説明

洗濯用スベリ性改善剤造粒物

【課題】メタリン酸カリウムの溶け残りや衣類への付着を引き起こすことなく、漬け置きしない場合、漬け置きした場合のいずれにおいても、被洗浄物間の良好なスベリ性が維持され、軽い力で洗濯できることや洗濯物を擦る速度(時間当たりの擦り回数)が増加することなどで手洗い洗濯し易くする洗濯用スベリ性改善剤造粒物及び該洗濯用スベリ性改善剤造粒物を含有する洗剤組成物を提供すること。
【解決手段】下記条件で測定した水溶液の粘度が200mPa・s以上のメタリン酸カリウムを含有してなる洗濯用スベリ性改善剤造粒物〔水50mLにメタリン酸カリウム2gを添加し、1分間攪拌し、そこに、トリポリリン酸ソーダ(下関三井化学(株)製)4gを水50mLに溶解した溶液を加え、3時間攪拌し、B型粘度計で25℃での粘度を測定する〕及び前記洗濯用スベリ性改善剤造粒物を含有する洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯用スベリ性改善剤造粒物に関する。詳しくは、手洗い洗濯時において被洗浄物間のスベリ性を改善することで軽い力で洗濯できることや洗濯物を擦る速度(時間当たりの擦り回数)が増加し易いなどの手洗い性を向上させるとともに、被洗浄物間の摩擦による被洗浄物の傷みや被洗浄物と手が擦れ合うことにより生じる手の切り傷・擦り傷等を抑制する為の全く新しい発想に基づく洗濯時の添加剤に関する。また、前記洗濯用スベリ性改善剤造粒物を含有した洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯方法としては、大きく分けて手洗い洗濯と洗濯機洗濯の2種類がある。近年では洗濯機の普及により洗濯機洗濯が増加する傾向にあるが、汚れ落ちや経済性の観点から、依然、手洗い洗濯に対するニーズも多い。
【0003】
そこで、従来、手洗い洗濯時に好ましい物性を有する洗剤の開発が行なわれてきた。例えば、特許文献1に挙げられるように、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤を特定の比で配合することで手洗い洗濯時の皮膚への刺激性を改善する方法が開示されている。また、泡コントロールに関しては、一般的に増泡にはLASやAS等の高起泡性の界面活性剤、制泡にはポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤、濯ぎ時の泡切れ性向上には石鹸等を用いることが知られている。具体的には、特許文献2に挙げられているアニオン界面活性剤、特定のノニオン界面活性剤、及び脂肪酸石鹸を特定比で含有することで溶解性、起泡性及び濯ぎ性に優れた洗剤組成物が開示されている。
【特許文献1】特表平10−504056号公報
【特許文献2】特公平8−13987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、手洗い洗濯のし易さ(被洗浄物を擦るときのスベリ性)に着目し、洗剤組成物に特定のメタリン酸カリウムを配合することで、被洗浄物間の摩擦力を低減させ、スベリ性を改善することで洗浄力を維持したまま手洗い洗濯性を向上させる技術がある。
【0005】
しかしながら、手洗い洗濯を行う場合、洗剤組成物を水に溶解させた液に被洗浄物を数分から数時間の間、浸漬して静置した後に、手洗い洗濯を始めるケースが多い。その場合、特定のメタリン酸カリウムの溶解によって発現されるスベリ性の向上効果は、経過時間とともに低下していく。該メタリン酸カリウム粉体の粒径を大きくすることで、スベリ性の持続時間を延長することが可能であるが、メタリン酸カリウムの溶け残りや衣類への付着が問題となってくる。
【0006】
従って、本発明の目的は、メタリン酸カリウムの溶け残りや衣類への付着を引き起こすことなく、漬け置きしない場合、漬け置きした場合のいずれにおいても、被洗浄物間の良好なスベリ性が維持され、軽い力で洗濯できることや洗濯物を擦る速度(時間当たりの擦り回数)が増加することなどで手洗い洗濯し易くする洗濯用スベリ性改善剤造粒物及び該洗濯用スベリ性改善剤造粒物を含有する洗剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、手洗い洗濯を行う場合、数分から数時間程度の浸漬洗浄を行った後に手洗い洗濯を始めるケースが多いことを考慮し、被洗浄物どうしを擦り合わせるときのスベリ性に着目して、鋭意研究を重ねた結果、特定のメタリン酸カリウムを単独で造粒したもの、或いは特定のメタリン酸カリウムとバインダー物質及び/又はその他の成分と造粒したものを用いることによって、添加直後の手洗い洗濯時だけでなく、数分から数時間程度の浸漬洗浄後の手洗い洗濯においても、軽い力で洗濯できることや洗濯物を擦る速度( 時間当たりの擦り回数) が増加することなどで、手洗い感触を高める事を見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明は、
〔1〕下記条件で測定した水溶液の粘度が200mPa・s以上のメタリン酸カリウムを含有してなる洗濯用スベリ性改善剤造粒物
〔水50mLにメタリン酸カリウム2gを添加し、1分間攪拌し、そこに、トリポリリン酸ソーダ(下関三井化学(株)製)4gを水50mLに溶解した溶液を加え、3時間攪拌し、B型粘度計で25℃での粘度を測定する〕、及び
〔2〕前記〔1〕記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物を含有する洗剤組成物
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物を用いることにより、メタリン酸カリウムの溶け残りや衣類への付着を引き起こすことなく、漬け置きしない場合、さらには長時間漬け置きした場合においても、被洗浄物間の良好なスベリ性が維持され、軽い力で洗濯できることや洗濯物を擦る速度(時間当たりの擦り回数)が増加することなどで手洗い感触を高めることができるという効果が奏される。また、洗濯機洗濯においては攪拌等の機械力によって生じる型くずれ等の原因となる繊維の傷みに対して、繊維間のスベリ性を高めることで布傷みを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<洗濯用スベリ性改善剤造粒物>
本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物は、特定の粘度を有するメタリン酸カリウムを含有し、かつ造粒物である点に大きな特徴がある。かかる特徴を有する本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物は、メタリン酸カリウムの溶け残りや衣類への付着を引き起こすことなく、漬け置きしない場合、さらには長時間漬け置きした場合においても、被洗浄物間の良好なスベリ性が維持され、軽い力で洗濯できることや洗濯物を擦る速度が増加し易い等の手洗い洗濯をし易くすることができるという作用を有する。
【0011】
本発明において、造粒物とは、メタリン酸カリウム単独で造粒したもの或いはメタリン酸カリウムとバインダー物質及び/又はその他の成分とを造粒したものを示し、その形状としては、顆粒状、カプセル状等が挙げられる。
【0012】
本発明では、このように、造粒物化することで、製造プロセスにおける洗剤組成物への添加時のハンドリング性の向上や洗濯時に洗剤組成物と別途添加する場合の継粉発生を抑制することができるという利点もある。
【0013】
本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物(以下、「スベリ性改善剤」と略す)は、洗剤と混合してスベリ性改善剤含有洗剤として用いたり、洗濯時に直接、洗剤組成物とは別に添加して用いたりすることもできるが、使用時の簡便性、溶解性の観点から、洗剤組成物中に含有されることが好ましい。なお、前記スベリ性改善剤は、使用する洗剤組成物の組成・形態・製造法等によって限定されず、後述の可溶化剤等を含有する全ての洗剤組成物においてその効果を発現できる。
【0014】
また、本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物は、手洗い洗濯時、被洗浄物間のスベリ性を改善して、手洗いし易くし、さらに手洗いにおける感触を高め、さらにハンドケア、衣類ケアをもなしうるという作用を有するものである。したがって、本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物は、手洗い洗濯用でもある。
【0015】
以下に本発明に用いられる各成分について説明する。なお、本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物を以下、単に、造粒物ともいう。また、洗濯液とは、前記洗濯用スベリ性改善剤造粒物と洗剤組成物が溶解・懸濁された液等の洗濯を行うための液をいう。
【0016】
1.メタリン酸カリウム
本発明に用いられるメタリン酸カリウムは、後述する粘度測定法を用いて測定した場合の水溶液の粘度が200mPa・s以上、好ましくは、250mPa・s以上、より好ましくは300mPa・s以上となるものである。また、入手の容易性の観点から、800mPa・s以下が好ましく、600mPa・s以下がより好ましい。このような特定の粘度を有するメタリン酸カリウムは、スベリ性が著しく高く、手洗い用洗剤として有益な性能を有するという利点があるので、かかるメタリン酸カリウムを含有する洗濯用スベリ性改善剤造粒物を洗剤組成物中に添加することで、スベリ性改善剤量を低減できるという利点もある。
【0017】
ここで、メタリン酸カリウム水溶液の粘度は、水50mLにメタリン酸カリウム2gを添加し、1分間攪拌し、そこに、トリポリリン酸ソーダ(下関三井化学(株)製)4gを水50mLに溶解した溶液を加え、3時間攪拌し、B型粘度計で25℃での粘度を測定することで得られる。
【0018】
本発明に用いられるメタリン酸カリウムは一般的に以下に示すような製法で、製造される。
nKHPO → (KPO)n + nH
即ち、リン酸二水素カリウム(KHPO)を加熱して分子間脱水を行うことにより、メタリン酸カリウムが生成するが、加熱温度と時間等の因子により各種重合度の製品が得られ、脱水反応を高温で行うほど重合度は大きくなる。この重合度とスベリ性には相関関係があり、メタリン酸カリウムの分子量としては、手洗い性改善の観点から、1万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、20万以上がさらに好ましく、50万以上がさらに好ましい。また、入手のし易さから、5千万以下が好ましく、2千万以下がより好ましい。
【0019】
メタリン酸カリウムは、一般式(KPO3)nで表されるが、その構造は、以下の式に示されるようなものである。
【0020】
【化1】

【0021】
PO四面体どうしが、酸素を共有して結合(重合)し、ポリリン酸アニオンのネットワークを形成しており、ポリリン酸アニオンの電荷バランスを中和するために、カリウムイオンが配位した構造を呈している。上記構造に示すように、リンのようにポリリン酸アニオンのネットワークを形成する元素を、一般的にネットワーク形成元素と称し、リンに同型置換するネットワーク形成元素は、酸素を共有して結合し、アニオンのネットワークを形成する。また、カリウムのように、ポリリン酸アニオンのネットワークの電荷を調整する役目を担う元素を、ネットワーク修飾元素と称している。
【0022】
本発明に用いられるメタリン酸カリウムは、リンに同型置換するネットワーク形成元素やカリウム以外のネットワーク修飾元素を特定量含有しても良い。リンに同型置換するネットワーク形成元素やカリウム以外のネットワーク修飾元素は、メタリン酸カリウムの原料に含有される場合や製造過程で含有される場合がある。
【0023】
メタリン酸カリウムは、洗剤のビルダーとして用いられることが知られているが、該用途において、上記のようなリンに同型置換するネットワーク形成元素やカリウム以外のネットワーク修飾元素については、何ら制限なく、如何なる割合で含有していたとしても、ビルダーとしての性能を大きく損なうことはない。一方、本発明の用途に用いられるメタリン酸カリウムは、それらの含有量が特定範囲に限られた場合のみ、本発明に好適な性能を発現し得る特殊な事情がある。
【0024】
メタリン酸カリウムの原料として、工業的に利用可能なリン酸化合物の、更なるリン源としては、リン酸カルシウム等を多量に含む、天然に産出される所謂リン鉱石が挙げられる。天然より採掘されたこれらリン鉱石は、黄燐、酸化リン等を経て、リン酸(塩)等のリン酸化合物へと工業的に誘導される。精製工程を含まないか、若しくは、精製が充分行われていない場合、起源を天然のリン鉱石に有するリン酸化合物類は、リン鉱石として採掘された時点からキャリーオーバーされるヒ素等のリンに同型置換するネットワーク形成元素を多量に含有している。洗剤用途等の安価な工業グレードのリン酸化合物類は、高度な精製を行わないのが一般的であり、こうしたリン酸化合物類は、リンに同型置換するネットワーク形成元素を多量に含んでいる。リン鉱石の産出地、リン鉱石からの加工工程の差異等により、含有されるリンに同型置換するネットワーク形成元素の含有量は変動するが、概して、市販工業グレードのリン酸化合物類は、数十〜100重量ppm程度のリンに同型置換するネットワーク形成元素を含有している。
【0025】
一方、メタリン酸カリウムの原料として、工業的に利用可能なカリウム源としては、塩化カリウムの電気分解により得られる水酸化カリウム等が挙げられる。塩化カリウムは、カーナリット、カイニット、シルビン、ハルツザルツ等の不純な混合物から、工業的晶析法により精製して得られるが、このような工業グレードの塩化カリウムは、晶析で除去できない他の成分、即ち塩化ナトリウムや塩化マグネシウム等を多量に含有している。このような塩化カリウム以外の成分は、電気分解後に得られる水酸化カリウム中にもキャリーオーバーされるため、工業グレードの水酸化カリウムは、カリウム以外のネットワーク修飾元素を多量に含有している。
【0026】
また、リン鉱石からリン酸化合物類への一連のリン加工工程、若しくは、その一部工程を行う当業者は、ほぼ例外なくメタリン酸カリウムの原料となり得るリン酸−カリウム化合物類以外の製品をも生産している。こうしたリン加工業者は、加工設備の有効利用を目的とし、例えば、リン酸源とナトリウム源から誘導されるリン酸−ナトリウム化合物類の加工と、メタリン酸カリウムの原料となり得るリン酸−カリウム化合物類の生産、若しくはメタリン酸カリウム自体の生産とを、共用の反応釜、乾燥機、焼成炉等の加工設備で実施していることが一般的である。生産品種を変更する際の品種順序や加工設備の洗浄等、設備・工程管理が充分に為されていない場合には、本発明のメタリン酸カリウムに好適な全ての各種の原料類を準備したとしても、加工工程中において、本発明の用途には好ましくない成分が増加する結果となる。
【0027】
本発明のメタリン酸カリウムを調製するための各種の原料は、リンやカリウム以外の成分についても精査し、場合により、精製等の手段を講じることが好ましい。例えば、リンに同型置換するネットワーク形成元素の含有量が好ましい範囲である例として、高度に精製された食品添加物として供給される、リン酸二水素カリウム等のリン酸−カリウム化合物を、本発明のメタリン酸カリウムを調製するために用いることは好適である。
【0028】
リンに同型置換するネットワーク形成元素やカリウム以外のネットワーク修飾元素は、その含有量が適量であれば、メタリン酸カリウム中に取り込まれ、リンやカリウムと同等の性状を発現し、本発明のメタリン酸カリウムに求められる性能を十分に発揮する。リンに同型置換するネットワーク形成元素として、特に限定されるものではないが、B,As,Si,Ge,Sb,Ti,Sn,Al,Zr等が例示される。これらリンに同型置換するネットワーク形成元素(NWF)の含有量は、メタリン酸カリウム1kgに対して、0〜0.7mmolが好ましく、0.0001〜0.4mmolがより好ましく、0.0002〜0.1mmolがさらに好ましい。
【0029】
また、カリウム以外のネットワーク修飾元素として、特に限定されるものではないが、Fe,Mg,Ni,Zn,Co,Ca,Sr,Ba,Li,Na,Rb,Cs等が例示される。これらカリウム以外のネットワーク修飾元素(NWM)の含有量は、メタリン酸カリウム1kgに対して0〜100mmolが好ましく、0.0001〜75mmolがより好ましく、0.0002〜25mmolがさらに好ましい。
【0030】
なお、前記ネットワーク形成元素又はネットワーク修飾元素の含有量は、後述の方法により、原子吸光分析装置又はICP発光分析装置を用いて測定される。
【0031】
また、本発明において、メタリン酸カリウム化合物中のカリウムとリンとのモル比(以下、K/Pモル比という)は、特にこだわらないが、1未満であることが好ましく、より好ましくは0.999〜0.94、さらに好ましくは0.99〜0.98である。K/Pモル比が1未満であると、メタリン酸カリウム中のポリリン酸アニオンが下式:
【0032】
【化2】

【0033】
に示すような架橋構造をとれるようになり、1次元の鎖状高分子から2次元の層状高分子になり、より重合度が高くなり、より高いスベリ性を発揮し易いという利点がある。なお、K/Pモル比は、後述の実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0034】
次に、メタリン酸カリウムの製造方法について説明する。メタリン酸カリウムは、前記のように、リン酸二水素カリウムを高温で脱水縮合することで得られるが、本発明では、K/P比の調整のため、リン酸二水素カリウムとリン酸を混合して、高温で脱水縮合させることによって得られる。
【0035】
リン酸二水素カリウムとリン酸の混合は、均一混合することが好ましい。メタリン酸カリウムは、800℃以上で溶融し、融液となる。従って、メタリン酸カリウムの合成温度が800℃以上である場合は、融液状態となることから、液体の拡散により原料の均一混合がなされる。しかしながら、800℃以下で合成する場合は、固相反応となることから、原料をあらかじめ均一混合してから、焼成することが、スベリ性の観点から好ましい。具体的な原料の混合事例として、リン酸二水素カリウムとリン酸が水溶性であることから、それらを均一な水溶液として混合し、噴霧乾燥する方法が好適である。このような混合例としては、リン酸等のリン源と、水酸化カリウム等のカリウム源とを好適な比率で含む水溶液として混合する方法も前記の方法と実質的に同一であり、本発明の効果が得られる。また、粉末状のリン酸二水素カリウムを混合機に投入し、高速回転させ、そこに液状のリン酸を噴霧もしくは滴下する方法によって混合しても良い。混合機としては固体混合機が好ましく、例えば、水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、リボン型混合機、円錐型スクリュー混合機、高速流動型混合機、回転円盤型混合機、気流攪拌型混合機、重力落下型混合機、攪拌型混合機などが例示される。これらのうち、高速混合により、より均一混合が可能な、高速流動型混合機が好ましい。また、リン酸二水素カリウムを水に溶解させ、リン酸と混合した後、噴霧乾燥する手法によって、よりリン酸二水素カリウムとリン酸が均一混合された混合粉末が得られる。
【0036】
また、前記リン酸二水素カリウム及びリン酸を混合した水溶液には、例えば、得られるメタリン酸カリウムのスベリ性の観点から、リンに同型置換するネットワーク形成元素及び/又はカリウム以外のネットワーク修飾元素を含んでいてもよく、それらを噴霧乾燥して原料を均一に混合後、メタリン酸カリウムを調製する方法も好ましい。
【0037】
縮合反応を行う際の焼成温度としては、浸漬後すべり性の観点から、400℃以上が好ましく、500℃以上がより好ましく、600℃以上がさらに好ましく、また、エネルギー消費の観点から、1500℃以下が好ましく、1300℃以下がより好ましく、1200℃以下がさらに好ましく、800℃以下がさらに好ましい。
【0038】
焼成により得られたメタリン酸カリウムは、その後の造粒化の工程に供されるが、溶け残りや衣類への付着を抑制できる観点から小粒径化することが好ましい。
【0039】
メタリン酸カリウムの平均粒径としては、ハンドリングの観点から0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、10μm以上がさらに好ましく、30μm以上が特に好ましい。一方、造粒性及び溶解性(溶解残/衣類への付着抑制)の観点から、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0040】
メタリン酸カリウムの平均粒径を前記範囲に調整する方法としては、不二パウダル(株)製アトマイザ、ホソカワミクロン(株)製ピンミル、ターボ工業(株)製ターボミル等の公知の粉砕機により粉砕処理する方法が挙げられる。
【0041】
メタリン酸カリウムの含有量としては本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物中、配合性の観点から10重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。一方、溶解性の観点からは、95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましい。
【0042】
本発明において、前記メタリン酸カリウムは、単独で造粒しても、バインダー物質、可溶化剤や他の成分と混合して造粒してもよい。
【0043】
2.バインダー物質
バインダー物質としては、洗濯用スベリ性改善剤造粒物を構成する成分同士を結合させる能力を持つものであれば特に限定はされないが、該造粒物の溶解性の観点から、水溶性バインダーが好ましく、保存安定性の観点から40℃以下では凝固して結合性を有する熱可塑性水溶性バインダーが特に好ましい。水溶性バインダーとしては、平均分子量2000〜30000、好ましくは5000〜15000のポリエチレングリコール、炭素数8〜18の飽和または不飽和脂肪酸等が挙げられるが、特にポリエチレングリコールが好ましい。これらは単独で使用しても混合で使用してもよい。バインダー物質の量は、メタリン酸カリウムに対して重量比で0.05倍量以上が好ましく、0.07倍量以上がより好ましく、また、10倍量以下が好ましく、4倍量以下がより好ましく、3倍量以下がさらに好ましい。
【0044】
3.可溶化剤
メタリン酸カリウムは、水に極めて難溶性であるが、可溶化剤の存在下で水溶性を呈する。ここでいう可溶化剤とは、メタリン酸カリウム中のカリウムを置換できるナトリウムイオン源及び/又はリチウムイオン源及び/又はアンモニウムイオン源を含有する化合物のことを言う。よって、メタリン酸カリウムを含有する洗濯液中にナトリウムイオン及び/又はリチウムイオン及び/又はアンモニウムイオンの供給源となりうる化合物を配合することで、メタリン酸カリウムが溶解し、洗濯水がローション状の粘稠溶液となり、その結果、被洗浄物間のスベリ性が向上し、手洗い性が向上するという利点がある。
【0045】
前記可溶化剤としては、メタリン酸カリウム中のカリウムを置換するすべてのナトリウム源及び/又はリチウムイオン源及び/又はアンモニウムイオン源を包含する。さらに有用なのはナトリウム及びリチウム及びアンモニウムの無機塩及び有機塩、例えば炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのカルボン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポリカルボン酸ポリマーナトリウム塩、ポリスルホン酸ポリマーナトリウム塩、ハロゲン化リチウム及び硫酸リチウムである。中でも、ナトリウムの無機塩又は有機塩がさらに好ましい。また、界面活性剤又は脂肪酸の塩形態、金属イオン封鎖剤等も可溶化剤となりうる。
【0046】
前記メタリン酸カリウムは、メタリン酸カリウム中のカリウムイオンがナトリウムイオン及び/又はリチウムイオン及び/又はアンモニウムイオンに置換されることにより水溶性を呈するため、良好な手洗い洗濯性を得るにはメタリン酸カリウムが溶解できる状態で用いることが求められる。メタリン酸カリウム中のカリウムの一部を置換できれば効果を発現できるが経済性の観点からは、洗濯液中に含まれるメタリン酸カリウム中のカリウムイオンを完全に置換できる量のナトリウムイオン及び/又はリチウムイオン及び/又はアンモニウムイオンを供給できる可溶化剤の量が好ましい。かかる可溶化剤の量としては、メタリン酸カリウム中のカリウムイオンと同量のナトリウムイオン及び/又はリチウムイオン及び/又はアンモニウムイオンを供給できる量を1倍当量とすると、0.5倍当量以上が好ましく、1倍当量以上がより好ましく、2倍当量以上がさらに好ましく、3倍当量以上がさらに好ましい。一方、カリウムイオンに対して、過剰のナトリウムイオン及び/又はリチウムイオン及び/又はアンモニウムイオンの存在下では、手洗い洗濯性の改善効果が小さい。この点から、可溶化剤の量は、400倍当量以下が好ましく、200倍当量以下がより好ましく、100倍当量以下がさらに好ましい。また、よりスベリ性改善効果を維持する観点から、前記の量は、30倍当量以下が好ましく、20倍当量以下がより好ましい。
【0047】
なお、洗剤組成物中に別の目的で必要量のナトリウムイオン及び/又はリチウムイオン及び/又はアンモニウムイオンが配合されている場合は、可溶化剤を別途配合する必要はない。
【0048】
造粒物におけるその他の成分としては、メタリン酸カリウムの働きを阻害することなく洗剤組成物として一般的に用いられるものなら何を用いても良く、金属封鎖剤、ケイ酸塩、リン酸塩等を適宜用いることができる。
【0049】
造粒物の造粒助剤の種類や量を適宜選択することで、更なる洗濯性を持続することが可能となる。また、造粒助剤の種類や量によっては、メタリン酸カリウムの低配合も可能となり、活性剤配合の自由度があがる。この場合、造粒物中のメタリン酸カリウム比率は、好ましくは80重量%以下であり、最も好ましくは60重量%以下であることが望ましい。よって本発明の造粒物は、造粒物におけるバインダー物質等の成分により配合量の自由度は制限されるものの、スベリ性を改善することで洗浄力を維持したまま洗濯性を向上させるという課題に対応できるメタリン酸カリウムを含有するところに特徴がある。なお、可溶化剤以外の造粒助剤とは、一般に用いられる賦形剤が挙げられる。具体的には、トクシールやパインフロー等の澱粉やその誘導体およびそれらの分解物である。
【0050】
4.造粒物の製造方法
本発明の造粒物は、特にメタリン酸カリウムが低配合量の場合には、偏在することなく、可溶化剤等との均一混合の為に造粒することが未造粒の一般メタリン酸カリウムを用いる場合より、効果発現に寄与すると考えられる。本発明の造粒物は、特に限定されないが、例えば、攪拌転動造粒法、押出造粒法、噴霧冷却法等によって製造できる。攪拌転動造粒法としては、例えば、メタリン酸カリウムと、バインダー物質及び可溶化剤(ナトリウム源及び/又はリチウム源)などのその他の成分とを混合し、昇温してバインダー物質を溶解させて造粒した後に冷却する方法や、メタリン酸カリウムと、可溶化剤(ナトリウム源及び/又はリチウム源)などのその他の成分とを攪拌混合しながら、溶融したバインダー物質を添加し造粒する方法、メタリン酸カリウムと、可溶化剤(ナトリウム源及び/又はリチウム源)などのその他の成分とを攪拌混合しながら、バインダー水溶液を添加し造粒した後、乾燥する方法等がある。押出造粒法としては、例えば、メタリン酸カリウムと、バインダー物質及び可溶化剤(ナトリウム源及び/又はリチウム源)などのその他の成分とを溶融混合し、押出造粒機を通して造粒する方法、メタリン酸カリウムと、バインダー水溶液及び可溶化剤(ナトリウム源及び/又はリチウム源)などのその他の成分とを溶融混合し、押出造粒機を通して造粒した後、乾燥する方法等がある。噴霧冷却法としては、例えば、メタリン酸カリウムと、バインダー物質及び可溶化剤(ナトリウム源及び/又はリチウム源)などのその他の成分とを溶融混合し、ノズルから低温の空間へ噴霧し造粒物を得る方法等がある。
【0051】
なお、可溶化剤を使用する場合、メタリン酸カリウムは可溶化剤の存在下で水分によって溶解、増粘するため、造粒時の水分を抑制することが好ましい。この様な場合にはバインダー物質として40℃以下では凝固して結合性を有する熱可塑性の水溶性バインダーを使用するのが好適である。かかる水溶性バインダーとしては、前述のように、平均分子量2000〜30000、好ましくは5000〜15000のポリエチレングリコール、炭素数8〜18の飽和又は不飽和脂肪酸等が挙げられ、特にポリエチレングリコールが好ましい。また、バインダー物質として水及びバインダー水溶液を使用する場合には、後工程で十分に乾燥することが好ましい。
【0052】
造粒に用いられる装置としては、攪拌転動造粒法では例えば深江工業(株)製ハイスピードミキサー、太平洋機工(株)製プロシェアミキサー等が、押出造粒機としては例えば不二パウダル(株)製のペレッターダブル、(株)ダルトン製のツインドームグラン等がある。
【0053】
かかる方法で得られる造粒物は、造粒後、外観及び収率を向上する等の目的から、必要に応じ解砕、球形化等により整粒を行なっても良い。解砕に用いる装置としては、(株)ダルトン製のパワーミル、不二パウダル(株)製のフラッシュミル、Fitzpatrick社(米国)製のフィッツミル、Comil社(加国)製のコーミル、岡田精工(株)製のスピードミル等が挙げられ、球形化装置としては不二パウダル(株)製のマルメライザー等が挙げられる。前記熱可塑性の水溶性バインダーを使用した場合、解砕機に供給する温度は常温付近まで冷却されていることが好ましく、例えば造粒物を振動冷却器に供給し、所定の温度まで冷却後に解砕すると、解砕物の解砕機内での付着が抑制されるという利点がある。
【0054】
整粒された造粒物は、微粉及び/又は粗粉を低減する為に、分級によって所望の粒度に調整しても良い。分級して粒度を調整することにより、使用時の外観を向上させることができる。分級によって生じた微粒及び/又は粗粉は例えば粉砕して造粒原料として使用、あるいは再溶融によって原料として使用し、収率を向上させることができる。
【0055】
5.造粒物の品質
本発明の造粒物の粒径としては、手洗い性改善効果の持続性の観点から、平均粒径が100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上がさらに好ましい。また、外観及び溶解性の観点から2000μm未満が好ましく、1500μm未満がより好ましく、1000μm未満がさらに好ましい。ここでいう、平均粒径とは重量50%径を示す。
【0056】
造粒物の形状は、外観及び分級性の観点からは、球状がもっとも好ましく、球形化を行なわない押出造粒物の場合には押出径と長さの比が1に近いものが好ましい。また、外観の観点からは粒度分布についてもできるだけ揃っているものの方が好ましい。一方、保存安定性の観点から、造粒物中の水分値は最終製品で10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。
【0057】
<洗剤組成物>
本発明の洗剤組成物は、前記洗濯用スベリ性改善剤造粒物、或いは前記洗濯用スベリ性改善剤造粒物と可溶化剤及び/又はその他の成分を含有する点に大きな特徴がある。かかる特徴を有するために、洗濯時に洗剤組成物が溶解した洗濯液がローション状の粘稠溶液となり、手洗い洗濯時でも、被洗浄物間のスベリ性が改善されることによって、軽い力で洗濯できるなどの手洗い性を改善し、さらには手洗い洗濯後の乾燥後の皮膚が柔らかく、滑らかになったと感じられるハンドケア効果や衣類ケア効果が発現される。
【0058】
洗剤組成物は、粉末、顆粒、液体、又はペースト状等のいかなる剤型でもよく、又二次加工により凝集体、錠剤等に成形されていてもよいが、スベリ性を衣類に速やかにまんべんなく発現させるために、粉末若しくは顆粒の形態であることが好ましい。特に、洗濯用粉末洗剤としての利用が好ましい。
【0059】
洗剤組成物中における前記洗濯用スベリ性改善剤造粒物の含有量としては、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましい。
【0060】
洗剤組成物中におけるメタリン酸カリウムの含有量は、被洗浄物間のスベリ性を向上させるために洗剤組成物中に0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、3重量%以上がさらに好ましく、5重量%以上がさらに好ましく、7重量%以上がさらに好ましく、10重量%以上が特に好ましい。また、スベリ性改善効果は高いものの洗浄後の被洗浄物の取り扱い性が低下する為、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。
【0061】
また、良好な手洗い性を得るという観点から、洗剤組成物を溶解して洗濯液を調製した場合のメタリン酸カリウム水中濃度が15mg/L以上が好ましく、30mg/L以上がより好ましく、60mg/L以上がさらに好ましい。また、洗浄後の被洗浄物の取り扱い性の観点から3000mg/L以下が好ましく、1500mg/L以下がより好ましく、1000mg/L以下がさらに好ましい。さらには、浴比(水と衣類の重量の比率:水重量/衣類重量)の低下、洗濯液硬度の増加、洗剤組成物中の非イオン界面活性剤の増量、及び全界面活性剤成分の洗剤組成物に対する重量比率の上昇に応じて、前記メタリン酸カリウム水中濃度を増加させることが好ましい。
【0062】
可溶化剤としては、前記造粒物に使用できるものと同様のものであればよい。また、洗剤組成物中における可溶化剤の量としては、メタリン酸カリウム中のカリウムイオンに対して、0.5倍当量以上が好ましく、1倍当量以上がより好ましく、2倍当量以上がさらに好ましく、3倍当量以上が特に好ましく、また、スベリ性改善効果を維持する観点から、30倍当量以下が好ましく、20倍当量以下がより好ましい。なお、可溶化剤は、洗濯用スベリ性改善剤造粒物中に含有されていれば、必ずしも洗剤組成物中に含有されている必要はない。
【0063】
本発明の洗剤組成物は、界面活性剤及び/又はビルダーをさらに含有することができる。
【0064】
界面活性剤としては、一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤が挙げられる。その例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキシド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、脂肪酸グリセリンモノエステル等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0065】
中でも、スベリ性効果を高める観点からは、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩が好ましく、さらにアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0066】
界面活性剤の含有量は、洗剤組成物中において洗浄性能の観点から、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、12重量%以上がさらに好ましく、15重量%以上がさらに好ましく、17重量%以上がさらに好ましい。また、粉末物性の観点から、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、26重量%以下がさらに好ましい。
【0067】
本発明の洗剤組成物には、さらにベタイン型両性界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、石鹸、陽イオン界面活性剤等の界面活性剤も適宜配合することができる。
【0068】
ビルダーとしては、金属イオン封鎖剤、アルカリ剤、再汚染防止剤等が挙げられる。
【0069】
中でも、洗濯水中の硬度成分量の上昇に伴い、スベリ性改善効果が低下する特徴があるため、ビルダーとして、金属イオン封鎖剤を洗剤組成物に配合し、洗濯水中の硬度成分を捕捉することは、メタリン酸カリウムの性能発現に非常に効果的である。さらにカルシウムイオン捕捉能100mgCaCO/g以上である金属イオン封鎖剤がより効果的である。かかる金属イオン封鎖剤としては、ゼオライト、結晶性ケイ酸塩などのイオン交換体、ポリアクリル酸塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体(塩)等のポリマー、トリポリリン酸ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩、クエン酸塩等のキレート剤等の水溶性有機物質が挙げられる。
【0070】
なお、メタリン酸カリウム、炭酸ナトリウム、非晶質ケイ酸ナトリウムは金属イオン封鎖剤に含まない。
【0071】
アルカリ剤としては、炭酸塩やケイ酸塩が挙げられる。スベリ性効果を高める観点からは、非晶質ケイ酸ナトリウムが好ましい。
【0072】
再汚染防止剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0073】
ビルダーの配合量としては、手洗い性向上の観点から、洗剤組成物中、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上がさらに好ましく、また、配合のバランスの観点から、60重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下が特に好ましい。
【0074】
また、本発明の洗剤組成物には、ケイ酸塩及び/又はリン酸塩をさらに配合することでスベリ性改善効果がより向上できる利点がある。
【0075】
ケイ酸塩としては、非晶質、結晶性のものが知られており、いずれのものも用いることができる。ここでSiO/MOモル比(Mはアルカリ金属)として1以上が好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上、また、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。ここでさらに好ましくは非晶質ケイ酸ナトリウムであり、JIS 1号ケイ酸ナトリウムやJIS 2号ケイ酸ナトリウムを好適に用いることができる。その配合量としては、手洗い洗濯性の観点から、洗剤組成物中、3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、7重量%以上がさらに好ましい。また、スベリ性改善効果を高く維持しながら、洗濯時の溶け残りを抑制する観点から、前記配合量は、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。
【0076】
リン酸塩(メタリン酸カリウムを除く)としては、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられるがトリポリリン酸ナトリウムが好ましく、その配合量としては、手洗い性の観点から、洗剤組成物中、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。また、スベリ性改善効果と洗浄力を両立する観点から、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0077】
本発明においては、前記成分の中でも、金属イオン封鎖剤、ケイ酸塩、リン酸塩を上記の量で配合することで、メタリン酸カリウムの配合量を低減させても手洗い洗濯性が良好に保たれるメリットがある。
【0078】
本発明の洗剤組成物には、酵素、香料、蛍光染料、色素等も適宜配合することができる。
【0079】
前記のような構成を有する本発明の洗剤組成物は、前記各成分を公知の方法で適宜混合することにより製造することができる。かかる洗剤組成物の例としては、例えば特許庁公報10(1998)−25(7159)周知慣用技術集(衣料用粉末洗剤)に記載の組成及び製造方法にて得られる洗剤組成物等が挙げられる。
【0080】
なお、本発明の洗剤組成物中に含有されるメタリン酸カリウムは、前記のように、水中において、可溶化剤の存在下で水溶性を呈するようになるため、製造プロセス、又は保存時における水分を低減させることが好ましい。例えば、噴霧乾燥法にて洗剤組成物を製造する場合には、噴霧乾燥工程後の造粒工程、表面改質工程及びアフターブレンド工程等でスベリ性改善剤造粒物を添加することが望ましい。
【0081】
また、手洗い洗濯時にスベリ性改善剤造粒物を除く成分からなる洗剤組成物と、スベリ性改善剤造粒物とを別々に添加して洗濯液を調製して用いてもよい。スベリ性改善剤造粒物は、溶解時の継粉発生を抑制するため、好適に使用することができる。
【0082】
以上のような構成を有する本発明の洗剤組成物を用いることにより、メタリン酸カリウムの溶け残りや衣類への付着を引き起こすことなく、漬け置きしない場合、漬け置きした場合のいずれにおいても、被洗浄物間の良好なスベリ性が維持され、洗浄性を阻害させることなく手洗い洗濯し易くすし、さらにハンドケアをもなしうるという効果が発現される。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
<粘度測定方法>
水50mLにメタリン酸カリウム2gを添加し、1分間攪拌し、そこに、トリポリリン酸ソーダ(下関三井化学(株)製)4gを水50mLに溶解した溶液を加え、3時間攪拌し、B型粘度計で25℃での粘度を測定する。
【0085】
<Na含有量の測定>
試料0.1gを水に溶解させ、HCl(1:1(容量比))水溶液4mLを加え、全量を50mLにする。この溶液を用い、試料中のNa量を原子吸光分析装置(VARIAN社製原子吸光装置、Spectra AA220)で測定する。
【0086】
<As含有量の測定>
試料5gを水に溶解させ、HCl(1:1(容量比))水溶液4mLを加え、全量を50mLにする。この溶液を用い、試料中のAs量をICP発光分析装置(HORIBA/JOBIN YVON社製、JY238ULTRAACE)で測定する。
【0087】
<K/Pモル比の測定方法>
白金ルツボに試料0.1gを採取し、更にLiを5g、及び剥離剤(LiCO:LiBr:LiNO=5:1:1(重量比))を0.5g加え、ビードサンプラ(東京科学(株)製、NT−2100)により、1230℃で溶融し、ガラスビードを作製する。
【0088】
蛍光X線装置((株)リガク製、ZSX100e)によりガラスビード中のK及びPを以下の条件で測定する(XRF強度)。
X線源 :Rh管球
電圧電流:50kV、50mA
分光結晶:検出器 角度
・K:LiF SC(シンチレーションカウンタ) 136.68deg
・P:Ge PC(プロポーショナルカウンタ) 141.19deg
【0089】
K/Pモル比の計算は、KHPO(シグマアルドリッチジャパン株式会社製、試薬特級)を試料と同様に測定し、K/Pモル比1.00の基準として、試料のK/Pモル比を以下の計算により算出する。
【0090】
【数1】

【0091】
<メタリン酸カリウムの平均粒径の測定方法>
レーザー散乱粒度分布計(堀場製作所製、LA−920)を用い、屈折率1.2、超音波強度7、超音波照射時間1分、攪拌速度4の条件で、25℃のイオン交換水を分散媒として試料(メタリン酸カリウム)を測定し、体積基準としての平均粒径(μm)を求める。ここでいう平均粒径とはメジアン径を指す。
【0092】
<造粒物の平均粒径の測定方法>
平均粒径(Dp)は、重量50%径を指し、下記の方法により測定・算出される。即ち、試料となる造粒物100gをJIS Z8801−1の金属製網ふるい(目開き:2000μm、1410μm、1000μm、710μm、500μm、355μm、250μm、180μm、125μm)と受け皿、およびロータップシェーカーとからなる分級装置を用いて、3分間かけて分級操作を行った後、微粒から粗粒に向けて、順番に重量頻度を積算し、積算の重量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きをaμmとし、またaμmよりも一段大きい篩の目開きをbμmとした時、受け皿からaμmの篩までの重量頻度の積算をc%、またaμmの篩上の重量頻度をd%とした場合、下記(式)に従って求めることができる。
Dp=10 (式)
ただし、A=〔50−(c−d/(log b−log a)×log b)〕/〔d/(log b−log a)〕
なお、対象試料の粒度によっては、その粒度に相応の目開きのふるいを加えて測定することが必要となる。
【0093】
メタリン酸カリウム調製例1
表1に示す量のNa、Asを含有する各々のKHPO2880gを、イオン交換水36リットルに溶解させた。次いで、K/Pモル比が表1に示す値になるよう、HPO(和光純薬工業株式会社製、試薬特級、純度85%)を加えることで調整し、さらに撹拌した。本溶液を、噴霧乾燥装置(東京理化器械株式会社製、スプレードライヤーSD−1000型)で噴霧乾燥し、粉末を得た。得られた粉末をアルミナ製るつぼに移し取り、700℃、3時間焼成し、表1に示す1−1〜1−5のメタリン酸カリウムを得た。
【0094】
【表1】

【0095】
なお、得られたメタリン酸カリウムは、ハンマーで粗粉砕後、アトマイザ(不二パウダル(株)製)を用い、粉砕時のハンマー回転数、原料フィードスピード、スクリーン開孔率、スクリーン開孔径を変化させることで、所望の粒径になるよう粉砕し、各々の平均粒径を測定した。
【0096】
ベース洗剤組成物調製例1
水370kg、50重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液200kg、40重量%の2号シリケート水溶液50kg、炭酸ナトリウム100kg、硫酸ナトリウム147.5kg、ポリエチレングリコール5kg、CBS型蛍光染料2.5kg、ゼオライト125kgを混合して均質なスラリーを調製した後、スラリーを噴霧乾燥し、ベース洗剤組成物を得た。
【0097】
実施例1〜3及び比較例1〜2
表2に示すメタリン酸カリウムの粉砕物0.4kgと、ラウリル硫酸ナトリウム(花王(株)製、エマール10パウダー)0.086kgを、80℃に調整したハイスピードミキサー(三井三池(株)製、容量2L、ジャケット付)に投入し、主軸回転数3600r/mの条件で、混合物温度が70℃になるまで撹拌した。その後、70℃に調整されたポリエチレングリコール(花王(株)製、KPEG6000)0.086kgを添加し、更に3分間撹拌を継続した。次いで、得られた混合物を押出造粒機((株)ダルトン製、ドームグラン)に仕込み、開孔径φ0.5mmの条件で押し出し、圧密化を行った。得られた押出物は、冷却後、更に整粒機((株)ダルトン製、パワーミル、スクリーンφ1.0mm)を用いて解砕し、分級を加えることによって、平均粒径を700μm以下−355μm以上に調整した。
【0098】
得られた押出造粒物と前記ベース洗剤組成物とを、各々4.3重量%、95.7重量%の割合で均一に混合し、洗剤組成物を得た。
【0099】
比較例3〜4
ベース洗剤組成物との混合において、押出造粒物ではなくメタリン酸カリウムの粉砕品を用い、粉砕品と前記ベース洗剤組成物とを、各々3.0重量%、97.0重量%の割合で均一に混合した以外は、実施例1と同様にして洗剤組成物を得た。
【0100】
実施例4〜5
造粒物の調製において、表3に示すパルミチン酸ナトリウム(粉末品)及びパインフロー(松谷化学工業(株)製)を原料として追加した以外は、実施例1と同様にして押出造粒物を得た。得られた押出造粒物と前記ベース洗剤組成物とを、各々6重量%、94重量%の割合で均一に混合し、洗剤組成物を得た。
【0101】
本発明においては、次に示す手洗い洗濯評価方法に準じた洗濯条件で手洗い洗濯を行うことにより特に好ましいスベリ性改善効果を評価することができる。
【0102】
試験例1(手洗い洗濯評価)
25℃に調整した89.3mgCaCO/リットルに相当する2リットルの硬水(Ca/Mg=7/3(モル比))を直径30cm、深さ13cm、容量8.2Lのポリプロピレン製洗面器(YAZAKI社製)の中に満たし、得られた洗剤組成物8.48gを秤量し水中に投入した後、水が洗面器より飛散しない程度に手による攪拌を続けた。攪拌開始から30秒後に綿100%のTシャツ(グンゼ製白、Lサイズ)を洗面器の中の洗浄水にTシャツ全体が十分に濡れるように浸した。浸漬を開始して1分後及び15分後に、以下の洗濯手順(1)〜(3)を行ない、下記の評価基準に基づいてスベリ性を評価した。また、15分浸漬後に、引き続き以下の洗濯手順(1)と(2)を15分間継続して反復し、その際の擦り易さについても、同様に評価した。各洗剤組成物について、6人のパネラー評価結果の平均値を算出した。結果を表2及び3に示す。なお、スベリ性の評価基準のランク1とは、上記の調整硬水のみを用いて本評価を行った場合に、Tシャツのしわがスベリ性を阻害し、また擦り合わせる部分に泡が無いため非常に擦りにくく、スベリ性が悪い状態のことを示す。因みに、前記ベース洗剤組成物のみ及びメタリン酸カリウム無配合の日本国内の市販洗剤のみでは、同様の評価を行うとスベリ性ランクは1である。
【0103】
〔洗濯手順〕
(1) Tシャツの後背部よりTシャツの胸部を両手で握り、洗浄水から出した状態でTシャツの胸部どうしを擦り合わせる
(2) (1)を3回から5回反復する毎に、一旦洗浄水に擦り合わせる部分を浸す
(3) (1)と(2)を連続して5回反復し、擦り合わせる際の擦り易さをスベリ性として判定する
【0104】
〔スベリ性の評価基準〕
ランク1:スベリ性が非常に低く、きしみ感があり、手洗い洗濯が非常にしにくい。
ランク2:スベリ性が低く、きしみ感があり、手洗い洗濯がしにくい。
ランク3:スベリ性が中程度できしみ感がなく手洗い洗濯できる。
ランク4:スベリ性が高く、きしみ感がなく、手洗い洗濯がしやすい。
ランク5:スベリ性が非常に高く、きしみ感がなく、手洗い洗濯が非常にし易い。
【0105】
試験例2(溶解残評価)
以下の条件で、洗濯機洗濯を行った。
・洗濯機:松下電器NA−F42Y5
・洗濯衣料:黒布〔混紡(ポリエステル/綿=65/35(重量比))〕20枚
・洗剤:40g
・洗濯コース:中水位(水量表示40リットル)
洗濯9分→濯ぎ2回→脱水3分→乾燥(20℃、40%RHで24時間放置)
衣料乾燥後、黒布20枚のうち10枚を任意に選択した。その際の黒布への水不溶物付着/残留性を以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表2及び3に示す。
【0106】
〔付着/残留性の評価〕
○:問題なし( 付着物なし)
△:若干付着あり
×:付着物あり
××:付着残留物が多量にある
【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
以上の結果から、粘度が200mPa・s以上であるメタリン酸カリウムの造粒物を含有する実施例1〜3の洗剤組成物は、良好なスベリ性を維持し、残留/付着性も問題ないことが分かる。一方、粘度が200mPa・s未満であるメタリン酸カリウムの造粒物を含有する比較例1〜2の洗剤組成物は、残留/付着性は問題ないが、スベリ性が浸漬1分後から劣り、また、メタリン酸カリウムの造粒物ではなく、粉砕品を用いた比較例3〜4の洗剤組成物は、浸漬1分後のスベリ性は良好であるが、経時的に悪くなることが分かる。さらに、メタリン酸カリウムの配合量を少なくした実施例4〜5の洗剤組成物は、良好なスベリ性を維持し、残留/付着性も問題のないものであることから、助剤を適切に選択すれば、粘度が200mPa・s以上であるメタリン酸カリウムの造粒物を用いて、メタリン酸カリウムの配合量を少なくした洗剤組成物の調製が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の洗濯用スベリ性改善剤造粒物は、衣類等の手洗い洗濯、中でも、長時間漬け置きする手洗い洗濯においても好適に使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件で測定した水溶液の粘度が200mPa・s以上のメタリン酸カリウムを含有してなる洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
〔水50mLにメタリン酸カリウム2gを添加し、1分間攪拌し、そこに、トリポリリン酸ソーダ(下関三井化学(株)製)4gを水50mLに溶解した溶液を加え、3時間攪拌し、B型粘度計で25℃での粘度を測定する。〕
【請求項2】
メタリン酸カリウム1kgに対して、リンに同型置換するネットワーク形成元素の含有量が0〜0.7mmol、カリウム以外のネットワーク修飾元素の含有量が0〜100mmolである、請求項1記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
【請求項3】
メタリン酸カリウムが、リン酸二水素カリウム及びリン酸の水溶液、あるいは、リン酸二水素カリウム、リン酸、リンに同型置換するネットワーク形成元素及び/又はカリウム以外のネットワーク修飾元素を含む水溶液を噴霧乾燥し、焼成することにより得られるものである、請求項1又は2記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
【請求項4】
メタリン酸カリウムの平均粒径が0.5μm以上200μm以下である請求項1〜3いずれか記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
【請求項5】
さらにバインダー物質を含有する請求項1〜4いずれか記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
【請求項6】
バインダー物質がポリエチレングリコールである請求項5記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
【請求項7】
さらに可溶化剤を含有する1〜6いずれか記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
【請求項8】
手洗い洗濯用である請求項1〜7いずれか記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
【請求項9】
平均粒径が100μm以上2000μm未満である請求項1〜8いずれか記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物を含有する洗剤組成物。
【請求項11】
請求項1〜9いずれか記載の洗濯用スベリ性改善剤造粒物及び可溶化剤を含有する洗剤組成物。
【請求項12】
さらに界面活性剤及び/又はビルダーを含有する請求項10又は11記載の洗剤組成物。


【公開番号】特開2007−308826(P2007−308826A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138304(P2006−138304)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】