の一時停止を一定時間毎に交互に行い、その供給停止期間中における前記第1温度検出手段における温度上昇量、又は第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度との温度差の増加量に基づいて、洗濯物の乾燥度合を判断して乾燥運転の終了のタイミングを決定するようにしてもよい。
【0029】
洗濯物が乾いて来ると除湿手段での熱交換量が減少し、除湿水温度の上昇速度は小さくなる。一方、排気温度は上昇を続ける。こうしたことから、乾燥が進行すると、冷却水供給期間中又は冷却水供給停止期間中において、除湿水温度上昇量、又は排気温度と除湿水温度との温度差の増加量はいずれも縮小してくる。したがって、これを利用して洗濯物の乾燥度合を高い精度で判定して過不足ないタイミングで乾燥運転の終了を行うことが容易になる。
【発明の効果】
【0030】
第1発明に係る洗濯乾燥機によれば、循環風路中の送風量を大きくしても除湿用冷却水が下流側に運ばれるのを抑制することができるため、例えばその下流側にリントフィルタが配設されている場合に飛散した水滴がリントフィルタの表面に付着することを防止することでき、従来よりも送風量を増加させて乾燥性能を高めることが可能となる。また例えばその下流側に加熱手段としてPTCヒータが配設されている場合に、飛散した水滴がPTCヒータに掛かることを防止することができ、PTCヒータの劣化や損傷を軽減することができる。
【0031】
また第2発明に係る洗濯乾燥機によれば、洗濯物の乾燥度合をより正確に判断することが可能となり、これに基づく乾燥運転の制御も的確に行える。それによって、乾燥運転の終了時の乾燥不足や過剰乾燥を軽減することができ、良好な乾燥を行うことができる。
【0032】
また第3発明に係る洗濯乾燥機によれば、乾燥の除湿に使用した水(中水)を回収してこれを乾燥の除湿に繰り返し使用する場合にも、乾燥性能を向上させて、例えば乾燥運転時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、第1乃至第3発明の一実施例であるドラム式洗濯乾燥機について図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施例のドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図、図2は給排水経路が現れる位置での概略側面縦断面図、図3は外槽を中心とする要部の右側面図、図4は乾燥運転に関連する部分の概略構成図、図5は外槽を中心とする要部の背面斜視図である。
【0034】
図1に示すように、略立方体形状である筐体1の前面には略円形状の衣類投入口2が形成され、衣類投入口2は内部を透視可能である横開き式のドア3で開閉自在である。この衣類投入口2の上には、左右に細長く、各種操作キーや表示器が配置された操作パネル4が設けられ、その左側には引き出し式の洗剤容器5が設置され、右側には同じく引き出し式の乾燥フィルタ容器6が設置されている。筐体1の上面後部には一端が水道栓に接続される給水ホースの他端が接続される給水ホース接続口7が配置され、その右隣には一端が浴槽内の風呂水に浸漬される風呂水ホースの他端が接続される風呂水ホース接続口8が配置されている。給水ホース接続口7は後述する給水バルブ21の入水口を直接上面に露出させることで形成されており、風呂水ホース接続口8は風呂水ポンプ22の入水口を直接上面に露出させることで形成されている。
【0035】
筐体1の内部には、周面が略円筒形状である外槽10が左右両下側方を支持するダンパ11と上部を牽引する図示しないばねとにより適度に揺動自在に保持されている。外槽10の前面には扁平円筒形状に延出したフランジ10aが形成され、その内側に衣類投入口2に相対して円形状に開口した外槽前面開口10bが形成されている。フランジ10aと衣類投入口2の周縁部とはゴムなどの弾性体から成る扁平円筒形状のパッキン12によって連結されている。外槽10の内部には、洗濯物を収容するための周面略円筒形状のドラム13が前後方向に延伸し且つ前上がりに傾斜して設けられた主軸14により軸支されている。ドラム13の前端面には大きく開口したドラム前面開口13aが形成されており、ドア3が開放されると、前方斜め上から外槽前面開口10bとこのドラム前面開口13aとを通して、ドラム13内部が覗き込めるようになっている。
【0036】
主軸14の前端はドラム13の後面に強固に固定され、外槽10の後面部に装着された軸受固定部材15に保持される軸受16により回転自在に支承されている。外槽10の後方側に突出した主軸14の端部には、ダイレクトドライブ方式のモータとしてアウタロータ型のモータ17のロータ172が取り付けられ、一方、軸受固定部材15にはモータ17のステータ171が固定されている。永久磁石を含むロータ172は巻線を含むステータ171の外周側を取り囲むように配置されており、ステータ171に駆動電流が供給されるとロータ172は回転し、主軸14を介してロータ172と同一の回転速度でドラム13が回転駆動される。
【0037】
筐体1内の上部空間には、給水バルブ21、風呂水ポンプ22、注水口部23を含む給水ユニット20が配設されている。この給水バルブ21の上方に指向した入水口が上記給水ホース接続口7であり、風呂水ポンプ22の上方に指向した入水口が上記風呂水ホース接続口8である。洗剤容器5を引き出し自在に内装する注水口部23は給水バルブ21の前方に配置され、給水バルブ21や風呂水ポンプ22を経て注水口部23に供給された水は主として洗剤容器5の内部を通り、注水口部23の底部に接続された注水管24を通して外槽10の後部に設けられた注水口25から外槽10内へと供給される。
【0038】
上述したように給水が行われて外槽10に貯留した水は、ドラム13の周壁面に多数穿孔された通水穴13bを通してドラム13内へと流入する。また、ドラム13の高速回転による遠心脱水時にドラム13内で洗濯物から吐き出された水は通水穴13bを通して外槽10側へと飛散する。外槽10の底部後方には排水口26が設けられ、排水口26は排水バルブ27の流入口に接続されており、この排水バルブ27が開放されると外槽10内に貯留されている水は筐体1の側面下部に形成された排出口29から機外へ引き出される図示しない排水ホースを通して排出される。
【0039】
一方、排水口26は貯水バルブ31の流入口にも接続されており、排水バルブ27が閉鎖状態であって貯水バルブ31が開放されると、外槽10内に貯留されている水は排水管28ではなく、外槽10の下方に設置されている30L程度の容量を有する貯水タンク30に流れ込む。これにより、洗濯(主として最終すすぎ)に一度使用された水を廃棄せずに貯水タンク30に溜めることができる。貯水タンク30と注水口部23とは、その途中に中水ポンプ32及び給水環流バルブ37が設けられた環流水路33を介して接続されている。さらに貯水タンク30の上には無声放電によりオゾンを発生するオゾン発生器34が設けられ、オゾン発生器34により発生されたオゾンガスは、オゾン混入用ポンプ35の作用により循環する貯水タンク30の貯留水にエジェクタ36を介して吹き込まれるようになっている。
【0040】
このドラム式洗濯乾燥機では、水道水による最終すすぎが実行された後、そのすすぎに使用された比較的きれいな水は廃棄されずに貯水タンク30に貯留される。周知のようにオゾンはその強い酸化作用により、有機物の分解、殺菌、脱臭などの作用を持つ。そのため、オゾン発生器34により生成されたオゾンが吹き込まれることで貯水タンク30の水に雑菌が繁殖するのが抑えられる。次の洗濯の際に中水給水が指定されると、給水実行時に中水ポンプ32が作動され、貯水タンク30に貯留されている中水が吸引されて環流水路33を通して注水口部23に送られ、水道水や風呂水の代わりに洗剤容器5を経て外槽10内に供給される。これにより、洗濯に使用する水の水量を従来よりも大幅に削減することができる。また、この中水は後述するように乾燥運転時の除湿用冷却水としても利用される。
【0041】
乾燥運転を行うために、図3及び図4に示すように、外槽10の後方下部に吸込口40、外槽10の前方上部に吐出口42が設けられ、吸込口40と吐出口42とは外槽10の外側に設けられた通風路41により接続されている。この通風路41は、吸込口40から外槽10の後方右側をほぼ真っ直ぐ上に延びる直立管部41aと、その直立管部41aの上端から前方に屈曲して外槽10の周面外側を斜め上方に延びる傾斜管部41bと、傾斜管部41bの前端から上方に延びる蛇腹状の弾性部材により成る連結管部41cと、筐体1に対し固定され外槽10の上方に位置し、上下2段に形成された水平な管路がその前部で連通している折返し管部41dと、折返し管部41dの左隣に位置し末端が吐出口42に繋がる送風加熱管部41eと、から成る。
【0042】
この通風路41の傾斜管部41bの上面には冷却水供給口41fが形成され、冷却水供給口41fには、途中に冷却水バルブ21bが設けられた冷却水ホース38の端部が接続されている。冷却水バルブ21bが開放されると、給水ホース接続口7に供給された水道水が除湿用冷却水として供給され、冷却水供給口41fから傾斜管部41b内に放出される。また、同じく除湿用冷却水を供給するために、通風路41の直立管部41aの上部には、散水孔46aが形成された散水室46が設けられている。この散水室46には、環流水路33から分岐された除湿用中水路47を通して中水が供給され、散水可能な量以上の中水は戻り中水路49を経て貯水タンク30に回収されるようになっている。
【0043】
折返し管部41dの上段の水平な管路の前部には、内部にリントフィルタ6aが配設された乾燥フィルタ容器6が引き出し自在に収納される構成となっており、乾燥フィルタ容器6が収納されると管路中を流れる空気はリントフィルタ6aを通過するようになっている。リントフィルタ6aは例えば、不織布又は合成樹脂製の多孔体によってシート状又は板状に形成されたものである。
【0044】
このリントフィルタ6aの下流側となる送風加熱管部41e中には、その空気の流れに沿って、ファンモータ43により回転駆動されるファン44、及び乾燥用のPTCヒータ45が配設されている。
【0045】
而して、乾燥運転時に、ファンモータ43によりファン44が回転駆動されると、上述したような通風路41及び外槽10により形成される循環風路に空気流が生起される。この空気流はPTCヒータ45で加熱された後に吐出口42から吐き出されて外槽10内に供給され、ドラム13内部を通過する際に洗濯物と熱交換を行って水分を奪い、吸込口40を通って通風路41に流れ込む。冷却水バルブ21bが開放されているときには、冷却水ホース38を通して供給される冷却水が傾斜管部41bから直立管部41aに流れて直立管部41a内を霧状に落下する。また、中水ポンプ32が作動して除湿環流バルブ48が開放されているときには、中水が散水室46の散水孔46aから直立管部41a内に噴霧される。したがって、いずれの場合にも、除湿用の冷却水は直立管部41aにおいて下方から上昇してくる湿った空気と熱交換を行い、水蒸気を凝縮液化させる。即ち、直立管部41a内の空間が主として除湿手段として機能する。結露により生じた水は噴霧された冷却水と共に通風路41の直立管部41a内壁を伝い落ち、吸込口40を経て外槽10内に流れ込み、排水口26から排出されることになる。
【0046】
上述のように通風路41の主として直立管部41a内で水蒸気が除かれた乾いた空気は、傾斜管部41b、連結管部41c、及び折返し管部41dの下段の水平管部41d1、折返し部41d2を経て、上段の水平管部41d3に至る。ここでリントフィルタ6aを通過し、送風加熱管部41eに入ってファン44を経てPTCヒータ45に戻る、というように循環して再び加熱される。リントフィルタ6aを通過する際に空気に混入している糸屑、塵埃、花粉などの異物は除去される。
【0047】
なお、オゾン発生器34とファン44のケーシングとは図示しないオゾン供給管で接続されており、上記のように通風路41内に空気流が生起されている状態でオゾン発生器34が作動すると、ファン44による吸引作用によりオゾン供給管を経たオゾンが通風路41内に引き込まれ外槽10に供給される。これにより、乾燥運転時にドラム13内に収容されている洗濯物の脱臭・殺菌を行うこともできる。
【0048】
次に、本実施例のドラム式洗濯乾燥機の乾燥に関する構造上の特徴とその作用について説明する。図6は通風路41の要部の縦断面図、図7は折返し管部41dの側面図(a)及びA−A’矢視線断面図(b)、図8は折返し管部41dを形成する一部材である水平仕切板53の上面図(a)、下面図(b)及びB−B’矢視線断面図(c)である。
【0049】
本実施例のドラム式洗濯乾燥機において乾燥性能を高めるには、例えばファン44の回転速度を高めることで通風路41を通る空気流の流量(つまり送風量)を増大させることが有効である。しかしながら、送風量を増大させると、傾斜管部41bにおいて冷却水供給口41fから放出された冷却水が下方から上昇してくる強い空気流に巻き上げられ、飛散した水滴が空気流に乗って下流側に運ばれ易くなる。図6に示すように、その下流側にあって空気流は連結管部41cではほぼ真っ直ぐ上方に向かうとともに、連結管部41cと水平管部41d1との接続部のコーナー、折返し部41d2で屈曲しているが、場合によっては空気流に乗った水滴がリントフィルタ6aまで到達してしまい、リントフィルタ6aの表面に付着して目詰まりを生じるおそれがある。
【0050】
これを防止するために、本実施例のドラム式洗濯乾燥機では、連結管部41cを通って上昇した空気流が横方向に屈曲されて進む、折返し管部41dの下段の水平管部(本発明における管路に相当)41d1の天面に、下流側への水滴の飛散を抑制するための抑止リブ(本発明における水阻止部に相当)53aを設けている。具体的には、折返し管部41dは主として下部ケース51と上部ケース52とから成るケース内に形成されるが、その内部には平板状の水平仕切板53がネジで固定されるようになっており、この水平仕切板53の下方に下段の水平管部41d1が形成され、上方に上段の水平管部41d3が形成され、前端の前方に折返し部41d2が形成される。この水平仕切板53の下面、つまり水平管部41d1の天面には、該水平管部41d1を流れる空気流に向かって(つまり図6、図7、図8では右方に)膨出したアーチ形状(円弧形状)の面を有する抑止リブ53aが、空気流の流れ方向に離して2個所に突設されている。抑止リブ53aの突出高さは水平管部41d1の幅方向、つまりは空気流の中心軸付近で低く、そこから両端に向かって次第に高くなるような形状である。なお、空気流の方向に沿って延伸する2本の補強リブ53bは主として機械的な強度を高めるためのリブである。
【0051】
図6に示すように、連結管部41cとその上部の水平管部41d1との接続部は略垂直に屈曲した形状であるから、そこを流れる空気流の多くは水平管部41d1の入口側ではその天面に一旦当たってから略垂直に曲がる。この曲がりの外側では流速は大きくなり内側では流速が小さくなる。したがって、この空気流に微小な水滴が混じっている場合、その水滴も水平管部41d1の天面に近い側に主として流れるから、上記のように天面に形成された抑止リブ53aに接触し易い。抑止リブ53aは上述のようにアーチ形状であるため、抑止リブ53aの表面に付着した水はそのアーチの曲面を伝って水平管部41d1の両側方に移動する。水平管部41dを流れる空気流の速度は中央部よりも両側方に近い位置で小さいため、抑止リブ53a表面に水溜まりが出来ても空気流の勢いで引きちぎられて再び飛散する可能性が低い。また、抑止リブ53aは空気流の一部を遮るように立設されているが、水平管部41dの幅方向の中央ではその突出高さは低くなっているため、空気流に対する流れ抵抗が大きくなることを避け、これによる風量の低下を回避することができる。
【0052】
また水平管部41d1の底面には抑止リブ53aのように少なくとも空気流を遮るリブがなく、且つその底面は緩やかに上流側、つまりは連結管部41c側に下向きに傾斜しているので、抑止リブ53aからの落下等で底面に溜まった水は重力によりこの傾斜に沿って流れ、連結管部41cから傾斜管部41bに流下する。このため、水平管部41d1内に水が溜まった状態のままとなることがない。
【0053】
次に、本実施例のドラム式洗濯乾燥機における乾燥運転時の制御について説明する。このドラム式洗濯乾燥機では、乾燥運転時にドラム13内に収容されている洗濯物の乾き具合を判断するために、除湿に使用された後の冷却水と結露水とが混じった除湿水の温度と、ドラム13内で洗濯物と熱交換を行った後の空気の温度とを利用している。除湿水の温度を検出するための除湿水温度センサ(本発明における第1温度センサに相当)67は、吸込口40の近傍の直立管部41a内底部、つまり直立管部41内を伝い落ちて来た除湿水が溜まる位置に配設されている。一方、循環空気の温度を検出するための排気温度センサ(本発明における第2温度センサに相当)66は、従来、通風路内又は通風路の外壁面に設けるのが一般的であったが、ここではドラム13外面と外槽10内面との間の空隙で外槽10内の後部上の空間に存在する空気の温度を間接的に検出できるように、その部分の外槽10の外壁面に密着して設置されている。吸込口40は外槽10の後面下部に設けられ、吐出口42は外槽10の前面上部に設けられているから、排気温度センサ66による検出対象の空気が存在する位置は吸込口40、吐出口42のいずれからも遠い位置であり、且つ洗濯運転時に外槽10に貯留される水に浸らない位置である。
【0054】
通風路41内に比べて外槽10内は空気の量が格段に多いため熱容量も大きく、しかも排気温度センサ66による温度検出位置には吐出口42から吐き出される高温の空気が直接的には届きにくい。そのため、排気温度センサ66による検出温度は、空気流の速度の変動などによる局所的な温度の変化の影響を受けにくい。また、除湿用冷却水の散水部位や除湿水が流れる部位からも離れているので、乾燥運転中に排気温度センサ66の設置位置の内側の外槽10内面に水が掛かることもない。さらにまた、排気温度センサ66の設置位置は外槽10の上部であるため、洗濯物と熱交換を行いながらドラム13内部を自然対流によって上昇して来た空気がこの排気温度センサ66による検出対象の外槽10内空間に溜まり易い。こうしたことから、排気温度センサ66では、ドラム13内の洗濯物の乾き具合を反映した空気の温度を安定的に測定することができる。
【0055】
なお、この実施例では排気温度センサ66により外槽10の外壁面の温度を検出し、その検出温度がその内側の空気温度である(又は空気温度を忠実に反映している)とみなしていたが、排気温度センサ66の検出部を外槽10内方にまで突出させ、空気の温度を直接的に測定するようにしてもよい。
【0056】
図9は本実施例のドラム式洗濯乾燥機の電気系構成図である。本発明における運転制御手段としての制御部60はCPU、ROM、RAM、タイマなどを含むマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROMに格納されている制御プログラムに基づいて、洗い、すすぎ、脱水及び乾燥の各行程の運転動作を行うための各種の制御を実行する。
【0057】
制御部60には、操作部62からキー入力信号が与えられるとともに、ドア3の開閉を検知するドアスイッチ64、外槽10内に貯留された水の水位を検知する水位センサ65、上述の外槽10内の空気の温度を検出する排気温度センサ66、除湿水の温度を検出する除湿水温度センサ67から、それぞれ検出信号が入力される。また、制御部60には表示部63や負荷駆動部61が接続されており、この負荷駆動部61を介して、ドラムモータ17、ファンモータ43、乾燥用のPTCヒータ45、給水バルブ21a、冷却水バルブ21b、排水バルブ27、貯水バルブ31、中水ポンプ32、給水環流バルブ37、除湿環流バルブ48、オゾン混入用ポンプ35等の動作を制御する。
【0058】
以下の説明では、排気温度センサ66により検出される温度を排気温度Ta、除湿水温度センサ67で検出される温度を除湿水温度Tbと呼ぶ。本実施例のドラム式洗濯乾燥機では、乾燥運転時の除湿のために、外部から供給された水道水と、貯水タンク30内に貯留された、最終すすぎに使用された後の水(つまり中水)とを、選択できるようにしている。節水のために除湿に中水を利用したい場合、使用者は洗濯・乾燥運転の開始前に操作部62で中水除湿を設定する。
【0059】
乾燥運転時に中水除湿が選択されている場合には、冷却水として中水を利用した除湿による乾燥運転を実行する(但し、中水が貯留されていない場合には自動的に水道水が選択される)。即ち、制御部60は中水ポンプ32を作動させるとともに除湿環流バルブ48を開放、給水環流バルブ37を閉鎖し、貯水タンク30に貯留されている中水が散水室46に供給されるようにする。このとき、排水バルブ27は閉鎖し、貯水バルブ31は開放する。したがって、散水室46の散水孔46aから放出された中水は外槽10に流れ込み、排水口26から貯水バルブ31を経て貯水タンク30に戻り、繰り返し使用されることになる。
【0060】
冷却水は通風路41の直立管部41aにおいて湿った高温の空気と熱交換を行うために温められ、また除湿により発生した結露水が混じるために、貯水タンク30に戻って来る水は散水室46に送り出された時点よりもその温度が高くなっている。貯水タンク30に貯留される水の水量は除湿のために送給される水の流量に比べて格段に大きいが、それでも乾燥運転時に連続的に中水が除湿に供給されると、貯水タンク30内の貯留水の温度は徐々に上昇する。冷却水の温度が高くなると熱交換効率が悪くなって除湿作用が低下する。これは乾燥性能の低下につながる。
【0061】
そこで、このドラム式洗濯乾燥機機では、除湿に中水が利用される場合にでも十分な乾燥性能を確保するために特徴的な制御を実行している。図10は乾燥運転時の排気温度Taと除湿水温度Tbの測定結果及びその温度差の変化を示すグラフである。
【0062】
即ち、乾燥運転が開始されると、制御部60は負荷駆動部61を介してドラムモータ17を所定時間毎に正逆回転させるように制御し、ドラム13を低速で正逆回転させる。これにより、洗濯物はドラム13内でゆっくりと撹拌される。また、排水バルブ27を閉じて貯水バルブ31を開く。これにより、外槽10内から排出される水(除湿水)は貯水タンク30内に戻る。また、ファンモータ43を所定回転速度で動作させるとともに、PTCヒータ45に加熱電流を供給する。これにより、PTCヒータ45で加熱された加熱空気が外槽10内に送給され、回転駆動されているドラム13内に流れ込む。さらに中水ポンプ32を作動させるとともに除湿環流バルブ48を開放、給水環流バルブ37を閉鎖することで、散水室46に中水を供給し始める。これにより、ドラム13内で洗濯物と熱交換を行って洗濯物から吐き出された水蒸気を含む空気が通風路41の直立管部41aを通過する際に除湿され、乾いた空気がリントフィルタ6aを経てファン44に戻る。
【0063】
乾燥運転が開始された後、制御部60は排気温度センサ66により排気温度Taを検出するとともに、除湿水温度センサ67により除湿水の温度Tbを検出し始める。乾燥運転の開始から暫くの間は、吐出口42から吐き出される加熱空気が持つ熱量の殆どはドラム13や洗濯物、外槽10の内壁面、或いは加熱空気が通過する通風路41内に位置するその他の構造物の温度上昇に費やされ、洗濯物に染みこんでいる水の蒸発にはあまり寄与しない。このときには、排気温度Ta、除湿水温度Tbともに徐々に上昇する(図10(I)で示す期間)。
【0064】
乾燥運転開始から所定時間t1(ここでは約25分)が経過すると、制御部60は中水ポンプ32の動作を一旦停止することにより散水室46への冷却水の供給を停止する(図10(II)で示す期間)。冷却水の供給が停止されると、通風路41の直立管部41aにおける空気の冷却が行われなくなるため、PTCヒータ45に戻る空気の温度は相対的に高くなる。そのため、外槽10内に供給される加熱空気の温度上昇速度も大きくなる。また、冷却水が供給されないため、除湿水温度センサ67は実質的に吸込口40付近の通風路41内の空気の温度を検出していることになり、この検出温度も急激に上昇する。
【0065】
外槽10内に供給される空気の温度が高くなることで、この加熱空気とドラム13内の洗濯物との熱交換が盛んになり、洗濯物からは水蒸気が多量に発生するようになる。所定時間t2(ここでは約5分)、冷却水の供給を停止した後に、冷却水の間欠供給期間(図10(III)で示す期間)に移行する。この期間に入ると、制御部60は中水ポンプ32のオン/オフを制御することで、所定時間t3の冷却水の供給と所定時間t4の冷却水の供給停止とを交互に行う。ここではt3及びt4はいずれも10分に設定している。
【0066】
散水室46に冷却水が供給されると(a期間)、その直前までの加熱によって洗濯物から蒸発した水蒸気を多量に含む空気が通風路41の直立管部41aを通過する際に除湿される。これにより、排気温度センサ66で検出される空気の温度Taも急に下がる。一方、除湿水温度センサ67は除湿水に接触するため、この温度Tbも急に下がる。
【0067】
これに対し、冷却水の供給停止期間(b期間)では、(II)期間と同様に、排気温度Ta、除湿水温度Tbは急上昇する。この間には除湿は行われないが、外槽10内に供給される空気の温度が高くなることで、洗濯物からの水の蒸発を一層促進させることができる。そして、このb期間において多量に発生した水蒸気が、次のa期間において一気に凝縮液化されて空気中から除去される。
【0068】
一方、a期間中には除湿水の温度は徐々に上昇し、この状態で貯水タンク30に除湿水が環流するため、貯水タンク30内の水の温度も徐々に上昇し、散水室46に送給される冷却水の温度自体が上昇してゆくことになる。冷却水の温度が高くなると、除湿の際の熱交換効率が悪くなり除湿能力の低下につながる。これに対し、b期間中には貯水タンク30内には相対的に高温の除湿水が戻って来ないので、貯水タンク30内の貯留水の温度は殆ど上昇しない(外気温などの条件によっては上下する場合もある)。そのため、本実施例のように冷却水の間欠的供給を行うことにより、貯水タンク30内の中水を冷却水として連続的に供給し続ける場合に比べて、この冷却水の温度上昇の度合いを抑えることができる。これにより、除湿を行う際の除湿能力の低下を回避することができる。
【0069】
上記のようにb期間中に外槽10内に供給する加熱空気の温度が高くなること、及び、a期間中に循環供給する冷却水の温度を比較的低い状態に保って除湿能力を確保すること、の効果が相まって、貯水タンク30内の中水を冷却水として連続的に供給し続ける場合に比べて総合的な乾燥性能を高めることができる。本発明者らの実験によれば、6kgの容量の洗濯物の乾燥を行う場合に、連続的に冷却水として中水を供給する場合に比べて乾燥率を1%程度向上させることができることが確認できた。これにより、約15分間の乾燥運転所要時間の短縮効果を得ることができる。
【0070】
図10に示すように、ドラム13内の洗濯物が十分に湿っていて高温の空気と熱交換を十分に行える状態であるときには、排気温度Taと除湿水温度Tbともにほぼ同様の上昇傾向を示すが、洗濯物が乾いてきてドラム13内での熱交換が十分に行えなくなると、循環空気中の水蒸気量が減るため、冷却水に与えられる熱量も減少して除湿水温度Tbの上昇は全体として緩やかになる。そのため、排気温度Taと除湿水温度Tbとの温度差Ta−Tbをみると、水分の蒸発が盛んに行われている恒率乾燥期間中のa期間では温度差はほぼ一定であるのに対し、洗濯物が乾いてきて水蒸気の発生が減少する減率乾燥期間に入ると、a期間での温度差が拡大する。この温度差はドラム13内で洗濯物に奪われる熱量に依存するから、この温度差に基づいて洗濯物の乾燥の度合いを判断することができる。
【0071】
そこで、制御部60は排気温度Taと除湿水温度Tbとの温度差を求め、この温度差が所定の閾値を超えたときに所定の乾燥度合に達したと判断して乾燥運転の終了タイミングとみなす。但し、乾燥不足や乾燥むらを軽減するために、乾燥運転の終了タイミングを検知した時点から適宜の時間だけ乾燥運転時間を延長する。そして、その後にPTCヒータ45をオフして送風のみを継続するクールダウン運転を実行し、洗濯物の温度を下げてから運転を終了する。
【0072】
上記のような理由から除湿に中水が利用される場合には基本的に冷却水の供給を間欠的に行うようにするが、乾燥運転の初期や後期には制御を変更してもよい。例えば、乾燥運転の初期には散水室46に冷却水を送給せず、通風路41の直立管部41aでの除湿を行わないようにしてもよい。乾燥運転の初期に冷却水を供給すると、この冷却水により循環空気の温度が下げられてしまいPTCヒータ45による加熱にも拘わらず温度が上がりにくい。これに対し、冷却水の供給を停止すれば、乾燥運転初期において循環空気の温度上昇の速度を大きくし、総合的に乾燥性能を向上させることが可能である。
【0073】
直立管部41aにおける散水は除湿のほかに、外槽10から戻って来る空気に混入している埃や糸屑などの浮遊物を水とともに落下させ、リントフィルタ6aの目詰まりを起こりにくくしたり洗濯物への浮遊物の再付着を防止したりする作用がある。しかしながら、乾燥運転の初期には洗濯物が十分に湿っているため洗濯物からの埃や糸屑などの飛散は殆ど見られず、冷却水の供給を停止したとしてもこの点で問題となることはない。
【0074】
一方、洗濯物の乾燥が進んで来ると、洗濯物から埃や糸屑などの浮遊物が大量に飛散するようになる。そこで、こうした浮遊物がリントフィルタ6aに到達するまでにできるだけ落下させて除去するべく、乾燥運転の後半には(例えば減率乾燥期間に移行してから)冷却水の供給停止を解除して連続的に冷却水を供給するようにしてもよい。これにより、リントフィルタ6aの目詰まりや洗濯物への埃、糸屑などの再付着を軽減することができる。
【0075】
また、洗濯物の乾燥度合を判断するために排気温度Taと除湿水温度Tbとの温度差を単に利用するだけでなく、他の方法によって乾燥度合を判断して乾燥運転終了のタイミングを決めるようにしてもよい。
【0076】
例えば、上述のように所定時間t3の冷却水供給と所定時間t4の冷却水供給停止とを交互に繰り返す場合、洗濯物の乾燥が進行して終わりに近づくと、a期間中の除湿水温度Tbの変化量、及びa期間中の温度差(Ta−Tb)の変化量が縮小するという現象がみられる。そこで、図10中でa期間中の開始時点と終了時点での除湿水温度Tbの変化量(例えばT1−T2)を求め、これを所定の閾値と比較して、該閾値以下となった場合に乾燥終了のタイミングであると判断することができる。また、例えば図10中でa期間中の開始時点と終了時点でのTaーTbの変化量(例えばT5−T4)を求め、これを所定の閾値と比較して、該閾値以下となった場合に乾燥終了のタイミングであると判断することもできる。
【0077】
また例えば、上述のように所定時間t3の冷却水供給と所定時間t4の冷却水供給停止とを交互に繰り返す場合、洗濯物の乾燥が進行して終わりに近づくと、b期間中の除湿水温度Tbの変化量、及びb期間中の温度差(Ta−Tb)の変化量が縮小するという現象もみられる。そこで、図10中でb期間中の開始時点と終了時点での除湿水温度Tbの変化量(例えばT3−T2)を求め、これを所定の閾値と比較して、該閾値以下となった場合に乾燥終了のタイミングであると判断することができる。また、例えば図10中でa期間中の開始時点と終了時点でのTaーTbの変化量(例えばT5−T6)を求め、これを所定の閾値と比較して、該閾値以下となった場合に乾燥終了のタイミングであると判断することもできる。
【0078】
さらには、上記のような複数の乾燥終了のタイミングの判断を併用することで、その判断の正確性を一層向上させることもできる。これにより、乾燥運転終了にも拘わらず洗濯物が十分に乾いていなかったり、逆に既に十分に乾燥しているにも拘わらず高温の空気が洗濯物に当たり続けることによる布傷みなどの発生を防止することができる。
【0079】
なお、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。具体的には、例えば上記実施例はドラム式洗濯乾燥機であるが、縦型の外槽内に略垂直な軸を中心に内槽を回転自在に設けた構造の洗濯乾燥機にも第1発明、第3発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施例によるドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図。
【図2】本実施例によるドラム式洗濯乾燥機の概略側面縦断面図。
【図3】本実施例によるドラム式洗濯乾燥機において外槽を中心とする要部の右側面図。
【図4】本実施例によるドラム式洗濯乾燥機における乾燥運転に関連する部分の概略構成図。
【図5】本実施例によるドラム式洗濯乾燥機における外槽を中心とする要部の背面斜視図。
【図6】本実施例によるドラム式洗濯乾燥機における通風路の要部の縦断面図。
【図7】本実施例によるドラム式洗濯乾燥機における乾燥フィルタ容器収納部を含む上部風路形成部の側面図(a)及びA−A’矢視線断面図(b)。
【図8】本実施例によるドラム式洗濯乾燥機において上部風路形成部を構成する一部材である水平仕切板の上面図(a)、下面図(b)及びB−B’矢視線断面図(c)。
【図9】本実施例のドラム式洗濯乾燥機の電気系構成図。
【図10】本実施例のドラム式洗濯乾燥機における乾燥運転時の排気温度と除湿水温度の測定結果及びその温度差の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0081】
1…筐体
2…衣類投入口
3…ドア
6…乾燥フィルタ容器
6a…リントフィルタ
10…外槽
13…ドラム
14…主軸
17…ドラムモータ
30…貯水タンク
31…貯水バルブ
32…中水ポンプ
33…環流水路
37…給水環流バルブ
38…冷却水ホース
40…吸込口
41…通風路
41a…直立管部
41b…傾斜管部
41c…連結管部
41d…折返し管部
41d1、41d3…水平管部
41d2…折返し部
41e…送風加熱管部
41f…冷却水供給口
42…吐出口
43…ファンモータ
44…ファン
45…PTCヒータ
46…散水室
46a…散水孔
47…除湿用中水路
48…除湿環流バルブ
49…戻り中水路
51…下部ケース
52…上部ケース
53…水平仕切板
53a…抑止リブ
53b…補強リブ
60…制御部
61…負荷駆動部
66…排気温度センサ
67…除湿水温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物が収容される内槽を内包する外槽と、該外槽に両端が接続された通風路と、前記外槽及び前記通風路より成る循環風路に循環的な空気流を生起させる送風手段と、前記通風路の内部にあって該通風路中に供給された冷却水との熱交換により空気中の水蒸気を凝縮液化させる除湿手段と、前記通風路の内部で前記除湿手段よりも空気流の下流側に位置し、除湿された後の空気を加熱する加熱手段と、を具備する洗濯乾燥機において、
前記除湿手段と前記加熱手段との間で前記通風路の一部は、空気流が上方に向かった後に横方向に屈曲される形状に形成され、
その屈曲された後の空気流が流れる管路の天面に、上流側から飛散して来る水を阻止するための水阻止部が突設されていることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記水阻止部は空気流の上流側に向いて凸形状の面を有することを特徴とする請求項1に記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記水阻止部の突出高さは、前記管路の幅方向の中央側で低くその両側で相対的に高い形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
外槽と、該外槽内に水平軸又は傾斜軸を中心に回転自在に配設されたドラムと、前記外槽の後方下部の吸込口と該外槽の前方上部の吐出口に両端が接続された通風路と、前記吐出口から前記外槽内に空気を吐き出し該外槽内の空気を前記吸込口から前記通風路に引き込むような循環的な空気流を生起させる送風手段と、前記通風路の内部にあって該通風路中に供給された冷却水との熱交換により空気中の水蒸気を凝縮液化させる除湿手段と、前記通風路の内部で前記除湿手段よりも下流側に位置し、除湿された後の空気を加熱する加熱手段と、を具備するドラム式の洗濯乾燥機において、
前記除湿手段により前記通風路内に供給され除湿に利用された後の水の温度を検出する第1温度検出手段と、
前記外槽の内面と前記ドラムの外面との間の空間で前記外槽内の後方上部に位置する空気の温度を検出する第2温度検出手段と、
乾燥運転の実行時に、第1温度検出手段及び第2温度検出手段の検出温度に基づいてドラム内の洗濯物の乾き具合を判断する運転制御手段と、
を備えることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項5】
洗濯物が収容される内槽が回転自在に配設された外槽と、前記外槽に両端が接続された通風路と、該通風路に空気流を生起するための送風手段と、前記通風路を通して前記外槽内に送る空気を加熱する加熱手段と、前記外槽から前記通風路に戻って来る湿った空気を除湿する除湿手段と、乾燥の除湿に使用された水を回収して中水として貯留する貯留部と、該貯留部に貯留された中水を前記除湿手段に冷却水として供給する除湿用中水供給手段と、を具備する洗濯乾燥機であって、
乾燥運転の際に、前記貯留部に貯留されている中水を前記除湿用中水供給手段により前記除湿手段に供給するとき、その供給を間欠的に行う運転制御手段を備えることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項6】
前記運転制御手段は、乾燥運転の後半期間に前記貯留部に貯留されている水を前記除湿手段に連続的に供給するように制御を切り替えることを特徴とする請求項5に記載の洗濯乾燥機。
【請求項7】
前記除湿手段で除湿に使用された後の水の温度を検出する第1温度検出手段、又は、該第1温度検出手段と前記外槽内で熱交換が行われた後の空気の温度を検出する第2温度検出手段とを備え、
前記運転制御手段は、前記除湿手段への中水の供給を間欠的に行う際に、その供給及び供給の一時停止を一定時間毎に交互に行い、その供給期間中における前記第1温度検出手段における温度上昇量、又は第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度との温度差の増加量に基づいて、洗濯物の乾燥度合を判断して乾燥運転の終了のタイミングを決定することを特徴とする請求項5に記載の洗濯乾燥機。
【請求項8】
前記除湿手段で除湿に使用された後の水の温度を検出する第1温度検出手段、又は、該第1温度検出手段と前記外槽内で熱交換が行われた後の空気の温度を検出する第2温度検出手段とを備え、
前記運転制御手段は、前記除湿手段への中水の供給を間欠的に行う際に、その供給及び供給の一時停止を一定時間毎に交互に行い、その供給停止期間中における前記第1温度検出手段における温度上昇量、又は第1温度検出手段の検出温度と第2温度検出手段の検出温度との温度差の増加量に基づいて、洗濯物の乾燥度合を判断して乾燥運転の終了のタイミングを決定することを特徴とする請求項5に記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−161396(P2008−161396A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353576(P2006−353576)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】