説明

洗車方法およびノズル用アタッチメント

【課題】 洗車時の拭き取り作業自体を大幅に改善し、洗車作業の効率化を図ることのできる洗車方法及びその為のツールを提供する。
【解決手段】 水その他の液体を用いて車両を洗浄する洗浄ステップと、当該洗浄ステップ後に、車両に付着した液体を除去する液体除去ステップとを備え、この液体除去ステップでは、手持ち式の圧縮気体噴出手段から圧縮気体を噴出させて車両に付着した液体を除去する洗車方法とし、望ましくは圧縮気体噴出手段としてエアーダスターガンなどを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車を代表とする車両を洗浄する方法に関し、特に洗浄に際して車両に付着した水滴等を効率的に除去することのできる洗車方法、及びそれに好適に使用されるツールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や電車等の車両の洗浄は、汚れや埃等を除去して見栄えを良くするのみならず、塗装の状態を維持する等の観点からも、定期的又は不定期に行うことが望ましい。
【0003】
従来、自動車を洗浄する方法としては、門型の大型洗車機及び洗車機用洗剤を使用した洗車機を用いた洗車方法や、スポンジや洗車ブラシ等を使用して手作業で自動車のボディを洗車する手洗い洗車方法が行われている。
【0004】
併しながら、近年では、門型の大型洗車機で洗車を行った場合には、車両の塗装表面に洗車傷が発生してしまう等の理由から、手洗いによる洗車方法が見直されてきている。
【0005】
この手洗いによる洗車を行う際、その洗車作業を容易にするものとして、スプレー式の手動洗車機も提供されている。かかる手動式洗車装置としては、例えば、洗車場に設置される小型のコイン式ウォッシャー(スチーム式洗車機とも呼ばれる)等があり、このウォッシャーは、手持ち式のスプレーガンのノズルから高圧力の水や温水を噴出させることにより車の汚れを洗浄するように構成されている。
【0006】
また、ガソリンスダンド(サービスステーション)等では、給油サービスとは別に洗車作業を別途有償で行うサービスも行われており、特に手洗い洗車は、洗車傷を気にするユーザーの増大に伴って増加している。また手洗い洗車には、各サービスステーション独自の特徴が反映されており、他のサービスステーションとの差別化を行う上でも重要な意義を有するに至っている。
【0007】
そして本願に先立ち、手洗い洗車を行うための手動式洗車装置は、例えば特許文献1(特開2004−231055号広報)で提案されている。この文献には、水道水を利用する洗浄具と、洗浄された車体の水滴除去及び乾燥をエアーブローにより快適に施す乾燥具とを備えた手動式洗車装置が提案されているが、当該手動式洗車装置は、従前のコイン式ウォッシャーにおける圧縮エアーの高い圧力(約+200〜+600kPa)に基づく弊害を解決しているに過ぎないものとなっている。
【特許文献1】特開2004−231055号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、近年では手洗い洗車が見直され、その普及率は増加しているのが実情である。そしてこの手洗い洗車において、汚れ落とすための作業(洗浄作業)については、前述した小型のコイン式ウォッシャーが広く普及しているが、洗車の仕上げ段階で行われる水滴の拭取り作業については、このような機械式の装置は提供されていない。
【0009】
その一方で、手洗い洗車における水滴の拭き取り作業には、多大な時間及び労力を要するのも事実であり、このことは特にガソリンスタンドなど、手洗い洗車を役務として行っている事業者にとっては深刻な問題となっている。
よって本発明では、第一に、この拭き取り作業自体を大幅に改善し、洗車作業の効率化を図ることのできる洗車方法及びその為のツールの提供を課題とする。
【0010】
また、洗車に際しては車両の細部にも水が入り込んでしまうが、単なる拭き取り作業では、このような細部に入り込んだ水を除去することができない。そして、この細部に入り込んだ水は車両の移動に伴って出現し、これが洗車作業全体における作業の丁寧さを減じさせてしまう。
そこで本発明は、第二に、このような車両における細部に入り込んだ水までも除去することのできる洗車方法及びその為のツールの提供を課題とする。
【0011】
更に洗車に際して拭取り作業に時間を要してしまうと、拭取っていない領域の水滴が蒸発してしまい跡を残してしまう。特にワックス成分などが混入されている水滴の場合には、その跡が目立ってしまう。
そこで本発明は、第三に、迅速に水滴を除去することのできる洗車方法及びそのためのツールの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明ではエアーガン等の手持ち式の圧縮気体噴出手段を使用して、これから噴出される気体の圧力によって洗車時の水滴を吹き飛ばして除去する洗車方法及びその為のツールを開発し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
即ち、本発明では前記課題を解決する洗車方法として、水その他の液体を用いて車両を洗浄する洗浄ステップと、当該洗浄ステップ後に、車両に付着した液体を除去する液体除去ステップとを備え、当該液体除去ステップでは、手持ち式の圧縮気体噴出手段から圧縮気体を噴出させて車両に付着した液体を除去することを特徴とする洗車方法を提供する。
【0014】
かかる洗車方法によれば、洗浄ステップで車両に付着した水等の液体は、その後の液体除去ステップにおいて、エアーガン等の圧縮気体噴出手段から放出される圧縮気体(圧縮空気等)によって吹き飛ばすことができるので、従前における拭き取り作業自体を不要にすることができ、洗車作業の効率化を図ることができる。
【0015】
また圧縮空気などの圧縮気体を使用することにより、従前の拭き取り作業では除去できなかった車両の隙間に入り込んだ水をも吹き飛ばすことができ、洗車作業の完成度を大幅に向上させることができる。特に、本発明で使用する圧縮気体噴出手段は手持ち式であることから、従来の門型等の大型洗車機とは異なり、車両の形状や、圧縮気体の適用した時の水等の除去状況を観察しながら、適宜、圧縮気体の適用状況(放出距離に基づく吐出圧力の調整や、適用時間など)を調整することができることから、より的確に洗車作業(特に水等の液体の除去作業)を行うことができる。
【0016】
また、圧縮気体によって車両の水滴などを吹き飛ばすことにより、水滴の拭き取りの為に雑巾などで車体を擦る必要がなくなり、その結果,車両ボディーに拭き取り作業時に伴う微細な擦傷痕の発生を無くし、より品質の高い洗車作業を提供することができる。
【0017】
そして、圧縮気体噴出手段で圧縮気体を吹き付けるだけで迅速に水滴を除去できることから、拭き残しや、蒸発した水滴の跡の発生をなくすことができる。
【0018】
更に、従来実施されていた雑巾などによる拭き取り作業では、洗車対象がワゴン車やRV車など車高の高い車両である場合、その屋根等の高所に付着した水を除去する為に別途踏み台などを必要としていたが、本発明にかかる洗車方法では圧縮気体を吹き付けることのできる高さであれば、従前の例における踏み台等の必要性を無くして水等の液体を除去することができる。
【0019】
前記洗浄ステップは、洗車に際して車体に液体を吹き付ける全ての作業を含む。即ち、界面活性剤等の洗浄成分を含む洗浄液、ワックス成分等の塗膜保護成分を含む塗膜保護液、これら洗浄液やワックス液を除去する水など、各種の液体を吹き付ける工程を全て含む。よって、この洗浄ステップで使用される液体には、水に限らず、洗浄成分/ワックス成分などが配合されているものが広く含まれる。この洗浄ステップは、スチーム洗車機や門型洗車機などの洗浄用機械を用いて行っても、洗車ブラシを用いた手作業によって行っても良い。但し、一般的には、門型洗車機などの大型の洗車機を用いた洗車では、エアーブロー等による車両の乾燥が行われることから、本発明で実施される液体除去ステップは、車両における細部に入り込んだ液体を確実に除去することを目的に行われる。
【0020】
液体除去ステップは、洗浄ステップで適用された液体を、車体から除去する為に行われる。本発明にかかる洗車方法では、この液体除去ステップにおいて手持ち式の圧縮気体噴出手段を使用する事により、前述の作用・効果を享受することができる。このような手持ち式の圧縮気体噴出手段としては、少なくとも作業者が手に持って操作することのできる重さ及び形状を有する必要があり、望ましくは作業者における操作容易性を向上させるための把持部を備える。このような圧縮気体噴出手段としては、例えばエアーダスターガン、エアースプレーガン等を含むエアーガンを挙げる事ができ、その他にも圧縮気体を排出することのできる各種の器具乃至道具を使用することができる。
【0021】
このような圧縮気体噴出手段は、コンプレッサー、エアータンク、又は気体を噴出させるボンベ等の圧縮気体供給源から供給される気体を勢い良く噴出させて、車体に付着した水滴を吹き飛ばすものとして機能し、気体だけを噴出させるものの他、気体中にミスト状にワックス成分(艶出しの効果と塗膜保護の効果の少なくともいずれかを発現させる成分)を混入させたものを噴出させるものであっても良い。
【0022】
そして上記洗車方法における液体除去ステップでは、圧縮気体を、その噴出方向に扇形又は帯状に噴出すると共に、噴出断面の長さ方向に均等な吐出圧力で圧縮気体を噴出させる手持ち式の圧縮気体噴出手段を使用し、この圧縮気体噴出手段を移動させながら、車両に付着した液体を除去する事が望ましい。
【0023】
噴出断面(噴出方向に直行する断面の形状)の長さ方向に均等に圧縮気体を噴出することのできる手持ち式の圧縮気体噴出手段を用いることにより、吐出圧力の弱い領域に水滴が残留してしまうことをなくす事ができ、またこのような圧縮気体噴出手段を使用することにより、当該圧縮気体噴出手段を移動させながら水滴を吹き飛ばした場合でも、水滴が筋状に残留することはなくなる。なお、均等に圧縮気体を噴出することのできない圧縮気体噴出手段を使用する場合には、当然に筋状に水滴が残留することになるが、この残留した水滴は、別途、スポンジやタオルなどの吸水体で吸い取ることにより対応することもできる。
【0024】
更に、使用時に水滴が筋状に残留しない圧縮気体噴出手段は、各噴出口から噴出される圧縮空気の噴出断面形状や、各噴出口の配置を調整することによっても行うことができる。例えば、何れかの噴出口から噴出された圧縮空気によって移動した水滴を、他の噴出口から噴出される圧縮空気で更に吹き飛ばすものとすることができる。
【0025】
そして本発明は、前述の課題を解決するための器具乃至道具として、手持ち式の圧縮気体噴出手段における、圧縮気体の排出口に取り付けられる圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメントであり、前記圧縮気体噴出手段の排出口に取り付けられる取り付け部と、この取り付け部から延伸する長尺状のボディー部とを備え、当該ボディー部には、その長さ方向に配列された複数の圧縮気体噴出口が形成されている圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメントを提供する。
【0026】
かかるアタッチメントは、上述したエアーダスターガン、エアースプレーガン等を含むエアーガン等の圧縮気体噴出手段の圧縮気体の排出口に取り付けられるものであり、ボディー部は長尺状に形成されると共に、その長さ方向に配列された複数の圧縮気体噴出口を備える。これにより、圧縮気体噴出手段に供給される圧縮空気などの気体を、当該ボディー部の長さ方向に亘って広範囲に噴出させることができる。従って、例えば洗車時の水滴を除去するために使用した場合などにおいては、このアタッチメントを車両ボディーと略平行に保ちながら、ボディー部の長さ方向と交差する向きに移動させることで、広範囲の水滴を効率的に吹き飛ばし、除去することができる。
【0027】
前記ボディー部の長さは、その使用目的との関係において適宜調整されることが望ましい。例えば洗車時に水滴を吹き飛ばす為に使用する場合には、圧縮空気の適用範囲や操作性などを考慮し、20〜80cm、特に30〜70cm程度に形成されることが望ましい。
【0028】
特に、複数の圧縮気体噴出口から噴出される気体の吐出圧力が、当該噴出口から5cm以上離れた地点において、吐出口の配列方向に略均等に形成されているアタッチメントの場合には、洗車時の水滴除去の用途等において、水滴が吐出圧力の低い領域に残留してしまうおそれをなくすことができる。このようなアタッチメントは、例えば圧縮気体噴出口の形状、大きさ、向き、配置(間隔を含む)等を調整したり、或いはこのアタッチメントに供給される圧縮気体の供給圧力を所定の値に調整する等によって行うことができる。
【0029】
更に本発明では、前述の課題を解決するために、上記アタッチメントとは異なる形状に形成された圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメントを提供する。
【0030】
即ち、手持ち式の圧縮気体噴出手段における圧縮気体の排出口に取り付けられる圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメントであり、前記圧縮気体噴出手段の排出口に取り付けられる取り付け部と、この取り付け部に一体状に設けられるボディー部とを備え、当該ボディー部には圧縮気体噴出口が形成されており、当該圧縮気体噴出口から噴出される圧縮気体の噴出形状は、その噴出方向に扇形であって、且つ吐出断面形状の長さ方向に均等な吐出圧力である圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメントである。
【0031】
このアタッチメントも、前記長尺状のボディー部に複数の噴出口を設けたアタッチメントと同じように、エアーダスターガン、エアースプレーガン等を含むエアーガン等の圧縮気体噴出手段における、圧縮気体の排出口に取り付けられるものであるが、特に噴出方向に扇形であって、且つ噴出断面の長さ方向に均等な吐出圧力で圧縮気体を放出させる点に特徴を有する。圧縮気体を扇形に広げて噴出させることで、広範囲の水滴を吹き飛ばすことができ、且つ水滴の吹き飛ばし方向をコントロールしやすくすることができる。この点、仮に円錐状に放出する場合には、水滴の飛翔方向のコントロールが難しくなる。特に、水滴の吹き飛ばし方向のコントロールは、洗車作業における液体除去作業などにおいて重要であるから、このアタッチメントは洗車作業において使用するのに適したものとなる。かかるアタッチメントにおける圧縮気体の放出角(内角)は、噴出口と、その気体を吹き付ける適用部との距離によって適宜調整されるべきであるが、一般には20〜150°、特に45〜120°であることが望ましい。また、この圧縮空気の放出角は、適宜調整し得るように形成することが望ましい。
【0032】
そしてこのノズル用アタッチメントでは、ボディー部を長尺状に形成し、圧縮気体を扇形に広げて噴出させる圧縮気体噴出口を、当該ボディー側面の先端寄りに、1つ形成することもできる。これにより、噴出断面における吐出圧力の均等化を容易に行うことができる他、洗車作業などのように作業者の手元から離れた領域に、幅広く圧縮空気を吹き付ける必要がある場合でも、そのような作業を容易に行い得るものとなる。
【0033】
また本発明では、加圧気体供給源から供給される圧縮気体を噴出させる、手持ち式の圧縮気体噴出手段であって、上記本発明にかかるノズル用アタッチメントが取り付けられているか、或いは当該ノズル用アタッチメントが一体状に設けられている手持ち式の圧縮気体噴出手段を提供し、前記課題を解決する。
【0034】
この圧縮気体噴出手段は、事後的に前記ノズル用アタッチメントを取り付けるものでも、又は予めノズル用アタッチメントが一体化されているものでも良い。
【0035】
そして、上記本発明にかかるノズル用アタッチメントや、圧縮気体噴出手段は、特に洗車に際して車体に付着した水滴を除去するため(即ち液体除去ステップ)に好適に使用することができるが、その他の用途にも当然に使用することができる。例えば利用分野を問わず、広い範囲に付着した水滴やその他の液体、或いはごみその他の粉状物や粒状物等を除去する目的にも使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は本実施の形態にかかる洗車方法の作業工程を示す略図であり、図2は第一の実施の形態にかかるノズル用アタッチメント17を取り付けた圧縮気体噴出手段10を示す側面図、図3はこの第一の実施の形態にかかるノズル用アタッチメント17の分解図、図4は第二の実施の形態にかかるノズル用アタッチメント17'を取り付けた圧縮気体噴出手段10を示す側面図である。
【0037】
先ず、図1に基づいて本実施の形態にかかる洗車方法を説明する。本実施の形態にかかる洗車方法では、図1(A)に示す如く、通常の手洗いと同じようにスチーム洗車機Sや洗車ブラシなどを用いて車両Cの洗浄を行う(洗浄ステップ)。この洗浄ステップは、最初に車両Cを水で濡らし、その後に洗浄液で洗浄を行っても、洗浄液を混入させた洗浄用水で車両Cを洗浄しても良い。いずれにしても、この洗浄ステップでは、車両Cに水や洗浄水などがかけられ、全体的に水滴(又は液滴)等が付着することになる。なお、図1(A)中、車両の汚れた部分を濃色で示している。
【0038】
そして車両Cのパネルなどを十分に洗浄した後、車両Cに付着した水滴などを除去することになる。特に本実施の形態では、図1(B)に示すように、エアーコンプレッサー(図示せず)から供給される圧縮空気を、圧縮気体噴出手段10としてのエアーダスターガン11から勢いよく放出し、車両Cに付着した水滴を吹き飛ばして、これを除去している(液体除去ステップ)。この液体除去ステップにおいて、水滴が除去された領域を図1(B)中、白色で示している。
【0039】
この液体除去ステップでは、車両Cにおける屋根などの高所から、次第にウィンドウ、ボンネットなどの低所に向かって行うことが望ましく、車両Cに付着した水滴を圧縮空気で移動させながら車両Cの外に押し出すように行うことが望ましい。また、エアーダスターガン11と車両Cとの距離は、水滴が付着している部位の性状や、水滴の量などによって適宜調整することができる。例えば、水滴が付着している面が車体パネルであり、当該車体パネルはワックスなどにより十分な撥水効果が発現している場合には、エアーダスターガン11と車両Cとの距離を長く保ち、広範囲に付着した水滴を効率的に除去することが望ましい。
【0040】
特に、本実施の形態において、この液体除去ステップは、手持ち式の圧縮気体噴出手段10としてのエアーダスターガン11を使用していることから、水滴の除去状況に応じて、圧縮空気の適用時間を長くしたり、或いはエアーダスターガン11と車両Cとの距離を短く調整するなど、それぞれの作業状況において簡易且つ的確に調整することができる。
【0041】
この実施の形態にかかる洗車方法において、洗浄ステップが発泡性の高い洗浄剤による洗浄である場合、その後に、車両Cに付着した泡を除去するために液体除去ステップを行えば、当該泡を洗い流すための水の量を大幅に削減することができ、環境保全にも寄与することができる。
【0042】
次に上記洗車方法における液体除去ステップで使用するのに適した圧縮気体噴出手段10の実施の形態を説明する。
〔実施の形態1〕
【0043】
本実施の形態に示す圧縮気体噴出手段10は、図2に示す如く、エアーダスターガン11における圧縮空気の排出口に、ノズル用アタッチメント17を取り付けて構成されている。
【0044】
この実施の形態で使用することのできるエアーダスターガン11としては、車両Cの整備工場やガソリンスタンドなどにおいて、圧縮空気を吹き付けるために使用されている汎用的なものを使用することができる。また、このエアーダスターガン11に圧縮空気を供給するコンプレッサーやエアタンクも、従来から自動車整備工場やガソリンスタンドなどで使用されているものを流用することができる。更に、エアーダスターガン11や、コンプレッサー等からの圧縮空気を導くラインには、当該エアーダスターガン11に供給する圧縮空気の供給量・供給圧力を平均化(又は一定化)する手段を設けることもできる。
【0045】
この圧縮気体噴出手段10に使用されているノズル用アタッチメント17は、エアーダスターガン11の排出口に取り付けられる取り付け部12と、約50〜60cmの長さの長尺状に形成されたボディー部13を備えており、このボディー部13には、その長さ方向に沿って配列された複数の噴出口14が形成されている。コンプレッサーなどから供給される圧縮空気は、エアーダスターガン11の排出口からノズル用アタッチメント17の内部空間15に案内され、この内部空間15に案内された圧縮空気は、各噴出口14から勢い良く排出される。
【0046】
そして、この噴出口14はボディー部13の長さ方向に亘って存在することから、このノズル用アタッチメント17からは、全体として、大凡帯状に圧縮空気が噴出することになる。
【0047】
また、このノズル用アタッチメント17は、エアーダスターガン11を把持した状態において適切な向きに圧縮空気の噴出方向を向けることができるように、ボディー部13は、エアーダスターガン11に対して軸方向に回転自在に設置されることが望ましい。これによりエアーダスターガン11を把持した状態において、圧縮空気を、ノズル用アタッチメント17の上方向、横方向、下方向など任意の向きに放出させることができる。
【0048】
また、このノズル用アタッチメント17は、特定の部位に留まっている水滴などに対して集中的に圧縮空気を吹き付けることができるように、その長さ方向の先端には、任意に開閉することのできる噴出口14を設けることもできる。その際、機械的な作用により、先端の噴出口14と、長さ方向に並ぶ噴出口14とを択一的に開放し得るように構成することもできる。
【0049】
そして、このノズル用アタッチメント17は、噴出口14全体から噴出される圧縮空気の吐出圧力が、噴出断面の長さ方向に均等になるように形成されている。噴出断面の長さ方向に吐出圧力の強弱が生じると、圧力の弱い領域に水滴が溜まってしまい、その結果、当該圧縮気体噴出手段10を車両Cに沿わせて移動させた場合に、水滴が筋状に残ってしまうといった問題を解消する為である。
【0050】
即ち、この実施の形態に示す圧縮気体噴出手段10では、ノズル用アタッチメント17全体から大凡帯状に圧縮空気が噴出されることから、当該噴出口14から5cm以上は離れた地点において、その幅方向(即ちノズル用アタッチメント17の長さ方向)に吐出圧力が大凡等しくなる様に形成されている。但し、この幅方向において、水滴が集中しない程度の吐出圧力の違いなどは本実施の形態の範囲内である。また、圧縮空気の吐出圧力は、当然のことながら噴出口14の投影領域において最も高く、それから離れるに従い徐々に弱くなるが、本実施の形態において均等な吐出圧力が要求される範囲は、少なくとも噴出口14の投影範囲を含む範囲である。即ち、この噴出口14を車体パネルに投影した領域から外れる範囲では、当然に当該領域よりも吐出圧力が低くなっていても良い。
【0051】
圧縮空気の吐出圧力を幅方向(ボディー部13の長さ方向)に均等にするためには、噴出口14の形状、大きさ、配置間隔、向きなどを適宜設定することができ、また排出口に金属メッシュなどの網を設置することができる。その一例を図3に基づいて示す。
【0052】
図3に示すノズル用アタッチメント17は、製造するノズル用アタッチメント17を長さ方向に添う向きに分割した形状の第一分割体16aと、この第一分割体と組み合わされてノズル用アタッチメント17を形成する第二分割体16bとからなり、各分割体同士16a,bには両者を螺子19で接合する時に使用される螺子孔18が形成されている。但し、この螺子孔18は、各分割体同士16a,bを接着剤で貼り合わせたり、融着する場合には省略することもできる。
【0053】
そして各分割体16a,bには、両者を組み合わせた時に中心に存在し、圧縮空気の通路となる内部空間15を形成するための窪み15'と、各分割体16a,bを組み合わせたときに相互に交差する向きの溝14a,bを形成している。この溝14a,bは、両分割体同士16a,bを組み合わせたときに、圧縮空気を噴出するための噴出口14として機能することになる。なお、噴出口14の形状や大きさ、向き、間隔等はこの図3に示した態様に限らず、種々設定することができる。
【0054】
また、このノズル用アタッチメント17から噴出される圧縮空気の断面形状や配置を調整することによっても、水滴を筋状に残留させない圧縮気体噴出手段10が実現する。即ち、圧縮気体噴出手段10を移動させながら水滴を吹き飛ばした場合、水滴が筋状に残留するのは、何れかの噴出口14から噴出された圧縮空気により水滴が移動して集まることによるものであるが、この移動して溜まった水滴を更に別の他の噴出口14から噴出される圧縮空気で吹き飛ばすことによっても、水滴の残留をなくす圧縮気体噴出手段10を実現することができる。更に、圧縮空気を吹き付けた際、水滴の放射方向への移動を阻止し、全ての水滴を直線方向に移動させるように圧縮空気を吹き付けることによっても、かかる水滴の残留を阻止することができる。
【0055】
よって、本実施の形態では、吐出圧力を均等にするか、噴出口14の形状や配置具合を調整して、上記のように水滴の移動をコントロールすることが望ましい。
【0056】
なお、ノズル用アタッチメント17は管状であれば良く、直線状でも湾曲していても良い。またノズル用アタッチメント17の径方向断面形状も、円形、楕円形、矩形等各種の形状に形成することができる。
〔実施の形態2〕
【0057】
図4は、エアーダスターガン11に第二の実施の形態にかかるノズル用アタッチメント17'を取り付けて構成した圧縮気体噴出手段10を示しており、この図に示す圧縮気体噴出手段10に使用されているノズル用アタッチメント17'は、長尺に形成されたボディー部13の先端方向の側面に1つの噴出口14を形成している。
【0058】
この噴出口14は、噴出方向に扇形に圧縮空気を噴出する様に形成されており、その内角は約90°に調整されている。これにより当該噴出口14から噴出される圧縮空気の噴出断面形状は長尺となり、広範囲に圧縮空気を行き渡らせることができ、水滴の除去作業を迅速に行うことができる。
【0059】
そして、この噴出口14は50〜60cm程度の長さに形成されたボディー部13の先端寄りであって、ボディー部13の側面に形成されている。これにより、洗車時において車両Cに付着した水滴を除去する場合の操作性が向上する。即ち、仮に噴出口14がボディー部13の先端面に形成されているとすると、ボンネットなど水平に近い面の水滴の除去が困難になるが、本実施の形態に示すようにボディー部13の側面に形成すれば、当該ボディー部13を車体に沿わせて平行移動させることで、水平面に付着した水滴を簡易に除去することができるようになる。
【0060】
また、長尺状に形成されているボディー部13の先端寄りに噴出口14を形成することで、作業者から遠い領域に付着した水滴であっても、特別な工夫を要せずとも簡易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施の形態にかかる洗車方法の作業工程を示す略図。
【図2】第一の実施の形態にかかるノズル用アタッチメントを取り付けた圧縮気体噴出手段を示す側面図。
【図3】図2に示すノズル用アタッチメントの分解図。
【図4】第二の実施の形態にかかるノズル用アタッチメントを取り付けた圧縮気体噴出手段を示す側面図。
【符号の説明】
【0062】
10 圧縮気体噴出手段
11 エアーダスターガン
13 ボディー部
14 噴出口
14a,b 溝
15 内部空間
16a 第一分割体
16b 第二分割体
17 ノズル用アタッチメント
C 車両
S スチーム洗車機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水その他の液体を用いて車両を洗浄する洗浄ステップと、
当該洗浄ステップ後に、車両に付着した液体を除去する液体除去ステップとを備え、
当該液体除去ステップでは、手持ち式の圧縮気体噴出手段から圧縮気体を噴出させて車両に付着した液体を除去することを特徴とする、洗車方法。
【請求項2】
前記液体除去ステップで使用される手持ち式の圧縮気体噴出手段は、圧縮気体を、その噴出方向に扇形又は帯状に噴出すると共に、噴出断面の長さ方向に略均等な吐出圧力で圧縮気体を噴出させる手持ち式の圧縮気体噴出手段であり、
この圧縮気体噴出手段を移動させながら、車両に付着した液体を除去する請求項1に記載の洗車方法。
【請求項3】
手持ち式の圧縮気体噴出手段における圧縮気体の排出口に取り付けられる圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメントであり、
前記圧縮気体噴出手段の排出口に取り付けられる取り付け部と、この取り付け部から延伸する長尺状のボディー部とを備え、
当該ボディー部には、その長さ方向に配列された複数の圧縮気体噴出口が形成されている圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメント。
【請求項4】
前記ボディー部に設けられた複数の圧縮気体噴出口から噴出される気体の吐出圧力は、当該と出口から5cm以上離れた地点において、噴出口の配列方向に略均等である、請求項3に記載のノズル用アタッチメント。
【請求項5】
手持ち式の圧縮気体噴出手段における圧縮気体の排出口に取り付けられる圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメントであり、
前記圧縮気体噴出手段の排出口に取り付けられる取り付け部と、この取り付け部に一体状に設けられるボディー部とを備え、
当該ボディー部には圧縮気体噴出口が形成されており、当該圧縮気体噴出口から噴出される圧縮気体の噴出形状は、その噴出方向に扇形であって、且つ吐出断面形状の長さ方向に均等な吐出圧力である圧縮気体噴出手段のノズル用アタッチメント。
【請求項6】
前記ボディー部は長尺状に形成されると共に、前記圧縮気体噴出口は、当該ボディーの側面の先端寄りに、1つ形成されている請求項5に記載のノズル用アタッチメント。
【請求項7】
加圧気体供給源から供給される圧縮気体を噴出させる、手持ち式の圧縮気体噴出手段であって、請求項3〜6の何れか一項に記載したノズル用アタッチメントが取り付けられているか、或いは当該ノズル用アタッチメントが一体状に設けられている手持ち式の圧縮気体噴出手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−118846(P2007−118846A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315691(P2005−315691)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(594057314)翼システム株式会社 (22)
【Fターム(参考)】