説明

洗濯用前処理剤組成物、及び当該洗濯用前処理剤組成物を用いた洗濯方法

【課題】過酸化水素等の漂白成分を含有せず、水性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮する洗濯用前処理剤組成物、及び当該洗濯用前処理剤組成物を用いた洗濯方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ホウ酸及び/又はその塩(A)、エチレンオキシドの平均付加モル数が3〜200のノニオン性化合物(B)、両性界面活性剤(C)及び水を含有し、pH7〜11であることを特徴とする洗濯用前処理剤組成物である。また、本発明は、当該洗濯用前処理剤組成物を、衣料のしみ汚れ部位に塗布し、当該塗布後、室温にて2〜12時間放置した後で洗濯に供することを特徴とする洗濯方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯用前処理剤組成物、及び当該洗濯用前処理剤組成物を用いた洗濯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
清潔に対する意識は年々高まる傾向にあり、その中、漂白剤組成物が容器に収容されてなる液体漂白剤製品は、広く消費者に受け入れられるようになってきており、その消費量は年々増加している。なかでも、過酸化水素を含有する衣料用酸素系漂白剤製品は、白物の衣料だけではなく、色柄物を含む幅広い衣料に使用できることから、洗濯習慣として毎日の洗濯に使用している消費者も少なくない。
【0003】
ところで、衣料の汚れの中でも、たとえば紅茶などのポリフェノール系等の水溶性のしみ汚れ(水性しみ汚れ)は、洗濯において、非常に落ちにくい汚れの一種である。
これに対して、該水性しみ汚れの洗浄用途に対応した洗浄剤組成物や漂白剤組成物が、従来、提案されている。また、かかる洗浄剤組成物や漂白剤組成物が、特定形状の塗布容器に充填され、より使用性の向上が図られた製品として提案されているものもある。
そして、たとえば、色柄物の衣料に付着した水性しみ汚れを洗浄するには、過酸化水素等の漂白成分を含有する漂白剤組成物を、衣料の水性しみ汚れ部位に直接塗布した後で洗濯に供する、或いは、該漂白剤組成物の水溶液に浸漬した後で洗濯に供する等の洗濯方法が効果的である。
【0004】
これに関し、特許文献1及び2においては、過酸化水素と界面活性剤とその他の成分とを含有し、過酸化水素の安定化のために弱酸性ないし酸性に調整された液体組成物を、衣料の汚れ部位に直接塗布した後で洗濯に供する、という液体漂白剤組成物及び洗濯方法が提案されている。
しかしながら、過酸化水素を含有する漂白剤組成物を使用する場合、該漂白剤組成物を衣料の汚れ部位に直接塗布し、当該塗布後、長時間放置することにより、衣料に用いられている染料が過酸化水素の影響により変退色してしまうという強い懸念がある。
これに対し、該漂白剤組成物の塗布後の放置時間を短くした場合、汚れに対して充分な洗浄力が発揮されない問題がある。
【0005】
一方、過酸化水素等の漂白成分を含有しない、所謂「ノンブリーチ系」の洗浄剤組成物として、たとえば界面活性剤と、ホウ素化合物などの添加剤とを併用することにより、しみ汚れを落とす洗浄剤組成物が種々提案されている(たとえば、特許文献3〜5参照)。
特許文献3においては、ホウ素化合物を含有する塗布洗浄剤組成物であって、該塗布洗浄剤組成物のpHが6.8以下の中性乃至弱酸性であり、且つ該塗布洗浄剤組成物の0.1質量%水希釈液のpHが7以上である酸性塗布洗浄剤組成物が提案されている。
また、特許文献4においては、ホウ素化合物と、界面活性剤と、酵素と、特定のモノアルキルグリセリルエーテルとを含有する弱アルカリ性の液体洗剤が提案されている。
また、特許文献5においては、特定の界面活性剤と、アルカリ剤と、カルシウム捕捉能を有する特定のキレート剤とを含有する弱アルカリ性組成物を、泡吐出容器に充填した洗濯前処理用物品が提案されている。
【特許文献1】特開2006−16425号公報
【特許文献2】特開2006−143907号公報
【特許文献3】特開2000−109893号公報
【特許文献4】特開2001−40395号公報
【特許文献5】特許第3637005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献3に記載の酸性塗布洗浄剤組成物は、カーボン由来の黒ずみ汚れに対して優れた洗浄力を有するものである。
また、特許文献4に記載の液体洗剤は、襟や袖口汚れ等の皮脂汚れ(油性汚れ)に対して高い洗浄効果を有するものである。
また、特許文献5に記載の洗濯前処理用物品は、特に、襟垢汚れ、袖汚れ等の人由来の汚れ(油性汚れ)に対して優れた洗浄性能が得られるものである。
しかしながら、上述のように、特許文献3〜5に記載のものは、水性しみ汚れを対象としたものではなく、水性しみ汚れに対する洗浄力が充分ではない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、過酸化水素等の漂白成分を含有せず、水性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮する洗濯用前処理剤組成物、及び当該洗濯用前処理剤組成物を用いた洗濯方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明の洗濯用前処理剤組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を含有し、pH7〜11であることを特徴とする。
(A)ホウ酸及び/又はその塩、
(B)エチレンオキシドの平均付加モル数が3〜200のノニオン性化合物、
(C)両性界面活性剤。
【0009】
また、本発明の洗濯用前処理剤組成物において、前記(B)成分は、Daviesの式で表されるHLBが4〜6.4であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むことが好ましい。
また、本発明の洗濯用前処理剤組成物においては、下記一般式(1)で表される化合物であって、Daviesの式で表されるHLBが6.5〜8.5である水溶性溶剤(D)をさらに含有することが好ましい。
【0010】
【化1】

[式中、Rは炭素数3〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、フェニル基のいずれかを示す。nは平均付加モル数であり、0以上3未満の数である。]
【0011】
また、本発明の洗濯方法は、上記本発明の洗濯用前処理剤組成物を、衣料のしみ汚れ部位に塗布し、当該塗布後、室温にて2〜12時間放置した後で洗濯に供することを特徴とする。
【0012】
本特許請求の範囲及び本明細書において、「洗濯用前処理剤組成物」とは、当該洗濯用前処理剤組成物を、直接、衣料のしみ汚れ部位に塗布して使用するものを意味する。
前記「衣料のしみ汚れ部位に塗布して使用する」とは、当該洗濯用前処理剤組成物の原液をそのまま衣料のしみ汚れ部位に塗布する、または該原液に衣料(衣料のしみ汚れ部位)を浸漬する使用方法を示す。ただし、当該洗濯用前処理剤組成物を希釈した水溶液を衣料のしみ汚れ部位に塗布する、または当該洗濯用前処理剤組成物を希釈した水溶液に衣料(衣料のしみ汚れ部位)を浸漬する等の使用方法も含むものとする。
【0013】
「Daviesの式で表されるHLB」とは、界面活性剤分子を原子団(あるいは官能基)に分割して考え、それぞれの原子団の種類に特有の数値(基数)を加え合わせて計算される親水親油バランスを示し、次式により求められる値を示す。
HLB=Σ(親水基の基数)−Σ(疎水基の基数)+7
以下に、各原子団に特有の基数を例示する(原子団:基数)。
[親水基の例]
−OH:1.9,−O−:1.3,−CHCHO−:0.33,−COOH:2.1
[疎水基の例]
−CH−,CH−及び=CH−:−0.475
−CHCHCHO−:−0.15
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、過酸化水素等の漂白成分を含有せず、水性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮する洗濯用前処理剤組成物、及び当該洗濯用前処理剤組成物を用いた洗濯方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
≪洗濯用前処理剤組成物≫
本発明の洗濯用前処理剤組成物は、ホウ酸及び/又はその塩(A)(以下、(A)成分という。)、エチレンオキシドの平均付加モル数が3〜200のノニオン性化合物(B)(以下、(B)成分という。)、両性界面活性剤(C)(以下、(C)成分という。)及び水を含有し、pH7〜11である。
また、本発明の洗濯用前処理剤組成物は、好ましくは、特定の水溶性溶剤(D)(以下、(D)成分という。)をさらに含有する。
【0016】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、ホウ酸及び/又はその塩である。
本発明の洗濯用前処理剤組成物においては、当該(A)成分と、後述する(B)成分及び(C)成分とを含有することにより、水性しみ汚れの除去効果が向上する。
(A)成分としては、たとえばオルトホウ酸(HBO;以下、単に「ホウ酸」ということがある。);ホウ酸イオンBO3−およびBO5−のつくる塩、あるいはそれらが縮合した陰イオンの塩(縮合ホウ酸塩)等が挙げられる。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;アンモニウム塩などが挙げられる。なかでも、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
上記(A)成分のなかで好適なものとしては、オルトホウ酸(HBO)、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸アンモニウム等が挙げられ、オルトホウ酸(HBO)、四ホウ酸ナトリウムがより好ましい。
前記四ホウ酸ナトリウムとしては、たとえば四ホウ酸ナトリウム・5水塩、四ホウ酸ナトリウム・10水塩(ホウ砂)等の含水塩が好ましく挙げられる。
(A)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
(A)成分の含有量は、特に制限されるものではなく、洗濯用前処理剤組成物中、0.2〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。該範囲の下限値以上であることにより、水性しみ汚れの除去効果が向上する。一方、該範囲の上限値以下であることにより、洗濯用前処理剤組成物の低温における保存安定性が向上する。
なお、たとえば(A)成分として四ホウ酸ナトリウムの含水塩を用いた場合の含有量は、四ホウ酸ナトリウム(Na)換算で算出した濃度を示す(すなわち、Na量を示す)。
【0017】
<(B)成分>
本発明において、(B)成分は、エチレンオキシドの平均付加モル数が3〜200のノニオン性化合物である。
本発明の洗濯用前処理剤組成物においては、当該(B)成分と、前記(A)成分及び後述する(C)成分とを含有することにより、水性しみ汚れの除去効果が向上する。
また、特定の(B)成分を選択することにより、水性しみ汚れの除去効果とともに、油性しみ汚れの除去効果も向上する。
【0018】
(B)成分としては、エチレンオキシドの平均付加モル数が3〜200の、たとえばポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
かかる(B)成分において、エチレンオキシドの平均付加モル数は3〜200である。該平均付加モル数の下限値は4以上が好ましく、5以上がより好ましい。一方、該平均付加モル数の上限値は150以下が好ましく、100以下がより好ましい。
該平均付加モル数が3以上であることにより、水性しみ汚れの除去効果が向上する。一方、該平均付加モル数が200以下であることにより、洗濯用前処理剤組成物中での(B)成分の析出などが抑制され、保存安定性が向上する。
なお、(B)成分において、ポリエチレングリコールの場合、「平均付加モル数」の代わりに「平均重合モル数」ということがある。
【0019】
上記(B)成分のなかでも、水性しみ汚れの除去効果とともに、油性しみ汚れの除去効果も向上することから、エチレンオキシドの平均付加モル数が3〜200の、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が好ましく、そのなかでも、Daviesの式で表されるHLBが4〜6.4であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが特に好ましい。該HLBが4以上であることにより水性しみ汚れの除去効果が向上し、一方、該HLBが6.4以下であることにより油性しみ汚れの除去効果が向上し、両方のしみ汚れの除去効果がバランスよく得られやすくなる。
かかるポリオキシエチレンアルキルエーテルとして具体的には、たとえば炭素数12〜15の高級アルコールに、平均3〜12モルのエチレンオキシド(以下、「EO」と表すことがある。)を付加したポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく挙げられ、そのなかでもEOの平均付加モル数が5〜8のポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましく挙げられる。
【0020】
(B)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
(B)成分の含有量は、特に制限されるものではなく、洗濯用前処理剤組成物中、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。該範囲の下限値以上であることにより、水性しみ汚れの除去効果が向上する。また、商品価値上、充分なレベルの水性しみ汚れの除去効果が得られやすくなる。特に、かかる(B)成分が前記HLBが4〜6.4のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む場合、商品価値上、充分なレベルの油性しみ汚れの除去効果が得られやすくなる。一方、該範囲の上限値以下であることにより、洗濯用前処理剤組成物を、たとえばトリガースプレー容器に収容して使用する場合、スプレー塗布時に良好な起泡性(泡立ち)が得られやすくなる。
【0021】
<(C)成分>
本発明において、(C)成分は、両性界面活性剤である。
本発明の洗濯用前処理剤組成物においては、当該(C)成分と、前記(A)成分及び(B)成分とを含有することにより、水性しみ汚れの除去効果が向上する。
また、当該(C)成分を含有することにより、洗濯用前処理剤組成物を、たとえばトリガースプレー容器等の泡形成機構を有する容器に収容して衣料などの被洗物にスプレー塗布する際、良好な起泡性(泡立ち)が得られ、洗濯用前処理剤組成物を被洗物のしみ汚れ部位にしっかり接触させることができる。その結果、使用性や洗浄力が向上する。
【0022】
(C)成分としては、たとえばベタイン、N−アルキルもしくはアルケニルアミノ酸またはその塩、アミドアミノ酸またはその塩等が挙げられる。なかでも、ベタインが好ましい。
(C)成分の好適なものとして具体的には、たとえば下記一般式(2)で表される酢酸ベタイン型もしくはスルホベタイン型の両性界面活性剤が挙げられる。
【0023】
【化2】

[式中、Rは炭素数10〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり;Rは炭素数1〜5のアルキレン基であり;R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基であり;Rはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基であり;mは0または1であり;AはCONH、COO、NHCO、OCO及びOから選ばれる連結基であり;BはCOO、SO及びOSOから選ばれる親水基である。Mは対イオンを示す。]
【0024】
前記式(2)中、Rは、炭素数10〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、または炭素数10〜18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基である。
において、炭素数は10〜18であり、好ましくは、炭素数12〜15である。Rとしては、なかでも炭素数12〜15の直鎖状のアルキル基が好ましい。
は、炭素数1〜5のアルキレン基であり、好ましくは、炭素数2または3のアルキレン基であり、具体的にはエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。
、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。
において、アルキレン基は、好ましくは、炭素数1〜3のアルキレン基であり、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基であることが好ましい。
において、ヒドロキシ基の数は、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1である。ヒドロキシ基の結合位置は、いずれの置換位置でもよい。たとえば、Rのアルキレン基がプロピレン基の場合、Rとしては−CHCH(OH)CH−が好ましい。
mは0または1であり、水性しみ汚れの除去効果が向上することから、好ましくは1である。
Aは、CONH、COO、NHCO、OCO及びOから選ばれる連結基であり、水性しみ汚れの除去効果が向上することから、好ましくはCONHである。
Bは、COO、SO及びOSOから選ばれる親水基であり、スプレー時の起泡性などが良好なことから、好ましくはCOOである。
Mは、対イオンを示す。かかる対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンが好ましい。
【0025】
上記のなかでも、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタインが特に好ましい。
【0026】
(C)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
(C)成分の含有量は、特に制限されるものではなく、洗濯用前処理剤組成物中、0.2〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。該範囲の下限値以上であることにより、水性しみ汚れの除去効果が向上する。また、洗濯用前処理剤組成物を、たとえばトリガースプレー容器に収容して使用する場合、スプレー時に良好な起泡性(泡立ち)が得られやすくなる。一方、該範囲の上限値以下であることにより、他の成分とのバランスをとることができる。また、原料コストが抑えられて経済的に有利である。
【0027】
<水>
本発明の洗濯用前処理剤組成物は、水を含有する。
使用される水としては、たとえば水道水、イオン交換水、純水、蒸留水などのいずれも用いることができる。なかでも、水中に微量に存在するカルシウム、マグネシウムなどの硬度成分や鉄などの重金属を除去した水が好ましく、コスト面も有利なことからイオン交換水が最も好ましい。
水の含有量は、特に制限されるものではなく、洗濯用前処理剤組成物中、60〜98.6質量%であることが好ましく、80〜96質量%であることがより好ましい。
【0028】
<(D)成分>
本発明において、(D)成分は、前記一般式(1)で表される化合物であって、Daviesの式で表されるHLBが6.5〜8.5である水溶性溶剤である。
本発明の洗濯用前処理剤組成物においては、当該(D)成分をさらに含有することが好ましい。当該(D)成分をさらに含有することにより、洗濯用前処理剤組成物を、たとえばトリガースプレー容器に収容して使用する場合、スプレー時の起泡性(泡立ち)がより向上する。
特に、前記(B)成分が、Daviesの式で表されるHLBが4〜6.4のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む場合、スプレー時の起泡性(泡立ち)がより良好となることから、該(D)成分をさらに含有することが好ましい。
【0029】
前記式(1)中、Rは、炭素数3〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、フェニル基のいずれかを示す。
Rのアルキル基において、炭素数は3〜6であり、好ましくは、炭素数は3〜4であり、より好ましくは、炭素数は4であり、具体的にはプロピル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられる。
Rのヒドロキシアルキル基において、アルキル基の炭素数は3〜6であり、好ましくは、炭素数6である。ヒドロキシ基の数は、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1である。
ヒドロキシ基の結合位置は、いずれの置換位置でもよい。たとえば、炭素数6の場合、Rとしては(CHC(OH)CH(CH)CH−が好ましい。
nは、0以上3未満の数である。
【0030】
また、かかる(D)成分において、Daviesの式で表されるHLBは6.5〜8.5であり、該HLBは7.5〜8であることが好ましい。該HLBがこの範囲内にあると、スプレー時の起泡性(泡立ち)が良好となる。
【0031】
(D)成分の好適なものとしては、たとえばイソプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ヘキシレングリコール等が挙げられ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ヘキシレングリコールがより好ましい。
【0032】
(D)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
(D)成分の含有量は、特に制限されるものではなく、洗濯用前処理剤組成物中、0.2〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。該範囲の下限値以上であることにより、洗濯用前処理剤組成物を、たとえばトリガースプレー容器に収容して使用する場合、スプレー時の起泡性(泡立ち)がより向上する。一方、該範囲の上限値以下であることにより、他の成分とのバランスをとることができる。また、原料コストが抑えられて経済的に有利である。
【0033】
<任意成分>
本発明において、洗濯用前処理剤組成物には、前記(A)〜(C)成分及び水、好ましくは(D)成分以外に、必要に応じて、たとえば通常、液体洗浄剤組成物に用いられる成分を適宜、配合することができる。
具体的には、たとえばキレート剤、抗菌剤、pH調整剤、香料等を配合することができる。
【0034】
(キレート剤)
本発明の洗濯用前処理剤組成物には、主として水性しみ汚れの除去効果を補強するために、キレート剤を配合することができる。
かかるキレート剤としては、たとえば1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸などのホスホン酸又はその塩;クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸、ジグリコール酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸などのカルボン酸又はその塩;エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸などのアミノポリカルボン酸又はその塩等が挙げられる。なかでも、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸などのホスホン酸又はその塩、アミノポリカルボン酸又はその塩が好ましく、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、メチルグリシン二酢酸三ナトリウムが特に好ましい。
キレート剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
キレート剤の含有量は、洗濯用前処理剤組成物中、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。該配合量の下限値以上であることにより、水性しみ汚れの除去効果の補強効果が得られやすくなる。一方、上限値以下であることにより、キレート剤を含有することによる効果が充分に得られる。また、原料コストが抑えられて経済的に有利である。
【0035】
(抗菌剤)
本発明の洗濯用前処理剤組成物には、主として洗濯用前処理剤組成物の防腐力付与の目的で、また、洗濯用前処理剤組成物を衣料等の被洗物へスプレーした後、長時間放置した際に懸念される雑菌の繁殖に伴う臭気発生を防止する目的で、抗菌剤を配合することができる。
かかる抗菌剤としては、たとえばジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。なかでも、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウムが好ましい。
抗菌剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
抗菌剤の含有量は、洗濯用前処理剤組成物中、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。該配合量の下限値以上であることにより、防腐性能、防臭性能が付与される。一方、上限値以下であることにより、皮膚刺激等の点で人体に対しての安全性がより高まる。また、原料コストが抑えられて経済的に有利である。
【0036】
(pH調整剤)
本発明の洗濯用前処理剤組成物には、該洗濯用前処理剤組成物のpHを7〜11に調整するためにpH調整剤を適宜、添加することができる。
かかるpH調整剤としては、たとえば塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、フィチン酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩等を用いることができる。
pH調整剤は、1種単独で、または2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0037】
(香料)
本発明の洗濯用前処理剤組成物には、さらに香料を配合することもできる。
香料としては、通常、香料原料の複数種を組み合わせて調製した香料組成物が好適に使用される。
かかる香料として使用できる香料原料のリストは、たとえば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994);「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996);「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994);「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989);「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996);「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
香料組成物の含有量は、洗濯用前処理剤組成物中、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましい。
【0038】
本発明の洗濯用前処理剤組成物には、さらに、通常衣料用液体洗浄剤組成物に含まれるその他の成分を配合することができる。具体的には、前記成分以外の界面活性剤、ハイドロトロープ剤、無機塩類、水溶性高分子化合物、酸化防止剤、消臭剤等を適宜含有させることができる。
【0039】
[洗濯用前処理剤組成物のpH]
本発明においては、洗濯用前処理剤組成物のpHの制御も重要である。
本発明において、洗濯用前処理剤組成物のpHは7〜11である。すなわち、中性〜弱アルカリ性を示す。該pHは、好ましくはpH7〜10であり、より好ましくはpH7〜9である。該pHが7以上であることにより、商品価値上、必要なレベルの水性しみ汚れの除去効果が得られる。一方、該pHが11以下であることにより、洗濯用前処理剤組成物を衣料等に塗布した後、長時間放置しても衣料等の変退色が抑制される。また、皮膚刺激等の点で人体に対しての安全性がより高まる。
【0040】
[製造方法]
本発明の洗濯用前処理剤組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、常法に準じて製造することができる。
一例として、上記の(A)〜(C)成分と、好ましくは(D)成分と、任意成分とを、それぞれ所望の配合量になるように、たとえば常温の水に溶解して混合し、上記のpH調整剤を用いて所望のpHに調整することにより製造することができる。
その後、製造された洗濯用前処理剤組成物を、たとえば後述する容器(好ましくは泡形成機構を有する吐出容器)に収容することにより洗濯用前処理剤製品を得ることができる。
【0041】
本発明の洗濯用前処理剤組成物は、たとえば容器に収容し、その容器から洗濯用前処理剤組成物を排出等することにより、衣料のしみ汚れ(水性しみ汚れ、油性しみ汚れ等)の部位に塗布することができる。
かかる容器としては、特に制限されるものではなく、たとえば、容器の塗布部材を直接、衣料のしみ汚れの部位に接触させる容器(以下、「接触タイプの容器」ということがある。)や、泡形成機構を有する吐出容器等の各種容器を使用することができる。
本発明においては、なかでも泡形成機構を有する吐出容器を使用することが特に好ましい。かかる理由としては、消費者等が洗濯用前処理剤製品を使用する際における容器の使用適性の点、しみ汚れの除去効果が確実に発揮される点、及び洗濯用前処理剤組成物の泡立ちがよく、且つ内容物(洗濯用前処理剤組成物)が余分に飛び散ることなく衣料のしみ汚れ部位に効率よく塗布できる点などにおいて、泡形成機構を有する吐出容器は優れているためである。
以下に、本発明の洗濯用前処理剤組成物を収容することができる容器の実施形態を示す。
【0042】
(接触タイプの容器)
接触タイプの容器の好適なものとしては、たとえば図1に示す容器等が挙げられる。
図1は、接触タイプの容器の一実施形態を示す縦断面図である。
図1において、容器10は、洗濯用前処理剤組成物16を収容するための容器本体11と、容器本体11の上方に配置され、洗濯用前処理剤組成物16を塗布するための塗布部材12と、塗布部材12を保護するためのキャップ13とを備える。
塗布部材12は、容器本体11の開口部11aから下方の部分の外周部に取り付けられる。塗布部材12は、取付部12aと、上部12bとを有する。塗布部材12の取付部12aの内面には雌ねじ部12dが設けられる。塗布部材12の雌ねじ部12dは、容器本体11の雄ねじ部11dにねじ込まれる。あるいは、塗布部材12に雌ねじ部12dを設けず、容器本体11に雄ねじ部11dを設けることなしに、塗布部材12を容器本体11の外周部に圧入するように構成することもできる。
上部12bにおいて、衣料のしみ汚れの部位に直接、接触する部(塗布体)は、高分子硬質多孔体、液流出孔を有する高分子硬質非多孔体のいずれで形成されていてもよく、高分子硬質多孔体であることが好ましい。
容器10は、キャップ13を空けて容器本体11を逆さにすると、洗濯用前処理剤組成物16が塗布部材12を通って排出される。その際、塗布部材12を、衣料のしみ汚れの部位に直接、接触させることにより、洗濯用前処理剤組成物16が塗布され、洗濯の前処理を行うことができる。
【0043】
(泡形成機構を有する吐出容器)
泡形成機構を有する吐出容器としては、特に制限されるものではなく、たとえばトリガー式であって、内容物をスプレー状に噴霧するものが好ましい。
具体的には、トリガースプレーが好ましく、ノズル部に造泡筒を有するものがより好ましく、造泡筒の内壁面に凹凸が形成されているものがさらに好ましい。
なお、造泡筒において、該造泡筒の内壁径は2〜8mmが好ましく、3〜6mmがより好ましい。
泡形成機構を有するトリガースプレーとしては、たとえば図2に示す容器等が挙げられる。
図2は、液体噴射容器用ノズルが備えられた液体噴射容器を示し、図2(a)は当該液体噴射容器に、洗濯用前処理剤組成物が収容された洗濯用前処理剤製品を示す概略図;図2(b)は当該液体噴射容器用ノズルの構造を示す縦断面図、図2(c)はそのときの栓体と短筒部を前面側から見た図である。
【0044】
図2(a)において、洗濯用前処理剤製品は、液体噴射容器用ノズル35を有するトリガーポンプ本体40が備えられた液体噴射容器30の容器本体33内に、洗濯用前処理剤組成物70が収容されてなるものである。
トリガー式液体噴射容器30は、頸部33aを有する容器本体33と、頸部33aの上部に取り付けられたトリガーポンプ本体40とからなっている。このトリガーポンプ本体40は、容器本体33内に満たされた洗濯用前処理剤組成物70を射出筒34内に輸送する送液チューブ37と、射出筒34内で送液チューブ37の上端に連結された吸入弁(図示略)と、この吸入弁に連結されたピストン32とシリンダ(図示略)からなるピストン部、このピストン部に連結された噴出弁(図示略)と、この噴出弁から射出筒34を通って連結された液体噴射容器用ノズル35とからなる噴射機構、およびこの噴射機構を駆動するトリガーレバー31とからなる。
【0045】
図2(b)は、泡状の洗濯用前処理剤組成物を噴射する時の液体噴射容器用ノズル35を示す縦断面図であり、図2(c)は、泡状の洗濯用前処理剤組成物を噴射する時の栓体22と短筒部23を前面側(造泡筒39側)から見たときの位置関係を示す図である。
図2(b)および図2(c)において、符号21は、射出筒34の先端部に内嵌固定された液体ガイド体であって、ノズル本体28は、その前面中心部にノズル孔27を開孔して液体ガイド体21先端部の栓体22に短筒部23で回動可能に嵌合されており、ノズル本体28と液体ガイド体21と造泡筒39とにより、液体噴射容器用ノズル35が概略構成されている。
栓体22の前端部周面には、浅溝60,60が周方向複数箇所の母線方向に前端面から一定区間に亘って形成されており、他方、短筒部23の突出端部61の内周面には、通液路62,62が周方向複数個所の母線方向に突出端部61から一定区間に亘って形成されている。また、浅溝60,60が、通液路62,62とノズル孔27の後側面に位置するスピン溝63とに連通されている。したがって、この液体噴射容器用ノズル35では、ノズル本体28が図2(b)に示す泡位置にあるときは、液体ガイド体21の栓体22の浅溝60,60が通液路62,62とスピン溝63を開通させるので、ピストン部で高圧化された洗濯用前処理剤組成物70が供給されると、この高圧の洗濯用前処理剤組成物70がスピン溝63で高速回転されてノズル孔27から霧状に射出され、これが造泡筒39の内壁面たる凹凸筒面50に衝突して泡沫化されるようになっている。
なお、ノズル本体28の前面には、造泡筒39側に突出する液垂れ防止機構80が形成されている。この液垂れ防止機構80により、造泡筒39とノズル孔27との間の空気導入路52内で、ノズル孔27の少なくとも下方側を取り囲む領域が塞がれている(ノズル孔27の下方側を取り囲む領域に設けられている。)。これにより、液垂れが防止され、使い勝手が向上した液体噴射容器30を提供できる。
【0046】
≪洗濯方法≫
本発明の洗濯方法は、上記本発明の洗濯用前処理剤組成物を、衣料のしみ汚れ部位に塗布し、当該塗布後、室温にて2〜12時間放置した後で洗濯に供する方法である。
ここで、かかる発明において、「室温」とは、一般的な家庭の室内、特に洗濯機置き場や洗面所、脱衣所等において一般的に想定される温度の範囲を意味し、具体的には、たとえば5〜35℃である。
本発明において、当該塗布後の放置時間は2〜12時間であり、3〜10時間であることが好ましい。
該放置時間が2時間以上であることにより、水性しみ汚れの除去効果がさらに向上する。また、油性しみ汚れの除去効果もより向上する。該放置時間が12時間以下であることにより、水性しみ汚れの除去効果及び油性しみ汚れの除去効果が充分に得られる。
ここで、本発明において、「12時間」は、一晩(たとえば入浴前、脱衣した際に行う前処理時から翌朝の洗濯開始時まで)の間、放置した場合の時間を包含するものと考える。したがって、本発明の洗濯方法は、当該塗布後、室温にて一晩の間、放置した後で洗濯に供する方法に好適であり、家庭において一般的に行われている洗濯行動に適した方法である。
また、本発明の洗濯方法によれば、上記本発明の洗濯用前処理剤組成物を用いることにより、たとえば当該塗布後の放置時間が12時間であっても、過酸化水素を含有する漂白剤組成物を用いた場合とは異なり、衣料の変退色を抑制することができる。
【0047】
本発明の洗濯方法においては、上記本発明の洗濯用前処理剤組成物を、衣料のしみ汚れ部位に直接、塗布する。
かかる洗濯方法としては、たとえば上記本発明の洗濯用前処理剤組成物(原液)を、衣料のしみ汚れ部位に直接、塗布し、当該塗布後、そのまま室温にて2〜12時間放置した後で、水を溜めた洗濯機内に前記衣料を投入して洗濯を行う方法などが挙げられる。
【0048】
本発明によれば、過酸化水素等の漂白成分を含有せず、水性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮する洗濯用前処理剤組成物、及び当該洗濯用前処理剤組成物を用いた洗濯方法を提供することができる。
本発明の洗濯用前処理剤組成物は、衣料が変退色する懸念がなく、たとえば色柄物の衣料に付着した紅茶などのポリフェノール系の水性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮するものである。
また、本発明の洗濯用前処理剤組成物によれば、油性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮する。
また、本発明の洗濯用前処理剤組成物は、トリガースプレー等の泡形成機構を有する吐出容器に適しており、該吐出容器に収容して、しみ汚れ部位に塗布する際、良好な起泡性(泡立ち)が得られて効率的に塗布することができる。さらに、スプレーノズル部からの液ダレが生じにくい等、容器に収容して使用する際に使いやすいものである。
本発明の洗濯方法は、洗濯用前処理剤組成物を、衣料に塗布後、長時間放置、乾燥しても、衣料が変退色する懸念がなく使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「%」は特に断りがない限り「質量%」を示す。
【0050】
≪洗濯用前処理剤組成物の製造≫
下記の原料を用い、各例の洗濯用前処理剤組成物をそれぞれ製造した。
各例の洗濯用前処理剤組成物は、表1、2に示す組成に従って、各成分を精製水にそれぞれ溶解し、pH調整剤を用いて表1、2に示すpHに調整することによって製造した。
各例の洗濯用前処理剤組成物のpHは、25℃に調整した洗濯用前処理剤組成物のpHであり、ガラス電極式pHメーター(製品名:HM−30G、東亜ディーケーケー(株)製)を用いて測定した値を示す。
ただし、表1、2中の配合量は純分換算量を示す。また、精製水の量(残部)は、総量が100質量%となるように調整した。
【0051】
<表1、2中に示した原料の説明>
表1、2に記載の洗濯用前処理剤組成物の配合に用いた成分の名称、メーカー名等を下記に示す。
・(A)成分。
a−1:ホウ酸(小堺製薬株式会社製)。
a−2:4ホウ酸ナトリウム5水塩(商品名:NEOBOR、BORAX社製)。
a’−1:炭酸ナトリウム(商品名:ソーダ灰、株式会社トクヤマ製;比較成分)。
【0052】
・(B)成分。
b−1:ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均重合モル数:約4、商品名:PEG#200、ライオン株式会社製)。
b−2:ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均重合モル数:約22、商品名:PEG#1000、ライオン株式会社製)。
b−3:ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの平均重合モル数:約200、商品名:PEG#6000P、ライオン株式会社製)。
b−4:ポリオキシエチレングリセリルトリオキシステアレート[エチレンオキシドの平均付加モル数:20、商品名:EMALEX HC−20W、日本エマルジョン株式会社製]。
b−5:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数:3、HLB:4.2、商品名:EMALEX703、日本エマルジョン株式会社製)。
b−6:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数:5、HLB:4.9、商品名:EMALEX705、日本エマルジョン株式会社製)。
b−7:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数:9、HLB:6.2、商品名:EMALEX709、日本エマルジョン株式会社製)。
b−8:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキシドの平均付加モル数:15、HLB:8.2、商品名:EMALEX715、日本エマルジョン株式会社製)。
b’−1:エチレングリコール(三菱化学株式会社製;比較成分)。
【0053】
・(C)成分。
c−1:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(商品名:レボンLD−36、三洋化成工業株式会社製)。
c−2:ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(商品名:LPB−30、一方社油脂工業株式会社製)。
c−3:ラウリルヒドロキシスルホベタイン(商品名:オバゾリンAHS−103、東邦化学工業株式会社製)。
c−4:ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン(商品名:ソフタゾリンLSB、川研ファインケミカル株式会社製)。
c’−1:ラウリルジメチルアミンオキシド(商品名:AX剤、ライオンアクゾ株式会社製;比較成分)。
【0054】
・(D)成分。
d−1:イソプロピルアルコール(炭素数:3、HLB:7.5、三井化学株式会社製)。
d−2:エチレングリコールモノブチルエーテル(炭素数:4、HLB:7.3、商品名:ブチルグリコール、日本乳化剤株式会社製)。
d−3:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(炭素数:4、HLB:7.7、商品名:ブチルジグリコール、日本乳化剤株式会社製)。
d−4:ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(炭素数:6、HLB:6.7、商品名:フェニルジグリコール、日本乳化剤株式会社製)。
d−5:ヘキシレングリコール(炭素数:6、HLB:8.0、三井化学株式会社製)。
d’−1:エタノール(炭素数:2、HLB:8.0、一級試薬、甘糟化学産業株式会社製;比較成分)。
d’−2:プロピレングリコール(炭素数:3、HLB:9.4、旭電化工業株式会社製;比較成分)。
【0055】
・任意成分。
e−1:1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(商品名:キレストPH−210、キレスト株式会社製)。
e−2:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム(商品名:トリロンM、BASFジャパン株式会社製)。
f−1:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:アーカード210−80E、ライオンアクゾ株式会社製)。
f−2:塩化ベンザルコニウム(日本油脂株式会社製)。
香料:特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物A。
pH調整剤:1N−硫酸(試薬、関東化学株式会社製)または1N−水酸化ナトリウム(試薬、関東化学株式会社製)。
【0056】
≪評価≫
得られた各例の洗濯用前処理剤組成物について、以下に示す評価方法及び評価基準によって評価を行い、その結果を表1、2に併記した。
【0057】
<水性しみ汚れに対する洗浄力の評価>
(汚染布の調製)
ガラス製の2Lビーカーに、沸騰させた水道水(3°DH)1Lを入れ、次に、ティーバッグ(日東紅茶アールグレイ、三井農林(株)製)5個を投入し、5分間軽く撹拌した後、ティーバッグを取り出した。その後、前記ビーカーに綿ブロード#100(30cm×30cm)1枚を浸漬させ、30分間放置した。
次いで、前記ビーカーから該綿ブロード#100を取り出し、吊るし干しにより風乾させたものを2cm×2cmの大きさに切り出し、汚染布として用いた。
【0058】
(洗濯方法)
次いで、ポリスチレン製シャーレ(直径9cm)の上に、上記汚染布5枚を重ならないように広げ、各例の洗濯用前処理剤組成物0.24mL/枚を滴下し、当該滴下後、蓋をせずに25℃・45%RHの室内で6時間放置した。
なお、ここでの「滴下」操作は、たとえば 図1に示す接触タイプの容器を用いて塗布する方法の代替方法として行った。
次いで、Terg−O−Tometerを用いて、水道水(15℃、4°DH)900mLに、放置後の汚染布、衣料用粉末洗剤(商品名:トップ、ライオン株式会社製)0.6g及びチャージ布(綿メリヤス布)30gを添加して、120rpmで10分間洗浄した。
次いで、100%o.w.f.になるまで脱水した後、水道水(15℃、4°DH)900mLで3分間濯ぐ、という工程を2回繰り返し、最後に脱水した。
【0059】
(洗浄力の評価方法)
次いで、脱水した汚染布をアイロンで乾燥し、洗濯前後の汚染布のZ値を、測色色差計(製品の型名:SE2000、日本電色社製)を用いて測定し、次式により洗浄率(%)を算出した。
洗浄率(%)=(洗浄後の汚染布のZ値−洗浄前の汚染布のZ値)/(原布のZ値−洗浄前の汚染布のZ値)×100
式中、「原布」とは、上記汚染布の調製において、汚染処理を施していない綿ブロード#100(30cm×30cm)を示す。
表1、2に示す洗浄率(%)には、汚染布5枚の平均値を示した。
(評価基準)
本評価においては、前記洗浄率の平均値が50%以上であれば、水性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮すると判定した。
【0060】
<油性しみ汚れに対する洗浄力の評価>
(汚染布の調製)
菜種油(日清キャノーラ油、日清オイリオグループ(株)製)6質量%と、SudanIV(Oil Red、東京化成工業(株)製)0.004質量%とを溶解させたエタノール/クロロホルム=1/1(質量比)溶液0.12mLを、綿メリヤス布(1.5cm×1.5cm)に滴下し、12時間風乾させたものを汚染布として用いた。
【0061】
(洗濯方法、洗浄力の評価方法)
当該汚染布の洗濯方法、及び洗浄力の評価方法は、実施例8〜15の洗濯用前処理剤組成物を用いた以外は、上記<水性しみ汚れに対する洗浄力の評価>において記載の(洗濯方法)、(洗浄力の評価方法)とそれぞれ同様の方法により行い、洗浄率(%)を算出した。
なお、表1、2に示す洗浄率(%)には、汚染布5枚の平均値を示した。
(評価基準)
本評価においては、前記洗浄率の平均値が60%以上であれば、油性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮すると判定した。
【0062】
<スプレー時の起泡性の評価>
図2に示す液体噴射容器と同様の泡形成機構を有するトリガースプレー容器が用いられた市販品(商品名:キッチンデイリーピュア、ジョンソン(株)製)の内容物を抜いて、前記トリガースプレー容器をイオン交換水で数回洗浄し、乾燥させた。
かかるトリガースプレー容器に、実施例8〜15の洗濯用前処理剤組成物200mLを充填したものを用い、垂直に立てた綿タオルに向かって、該綿タオルから10cm離れた距離から水平に、かかるトリガースプレー容器のトリガーレバーを引くことにより、スプレー噴霧した。その際、各例の洗濯用前処理剤組成物の起泡性について、成人男子5名と成人女子5名により、それぞれ以下の基準に基づき評価した。
表2に示すスプレー時の起泡性(点)には、合計10名の平均値を示した。
(評価基準)
5点:強い力でトリガーレバーを引いてもしっかりと泡立つ。
4点:普通の力でトリガーレバーを引けばしっかりと泡立つが、強い力で引くと泡が垂れる。
3点:普通の力でトリガーレバーを引けばしっかりと泡立つが、強い力で引くとほとんど泡立たない。
2点:普通の力でトリガーレバーを引いても泡が垂れる。
1点:普通の力でトリガーレバーを引いてもほとんど泡立たない。
本評価においては、スプレー時の起泡性の平均値が4.0点以上であれば、スプレー時の起泡性が良好であると判定した。
【0063】
<変退色の評価>
(供試染色布の調製方法)
染料(C.I.Reactive Blue 13)0.1g、硫酸ナトリウム5g、及び炭酸ナトリウム0.3gを200mLビーカーに採り、50℃のイオン交換水100mLを入れて溶解した。
次いで、前記200mLビーカー内に綿ブロード#100(5cm×5cm)10枚を投入し、90分間、50℃で撹拌しながら染色した。
別に、500mLビーカーに、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.6gを採り、50℃のイオン交換水300mLを入れて溶解した。
前記200mLビーカーから染色された綿ブロード#100を取り出し、上記SDS溶液(500mLビーカー)に投入し、10分間撹拌した。
別に、500mLビーカーに、50℃のイオン交換水300mLを採り、そこへ上記SDS溶液から取り出した綿ブロード#100を投入し、5分間撹拌して濯いだ。
そして、かかる濯ぎ後の綿ブロード#100を取り出して、アイロンで乾燥することにより、供試染色布を調製した。
【0064】
(洗濯方法、変退色の評価方法)
次いで、ポリスチレン製シャーレ(直径9cm)の上に、上記供試染色布を重ならないように広げ、各例の洗濯用前処理剤組成物0.24mL/枚を滴下し、当該滴下後、蓋をせずに25℃・45%RHの室内で12時間放置した。
次いで、Terg−O−Tometerを用いて、水道水(15℃、4°DH)900mLに、放置後の供試染色布、衣料用粉末洗剤(商品名:トップ、ライオン株式会社製)0.6g及びチャージ布(綿メリヤス布)30gを添加して、120rpmで10分間洗浄した。
次いで、100%o.w.f.になるまで脱水した後、水道水(15℃、4°DH)900mLで3分間濯ぐ、という工程を2回繰り返し、最後に脱水した。
その後、乾燥した供試染色布と、洗濯用前処理剤組成物による処理を施さずに、上記と同様に衣料用粉末洗剤で洗浄し、濯いだ後、乾燥した供試染色布とを、目視観察により比較することによって変退色を評価した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1の結果から、本発明にかかる実施例1〜7の洗濯用前処理剤組成物は、比較例1〜4の洗濯用前処理剤組成物に比べて、水性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮することが確認できた。
【0067】
【表2】

【0068】
表2の結果から、本発明にかかる実施例8〜15の洗濯用前処理剤組成物は、いずれも水性しみ汚れに対して充分な洗浄力を発揮することが確認できた。
また、(B)成分としてDaviesの式で表されるHLBが4〜6.4のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する実施例8〜14の洗濯用前処理剤組成物は、当該(B)成分を含有しない実施例15の洗濯用前処理剤組成物に比べて、油性しみ汚れに対する洗浄力がより高いことが確認できた。
また、本発明における(D)成分をさらに含有する実施例8〜12および実施例15の洗濯用前処理剤組成物は、当該(D)成分を含有しない実施例13〜14の洗濯用前処理剤組成物に比べて、スプレー時の起泡性が良好であることが確認できた。
【0069】
また、変退色の評価の結果から、供試染色布に洗濯用前処理剤組成物を塗布後、12時間放置した場合においても、衣料の変退色が認められないことが確認できた。
したがって、本発明にかかる実施例1〜15の洗濯用前処理剤組成物を、衣料に塗布し、当該塗布後、室温にて長時間放置した後で洗濯に供する洗濯方法は、衣料に用いられている染料を傷めることなく、衣料の変退色が抑制されることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】接触タイプの容器の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】液体噴射容器用ノズルが備えられた液体噴射容器を示し、図2(a)は当該液体噴射容器に、洗濯用前処理剤組成物が収容された洗濯用前処理剤製品を示す概略図、図2(b)は当該液体噴射容器用ノズルの構造を示す縦断面図、図2(c)はそのときの栓体と短筒部を前面側から見た図である。
【符号の説明】
【0071】
10 容器
11 容器本体
11a開口部
11d雄ねじ部
12 塗布部材
12a取付部
12b上部
12d雌ねじ部
13 キャップ
16 洗濯用前処理剤組成物
21 液体ガイド体
22 栓体
23 短筒部
27 ノズル孔
28 ノズル本体
30 トリガー式液体噴射容器
31 トリガーレバー
32 ピストン
33 容器本体
33a頸部
34 射出筒
35 液体噴射容器用ノズル
37 送液チューブ
39 造泡筒
40 トリガーポンプ本体
50 凹凸筒面
52 空気導入路
60 浅溝
61 突出端部
62 通液路
63 スピン溝
70 洗濯用前処理剤組成物
80 液垂れ防止機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を含有し、pH7〜11であることを特徴とする洗濯用前処理剤組成物。
(A)ホウ酸及び/又はその塩、
(B)エチレンオキシドの平均付加モル数が3〜200のノニオン性化合物、
(C)両性界面活性剤。
【請求項2】
前記(B)成分は、Daviesの式で表されるHLBが4〜6.4であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む請求項1記載の洗濯用前処理剤組成物。
【請求項3】
下記一般式(1)で表される化合物であって、Daviesの式で表されるHLBが6.5〜8.5である水溶性溶剤(D)をさらに含有する請求項1又は2記載の洗濯用前処理剤組成物。
【化1】

[式中、Rは炭素数3〜6の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、フェニル基のいずれかを示す。nは平均付加モル数であり、0以上3未満の数である。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯用前処理剤組成物を、衣料のしみ汚れ部位に塗布し、当該塗布後、室温にて2〜12時間放置した後で洗濯に供することを特徴とする洗濯方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−88352(P2008−88352A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272961(P2006−272961)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】